(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】再生ポリエステル樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/78 20060101AFI20220516BHJP
C08J 11/24 20060101ALI20220516BHJP
C08J 11/26 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
C08G63/78
C08J11/24
C08J11/26
(21)【出願番号】P 2020059233
(22)【出願日】2020-03-28
【審査請求日】2021-08-20
(31)【優先権主張番号】P 2019067702
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019112162
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020020166
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000228073
【氏名又は名称】日本エステル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592197315
【氏名又は名称】ユニチカトレーディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105821
【氏名又は名称】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 亘
(72)【発明者】
【氏名】小野 雅人
(72)【発明者】
【氏名】山本 良太
(72)【発明者】
【氏名】天満 悠太
(72)【発明者】
【氏名】荒木 悟郎
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-249557(JP,A)
【文献】特開2007-153942(JP,A)
【文献】特開2005-206760(JP,A)
【文献】特開2006-336122(JP,A)
【文献】特開2005-206966(JP,A)
【文献】特開2005-206967(JP,A)
【文献】特開2005-179877(JP,A)
【文献】特開2006-328600(JP,A)
【文献】特開2006-070419(JP,A)
【文献】特開2005-220465(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0051304(US,A1)
【文献】特開2002-338671(JP,A)
【文献】特開2020-164557(JP,A)
【文献】特開2020-111702(JP,A)
【文献】特開2011-140565(JP,A)
【文献】特開昭59-047226(JP,A)
【文献】特開2001-329058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00
C08J 11/24
C08J 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料を用いて再生ポリエステル樹脂を製造する方法であって、
(1)エチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールとを含む混合物に、前記原料を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.35となるように添加し、245~280℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより解重合体を含む反応生成物を得る工程、
(2)前記反応生成物を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて濾液を回収する工程、
(3)前記濾液に重合触媒を添加し、温度
260~285℃及び
0.5~1.0hPaの減圧下で前記解重合体の重縮合反応を行う工程
を含むことを特徴とする再生ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記原料中において、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種を40質量%以上含有する、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な再生ポリエステル樹脂及び再生ポリエステル樹脂の製造方法に関する。特に、本発明は、使用済ポリエステル製品に由来するリサイクルポリエステル原料のほか、ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルに由来するリサイクルポリエステル原料を用いて製造され、異物の混入量が少なく、バージンポリエステル樹脂と同様に各種の成形品に加工することができる再生ポリエステル樹脂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、高融点で耐薬品性があり、また比較的低コストであるため、繊維、フィルム、ペットボトル等の成形品等に幅広く用いられている。これらのポリエステル製品は、製造段階又は加工段階で屑の発生が避けられず、また使用後に廃棄処分される場合が多い。ところが、焼却する場合には高熱が発生するため、焼却炉の傷みが大きく、寿命が短くなる。一方、焼却しない場合には、腐敗分解しないために半永久的に残ることになる。
【0003】
近年、一度使用されたポリエステル製品のうち、ゴミとして捨てられたプラスチック容器等が河川を経由して海洋へ流出し、波又は潮流の作用で細かく破砕されてマイクロプラスチックとして海洋生物の体内に蓄積、食物連鎖で濃縮され海洋生物の生態系に悪影響が出ていること、プラスチックが海洋汚染の一大原因となっていることが問題視されていることから、その使用量の削減、生分解性プラスチックへの切り替え等の動きが全世界的に起きている。
【0004】
このような環境上の問題の観点から、資源を再利用するリサイクルが様々な方法で行われている。PETに代表されるポリエステル製品に関しても、その製造工程で発生したポリエステル屑をリサイクルする方法に加え、一度市場に出回って廃棄された製品を回収し、それを原料として再使用する方法が検討されている。特に、近年においては、繊維製品について、一定のリサイクル率を達成することで認定されるエコマークを付与した製品が普及している。
リサイクルポリエステル原料として、製造工程で発生したポリエステル屑あるいは使用済みのポリエステル製品を回収したものを用いてリサイクルする方法としては、各種の方法が提案されている。
【0005】
例えば、PET屑にメタノールを添加してジメチレンテレフタレート(以下「DMT」と表記することがある。)とエチレングリコール(以下「EG」と表記することがある。)に分解する方法(特許文献1)、PET屑にEGを添加して解重合した後、メタノールを添加してDMTを回収する方法(特許文献2)、PET屑をEGで解重合してオリゴマーとし、これを重縮合反応に用いる方法(特許文献3)等が提案されている。
【0006】
ところで、一旦製品となったPETボトル等を再生する際に問題になる不純物としては、ポリエステル樹脂中に添加されている各種の添加剤のほか、ボトル本体に付属するものとして、a)キャップ(アルミニウム、ポリプロピレン、ポリエチレン)、b)中栓、c)ライナー(ポリプロピレン、ポリエチレン)、d)ラベル(紙、ポリスチレン等の樹脂、インク)、e)接着剤、f)印字用インク等がある。
【0007】
一般に、再生工程の前処理としては、回収されたPETボトルを振動ふるいにかけて砂、金属等を除去する。その後、PETボトルを洗浄し、着色ボトルを分離した上で、荒い粉砕を行う。そして、風力分離によりラベル等を取り除く。さらに、キャップ等に由来するアルミニウム片を除いて、PETボトル片を細かく粉砕する。高温アルカリ洗浄により接着剤、蛋白質、かび等の成分を除き、比重差によりポリプロピレン、ポリエチレン等の異種成分を分離する工程が行われる。
【0008】
しかしながら、これらの工程を経たとしても、特にポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等の非ポリエステル樹脂をPET樹脂から完全に分離・除去することは困難である。
【0009】
例えば、特許文献1~4に記載のリサイクル方法で再生ポリエステル樹脂の製造を試みたとしても、非ポリエステル樹脂由来の異物の除去が十分に行えず、異物の混入量が十分に低減できたものとはいえず、バージンポリエステル樹脂同様の品質を有する製品を得ることは困難である。このように異物の混入量が十分に低減されていないと、紡糸工程又は製膜工程における濾過フィルターの昇圧速度が速く、長期の連続運転ができず、加工操業性が非常に悪くなる。しかも、特許文献1~3のような方法では、回収装置の設置、運転、維持等に多額のコストもかかり、実用性という点でも改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特公昭42-8855号公報
【文献】特開昭48-62732号公報
【文献】特開昭60-248646号公報
【文献】特開2005-171138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物を十分に除去されており、バージンポリエステル樹脂と同様に各種の製品を得ることができる再生ポリエステル樹脂を得る方法は未だ開発されるに至っていない。
【0012】
特に、ポリエステル樹脂を用いて溶融紡糸を行い、繊維を製造しようとする際には、異物の混入量が生産性に大きく影響を及ぼす。繊維を製造する際には、溶融紡糸工程において孔径の小さいノズルから樹脂を押出し、押し出された多数の糸状物をローラに引き取り、必要に応じて、延伸や熱処理工程を行い、さらに巻き取る工程を経る。この場合、異物が混入した樹脂を使用すると、溶融紡糸、延伸・熱処理、巻取工程のいずれにおいて糸切れのトラブルが生じやすく、安定した生産を実施することが困難となる。
【0013】
この問題は、より細繊度化した繊維を製造しようとする場合により顕著になる。例えば、ポリエステル屑等を原料として用いて製造された再生ポリエステル樹脂において、それを溶融紡糸することにより、特に単糸繊度が0.5デシテックス以下の極細繊維を得ることは未だ実現されていない。
【0014】
従って、本発明の主な目的は、上記の問題点を解決し、使用済みポリエステル製品に由来するリサイクルポリエステル原料、あるいはポリエステル樹脂及び製品を製造する工程で発生する屑等に由来するリサイクルポリエステル原料を原料として、各種の形態のポリエステル製品の製造に利用できる再生ポリエステル樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、リサイクルポリエステル原料を用いて特定の工程で処理することにより得られるポリエステル樹脂が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、下記の再生ポリエステル樹脂及びその製造方法に係る。
1. a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料から由来する成分を含むポリエステル樹脂であって、
(1)全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、
(2)カルボキシル末端基濃度が30当量/t以下であり、
(3)平均昇圧速度が0.6MPa/h以下である(ただし、平均昇圧速度は、下記の手順によって算出される値である:エクストルーダー及び圧力センサを含む昇圧試験機を用い、エクストルーダーの先端にステンレス鋼製フィルター(呼び寸法メッシュ:1400メッシュ、織り方:綾畳織、縦メッシュ:165メッシュ、横メッシュ:1400メッシュ、縦線径:0.07mm、横線径:0.04mm、濾過粒度:12μm)をセットし、ポリエステル樹脂をエクストルーダーにて300℃で溶融し、前記フィルターからの吐出量29.0g/分で当該溶融物を押し出した時の前記フィルターにかかる圧力値として、押し出し開始時の圧力値を「初期圧力値(MPa)」とし、その後連続して12時間押し出しをした時点の圧力値を「最終圧力値(MPa)」とした場合、それらの圧力値に基づいて下記計算式Aにより上記平均昇圧速度を算出する:
平均昇圧速度(MPa/h)=(最終圧力値-初期圧力値)/12)・・・A)、
ことを特徴とする再生ポリエステル樹脂。
2. 前記項1に記載の再生ポリエステル樹脂を含有する繊維。
3. 前記項1に記載の再生ポリエステル樹脂を含有するブロー成形品。
4. 前記項1に記載の再生ポリエステル樹脂を含有するフィルム。
5. a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料を用いて再生ポリエステル樹脂を製造する方法であって、
(1)エチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールとを含む混合物に、前記原料を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.35となるように添加し、245~280℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより解重合体を含む反応生成物を得る工程、
(2)前記反応生成物を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて濾液を回収する工程、
(3)前記濾液に重合触媒を添加し、温度260℃以上及び1.0hPa以下の減圧下で前記解重合体の重縮合反応を行う工程
を含むことを特徴とする再生ポリエステル樹脂の製造方法。
6. 前記原料中において、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種を40質量%以上含有する、前記項5に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、使用済みポリエステル製品に由来するリサイクルポリエステル原料、あるいはポリエステル樹脂及び製品を製造する工程で発生するポリエステル屑等に由来するリサイクルポリエステル原料を原料として、各種の形態のポリエステル製品の製造に利用できる再生ポリエステル樹脂を提供することができる。
【0018】
特に、本発明では、a)使用済みポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料を高比率で利用しつつ、異物の混入量が少なく、かつ、カルボキシル末端基濃度、ジエチレングリコールの含有量が特定の範囲に制御された再生ポリエステル樹脂を提供することができる。その結果、例えば溶融紡糸により繊維を得る工程、製膜によりシート又はフィルムを得る工程、ボトル等の成形品を得る工程において、比較的長期にわたる連続運転が可能となり、生産性良く各種の形態の製品を製造することができる。
【0019】
また、本発明の再生ポリエステル樹脂により得られる製品(繊維、シート、フィルム、ボトル等)は、熱安定性が高く、耐熱性等に優れており、バージンポリエステル樹脂を用いたものと同様の優れた品質を発揮することができる。
【0020】
本発明の再生ポリエステル樹脂の製造方法によれば、上記したような異物の混入量が少なく、かつ、熱安定性が高く、耐熱性に優れた再生ポリエステル樹脂を効率良くかつ確実に製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.再生ポリエステル樹脂
本発明の再生ポリエステル樹脂(本発明樹脂)は、a)使用済みポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料から由来する成分を含むポリエステル樹脂であって、
(1)全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、
(2)カルボキシル末端基濃度が30当量/t以下であり、
(3)平均昇圧速度が0.6MPa/h以下である(ただし、平均昇圧速度は、下記の手順によって算出される値である:エクストルーダー及び圧力センサを含む昇圧試験機を用い、エクストルーダーの先端にステンレス鋼製フィルター(呼び寸法メッシュ:1400メッシュ、織り方:綾畳織、縦メッシュ:165メッシュ、横メッシュ:1400メッシュ、縦線径:0.07mm、横線径:0.04mm、濾過粒度:12μm)をセットし、ポリエステル樹脂をエクストルーダーにて300℃で溶融し、前記フィルターからの吐出量29.0g/分で当該溶融物を押し出した時の前記フィルターにかかる圧力値として、押し出し開始時の圧力値を「初期圧力値(MPa)」とし、その後連続して12時間押し出しをした時点の圧力値を「最終圧力値(MPa)」とした場合、それらの圧力値に基づいて下記計算式Aにより上記平均昇圧速度を算出する:
平均昇圧速度(MPa/h)=(最終圧力値-初期圧力値)/12)・・・A)
ことを特徴とする。
【0022】
本発明樹脂を構成する樹脂成分としては、a)使用済みポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料から由来する成分を含む。これらの成分が、本発明樹脂を構成するポリエステルの一部となっている。
【0023】
上記a)の使用済みポリエステル製品としては、例えば一度市場に出回り、使用後に回収されたポリエステル成形品(繊維を含む。)等が挙げられる。その代表例としては、PETボトル等のような容器又は包装材料が挙げられる。
【0024】
上記b)のポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルは、製品化に至らなかったポリエステルであり、例えば規格を外れた樹脂ペレット、成形時に不要になった材料、成形時に切断された断片、成形時、加工時等に発生した屑(ポリエステル屑)、銘柄変更時に発生する移行品の裁断物、試作品・不良品の裁断物等が挙げられる。
【0025】
上記a)及びb)は、その形態等は限定されず、必要に応じてさらに粉砕、切断等の加工を行うことによりペレット化されていても良いし、あるいは溶融してペレット化されていても良い。上記a)及びb)は、それぞれ単独で使用しても良いし、両者の混合物を用いても良い。
【0026】
また、上記a)及びb)のリサイクルポリエステル原料としては、結晶質又は非晶質のいずれのものであっても良い。従って、例えば熱処理を行っていない非晶質のポリエステル屑のペレット、熱処理を施した結晶質ペレット、結晶質ペレットと非晶質ペレットとの混合品等を使用することができる。本発明では、特に缶内への投入時、解重合反応時等にペレットどうしの融着を防止する目的で結晶性のリサイクルポリエステル原料を用いることが好ましい。従って、上記a)又はb)の材料を熱処理により結晶化したもの(結晶化ペレット等)を好適に用いることができる。
【0027】
また、上記a)及びb)のリサイクルポリエステル原料の性状としては、限定的ではなく、上記a)及びb)の形態のままでも良いし、さらに裁断、粉砕等の加工を施して得られる裁断片、粉砕物(粉末)等のほか、これらを成形してなる成形体(ペレット等)等の固体の形態が挙げられる。より具体的には、ポリエステル屑の溶融物を冷却及び切断して得られるペレット、PETボトルのようなポリエステル成形品を細かく裁断した裁断片等が例示される。その他にも、上記のような裁断片、粉砕物(粉末)等を溶媒に分散又は溶解させて得られる液体(分散液又は溶液)の形態であっても良い。これらの原料を用いてポリエステル製品を製造する際には、必要に応じてこれらをその融点以上の温度で溶融させて融液として缶内へ投入することもできる。
【0028】
本発明の再生ポリエステル樹脂(本発明樹脂)は、a)使用済みポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料から由来する成分を含むが、前記成分の含有量は本発明樹脂中40質量%以上であることが好ましく、特に50質量%以上であることがより好ましい。前記含有量が40質量%未満であると、未採用ポリエステルのリサイクル率が低下する。上記含有量の上限については、特に限定するものではないが、後述する本発明の製造方法によれば、リサイクルポリエステル原料の含有量が40~80質量%の再生ポリエステル樹脂まで容易に得ることが可能である。
【0029】
本発明樹脂は、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、その中でも3.5モル%以下であることが好ましい。特に、本発明の製造方法により得られる本発明樹脂においては、エチレングリコールを原料の一つとして用いるが、その際の副生成物としてジエチレングリコールが生じ得る。本発明樹脂は、その副生するジエチレングリコールの量が少ないものであり、ジエチレングリコールの含有量を4モル%以下とすることにより、優れた熱安定性を得ることができる。このため、繊維、射出成形体や各種のブロー成形体、シート、フィルム等の成形品を生産性良く得ることが可能となる。なお、ジエチレングリコールの含有量の下限値は、例えば0.5モル%程度とすることができるが、これに限定されない。
【0030】
本発明樹脂は、カルボキシル末端基濃度が30当量/t以下であり、特に25当量/t以下であることが好ましく、その中でも20当量/t以下であることが最も好ましい。カルボキシル末端基濃度を30当量/t以下とすることにより、耐熱性に優れた性能を有しており、各種の成形方法により耐熱性に優れた成形品を得ることが可能となる。なお、カルボキシル末端基濃度の下限値は、例えば5当量/t程度とすることができるが、これに限定されない。
【0031】
本発明樹脂は、次の方法により測定される平均昇圧速度が0.6MPa/h以下であり、0.5MPa/h以下であることが好ましく、その中でも0.4MPa/h以下であることが好ましい。本発明における平均昇圧速度は、各種無機物に由来する異物、非ポリエステル樹脂に由来する異物等の混入量の多さの指標となるものであり、平均昇圧速度が小さいほど異物の混入量が少ないことを示すものである。平均昇圧速度が0.6MPa/h以下であることにより、例えば溶融紡糸によって単糸繊度が0.5デシテックス以下の極細繊維を製造することも可能となる。なお、平均昇圧速度の下限値は、例えば0.01MPa/h程度とすることができるが、これに限定されない。
【0032】
平均昇圧速度の測定方法は、エクストルーダー及び圧力センサを含む昇圧試験機を用い、エクストルーダーの先端に前記フィルターをセットし、ポリエステル樹脂をエクストルーダーにて300℃で溶融し、前記フィルターからの吐出量29.0g/分で当該溶融物を押し出した時の前記フィルターにかかる圧力値として、押し出し開始時の圧力値を「初期圧力値(MPa)」とし、その後連続して12時間押し出しをした時点の圧力値を「最終圧力値(MPa)」とした場合、それらの圧力値に基づいて下記計算式Aにより上記平均昇圧速度を算出する:
平均昇圧速度(MPa/h)=(最終圧力値-初期圧力値)/12)・・・A)
という方法によるものである。
【0033】
前記の測定で用いるエクストルーダー、フィルター等は、本発明の規定を満たす限りは、公知又は市販のものを適宜使用することもできる。
【0034】
本発明では、必要に応じて、後記の試験例で示すように、測定結果に実質的に影響を与えない範囲内において、フィルターに補強材を付加しても良い。上記の測定方法では、フィルターに極めて高い圧力が加わるため、フィルター単体ではフィルターが変形又は破損するおそれがある。そのような場合は、フィルターを補強材で支持することが好ましい。補強材としては、網目状の金属部材等を用いることができる。より具体的には、フィルターの変形を防止できる強度を有し、かつ、測定結果に実質的に影響を及ぼさない粗い網目を有する金属製フィルターを補強材として好適に用いることができる。そして、このような補強材を上記フィルターの下流側に積層することによって用いることができる。
【0035】
本発明樹脂は、ポリエステル樹脂であれば、その種類は限定されないが、その中でもポリエチレンテレフタレート(PET)を主体とするものであることが好ましい。本発明の再生ポリエステル樹脂中におけるPETの含有量は70質量%以上であることが好ましく、中でも80質量%以上であることが好ましく、さらには90~100質量%であることが好ましい。従って、例えばPET含有量95~99質量%の再生ポリエステル樹脂も、本発明に包含される。
【0036】
特に、後記の本発明の製造方法においては、通常はエチレングリコールとテレフタル酸の重縮合物であるPETを得ることができるが、リサイクルポリエステル原料において、エチレングリコールとテレフタル酸以外の成分が存在する際には、PET以外のポリエステル樹脂が重縮合反応により生成する場合もある。このため、本発明樹脂としては、主体となるPET以外に、酸成分又はグリコール成分として、以下に示す成分が共重合されていても良い。これらの成分は2種以上含まれていても良い。
【0037】
酸成分としては、例えばイソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ドデカン二酸等、ダイマー酸、更には無水トリメリット酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、ダイマー酸等が挙げられる。
【0038】
グリコール成分としては、例えばネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,2-プロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサメチレンジオール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ダイマージオール、ブチルエチルプロパンジオール、(2-メチル1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA又はビスフェノールSのエチレンオキシド付加体等を挙げることができる。
【0039】
2.再生ポリエステル樹脂の製造方法
本発明樹脂の製造方法は、限定的ではないが、例えば次の製造方法によって本発明樹脂を好適に製造することができる。すなわち、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料を用いて再生ポリエステル樹脂を製造する方法であって、
(1)エチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールとを含む混合物に、前記原料を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.35となるように添加し、245~280℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより解重合体を含む反応生成物を得る工程、(解重合工程)
(2)前記反応生成物を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて濾液を回収する工程(ろ過工程)、
(3)前記濾液に重合触媒を添加し、温度260℃以上及び1.0hPa以下の減圧下で前記解重合体の重縮合反応を行う工程(重縮合工程)
を含むことを特徴とする再生ポリエステル樹脂の製造方法を好適に採用することができる。換言すれば、本発明の再生ポリエステル樹脂は、上記の再生ポリエステル樹脂の製造方法によって得られる再生ポリエステル樹脂を好適に採用することができる。
【0040】
解重合工程
解重合工程では、エチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールとを含む混合物に、前記原料を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.35となるように添加し、245~280℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより解重合体を含む反応生成物を得る。
【0041】
エチレンテレフタレートオリゴマー及びエチレングリコールは、いずれも公知又は市販のものを使用することができる。また、公知の製造方法によって製造することもできる。
【0042】
特に、エチレンテレフタレートオリゴマーとしては、例えばエチレングリコールとテレフタル酸とのエステル化反応物を好適に用いることができる。また、エチレンテレフタレートオリゴマーの数平均重合度は、限定的ではないが、例えば2~20程度とすることができる。
【0043】
エチレンテレフタレートオリゴマーの使用量は、特に限定されないが、最終的に得られる再生ポリエステル樹脂100質量%中0.20~0.80質量%程度とすることが好ましく、特に0.30~0.70質量%とすることがより好ましい。エチレンテレフタレートオリゴマーの量が上記より少ない場合、リサイクルポリエステル原料を投入した際に、リサイクルポリエステル原料どうしがブロッキングを起こしやすくなり、攪拌機に過大な負荷がかかるおそれがある。一方、エチレンテレフタレートオリゴマーの量が上記範囲より多い場合は解重合反応に特に問題は起きないが、最終的に得られる再生ポリエステル樹脂のリサイクル率が低くなることがある。
【0044】
エチレングリコールの添加量は、解重合反応を十分に進行させるという見地より、エチレンテレフタレートオリゴマーを100質量部に対して5~15質量部とすることが好ましく、その中でも10~15質量部とすることがより好ましい。エチレングリコールの添加量が15質量部を超えると、反応器内でエチレンテレフタレートオリゴマーが固化しやすくなり、以後の反応が継続できなくなる場合がある。
【0045】
エチレンテレフタレートオリゴマー及びエチレングリコールの混合に際しては、特に限定されないが、例えばエチレンテレフタレートオリゴマー中にエチレングリコールを添加することが好ましい。また、添加する際は、オリゴマーの固化を防ぐ目的で、攪拌機を回しながら内容物の温度を均一にし、添加することが好ましい。
【0046】
エチレンテレフタレートオリゴマー及びエチレングリコールの混合物に対し、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料を添加する。上記a)及びb)の具体例としては、前記1.で挙げたものと同様のものを使用することができる。
【0047】
リサイクルポリエステル原料を投入する際には、常圧下で撹拌しながら行うことが好ましく、少量の不活性ガス(一般的には窒素ガスを使用)でパージした状態で投入することがより好ましい。これによって、酸素の混入を妨げ、色調の悪化をより確実に防ぐことができる。
【0048】
ポリエステル原料は、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.35となるように添加する。前記モル比は、特に1.10~1.33であることが好ましく、その中でも1.12~1.30であることが好ましい。全グリコール成分/全酸成分のモル比が上記範囲外である場合、得られる再生ポリエステル樹脂は、本発明で規定するカルボキシル末端基濃度及びジエチレングリコールの含有量の少なくとも一方を満足しないものとなり、また平均昇圧速度も高くなる。これは、解重合反応を行う際の全グリコール成分/全酸成分のモル比が上記範囲外である場合、各種の無機物及び非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率良く行われないため、ろ過工程でこれらの異物を効果的に濾過することができず、重縮合工程後に異物が析出しやすくなる結果、平均昇圧速度が高い再生ポリエステル樹脂となる。
【0049】
本発明の製造方法においては、特に解重合工程が重要である。つまり、リサイクルポリエステル原料を利用した従来の方法においては、リサイクルポリエステル原料のみを用いて解重合を行っているのに対し、本発明においてはエチレンテレフタレートオリゴマー及びエチレングリコールの存在下でリサイクルポリエステル原料の解重合反応を行い、かつ、オリゴマー、エチレングリコール及びリサイクルポリエステル原料の全ての成分を全グリコール成分/全酸成分のモル比が上記範囲内になるようにリサイクルポリエステル原料を投入し、解重合反応を行う。このようにすることにより、各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率良く行われるため、後記のろ過工程において、これらの異物を効果的に濾過することができる。そして、後記の重縮合工程において、ジエチレングリコールの含有量及びカルボキシル末端基濃度が特定量以下のものであり、かつ、異物の混入量が比較的少ない再生ポリエステル樹脂を得ることが可能となる。なお、本発明の製造方法においては、上記の解重合反応により、リサイクルポリエステル原料がモノマーにまで分解されずに、繰り返し単位が5~20程度のオリゴマーまで分解されることが望ましい。このように制御することにより、各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率良く行われる結果、より多くの異物を取り除くことが可能となる。
【0050】
解重合工程において、解重合時の反応温度(特に反応器の内温)を245~280℃の範囲に設定して行うことが好ましく、その中でも255~275℃の範囲に設定して行うことがより好ましい。解重合時の反応温度が245℃未満になる場合には、反応物が固化し、操業性が悪化するとともに、再生ポリエステル樹脂が得られたとしても、ジエチレングリコールの含有量又はカルボキシル末端基濃度が高くなりすぎる傾向となる。前記反応温度が280℃を超える場合は、得られる再生ポリエステル樹脂のジエチレングリコールの含有量又はカルボキシル末端基濃度が高くなりすぎるおそれがある。
【0051】
また、解重合の反応時間(リサイクルポリエステル原料の投入終了後からの反応時間)は、特に限定されないが、通常は4時間以内とすることが好ましく、特にジエチレングリコールの副生量を抑えること、ポリエステルの色調悪化を抑えること等の観点から2時間以内とすることがより好ましい。前記反応時間の下限値は、限定的ではなく、例えば1時間程度とすることもできる。
【0052】
本発明の製造方法で用いる反応装置は、特に限定されず、公知又は市販の装置も使用することができる。特に、反応器においても、その容量、攪拌翼形状等は一般的に使用されているエステル化反応器で特に問題ないが、解重合反応を効率的に進めるため、エチレングリコールを系外に溜出させない蒸留塔を併設している構造を有する反応器であることが好ましい。
【0053】
ろ過工程
ろ過工程では、前記反応生成物を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて濾液を回収する。
【0054】
前記の解重合工程で得られる反応生成物は、主としてポリエステル原料の解重合体を含む液状体である。ろ過工程では、その液状体を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて異物を濾過するとともに、濾液を回収する。前記の解重合工程では、各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率良く行われるため、濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させることにより、析出した異物を濾過し、異物の混入量の少ない解重合体を得ることができる。濾過粒度が25μmより大きいフィルターを使用すると、ポリマー中の異物を十分に除去できず、得られる再生ポリエステル樹脂中の異物が多くなる。このため、このような樹脂を用いて紡糸を行うと、ノズルパックの昇圧又は切糸が生じる。一方、濾過粒度が10μmよりも小さいフィルターを使用すると、異物による目詰まりが生じやすく、フィルターライフが短くなることにより、コスト的に不利となるほか、操業性も低下するおそれがある。
【0055】
ろ過工程で使用できるフィルターとしては、一般的なもので特に問題ないが、特に金属製フィルターが好ましい。材質としては、例えばステンレス鋼等が挙げられる。フィルター形式も、特に限定されず、例えばスクリーンチェンジャー式フィルター、リーフディスクフィルター、キャンドル型焼結フィルター等が挙げられる。これらは、公知又は市販のものを使用することができる。
【0056】
重縮合工程
重縮合工程では、前記濾液に重縮合触媒を添加し、温度260℃以上及び1.0hPa以下の減圧下で前記解重合体の重縮合反応を行う。
【0057】
重縮合触媒としては、限定的ではないが、例えばゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、コバルト化合物等の少なくとも1種を用いることができる。その中でも、特にゲルマニウム化合物及びアンチモン化合物の少なくとも1種を使用する。得られる再生ポリエステル樹脂の透明性を重視する場合においては、ゲルマニウム化合物を使用することが好ましい。上記の各化合物としては、ゲルマニウム、アンチモン、チタン、コバルト等の酸化物、無機酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、硫化物等が例示される。
【0058】
重縮合触媒の使用量は、特に限定されないが、例えば生成するポリエステル樹脂の酸成分1モルに対して5×10-5モル/unit以上とすることが好ましく、その中でも6×10-5モル/unit以上とすることがより好ましい。上記使用量の上限は、例えば1×10-3モル/unit程度とすることができるが、これに限定されない。
【0059】
なお、リサイクルポリエステル原料中に含まれる重合触媒も、重縮合反応時に触媒として作用する場合もあるため、重縮合工程で重合触媒を添加する際には、リサイクルポリエステル原料中に含まれる重合触媒の種類及びその含有量を考慮することが好ましい。
【0060】
また、重縮合反応時には、必要に応じて、上記の重縮合触媒と併せて、溶融粘度を調整することができる脂肪酸エステル、ヒンダードフェノール系抗酸化剤、樹脂の熱分解を抑制することができるリン化合物を添加することもできる。
【0061】
脂肪酸エステルとしては、例えば蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等が挙げられる。これらの中でも、グリセリンモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレートが好ましい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0062】
ヒンダードフェノール系抗酸化剤としては、例えば2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、3,9-ビス{2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1’-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等が用いられるが、効果とコストの点で、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンが好ましい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0063】
リン化合物としては、例えば亜リン酸、リン酸、トリメチルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリデシルフォスフェート、トリフェニルフォスフォート等のリン化合物を用いることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0064】
重縮合反応において、温度260℃以上及び1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う。重縮合反応温度が260℃未満である場合、あるいは重縮合反応時の圧力が1.0hPaを超える場合、重縮合反応時間が長くなるため、生産性に劣るものとなる。重縮合反応温度は、その中でも270℃以上とすることがより好ましい。ただし、重縮合反応温度が高過ぎると熱分解によりポリマーが着色し、色調が悪化すること、同じく熱分解により末端基量(COOH)が高くなる。このため、本発明においては、重縮合反応温度の上限は、一般的には285℃以下とすることが好ましい。
【0065】
上記の重縮合反応により得られる本発明の再生ポリエステル樹脂の極限粘度は、特に限定されないが、通常は0.44~0.80程度であることが好ましい。また、本発明の再生ポリエステル樹脂は、後述するように、固相重合工程を経て高重合度化することで成形用途に用いることも可能である。この場合、得られる再生ポリエステル樹脂の極限粘度は0.80~1.25とすることが好ましい。
【0066】
結晶化工程
本発明では、必要に応じて、上記で得られたポリエステル樹脂をさらに結晶化工程に供することもできる。これにより、ポリエステル樹脂の結晶性を高めることができる。
【0067】
結晶化条件は、特に限定されないが、例えば用いるポリエステル樹脂の結晶化温度又はそれ以上の温度で熱処理をすることによって実施することができる。例えば、ポリエステル樹脂がPETの場合、PETの結晶化温度が通常130℃程度であるので、例えば135℃以上(好ましくは140~180℃)の温度下で熱処理することができる。熱処理時間は、熱処理温度等により変更でき、例えば30分~20時間程度とすることができるが、これに限定されない。
【0068】
固相重合工程
また、本発明では、必要に応じて、前記の重縮合工程又は結晶化工程で得られる樹脂をさらに固相重合反応に供することもできる。これにより、再生ポリエステル樹脂をさらに高重合度化することによって成形用としてより適した物性とすることができる。
【0069】
固相重合反応の条件は、限定的ではないが、得られる再生ポリエステル樹脂の極限粘度は0.80~1.25(特に0.82~1.24)となるように熱処理を実施することが好ましい。より具体的には、例えば、前記の重縮合工程又は結晶化工程で得られる樹脂を不活性ガス雰囲気下180~240℃程度で熱処理することによって実施することができる。熱処理時間は、熱処理温度等によるが、通常は5~50時間程度とすれば良い。
【0070】
3.再生ポリエステル樹脂の使用
本発明樹脂は、そのまま又は必要に応じて他の添加剤を配合して樹脂組成物とした上で各種の製品の製造に用いることができる。
【0071】
添加剤としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記したような重合触媒、抗酸化剤、リン化合物等の添加剤のほか、着色剤、顔料、分散剤、フィラー、紫外線吸収剤、増粘剤、帯電防止剤、着色防止剤、安定剤、難燃剤、滑剤等が挙げられる。
【0072】
特に、着色防止剤も好適に用いることができる。例えば、亜リン酸、リン酸、トリメチルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリデシルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート等のリン化合物を用いることができる。これらのリン化合物は、単独で使用しても良いし、2種以上併用しても良い。
【0073】
また、ポリエステル樹脂の熱分解による着色を抑制するために酢酸コバルト等のコバルト化合物、酢酸マンガン等のマンガン化合物、アントラキノン系染料化合物、銅フタロシアニン系化合物等の添加剤が含有されていても良い。
【0074】
各種の製品としては、従来のポリエステル製品と同様の形態を採用することができる。ポリエステル製品としては、例えば繊維、成形品、フィルム等の形態に好適に用いることができる。
【0075】
繊維の場合は、例えば本発明樹脂を含む原料を溶融し、紡糸する工程を含む製造方法によって繊維を製造することができる。これにより、例えば単糸繊度が0.8デシテックス以下(好ましくは0.6~0.3デシックス)の極細繊維も製造することができる。紡糸方法等は、公知の条件に従って実施することができる。
【0076】
本発明樹脂は、前記したように異物の含有量が比較的少なく、バージンポリエステル樹脂と同等の特性を有しているため、溶融紡糸、延伸・熱処理、巻取工程のいずれにおいても糸切れのトラブルが生じにくく、生産性良くポリエステル繊維を得ることができる。
【0077】
本発明樹脂を含有する本発明の繊維としては、例えばモノフィラメント、マルチフィラメント等のいずれであっても良く、また長繊維、短繊維等のいずれであっても良い。繊維の製造においては、一般的にマルチフィラメントを製造する方が困難度が高いが、本発明の繊維では、例えば単糸繊度0.3~30デシテックス、単糸数2~300、総繊度5~350、強度1~5cN/デシテックス、伸度10~400%の特性値を有するマルチフィラメントとすることができる。その中でも製造することの困難度がより高い極細繊維も得ることができる。
【0078】
成形品の場合は、例えば本発明樹脂を含む原料を用いてプレス成形、押出成形、圧空成形、ブロー成形等の各種の成形方法を適用することにより製造することができる。これにより、容器をはじめ、各種の部品を提供することができる。本発明樹脂は、バージンのポリエステル樹脂に近い特性を有し、熱安定性に優れているという理由から、特にブロー成形品の製造に適している。従って、本発明樹脂を含む溶融物からパリソンを得る工程及び前記パリソン内部に気体を吹き込む工程を含む成形体の製造方法を好適に採用することができる。これによって、容器等の成形体を製造することができる。
【0079】
フィルムの場合は、本発明樹脂を含む原料を用いて、公知のフィルム製膜法によって成形することができる。例えば、上記原料の溶融物をTダイから押出後、キャスティングロールで冷却して未延伸シートを作製する。本発明樹脂は、異物の含有量が比較的少なく、熱安定性に優れているため、MD及びTD方向への延伸を操業性良く行うことができる。延伸方法としては、一軸延伸又は二軸延伸のどちらでも良く、二軸延伸方法としては、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれの方法も採用することができる。そして、バージンポリエステル樹脂を用いた場合とほぼ同様の強度、伸度等の特性値を有し、かつ、透明性に優れたポリエステルフィルムを得ることができる。
【0080】
フィルムの厚みは、限定的ではないが、通常は10~50μmの範囲内で適宜設定することができる。また、必要に応じて、他の層(例えば、接着層、ヒートシール層、表面保護層、印刷層、意匠層等)と積層して積層体として使用することができるほか、その積層体を成形することにより上記のような各種の成形体として利用することもできる。
【実施例】
【0081】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0082】
A.再生ポリエステル樹脂について
実施例1
エステル化反応器に、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)のスラリー(TPA/EGモル比=1/1.6)を供給し、温度250℃及び圧力50hPaの条件で反応させ、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー45.0質量部をエステル化反応器に仕込み、続いてエステル化反応器の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを10.0質量部投入した。エステル化反応器(以後「ES缶」と表記する。)の内温降下が止まったところより、55.0質量部のリサイクルポリエステル原料(ポリエステル樹脂を製造する工程で発生するポリエステル屑のペレット状のもの)をロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。
このとき、リサイクルポリエステル原料を、全グリコール成分/全酸成分のモル比(以下「G/A」と表記することがある。)が1.20となるように投入した。その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、エステル化反応器と重縮合反応器との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットして重縮合反応器(以後PC缶と表記)へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.20質量%となるように加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa及び温度275℃で4時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂(極限粘度:0.64)を得た。
【0083】
実施例2
実施例1と同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。エチレンテレフタレートオリゴマー45.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを7.0質量部投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、55.0質量部のリサイクルポリエステル原料(PETボトルを粉砕又は再溶融してペレット化したもの)をロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。
このとき、リサイクルポリエステル原料を、G/Aが1.16となるように投入した。その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.40質量%となるように加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度275℃で4時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂(極限粘度:0.64)を得た。
【0084】
実施例3
実施例1と同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー55.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを15.0質量部投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、45.0質量部のリサイクルポリエステル原料(実施例1と同様のもの)をロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。
このとき、リサイクルポリエステル原料を、G/Aが1.33となるように投入した。その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unitとなるように加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度275℃で2時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂(極限粘度:0.46)を得た。
【0085】
実施例4
実施例1と同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー30.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを7.0質量部投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、70.0質量部のリサイクルポリエステル原料(実施例1と同様のもの)をロータリーバルブを介し約2時間かけて定量投入した。
このとき、リサイクルポリエステル原料をG/Aが1.10となるように投入した。その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unitとなるように加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度275℃で5時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂(極限粘度:0.65)を得た。
【0086】
実施例5
実施例1と同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー45.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを10.0質量部投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、55.0質量部リサイクルポリエステル原料(実施例1と同様のもの)をロータリーバルブを介し、約2時間かけて定量投入した。
このとき、リサイクルポリエステル原料をG/Aが1.20となるように投入した。その後、250℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、酢酸コバルトを0.5×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.30質量%となるように加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度280℃で6時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂(極限粘度:0.82)を得た。
【0087】
実施例6
実施例1と同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー45.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを10.0質量部投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、55.0質量部のリサイクルポリエステルをロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。このとき、リサイクルポリエステル原料(実施例1と同様のもの)をG/Aが1.20となるように投入した。
その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き25μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、酢酸コバルトを0.5×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.05質量%となるように加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度280℃で3時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂(極限粘度:0.56)を得た。
【0088】
実施例7
実施例1と同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー45.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを10.0質量部投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、55.0質量部のリサイクルポリエステルをロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。このとき、リサイクルポリエステル原料(実施例1と同様のもの)をG/Aが1.20となるように投入した。
その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き15μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、酢酸コバルトを0.5×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.05質量%となるように加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度280℃で2時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂(極限粘度:0.50)を得た。
【0089】
実施例8
実施例1と同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー45.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを10.0質量部投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、55.0質量部のリサイクルポリエステルをロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。このとき、リサイクルポリエステル原料(実施例1と同様のもの)をG/Aが1.20となるように投入した。
その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き10μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、酢酸コバルトを0.5×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.05質量%となるように加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度280℃で5時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂(極限粘度:0.75)を得た。
【0090】
実施例9
実施例1と同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー45.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを10.0質量部投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、55.0質量部のリサイクルポリエステルをロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。このとき、リサイクルポリエステル原料(実施例1と同様のもの)をG/Aが1.20となるように投入した。
その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、酢酸コバルトを0.5×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.05質量%となるように加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度260℃で7時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂(極限粘度:0.61)を得た。
【0091】
比較例1
実施例1と同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー30.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコール2.5質量部を投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、70.0質量部のリサイクルポリエステルをロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。このとき、リサイクルポリエステル原料(実施例1と同様のもの)をG/Aが1.06となるように投入した。
その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、酢酸コバルトを0.5×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.40質量%となるように加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度275℃で4時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂(極限粘度:0.64)を得た。
【0092】
比較例2
実施例1と同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー50.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコール19.0質量部を投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、50.0質量部のリサイクルポリエステルをロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。このとき、リサイクルポリエステル原料(実施例1と同様のもの)をG/Aが1.36となるように投入した。
その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、酢酸コバルトを0.5×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.40質量%となるように加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度275℃で4時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂(極限粘度:0.64)を得た。
【0093】
比較例3
実施例1と同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー45.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコール7.0質量部を投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、55.0質量部のリサイクルポリエステルをロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。このとき、リサイクルポリエステル原料(実施例1と同様のもの)をG/Aが1.16となるように投入した。
その後、290℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、酢酸コバルトを0.5×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.40質量%となるように加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度275℃で4時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂(極限粘度:0.64)を得た。
【0094】
比較例4
実施例1と同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー45.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを10.0質量部投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、55.0質量部のリサイクルポリエステル原料をロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。このとき、リサイクルポリエステル原料(実施例1と同様のもの)をG/Aが1.20になるように投入した。
その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き30μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを0.7×10-4mol/unit、酢酸コバルトを0.5×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.40質量%となるように加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度275℃で4時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂(極限粘度:0.64)を得た。
【0095】
比較例5
実施例1と同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
48.8質量部のリサイクルポリエステル原料(実施例1と同様のもの)をES缶に仕込み、続いてエチレングリコールを19.2質量部投入し、250℃の熱処理条件下で4時間解重合反応を行った。この解重合反応時の全グリコール成分/全酸成分のモル比は1.59であった。
そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、51.2質量部のエチレンテレフタレートオリゴマーをPC缶に仕込み、前述の解重合体と混合した。このとき、リサイクルポリエステル原料をG/Aが1.37となるように投入した。
その後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、酢酸コバルトを0.5×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.40質量%となるように加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度275℃で4時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂(極限粘度:0.64)を得た。
【0096】
比較例6
実施例1と同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー45.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを7.0質量部投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、55.0質量部のリサイクルポリエステルをロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入したところ、反応器内で内容物が固化し、以後の反応続行が不可となった。
【0097】
比較例7
実施例1と同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー45.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを7.0質量部投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、55.0質量部のリサイクルポリエステル原料(実施例1と同様のもの)をロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。このとき、リサイクルポリエステル原料をG/Aが1.16となるように投入した。その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、酢酸コバルトを0.5×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.40質量%となるように加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度255℃で溶融重合反応を行ったが、再生ポリエステル樹脂を得ることができなかった。
【0098】
試験例1
実施例1~9及び比較例1~7で得られた再生ポリエステル樹脂について以下の特性をそれぞれ調べた。その結果を表1に示す。なお、各特性値等の測定又は評価は、以下のようにして実施した。
【0099】
(a)極限粘度
得られた再生ポリエステル樹脂を用い、フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃で測定するものである。
【0100】
(b)ポリエステル樹脂の組成
得られたポリエステル樹脂を、重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比が1:20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製「LA-400型NMR」装置にて1H-NMRを測定し、得られたチャートの各成分のプロトンのピークの積分強度から、共重合成分の種類と含有量を求めた。
【0101】
(c)カルボキシル末端基濃度
得られた再生ポリエステル樹脂0.1gをベンジルアルコール10mlに溶解し、この溶液にクロロホルム10mlを加えた後、1/10規定の水酸化カリウムベンジルアルコール溶液で滴定して求めた。
【0102】
(d)昇圧試験機により測定した平均昇圧速度
ポリエステル樹脂を、エクストルーダーにて300℃で溶融し、エクストルーダーの先端にフィルターとして、ステンレス鋼製綾畳織フィルター(呼び寸法メッシュ:1400メッシュ、織り方:綾畳織、縦メッシュ:165メッシュ、横メッシュ:1400メッシュ、縦線径:0.07mm、横線径:0.04mm、濾過粒度:12μm、粘性抵抗係数(m-1):2.60×107、慣性抵抗係数:5.14×10、(株)上條精機製)をセットし、さらにその背面(下流側)に補強材(ステンレス鋼製平織金網(呼び寸法メッシュ:40メッシュ、織り方:平織、線径:0.21mm(株)上條精機製)を積層した後、ポリマー吐出量を29.0g/分として、フィルター圧力を昇圧試験機:アサヒゲージ社製「MES-Y44D型」検出器を用いて測定する。前記の昇圧試験機を用いた昇圧試験を12時間連続して行い、昇圧試験を始める際の初期圧力値(MPa)(ポリエステル樹脂がフィルターを通り始めてから5~10分の間の圧力の最小値を初期圧力とする。)と、12時間経過時点の最終圧力値(MPa)の値から、下記計算式により平均昇圧速度を算出する。
平均昇圧速度(MPa/h)=(最終圧力値-初期圧力値)/12
【0103】
【0104】
表1の結果からも明らかなように、実施例1~9で得られた再生ポリエステル樹脂は、カルボキシル末端基量、ジエチレングリコールの含有量、平均昇圧速度が本発明で規定する範囲内のものであったため、紡糸操業性に優れていた。
一方、比較例1では、解重合反応時のG/Aが低いため、得られた再生ポリエステル樹脂は、カルボキシル末端基濃度が高く、平均昇圧速度も高いものであった。
比較例2では、解重合反応時のG/Aが高いため、得られた再生ポリエステル樹脂は、ジエチレングリコールの含有量が高く、平均昇圧速度も高いものであった。
比較例3では、解重合工程を290℃の熱処理条件下で行ったため、得られた再生ポリエステル樹脂は、カルボキシル末端基濃度及びジエチレングリコールの含有量が高いものであった。
比較例4では、ES缶とPC缶間に設けたキャンドルフィルターの濾過粒度が30μmであったため、得られた再生ポリエステル樹脂は、平均昇圧速度が高いものとなった。
比較例5では、本発明の製造方法を行わず、解重合反応時のG/Aが高かったため、得られた再生ポリエステル樹脂は、ジエチレングリコールの含有量が高く、平均昇圧速度も高いものであった。
比較例6では、解重合工程を230℃の熱処理条件下で行ったため、反応器内で内容物が固化し、以降の反応続行が不可能となった。
比較例7では、重縮合工程における重縮合反応温度を255℃で行ったため、重合速度が遅く、再生ポリエステル樹脂を得ることができなかった。
【0105】
B.再生ポリエステル樹脂を用いた繊維について
実施例10
実施例1で得られた再生ポリエステル樹脂をエクストルーダー型溶融紡糸機によって、樹脂温度295℃、濾過粒度20μmのフィルターを備えた紡糸ノズル(孔径0.15mm、孔数84ホール)より紡出し、2900m/分の紡糸速度で巻き取った。得られた未延伸糸を延伸装置にて延伸温度160℃、延伸倍率1.5倍で延伸し、繊度35dtexの延伸マルチフィラメント糸を得た。
【0106】
実施例11
実施例4で得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例10と同様にして紡糸、延伸を行い、延伸マルチフィラメント糸を得た。
【0107】
実施例12
実施例1で得られた再生ポリエステル樹脂をエクストルーダー型溶融紡糸機によって、樹脂温度301℃、濾過粒度15μmのフィルターを備えた紡糸ノズル(孔径0.2mm、孔数72ホール)より紡出し、3250m/分の紡糸速度で巻き取った。得られた未延伸糸を延伸装置にて延伸温度160℃、延伸倍率1.6倍で延伸し、繊度84dtexの延伸マルチフィラメント糸を得た。
【0108】
実施例13
実施例4で得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例12と同様にして紡糸、延伸を行い、延伸マルチフィラメント糸を得た。
【0109】
比較例8
比較例1で得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例10と同様にして紡糸、延伸を行おうとしたが、紡糸時の昇圧が激しく、切糸が多発したために未延伸糸を得ることができなかった。
【0110】
比較例9
比較例2で得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例10と同様にして紡糸、延伸を行い、延伸マルチフィラメント糸を得た。
【0111】
試験例2
実施例10~13、比較例9で得られた延伸マルチフィラメント糸の強度、伸度、毛羽数、操業性(切糸、昇圧)を調べた。その結果を表2に示す。なお、強度、伸度、毛羽数、操業性(切糸、昇圧)の測定又は評価は、以下のようにして行った。
【0112】
(e)強度及び伸度
テンシロンRTC-1210(オリエンテック社製)を用いて、JIS L1013に基づいて測定した。
【0113】
(f)毛羽数
延伸糸を用いて、整経機を用いて毛羽数(個/108 m)を測定した。この測定は、繊維長3×108mで行った。
【0114】
(g)操業性(切糸、昇圧)
切糸:24時間連続して紡糸を行った間の切糸回数を数え、3回以下/24時間を「○」とし、4回以上/24時間を「×」とした。
昇圧:24時間連続して紡糸し、その間ノズルパック圧力を測定し、紡糸初期に設定した圧力よりも2MPa以上の昇圧が生じなかった場合を「○」、前記のような昇圧が生じた場合を「×」とした。
【0115】
【0116】
表2から明らかなように、実施例10~13においては、再生ポリエステル樹脂を用いてマルチフィラメント糸を紡糸操業性良く得ることができ、得られたマルチフィラメント糸は糸質物性が良好であり、実用上問題のない繊維を得ることができた。特に実施例10、11においては、単繊維繊度が0.5デシテックス以下の極細のマルチフィラメントを紡糸操業性良く製造することができた。
一方、比較例8では、比較例1で得られた再生ポリエステル樹脂を用いたために、紡糸時の昇圧が激しく、切糸が多発したために未延伸糸を得ることができなかった。
比較例9では、延伸マルチフィラメント糸を得ることはできたものの、低強度・低伸度のものとなり、また、毛羽の発生が多く、実用上問題のあるものであった。
【0117】
C.再生ポリエステル樹脂を用いた成形品について
実施例14
実施例1で得られた再生ポリエステル樹脂(極限粘度0.64)を結晶化装置に連続的に供給し、150℃で結晶化をさせた後、乾燥機に供給し、175℃で4時間乾燥後、予備加熱機に送り、210℃まで加熱した後、固相重合機へ供給し、窒素ガス雰囲気下にて固相重合反応を210℃で30時間行い、極限粘度1.21の再生ポリエステル樹脂を得た。
固相重合反応により得られた再生ポリエステル樹脂をチップ化し、乾燥させた後、ダイレクトブロー成形機(タハラ社製)を用い、押出温度280℃で樹脂を押出して円筒形パリソンを形成し、パリソンが軟化状態にあるうちに金型で挟み、底部形成を行い、これをブローしてボトルを成形した。このとき、パリソン径3cmで長さが25cmとなったところで底部形成を行い、ブロー成形して350mlの中空容器(ダイレクトブロー成形品)を得た。
【0118】
実施例15
実施例4で得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例14と同様にして固相重合反応を行い、極限粘度1.15の再生ポリエステル樹脂を得た。
固相重合反応により得られた再生ポリエステル樹脂を用い、実施例14と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、中空容器を得た。
【0119】
比較例10
比較例1で得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例14と同様にして固相重合反応を行い、極限粘度1.18の再生ポリエステル樹脂を得た。
固相重合反応により得られた再生ポリエステル樹脂を用い、実施例14と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、中空容器を得た。
【0120】
比較例11
比較例2で得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例14と同様にして固相重合反応を行い、極限粘度1.20の再生ポリエステル樹脂を得た。
固相重合反応により得られた再生ポリエステル樹脂を用い、実施例14と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、中空容器を得た。
【0121】
試験例3
実施例14~15及び比較例10~11で得られた中空容器の成形性、ヘーズ及び耐衝撃性の評価結果を表3に示す。なお、成形性、ヘーズ及び耐衝撃性の評価又は測定は、以下のようにして行った。
【0122】
(h)成形性
得られた容器(サンプル数100本)の胴部の厚さを測定し、最厚部と最薄部の厚さの差が0.30mmまでのものを合格とし、合格のサンプル数を示した。
【0123】
(i)ヘーズ
得られた容器から切り出してサンプル片(20個)を作成し、濁度を日本電色工業社製の濁度計 MODEL 1001DPで測定し(空気:ヘーズ0%)、n数=20の平均値とした。この値が小さいほど透明性が良好であり、6%以下であれば透明性に優れていると判定した。
【0124】
(j)耐衝撃性
前記(h)の成形性の評価にて、合格となった成形品(サンプル数100本)に、水道水340mlを充填し、室温下にて、Pタイル上に、200cmの高さから、成形体の底面を下向き、側面を下向きにして成形体を1回ずつ落下させた。このとき割れなかった成形体の本数が90本以上の場合、耐衝撃性が良好であると評価した。
【0125】
【0126】
表3の結果からも明らかなように、実施例14~15で得られた中空容器は、成形性良く得ることができ、得られた中空容器はヘーズが低く、透明性に優れており、耐衝撃性にも優れていた。
一方、比較例10では、カルボキシル末端基濃度が高い再生ポリエステル樹脂を用いたため、成形性に劣るものであり、また得られた中空容器は透明性及び耐衝撃性ともに劣るものであった。
比較例11では、ジエチレングリコールの含有量が多い再生ポリエステル樹脂を用いたため、成形性に劣るものであり、得られた中空容器は透明性及び耐衝撃性ともに劣るものであった。
【0127】
D.再生ポリエステル樹脂を用いたフィルムについて
実施例16
実施例1で得られた再生ポリエステル樹脂(極限粘度0.64)を93.5質量%、シリカ粒子を1.5質量%含有するポリエチレンテレフタレート樹脂をマスターチップとして6.5質量%混合し、両樹脂を押出機内で溶融混練し、Tダイへ供給してシート状に吐出し、20℃に温調した金属ドラムに巻き付け、冷却して巻き取ることにより、約150μmの厚みの未延伸シートを製造した。次いで、この未延伸シートの端部をテンター式同時二軸延伸装置のクリップで保持し、180℃の条件下で、MD方向に3.0倍、TD方向に3.3倍の延伸倍率で同時二軸延伸した後、TD方向の弛緩率を5%として215℃で4秒間の熱処理を施し、室温まで徐冷し、片面にコロナ放電処理を行った後に巻き取った。このようにして、厚さが15μmの二軸延伸PET樹脂フィルムを得た。このフィルム中のリサイクル比率は51.4%であった。
【0128】
実施例17
実施例1で得られた再生ポリエステル樹脂に代えて、実施例4で得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例16と同様にして未延伸シートを製造し、実施例16と同様にして延伸熱処理を行い、厚さ15μmの二軸延伸PET樹脂フィルムを得た。
【0129】
比較例12
実施例1で得られた再生ポリエステル樹脂に代えて、比較例1で得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例16と同様にして未延伸シートを製造しようとしたが、Tダイのリップ面の汚染、フィルムの破断、ロール汚染等の原因により、操業開始から2時間で生産できない状況に陥り、未延伸シートを延伸工程に供することができず、二軸延伸PET樹脂フィルムを得ることができなかった。
【0130】
比較例13
実施例1で得られた再生ポリエステル樹脂に代えて、比較例2で得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例16と同様にして未延伸シートを製造し、実施例16と同様にして延伸熱処理を行い、厚さ12μmの二軸延伸PET樹脂フィルムを得た。しかしながら、比較例12と同様の理由により、24時間以上連続操業することができず、14時間で生産できない状況となった。
【0131】
試験例4
実施例16~17、比較例13で得られた二軸延伸PET樹脂フィルムの特性値、操業性の評価結果を表4に示す。なお、引張強度、ヘーズ及び操業性の評価又は測定は、以下のようにして行った。
【0132】
(k)引張強度(MPa)
島津製作所製DSS-500型オ-トグラフを使用し、JIS K7127に準じて引張強度を測定した。実施例、比較例で得られた二軸延伸PET樹脂フィルムのTD方向の中央部を幅10mm、長さ150mmにMD方向、TD方向にそれぞれ切り出したものを試料とした。測定長100mm、引張速度500mm/minの条件で測定を行い、次式により求めた。
引張強度(MPa)=破断時の引張荷重(N)/測定試料の元の平均断面積(mm2)
【0133】
(l)ヘーズ(%)
日本電色社製ヘーズメーター(NDH4000)を用い、JIS K7136に準じて各実施例及び比較例で得られた二軸延伸PET樹脂フィルムのTD方向の中央部を測定した。
【0134】
(m)操業性
ポリエステルフィルムを連続して生産した状況において、下記の基準で評価した。
○:24時間以上連続して操業することができた。
×:24時間の連続操業中に、Tダイのリップ面の汚染、フィルムの破断、ロール汚染等によって、フィルムを生産できない状況に陥った。
【0135】
【0136】
表4の結果からも明らかなように、実施例16~17で得られた二軸延伸PET樹脂フィルムは、MD及びTD方向の引張強度ともに高く、ヘーズが低く、透明性に優れており、バージンポリエステル樹脂からなるフィルムと遜色ない特性値を有していた。さらに、これらは操業性も良好であった。
一方、比較例12では、カルボキシル末端基濃度が高く、平均昇圧速度も高い再生ポリエステル樹脂を用いたため、操業性に劣っており、二軸延伸PET樹脂フィルムを得ることができなかった。
比較例13では、ジエチレングリコールの含有量が多い再生ポリエステル樹脂を用いたため、操業性に劣るものであり、得られた二軸延伸PET樹脂フィルムは引張強度及び透明性ともに劣っていた。