(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】トイレ装置
(51)【国際特許分類】
E03D 1/26 20060101AFI20220516BHJP
【FI】
E03D1/26
(21)【出願番号】P 2018020731
(22)【出願日】2018-02-08
【審査請求日】2020-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】戸次 允
(72)【発明者】
【氏名】篠原 祐紀
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-095396(JP,A)
【文献】特開2001-065035(JP,A)
【文献】特開2012-167478(JP,A)
【文献】特開平01-274722(JP,A)
【文献】米国特許第05647069(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-7/00
E03D 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水タンク内に貯留された洗浄水により洗浄を行うトイレ装置であって、
汚物を受けるボウル部と、このボウル部内の汚物及び洗浄水を排出するための排水トラップ管路と、を備えた水洗大便器本体と、
この水洗大便器本体の上記ボウル部上方に配置された便座機能装置と、
この便座機能装置よりも後方の、上記水洗大便器本体の上面に載置された貯水タンクと、を有し、
上記貯水タンクの底面には
切欠部が設けられ、
上記便座機能装置から延びる給水管及び/又は電気ケーブルは、上記水洗大便器本体の、上記貯水タンクが載置された上面と、上記貯水タンクの底面に設けられた上記切欠部との間を通って上記水洗大便器本体の後方の縁部まで延び、
上記切欠部は、正面視において上記便座機能装置の後方に隠蔽されることを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
上記切欠部は、上記貯水タンクの底面の側方縁部に沿って、上記貯水タンクの前端から後端まで延びている請求項1記載のトイレ装置。
【請求項3】
上記切欠部には、上記切欠部の中に配置された上記給水管及び/又は上記電気ケーブルが、上記貯水タンクの側方にはみ出すのを規制するための規制部が設けられている請求項2記載のトイレ装置。
【請求項4】
上記切欠部は、上記貯水タンクの底面に、上記貯水タンクの前端から後端まで延びるように形成された溝により形成されている請求項1記載のトイレ装置。
【請求項5】
上記貯水タンクは、洗浄水を収容する内側タンクと、この内側タンクの外側を覆う外装タンクと、を備え、上記溝は上記外装タンクの底面に設けられると共に、上記外装タンクの底面の側縁と上記溝との間には、上記外装タンクの内側に溜まった水を排出するための水抜穴が形成されている請求項4記載のトイレ装置。
【請求項6】
上記貯水タンクの底面には、上記溝の中に収容した上記給水管及び/又は上記電気ケーブルを、上記溝の中に保持するための保持部材が設けられている請求項4又は5に記載のトイレ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトイレ装置に関し、特に、貯水タンク内に貯留された洗浄水により洗浄を行うトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、局部洗浄機能等を備えた便座である便座機能装置が広く普及している。これらの便座機能装置からは、局部洗浄用の洗浄水を供給するための給水管や、便座機能装置を作動させるための電源コード等の電気ケーブルが延びており、これらは通常、水洗大便器の後方に設けられた給水タップや、コンセントに接続される。
【0003】
特開平6-65955号公報(特許文献1)には温水洗浄装置が記載されている。この温水洗浄装置は、水洗大便器本体の上面に載置して使用され、その後部側面から洗浄水を供給するための通水管及び電線が延びている。これら側面から延びる通水管及び電線は、温水洗浄装置の底面後端縁に設けられた切欠部の中を通って反対側の側面まで引き回され、反対側の側面近傍に設けられた分岐栓及びコンセントに夫々接続される。特許文献1記載の温水洗浄装置では、このように、通水管及び電線を温水洗浄装置の切欠部の中に通すことにより、分岐栓やコンセントが反対側に設けられている場合でも、通水管や電線の引き回しを短くすることを可能にしている。
【0004】
特開2012-167478号公報(特許文献2)にはトイレ装置が記載されている。このトイレ装置においては、便器本体の上に載置された衛生洗浄装置の後端から延びる給水管を、便器本体の上面と洗浄水タンクの底面との間に配置された保持部材によって適所に保持することにより、トイレ装置の側方から外側に露出した給水管が損傷されるのを防止している。
【0005】
特開2008-95396号公報(特許文献3)にはトイレ装置が記載されている。このトイレ装置においては、水洗便器の上面の後方に開口が設けられ、衛生洗浄装置に水を供給する給水管や、電力を供給する電源コードが、水洗便器の開口を通して水洗便器の後方に引き出されている。これにより、衛生洗浄装置から延びる給水管や電源コードを隠蔽し、美観を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-65955号公報
【文献】特開2012-167478号公報
【文献】特開2008-95396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の温水洗浄装置においては、通水管及び電線が温水洗浄装置の側方に突出しているので、水洗便器を正面から見たとき、通水管や電線が目につき、トイレ装置全体の美観が損なわれてしまうという問題がある。
また、特許文献2及び3に記載のトイレ装置においては、衛生洗浄装置の後端から延びる給水管や電源コードが、水洗便器の上面に設けられた開口や凹部の中を通って水洗便器の後方へ延びている。このため、水洗便器の正面視において給水管や電源コードが露出せず、トイレ装置の意匠性を向上させることができる。
【0008】
しかしながら、特許文献2及び3に記載のトイレ装置においては、給水管や電源コードを水洗便器の上面に設けた開口や凹部に通して、これらを後方に引き出す必要があるため、衛生洗浄装置の設置時における作業性が悪いという問題がある。また、水洗便器の上面に開口を設けると、偶発的に水洗便器の上面に流れた水が開口を通して水洗便器の内部に侵入してしまうおそれがあり、これを回避するためには水の侵入を阻止するためのパッキン等が必要となり、構造が複雑になるという問題がある。
【0009】
従って、本発明は、衛生洗浄装置等の便座機能装置から延びる給水管及び/又は電気ケーブルを、容易に水洗便器(水洗大便器)の後方へ引き出すことができると共に、正面視において給水管や電気ケーブルが隠蔽された意匠性に優れたトイレ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明は、貯水タンク内に貯留された洗浄水により洗浄を行うトイレ装置であって、汚物を受けるボウル部と、このボウル部内の汚物及び洗浄水を排出するための排水トラップ管路と、を備えた水洗大便器本体と、この水洗大便器本体のボウル部上方に配置された便座機能装置と、この便座機能装置よりも後方の、水洗大便器本体の上面に載置された貯水タンクと、を有し、貯水タンクの底面には切欠部が設けられ、便座機能装置から延びる給水管及び/又は電気ケーブルは、水洗大便器本体の、貯水タンクが載置された上面と、貯水タンクの底面に設けられた切欠部との間を通って水洗大便器本体の後方の縁部まで延び、切欠部は、正面視において便座機能装置の後方に隠蔽されることを特徴としている。
【0011】
このように構成された本発明においては、ボウル部と排水トラップ管路を備えた水洗大便器本体の上に便座機能装置が配置され、この便座機能装置の後方の、水洗大便器本体の上面に貯水タンクが載置される。貯水タンクの底面には切欠部が設けられ、これにより便座機能装置から延びる給水管及び/又は電気ケーブルは、水洗大便器本体の上面と貯水タンクの底面との間を通って水洗大便器本体の後方の縁部まで延びている。また、切欠部は、正面視において便座機能装置の後方に隠蔽される。
【0012】
このように構成された本発明によれば、給水管及び/又は電気ケーブルを通す切欠部は、正面視において便座機能装置の後方に隠蔽されているので、正面視において給水管及び/又は電気ケーブルが露出することはなく、トイレ装置の意匠性を向上させることができる。また、切欠部が便座機能装置の後方に隠蔽されるので、切欠部を隠蔽するためのカバー等を設ける必要がなく、トイレ装置の構成をシンプルにすることができる。さらに、給水管及び/又は電気ケーブルは、水洗大便器本体の上面上を通るため、給水管及び/又は電気ケーブルを通すための開口部を設ける必要がなく、このような開口部を設けたことによる水侵入のリスクを回避することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、切欠部は、貯水タンクの底面の側方縁部に沿って、貯水タンクの前端から後端まで延びている。
このように構成された本発明によれば、切欠部が貯水タンクの底面の側方縁部に沿って設けられているので、貯水タンクを水洗大便器本体の上面上に載置した後でも、切欠部に給水管及び/又は電気ケーブルを収納することができ、給水管及び/又は電気ケーブルを正面視において極めて容易に隠蔽することができる。また、上記のように構成された本発明によれば、給水管及び/又は電気ケーブルを側方から切欠部に押し込むことができるので、切欠部は、給水管及び/又は電気ケーブルを配置することができる最小限の断面積にすることができる。このため、給水管や電気ケーブルのコネクタを通すための大きな断面積を必要とせず、容易に隠蔽することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、切欠部には、切欠部の中に配置された給水管及び/又は電気ケーブルが、貯水タンクの側方にはみ出すのを規制するための規制部が設けられている。
【0015】
このように構成された本発明によれば、切欠部に規制部が設けられているので、切欠部が貯水タンク底面の側方縁部に設けられ、収納されている給水管及び/又は電気ケーブルが側面視において露出している場合であっても、給水管及び/又は電気ケーブルが切欠部からはみ出すのを効果的に防止することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、切欠部は、貯水タンクの底面に、貯水タンクの前端から後端まで延びるように形成された溝により形成されている。
このように構成された本発明によれば、給水管及び/又は電気ケーブルは、貯水タンクの底面に形成された溝と、水洗大便器本体の上面によって囲まれた通路内を通るため、収納された給水管及び/又は電気ケーブルが、設置後に露出するのを確実に防止することができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、貯水タンクは、洗浄水を収容する内側タンクと、この内側タンクの外側を覆う外装タンクと、を備え、溝は外装タンクの底面に設けられると共に、外装タンクの底面の側縁と溝との間には、外装タンクの内側に溜まった水を排出するための水抜穴が形成されている。
【0018】
貯水タンクを構成する外装タンクの底面に溝を設けた場合には、外装タンクの内側には、その側縁と溝の間に凹部が形成され、外装タンク内で発生した結露水等がこの凹部に溜まる可能性がある。上記のように構成された本発明によれば、外装タンクの底面の側縁と溝との間に水抜穴が形成されているので、外装タンク内で発生した結露水等が凹部に溜まるのを防止することができる。
【0019】
本発明において、好ましくは、貯水タンクの底面には、溝の中に収容した給水管及び/又は電気ケーブルを、溝の中に保持するための保持部材が設けられている。
【0020】
このように構成された本発明によれば、貯水タンクの底面に保持部材が設けられているので、貯水タンクを水洗大便器の上面に載置していない状態においても、底面の溝の中に給水管及び/又は電気ケーブルを保持しておくことができ、トイレ装置設置時の作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、便座機能装置から延びる給水管及び/又は電気ケーブルを、容易に水洗大便器の後方へ引き出すことができると共に、正面視において給水管や電気ケーブルが隠蔽された意匠性に優れたトイレ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態によるトイレ装置の側面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態によるトイレ装置の正面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態によるトイレ装置を、貯水タンクを取り外した状態で示す斜視図である。
【
図4】本発明の第1実施形態によるトイレ装置に使用される貯水タンクを斜め下方から見た斜視図である。
【
図5】本発明の第1実施形態の変形例における貯水タンクの断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態のトイレ装置に使用される貯水タンクの斜視図である。
【
図7】本発明の第2実施形態のトイレ装置に使用される貯水タンクの断面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態の変形例における貯水タンクの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
まず、
図1乃至
図4を参照して、本発明の第1実施形態によるトイレ装置を説明する。
図1は本実施形態によるトイレ装置の側面図であり、
図2は本実施形態によるトイレ装置の正面図である。
図3は、トイレ装置を、貯水タンクを取り外した状態で示す斜視図である。
図4は、本実施形態によるトイレ装置に使用される貯水タンクを斜め下方から見た斜視図である。
【0024】
図1及び
図2に示すように、本実施形態のトイレ装置1は、水洗大便器本体2と、この水洗大便器本体2の上面に配置された便座機能装置である衛生洗浄装置4と、水洗大便器本体2の上面後部に取り付けられた貯水タンク6と、を有する。
本実施形態のトイレ装置1は、トイレ室の壁面に取り付けられたリモコン(図示せず)を操作することにより、貯水タンク6内に貯留された洗浄水が吐出され、水洗大便器本体2を洗浄するように構成されている。また、リモコン(図示せず)を操作することにより、衛生洗浄装置4の洗浄ノズル(図示せず)から洗浄水が噴射され、使用者の局部を洗浄することができるように構成されている。
【0025】
図1に示すように、水洗大便器本体2は、汚物を受けるボウル部2aと、このボウル部2a内の汚物及び洗浄水を排出するための排水トラップ管路2bと、を備えている。これにより、使用者がリモコン(図示せず)を操作することにより、貯水タンク6内の洗浄水がボウル部2aに吐出され、ボウル部2a壁面が洗浄されると共に、ボウル部2a内の汚物が洗浄水と共に排水トラップ管路2bを通って排出される。なお、本実施形態においては、水洗大便器本体2は、陶器製であるが、樹脂等、他の材料製の水洗大便器本体を本発明に適用することもできる。また、
図1に示すように、本明細書において、トイレ装置1や水洗大便器本体2の「後方」とは貯水タンク6が配置された側を意味し、「前方」とはその反対の側を意味している。
【0026】
衛生洗浄装置4は、水洗大便器本体2の上面2cに、ボウル部2aの上方を覆うように配置されており、使用者が着座する便座部4aと、この便座部4aの後方に配置された機能部4bと、これら便座部4a及び機能部4bを覆う便座カバー4cと、を有する。機能部4bには、局部洗浄用のノズル(図示せず)が備えられており、使用者がリモコン(図示せず)を操作することにより、ノズルが前方にせり出し、局部洗浄用の洗浄水を噴射して使用者の局部を洗浄するように構成されている。
【0027】
さらに、機能部4bの後端の、一方の側端部には、電気ケーブルである電源コード10及び給水管8が接続されており、これらは衛生洗浄装置4の機能部4bから水洗大便器本体2の後方へ向けて延びている。これらの給水管8及び電源コード10は、コネクタ(図示せず)を介して機能部4bに着脱可能に接続されていても良いし、着脱不能に直接接続されていても良い。
【0028】
本実施形態においては、給水管8は、局部洗浄用のノズル(図示せず)から噴射される洗浄水を機能部4bに供給するために設けられている。また、電源コード10は、局部洗浄用のノズル(図示せず)を作動させ、洗浄水を加圧してノズルから噴射させるポンプ(図示せず)を作動させる電力を供給するために接続されている。さらに、電源コード10により供給される電力は、便座部4aに備えられた電気ヒーター(図示せず)により便座部4aを加温するためにも使用される。なお、本実施形態においては、電気ケーブルとして、電力を供給するための電源コード10が備えられているが、電気ケーブルはセンサ等の電気信号を伝送するためのケーブルであっても良い。
【0029】
貯水タンク6は、衛生洗浄装置4よりも後方の、水洗大便器本体2の上面2cに載置されている。また、貯水タンク6は、洗浄水を収容する内側タンク6aと、この内側タンク6aの外側を覆う外装タンク6bと、を備えている。本実施形態においては、外装タンク6bは陶器製であり、この外装タンク6bの内部に樹脂製の内側タンク6aが収容されている。また、貯水タンク6には排水弁(図示せず)が備えられており、使用者がリモコン(図示せず)を操作することにより排水弁が開弁され、内側タンク6aに貯留されている便器洗浄用の洗浄水が水洗大便器本体2のボウル部2aに流入するように構成されている。
【0030】
さらに、
図3に示すように、水洗大便器本体2の上面2cの後部は平坦に形成されており、この平坦な上面2c上には貯水タンク6を受けるための複数の突起6cが形成され、この突起6cの上に貯水タンク6が載置され、固定されている。また、衛生洗浄装置4の後部から延びる給水管8及び電源コード10は、水洗大便器本体2の平坦な上面2c上を、水洗大便器本体2の後方の縁部2dまで延びている。なお、本明細書において、水洗大便器本体2の「後方の縁部2d」とは、水洗大便器本体2の上面2cの、後方側の端縁全体を意味している。本実施形態においては、
図3に示すように、水洗大便器本体2上面2cは、その左右方向の中央部が後方に向けて突出しているので、「後方の縁部2d」のうちの両端の部分は、水洗大便器本体2の後端2eよりも前方側に位置している。
【0031】
また、
図4に示すように、貯水タンク6(外装タンク6b)の底面6dは平坦に形成されており、この底面6dの一方の側縁を切り欠くことにより切欠部6eが形成されている。この切欠部6eは、貯水タンク6の底面6dの側方縁部に沿って、貯水タンク6の前端から後端まで延びている。さらに、
図1に示すように、貯水タンク6の切欠部6eには、衛生洗浄装置4の機能部4bから延びる給水管8及び電源コード10が収容され、これらは水洗大便器本体2の上面2cの後方の縁部2dまで延びている。即ち、貯水タンク6の底面6dに切欠部6eを設けることにより、給水管8及び電源コード10が、水洗大便器本体2の平坦に形成された上面2cと、この上面2cに載置された貯水タンク6の底面6dとの間を通って水洗大便器本体2の後方の縁部2dまで延びることを可能にしている。
【0032】
さらに、
図2に示すように、貯水タンク6の切欠部6eは、正面視において衛生洗浄装置4の後方に隠蔽され、正面から視認できない位置に形成されている。また、切欠部6eの中に給水管8及び電源コード10を収容することにより、これらの給水管8及び電源コード10も衛生洗浄装置4の後方に隠蔽され、正面から視認できない状態となる。
【0033】
また、トイレ装置1の施工時においては、まず、水洗大便器本体2をトイレ室の床面に設置し、この水洗大便器本体2の上面2c後部に貯水タンク6を取り付ける。次に、水洗大便器本体2のボウル部2aを覆うように、衛生洗浄装置4を水洗大便器本体2の上面2cに配置する。さらに、衛生洗浄装置4の機能部4bから後方に向けて延びる給水管8及び電源コード10を、水洗大便器本体2の上面2cと貯水タンク6の切欠部6eの間に側方から押し込み、切欠部6eの中に収容する。
【0034】
水洗大便器本体2の後方の縁部2dを越えて延びる給水管8は、水洗大便器本体2の後ろ側で適宜ループさせ、切欠部6eから側方にはみ出しにくいように処理する。同様に、水洗大便器本体2の後方に延びる電源コード10も水洗大便器本体2の後ろ側で適宜束ね、切欠部6eから側方にはみ出しにくいように処理する。これにより、衛生洗浄装置4から延びる給水管8及び電源コード10は、正面視において使用者から殆ど視認できない状態となり、トイレ装置1を意匠性に優れたものにすることができる。
【0035】
本発明の第1実施形態のトイレ装置1によれば、給水管8及び電源コード10を通す切欠部6eは、正面視において衛生洗浄装置4の後方に隠蔽されているので(
図2)、正面視において給水管8及び電源コード10が露出することはなく、トイレ装置1の意匠性を向上させることができる。また、切欠部6eが衛生洗浄装置4の後方に隠蔽されるので、切欠部6eを隠蔽するためのカバー等を設ける必要がなく、トイレ装置1の構成をシンプルにすることができる。
【0036】
また、本実施形態のトイレ装置1によれば、切欠部6eが貯水タンク6の底面6dの側方縁部に沿って設けられているので、貯水タンク5を水洗大便器本体2の上面2c上に載置した後でも、切欠部6eに給水管8及び電源コード10を収納することができ、給水管8及び電源コード10を正面視において極めて容易に隠蔽することができる。また、給水管8及び電源コード10を側方から切欠部6eに押し込むことができるので、切欠部6eは、給水管8及び電源コード10を配置することができる最小限の断面積にすることができる。このため、給水管8及び電源コード10のコネクタを通すための大きな断面積を必要とせず、容易に隠蔽することができる。
【0037】
次に、
図5を参照して、本発明の第1実施形態の変形例を説明する。
図5は本変形例における貯水タンクの断面図であり、本変形例の構成は貯水タンクを除き、第1実施形態と同一である。
【0038】
図5に示すように、本変形例における貯水タンク20は、洗浄水を収容する内側タンク20aと、この内側タンク20aの外側を覆う外装タンク20bと、を備えている。本変形例においても、外装タンク20bは陶器製であり、内側タンク20aは樹脂製である。また、貯水タンク20(外装タンク20b)の底面20dは平坦に形成されており、この底面20dの一方の側縁を切り欠くことにより切欠部20eが形成されている。この切欠部20eは、概ね正方形の断面を有し、貯水タンク20の底面20dの側方縁部に沿って、貯水タンク20の前端から後端まで延びている。
【0039】
さらに、切欠部20eが形成されている側の貯水タンク20の側壁は、切欠部20eを超えて下方に突出しており、この突出した部分が切欠部20eの規制部20fを構成している。このように規制部20fを設けることにより、切欠部20eと水洗大便器本体2の上面2cによって囲まれた空間の出口が狭くされる。この規制部20fにより、切欠部20eの中に配置された給水管8及び電源コード10が、貯水タンク20の側方にはみ出すのが規制される。これにより、トイレ装置の設置後に、給水管8や電源コード10が偶発的に貯水タンク20の側方にはみ出すのを抑制することができる。
【0040】
本変形例のトイレ装置1によれば、切欠部20eに規制部20fが設けられているので、切欠部20eが貯水タンク20底面20dの側方縁部に設けられ、収納されている給水管8及び電源コード10が側面視において露出している場合であっても、これらが切欠部20eからはみ出すのを効果的に防止することができる。
【0041】
次に、
図6及び
図7を参照して、本発明の第2実施形態によるトイレ装置を説明する。
本実施形態のトイレ装置は、貯水タンクの構成が上述した第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本発明の第2実施形態の、第1実施形態とは異なる部分のみを説明し、同様の構成、作用、効果については説明を省略する。
図6は本発明の第2実施形態のトイレ装置に使用される貯水タンクの斜視図であり、
図7は、断面図である。
【0042】
図6及び
図7に示すように、本実施形態における貯水タンク30は、洗浄水を収容する内側タンク30aと、この内側タンク30aの外側を覆う外装タンク30bと、を備えている。本実施形態においても、外装タンク30bは陶器製であり、内側タンク30aは樹脂製である。また、貯水タンク30(外装タンク30b)の底面30dは平坦に形成されており、この底面30dの一方の側部寄りの位置に、貯水タンク30の前後方向に延びる切欠部30eが形成されている。この切欠部30eは、概ね正方形の断面を有する溝として形成され、貯水タンク30の底面30dの前端から後端まで設けられている。
【0043】
このように切欠部30eを溝によって形成することにより、貯水タンク30を水洗大便器本体2の上に載置した状態では、切欠部30eの中に配置された給水管8及び電源コード10は、切欠部30eの内壁面と水洗大便器本体2の上面2cによって周囲を完全に囲まれる。このため、トイレ装置の設置後に、切欠部30eの中に収容した給水管8や電源コード10が偶発的に貯水タンク30の側方にはみ出すのを確実に防止することができる。
【0044】
また、貯水タンク30の底面30dに切欠部30eを溝として設けることにより、
図7に示すように、外装タンク30bの内側には、切欠部30eと外装タンク30bの側壁面の間に凹部30fが形成される。外装タンク30bは洗浄水を直接収容するための部材ではないため、通常、内側タンク30aと外装タンク30bの間には水は存在しないが、外装タンク30bの内側に結露が発生した場合等には、結露水が凹部30fに流入する可能性がある。このように、流入した結露水等が凹部30fに溜まるのを防止するため、凹部30fの底面(外装タンク30bの底面)には、水抜穴30g(
図6)が形成されている。このように水抜穴30gを設けておくことにより、外装タンク30bの内側で発生した結露水等が凹部30fに溜まるのを防止することができる。
【0045】
さらに、
図7に示すように、本実施形態においては、切欠部30eに保持部材32が取り付けられ、この保持部材32は切欠部30eの中に収容された給水管8及び電源コード10を切欠部30eの溝の中に保持する。保持部材32は、概ねU字形の断面に湾曲された薄い金属板によって形成されており、弾性変形させた状態で切欠部30eに押し込むことにより、切欠部30eの中に保持されるように構成されている。給水管8及び電源コード10を切欠部30eの溝の中に収容した状態で保持部材32を切欠部30eに取り付けることにより、貯水タンク30を水洗大便器本体2の上に載置していない状態においても、給水管8及び電源コード10を切欠部30eの中に保持することができる。
【0046】
トイレ装置の施工時においては、まず、水洗大便器本体2をトイレ室の床面に設置し、この水洗大便器本体2の上面2cにボウル部2aを覆うように、衛生洗浄装置4を配置する。さらに、衛生洗浄装置4の機能部4bから後方に向けて延びる給水管8及び電源コード10を、貯水タンク30の切欠部30eの中に配置し、この状態で切欠部30eに保持部材32を嵌め込む。これにより、給水管8及び電源コード10は、貯水タンク30底面30dの切欠部30eの中に保持される。
【0047】
この状態で、貯水タンク30を水洗大便器本体2の上面2c後部に配置し、取り付ける。給水管8及び電源コード10は保持部材32によって切欠部30eの中に保持されているので、給水管8及び電源コード10が貯水タンク30を配置する際に切欠部30eの溝から外れ、貯水タンク30の底面30dと水洗大便器本体2の上面2cの間に挟まれてしまうのを防止することができる。貯水タンク30が水洗大便器本体2上に載置された状態では、給水管8及び電源コード10は切欠部30eの内壁面と水洗大便器本体2の上面2cによって周囲を完全に囲まれるので、これらが貯水タンク30の側面にはみ出すのを確実に防止することができる。これにより、衛生洗浄装置4から延びる給水管8及び電源コード10は、正面視において使用者から殆ど視認できない状態となり、トイレ装置を意匠性に優れたものにすることができる。
【0048】
本発明の第2実施形態のトイレ装置によれば、給水管8及び電源コード10は、貯水タンク30の底面30dに形成された溝として形成された切欠部30eと、水洗大便器本体2の上面2cによって囲まれた通路内を通るため、収納された給水管8及び電源コード10が、設置後に露出するのを確実に防止することができる。
【0049】
また、本実施形態のトイレ装置によれば、外装タンク30bの底面30dの側縁と溝である切欠部30eとの間に水抜穴30gが形成されているので、外装タンク30b内で発生した結露水等が凹部30fに溜まるのを防止することができる。
【0050】
さらに、本実施形態のトイレ装置によれば、貯水タンク30の底面30dに保持部材32が設けられているので、貯水タンク30を水洗大便器2の上面2cに載置していない状態においても、底面30dの切欠部30eである溝の中に給水管8及び電源コード10を保持しておくことができ、トイレ装置設置時の作業性を向上させることができる。
【0051】
次に、
図8を参照して、本発明の第2実施形態の変形例を説明する。
図8は本変形例における貯水タンクの断面図であり、本変形例の構成は貯水タンクを除き、第2実施形態と同一である。
【0052】
図8に示すように、本変形例における貯水タンク40は、洗浄水を収容する内側タンク40aと、この内側タンク40aの外側を覆う外装タンク40bと、を備えている。本変形例においても、外装タンク40bは陶器製であり、内側タンク40aは樹脂製である。また、貯水タンク40(外装タンク40b)の底面40dは平坦に形成されており、この底面40dの一方の側縁を切り欠くことにより切欠部40eが形成されている。この切欠部40eは、概ね正方形の断面を有し、貯水タンク40の底面40dの側方縁部に沿って、貯水タンク40の前端から後端まで延びている。
【0053】
さらに、切欠部40eが形成されている側の貯水タンク40の側壁は、下方に突出し、外装タンク40bの下端まで達している。これにより、貯水タンク40の底面40dの側方縁部に沿って溝形の切欠部40eが構成される。このように外装タンク40bの側壁を外装タンク40bの下端まで突出させることにより、切欠部40eと水洗大便器本体2の上面2cによって周囲を完全に囲まれた空間が形成される。このように形成された切欠部40eにより、中に配置された給水管8及び電源コード10が、貯水タンク40の側方にはみ出すのが規制される。これにより、トイレ装置の設置後に、給水管8や電源コード10が偶発的に貯水タンク40の側方にはみ出すのを確実に防止することができる。また、溝形の切欠部40eを、側壁を外装タンク40bの下端まで突出させて構成することにより、外装タンク40bの内側に凹部が形成されることがないため、水抜穴を設ける必要がない。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した第1、第2実施形態のトイレ装置では、便座機能装置として衛生洗浄装置が備えられていたが、局部洗浄機能を備えない便座機能装置を本発明のトイレ装置に適用することもできる。この場合には、便座加温用の電源コード等の電気ケーブルのみが貯水タンクの切欠部の中に収容される。
【符号の説明】
【0055】
1 トイレ装置
2 水洗大便器本体
2a ボウル部
2b 排水トラップ管路
2c 上面
2d 後方の縁部
2e 後端
4 衛生洗浄装置(便座機能装置)
4a 便座部
4b 機能部
4c 便座カバー
6 貯水タンク
6a 内側タンク
6b 外装タンク
6c 突起
6d 底面
6e 切欠部
8 給水管
10 電源コード(電気ケーブル)
20 貯水タンク
20a 内側タンク
20b 外装タンク
20d 底面
20e 切欠部
20f 規制部
30 貯水タンク
30a 内側タンク
30b 外装タンク
30d 底面
30e 切欠部
30f 凹部
30g 水抜穴
32 保持部材
40 貯水タンク
40a 内側タンク
40b 外装タンク
40d 底面
40e 切欠部