IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社野村総合研究所の特許一覧

<>
  • 特許-家計簿管理支援システム 図1
  • 特許-家計簿管理支援システム 図2
  • 特許-家計簿管理支援システム 図3
  • 特許-家計簿管理支援システム 図4
  • 特許-家計簿管理支援システム 図5
  • 特許-家計簿管理支援システム 図6
  • 特許-家計簿管理支援システム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】家計簿管理支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20220513BHJP
   G06F 3/04842 20220101ALI20220513BHJP
   G06F 3/0485 20220101ALI20220513BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06F3/0484 120
G06F3/0485
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021029883
(22)【出願日】2021-02-26
(62)【分割の表示】P 2016200965の分割
【原出願日】2016-10-12
(65)【公開番号】P2021099836
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城田 真琴
(72)【発明者】
【氏名】須崎 正士
(72)【発明者】
【氏名】新井 克典
(72)【発明者】
【氏名】豊崎 祐一郎
【審査官】鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-296562(JP,A)
【文献】特開2008-90450(JP,A)
【文献】特開2004-265280(JP,A)
【文献】特開2012-146068(JP,A)
【文献】特開2006-276963(JP,A)
【文献】特開2000-250993(JP,A)
【文献】特開2003-296563(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0066090(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G06F 3/04842
G06F 3/0485
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによる家計簿の管理を支援する家計簿管理支援システムであって、
情報処理端末を介して前記ユーザから入力された、もしくは外部サービスからネットワークを介して取得した前記ユーザの収支に係る情報に基づいて家計簿を集計する家計簿集計部と、
前記ユーザについて前記家計簿集計部により集計された家計簿の内容を、過去の収支の遷移を含め、分析する分析部と、
前記情報処理端末を介した前記ユーザからの指定に基づいてモデルユーザを選定するモデル選定部と、を有し、
前記モデル選定部は、前記ユーザと属性情報として家計環境が類似する他の類似ユーザとして、少なくとも過去の収支の遷移が類似している類似ユーザの情報を前記情報処理端末に表示し、表示した前記類似ユーザの中から前記ユーザにより指定された類似ユーザを前記モデルユーザとして選定し、
前記分析部は、前記ユーザに係る家計簿について、前記モデルユーザに係る家計簿との比較に基づく評価結果を前記情報処理端末に表示し、前記ユーザや前記類似ユーザの前記過去の収支の遷移の情報に基づいて、対象期間の満了時における家計簿情報の予測やシミュレーションを行い、結果を前記ユーザの前記情報処理端末に出力する、
家計簿管理支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の家計簿管理支援システムにおいて、
前記モデル選定部は、前記類似ユーザとして、自身の属性情報を開示しているユーザのみを対象とする、家計簿管理支援システム。
【請求項3】
請求項2に記載の家計簿管理支援システムにおいて、
自身の家計簿が他のユーザにより前記モデルユーザに係る家計簿として選定され得るユーザは、前記自身の家計簿に係る情報の全部もしくは一部の内容について開示・非開示の設定をすることができる、家計簿管理支援システム。
【請求項4】
請求項1に記載の家計簿管理支援システムにおいて、
前記モデル選定部は、前記ユーザが自身の属性情報を開示している場合にのみ、前記ユーザからの前記モデルユーザの指定を受け付ける、家計簿管理支援システム。
【請求項5】
請求項1に記載の家計簿管理支援システムにおいて、
前記分析部は、前記情報処理端末を介した前記ユーザの操作に基づいて、前記情報処理端末に表示した前記ユーザに係る家計簿と、前記モデルユーザに係る家計簿と、を連動してスクロールさせる、家計簿管理支援システム。
【請求項6】
請求項1に記載の家計簿管理支援システムにおいて、
前記分析部は、前記ユーザに係る家計簿と、前記モデルユーザに係る過去の家計簿と、を比較する、家計簿管理支援システム。
【請求項7】
請求項1に記載の家計簿管理支援システムにおいて、
前記ユーザが前記モデルユーザもしくは他のユーザとの間で直接コミュニケーションをとるためのチャットサービスもしくはメッセージングサービスを有する、家計簿管理支援システム。
【請求項8】
請求項1に記載の家計簿管理支援システムにおいて、
前記モデルユーザに係る家計簿を、前記ユーザの目標として設定し、前記ユーザに係る家計簿と前記モデルユーザに係る家計簿との差分を算出し、前記差分またはアドバイスの少なくとも一方を前記情報処理端末に表示する、家計簿管理支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家計簿の技術に関し、特に、家計に係る目標管理を支援する家計簿管理支援システムに適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以前より、個人の家計簿の管理をPC(Personal Computer)等の情報処理端末上で行いたいというニーズがある。近年では、スマートフォンやタブレット端末等の携帯端末やPC上で個人が利用することができる家計簿アプリケーションとして、非特許文献1や非特許文献2に記載されたものを始め、数々のものが提供されて普及してきている。
【0003】
近年の家計簿アプリケーションでは、家計や資産に係る情報をネットワークを介して金融機関のWebサイト等から自動的に取得する機能を有する等、ユーザにとって利便性が向上している。しかし、例えば、日々の実店舗での買い物に係る収支の入力等、ユーザにとって負担となる作業も未だに多い。また、ユーザにとって、家計についてどのようなアクションをとればどういう効果が得られるのか(どのくらい節約もしくは貯蓄できるのか)が見えにくい場合が多い。したがって、たとえアプリケーションを端末にインストールしたとしても、家計簿を付けることに対して作業負担が苦にならないほどにはモチベーションが向上せず、実質的な利用がなかなか進まないということも多い。
【0004】
この点につき、例えば、特許第5577464号公報(特許文献1)には、家計簿管理アプリケーションに登録されている複数のユーザで構成されるグループに対する金額の目標を設定し、グループを構成する全てのユーザの残高を合算し、設定された目標および合算された残高に基づいて目標の進捗状況を確認する旨が記載されている。これにより、お金に関する目標(節約目標、貯蓄目標等)をグループという総合的な括りで管理することができるようになり、各構成ユーザに、当該目標の達成に向けた継続的な行動(節約もしくは貯蓄、家計簿の運用等)を効果的に促すことができるとされている。
【0005】
また、例えば、非特許文献2に記載された家計簿アプリでは、費目のジャンル毎や、ユーザの地域毎等で、自身の家計簿の内容と、他のユーザ(「似た人」や「みんな」)の内容とを比較することができる機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5577464号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】“全自動家計簿マネーフォワード”、[online]、株式会社マネーフォワード、[平成28年9月2日検索]、インターネット<URL:http://moneyforward.com/>
【文献】“日本最大級のレシート家計簿アプリ・オンライン家計簿[Zaim]”、[online]、株式会社Zaim、[平成28年9月2日検索]、インターネット<URL:http://zaim.net/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば、特許文献1に記載されたような技術を用いることで、家計に係る金額の目標を設定し、目標達成に向けた継続的な行動を促すことは可能である。しかし、上述したように、設定された目標があるだけでは、どのようなアクションをとればどの程度目標達成に資するのかをユーザが把握・認識することは困難である。
【0009】
これに対し、例えば、収入や家族構成等の環境が自身と類似する他のユーザで、優秀な家計の運用を行っているユーザの家計簿の内容を目標に設定できるようにすることで、具体的にどのような家計行動をとれば目標達成に資するかを具体的にイメージし易くすることが考えられる。この点、例えば、非特許文献2に記載された家計簿アプリにおける他のユーザの家計簿の内容との比較機能では、単に、システム側が似ていると判定したユーザや、特定の地域のユーザの統計情報としての家計簿の内容と比較することができるに過ぎない。したがって、ユーザ自身が、家計行動を行う上で目標・モデルとする他のユーザの(もしくは複数ユーザの統計情報としての)家計簿を任意に選択・設定することはできない。
【0010】
そこで本発明の目的は、ユーザ自身が、自身と家計環境が類似する他のユーザの家計簿をモデルとして選定することを可能とし、当該家計簿との対比に基づいてユーザの家計行動を誘導する家計簿管理支援システムを提供することにある。
【0011】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0013】
本発明の代表的な実施の形態による家計簿管理支援システムは、ユーザによる家計簿の管理を支援する家計簿管理支援システムであって、情報処理端末を介して前記ユーザから入力された、もしくは外部サービスからネットワークを介して取得した前記ユーザの収支に係る情報に基づいて家計簿を集計する家計簿集計部と、前記ユーザについて前記家計簿集計部により集計された家計簿の内容を分析する分析部と、前記情報処理端末を介した前記ユーザからの指定に基づいてモデルユーザを選定するモデル選定部と、を有する。
【0014】
そして、前記モデル選定部は、前記ユーザと属性情報が類似する他の複数の類似ユーザの情報を前記情報処理端末に表示し、表示した前記類似ユーザの中から前記ユーザにより指定された前記モデルユーザとするユーザの情報を受け付け、前記分析部は、前記ユーザに係る家計簿について、前記モデルユーザに係る家計簿との比較に基づく評価結果を前記情報処理端末に表示するものである。
【発明の効果】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0016】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、ユーザ自身が、自身と家計環境が類似する他のユーザの家計簿をモデルとして選定することを可能とし、当該家計簿との対比に基づいてユーザの家計行動を誘導することが可能となる。これにより、家計簿を付けて管理することに対するモチベーションをより効果的に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態である家計簿管理支援システムの構成例について概要を示した図である。
図2】本発明の一実施の形態における収支情報の入力から家計簿の出力までの一連の処理の流れの例について概要を示したフローチャートである。
図3】(a)~(c)は、本発明の一実施の形態におけるモデル家計簿との比較・分析を行った結果を表示する画面例について概要を示した図である。
図4】本発明の一実施の形態におけるユーザがモデルユーザを選定する際の画面例について概要を示した図である。
図5】本発明の一実施の形態におけるモデルユーザの選定をより効率的・効果的に行うためのユーザインタフェースの例について概要を示した図である。
図6】本発明の一実施の形態におけるモデルユーザの選定をより効率的・効果的に行うためのユーザインタフェースの他の例について概要を示した図である。
図7】本発明の一実施の形態におけるモデルユーザの選定をより効率的・効果的に行うためのユーザインタフェースの他の例について概要を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。一方で、ある図において符号を付して説明した部位について、他の図の説明の際に再度の図示はしないが同一の符号を付して言及する場合がある。
【0019】
<システム構成>
図1は、本発明の一実施の形態である家計簿管理支援システムの構成例について概要を示した図である。家計簿管理支援システム1は、複数のユーザに対して家計簿管理サービスを提供するサーバシステムであり、例えば、サーバ機器やクラウドコンピューティングサービス上に構築された仮想サーバ等により構成される。そして、図示しないCPU(Central Processing Unit)により、HDD(Hard Disk Drive)等の記録装置からメモリ上に展開したOS(Operating System)やDBMS(DataBase Management System)、Webサーバプログラム等のミドルウェアや、その上で稼働するソフトウェアを実行することで、家計簿管理サービスの提供に係る後述する各種機能を実現する。
【0020】
各ユーザは、ユーザ端末4にインストールされた図示しないクライアントアプリケーションやWebブラウザ等を用いてインターネット等のネットワーク3を介して家計簿管理支援システム1にアクセスし、家計簿管理サービスを利用する。なお、ユーザ端末4は、例えば、スマートフォンやタブレット端末等の携帯端末やPC等の情報処理端末からなる。
【0021】
家計簿管理支援システム1は、例えば、ソフトウェアとして実装された、外部インタフェース11、収支入力部12、家計簿集計部13、分析部14、モデル選定部15、およびユーザ管理部16等の各部を有する。また、データベースやファイルテーブル等として実装された収支履歴データベース(DB)17、家計簿情報DB18、およびユーザDB19等の各データストアを有する。
【0022】
外部インタフェース11は、各ユーザが利用する金融機関やEC(Electronic Commerce)サイト等の外部サービス2の情報処理システムやWebサイトにネットワーク3等を介してアクセスし、対象のユーザの取引履歴等の収支情報や現状の資産状況等の家計簿に関連する情報(以下では「家計情報」と記載する場合がある)を取得して収支履歴DB17や家計簿情報DB18に記録する機能を有する。例えば、各外部サービス2の仕様等に応じて、外部サービス2が公開しているAPI(Application Programming Interface)の呼び出しや、Webスクレイピング等の公知の技術を適宜利用して実装することができる。外部サービス2は、家計情報を取得するためのサービスに限らず、SNS(Social Networking Service)サービス等の他のサービスを含んでいてもよい。
【0023】
収支入力部12は、実店舗での物品の購買等、外部サービス2では把握していない、もしくは把握することができない収支に係る情報について、ユーザ端末4を介したユーザからの入力を受け付けて収支履歴DB17に記録する機能を有する。外部サービス2で把握している収支情報について入力を受け付けてもよい。収支に係る情報の入力手段は特に限定されず、例えば、ユーザ端末4上のクライアントアプリケーションにより表示された入力用画面からユーザが収支に係る情報を入力してもよい。また、ユーザ端末4が備えるカメラを用いてレシート等を撮影し、撮影データから収支に係る情報の少なくとも一部を自動的に認識・取得するようにしてもよい。
【0024】
家計簿集計部13は、ユーザ毎に収支履歴DB17に記録された収支情報や家計情報に基づいて集計を行い、家計簿に係る情報を生成して家計簿情報DB18に記録するとともに、ユーザ端末4上に出力してユーザに提示する機能を有する。基本的な家計簿の集計方法や集計項目、表示方法等については特に限定されず、既存の家計簿サービスやアプリケーション等において一般的に用いられているものと同様の手法やインタフェース等を適宜用いることができる。
【0025】
本実施の形態では、さらに、後述するように、各ユーザがモデルとして選定した他のユーザ(以下では「モデルユーザ」と記載する場合がある)の家計簿、もしくは複数ユーザの統計情報としての家計簿(以下ではこれらを「モデル家計簿」と記載する場合がある)との対比に基づく各種情報の提示も行うことができる。なお、モデル家計簿との対比は、家計簿の集計時に限らず、外部インタフェース11や収支入力部12を介して各項目の収支に係る情報が日々入力される毎に行うことや、月末等の所定のタイミングで定期的に行うことも可能である。
【0026】
分析部14は、家計簿集計部13により集計された家計簿、もしくは家計簿情報DB18に記録された各ユーザの家計簿の内容を分析して評価を行い、家計簿集計部13を介して家計簿情報DB18に記録し、またユーザ端末4に出力する機能を有する。分析に際しては、各ユーザの家計簿に係る情報自体に対する一般的な分析・評価(例えば、各項目の収支の額の多寡や、過去からの推移等の評価)を行うことができる。本実施の形態では、これに加えて、対象のユーザが選定したモデル家計簿(すなわち、自身がモデル・目標として設定した家計行動・消費行動の内容)との対比による分析・評価を行い、対比結果の情報や、これに基づくユーザへのアドバイスやアクションの誘導等の情報を出力するものとする。モデル家計簿との対比の内容や、ユーザの誘導等の具体的な内容については後述する。
【0027】
モデル選定部15は、各ユーザが、他のユーザの(もしくは複数ユーザの統計情報としての)家計簿の中からモデル家計簿を選定するのを支援する機能を有する。選定されたモデル家計簿の情報(より具体的には、モデル家計簿もしくは対応するモデルユーザを特定するためのID等の識別情報)は、対象のユーザと関連付けてユーザDB19等に記録する。本実施の形態では、モデル選定部15は、各ユーザによるモデル家計簿の効率的・効果的な選定を支援するためのユーザインタフェースを提供する。このユーザインタフェースの内容については後述する。
【0028】
ユーザ管理部16は、家計簿管理支援システム1を利用する各ユーザに係るアカウント情報や属性情報等の参照・登録・変更・削除等の管理を行う機能を有する。ユーザに係るアカウント情報や属性情報等は、ユーザDB19に登録される。ユーザ管理部16は、ユーザDB19に登録されたこれらの情報に対する管理機能を実現するユーザインタフェースをユーザ端末4や図示しない管理端末等に提供する。
【0029】
<処理の流れ>
図2は、本実施の形態におけるユーザによる収支情報の入力から家計簿の出力までの一連の処理の流れの例について概要を示したフローチャートである。まず、収支入力部12により、家計簿として管理することができる各収支項目(光熱費や食費、交際費、…)のうち、今回対象のユーザが収支情報の入力を行う対象とする収支項目毎に処理を繰り返すループ処理を開始する(S01)。具体的には、例えば、ユーザ端末4上のアプリケーションにより表示した収支情報の入力画面から、ユーザにより選択された収支項目について収支情報をそれぞれ入力するループ処理を実行する。
【0030】
ループ処理を開始すると、まず、対象の収支項目について、収支入力部12が、ユーザ端末4上のアプリケーションを介してユーザからの日々の収支に係る情報の入力を受け付ける(S02)。ここでは、ユーザがユーザ端末4を介して手動で収支情報を都度入力するものとしているが、例えば、銀行口座からの振込や口座引き落とし等の取引履歴や口座残高等、外部サービス2で把握している収支情報や家計情報については、外部インタフェース11を介して外部サービス2から自動的に一括取得してもよい。いずれによる場合も、個々の収支情報は、例えば、収支履歴DB17に既に記録されているもの以降の最新のもののみ取得するようにしてもよい。また、新たに取得した収支情報は、収支履歴DB17に記録しておくものとする。
【0031】
その後、例えば家計簿集計部13により、対象の収支項目について集計を行う(S03)。集計は、ユーザが指定もしくは設定した期間(月間、年間、週間等)について、今回新たに入力された収支情報と、収支履歴DB17や家計簿情報DB18に記録されているこれまでの実績とに基づいて行い、最新の集計結果を得る。集計結果の情報は、家計簿情報DB18に記録するようにしてもよい。
【0032】
その後、例えば家計簿集計部13により、対象のユーザがモデル家計簿を設定しているか否かを判定する(S04)。例えば、ユーザDB19に対象のユーザが設定したモデル家計簿(具体的にはこれを特定するID等の情報)が登録されているか否かにより判定することができる。モデル家計簿が設定されていないと判定した場合は(S04:No)、対象の収支項目に係る収支情報の入力処理を終了し、次の収支項目の処理に移行してループ処理を継続する(S08、S01)。
【0033】
ステップS04にてモデル家計簿が設定されていると判定した場合は(S04:Yes)、例えば分析部14により、設定されたモデル家計簿における対象の収支項目に係る情報を収支履歴DB17や家計簿情報DB18から取得する(S05)。そして、対象のユーザにおける対象の収支項目に係る情報と、モデル家計簿における対象の収支項目に係る情報とを比較して各種の分析を行い(S06)、分析結果をユーザ端末4のアプリケーションを介してユーザに対して出力する(S07)。分析部14における分析の方法・内容や、分析結果の出力の内容については後述する。そして、対象の収支項目に係る収支情報の入力処理を終了し、次の収支項目の処理に移行してループ処理を継続する(S08、S01)。
【0034】
対象のユーザが収支情報の入力を行う対象とする全ての収支項目について収支情報の入力処理を行ってループ処理を終了すると、家計簿集計部13により全体としての家計簿の集計を行う(S09)。ここでは、例えば、各収支項目についての集計結果を取りまとめてさらに集計を行い、所定のフォーマットやレイアウトに基づいて全体としての家計簿を作成して、家計簿情報DB18に記録する。このとき、分析部14により、当該家計簿自体に対する一般的な分析・評価(例えば、各項目の収支の額の多寡や、過去からの推移等の評価)を行うようにしてもよい。
【0035】
その後、家計簿集計部13により、作成した家計簿および分析結果の情報を、ユーザ端末4のアプリケーションを介して表示してユーザに対して出力する(S10)。ユーザ端末4での画面表示による出力に加えて、例えば、CSV(Comma-Separated Values)等の所定のフォーマットによりデータとしてユーザ端末4にダウンロードできるようにしてもよい。
【0036】
家計簿の出力後、もしくはこれと並行して、上記のステップS04と同様に、家計簿集計部13により、対象のユーザがモデル家計簿を設定しているか否かを判定する(S11)。モデル家計簿が設定されていないと判定した場合は(S11:No)、全体の処理を終了する。
【0037】
ステップS11にてモデル家計簿が設定されていると判定した場合は(S11:Yes)、例えば分析部14により、設定されたモデル家計簿に係る情報を収支履歴DB17や家計簿情報DB18から取得する(S12)。そして、対象のユーザにおける家計簿の情報と、モデル家計簿とを比較して各種の分析を行い(S13)、分析結果をユーザ端末4のアプリケーションを介してユーザに対して出力して(S14)、全体の処理を終了する。上記のステップS07と同様に、分析部14における分析の方法・内容や、分析結果の出力の内容については後述する。
【0038】
<家計簿情報の分析の内容>
ユーザの家計簿情報に対する分析としては、上述の図2の例に示したように、ユーザが日々の収支を入力する毎に、対象の収支項目についてモデル家計簿の内容と都度比較する場合や、最終的に集計された全体の家計簿をユーザが参照する際にモデル家計簿の内容と比較する場合等が考えられる。比較・分析の実行と結果の出力は、このようにユーザが収支や家計情報の入力等のアクションを行ったタイミングに限らず、ユーザがアクションを行っていない状況で自動的に実行して結果を通知するようなものであってもよい。
【0039】
例えば、日次で自動的に比較・分析を行い、分析結果が所定の基準以上悪化した場合に注意・警告を行うようにしてもよい。また、例えば、家計情報において赤字が発生した場合や、所定の金額以上の支出予定が近付いてきた場合等のタイミング、さらに月次や年次等の所定のタイミングで比較・分析を行って結果を出力するようにしてもよい。
【0040】
分析の内容として、例えば、対象のユーザの家計簿の現状に対して、比較するモデル家計簿の内容を目標(もしくは予算)とした上で、当該目標に対する差分を算出して表示する。差分は、金額の絶対値そのものであってもよいし、これを所定の基準で評価した結果のランク等の値であってもよい。また、差分の表示に際して、例えば、差分の値やその遷移傾向等に基づいて、予め用意されたテンプレートに基づいてアドバイスや叱咤激励等のコメント(例えば「今月の食費の予算はあと○○円です。」等)を生成し、テキストや音声によって出力するようにしてもよい。
【0041】
図3は、ユーザ端末4上においてユーザの家計簿の内容に対してモデル家計簿との比較・分析を行った結果を表示する画面例について概要を示した図である。図3(a)は、ユーザ端末4上のアプリケーションを利用してユーザが収支項目(図中の例では「食費(昼食)」)に係る収支を入力する画面の例を示している。ここでは、ユーザが収支を入力したタイミングでモデル家計簿に係るモデルユーザ(図中の例では「類似ユーザC」)との比較・分析に基づいて出力されたコメント(図中の例では「食費予算を少しオーバーしています。」)を表示する例を示している。
【0042】
図3(b)は、対象のユーザ(図中の例では「あなた」)の家計簿とモデルユーザのモデル家計簿とを比較表示する画面例を示している。ここでは、両者の家計簿のフォーマットやレイアウトを表形式にて合わせた上で並べて表示している。対象のユーザの家計簿に対して比較表示する家計簿は、現在(最新)のものに限らず、過去のものであってもよい。また、比較表示する家計簿はモデル家計簿に限らず、これに加えて、もしくはこれに代えて、1つ以上の類似する他のユーザの家計簿を並べて表示するものであってもよい。
【0043】
家計簿の比較表示に際しては、図示するように、例えば、対象のユーザについて予算オーバー等のコメントがある収支項目について色を変える等の強調表示をしてもよい。そして、例えば、ユーザがいずれかの家計簿を収支項目が並ぶ方向(図中の例では上下方向)にスクロールさせると、他方の家計簿も連動してスクロールさせ、常に各収支項目について両者の家計簿が並ぶ形で容易に対比できるように表示してもよい。
【0044】
なお、モデル家計簿との比較・分析を可能とするためには、対応するモデルユーザが、自身の家計簿に係る情報を他のユーザに開示することに対して承諾していることが前提となるようにしてもよい。自身の家計簿が他のユーザによりモデル家計簿として選定されたモデルユーザは、全部もしくは一部の内容について開示・不開示の設定をすることができる。例えば、家計簿に係る情報は全て開示してもよいが、ユーザIDのみ不開示として個人を特定できないようにすることができる。さらに、個人をある程度特定可能な職業や収入、家族構成、居住地等の属性情報の全部もしくは一部を不開示とすることもできる。また、家計情報における収支項目の一部のみを開示もしくは不開示としてもよい(例えば「食費と光熱費のみ開示」等)。
【0045】
これらの開示・不開示の設定は、自身の家計簿が他のユーザにモデル家計簿として選定されるか否かに関わらず予め設定しておけるようにしてもよい。また、例えば、あるユーザが、モデル家計簿も含め他のユーザの家計簿を参照することを可能とするためには、自身の家計簿の内容を開示するよう設定していることを条件とするようなアクセス制御を行ってもよい。
【0046】
単にモデル家計簿との差分を提示するだけではなく、例えば、家計環境(職業や家族構成、居住地、年収、貯蓄額/借入額、相続が期待できる親の資産等、家計の内容に影響があると考えられる属性全般を示す)が類似するユーザを母集団として家計簿情報に係る統計処理に基づく評価を行い、対象のユーザの相対的な「立ち位置」等の評価結果を提示するものであってもよい。
【0047】
図3(c)は、ユーザの家計簿について類似するユーザからなる母集団に対する統計処理に基づく評価結果を表示する画面の例を示している。ここでは、対象のユーザの家計簿とモデル家計簿との比較・分析に基づくコメント(図中の例では「今月の食費の残予算は12,500円です。」)に加えて、類似するユーザからなる母集団に対する統計処理による分析に基づくコメント(図中の例では「あなたの現在の金融偏差値は53.5です。」)を表示している。各種の指標(例えば「所定期間における貯蓄額」や「今月の繰越額」等)について母集団内でのランキングを表示するものであってもよい。また、例えばランキングの上位の個別のユーザについて、図3(b)に示すように、自身の家計簿と比較表示できるようにしてもよい。
【0048】
また、このような現状の分析・評価に加えて、例えば、対象のユーザや他の類似ユーザの収支および家計簿情報の過去の遷移の情報に基づいて、対象期間の満了時における家計簿情報の予測やシミュレーションを行い、結果を出力するようにしてもよい(例えば「このペースでいくと2016年末には金融資産は『○○円』、金融偏差値は『57.2』になるでしょう。」等)。
【0049】
このように、ユーザの家計行動を、ユーザ自身が目標として設定したモデル家計簿(モデルユーザ)や、類似する家計環境を有するユーザからなる母集団で支配的なものに誘導することで、ユーザの目標達成が可能となるよう支援し、家計簿を付けて管理することへのモチベーションを向上させることができる。
【0050】
その他にも、ユーザの目標達成を支援し、モチベーションを向上させるための様々な手法をとることができる。例えば、対象のユーザが特定の支出項目もしくは特定の種類の商品やサービスにおける支出(例えば、「車の購入」等)をしている(もしくはしようとしている)場合に、当該支出が家計のレベルに対して「分不相応」か否かを判定して結果を提示するようにしてもよい。
【0051】
具体的には、例えば、モデルユーザ、もしくは家計環境が類似する他のユーザからなる母集団が同様の支出をしている場合に、その支出の金額(もしくはその平均値等の統計的数値)と比較して、一定額以上高い支出となっている場合には「分不相応」であると評価する。このとき、例えば、ユーザの年収や家族構成、相続が期待できる親の資産等の家計環境を考慮した上で評価するようにしてもよい。
【0052】
家計環境が類似するユーザの母集団を構成する際に、家計環境の各属性項目の静的な値が類似しているか否かだけに限らず、過去の収支の遷移(家計行動の傾向)が類似しているか否か等を考慮してもよい。また、例えば、対象のユーザと趣味やライフスタイル等が類似するユーザに絞り込むことで、このような主観面も考慮した上で「分不相応」か否かを判定するようにしてもよい。また、母集団を一つに決定するのではなく、ユーザの指定に基づいて家計環境の属性項目もしくはその組み合わせの単位で母集団を細分化して構成できるようにしてもよい(例えば「収入が類似するグループ」や、「性別・年齢が類似するグループ」等)。
【0053】
また、家計環境が類似するユーザの母集団を抽出する際に、AI(Artificial Intelligence)エンジンを用いて精度を向上させてもよい。また、AIエンジンにより、他の優良ユーザ(モデルユーザを含む実在のユーザでもよいし仮想的に構成されたユーザでもよい)において想定される家計行動のパターンと比較して、注意を促す(例えば「○○さん(優良ユーザ)ならそのような支出はしません。」等)ようにしてもよい。
【0054】
なお、人工知能の類型には、例えば、多層パーセプトロン、ディープ・ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、ディープ・ビリーフ・ネットワーク、ディープ・ボルツマンマシン等いくつかのものがあるが、いずれの類型を用いてもよい。また、学習する際の分類として、教師あり学習、教師なし学習のいずれを用いてもよい。学習モデル構築の例として、例えば、モデルユーザが過去に購入した製品の情報である製品名、収支項目、購入金額、購入スパン(購入インターバル)等を学習する。これにより、対象ユーザが製品を購入する際に、当該製品の情報を学習した学習モデルに入力することで、モデルユーザであれば購入するかどうかを出力する構成とすることができる。
【0055】
さらに、このような支出を行った(もしくは行おうとしている)ユーザに対して、同様の支出を行った(もしくは行おうとしている)他のユーザからなるコミュニティを紹介し、加入を促すようにしてもよい。同様の家計環境や、家計環境に影響する趣味・ライフスタイル等を有するユーザ同士によるコミュニティを形成できるようにすることで、各ユーザが、関連する家計行動について情報収集や意見交換等を行うことが可能となる。自身が選定したモデル家計簿に係るモデルユーザがコミュニティに加入している場合は、例えば、チャットやメッセージング等のサービスにより直接連絡をとれるようにしてもよい。コミュニティのメンバーのユーザが購買等の家計行動を行った際にその情報が当該コミュニティ内で共有されるようにしてもよい。
【0056】
このように、家計簿を付けて節約・倹約を行い目標を達成する、という同じ目的を有する他のユーザとコミュニティを形成できるようにすることで、連帯感を醸成し、モチベーションを向上させることができる。なお、コミュニティの形成は、例えば、ユーザDB19にグループとしてユーザを登録する等の手段によってもよいし、外部のSNS(Social Networking Service)サービスを適宜利用してもよい。
【0057】
<モデルユーザ(モデル家計簿)の選定>
以下では、例えばモデル選定部15により実現される、ユーザが他の多数のユーザの中からモデルユーザ(すなわちモデル家計簿)を効率的・効果的に選定するための機能やユーザインタフェースの内容について説明する。
【0058】
図4は、ユーザ端末4においてユーザがモデルユーザを選定する際の画面例について概要を示した図である。ここでは、基本的な例として、対象のユーザが指定した属性情報(家計環境)に該当するものとして抽出されたユーザのリストの中からモデルユーザを選定する場合を示している。
【0059】
まず、左側の図に示すように、抽出条件としてユーザの属性情報(家計環境)の入力を受け付ける。対象のユーザが自身の属性情報を手動で入力してもよいし、既にユーザDB19に登録されている対象のユーザの属性情報をモデル選定部15が取得してきてデフォルト値として設定してもよい。対象のユーザ自身の属性情報とは無関係に任意の属性情報を指定してもよい。
【0060】
属性情報が入力されると、中央の図に示すように、入力された属性情報に該当もしくは類似するユーザのリストをモデルユーザの候補として表示する。入力された属性情報の全てが一致していなくとも、一部が一致もしくは類似していれば類似するユーザとして抽出することができる。また、一致もしくは類似する属性の種類や数、類似の程度等に基づいて適宜重み付けを行う等、任意の適当な手法により類似を判断することができる。AIを用いて精度を向上させることも可能である。また、モデルユーザの候補となるのは、ユーザDB19に登録されている具体的なユーザに限らず、入力された属性情報(例えば「収入」等)に基づいて抽出されたユーザの母集団から統計的に抽出された支配的な属性情報を有する仮想的なユーザ(例えば、図中の「3.統計(収入)」等)を含めることもできる。
【0061】
対象のユーザが、モデルユーザの候補のリストからユーザ(図中の例では「4.類似ユーザC」)を選択すると、例えば、右側の図に示すように、当該ユーザの属性情報や家計簿情報等の詳細な情報を表示し、対象のユーザは、その内容を確認した上でモデルユーザとして選定するか否かを決定することができる。モデルユーザとして選定された場合は、当該ユーザを特定するID等の識別情報(仮想的なユーザの場合はこれを形成するための条件等の情報)を、対象のユーザのID等の識別情報と関連付けてユーザDB19に登録しておく。
【0062】
図5は、モデルユーザの選定をより効率的・効果的に行うためのユーザ端末4におけるユーザインタフェースの例について概要を示した図である。ここでは、複数の属性項目の複合的な組み合わせについて、これが類似するユーザを効率的・効果的に絞り込むことを可能とするために、グラフィカルで直感的なユーザインタフェースを実現する例を示している。
【0063】
図5の左側の図では、モデルユーザの候補を検索する条件設定の画面例を示している。ここでは、5つの属性項目(図中の例では「収入」「支出」「家族構成」「年齢」「資産」)の値についてそれぞれ正規化してレーダーチャート化し、対象のユーザ(図中の例では「あなた」)の属性の値からなる領域を点線で示している。また、各属性項目の検索範囲の上限/下限の値からなる領域をそれぞれ実線で示し、上限と下限の間の検索範囲を網掛けで表示している。なお、図5の例では属性項目を5つとしているが、この数は特に限定されず、例えば、対象のユーザによって任意に指定されたものを含む複数の属性項目を適宜用いることができる。また、各属性項目の配置位置についても特に限定されず、例えば、対象のユーザが任意に指定したり並び替えたりできるものとしてもよい。
【0064】
例えば、ユーザ端末4がタッチパネルを有する携帯端末等である場合、ユーザは、各属性項目の検索範囲の上限/下限の値からなる領域をそれぞれ、図示するようなピンチ(ピンチイン/ピンチアウト)やドラッグ等のジェスチャーにより、視覚的に把握し易い態様で適宜調整することができる。ピンチやジェスチャーを行う位置を適宜変更することで、検索範囲の上限/下限を調整する属性項目を指定し、もしくは同時に複数の属性項目を指定することも可能である。
【0065】
例えば、「収入」の軸上に沿ってピンチやドラッグ等のジェスチャーを行った場合、「収入」の検索範囲の上限/下限のみを調整することができる。一方、例えば、「収入」と「支出」の軸の間の部分でピンチやドラッグ等のジェスチャーを行った場合、「収入」と「支出」の両方の検索範囲の上限/下限について、これらが連動する形で調整することができる。さらに、例えば、特定の属性項目をタップして長押しすることで、当該属性項目について検索や順位付けの際の重み付けを重くするようにしてもよい。このとき、当該属性項目の表示色や文字サイズ、フォント等を変更して重み付けが認識可能となるようにしてもよい。このように、複数の属性項目の複合的な組み合わせからなる検索範囲の指定について、ユーザは直観的に把握し易い態様で指定することが可能である。
【0066】
ユーザがピンチやドラッグ等のジェスチャーにより検索範囲を調整した際に、モデル選定部15がバックグラウンドでユーザDB19に対する検索をリアルタイムで行い、図示するように、検索範囲に含まれる該当ユーザの数を動的に表示するようにしてもよい(図5の例では「現在の対象 5人」)。該当ユーザの数が所定の数未満となるまで実際の検索の実行ができないよう制限してもよい。これらにより、ユーザは、検索結果のボリュームを事前に把握して妥当な検索範囲を効率的に設定し、試行錯誤の負荷を低減することができる。
【0067】
検索範囲を設定したユーザが、左側の図における「検索」ボタンをタップ等により押下すると、モデル選定部15が、各属性項目が検索範囲に含まれる該当ユーザのリストをユーザDB19から抽出して、例えば図5の右側の図に示すように、モデルユーザの候補としてユーザ端末4上に表示する。ユーザは、リストから任意のユーザ(図中の例では「ユーザB」)を選択することで、さらに詳細な属性情報や家計簿の情報を確認することができる。当該ユーザとチャット等によるコミュニケーションを図れるようにしてもよい。ユーザは、これらの手段により当該ユーザの情報を確認した上で、モデルユーザ(およびモデル家計簿)として選定することができる。
【0068】
図6は、モデルユーザの選定をより効率的・効果的に行うためのユーザ端末4におけるユーザインタフェースの他の例について概要を示した図である。ここでは、2つの属性項目の組み合わせからなる二次元平面において、自身を含む他のユーザの分布状況を示し、自身と他のユーザがどれだけ近いか/離れているかを視覚的に把握し易い形で提示する例を示している。
【0069】
図6の左側の図では、例えば、平面を構成する二軸として、「支出」と「収入」の2つの属性項目をユーザが指定して検索を行い、抽出されたユーザについてそれぞれ平面上にプロットした状態を示している。ここでは、他のユーザ(図中の例では「他会員」)のプロットに対して、対象のユーザ(図中の例では「あなた」)のプロットが認識可能なように表示することで、他のユーザの分布状況に対する自身の位置や乖離の程度を把握可能となるようにしている。
【0070】
対象のユーザは、平面上にプロットされたユーザ群の中から、モデルユーザとして選定する候補となるユーザがプロットされた領域を選択することで、候補となるユーザを絞り込む。図中の例では、点線の円で示された選択範囲をドラッグにより移動させたり、ピンチにより拡大・縮小させたりして調整することで選択する。選択範囲は円形に限らず、矩形等の他の形状であってもよい。選択範囲に含まれるユーザの数が所定の数以上である場合は、選択範囲に含まれるユーザのみを対象として、再度左側の図と同様のプロット画面を表示するようにしてもよい。選択範囲には対象のユーザ自身を含めるのが望ましいが、必須としなくてもよい。
【0071】
選択範囲に含まれるユーザが所定の数未満となった場合は、右側の図に示すように、プロットされるユーザについて、さらに他の属性情報(すなわち第3軸の属性情報)を視覚的に認識可能なようにグラフィカルに表示する。図中の例では、第3軸として「性別」を指定した場合を示している。この場合、例えば、図示するように、他のユーザについて、「男性」の表示アイコンと「女性」の表示アイコンを、色や形状等により区別可能な態様で表示する。年齢や金額等、連続的に変化する値を有する属性が指定された場合は、例えば、値の範囲毎にアイコンの色をグラデーション的に変化させる等により表示することができる。プロットされたユーザの中からモデルユーザの候補となるユーザ(例えば、自身とプロット位置が近いユーザ)を選択して詳細情報を確認したり、最終的にモデルユーザとして選定したりできる点は、図5に示した例と同様である。
【0072】
図7は、モデルユーザの選定をより効率的・効果的に行うためのユーザ端末4におけるユーザインタフェースの他の例について概要を示した図である。ここでは、上述の図6の例のように平面を構成する二軸としてユーザの属性項目を採用するのではなく、ユーザの家計行動の対象物(商品やサービス等)を特徴付ける項目を二軸として平面を構成する。そして、当該平面上に、各対象物とこれに対して家計行動を行ったユーザの属性情報との関係を識別可能な態様で、各対象物をプロットする。これにより、家計行動の対象物の各種類について、どのようなユーザが家計行動をとっているのかを視覚的に把握し易い形で提示することを可能とする。
【0073】
図7の左側の図では、例えば、ユーザの家計行動およびその対象を、化粧品等の「商品の購入」とし、平面を構成する二軸として、「(対象商品の)売上」と「(対象商品の)価格」を設定し、この平面上に対象物である各商品をプロットした状態を示している。
【0074】
各商品に対して家計行動を行ったユーザの属性情報として、図中の例では、対象のユーザとの関係で「友人」であるユーザが購入した商品(「友人購入商品」)、対象のユーザと属性情報が類似するユーザが購入した商品(「類似属性会員購入商品」)、およびその他のユーザが購入した商品(「他商品」)がそれぞれ識別可能となるよう表示している。ここで、「友人」とは、例えば、当該家計簿管理支援システム1もしくは外部のSNSサービス等において「お友だち」等として登録されているユーザとすることができる。そして、図中ではさらに、対象のユーザが購入した(もしくはしようとしている)商品(図中の例では「商品X」)についてもプロットされている。
【0075】
これにより、商品の購入という家計行動について、単に売上や価格等といった対象物の客観的な属性に対する分布やランキングを提示するだけでなく、どのような属性のユーザが対象の家計行動を行っているのかという主観的な観点についても認識可能な態様で提示することができる。そして、これに重畳して自身が購入した(もしくはしようとしている)商品をプロットすることで、自身の家計行動が他の類似するユーザのものと比較して「分不相応」であったか否か等の判断をすることも可能となる。
【0076】
なお、図7の例では、商品を購入したユーザの属性情報として、「友人」であるか、および自身の属性情報と類似するかを設定しているが、これに限られない。例えば、年齢層や、居住地、職業、収入等の他の属性によって区分してもよいし、各ユーザの満足度等の主観的な指標(例えば、ユーザが自己申告している満足度評価でもよいし、ユーザが投稿したコメントの内容を自然言語解析して得られる満足度でもよい)によって区分してもよい。
【0077】
平面上にプロットされた対象物(商品)から、ユーザが任意の対象物を選択することで、例えば、図7の右側の図に示すように、選択された対象物に対して家計行動を行った(購入した)ユーザのリストを、ユーザの投稿したコメント等と併せて表示する。ユーザは、リストの中から特定のユーザ(図中の例では「ユーザB」)を選択して、その詳細情報やどのようなコメントを投稿しているかを確認し、モデルユーザとして選定するか否かを決定することができる。
【0078】
以上に説明したように、本発明の一実施の形態である家計簿管理支援システム1によれば、ユーザ自身が、ユーザの家計環境や属性に加えて満足度等の主観面等も考慮した上で、自身と類似する他のユーザの家計簿をモデル家計簿として選定することが可能となる。そして、モデル家計簿との対比や他の類似ユーザの家計行動との対比に基づいてユーザの家計行動を誘導することが可能となる。これにより、家計簿をつけて管理することに対するモチベーションをより効果的に向上させることが可能となる。
【0079】
なお、本実施の形態では、上述の図5図7に示したようなユーザインタフェースを用いてモデルユーザを抽出する場合の例を示しているが、同様の検索条件で他のユーザインタフェースによりモデルユーザを抽出してもよい。
【0080】
また、モデルユーザの抽出に際して人工知能(AI)を適用することもできる。例えば、ユーザが、モデルユーザとして望ましい家計簿、および望ましくない家計簿をそれぞれ複数選択し、これらのデータを教師あり学習(入力値:家計簿情報、出力値:モデルユーザとして望ましいか否か)における教師データとして学習モデルを構築する。そして、多数のユーザの家計簿の情報を当該学習モデルに入力することで、対象ユーザに適したモデル家計簿およびモデルユーザを抽出することができる。
【0081】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0082】
例えば、上記の実施の形態では、ユーザがモデルユーザ(モデル家計簿)を設定できるようにして、モデル家計簿や、他の類似ユーザとの対比に基づいてユーザの家計行動を目標に対して誘導するものとしているが、これに限られるものではない。例えば、家計簿に加えて、もしくはこれに代えて、金融商品等に対する投資について、モデルユーザ(モデルポートフォリオ)を設定して投資行動を目標に誘導するものであってもよい。また、ダイエットや学習等、日々の生活や活動・行動の積み重ねによって効果が変わる各種の活動等についても広く適用することができる。これにより、ユーザが当該活動についてモデル(なりたい自分)を設定できるようにし、例えば、日々の活動の内容がユーザにより入力される毎に、モデルとの対比に基づいてアドバイス等を行って、ユーザを目標に誘導する行動管理支援システムを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、家計に係る目標管理を支援する家計簿管理支援システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0084】
1…家計簿管理支援システム、2…外部サービス、3…ネットワーク、4…ユーザ端末、11…外部インタフェース、12…収支入力部、13…家計簿集計部、14…分析部、15…モデル選定部、16…ユーザ管理部、17…収支履歴DB、18…家計簿情報DB、19…ユーザDB
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7