(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】分離装置
(51)【国際特許分類】
B01D 29/00 20060101AFI20220516BHJP
C02F 1/24 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
B01D23/02 A
C02F1/24 D
(21)【出願番号】P 2018122603
(22)【出願日】2018-06-28
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000229128
【氏名又は名称】ベルテクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】特許業務法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大竹 可峻
(72)【発明者】
【氏名】川本 康人
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】金澤 康平
(72)【発明者】
【氏名】石田 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】植木 陽花
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-185455(JP,A)
【文献】特開2014-180615(JP,A)
【文献】特開2009-248026(JP,A)
【文献】特開2009-220096(JP,A)
【文献】特開平08-294602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 29/00-96、35/00-34
C02F 1/24
E03F 5/14-16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に含まれた該液体よりも比重の小さい物質を分離する分離装置であって、
分離槽と、
前記分離槽の内部に配置され、該分離槽の側壁よりも高さが低い起立部と、該起立部と分離槽の側壁との間に配置された横置部を有し、該分離槽の内部を液体の流入領域及び流出領域に仕切る仕切部材と、
前記流入領域に開口し、下位レベルが前記仕切部材の起立部の上端よりも低く且つ上位レベルが該上端よりも高く設定され、該流入領域に液体を流入させる流入口と、
前記仕切部材に於ける前記流入領域に流入した液体の流れ方向に沿った起立部に配置され、液体が前記流入領域から前記流出領域に通過するためのスクリーンと、
前記仕切部材に於ける前記流入領域に流入した液体の流れ方向に交差する起立部に配置された、液体を旋回させるように誘導する旋回誘導部材と、
前記仕切部材に於ける横置部に配置され、液体が前記流入領域から前記流出領域に通過するためのスクリーンと、
前記流入口と対向して配置され、該流入口から流入した液体を前記分離槽の側壁に沿った流れに分流する分流部材と、
前記分流部材によって分流した液体の流れ方向下流側に配置され、該液体に含まれた該液体よりも比重の小さい物質を滞留させる滞留部材と、
前記流出領域に開口し、該流出領域から液体を流出させる流出口と、
を有することを特徴とする分離装置。
【請求項2】
前記流入口と対向し且つ前記分流部材との間であって該流入口の下位レベルと上位レベルの間に配置され、流入領域に流入した液体を前記分流部材方向への流れと前記起立部に配置された旋回誘導部材方向への流れとに分けて案内する案内部材を有することを特徴とする請求項1に記載した分離装置。
【請求項3】
前記流入領域に開口する流入口の両側には、該流入口の上位レベルよりも高い高さを有し、液体の流れを分流部材に向けるように誘導する誘導部材を有することを特徴とする請求項1又は2に記載した分離装置。
【請求項4】
前記分流部材によって分流した液体の流れ方向下流側に配置された前記滞留部材の下流側に、前記流入口の下位レベルと略等しい底面を有し、且つ該底面に開口する排出口と開閉弁とを有する排出路が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載した分離装置。
【請求項5】
前記分流部材によって分流した液体の流れ方向下流側に配置された前記滞留部材の下流側に、前記流入口の上位レベルよりも高く且つ分離槽の側壁の上端よりも低い開口を有するレベル保持路が設けられると共に、該レベル保持路を囲んで該レベル保持路の開口よりも高い高さを有し且つ該レベル保持路の開口よりも低い位置に液体を通路が形成された障壁が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載した分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば工場から排出される排液や排水などの液体に含まれた、この液体よりも比重が小さく液体の上方に浮遊する物質、及び液体よりも比重の大きい固形物を分離するための分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排液中に含まれた固形物を分離する装置として、例えば特許文献1に記載された分離装置が提案されている。この分離装置は、固形物を分離するスクリーンを排液の流れに沿って配置することで、固形物を分離するものである。
【0003】
特許文献1に記載された分離装置では、流入室と流出室をスクリーンで仕切った分離槽を有しており、流入室の一方側の端面に排液が流入する流入口が設けられ、該端面及び対向する端面には排液を流入室の内部で旋回させる誘導部が設けられている。また、流入室に於ける旋回する排液の流れに沿った側面にスクリーンが配置されている。
【0004】
流出室には固形物が分離された後の排液を分離槽の外部に流出させるための流出口が接続されており、該流出口に接続された流出管は流入口と略等しい水位となる位置まで上り勾配で延長されている。
【0005】
上記分離装置では、流入口から排液が流入室に流入することによって、流入室及び流出室の水位が上昇する。そして、流入室の水位が流入口の下位レベルよりも上昇したとき、流出口から延長した流出管から液体が流出する。流入室に対する排液の流入及び流出室からの排液の流出が継続している間、流入室に流入した排液は誘導部に誘導されて旋回流を保持してスクリーンの表面に沿って流れる。
【0006】
そして、排液が流入室の内部で旋回する過程で固形物はスクリーンを通過することなく流入室に堆積し、液成分がスクリーンを通過して流出室に流れることで、排液に含まれた固形物を分離することができる。また、流入室に堆積した固形物は、例えば底部に設けた排出用のバルブを開放して、或いは流入室の上部を開放してバケットなどを利用して排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された発明では、流入室は上部が閉じられており、流入した排液は流入室内部で旋回流となり、この旋回過程で固形物が分離される。このため、排液に例えば油分などが含まれていたとき、このような物質を分離することができない。
【0009】
工場から排出される排液や排水にはこれらの液成分よりも比重の小さい油分などの物質が含まれることがあり、放流するのに先立って、或いは再利用しようとする場合これらの物質を除去する必要がある。このため、排液や排水に含まれた油分などを処理施設で処理しているが、排液や排水に含まれている油分の全てを処理施設で除去しているため大きな負担を強いている。
【0010】
従って、処理施設の上流側で排液や排水に含まれた油分などの多くを除去することができれば、処理施設の負担を軽減できるため有利である。このため、工場からの排液や排水に含まれた比重が小さく浮遊するような物質を除去し得るような分離装置の開発が要求されているのが実情である。
【0011】
本発明の目的は、液体に含まれた該液体よりも比重の小さい物質を分離すると共に、液体よりも比重の大きい固形物を分離することができる分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係る代表的な分離装置は、液体に含まれた該液体よりも比重の小さい物質を分離する分離装置であって、分離槽と、前記分離槽の内部に配置され、該分離槽の側壁よりも高さが低い起立部と、該起立部と分離槽の側壁との間に配置された横置部を有し、該分離槽の内部を液体の流入領域及び流出領域に仕切る仕切部材と、前記流入領域に開口し、下位レベルが前記仕切部材の起立部の上端よりも低く且つ上位レベルが該上端よりも高く設定され、該流入領域に液体を流入させる流入口と、前記仕切部材に於ける前記流入領域に流入した液体の流れ方向に沿った起立部に配置され、液体が前記流入領域から前記流出領域に通過するためのスクリーンと、前記仕切部材に於ける前記流入領域に流入した液体の流れ方向に交差する起立部に配置された、液体を旋回させるように誘導する旋回誘導部材と、前記仕切部材に於ける横置部に配置され、液体が前記流入領域から前記流出領域に通過するためのスクリーンと、前記流入口と対向して配置され、該流入口から流入した液体を前記分離槽の側壁に沿った流れに分流する分流部材と、前記分流部材によって分流した液体の流れ方向下流側に配置され、該液体に含まれた該液体よりも比重の小さい物質を滞留させる滞留部材と、前記流出領域に開口し、該流出領域から液体を流出させる流出口と、を有するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る分離装置では、工場からの排液や排水などの液体に含まれた該液体よりも比重の小さい物質(例えば、浮ゴミのように液体に浮上し得る固形物や油分のような粒子類、以下「浮遊物」という)、及び液体よりも比重の大きい固形物(以下単に「固形物」という)を分離することができる。
【0014】
分離槽は、内部に配置した仕切部材によって、流入領域と流出領域とに仕切られている。液体は流入口から流入領域に流入し、流入口に対向して配置された分流部材によって分離槽の側壁に沿って下流側に流れる。この流れに伴って浮遊物も下流側に流れ、滞留部材に滞留する。また、固形物は仕切部材の起立部に設けたスクリーン、横置部に設けたスクリーンによって液体から分離されて流入領域に残留する。
【0015】
そして、仕切部材の起立部に配置されたスクリーン、横置部に配置されたスクリーンを通過して浮遊物及び固形物が分離された液体は流出領域に流出する。従って、浮遊物は流入領域の上層を流れて滞留部に滞留し、固形物は起立部で囲まれた底及び横置部のスクリーン上に残留し、これらを分離された液体は流出領域を経て流出口から流出する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る分離装置について説明する。本発明に係る分離装置は、例えば工場の排液や排水などの液体に含まれる、油分のように液体よりも比重が小さく該液体の上層に浮かび上がるような物質(浮遊物)、及び液体よりも比重が大きい固形物を分離し得るようにしたものである。
【0018】
本発明に係る分離装置による液体に含まれた浮遊物及び固形物を分離するための方法について簡単に説明する。本発明に係る分離装置では、先ず、浮遊物や固形物を含み分離槽に流入した液体を、予め設定された水位よりも上層部分を平面的な流れに、前記水位よりも下層部分を旋回流に分割する。
【0019】
上層部分の平面的な流れを分離槽の側壁に沿った流れとし、下流側で流れのよどみを生じさせることで、浮遊物を平面的な流れの表面に浮上させることが可能である。そして、液体の表面に浮遊物が浮上した状態を保持しておくことで、該浮遊物を滞留させておくことが可能である。このとき、よどみを生じている液体の一部を下方に向けて流すことで、浮遊物を含んだ液体の分離槽の側壁に沿った流れを継続させることが可能である。
【0020】
また、上層部分を流れる液体に含まれた固形物は流れる途中で降下し、所定の高さ位置に横置されたスクリーンを通過することなく、該スクリーン上に残留することで液体から分離される。このようにして固形物を液体から分離することが可能である。
【0021】
更に、予め設定された水位よりも下層部分の液体を高速の旋回流とし、この状態を保持する過程で、該液体に含まれた固形物はスクリーンを通過することなく液体から分離される。このようにして固形物を液体から分離することが可能である。また、液体が分離槽に流入したとき、下層部分に巻き込まれ液体と共にスクリーンを通過した浮遊物は、スクリーンを通過した後の液体の流速の低下により浮上して上層部分の平面的な流れに合流し、前述したように液体から分離することが可能である。
【0022】
次に、本実施例に係る分離装置の構成について図を用いて説明する。分離装置Aは分離槽1を有しており、この分離槽1の内部に配置された仕切部材2によって、液体が流入する流入領域Bと、浮遊物や固形物が分離された後の液体が流出する流出領域Cに分割されている。
【0023】
分離槽1は、予め設定された平面寸法と深さ寸法を有し仕切部材2が配置される槽部1aを有しており、流入領域Bに流入した液体の流れ方向下流側の端部に槽部1aよりも浅い排出部20が構成されている。この排出部20は、後述するように浮遊物を排出する機能と、分離槽1内の水位を保持する機能を発揮し得るように構成されている。また、槽部1aの底部には液体から分離された固形物が堆積する堆積部1cが設けられており、該堆積部1cに堆積物排出配管1dが接続されている。
【0024】
仕切部材2は、分離槽1の槽部1a寸法よりも小さい寸法を有して構成された起立部3と、起立部3と槽部1aとの間に形成された隙間に配置された横置部4と、を有している。起立部3は、液体の流れ方向に沿って立設された一対の側壁3aと、液体の流れに交差する方向に且つ側壁3aの端部を接続して立設された一つの端壁3bを有している。起立部3の上端3cの位置は分離槽1の上端1eの位置よりも充分に低く設定されており、且つ起立部3の上面は開放されている。
【0025】
起立部3の側壁3aにはスクリーン3dが配置されており、端壁3b及び分離槽1の端壁1fには流入した液体を旋回させるように誘導する旋回誘導部材3eが配置されている。
【0026】
尚、起立部3の側壁3aは必ずしも一対である必要はなく、一方の側壁を分離槽1の側壁1gと共有しても良い。また、端壁3bも必ずしも一つである必要はなく、液体の流れに交差する方向に一対設けても良い。
【0027】
仕切部材2を構成する横置部4は、起立部3と分離槽1の槽部1aの間に形成された隙間であって起立部3の上端3cよりも低い位置に、流入領域Bに於ける液体の流れ方向の上流側が高く、下流側が低くなるように傾斜した状態で配置されている。特に、液体の流れ方向上流側の端部4aは分離槽1の端壁1fと接触することなく隙間が形成されている。そして、起立部3の側壁3aに配置されたスクリーン3dと対応する位置にスクリーン4bが配置されており、該スクリーン4bよりも液体の流れ方向下流側は液体が通過することのない板部4cとして構成されている。
【0028】
従って、分離槽1に於ける起立部3の一対の側壁3aと端壁3b及び槽部1aの端壁1fとによって囲まれた平面内と、起立部3と槽部1との隙間であって横置部4よりも上方の空間とで構成された領域が液体の流入領域Bとなる。また、槽部1aの端壁1f、1h、側壁1gと起立部3の間の隙間であって上部が横置部4によって規定された空間が流出領域Cとなる。
【0029】
尚、スクリーン3d、4bの構造を特に限定するものではなく、予め想定した大きさの固形物を通過させることなく液体を通過させる機能を有するものであれば利用することが可能である。このようなスクリーンとして、例えば予め設定された寸法の孔を多数形成したパンチングメタルを利用することが可能である。
【0030】
流入口6は、分離槽1の端壁1fであって、下位レベル6aが仕切部材2を構成する起立部3の上端3cよりも低く、上位レベル6bが上端3cよりも高く設定された位置に配置されている。そして、流入口6に図示しない液体の供給源に接続された流入配管7が接続されることで、分離槽1の流入領域Bに浮遊物や固形物を含んだ液体を流入させるように構成されている。
【0031】
特に、仕切部材2を構成する起立部3の流入口6を挟むようにして対応する部分は、この流入口6の上位レベル6bよりも高い誘導部3fが形成されており、流入口6から流入した液体の流れ方向を誘導し得るように構成されている。
【0032】
流入口6と対向して分流部材9が配置されている。この分流部材9は、流入口6から流入領域Bに流入した液体を分離槽1の側壁1gに沿った流れに分流するものであり、流入口6と対向する衝突部9aの平面視が円弧状に形成されている。また、分流部材9は、衝突部9aの最大幅部9bが仕切部材2の一対の起立部3の幅寸法よりも大きく形成されており、この最大幅部9bよりも流れ方向下流側に該最大幅部9bよりも幅寸法の小さい並行部9cが形成されている。
【0033】
分流部材9は、最大幅部9bの幅寸法が一対の起立部3の幅寸法よりも大きい。従って、分流部材9は起立部3の上端3cに載置された状態で構成されている。このため、流入領域Bに流入した液体は、起立部3の上端3cよりも上層の部分が分流部材9の衝突部9aに衝突して分離槽1の側壁1gに沿った流れとなり、並行部9cに沿って下流側へと流れる。
【0034】
本実施例では、流入口6から流入領域Bに流入した液体を分流部材9によって略等分に分流させて分離槽1の二つの側壁1gに沿った流れを形成している。しかし、必ずしも等分に分流させる必要はなく、分流部材9を一方の側壁1gに寄せて配置することで、側壁1gに沿った流れに変化を生じさせるようにしても良い。
【0035】
分流部材9の下流側に滞留部材10が配置されている。分流部材9と滞留部材10は異なる機能を有するものであり、夫々を独立して構成することが可能である。しかし、本実施例では、滞留部材10は分流部材9を利用して、略一体的に構成している。
【0036】
即ち、分流部材9は流入した液体を分離槽1の側壁1gに沿った流れに分流する機能を発揮し得れば良いため、フラットバーを円弧状に屈曲させて衝突部9aを形成し、該衝突部9aの最大幅部9bから並行に連続させて並行部9cを形成している。このため、分流部材9に囲まれた領域が構成されることとなり、この領域を滞留部材10の滞留部としている。
【0037】
滞留部材10は、前述したように分流部材9によって囲まれた平面領域を底板10aによって閉塞することで構成されている。特に、分流部材9の並行部9cの自由端を分離槽1の側壁1gから離隔するように(一対の並行部9cの自由端を互いに接近するように)折り曲げて抑制部10bを形成している。従って、分流部材10は、外周が分流部材9によって囲まれて領域の底部を底板10aによって閉塞することで容器としての形状を有しており、液体の流れに伴って入り込んだ浮遊物の離脱を抑制部10bによって抑制し得るように構成されている。
【0038】
滞留部材10を構成する底板10aの分離槽1に於ける深さ方向の位置は、仕切部材2を構成する起立部3の上端3cと一致し、この底板10aによって起立部3の上部を閉塞することとなる。このため、後述する起立部3に於ける液体の旋回流を誘導することが可能となる。
【0039】
また、底板10aの端部10cは抑制部10bよりも僅かに分流部材9の衝突部9a側に引き込んだ位置に設定されており、且つ抑制部10bの自由端の位置は分離槽1の槽部1aの端壁1hの上方への延長線と略一致している。従って、滞留部材10に入り込んだ液体は、底板10aの端部10cと抑制部10bと分離槽1の端壁1hとによって規制された面を通って仕切部材2を構成する横置部4の板部4c方向に流下することとなる。
【0040】
流入口6と対向し且つ分流部材9との間であって、流入口6の下位レベル6aと上位レベル6bの間に案内部材12が配置されている。この案内部材12は、流入口6から流入した上層の液体を分流部材9方向への平面的な流れとして案内し、下層の液体を起立部3の端壁3bに設けた旋回誘導部材3e方向への流れとして案内するものである。
【0041】
特に、案内部材12は平板状に形成されており、流入口6と対向する端部12aは平面視が中央が凹の曲線状に形成されている。このため、流入した液体に含まれた固形物が端部12aに引っ掛かったような場合でも、流入する液体の流れに伴って中央部分にまで運ばれ、下方に於ける旋回流によって離脱させることが可能となる。
【0042】
分離槽1の流出領域Cに対応する位置には流出口13が形成されており、該流出口13に流出配管14が接続されている。流出配管14は流出側の端部が流入口6と略等しいか僅かに低い水位となるように、流出口13から立ち上がったように形成されている。従って、分離槽1が満水状態となったとき、流出領域Cにある液体は流出配管14の端部から流れだし、分離槽1の内部に液体の流れを形成することが可能となる。
【0043】
分離槽1に設けた排出部20は、流入領域Bの表層に浮上して滞留部材10に滞留した浮遊物を排出する機能と、分離槽1内の水位を保持する機能を発揮し得るように構成されている。排出部20は底板20aの高さが分離槽1に端壁1fに開口した流入口6の下位レベルと略一致しており、滞留部材10の底板10aよりも僅かに低く設定されている。また、排出部20は、底板20aの周囲に立設した分離槽1の側壁1gと同じ高さの側壁20bと側壁20bを結ぶ端壁20cによって規定されている。
【0044】
排出部20には、底板20aに開口して浮遊物を排出するための排出配管21が接続されており、該排出配管21は図示しないバルブによって開閉し得るように構成されている。また、排出配管21の周囲には側壁20bから端壁20cにかけて液体の流れを誘導する誘導板22が配置されており、該誘導板22と端壁20cの間を通して流入領域Bに於ける底板20aよりも上層の液体を排出配管21に向けて流すことが可能である。しかし、排出配管21を閉鎖している状態では、該排出配管21から液体が流出することはなく、排出部20に液体のよどみが生じる。
【0045】
排出部20にはオーバーフロー配管23が接続されている。このオーバーフロー配管23は、予め設定された分離槽1内の最大水位を保持させる機能を有する。このため、オーバーフロー配管23は、底板20aを貫通して最大水位と等しくなる高さ位置に開口している。また、オーバーフロー配管23は、側壁20bから端壁20cにかけて連続し、且つオーバーフロー配管23よりも高い擁壁24によって囲まれている。そして、擁壁24と底板20aとの間には隙間24aが形成されており、該隙間24aを通して液体が流入し得るように構成されている。
【0046】
次に上記の如く構成された分離装置Aによって液体に含まれた浮遊物や固形物を分離する際の動作について説明する。分離装置Aによる浮遊物や固形物の分離は、分離槽1の内部が満水状態にあり、流出配管14から液体が流出する状態を保持しているときに行われる。
【0047】
流入口6から流入領域Bに流入した液体は、案内部材12によって二つの流れに分割される。即ち、案内部材12よりも上層の液体は、流入口6に対向して配置された分流部材9の衝突部9aに衝突して分離槽1の側壁1gに沿った流れとなる。そして、この流れは、一部が滞留部材10方向への流れとなり、一部は起立部3の側壁3aを越えた後、分離槽1の側壁1gに沿って横置部4のスクリーン4b方向に流れる。
【0048】
分離槽1の側壁1gに沿った流れは滞留部材10の抑制部10bに対応する部位で合流するが、合流部分で流れどうしの衝突により、液面に僅かな盛り上がりが生じ、この盛り上がりに伴って浮遊物の一部が滞留部材10に入り込む。また、液面の盛り上がりに伴う浮遊物の流れは滞留部材10側のみではなく、排出部20にも入り込む。滞留部材10及び排出部20では積極的な液体の流れがないため、浮遊物は夫々入り込んだ状態を保持する。特に、滞留部材10に入り込んだ浮遊物は抑制部10bによって、該滞留部材10から流れ出すことが抑制されることとなり、滞留部材10での滞留が継続される。
【0049】
しかし、滞留部材10の底板10aの端部10cと分離槽1の端壁1hとの間に隙間が形成されており、この隙間を通して液体が流れるため、分流部材9で分流した液体の側壁1gに沿った流れを継続させることが可能である。特に、横置部4のスクリーン4bよりも液体の流れ方向下流側、分離槽1の端壁1h側は、液体が通過することのない板部4cとして構成されているため、流速を低下させた液体の流れとすることが可能である。
【0050】
上記の如くして流入した液体の上層にある浮遊物は滞留部材10に滞留すると共に、排出部20内で滞留する。
【0051】
また、案内部材12よりも下層の液体は、起立部3の側壁3aに沿って端壁3b方向に流れ、旋回誘導部材3eによって旋回流を形成する。この旋回流は、一対の側壁3aと端壁3b及び分離槽1の端壁1fによって規定された室内で形成される。そして、液体が旋回する過程で液体のみがスクリーン3dを通過して流出領域Cに流れ込む。このとき、スクリーン3dを通過することなく残留した固形物は、旋回流から離脱して可能の堆積部1cに堆積する。
【0052】
流入領域Bに流入した液体に含まれた浮遊物は必ずしも浮上しているわけではなく、液体中に混在しているのが一般であり、案内部材12で分割されたときに旋回流に巻き込まれることがある。このような浮遊物は、液体と共にスクリーン3dを通過して流出領域Cに移動することとなる。しかし、流出領域Cに於ける液体の流速は小さいため、液体中を上昇してゆくことが可能である。そして、上昇する過程で横置部4に衝突しても、この横置部4の傾斜にそって上昇を継続し、端部4aから流入領域Bに流れこんで浮上し、分離槽1の側壁1gに沿った流れに合流することが可能となる。
【0053】
流出領域Cの液体は、流出口13から流出配管14を通り、該流出配管14から排水される。この排水は、分離槽1に対する液体の流入が継続している間継続し、分離槽1の内部では上層の流れによる浮遊物の分離滞留と、下層の旋回流による固形物の分離が継続する。
【0054】
分離槽1内の水位が上昇したとき、排出部20のオーバーフロー配管23から液体が流れだすことで水位が低下し、常に略一定の水位を保持することが可能となる。特に、オーバーフロー配管23の周囲に擁壁24が配置されており、液体は該擁壁24と底板20aとの間に形成された隙間24aを通して流入するため、浮遊物が入り込むことがない。このため、分離槽1内の水位の上昇に伴って浮遊物の浮遊高さが高くなったとしても、これらの浮遊物がオーバーフロー配管23から流出することがない。
【0055】
滞留部材10に滞留した浮遊物、及び排出部20に滞留している浮遊物を分離槽1から排出する場合、流入口6からの流入領域Bに対する液体の流入を停止させて、排出配管21に設けたバルブを開放する。排出配管21が排出部20の底板20aに開口しているため、排出部20の側壁20b、端壁20c及び誘導板22に囲まれた部分の液体と浮遊物が排出される。
【0056】
前述したように、排出部20の底板20aが流入口6の下位レベルと略等しいレベルに設定されている。このため、流入口6からの液体の流入を停止させた状態で排出配管21を開放すると、分離槽1内に於ける流入口6の下位レベルと排出部20の底板20aを結ぶレベルよりも上位の液体と浮遊物がすべて排出される。そして、流入口6の下位レベルと排出部20の底板20aを結ぶレベルよりも上位の液体と浮遊物がすべて排出された後、堆積物排出配管1dを開放することで、堆積部1cに堆積した堆積物、及び分離槽1にある液体をすべて排出することが可能である。
【0057】
上記の如くして流入口6から流入した液体に含まれた油分を含む浮遊物を滞留部材10に滞留させて排出配管21から、固形物を堆積物排出配管1dから分離槽1の外部に排出することが可能である。従って、流出口13、流出配管14を経て分離槽1から流出した液体には浮遊物や固形物が含まれることがない。
【0058】
本発明に係る分離装置は、必ずしも前述の実施例に限定されるべきではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲での変形した実施形態も含まれるべきである。
【0059】
例えば、本実施例では、分流部材9を流出口6に対向させて分離槽1の側壁1gに沿って略等しい幅の流路を形成し得るように配置したが、何れか一方の側壁1gに寄せて配置しても良い。この場合、分流部材9及び滞留部材10を一方の側壁1gに寄せることで、側壁1gに沿った流れが滞留部材10の抑制部10bに対応する位置で他方側の側壁と衝突して滞留部材10に入り込むことが可能となる。
【0060】
また、滞留部材10に図示しない旋回誘導部を形成しておくことで、滞留部材10の内部に入り込んだ液体を旋回させて、渦の中心部分に浮遊物を集合させることが可能である。特に、渦の中心となる部位に排出配管を配置しておくと、該排出配管によって集合した浮遊物を排出することが可能となる。
【0061】
また、滞留部材10を構成する一対の抑制部10bの長さも同じである必要はなく、何れか一方を他方よりも長く形成しても良い。この場合、抑制部10bの短い側から流れ込んだ液体は長い側の抑制部10bに衝突して滞留部材10の内部側に入り込むことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る分離装置は、工場からの排液や排水などの液体から浮遊物や固形物を分離することができる。このため、浮遊物や固形物を分離処理する水処理施設の前段階処理装置として利用すると有利である。
【符号の説明】
【0063】
A 分離装置
B 流入領域
C 流出領域
1 分離槽
1a 槽部
1c 堆積部
1d 堆積物排出配管
1f、1h、3b、20c 端壁
1g、3a、20b 側壁
2 仕切部材
3 起立部
3c 上端
3d、4b スクリーン
3e 旋回誘導部材
3f 誘導部
4 横置部
4a、10c、12a 端部
4c 板部
6 流入口
6a 下位レベル
6b 上位レベル
7 流入配管
9 分流部材
9a 衝突部
9b 最大幅部
9c 並行部
10 滞留部材
10a 底板
10b 抑制部
12 案内部材
13 流出口
14 流出配管
20 排出部
20a 底板
21 排出配管
22 誘導板
23 オーバーフロー配管
24 擁壁
24a 隙間