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特許7072666ターゲット搬送システム及びターゲット搬送方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】ターゲット搬送システム及びターゲット搬送方法
(51)【国際特許分類】
   G21K 5/08 20060101AFI20220513BHJP
   H05H 6/00 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
G21K5/08 C
G21K5/08 R
H05H6/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020548339
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2019035253
(87)【国際公開番号】W WO2020066557
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】P 2018179260
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000230250
【氏名又は名称】日本メジフィジックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 拓
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-268127(JP,A)
【文献】特開平11-273896(JP,A)
【文献】特開2002-045159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21K 5/08
H05H 6/00
G21G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核種を生成するための材料体を少なくとも含むターゲット体が搬送される搬送管路と、
前記ターゲット体を保持し、加速器から出力される粒子線を前記ターゲット体に照射させるターゲット保持部と、
前記搬送管路内を搬送方向に流動すると共に前記ターゲット体を冷却する流体により、前記ターゲット体を前記ターゲット保持部まで搬送する搬送機構と、を含み、
前記搬送機構は、前記ターゲット保持部における前記粒子線の照射中には前記搬送管路内で前記流体を前記搬送方向に流動させ、前記粒子線の照射終了後には前記ターゲット体を前記搬送管路から前記流体によって回収する、ターゲット搬送システム。
【請求項2】
前記搬送機構による前記ターゲット体の搬送に使用される前記流体を冷却する冷却機構をさらに備える、請求項1に記載のターゲット搬送システム。
【請求項3】
前記搬送機構は、前記ターゲット体の回収時に前記搬送方向と反対の方向に前記流体を流動させる、請求項1または2に記載のターゲット搬送システム。
【請求項4】
前記ターゲット保持部は、前記流体が流動する照射管路と、前記ターゲット体が前記粒子線の照射を受ける照射位置に前記ターゲット体を留めるための留置機構とを内部に備え、前記搬送管路が前記照射管路と連通し、
前記留置機構は、前記照射管路内にあって前記ターゲット体の上昇を規制する規制部と、前記照射管路の内壁の対向する二方からそれぞれ対向する側に突出する突出部と、を備え、前記規制部と二つの前記突出部とによって前記ターゲット体を支持した状態で前記ターゲット保持部に遊挿する、請求項1に記載のターゲット搬送システム。
【請求項5】
前記搬送機構は、前記ターゲット体の前記照射位置への搬送中及び前記粒子線の照射中、前記留置機構に対して重力方向の下方から上方に向かって前記流体を流動させる、請求項4に記載のターゲット搬送システム。
【請求項6】
前記ターゲット体が円盤形状を有し、前記搬送管路内の、長手方向及び幅方向と直交する高さ方向の最大長さは、前記円盤形状の直径より小さい、請求項1に記載のターゲット搬送システム
【請求項7】
核種を生成するための材料体を少なくとも含むターゲット体が搬送される管路内に前記ターゲット体を導入する導入工程と、
導入された前記ターゲット体を、当該ターゲット体が加速器から出力される粒子線の照射を受けるターゲット保持部まで前記管路内を流動すると共に前記ターゲット体を冷却する流体によって搬送する搬送工程と、
前記ターゲット保持部における前記ターゲット体に対する前記粒子線の照射中には前記ターゲット体の搬送方向に前記流体を流動させる流動工程と、
前記ターゲット保持部における前記ターゲット体に対する前記粒子線の照射終了後、前記ターゲット体を前記管路から前記流体によって回収する回収工程と、
を含む、ターゲット搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性の核種を生成するためのターゲットを搬送するターゲット搬送システム、ターゲット体及びターゲット搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性同位元素(Radio Isotope:以下、RIと記す)の製造では、加速器を使ってp(陽子)、d(重陽子)、α(ヘリウム原子核)、e(電子)、重イオン等の粒子線を作成し、作成された粒子線をターゲットに照射して核反応させる。核反応の結果、ターゲットからは、種々の放射性核種(RI)を得ることができる。なお、ターゲットには、生成すべき用途に応じて固体、液体及び気体のいずれかのターゲットが使用される。
【0003】
粒子線照射後のターゲットの近傍にはRIが存在するので、ターゲットを粒子線の照射位置から取り出す作業は遮蔽された位置で行うことが望ましい。RIの製造は原子炉にて行われるものと、サイクロトロンに代表される加速器により行われるものがある。いずれの場合もコンクリート等で遮蔽された空間内でターゲットに粒子線を照射し、照射後のターゲットを、作業者の被曝を防護するホットセル等の設備にてマニピュレータ等を介して取り扱っている。
原子炉でRIを製造する場合、固体の試料を流体により照射筒に搬送し、取り出すことが例えば特許文献1に記載されている。また、サイクロトロンを使ってRIを製造する際に固体ターゲットを回収することについては特許文献2に記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の原子炉の照射筒は、原子炉において複数のラビットと呼ばれる試料を内蔵した固形物を個別に取り出すものである。また、特許文献2の固体ターゲット回収装置は、核反応後の固体ターゲットを放射線遮蔽容器まで案内する案内部材、案内部材を振動させる振動モータを備えている。そして、特許文献2に記載の構成は、案内部材に落下した固体ターゲットを振動モータにより振動させて放射線遮蔽容器まで案内している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭62-76499号公報
【文献】特開2008-268127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、加速器を使って核種を製造する環境では、ターゲットに照射された粒子線に含まれる荷電粒子がターゲット内でエネルギーを失い、小体積のターゲット中に大量の熱を発生する。発生した熱は、ターゲットを収容している部材を溶かす可能性がある。このため、核種を製造するRI製造装置では、粒子線の照射中にヘリウムガスや冷却水を用いてターゲットを冷却することが必須となる。
上記の特許文献2には、ターゲットを収容するターゲット部がバキュームポンプと接続されている貫通孔及び冷却水循環孔を備えていることが記載されている。固体ターゲットは、貫通孔からエアを吸引することによってターゲット部内に固定される。
【0007】
このように、特許文献2に記載の構成では、冷却水を循環させる機構と、固体ターゲットを保持、回収する機構との両方が必要になる。しかしながら、装置が備える機構の数は少ない方が装置の簡易化、小型化及びシステムのレイアウトの自由度を高めることに有利であるので好ましい。また、特許文献2に記載の構成では、案内部材に振動を伝えるために案内部材、ひいては固体ターゲット近くにモータが配置されることになる。このことにより、振動モータに入力または振動モータから出力される信号が放射線の影響を受け、振動モータの動作に支障を生じる虞がある。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、加速器を使ったRIの製造において、構成の簡易化及び小型化に有利であって、しかも構成部品が放射線による損傷等の影響を受け難いターゲット搬送システム、ターゲット体及びターゲット体搬送方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のターゲット搬送システムは、核種を生成するための材料体を少なくとも含むターゲット体が搬送される搬送管路と、前記ターゲット体を保持し、加速器から出力される粒子線を前記ターゲット体に照射させるターゲット保持部と、前記搬送管路内を搬送方向に流動する流体により、前記ターゲット体を前記ターゲット保持部まで搬送する搬送機構と、を含み、前記搬送機構は、前記ターゲット保持部における前記粒子線の照射中には前記搬送管路内で前記流体を前記搬送方向に流動させ、前記粒子線の照射終了後には前記ターゲット体を前記搬送管路から前記流体によって回収する。
【0010】
また、本発明のターゲット搬送方法は、核種を生成するための材料体を少なくとも含むターゲット体が搬送される管路内に前記ターゲット体を導入する導入工程と、導入された前記ターゲット体を、当該ターゲット体が加速器から出力される粒子線の照射を受けるターゲット保持部まで前記管路内を流動する流体によって搬送する搬送工程と、前記ターゲット保持部における前記ターゲット体に対する前記粒子線の照射中には前記ターゲット体の搬送方向に前記流体を流動させる流動工程と、前記ターゲット保持部における前記ターゲット体に対する前記粒子線の照射終了後、前記ターゲット体を前記管路から前記流体によって回収する回収工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、加速器を使ったRIの製造において、構成の簡易化及び小型化に有利であって、しかも構成部品が放射線による損傷等の影響を受け難いターゲット搬送システム、ターゲット体及びターゲット体搬送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は公知のRI製造システムを示す図、(b)は本発明の一実施形態の搬送システムを示す図である。
図2】本発明の一実施形態のターゲット搬送システムの全体を説明するための図である。
図3図2に示したターゲット保持部を説明するための図であって、ターゲット保持部の上面図である。
図4図2に示したターゲット保持部の下面図である。
図5図3に示したターゲット保持部の右側面図である。
図6図3中に示した一点鎖線に沿うターゲット保持部の断面図である。
図7図2に示した管路部と搬送管路部との接続について説明するための図である。
図8図5中に示した一点鎖線に沿うターゲット保持部の断面図である。
図9】(a)は(b)中に示した一点鎖線に沿う照射フランジの断面図であり、(b)は、図6の部分拡大図である。
図10】粒子線の照射中のターゲット体の位置について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、全ての図面において、同様の構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。また、本実施形態の図面は、発明の構成の位置関係や機能及び形状を例示するものであって、その寸法形状や長さ、幅及び高さを限定するものではない。
【0014】
[概要]
先ず、本実施形態の具体的な説明に先立って、本実施形態の概要について説明する。
図1(a)及び図1(b)は、本実施形態の概要を説明するための図であって、図1(a)は公知のRI製造装置を示し、図1(b)は本実施形態の搬送システムを適用したRI製造装置を示している。図1(a)及び図1(b)は、加速器10、搬送機構17及びターゲット保持部3を示している。加速器10は、電界により荷電粒子を加速する装置であり、例えば、サイクロトロン、直線加速器、シンクロトロンが挙げられる。
加速器10からは、高速の荷電粒子が粒子線Bとしてターゲット保持部3に向けて照射される。ターゲット保持部3は、ターゲット体50を粒子線Bの照射位置に固定して、ターゲット体50に粒子線Bを照射させる装置である。搬送機構17は、ターゲット保持部3の照射位置までターゲット体50を送り込み、照射終了後にはターゲット保持部3から回収する機構である。
【0015】
前述したように、RI製造装置では、粒子線の照射中にヘリウムガスや冷却水を用いてターゲットを冷却することが必須となる。公知のRI製造装置では、図1(a)に示すように、ターゲット保持部3においてターゲット体50を冷却水W1によって冷却し、搬送機構17が水W2を利用してターゲット体50を搬送している。このようなRI製造装置では、冷却水W1、水W2をそれぞれ流動させる機構を別途設けることになる。
一方、本実施形態は、図1(b)に示すように、ターゲット保持部3におけるターゲット体50の冷却及び搬送機構17による搬送の両方を冷却水Wによって行っている。このような本実施形態は、RI製造装置の搬送及び冷却を一つの機構を使って実現し、RI装置の構成を簡易、小型にすることができる。また、本実施形態は、ターゲット体50を冷却水Wにより搬送するので、照射装置近辺や遮蔽部材により遮蔽された領域内に機械あるいは電子部品を設けることなく遠隔操作によりターゲット体50の搬送を制御することができる。
【0016】
[ターゲット搬送システム]
図2は、本実施形態のターゲット搬送システムの全体を説明するための図である。本実施形態のターゲット搬送システム100は、核種を生成するための材料体を少なくとも含むターゲット体50(図2等)が搬送される搬送管路1と、ターゲット体50を保持し、加速器10(図1)から出力される粒子線をターゲット体50に照射するターゲット保持部3と、搬送管路1を搬送方向に流動すると共にターゲット体50を冷却する流体である冷却水Wによってターゲット体50をターゲット保持部3まで搬送する搬送機構17(図1(b))と、を含んでいる。搬送機構17は、ターゲット保持部3における粒子線の照射中には搬送管路1内でターゲット体50の搬送方向に冷却水Wを流動させ、粒子線の照射終了後にはターゲット体50を搬送管路1から冷却水Wによって回収する。図2に示すように、ターゲット保持部3は、ターゲット体50が保持されて粒子線Bの照射を受ける照射フランジ30と、照射フランジ30及び搬送管路1に連通する照射管路12を有している。
本実施形態の搬送機構17は、搬送管路1、ターゲット導入部5及びポンプ9によって構成される。また、本実施形態の「材料体」とは、核種を生成するための部材を材料にするものであって、粒子線Bの照射を受けて核種を生成するものであればよく、固体、粉体、気体、液体のいずれであってもよい。ただし、本実施形態では、材料体を冷却水Wにより搬送する構成上、固体以外の材料体については材料体を例えば円盤状のケース体内に収容して用いるものとする。
さらに、本実施形態は、材料体が固体であってもケース体に収容し、そのケース体の形状やサイズ及び材料、さらには材料体とケース体の間の間隙等により材料体に対する粒子線Bの照射状態を調整することが可能である。
【0017】
ターゲット搬送システム100は、遮蔽部材Sにより閉鎖された領域を有するホットラボに設けられている。図2においては、遮蔽部材Sを境界にしてターゲット保持部3が配置される側を遮蔽部材Sにより閉鎖された照射室Hとする。照射室Hの外部にはポンプ9や冷却水Wのタンク6及びターゲット導入部5が配置されている。ターゲット保持部3、ターゲット導入部5及びタンク6は搬送管路1によって接続され、搬送管路1は地下ピットGを通って照射室Hの内部と外部とに通じている。
ただし、本実施形態は、上記構成に限定されるものではない。本実施形態の搬送システムは、ターゲット導入部5についてはホットセル内に設置することが必須となるものの、ポンプ、水槽及びバルブ類を必ずしもホットセル等の特定の箇所に設置する必要はない。ポンプ、水槽及びバルブ類は、スペース配分の観点から地下ピット等の好適な位置に設置するものであってもよい。
【0018】
また、本実施形態は、搬送機構17によるターゲット体50の搬送に使用される水(冷却水W)を冷却する冷却機構である熱交換器60をさらに備えている。熱交換器60は、搬送管路1を流れる冷却水Wの一部を取り込んで冷媒と接触させて冷却し、冷却された水を搬送管路1に戻している。
本実施形態では、熱交換器60をターゲット保持部3と共に照射室Hの内部に設けている。以下、上記構成について順に説明する。
【0019】
(ターゲット体)
ターゲット体50は、核種を生成するための材料となる材料体を少なくとも含んでいればよく、材料体以外の素材を含んでいてもよく、材料体のみを含むものであってもよい。また、ターゲット体50は、材料体と共に材料体を収容、あるいは支持する容器(例えば金属製の中空容器)を有するものであってもよい。本実施形態は、ターゲット体50を、円盤形状を有する材料体そのものとして説明する。容器を有するターゲット体の構成については変形例として後に説明する。
材料体としては、18O-HO、N、O、Ca、Cr、Fe、Ni、Zn、Ga、Ge、Se、Kr、Sr、Y、Mo、Cd、Te、Xe、W、Ir、Pt、Tl、Bi、Ra、Thが挙げられる。また、材料体としては、固形材料(Ca、Cr、Fe、Ni、Zn、Ga、Ge、Se、Sr、Y、Mo、Cd、Te、W、Ir、Pt、Tl、Bi、Ra、Th)が好ましい。
【0020】
(搬送管路)
搬送管路1は、ポンプ9によってタンク6から汲み上げられた冷却水Wをターゲット導入部5からターゲット保持部3に向かう方向F1に流すことができる。また、搬送管路1は、冷却水Wをターゲット保持部3からターゲット導入部5に向かう方向F2に流すことができる。冷却水Wの流れ方向の反転は、ポンプ9の回転方向を反転させることによって実現できる。なお、本実施形態では、冷却水Wによりターゲット体50を搬送管路1内で搬送するため、冷却水Wの流れ方向を以降「搬送方向」とも記す。
搬送管路1には複数のバルブ4aからバルブ4fが設けられている。バルブ4a、4b、4c、4dは、開閉の組み合わせにより搬送管路1を流れる冷却水Wの流路を切り換えるバルブである。
【0021】
ポンプ9は、容積式往復動ポンプ、非容積式の渦巻きポンプ等のポンプであってもよく、凡そ一分間に数リットルから数百リットルの冷却水Wを汲み上げる能力を持つものが使用される。ただし、ポンプ9としては脈動が起こらない、あるいは脈動の小さいポンプが好ましい。脈動が小さいポンプとしては、例えば多連型往復動ポンプが挙げられる。ポンプ9に脈動が小さいものを用いる理由は、本実施形態がターゲット体50を冷却水Wにより搬送するので、ポンプ9に脈動があると、この脈動がターゲット体50に作用してターゲット体50が一定の速度で移動することや照射位置で静止することを妨げるためである。
【0022】
バルブ4e、4fは、エア導入用のポートとの接続を切り換えるバルブであって、バルブ4e、4fを開放することによって搬送管路1内にエアが導入される。このようなバルブ4e、4fは、搬送管路1を流動する冷却水Wを落水し、搬送管路1内をパージする際に開放される。搬送管路1には冷却水Wが流れる圧力を測定するための圧力計81、82及び流量を測定するための流量計7が設けられている。
【0023】
また、本実施形態では、搬送管路1の各部分を搬送管路部1aから搬送管路部1kとして区別する。搬送管路1は、搬送管路1のバルブ4fとターゲット導入部5との間の搬送管路部1a、ターゲット導入部5とターゲット保持部3との間を搬送管路部1b、ターゲット保持部3とバルブ4eとの間の搬送管路部1c、バルブ4eと熱交換器60との間の搬送管路部1d、バルブ4eとバルブ4cとの間の搬送管路部1e、バルブ4cからタンク6内に挿入される端部1ffまでの搬送管路部1f、バルブ4cとバルブ4aとの間の搬送管路部1g、バルブ4aとバルブ4bとの間の搬送管路部1h、バルブ4dとバルブ4fとの間の搬送管路部1j、バルブ4dから端部1aaまでの間の搬送管路部1k及び熱交換器60とバルブ4cとの間の搬送管路部1mによって構成されている。
【0024】
搬送管路1、ターゲット導入部5及びポンプ9は、上記した搬送管路1内に冷却水Wを流動させてターゲット体50をターゲット保持部3まで搬送する。また、搬送管路1、ターゲット導入部5及びポンプ9は、ターゲット体50をターゲット保持部3からターゲット導入部5まで搬送する。ターゲット導入部5まで搬送されたターゲット体50は、マニピュレータによって取り出されて回収される。このように、本実施形態では、ターゲット体50の回収時に搬送方向と反対の方向に冷却水Wを流動させている。
【0025】
具体的には、搬送方向を方向F1にする場合、つまりターゲット体50をターゲット導入部5からターゲット保持部3に搬送する場合、バルブ4aとバルブ4dとが閉じられて、かつバルブ4bとバルブ4cとが開放される。このとき、ポンプ9によって汲み上げられた冷却水Wは、搬送管路部1h、1a、1b、1c、1d、1e(一部搬送管路部1m)、1fを通って端部1ffからタンク6に流れ込む。また、搬送方向を方向F2にする場合、つまりターゲット体50をターゲット保持部3からターゲット導入部5に回収する場合、バルブ4aとバルブ4dとが開放されて、かつバルブ4bとバルブ4cとが閉じられる。このとき、ポンプ9によって汲み上げられた冷却水Wは、搬送管路部1g、1e、1d、1c、1b、1a、1j、1kを通って端部1aaからタンク6に流れ込む。
【0026】
ターゲット体50は、上記した冷却水Wに浸漬されながら搬送方向に移動する。このとき、本実施形態では、ターゲット体50が搬送管路1内で表裏反転することがないように搬送管路1を構成している。具体的には、本実施形態のターゲット体50が円盤形状を有し、搬送管路1内の、長手方向及び幅方向と直交する高さ方向の最大長さが、ターゲット体50の円盤形状の直径より小さくなるように構成している。ターゲットの表裏は、例えば粒子線Bの照射を受ける側の面を基準にするものであってもよいし、ターゲット導入部5への導入の際に決まる一方の面を基準にするものであってもよい。
【0027】
つまり、円盤形状のターゲット体50が搬送管路1内で搬送管路1の中心軸を回転軸にして180度回転(表裏反転)するためには、搬送管路1内の幅方向及び高さ方向の長さが円盤形状の直径以上である必要がある。本実施形態では、ターゲット体50が搬送管路1内を移動する以上、搬送管路1内の幅方向の長さはターゲット体50の直径以上である。ここで、本実施形態は、搬送管路1内の高さ方向の長さをターゲット体50の直径よりも短くすることによってターゲット体50が搬送管路1内で反転することを防ぐことができる。また、このような結果、本実施形態の搬送管路1を幅方向に切断した場合の断面は、幅方向の長さよりも高さ方向の長さが短い長方形、あるいはオーバル形状になる。
【0028】
(ターゲット保持部)
図3から図6は、ターゲット保持部3を説明するための図である。なお、図3から図6においては、ターゲット保持部3の粒子線Bの照射を受ける側を「上面」、その反対側の面を「下面」として説明する。図3はターゲット保持部3の上面図であり、図4はターゲット保持部3の下面図である。図5図3に示したターゲット保持部3の右側面図であって、図6は、図3中に示した一点鎖線でターゲット保持部3を切断し、断面を矢線VI、VIの方向に見た断面図である。
図3から図6に示すように、ターゲット保持部3は、照射フランジ30と、照射管路12とによって構成されている。図6に示すように、照射フランジ30と照射管路12とは一体的に構成されている。照射管路12は、管路部122と、継手部121とを有している。ターゲット保持部3は、照射管路12の長手方向の半ばに長手方向と直交する方向にそれぞれ半円形に張り出した部分(照射フランジ30)を有する形状の板部を二枚重ねて固定して構成されている。照射フランジ30の粒子線Bの照射を受ける側の面を上面30a、この裏面を下面30bとする。また、管路部122の上面30aに続く面を上面122c、管路部122の下面30bに続く面を下面122dとする。
【0029】
管路部122は、継手部121を嵌合するための嵌合溝122aと、嵌合溝122aと連通する照射管路部122bとを有している。照射管路部122bは、二方の端部が継手部121によりそれぞれ搬送管路部1c及び搬送管路部1bと接続されている。また、継手部121の内部は空隙121aになっている。このような構成により、搬送管路部1c、照射管路部122b及び搬送管路部1bが連通し、ターゲット体50が搬送管路部1bと照射管路部122bの間を行き来することができるようになる。
図7は、図3等に示した管路部122と搬送管路部1bとの接続について説明するための図である。図7に示すように、管路部122には照射管路部122bの外側から嵌合溝122aが嵌合されている。一方、搬送管路部1bはジョイント62の一方の端部に嵌合されていて、ジョイント62の他方の端部には継手部121が嵌合されている。照射管路12の側の継手部121とジョイント62の側の継手部121とは止水性のメタルシール61によって結合され、照射管路12と搬送管路部1bとの間の水漏れを防いでいる。
【0030】
上面30aは、円形溝33と、円形溝33の内周に形成された円形の凹部35と、凹部35の内部に形成された円形の凹部36とを有している。凹部36は、円形の凹部35と中心点が一致して、かつ凹部35よりも直径が小さい円形の凹部である。円形溝33の外周に等間隔に設けられたフランジボルト32は、上面30aと下面30bとをネジ止めしている。凹部36は、粒子線Bが照射される部分であって、ターゲット体50は、凹部36の裏面に保持される。
下面30bには凹部34が形成されている。凹部34は、開口径よりも底面の径が小さい形状を有している。
【0031】
図6に示すように、ターゲット体50は、照射管路部122bのうちの凹部36の底面と凹部34の底面とに挟まれた部分を含む一部に保持されている。本実施形態では、ターゲット体50が位置する凹部36の底面と凹部34の底面とに挟まれた部分が粒子線Bの照射位置になる。
ターゲット体50を保持する部分は、方向F1に向かって照射管路部122bが狭くなるように上面30a、下面30bそれぞれの裏面に斜面37を有している。斜面37の間に保持されたターゲット体50が当接する部分には、規制部38が形成されている。規制部38及び斜面37は、照射管路部122b内でターゲット体50を保持する留置機構の一部になっている。
斜面37を有する留置機構は、方向F1に向かって搬送されてきたターゲット体50がスムーズに挿入されて規制部38に当接する。このとき、冷却水Wが方向F1に流れ続けているから、ターゲット体50は規制部38に押しつけられて上昇が規制され、固定される。
【0032】
次に、上記留置機構について説明する。
図8図9(a)及び図9(b)は、留置機構を説明するための図である。図8は、図5中に示した一点鎖線でターゲット保持部3を切断し、切断面を矢線VIII、VIIIの方向に見た断面図である。図9(b)は、図6の部分拡大図である。図9(a)は、図9(b)中に示した一点鎖線で照射フランジ30を切断し、切断面を矢線IXb、IXbの方向に見た断面図である。
【0033】
ターゲット保持部3は、冷却水Wが流動する照射管路12と、ターゲット体50が粒子線の照射を受ける照射位置にターゲット体50を留めるための留置機構を内部に備えている。前述したように、搬送管路1はターゲット保持部3の照射管路12と連通し、留置機構は、照射管路12内にあってターゲット体50の上昇を規制する規制部38と、照射管路12の内壁の対向する二方からそれぞれ対向する側に突出する突出部39と、を備えている。留置機構は、ターゲット体50を規制部38と二つの突出部39とによって規制部38と二つの突出部39とによってターゲット体50を支持した状態でターゲット保持部3に遊挿している。本実施形態では、規制部38と二つの突出部39が留置機構を構成する。
【0034】
上記の本実施形態は、ターゲット保持部3においてターゲット体50を遊びがある状態で三方向から支持することができる。このような本実施形態は、ターゲット体50への粒子線Bの照射中にはターゲット体50を規制部38に付勢する力を加えてターゲット体50を固定しておくことができる。また、本実施形態は、粒子線Bの照射に異常が生じた場合には付勢する力をなくし、ターゲット体50を照射位置から速やかに取り外すことができる。
【0035】
また、搬送機構を構成する搬送管路1及びポンプ9は、ターゲット体50の照射位置への搬送中及び粒子線Bの照射中、留置機構に対して重力方向の下方から上方に向かって冷却水Wを流動させている。このような本実施形態は、冷却水Wの圧力によってターゲット体50を規制部38に付勢し、冷却水Wの流動を停止することによってターゲット体50を照射位置から落下させて取り外すことが可能になる。
なお、図8に示したターゲット保持部3は、斜面37が重力方向の下方から上方に向けて高くなるように配置されている。ターゲット体50がターゲット保持部3の照射位置に搬送される際、ターゲット体50は、方向F1に向けて搬送されてくる。
【0036】
上記の構成によるターゲット体50の搬送への作用をより具体的に説明する。
図8図9(a)及び図9(b)に示すように、二つの突出部39は、断面を上面30aの側から見た場合、照射管路部122bにおいて内壁からそれぞれ内側に向かって突出する矩形形状の部分である。一方、下面30bの側から見た場合には矩形形状の一部である矩形部分391と、端部がターゲット体50の周に沿う部分円形状になっている切欠部392と、を有している。切欠部392の上面は、斜面37になっている。
規制部38は、ターゲット体50が斜面37の部分円形状の部分に当接した場合に二つの斜面37の間でターゲット体50に当接する。ターゲット体50は、二つの突出部39と規制部38との三点で支持される。そして、照射管路部122b内において冷却水Wが方向F1の向きに流動するので、ターゲット体50は上方に向かう力を受けながら、上方への移動を規制部38により規制される。上方に向かう力と規制部38の規制力とによってターゲット体50が照射位置に固定される。
【0037】
このようなターゲット保持部3によれば、照射の終了後、ターゲット体50は重力により下方に落下する。このため、ターゲット体50の回収時には保持が解消する。そして、冷却水Wの流れ方向を切り換えて方向F2に流したとき、ターゲット体50は冷却水Wに浸漬されながら方向F2に搬送される。
また、このような構成によれば、何らかのトラブルで冷却水Wの流動が停止した場合にもターゲット体50の保持を速やかに解消し、ターゲット体50を照射位置から外すことができる。このため、本実施形態は、冷却水Wが流れていないときターゲット体50に粒子線Bが照射されて大量の熱が発生して搬送管路1が溶けて損なわれることを防ぐことができる。
【0038】
図10は、粒子線Bの照射中のターゲット体50の位置について説明するための図である。なお、図10では、ターゲット体50の位置を明確に示すため、突出部39の図示を略している。
粒子線Bは、凹部36の底面に照射される。照射管路部122b内は冷却水Wに満たされていて、照射された粒子線Bは凹部36の底面と照射管路部122bとの間のターゲット保持部3の材料を通ってターゲット体50の上面に照射される。照射された粒子線Bは、ターゲット体50の凹部34の側にある冷却水W内で停止する。なお、ターゲット保持部3の材料には複数の金属が候補になり得るが、例えば、アルミニウム、ステンレス、チタン、ニオブ、タンタルとすることができる。
【0039】
上記の粒子線Bの照射に好適な条件として、本実施形態では、照射管路部122bにおける粒子線Bの照射方向のターゲット体50の位置を、以下のように設定した。
すなわち、図10中に示す厚さt1は、ターゲット体50の粒子線Bの照射を受ける側の上面と、上面に対向する照射管路部122bの面との距離である。厚さt2は、ターゲット体50の上面に対する下面と、下面に対向する照射管路部122bの面との距離である。照射管路部122b内は、冷却水Wによって満たされており、ターゲット体50の上面、下面には、それぞれ厚さt1、厚さt2の冷却水Wの層が形成されていることになる。また、厚さt3はターゲット保持部3の凹部36の底面から照射管路部122bまでの材料(例えばアルミニウム)の厚さであり、厚さt4は照射管路部122bから凹部34の底面までの材料の厚さである。厚さt1、t2、t3、t4は、粒子のエネルギー及び種類に依存して相違する。なお、本実施形態のターゲット体50は、円盤形状を有するものとする。
【0040】
また、上記条件によれば、ターゲット体50が無い状態で粒子線Bを照射する誤作動(空射ち)が起こった場合、凹部34の側のターゲット保持部3に熱が発生する。本実施形態は、凹部34の側に熱電対等の温度センサを設けて凹部34の側の温度を観測することにより、粒子線Bの空射ちを検出して早期に対応することが可能になる。
【0041】
(ターゲット搬送方法)
以上説明したターゲット搬送システム100は、核種を生成するための材料を少なくとも含むターゲット体50が搬送される搬送管路1内にターゲット体50を導入する導入工程と、導入されたターゲット体50を加速器10から出力される粒子線の照射を受けるターゲット保持部3まで搬送管路1内を流動すると共にターゲット体を冷却する流体によって搬送する搬送工程と、ターゲット保持部3におけるターゲット体50に対する粒子線の照射中にはターゲット体50の搬送方向に流体を流動させる流動工程と、ターゲット保持部3におけるターゲット体50に対する粒子線の照射終了後、ターゲット体50を搬送管路1から流体によって回収する回収工程と、を含んでいる。
【0042】
つまり、本実施形態のターゲット搬送システムは、作業者がマニピュレータを使った遠隔操作によりターゲット体50をターゲット導入部5にセットする。そして、バルブ4a、4b、4c、4d等を切り換えた後にポンプ9を起動して冷却水Wを搬送管路1の内部で流動させる。このような操作により、ターゲット導入部5内のターゲット体50がターゲット保持部3の照射位置まで搬送される。ターゲット体50が照射位置に達した後、粒子線Bがターゲット体50に対して予め設定されている時間だけ照射される。
粒子線Bの照射終了後、作業者は、ポンプ9による冷却水Wの流れ方向を反転すると共に、バルブ4a、4b、4c、4d等を切り換える。このような操作により、ターゲット体50を規制部38に押し付ける方向の力が消失する。ターゲット体50は、突出部39から外れ、冷却水Wの中をターゲット導入部5に向かって搬送される。作業者は、ターゲット導入部5に達したターゲット体50を、マニピュレータを使って取り出すことによってターゲット体50を回収する。
【0043】
以上説明した本実施形態は、搬送管路1内を流動する冷却水Wにより、ターゲット体50をターゲット保持部3まで搬送するから、ターゲット搬送システムに必須の冷却機構を利用してターゲット体50を搬送することができる。このため、冷却水Wを循環させる機構とターゲット体50を搬送する機構を共用し、ターゲット搬送システム100の構成を小型化、簡易化することに有利である。また、冷却水Wを流動させる機構は、ターゲット保持部3の近くに機械的、電子的に駆動する構成を設けずに実現することができるので、放射線による電子部品の故障や部材の劣化等、放射線の悪影響による装置故障を避けることができる。このような本実施形態は、加速器を使ったRIの製造において、構成の簡易化及び小型化に有利であって、しかも構成部品が放射線による損傷等の影響を受け難いターゲット搬送システム、ターゲット体及びターゲット体搬送方法を実現することができる。
また、ターゲット保持部におけるターゲット体に対する粒子線の照射中にはターゲット体の搬送方向に流体を流動させ続けるため、粒子線の照射開始と同時に粒子線の照射中にターゲット体50を冷却し続けることができる。
【0044】
ただし、本実施形態は、ターゲット体50を冷却または搬送することに冷却水Wを使用することに限定されるものではない。例えばヘリウムガスや等の気体を流体に使用するものであってもよい。さらに、本実施形態は、水以外の液体として、液体金属(ナトリウム、水銀等)を使用することも考えられる。
また、本実施形態は、ターゲット体50をターゲット保持部3に向けて搬送する場合とターゲット導入部5に向けて搬送する場合とで冷却水の流れ方向を反対にする構成に限定されるものではない。本実施形態は、粒子線Bの照射の前後で同じ方向に冷却水Wを流動させてターゲット体50をターゲット保持部3またはターゲット導入部5に搬送するものであってもよい。なお、このような構成は、規制部38や突出部39の構成及び搬送管路1の配置を適宜変更することによって実現することができる。
【0045】
冷却水Wの流れ方向を変更しない場合、例えば、ターゲット体50の保持部が弾性的にターゲット体50を保持するように構成することが考えられる。このような場合、ポンプ9は、ターゲット体50をターゲット保持部3に搬送するときよりもターゲット導入部5に搬送するときに回転速度を高め、ターゲット体50にかかる圧力を高めるものであってもよい。このようにした場合、ターゲット体50は、粒子線Bの照射時には保持部に保持され、照射終了後には保持部から外れて照射前の搬送方向と同じ方向に搬送されるようになる。なお、このような動作を行う場合、ポンプ9として回転速度の変更範囲が広範囲なものを用いることが好ましい。
【0046】
上記実施形態および変形例は以下の技術思想を包含するものである。
(1)核種を生成するための材料体を少なくとも含むターゲット体が搬送される搬送管路と、前記ターゲット体を保持し、加速器から出力される粒子線を前記ターゲット体に照射させるターゲット保持部と、前記搬送管路内を搬送方向に流動すると共に前記ターゲット体を冷却する流体により、前記ターゲット体を前記ターゲット保持部まで搬送する搬送機構と、を含み、前記搬送機構は、前記ターゲット保持部における前記粒子線の照射中には前記搬送管路内で前記流体を前記搬送方向に流動させ、前記粒子線の照射終了後には前記ターゲット体を前記搬送管路から前記流体によって回収する、ターゲット搬送システム。(2)前記搬送機構による前記ターゲット体の搬送に使用される前記流体を冷却する冷却機構をさらに備える、(1)のターゲット搬送システム。
(3)前記搬送機構は、前記ターゲット体の回収時に前記搬送方向と反対の方向に前記流体を流動させる、(1)または(2)のターゲット搬送システム。
(4)前記ターゲット保持部は、前記流体が流動する照射管路と、前記ターゲット体が前記粒子線の照射を受ける照射位置に前記ターゲット体を留めるための留置機構とを内部に備え、前記搬送管路が前記照射管路と連通し、前記留置機構は、前記照射管路内にあって前記ターゲット体の上昇を規制する規制部と、前記照射管路の内壁の対向する二方からそれぞれ対向する側に突出する突出部と、を備え、前記規制部と二つの前記突出部とによって前記ターゲット体を支持した状態で前記ターゲット保持部に遊挿する、(1)から(3)のいずれか一つのターゲット搬送システム。
(5)前記搬送機構は、前記ターゲット体の前記照射位置への搬送中及び前記粒子線の照射中、前記留置機構に対して重力方向の下方から上方に向かって前記流体を流動させる、(4)のターゲット搬送システム。
(6)前記ターゲット体が円盤形状を有し、前記搬送管路内の、長手方向及び幅方向と直交する高さ方向の最大長さは、前記円盤形状の直径より小さい、(1)から(5)のいずれか一つのターゲット搬送システム。
(7)(1)から(6)のいずれか一つのターゲット搬送システムで使用されるターゲット体であって、粒子線の照射方向に向かう第一板部と、前記第一板部と平行な第二板部と、前記第一板部と前記第二板部との間に遊挿される材料体と、を含み、前記第一板部と前記材料体との間隔は、前記第二板部と前記材料体との間隔よりも広い、ターゲット体。
(8)核種を生成するための材料体を少なくとも含むターゲット体が搬送される管路内に前記ターゲット体を導入する導入工程と、導入された前記ターゲット体を、当該ターゲット体が加速器から出力される粒子線の照射を受けるターゲット保持部まで前記管路内を流動する流体によって搬送する搬送工程と、前記ターゲット保持部における前記ターゲット体に対する前記粒子線の照射中には前記ターゲット体の搬送方向に前記流体を流動させる流動工程と、前記ターゲット保持部における前記ターゲット体に対する前記粒子線の照射終了後、前記ターゲット体を前記管路から前記流体によって回収する回収工程と、を含む、ターゲット搬送方法。
(9)核種を生成するための材料を少なくとも含み、粒子線が照射されるターゲット体であって、前記粒子線の照射方向に向かう第一板部と、前記第一板部と平行な第二板部と、前記第一板部と前記第二板部との間に遊挿される材料体と、を含み、前記第一板部と前記材料体との間隔は、前記第二板部と前記材料体との間隔よりも長い、ターゲット体。
【0047】
この出願は、2018年9月25日に出願された日本出願特願2018-179260号を基礎とする優先権を主張し、その開示の総てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0048】
1・・・搬送管路
1a-1k・・・搬送管路部
1ff、1aa・・・端部
1g・・・搬送管路部
3・・・ターゲット保持部
4a-4f・・・バルブ
5・・・ターゲット導入部
6・・・タンク
7・・・流量計
9・・・ポンプ
10・・・加速器
12・・・照射管路
17・・・搬送機構
30・・・照射フランジ
30a、122c・・・上面
30b、122d・・・下面
32・・・フランジボルト
33・・・円形溝
34、35、36・・・凹部
37・・・斜面
38・・・規制部
39・・・突出部
50・・・ターゲット体
60・・・熱交換器
81、82・・・圧力計
100・・・ターゲット搬送システム
121・・・継手部
121a・・・空隙
122・・・管路部
122a・・・嵌合溝
122b・・・照射管路部
391・・・矩形部分
392・・・切欠部
B・・・粒子線
F1、F2・・・方向
G・・・地下ピット
H・・・照射室
S・・・遮蔽部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10