(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶、その製造方法及びそれを用いたマイクロエマルション
(51)【国際特許分類】
C07C 401/00 20060101AFI20220513BHJP
A23K 20/174 20160101ALI20220513BHJP
A61K 31/593 20060101ALN20220513BHJP
A61K 9/107 20060101ALN20220513BHJP
A61P 3/02 20060101ALN20220513BHJP
【FI】
C07C401/00
A23K20/174
A61K31/593
A61K9/107
A61P3/02 102
(21)【出願番号】P 2020564987
(86)(22)【出願日】2018-08-07
(86)【国際出願番号】 CN2018099257
(87)【国際公開番号】W WO2019153673
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2020-08-26
(31)【優先権主張番号】201810120581.0
(32)【優先日】2018-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520297218
【氏名又は名称】シャントン ハイネン バイオエンジニアリング カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG HAINENG BIOENGINEERING CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Liaocheng Road and HuiYang Road, Donggang District, Rizhao, Shandong, China
(73)【特許権者】
【識別番号】520297229
【氏名又は名称】シャントン ハイネン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG HAINENG PHARMACEUTICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Liaocheng Road and HuiYang Road, Donggang District, Rizhao, Shandong, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タン フェイ
(72)【発明者】
【氏名】カオ ジンダン
(72)【発明者】
【氏名】リ シン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ルオ ハオ
(72)【発明者】
【氏名】リ チャンチャン
(72)【発明者】
【氏名】カオ シ
(72)【発明者】
【氏名】シュウ リャン
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-504369(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107296152(CN,A)
【文献】特表2005-519894(JP,A)
【文献】特表2011-529081(JP,A)
【文献】Trinh-Toan et al.,Journal of The Chemical Society,1977年,No.4,p.393-401
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶であって、そのX線粉末回折パターンは、下記表:
【表1】
に示すピークを含むことを特徴とする25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶。
【請求項2】
25-ヒドロキシコレカルシフェロールを有機溶媒に加え、加熱して還流させ、前記25-ヒドロキシコレカルシフェロールを溶解させて、25-ヒドロキシコレカルシフェロール溶液を得るステップ1)と、
前記25-ヒドロキシコレカルシフェロール溶液に水を加えて固体を析出させて、前記25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶を得るステップ2)と、
を含むことを特徴とする
請求項1に記載の25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶の製造方法。
【請求項3】
前記有機溶媒はエーテル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及び塩素化炭化水素系溶媒から選ばれる1種又は複数種であることを特徴とする
請求項2に記載の25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶の製造方法。
【請求項4】
前記ステップ2)は、攪拌しながら、前記25-ヒドロキシコレカルシフェロール溶液に固体が析出するまで水を加え、引き続き攪拌して室温に冷却し、濾過してケークを取得し、前記ケークをその水分含有量が20wt%未満になるまで乾燥させて、前記25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶を得ることを含むことを特徴とする
請求項2または3に記載の25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶の製造方法。
【請求項5】
前記25-ヒドロキシコレカルシフェロールと水の反応モル比は1:(0.6~2000)であることを特徴とする請求項3に記載の25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶の製造方法。
【請求項6】
前記25-ヒドロキシコレカルシフェロールと水の反応モル比は1:(0.8~1.5)であることを特徴とする請求項5に記載の25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶を含むことを特徴とするマイクロエマルション。
【請求項8】
重量パーセント含有量基準で、
請求項1に記載の25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶0.05~1.25%、ポリソルベート60 10~15%、ステアロイル乳酸ナトリウム6~12%、スパン80 3~5%、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール1~2.5%、ソルビン酸0.2~1%、プロピレングリコール4~7%、水56.25~75.75%を成分として含むことを特徴とする
請求項7に記載のマイクロエマルション。
【請求項9】
重量パーセント含有量基準で、
請求項1に記載の25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶0.125%、ポリソルベート60 12%、ステアロイル乳酸ナトリウム8%、スパン80 4%、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール2.5%、ソルビン酸1%、プロピレングリコール7%、水65.375%を成分として含むことを特徴とする
請求項8に記載のマイクロエマルション。
【請求項10】
ナノマイクロエマルションであることを特徴とする
請求項7~9のいずれか1項に記載のマイクロエマルション。
【請求項11】
平均粒子径は84~91nmであり、封入率は85~89%であることを特徴とする
請求項10に記載のマイクロエマルション。
【請求項12】
重量パーセント含有量基準で、0.05~1.25%の
請求項1に記載の25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶、10~15%のポリソルベート60、6~12%のステアロイル乳酸ナトリウム、3~5%のスパン80、1~2.5%の2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを混合して、45~55℃に加熱して完全に溶解させ、ボルテックスシェーカーを用いて振盪して均一にして、第1反応液を生成するステップ1)と、
25±5℃で、重量パーセント含有量基準で4~7%のプロピレングリコールと0.2~1%のソルビン酸を56.25~75.75%の水に溶解し攪拌して均一にして、第2反応液を生成するステップ2)と、
前記第1反応液と前記第2反応液を混合して、ボルテックスシェーカーを用いて振盪し均一にして、前記マイクロエマルションを得るステップ3)と、を含むことを特徴とす
る請求項7~11のいずれか1項に記載のマイクロエマルションの製造方法。
【請求項13】
請求項7~11のいずれか1項に記載のマイクロエマルションの飼料添加剤としての使用。
【請求項14】
請求項7~11のいずれか1項に記載のマイクロエマルションを含むことを特徴とする飼料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶に関し、特に、優れた安定性を有する25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶、その製造方法及びそれを用いたマイクロエマルションに関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンD3には生理作用がない(H.F.De Luca et al.,1971)。H3でビタミンD3を標識して研究したところ、消化管で吸収されたビタミンD3は肝臓の中で25-炭素原子のヒドロキシル化により、25-ヒドロキシコレカルシフェロールが生成され、後者は腎臓ミトコンドリアの中で1,25-ジヒドロキシD3に変換されて小腸の粘膜と腎臓に送られ、カルシウム、リンの2種のミネラルの吸収と再吸収を促すとともに、動物体の代謝に必要な他の機能が生じる。関連の研究によると、25-ヒドロキシコレカルシフェロールはエステル可溶性ビタミンと吸収原理が異なり、その利用効率がより高い。
【0003】
25-ヒドロキシコレカルシフェロールは、25-ヒドロキシビタミンD3とも呼ばれ、生体内におけるビタミンD3の生理活性を有する形態であり、その構造式は式1に示すとおりである。
【0004】
【0005】
25-ヒドロキシコレカルシフェロールを得る方法は多くある。例えば、US4310467では25-ヒドロキシコレカルシフェロールの分離精製方法が報告され、CN10344301Bでは光化学反応による25-ヒドロキシコレカルシフェロールの製造方法が報告され、CN103898004Aでは発酵による25-ヒドロキシコレカルシフェロールの製造方法が報告され、US3565924では25-ヒドロキシコレカルシフェロールの生産方法が報告される。また関連の研究では、25-ヒドロキシコレカルシフェロールは飼料で有効成分として利用できることが報告される。しかしながら、25-ヒドロキシコレカルシフェロールの安定性試験より分かるように、25-ヒドロキシコレカルシフェロールの安定性が悪く、含有量が99.23%の25-ヒドロキシコレカルシフェロールを25℃で1か月間静置した後、25-ヒドロキシコレカルシフェロールの含有量は65.03%に低下した。したがって、関連の製剤の生産、保管及び使用を容易にし、その生物学的効果を利用するために、どのようにして25-ヒドロキシコレカルシフェロールの安定性を高めることができるかは、本分野で早急に解決すべき課題になる。
【0006】
しかしながら、これまでに25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物に関する報告が見られず、遊離の25-ヒドロキシコレカルシフェロールを原料とする25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物の製造方法を記載する文献もない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされるもので、25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶、その製造方法及びそれを用いたマイクロエマルションが提供される。25-ヒドロキシコレカルシフェロールの安定性を効果的に高めることができ、関連の製剤の生産、保管により有利で、25-ヒドロキシコレカルシフェロールの生物学的特性を効果的に利用することに一層役立つ。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶が提供される。前記25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶のX線粉末回折パターンは、下記表に示すピークを含む。
【0009】
【0010】
なお、一般的には、X線粉末回折により結晶の測定を行う場合は、測定装置、測定条件等が異なるため、パターンのピークには小さな誤差が出る可能性があり、このため、本発明の結晶
のパターンは上記のピーク以外にも他のピークを含んでもよい。ここで、本発明で測定条件は、Cu Kα線で、管電圧が40kV、管電流40mAである。
図1は本発明の実施例で製造された25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物のXRPDパターンである。
図1でX線回折計(Bruker D8 advance)の動作パラメータは次のとおりである。
Cu Kα線で、線管電圧は40kVであり、管電流は40mAであり、スキャン方式は固定カップリングであり、ステップ幅は0.02°であり、スキャン範囲は3°~40°であり、スキャン速度は1s/ステップである。
【0011】
安定性試験を行ったところ、25℃の開放状態で本発明の25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶を6か月間静置した後、25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶における25-ヒドロキシコレカルシフェロールの質量含有量は96.59%であることから、本発明の25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶は性質が安定しており、25-ヒドロキシコレカルシフェロールの安定性が効果的に改善されることができることが示される。
【0012】
さらに、本発明に係る25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶は、25-ヒドロキシコレカルシフェロール溶液が水と反応して得られる。前記25-ヒドロキシコレカルシフェロール溶液は25-ヒドロキシコレカルシフェロールを有機溶媒に溶解して得られる。
【0013】
当該25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶は25-ヒドロキシコレカルシフェロール溶液が水和反応によって得られた生成物である。前記25-ヒドロキシコレカルシフェロール溶液は25-ヒドロキシコレカルシフェロールを有機溶媒に溶解して得られる。本発明において、原料25-ヒドロキシコレカルシフェロールの由来は限定されず、市販されるものであってもよいし、事前に調製したものであってもよい。
【0014】
25-ヒドロキシコレカルシフェロール溶液を調製するために用いる上記の有機溶媒はエーテル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及び塩素化炭化水素系溶媒から選ばれる1種又は複数種であってよい。なお、エーテル系溶媒はテトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランを含むが、これらに限定されるものではなく、アルコール系溶媒はメタノール、エタノール、イソプロパノールを含むが、これらに限定されるものではなく、ケトン系溶媒はアセトン、メチルエチルケトンを含むが、これらに限定されるものではなく、塩素化炭化水素系溶媒はジクロロメタン、クロロホルム等を含むが、これらに限定されるものではない。本発明において、当該有機溶媒が上記の溶媒からなる混合溶媒である場合には、各種の溶媒の比率は限定されるものではない。また、25-ヒドロキシコレカルシフェロール溶液を調製する時は、25-ヒドロキシコレカルシフェロールと有機溶媒の質量体積比は1g:100mlであり、好ましくは1g:5~40mlであり、より好ましくは1g:5~20mlである。
【0015】
25-ヒドロキシコレカルシフェロール溶液が水と反応することで25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶を製造することについては、本発明で25-ヒドロキシコレカルシフェロールと水の反応モル比が限定されるものではなく、1:(0.6~2000)であってよく、好ましくは1:(0.8~1.5)であり、より好ましくは1:(1~1.2)である。25-ヒドロキシコレカルシフェロールのモル量が水のモル量より大きい場合に、25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶の収率は非常に低い。25-ヒドロキシコレカルシフェロールのモル量が水のモル量より小さい場合に、25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶の収率は明らかに上がる。なお、25-ヒドロキシコレカルシフェロールには水と結合する部位が1か所だけなので、25-ヒドロキシコレカルシフェロールのモル量が水のモル量より小さい場合にも、生成物は25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶で変わらず、25-ヒドロキシコレカルシフェロールの多水和物にはならない。
【0016】
本発明によれば、さらに、上記の任意の25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶の製造方法が提供される。次のステップを含む。
1)25-ヒドロキシコレカルシフェロールを有機溶媒に加え、加熱して還流させ、前記25-ヒドロキシコレカルシフェロールが溶解すると、25-ヒドロキシコレカルシフェロール溶液を得る。
2)前記25-ヒドロキシコレカルシフェロール溶液に水を加えて固体が析出すると、前記25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶を得る。
【0017】
具体的には、25-ヒドロキシコレカルシフェロールを有機溶媒に加えた後、反応系を加熱して、有機溶媒が還流して25-ヒドロキシコレカルシフェロールが溶解する。当該有機溶媒は上記のエーテル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及び塩素化炭化水素系溶媒から選ばれる1種又は複数種であってよい。25-ヒドロキシコレカルシフェロールが溶解した後、加熱を停止した状態で引き続き攪拌し、25-ヒドロキシコレカルシフェロール溶液に白色の固体が析出するまで徐々に水を加え、水を加えるのが終わり、且つ反応系の温度が室温に下がると、引き続き2~5時間攪拌する。
【0018】
攪拌が完了した後、反応系に対し固液分離を行い、具体的には遠心分離又は濾過の方法でケークを集め、ケークを乾燥させてもよい。結晶水が25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶から離脱するのを避けるために、乾燥温度を100℃以下に設定してよく、好ましくは20~90℃であり、より好ましくは30~80℃である。乾燥の方式は常圧乾燥であってよく、乾燥温度が低い場合には乾燥効果をよくするために減圧乾燥を行ってもよい。本発明において、乾燥される程度に関しては特に限定されるものではなく、一般に水分は20wt%未満とし、好ましくは水分は10wt%未満とし、より好ましくは水分は5wt%未満とする。
【0019】
本発明に係る25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶の製造方法はシンプルで、操作しやすい。当該方法で製造した25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶は安定性が高く、安定性試験を行ったところ、25℃の開放状態で、本発明の製造方法で製造した25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶を6か月間静置した後、25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶における25-ヒドロキシコレカルシフェロールの質量含有量は96.59%である。
【0020】
本発明によれば、さらに、マイクロエマルションが提供される。当該マイクロエマルションは上記の任意の25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶を含む。25-ヒドロキシコレカルシフェロールはメタノール、エタノール、ジメチルスルホキシドに易溶であり、ジエチルエーテルに微溶であり、水には実質的に不溶であるため、25-ヒドロキシコレカルシフェロールを含むマイクロエマルションの水中の溶解度は非常に低く、このため、体内で効果的に吸収されるためにその溶解性を改善する必要がある。したがって、本発明において、安定性が高く水溶性に優れている25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶を含むマイクロエマルションが提供される。
【0021】
さらに、重量パーセント含有量基準で、マイクロエマルションは成分として、上記の任意の25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶0.05~1.25%、ポリソルベート60 10~15%、ステアロイル乳酸ナトリウム6~12%、スパン80 3~5%、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール1~2.5%、ソルビン酸0.2~1%、プロピレングリコール4~7%、水56.25~75.75%を含む。
【0022】
さらに、重量パーセント含有量基準で、マイクロエマルションは成分として、上記の任意の25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶0.125%、ポリソルベート60 12%、ステアロイル乳酸ナトリウム8%、スパン80 4%、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール2.5%、ソルビン酸1%、プロピレングリコール7%、水65.375%を含む。
【0023】
本発明に係るマイクロエマルションはナノオーダーのものであり得る。具体的には、その平均粒子径は84~91nmであり、封入率は85~89%であり得る。封入率とは、リポソーム懸濁液における被封入物質(例えば、特定の遊離薬物)の薬物総量に占めるパーセンテージである。それはリポソーム及びナノ粒子の品質管理における一つの重要な指標であり、薬物が担体によって封入される度合いを反映している。封入率にはパーセント封入率と被覆容積の測定が含まれる。一般に封入率(EN%)の計算式は次の数式1に示すとおりである。
EN%=(1-Cf/Ct)×100%
式1中、Cfは被封入物質(遊離薬物)の量であり、Ctはナノ粒子、又はリポソーム懸濁液における薬物の総量である。
【0024】
本発明によれば、さらに、上記の任意のマイクロエマルションの製造方法が提供される。次のステップを含む。
1)重量パーセント含有量基準で、0.05~1.25%の上記の任意の25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶、10~15%のポリソルベート60、6~12%のステアロイル乳酸ナトリウム、3~5%のスパン80、1~2.5%の2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを混合して、45~55℃に加熱して完全に溶解させ、ボルテックスシェーカーを用いて振盪して均一になると、第1反応液を生成する。
2)室温において、重量パーセント含有量基準で、4~7%のプロピレングリコールと0.2~1%のソルビン酸を56.25~75.75%の水に溶解し攪拌して均一になると、第2反応液を生成する。
3)前記第1反応液と前記第2反応液を混合して、ボルテックスシェーカーを用いて振盪し均一になると、前記マイクロエマルションを得る。
【0025】
一般には、ボルテックスシェーカーで10~15分間振盪すれば、各成分が均一に混合されることを確保することができる。
【0026】
本発明によれば、さらに、飼料添加剤における上記の任意のマイクロエマルションの用途が提供される。当該マイクロエマルションを飼料添加剤として用いる場合に、家畜と家禽の体内におけるビタミンD3の代謝時間が短縮され、カルシウム・リン元素の吸収と再吸収が促されることができ、我が国で25-ヒドロキシコレカルシフェロールは飼料添加剤として利用されていないという現状を変える。
【0027】
本発明によれば、さらに、上記の任意のマイクロエマルションを含む飼料が提供される。当該飼料は家畜と家禽の体内におけるカルシウム・リン元素の吸収を効果的に促すことができ、家畜と家禽の健やかな成長に役立つものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明の実施により、少なくとも以下の利点が得られる。
1.本発明の25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶は25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物の新たな結晶形である。
【0029】
2.本発明の25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶は安定性に優れており、25-ヒドロキシコレカルシフェロールの安定性がある程度改善されており、関連の製剤の生産、保管及び使用に役立つものであり、優れる包括的な使いやすさを有しており、幅広い利用が見込まれる。
【0030】
3.本発明に係る25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶の製造方法は操作しやすく、コントロールも容易であり、反応条件が温和で、プロセスは安定的であり、再現性に優れており、製品の品質が安定しているため、25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶の産業的な大量生産に適する。
【0031】
4.本発明に係るマイクロエマルションは安定性に優れている25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶を含み、水溶性に優れており、適用範囲が広い。
【0032】
5.本発明は革新的に25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶を含むマイクロエマルションを飼料生産分野に利用し、これにより家畜と家禽の体内におけるカルシウム・リン元素の吸収を促すことができ、家畜と家禽の健やかな成長に役立つものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本発明の実施例で製造された25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶のXRPDパターンである。
【
図2】
図2は、本発明の実施例で製造された25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶の原子構造図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例2で製造されたマイクロエマルションと対照例のマイクロエマルションの安定性試験の曲線図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例3で製造されたマイクロエマルションと対照例のマイクロエマルションの安定性試験の曲線図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例4で製造されたマイクロエマルションと対照例のマイクロエマルションの安定性試験の曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、本発明の目的、技術的解決手段及び利点を一層明瞭なものにすべく、本発明の図面と実施例を用いて、本発明の実施例に係る技術的解決手段を分かりやすく完全に説明する。言うまでもないが、説明される実施例は本発明の実施例の一部に過ぎず、全ての実施例ではない。当業者が本発明の実施例に基づいて進歩性のある作業をすることなく他の実施例を得る場合は、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。
【0035】
(実施例1)
25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶の製造:
製造方法は具体的に次のステップを含む。
25-ヒドロキシコレカルシフェロール1kgをアセトン200mLに加え、攪拌しながら加熱して還流させ、25-ヒドロキシコレカルシフェロールが完全に溶解したら、徐々に水200mLを滴加し、白色の固体が析出したら、加熱を停止して引き続き3時間攪拌し、常圧で濾過してケークを集め、ケークを60℃で10時間乾燥させることにより、25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶を得る。発明者は当該実施例で製造された25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶に対して次の測定を行った。
【0036】
1.カールフィッシャー滴定法で測定して、本実施例で製造された25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶で水分は4.5%である。
2.X線回折計Bruker D8 Advanceを利用して、本実施例の25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶に対して通常のX線粉末回折(XRPD)を行う。測定条件は、Cu Kα線で、管電圧40kV、管電流40mAである。
図1は、本発明の実施例で製造された25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶のXRPDパターンで、表1は本発明の実施例で製造された25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶のXRPDパターンに関連するデータである。
【0037】
【0038】
図1と表1では、本発明の実施例で製造された25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶の組成が検証され、25-ヒドロキシコレカルシフェロールの結晶形を特定するデータが記載されている。
【0039】
3.また、本発明の実施例で製造された25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶の原子構造分析も行われており、結果を
図2に示す。
図2は、本発明の実施例で製造された25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶の原子構造図である。
図2から分かるように、本発明の実施例で製造された25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶において、3-ヒドロキシ基に接続された6員環はいす形配座で、しかも3-ヒドロキシ基と6員環をつなげた結合はエクアトリアル結合である。
【0040】
4.元素分析装置を利用して本実施例で製造された25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶に対して元素分析を行う。C元素の含有量は77.22%で、水素元素の含有量は11.10%である。25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶の分子式から算出されたC元素の含有量は77.46%で、水素元素の含有量は11.08%である。
【0041】
したがって、元素分析の結果から、本実施例で得た生成物は25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶であることが示される。
【0042】
5.本実施例で製造された25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶に対し、それぞれ水素核NMR、炭素核NMR、エレクトロスプレー質量分析を行う。結果データは以下のとおりである。
1H NMR(CDCl3)δ:6.22(d,J=11.3Hz,1H,6-CH),6.05(d,J=11.2Hz,1H,7-CH),5.08(s,1H,19-CH),4.81(d,J=1.6Hz,1H,19-CH),3.96(m,1H,3-CH),2.80-2.85(m,1H),2.55-2.58(m,1H),2.39-2.43(m,1H),2.29(dd,J=7.6,13.0Hz,1H),2.15-2.23(m,1H),1.22-2.02(m,22H),1.23(s,6H),0.94(d,J=6.4Hz,3H,21-CH3),0.55(s,3H,18-CH3)。
13C NMR(CDCl3)δ:144.95,142.39,134.99,122.40,117.40,112.51,71.18,69.15,56.33,56.23,45.81,45.78,44.30,40.40,36.28,36.09,35.05,31.88,29.31,29.14,28.95,27.66,23.52,22.19,20.71,18.76,11.96。
ESI-MS(m/z):423.37[M+Na]+,823.78[2M+Na]+。
【0043】
6.安定性試験
25℃の開放状態で、本実施例で製造された25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶を静置し、1か月、3か月、6か月後にそれぞれ25-ヒドロキシコレカルシフェロールの含有量を測定し、25-ヒドロキシコレカルシフェロールを対照例として、結果を表2に示す。
【0044】
25-ヒドロキシコレカルシフェロールの含有量の検出方法は以下のとおりである。サンプルを採取して約10μg/mLの溶液を調製し、20μLを使用してHPLCにより分析し、外部標準法により含有量を算出する。
【0045】
HPLC検出の条件は以下のとおりである。
クロマトグラフィーカラムにC18カラムを使用し、内径は4.6mmであり、長さは150mmであり、粒度は5μmである。
検出波長は265nmである。
カラム温度は30℃である。
流速は1.5mL/minである(理想的な保持時間及び25-ヒドロキシコレカルシフェロールと25-ヒドロキシコレカルシフェロール前駆体の分離度を得るように、調整することができる)。
サンプル量は20μLである。
記録時間はメインピーク保持時間の2倍である。
【0046】
【0047】
表2から分かるように、本実施例で製造された25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶は安定性に優れており、25℃の開放状態で6か月間静置した後、25-ヒドロキシコレカルシフェロールはほぼ損失されていない。
【0048】
(実施例2)
25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物マイクロエマルションの製造:
製造方法は具体的に次のステップを含む。
1)原料用意
実施例1で製造された25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶0.055kg、ポリソルベート60 10kg、ステアロイル乳酸ナトリウム10kg、スパン80 5kg、BHT 1kg、プロピレングリコール4kg、ソルビン酸0.2kg、水69.75kg。
【0049】
2)第1反応液の調製
25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶をポリソルベート60、ステアロイル乳酸ナトリウム、スパン80、BHTと混合し、50℃に加熱して完全に溶解させて、ボルテックスシェーカーで10分間ボルテックス振盪して、第1反応液を生成する。
【0050】
3)第2反応液の調製
室温において、プロピレングリコールとソルビン酸を水に溶解し、均一に攪拌して、第2反応液を生成する。
【0051】
4)混合
第1反応液と第2反応液を混合し、ボルテックスシェーカーで10分間ボルテックス振盪して、25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物マイクロエマルションを得る。当該マイクロエマルションにおける25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物の質量パーセント含有量は0.055%である。
【0052】
検出した結果、当該実施例で製造された25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物マイクロエマルションは粒径が84nmであり、封入率が89%である。
【0053】
25℃で、本実施例で製造されたマイクロエマルションを密封して保存し、1か月、2か月、3か月、6か月後に、
25-ヒドロキシコレカルシフェロールの含有量を測定し、実施例と同じ手順で無水25-ヒドロキシコレカルシフェロールから調製されたマイクロエマルションを対照例として、結果を
図3に詳細に示す。
図3は本発明の実施例2で製造されたマイクロエマルションと対照例のマイクロエマルションの安定性試験の曲線図である。
図3に示す結果から、本実施例で製造されたマイクロエマルションは従来の技術で製造されたマイクロエマルションよりも明らかに安定性が優れることが示されている。
【0054】
25-ヒドロキシコレカルシフェロールの含有量の検出方法は以下のとおりである。安定性試験の最終日に、サンプルを採取して約10μg/mL溶液を調製し、20μLを使用してHPLCにより分析し、外部標準法により含有量を算出する。
【0055】
HPLC検出の条件は以下のとおりである。
クロマトグラフィーカラムにC18カラムを使用し、内径は4.6mmであり、長さは150mmであり、粒度は5μmである。
検出波長は265nmである。
カラム温度は30℃である。
流速は1.5mL/minである(理想的な保持時間及び25-ヒドロキシコレカルシフェロールと25-ヒドロキシコレカルシフェロール前駆体の分離度を得るように、調整することができる)。
サンプル量は20μLである。
記録時間はメインピーク保持時間の2倍である。
【0056】
(実施例3)
25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物マイクロエマルションの製造:
製造方法は具体的に次のステップを含む。
1)原料用意
実施例1で製造された25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶0.135kg(有効質量は0.125kg)、ポリソルベート60 12kg、ステアロイル乳酸ナトリウム8kg、スパン80 4kg、BHT 2.5kg、プロピレングリコール7kg、ソルビン酸1kg、水65.375kg。
【0057】
2)第1反応液の調製
25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶をポリソルベート60、ステアロイル乳酸ナトリウム、スパン80、BHTと混合し、45℃に加熱して完全に溶解させて、ボルテックスシェーカーで15分間ボルテックス振盪して、第1反応液を生成する。
【0058】
3)第2反応液の調製
室温において、プロピレングリコールとソルビン酸を水に溶解し、均一に攪拌して、第2反応液を生成する。
【0059】
4)混合
第1反応液と第2反応液を混合し、ボルテックスシェーカーで10分間ボルテックス振盪して、25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物マイクロエマルションを得る。当該マイクロエマルションにおける25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物の質量パーセント含有量は0.125%である。
【0060】
検出した結果、当該実施例で製造された25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物マイクロエマルションは粒径が86nmであり、封入率が88%である。
【0061】
25℃で、本実施例で製造されたマイクロエマルションを密封して保存し、1か月、2か月、3か月、6か月後に、
25-ヒドロキシコレカルシフェロールの含有量を測定し、実施例と同じ手順で無水25-ヒドロキシコレカルシフェロールから調製されたマイクロエマルションを対照例として、結果を
図4に詳細に示す。
図4は本発明の実施例3で製造されたマイクロエマルションと対照例のマイクロエマルションの安定性試験の曲線図である。
図4に示す結果から、本実施例で製造されたマイクロエマルションは従来の技術で製造されたマイクロエマルションよりも明らかに安定性が優れることが示されている。
【0062】
(実施例4)
25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物マイクロエマルションの製造:
製造方法は具体的に次のステップを含む。
1)原料用意
実施例1で製造された25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶1.30kg(有効質量は1.25kg)、ポリソルベート60 15kg、ステアロイル乳酸ナトリウム12kg、スパン80 5kg、BHT 2.5kg、プロピレングリコール7kg、ソルビン酸1kg、水56.25kg。
【0063】
2)第1反応液の調製
25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物結晶をポリソルベート60、ステアロイル乳酸ナトリウム、スパン80、BHTと混合し、55℃に加熱して完全に溶解させて、ボルテックスシェーカーで10分間ボルテックス振盪して、第1反応液を生成する。
【0064】
3)第2反応液の調製
室温において、プロピレングリコールとソルビン酸を水に溶解し、均一に攪拌して、第2反応液を生成する。
【0065】
4)混合
第1反応液と第2反応液を混合し、ボルテックスシェーカーで15分間ボルテックス振盪して、25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物マイクロエマルションを得る。当該マイクロエマルションにおける25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物の質量パーセント含有量は1.25%である。
【0066】
検出した結果、当該実施例で製造された25-ヒドロキシコレカルシフェロール一水和物マイクロエマルションは粒径が91nmであり、封入率が85%である。
【0067】
25℃で、本実施例で製造されたマイクロエマルションを密封して保存し、1か月、2か月、3か月、6か月後に、25-ヒドロキシコレカルシフェロールの含有量を測定し、実施例と同じ手順で無水25-ヒドロキシコレカルシフェロールから調製されたマイクロエマルションを対照例として、結果を
図5に詳細に示す。
図5は本発明の実施例4で製造されたマイクロエマルションと対照例のマイクロエマルションの安定性試験の曲線図である。
図5に示す結果から、本実施例で製造されたマイクロエマルションは従来の技術で製造されたマイクロエマルションよりも明らかに安定性が優れることが示されている。
【0068】
なお、上記の各実施例は本発明の技術的解決手段を説明するためのものに過ぎず、限定するものではない。上記の各実施例を参照して本発明を詳細に説明しているが、当業者であれば、なおも上記の各実施例に記載の技術的解決手段を修正し、又はその技術的特徴の一部又は全部に同等な差し替えを行うことができる。かかる修正又は差し替えにより、その対象になる技術的解決手段の本質が本発明の各実施例の技術的解決手段の範囲から逸脱することはない。