(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】種子の品質評価・選別システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20220516BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
G01N21/27 B
(21)【出願番号】P 2018125189
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-06-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「紫レーザー励起蛍光分析による穀物の一粒分析・分別装置の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】500293434
【氏名又は名称】インダストリーネットワーク株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518234575
【氏名又は名称】福井 昭次
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】福井 昭次
(72)【発明者】
【氏名】井上 直人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 要
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-036150(JP,A)
【文献】特開2013-238579(JP,A)
【文献】特開2008-224619(JP,A)
【文献】特開平08-152411(JP,A)
【文献】特開平09-293994(JP,A)
【文献】特開平08-091324(JP,A)
【文献】特開平04-020848(JP,A)
【文献】特開2008-302314(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0228498(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
種子を一粒ごとに品質評価して、品質評価した品質評価結果に基づいて一粒ごとに選別する種子の品質評価・選別システムであって、
投入された種子を連続的に供給するフィーダーと、
前記フィーダーから連続的に供給される種子の1粒ごとの種子に対応して設けられ、前記種子の特定面が周面側開口に位置する姿勢で前記種子を収納可能とする凹部が周方向に沿って所定間隔ごとに多数形成されてなり、回転軸の回転に伴って一方向に所定角度ごとの間欠回転を行う凹部付きディスクと、
前記凹部付きディスクとは隣り合って配置され、かつ、前記凹部付きディスクとは同一回転しないように前記回転軸に取り付けられており、周方向に沿って振動を行う振動付与ディスクと、
前記凹部付きディスクに対して前記一方向に所定角度ごとの間欠回転を行わせる凹部付きディスク駆動用モーターと、
前記凹部付きディスクの前記凹部に収納されている種子が、当該凹部付きディスクの周面に対向して設けられている測定位置に到達したときに、当該測定位置に到達した種子に対して励起光を照射する励起光源と、
前記励起光源から照射された励起光によって前記種子から発せられる蛍光を受光して、受光した蛍光の分光分析を1粒の種子ごとに行って分光データを出力する機能を有する分光器と、
分光器から出力される当該1粒の種子ごとの分光データから蛍光強度を求め、求めた蛍光強度に基づいて前記一粒の種子ごとの品質を複数段階の評価として求め、当該複数段階の評価ごとに前記種子を選別するための制御信号を出力する機能を有する分光データ処理部と、
前記分光データ処理部からの制御信号に基づいて、前記種子を一粒ごとに前記複数段階の評価に対応して振分ける振分け装置と、
を備えることを特徴とする種子の品質評価・選別システム。
【請求項2】
請求項1に記載の種子の品質評価・選別システムにおいて、
前記種子の特定面は、当該種子の「臍(ほぞ)」が存在しない面であることを特徴とする種子の品質評価・選別システム。
【請求項3】
請求項2に記載の種子の品質評価・選別システムにおいて、
前記種子は、外観形状がほぼ三角錐状をなすソバの種子であり、
前記凹部付きディスクに設けられている前記凹部は、前記凹部付きディスクのディスク面を見たときの形状がほぼV字形状をなし、当該V字形状をなす凹部の開口が前記凹部付きディスクの周面に沿って位置するように設けられていることを特徴とする種子の品質評価・選別システム。
【請求項4】
請求項3に記載の種子の品質評価・選別システムにおいて、
前記ソバの種子は、玄そばから外皮を除去した状態の丸抜きソバであることを特徴とする種子の品質評価・選別システム。
【請求項5】
請求項4に記載の種子の品質評価・選別システムにおいて、
前記丸抜きソバの前記「臍」が存在する面を当該丸抜きソバの「底面」とし、当該底面以外の3つの面をそれぞれ前記丸抜きソバの「腹面」とし、当該「腹面」の隣り合う腹面の3つの境目をそれぞれ前記丸抜きソバの「稜」としたとき、
前記凹部は、3つの前記「稜」のうちの1つの「稜」が当該V字形状をなす凹部の底部側で、かつ、前記凹部付きディスクの厚み方向に沿って位置し、3つの前記「腹面」のうちの2つの「腹面」が、前記V字形状をなす凹部の一方の壁面と他方の壁面とで支持される姿勢で収納可能となるように形成されていることを特徴とする種子の品質評価・選別システム。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の種子の品質評価・選別システムにおいて、
前記凹部は、前記凹部付きディスクを周面側からから見たときには、当該凹部付きディスクの厚み方向における一方の端面から他方の端面までに渡って形成されており、
当該凹部付きディスクの厚みは、少なくとも、前記前記丸抜きソバの前記底面から当該底面とは反対側の頂点までの長さに相当する寸法を有していることを特徴とする種子の品質評価・選別システム。
【請求項7】
請求項2に記載の種子の品質評価・選別システムにおいて、
前記種子は、米、麦、大豆、小豆又はトウモロコシのいずれかであり、
前記凹部付きディスクに設けられている前記凹部は、前記凹部付きディスクのディスク面を見たときの形状が、ほぼコの字形状をなし、当該凹部の開口が前記凹部付きディスクの周面に位置するように設けられていることを特徴とする種子の品質評価・選別システム。
【請求項8】
請求項7に記載の種子の品質評価・選別システムにおいて、
前記凹部は、前記凹部付きディスクを周面側からから見たときには、当該凹部付きディスクの厚み方向における一方の端面から他方の端面までに渡って形成されており、
当該凹部付きディスクの厚みは、少なくとも、前記米、麦、大豆、小豆又はトウモロコシのいずれかを品質評価・選別対象の種子としたときに、当該品質評価・選別対象とした種子の長手方向の長さに相当する寸法を有していることを特徴とする種子の品質評価・選別システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の種子の品質評価・選別システムにおいて、
前記凹部付きディスクは、複数枚存在し、当該複数枚の凹部付きディスクは、各凹部付きディスクの前記凹部が前記回転軸に沿った方向において同一直線上に並ぶように配置され、かつ、前記回転軸を共有して同一回転するように構成されており、
前記振動付与ディスクは、当該複数枚の凹部付きディスクの隣り合う凹部付きディスクの間に介在された構成となっていることを特徴とする種子の品質評価・選別システム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の種子の品質評価・選別システムにおいて
前記振動付与ディスクに対して周方向の振動を付与する振動付与装置をさらに備え、
前記振動付与装置は、
前記振動付与ディスクを周方向に沿って所定角度で正逆回転させる振動付与用モーターと、当該振動付与用モーターの駆動片と前記振動付与ディスクとを連結して、前記振動付与用モーターの正逆回転力を前記振動付与ディスクに伝達して当該振動付与ディスクを周方向に沿って所定角度で正逆回転させる駆動軸とを有していることを特徴とする種子の品質評価・選別システム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の種子の品質評価・選別システムにおいて、
前記凹部付きディス駆動用モーターは、前記凹部付きディスクに対して前記一方向に所定角度ごとの間欠回転を行わせる際において、前記所定角度の回転が終了するごとに、所定時間内で正逆回転を行うことを特徴とする品質評価・選別システム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の種子の品質評価・選別システムにおいて、
前記振分け装置は、
前記測定位置を通過した種子を前記凹部から落下させる落下位置に設けられ、所定範囲の回転角度での回転が可能な振分けシュートと、
前記分光データ処理部から出力される制御信号に基づいて、前記振分けシュートを所定の回転角度で回転させる振分けシュート駆動用モーターと、
前記振分けシュートの排出口に前記複数段階の評価に対応して配設され、前記振分けシュートによって振分けられた種子を前記複数段階の評価に対応して設けられている回収箱に導くガイド部と、
を有することを種子の品質評価・選別システム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の種子の品質評価・選別システムにおいて、
前記励起光は、紫レーザー励起光であることを特徴とする種子の品質評価・選別システム。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の種子の品質評価・選別システムにおいて、
前記分光データ処理部は、前記分光データに基づいて求められた各波長における蛍光強度のうち、前記種子が有している特徴的な成分由来の蛍光強度が得られている波長帯の前記蛍光強度に基づいて前記種子の品質を評価するための指数を求め、求めた指数に基づいて前記種子の振分けを行うための制御信号を前記振分け装置に出力することを特徴とする種子の品質評価・選別システム。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載の種子の品質評価・選別システムにおいて、
前記凹部付きディスクの厚み及び前記振動付与ディスクの厚みは、当該凹部付きディスクの厚みと当該振動付与ディスクの厚みとを足したときの合計の厚みが、予め決められている一定の厚みとなるように、前記凹部付きディスクの厚み及び前記振動付与ディスクの厚みがそれぞれ設定されていることを特徴とする種子の品質評価・選別システム。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載の種子の品質評価・選別システムにおいて、
前記凹部ディスクの前記凹部に収納されている種子に対して白色光を照射する白色光源をさらに備え、
前記分光器は、前記白色光源から照射された白色光によって前記種子から反射される反射光を受光して、受光した反射光の分光分析を1粒の種子ごとに行って分光データを出力する機能をさらに有し、
前記分光データ処理部は、前記分光器から出力される前記1粒の種子ごとの分析データから色強度を求め、求めた色強度に基づいて前記一粒の種子ごとの品質評価を行う機能をさらに有することを特徴とする種子の品質評価・選別システム。
【請求項17】
請求項16に記載の種子の品質評価・選別システムにおいて、
励起光源からの励起光及び前記白色光源らの白色光は、それぞれパルス発振され、前記種子が前記測定位置に達するごとに、当該測定位置に達した1粒ごとの種子に対して前記励起光と前記白色光とを所定の時間差で照射するように構成されていることを特徴とする種子の品質評価・選別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種子の品質を評価して、評価した結果に応じて選別する種子の品質評価・選別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
種子の品質を評価して、評価した結果に応じて選別する種子の評価・選別システムは、既に知られている(例えば、特許文献1参照。)。なお、ここでは、種子としては、主に穀類の種子を例にとって説明する。ここで、「穀類」とは、主に米、麦、トウモロコシなどのイネ科の植物及び大豆などのマメ科の植物を指すものとされるが、広義としては、「ソバ」をも含むとされているため、本明細書においては、「ソバ」をも含めて「穀類」として説明する。
【0003】
特許文献1においては、穀類のうちのソバの種子(以下、ソバと略記する。)の品質評価を行い、その評価結果に応じて選別するものである。具体的には、ソバに励起光を照射して蛍光を発生させる。そして、蛍光を分光分析して、所定波長帯の蛍光量(蛍光強度ともいう。)を、品質評価用の測定値として求め、求めた測定値を、予め設定されているソバの品質評価基準を表す基準値と比較して、ソバの品質評価を行い、その評価結果に基づいて、品質に応じて選別するものである。
【0004】
図13は、特許文献1に記載されているソバの品質評価・選別システム900を説明するために示す図である。特許文献1に記載されているソバの品質評価・選別システム900は、紫レーザー励起蛍光測定によりソバの品質を評価する品質評価装置910と、品質評価対象となるソバ10が測定位置Pを通過するように搬送するとともに、品質評価結果に応じて選別する搬送選別装置920と、品質評価装置910及び搬送選別装置920の制御を行う制御装置930とを備えている。
【0005】
品質評価装置910の基本構成は、励起光(紫連続レーザー)を発生する励起光発生器911と、励起光を導いて測定位置Pを通過するソバに紫連続レーザーを照射する照射光学系912と、ソバが発する蛍光を導く受光光学系913と、受光光学系913によって導かれた蛍光を分光する分光器914と、分光器914による分光結果に基づき分光データ処理を行い、ソバ10の品質評価を行う分光データ処理部915とを備えている。
【0006】
搬送選別装置920は、搬送部920Aと選別部920Bを備えている。搬送部920Aは、ホッパー921に投入されたソバ10が測定位置Pを通過するように1粒ずつ搬送する。選別部920Bは、品質評価されたソバを品質に応じて振分けて、回収部922a~922cに回収する。
【0007】
図14は、
図13に示した搬送部920Aを詳細に示す斜視図である。ホッパー921は、左右のガイド板921a,921bの下端縁の間に、スリット921cが形成されており、当該スリット921cの真下には、スクリューコンベア923が配置されている。
【0008】
スクリューコンベア923は、スクリュー溝924aが形成されているスクリュー92924を備え、当該スクリュー924はモーター925の出力軸に同軸に連結されている。そして、ホッパー921からスクリュー924に落下するソバ10は、スクリュー924の回転に伴って、1粒ずつスクリュー溝924aに入り込み、前方に送り出される。
【0009】
スクリュー924における上側の先端側には、シュート926が配置されており、スクリュー溝924aによって送り出されたソバ10は、シュート926に沿って滑り落ちる。その後、ソバ10は、ベルトコンベア927によって1粒ずつ所定の間隔で搬送される。そして、ベルトコンベア927における測定位置Pを通過する1粒ずつのソバに対して、真上から同軸石英ケーブル912aを介して励起光である紫連続レーザーが照射される。ソバ10から発せられる蛍光は分光器914に送られ、分光データ処理部915において所定波長帯の蛍光成分の蛍光量(蛍光強度)が測定値として算出される。
【0010】
このように構成されている特許文献1に記載されているソバの品質評価・選別システムにおけるソバの品質評価・選別動作は次のようにして行われる。
【0011】
すなわち、品質評価が定まっている多数種類のソバにおける品質評価基準を示す基準値として、例えば、品質が「優」、「良」、「可」であるものを選別するための「3種類の基準値」を事前に用意しておき、制御装置930では、測定位置Pを通過した1粒ごとのソバに対する測定値を、上記「3種類の基準値」と比較することにより、ソバの品質を1粒ずつ評価する。そして、品質の評価がなされたソバは、ベルトコンベア927によって搬送されて、評価ごとに設けられている各回収部922a~922c(
図13参照。)にそれぞれ回収される。
【0012】
以上説明したように、特許文献1に記載されているソバの品質評価・選別システム900によれば、ソバの品質を評価して選別することができ、特に、ソバを1粒ごとに連続して選別可能となる。
【0013】
ところで、ソバは、他家受粉のため、小麦や米などの自家受粉の穀類に比べて品質に差が出やすいので、客観的な評価基準に従って精度良く品質を評価できることが望まれている。例えば、農林水産省によるソバの農産物検査規格による等級と、市場(実需者)の品質評価との間にはかい離がある。また、ソバの評価基準、例えば、製粉会社でのソバの評価基準が具体的にどのような指標に基づいているのかが明らかにされていない。このため、ソバについての適切な品質評価方法が強く望まれているとともに、1粒ごとにも品質のバラツキが大きいことから、1粒ごとに品質を評価して、その評価結果に基づいて、評価ごとに選別可能とすることが課題である。特に、1粒ごとに品質を評価して、その評価結果に基づいて、評価ごとに選別することを連続的に行うことができるようにすることが大きな課題である。
【0014】
この点、特許文献1に記載されているソバの品質評価・選別システムは、ソバを1粒ごとに連続して品質を評価して、その評価結果に基づいて1粒ごとに選別可能とするものであり、有用なソバの品質評価・選別システムであるといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述したように、特許文献1に記載されているソバの品質評価・選別システム900は、ソバを1粒ごとに連続して品質を評価して、その評価結果に基づいて1粒ごとに選別可能とするものであるが、改良の余地もある。
【0017】
確かに、特許文献1に記載されているソバの品質評価・選別システム900は、ソバを1粒ごとに連続的に評価して選別可能ではあるが、測定位置Pにおけるソバの姿勢は規則性がなく、様々な姿勢となっている。すなわち、特許文献1に記載されているソバの品質評価・選別システム900においては、スクリュー溝924aによって送り出されたソバ10は、シュート926に沿って滑り落ちたのちに、ベルトコンベア927によって1粒ずつ列をなすように搬送されて測定位置Pに到達されるといった構成となっているため、測定位置Pにおいて、1粒1粒のソバが規則性を有した姿勢となるような構成とはなっていない。このため、測定位置Pにおけるソバの姿勢は、1粒1粒のソバが、必ずしも、測定に適した姿勢(測定好適姿勢という。)となるとは限らない。
【0018】
このため、1粒1粒が測定好適姿勢となっていないソバに励起光を照射して、当該ソバが発する蛍光を分光分析して、当該分光分析して得られた分光データに基づいて品質評価した場合、仮に、同じ品質のソバであっても、姿勢の違いが品質評価の違いとして現れてくる場合もあり得るため、1粒ごとのソバの品質評価の信頼性に課題がある。
【0019】
また、特許文献1に記載されているソバの品質評価・選別システム900においては、ホッパー921から排出されたソバ10が測定位置Pに到達するまでの経路は、スクリューコンベア923におけるスクリュー924の回転に伴って、1粒ずつ前方に送り出されたのち、シュート926によってベルトコンベア927に落下して、ベルトコンベア927によって測定価位置Pに達するといった長い経路を構築する必要があり、搬送路全体が長くなることから、システム全体の小型化を図る上で課題がある。
【0020】
ところで、特許文献1に記載されているソバの品質評価・選別システム900は、品質評価・選別の対象はソバとしているが、ソバ以外の種子(例えば、米、麦、大豆、トウモロコシなど)の種子、さらには、ソバを含めた穀類以外の種子においても、これらの種子を1粒ごとに連続して高速に評価・選別可能とすることについての要求はある。従って、種子を1粒ごとに品質を評価して選別する際の品質評価の信頼性をより高くするとともに、システムの小型化を可能とする種子の品質評価・選別システムを実現することが課題となる。
【0021】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、測定位置においては、1粒ごとの種子を規則性を有した姿勢とすることによって、種子を1粒ごとに品質を評価して選別する際の品質評価の信頼性を高くするとともに、システムの小型化を可能とする種子の品質評価・選別システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
[1]本発明の穀類の品質評価・選別システムは、種子を一粒ごとに品質評価して、品質評価した品質評価結果に基づいて一粒ごとに選別する種子の品質評価・選別システムであって、投入された種子を連続的に供給するフィーダーと、前記フィーダーから連続的に供給される種子の1粒ごとの種子に対応して設けられ、前記種子の特定面が周面側開口に位置する姿勢で前記種子を収納可能とする凹部が周方向に沿って所定間隔ごとに多数形成されてなり、回転軸の回転に伴って一方向に所定角度ごとの間欠回転を行う凹部付きディスクと、前記凹部付きディスクとは隣り合って配置され、かつ、前記凹部付きディスクとは同一回転しないように前記回転軸に取り付けられており、周方向に沿って振動を行う振動付与ディスクと、前記凹部付きディスクに対して前記一方向に所定角度ごとの間欠回転を行わせる凹部付きディスク駆動用モーターと、前記凹部付きディスクの前記凹部に収納されている種子が、当該凹部付きディスクの周面に対向して設けられている測定位置に到達したときに、当該測定位置に到達した種子に対して励起光を照射する励起光源と、前記励起光源から照射された励起光によって前記種子から発せられる蛍光を受光して、受光した蛍光の分光分析を1粒の種子ごとに行って分光データを出力する機能を有する分光器と、分光器から出力される当該1粒の種子ごとの分光データから蛍光強度を求め、求めた蛍光強度に基づいて前記一粒の種子ごとの品質を複数段階の評価として求め、当該複数段階の評価ごとに前記種子を選別するための制御信号を出力する機能を有する分光データ処理部と、前記分光データ処理部からの制御信号に基づいて、前記種子を一粒ごとに前記複数段階の評価に対応して振分ける振分け装置と、を備えることを特徴とする。
【0023】
本発明の品質評価・選別システムによれば、凹部付きディスクには、種子の特定面が周面側の開口に位置する姿勢で種子を収納可能とする凹部が周方向に沿って多数形成されているため、フィーダーから供給される1粒ごとの種子は、当該種子の特定面が凹部の周面側開口に位置するような姿勢で凹部に収納されるようになる。なお、ここでいう、「特定面」というのは、種子の品質評価を行うに必要な測定値を適切に取得できる面である。また、当該種子の特定面が周面側の開口に位置する姿勢を「測定好適姿勢」と呼ぶことにする。また、「測定」とは、種子の品質を評価する上で必要な情報(例えば、励起光によって種子が発する蛍光量)を得ることを意味している。
【0024】
また、本発明の品質評価・選別システムによれば、振動付与ディスクは、凹部付きディスクとは隣り合って配置され、かつ、凹部付きディスクとは同一回転しないように回転軸に取り付けられており、周方向に沿って振動を行うように構成されているため、フィーダーから凹部に種子が供給される際にフィーダーから凹部に入り込もうとする種子及び凹部に収納されている種子に対して振動を付与する働きをする。具体的には、フィーダーから凹部に入り込もうとしている種子に対して周方向に沿った振動(微振動とする。)を付与するとともに、凹部に収納されている種子に対しても周方向に沿った振動(微振動とする。)を付与する働きをする。
【0025】
このように、フィーダーから凹部に入り込もうとしている種子に対して周方向に沿った微振動を付与することにより、当該種子には周方向に沿った微振動が伝わり、当該種子は、フィーダーと凹部との間でブリッジ形成しにくくなり、種子の凹部への収納が円滑に行われ、凹部への種子の収納率が高まる。また、フィーダーから凹部に入り込もうとしている種子に対して周方向に沿った微振動を付与することにより、1つの凹部には1粒だけの種子が入り込むようにすることができる。換言すれば、1つの凹部に2粒以上の種子が入り込んでしまうことを確実に防止できる。
【0026】
また、凹部に収納されている種子に対しても微振動を付与することにより、種子が凹部に収納された状態となった後において、種子が凹部付きディスクの厚み方向に出っ張った場合には、当該出っ張った状態の種子は、振動付与ディスクの振動を凹部付きディスクのディスク面(側面)の側から直接的に受けるため、種子を凹部に適切に収納できる。これにより、フィーダーから凹部に供給された時点では、1粒1粒の種子の姿勢がそれぞれ不安定であったり、姿勢に規則性が無かったりしていても、当該種子が測定位置に達するまでには、確実に、種子の特定面が凹部の開口に位置するような姿勢(測定好適姿勢)で凹部に収納される。また、凹部に収納されている種子に対しても微振動を付与することにより、凹部に収納されている種子が測定位置を過ぎて落下位置に達したときにおいても、種子を確実に落下させることができる。
【0027】
このため、本発明の品質評価・選別システムによれば、測定位置においては、1粒ごとの種子を規則性を有した姿勢とすることができ、種子を1粒ごとに品質を評価して選別する際の品質評価の信頼性を高くすることができる。
【0028】
また、本発明の種子の品質評価・選別システムは、フィーダーから供給される種子を凹部付きディスクの回転によって振分け装置まで搬送する構成となっている。このため、搬送路は凹部付きディスクの周面に沿ったものとなるため、搬送路の長さを短くすることができ、かつ、構成も単純なものとなることから、システム全体を小型化することができる。
【0029】
[2]本発明の穀類の品質評価・選別システムにおいては、前記種子の特定面は、当該種子の「臍(ほぞ)」が存在しない面であるとしている。
【0030】
このように、種子の「臍(ほぞ)」が存在しない面を凹部の周面側開口に位置させた姿勢(測定好適姿勢)で、測定を行うことによって、適切な品質評価が可能となる。種子の臍」が存在する面を測定して品質評価を行うと、適切な品質評価が行えないことが本発明者によって確かめられている。このため、種子の「臍」が存在しない面を凹部の周面側開口に位置させた姿勢で、測定を行うことが重要であり、このような姿勢で測定を行うことによって、適切な品質評価が可能となる。
【0031】
ここで、種子の「臍(ほぞ)」というのは、一般的な果実に存在する「蔕(へた)」に相当する部分とも言える部分であり、この果実に存在する「蔕(へた)」に相当する部分を、この明細書においては、種子の「臍(ほぞ)」としている。なお、「臍(ほぞ)」は「へそ」とも呼ばれている。
【0032】
[3]本発明の穀類の品質評価・選別システムにおいては、前記種子は、外観形状がほぼ三角錐状をなすソバの種子であり、前記凹部付きディスクに設けられている前記凹部は、前記凹部付きディスクのディスク面を見たときの形状がほぼV字形状をなし、当該V字形状をなす凹部の開口が前記凹部付きディスクの周面に沿って位置するように設けられていることが好ましい。
【0033】
このように、種子がソバの種子(単に「ソバ」ともいう。)である場合には、凹部付きディスクの凹部が、ほぼV字形状をなしていることによって、フィーダーから供給された1粒ごとのソバは、ソバの「臍」が存在する面以外の面が、凹部付きディスクの周面側開口に位置するような姿勢にほぼなる。
【0034】
[4]本発明の穀類の品質評価・選別システムにおいては、前記ソバの種子は、玄そばから外皮を除去した状態の丸抜きソバであることが好ましい。
これにより、丸抜きソバを1粒ごとに品質評価・選別が可能となる。
【0035】
[5]本発明の穀類の品質評価・選別システムにおいては、前記丸抜きソバの前記「臍」が存在する面を当該丸抜きソバの「底面」とし、当該底面以外の3つの面をそれぞれ前記丸抜きソバの「腹面」とし、当該「腹面」の隣り合う腹面の3つの境目をそれぞれ前記丸抜きソバの「稜」としたとき、前記凹部は、3つの前記「稜」のうちの1つの「稜」が当該V字形状をなす凹部の底部側で、かつ、前記凹部付きディスクの厚み方向に沿って位置し、3つの前記「腹面」のうちの2つの「腹面」が、前記V字形状をなす凹部の一方の壁面と他方の壁面とで支持される姿勢で収納可能となるように形成されていることが好ましい。
【0036】
このように、種子が丸抜きソバである場合には、凹部付きディスクの凹部がこのように形成されていることによって、フィーダーから供給された1粒ごとのソバ(丸抜きソバ)は、当該丸抜きソバの「腹面」が、凹部付きディスクの周面側開口に位置するような姿勢となる。特に、丸抜きソバは「腹面」及び「稜」の部分には、それぞれ膨らみ部を有しているため、「腹面」又は「稜」の膨らみ部分が凹部の壁面において回転軸の如く支持されることとなり、膨らみ部分を回転軸としてほぼ横転する。
【0037】
このため、丸抜きソバは、丸抜きソバの頂点が上向き(周面側開口向き)となる姿勢(立位姿勢とする。)又は丸抜きソバの底面(「臍」が存在する面)が上向き(周面側開口向き)となる姿勢(逆立ち姿勢とする。)を保つことは難しく、少しの振動が付与されれば、膨らみ部分を回転軸として横転して、「腹面」すなわち種子(丸抜きソバ)の特定面が凹部の周面側開口に位置する姿勢(測定好適姿勢)となる。
【0038】
[6]本発明の穀類の品質評価・選別システムにおいては、前記凹部は、前記凹部付きディスクを周面側からから見たときには、当該凹部付きディスクの厚み方向における一方の端面から他方の端面までに渡って形成されており、当該凹部付きディスクの厚みは、少なくとも、前記前記丸抜きソバの前記底面から当該底面とは反対側の頂点までの長さに相当する寸法を有していることが好ましい。
【0039】
凹部付きディスクの凹部をこのように形成することによって、凹部付きディスクに凹部を形成する加工を容易なものとすることができる。また、丸抜きソバを横転させた姿勢(丸抜きソバの底面と頂点とが凹部付きディスクの厚み方向に向く姿勢)で収納できる。このように、丸抜きソバを横転させた姿勢で凹部に収納させることによって、丸抜きソバの「臍」が存在する面(底面)を凹部の周面側開口に位置させないようにすることができる。
【0040】
[7]本発明の穀類の品質評価・選別システムにおいては、前記種子は、米、麦、大豆、小豆又はトウモロコシのいずれかであり、前記凹部付きディスクに設けられている前記凹部は、前記凹部付きディスクのディスク面を見たときの形状が、ほぼコの字形状をなし、当該凹部の開口が前記凹部付きディスクの周面に位置するように設けられていることが好ましい。
【0041】
これにより、本発明の種子の品質評価・選別システムは、米、麦、大豆、小豆又はトウモロコシにおいても品質評価・選別を行うことができる。
【0042】
[8]本発明の穀類の品質評価・選別システムにおいては、前記凹部は、前記凹部付きディスクを周面側からから見たときには、当該凹部付きディスクの厚み方向における一方の端面から他方の端面までに渡って形成されており、当該凹部付きディスクの厚みは、少なくとも、前記米、麦、大豆、小豆又はトウモロコシのいずれかを品質評価・選別対象の種子としたときに、当該品質評価・選別対象とした種子の長手方向の長さに相当する寸法を有していることが好ましい。
【0043】
凹部付きディスクの凹部をこのように形成することによって、米、麦、大豆、小豆又はトウモロコシのいずれかを品質評価・選別対象の種子とした場合であっても、当該凹部付きディスクに凹部を形成する加工を容易なものとすることができる。また、米、麦、大豆、小豆又はトウモロコシの実を、長手方向を凹部付きディスクの厚みに沿った方向に横転させた状態で凹部に収納できる。なお、米、麦、大豆、小豆又はトウモロコシの実を、横転させた状態で凹部に収納させることによって、これらの種子の「臍」が存在する面を凹部の周面側開口に位置させないようにすることができる。
【0044】
[9]本発明の穀類の品質評価・選別システムにおいては、前記凹部付きディスクは、複数枚存在し、当該複数枚の凹部付きディスクは、各凹部付きディスクの前記凹部が前記回転軸に沿った方向において同一直線上に並ぶように配置され、かつ、前記回転軸を共有して同一回転するように構成されており、前記振動付与ディスクは、当該複数枚の凹部付きディスクの隣り合う凹部付きディスクの間に介在された構成となっていることが好ましい。
【0045】
このように、凹部付きディスクは、複数枚存在し、当該複数枚の凹部付きディスクは、各凹部付きディスクの前記凹部が前記回転軸に沿った方向において同一列に並ぶように配置され、かつ、前記回転軸を共有して同一回転するように構成されている。このため、測定位置においては、同時に複数粒の種子の測定を行うことができる。これによって、種子の品質評価・選別動作を大幅に高速化できる。
【0046】
また、振動付与ディスクは、複数枚の凹部付きディスクの隣り合う凹部付きディスクの間に介在された構成となっているため、複数枚の凹部付きディスクの各凹部に収納されている種子に対しても微振動を付与することができる。
【0047】
[10]本発明の穀類の品質評価・選別システムにおいては、前記振動付与ディスクに対して周方向の振動を付与する振動付与装置をさらに備え、前記振動付与装置は、前記振動付与ディスクを周方向に沿って所定角度で正逆回転させる振動付与用モーターと、当該振動付与用モーターの駆動片と前記振動付与ディスクとを連結して、前記振動付与用モーターの正逆回転力を前記振動付与ディスクに伝達して当該振動付与ディスクを周方向に沿って所定角度で正逆回転させる駆動軸とを有していることが好ましい。
【0048】
このような振動付与装置を備えることによって、凹部付きディスクに収納されている種子に対して周方向に沿った振動を付与することができる。すなわち、振動付与ディスクを所定の回転角度で正逆回転させることによって、振動付与ディスクが周方向に沿って微振動し、その微振動が凹部付きディスクに収納されている種子に伝わる。
【0049】
[11]本発明の穀類の品質評価・選別システムにおいては、前記凹部付きディス駆動用モーターは、前記凹部付きディスクに対して前記一方向に所定角度ごとの間欠回転を行わせる際において、前記所定角度の回転が終了するごとに、所定時間内で正逆回転を行うことが好ましい。
【0050】
このように、凹部付きディスクに対して一方向に所定角度ごとの間欠回転を行わせる際には、凹部付きディスが所定角度の回転が終了するごとに、凹部付きディスク駆動用モーターが所定時間内で正逆回転を行うようにしている。これにより、凹部付きディスが所定角度の回転が終了するごとに凹部付きディスク自体も周方向に沿った微振動を行うこととなる。これにより、凹部付きディスクに収納されている種子は、測定好適姿勢となり易い。なお、「所定角度の回転が終了するごとに、所定時間内で正逆回転を行う」というのは、凹部付きディスの所定角度の回転が終了した直後のわずかな時間だけ凹部付きディスクを微振動させてもよく、測定動作中に渡って凹部付きディスクを微振動させ続けることを含んでいる。測定動作中に渡って凹部付きディスクを微振動させ続けることにより、種子の測定対象面を広く取ることができる。
【0051】
[12]本発明の穀類の品質評価・選別システムにおいては、前記振分け装置は、前記測定位置を通過した種子を前記凹部から落下させる落下位置に設けられ、所定範囲の回転角度での回転が可能な振分けシュートと、前記分光データ処理部から出力される制御信号に基づいて、前記振分けシュートを所定の回転角度で回転させる振分けシュート駆動用モーターと、前記振分けシュートの排出口に前記複数段階の評価に対応して配設され、前記振分けシュートによって振分けられた種子を前記複数段階の評価に対応して設けられている回収箱に導くガイド部と、を有することが好ましい。
【0052】
振分け装置をこのような構成とすることによって、種子を1粒ごとに複数段階の評価に対応して選別することができる。例えば、評価がA~Eの5段階であったとすると、当該4段階の各評価(A~Eの各評価)ごとに種子を1粒ごとに選別できる。
【0053】
[13]本発明の穀類の品質評価・選別システムにおいては、前記励起光は、紫レーザー励起光であることを特徴とする種子の品質評価・選別システム。
【0054】
このように、励起光は、紫レーザー励起光を用いることにより、種子からは品質評価に必要な蛍光を得ることができる。
【0055】
[14]本発明の穀類の品質評価・選別システムにおいては、前記分光データ処理部は、前記分光データに基づいて求められた各波長における蛍光強度のうち、前記種子が有している特徴的な成分由来の蛍光強度が得られている波長帯の前記蛍光強度に基づいて前記種子の品質を評価するための指数を求め、求めた指数に基づいて前記種子の振分けを行うための制御信号を前記振分け装置に出力することが好ましい。
【0056】
分光データ処理部がこのような機能を有することによって、種子の品質評価を適切に行うることができるとともに、評価した結果に基づいて振分け装置を制御することができるため、種子を評価に応じて適切に振分けることができる。なお、種子が有している特徴的な成分というのは、例えば、種子がソバ(丸抜きソバ)である場合には、タンパク質及びクロロフィルを例示することができる。
【0057】
[15]本発明の穀類の品質評価・選別システムにおいては、前記凹部付きディスクの厚み及び前記振動付与ディスクの厚みは、当該凹部付きディスクの厚みと当該振動付与ディスクの厚みとを足したときの合計の厚みが、予め決められている一定の厚みとなるように、前記凹部付きディスクの厚み及び前記振動付与ディスクの厚みがそれぞれ設定されていることが好ましい。
【0058】
凹部付きディスクと振動付与ディスクとの合計の厚みをこのように設定しておくことにより、凹部付きディスクの厚みを種子の種類に応じて種々設定したときにも、当該凹部付きディスクと振動付与ディスクとの合計の厚みは変わらないようにすることができる。これにより、品質評価・選別対象となる種子の種類を変えた場合であっても、凹部付きディスクと振動付与ディスクとを当該種子に応じて変えればよく、品質評価・選別システムの殆どの構成要素はサイズなどを変更することなく使用可能となり、汎用性の高いシステムとすることができる。
【0059】
[16]本発明の穀類の品質評価・選別システムにおいては、前記凹部ディスクの前記凹部に収納されている種子に対して白色光を照射する白色光源をさらに備え、前記分光器は、前記白色光源から照射された白色光によって前記種子から反射される反射光を受光して、受光した反射光の分光分析を1粒の種子ごとに行って分光データを出力する機能をさらに有し、前記分光データ処理部は、前記分光器から出力される前記1粒の種子ごとの分析データから色強度を求め、求めた色強度に基づいて前記一粒の種子ごとの品質評価を行う機能をさらに有することが好ましい。
【0060】
このように、励起光源に加えて、白色光源を備えていることによって、蛍光量に基づく品質評価に加えて、種子からの反射光(色)に基づく品質評価も可能となる。これによって、人間の見た目の色による評価も可能となる。また、励起光の波長を変えて、当該励起光の波長、蛍光波長及び蛍光強度を3次元蛍光スペクトルとして取得することで、種子の特性を反映する蛍光指紋を得ることができ、この蛍光指紋から、種子の産地、品質等(カビ毒等も含めて)を詳細に選別することも可能となる。特に、1粒ずつの種子に対して、蛍光指紋から、種子の産地、カビ毒等の混入状況を把握して、把握した結果に応じた選別も可能となる。
【0061】
[17]本発明の穀類の品質評価・選別システムにおいては、励起光源からの励起光及び前記白色光源らの白色光は、それぞれパルス発振され、前記種子が前記測定位置に達するごとに、当該測定位置に達した1粒ごとの種子に対して前記励起光と前記白色光とを所定の時間差で照射するように構成されていることが好ましい。
【0062】
このようにすることで、1粒ずつの種子に対して、蛍光分析(蛍光強度又は蛍光指紋)と色分析の両方を行うことができ、蛍光分析に基づく品質評価と、見た目の色による品質評価の両方を行うことができる。特に、1粒ずつの種子に対して、蛍光分析に基づく品質評価を行うことに加えて、見た目の色を重視した品質評価をも行う場合には、有効なものとなる。なお、蛍光指紋による品質評価を行うことによって、1粒ずつの種子に対して、種子の産地、品質等(カビ毒等も含めて)を把握して、把握した結果に応じた選別も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】実施形態1係る種子の品質評価・選別システム1の概略構成図である。
【
図2】
図1のx軸に沿って矢印a方向に見たときの搬送選別装置200を示す図である。
【
図3】1枚の凹部付きディスク231を取り出して示す図である。
【
図4】
図3における凹部付きディスク231の凹部221を拡大して示す図である。
【
図5】1粒のソバ(丸抜きそば)10の一例を示す斜視図である。
【
図6】振動付与ディスク241,242を周方向に沿って振動させるための振動付与装置400を模式的に示す図である。
【
図7】振分け装置260の構成を模式的に説明するために示す図である。
【
図8】測定動作を行っている最中に凹部付きディスクを微振動させるときのパルスモーターの動作を模式的に示す図である。
【
図9】品質評価を行うための蛍光の分光分析結果の一例を示す図である。
【
図10】
図9に示す分光分析結果から求められたソバS1、ソバS2、ソバS3、ソバS4のたんぱく質指数P及びクロロフィル指数Cに基づく品質評価結果を示す図である。
【
図11】実施形態2に係る種子の品質評価・選別システム2の概略構成図である。
【
図12】種子として大豆20を品質評価・選別対象とした場合を説明するために示す図である。
【
図13】特許文献1に記載されているソバの品質評価・選別システム900を説明するために示す図である。
【
図14】
図13に示した搬送部920Aを詳細に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明の種子の品質評価・選別システムにおいて、品質評価及び選別対象とする種子としては、ソバを含む米、麦、トウモロコシ、大豆などの穀類および穀類以外の種子を例示できるが、以下に示す実施形態においては、主に、「ソバ」を例に取って説明し、特に、玄ソバから外皮を除去した状態のソバ(丸抜きソバともいう。)を例にとって説明する。
【0065】
[実施形態1]
以下、実施形態1に係る種子の品質評価・選別システム1について説明する。
図1は、実施形態1係る種子の品質評価・選別システム1の概略構成図である。
図2は、
図1のx軸に沿って矢印a方向に見たときの搬送選別装置200を示す図である。なお、
図2においては、搬送選別装置200の一部の構成要素については図示が省略されている。
図3は、1枚の凹部付きディスク231を取り出して示す図である。
図4は、
図3における凹部付きディスク231の凹部221を拡大して示す図である。なお、
図4は、
図3の破線枠e内を拡大して示しており、
図4(a)は
図3に示す凹部付きディスク231をy軸に沿ってディスク面の側から任意の1つの凹部221を見た図であり、
図4(b)は
図3に示す凹部付きディスク231の周面側からx軸に沿って任意の1つの凹部221を見た図であり、いずれも、1粒のソバ10が収納されている状態が示されている。
【0066】
また、
図5は、1粒のソバ(丸抜きそば)10の一例を示す斜視図である。
図5(a)はソバ10の「臍(ほぞ)11」が下向き、ソバ10の頂点12が上向きとなっている場合を示しており、
図5(b)はソバの「臍11」が上向き、ソバの頂点12が下向きとなっている場合を示している。なお、ソバ10は1粒ごとに多少形状が異なるが、
図5に示すように、膨らみを持ったほぼ三角錐状をなしている。
【0067】
以下、実施形態に係る種子の品質評価・選別システム1の概略構成について、
図1~
図5を参照して説明する。
【0068】
実施形態に係る穀類の品質評価・選別システム1は、ソバ10に励起光として、例えば、405nmの波長を有する紫レーザー(紫連続レーザーとする。)を照射して蛍光を発生させ、当該蛍光を分光分析して、所定波長帯の蛍光量を求め、求めた蛍光量に基づいてソバの品質を評価する品質評価装置100と、品質評価・選別対象となるソバ(以下、選別対象となるソバと略記する場合もある。)を1粒ごとに所定の姿勢(詳細は後述する。)で整列させた状態で、測定位置P2を通過せるように搬送して、品質評価装置100による品質評価結果に基づいてソバを1粒ごとに選別する搬送選別装置200とを有している。
【0069】
まずは、搬送選別装置200について、主に
図1及び
図2を参照して説明する。
搬送選別装置200は、選別対象となる種子(この場合はソバ10とする。)が投入されるとともに、投入されたソバ10を連続的に供給するフィーダーと210と、フィーダー210から連続的に供給される1粒ごとのソバ10に対応した凹部221~223が、周方向に沿って所定間隔ごとに多数設けられており、回転軸270の回転に伴って回転する円盤状の凹部付きディスク(3枚の凹部付きディスク231~233とする。)と、凹部付きディスク231~233とは隣り合って配置され、かつ、凹部付きディスク231~233とは同一回転しないように回転軸270に取り付けられており、周方向に沿って振動を行う振動付与ディスク241,242と、凹部付きディスク231~233に対して一方向(矢印A方向とする。)に所定角度(15度とする。)ごとの間欠回転を行わせる凹部付きディスク駆動用モーターと(パルスモーターとする。)250と、品質評価装置100(詳細は後述する。)による品質評価結果に基づいてソバを1粒ごとに選別する振分け装置260と、を備えている。これら各構成要素の構成などについては順次後述する。
【0070】
フィーダー210は、ソバ投入口211と、ソバ投入口211から投入されたソバ10を凹部付きディスク231~233の各凹部221~223に供給するためのソバ供給口212とを有し、ソバ10が凹部付きディスク231~233の凹部221~223に自然に流れ出て行くような傾斜を有して配置されている。
【0071】
また、フィーダー210の内部には、ソバ投入口211から投入された多数のソバ10が、ソバ供給口212に集中しないように、ソバ供給口212へのソバ10の流れを制限する制限板213を有している。このような制限板213が設けられていることによって、フィーダー210内に収納されているソバ10は、一段又は2段程度でソバ供給口212に流れ出て行き、ソバ供給口212にソバ10が集中しないようにすることができる。
【0072】
また、フィーダー210には、図示は省略するが、フィーダー振動付与部が設けられており、このフィーダー振動付与部によってフィーダー210には振動(微振動)が与えられており、フィーダー210内に収納されているソバ10を連続的しかも円滑に各凹部221~223に供給可能としている。
【0073】
続いて、凹部付きディスク231~233、当該凹部付きディスク231~233に形成されている凹部221~223及び振動付与ディスク241,242などについて説明する。
【0074】
凹部付きディスク231~232に設けられている凹部221~223は、フィーダー210から連続的に供給されるソバ10の1粒のソバに対応して周方向に沿って所定間隔ごとに多数設けられている。これら凹部221~223は、ソバ10の特定面が周面側開口に位置する姿勢でソバを1粒ごとに収納可能とする。なお、ここでいう「特定面」とは、種子が丸抜きソバの場合、「臍(ほぞ)」が存在しない面である。これについては、後に詳細に説明する。
【0075】
また、凹部221~223は、それぞれの凹部付きディスク231~233において15度の角度ごとに設けられており、1枚の凹部付きディスクにつき24個設けられている。なお、凹部221~223の形状などについては、
図3及び
図4を参照して後述する。また、凹部221~223は、各凹部付きディスク231~233において、回転軸270に沿った方向(y軸に沿った方向)に同一直線上に並んで配置されるように形成されている。
【0076】
また、3枚の凹部付きディスク231~233は、回転軸270を共有して並列配置されており、振動付与ディスク241,242は、3枚の凹部付きディスク231~233の隣り合う凹部付きディスクの間に所定間隔を有して介在されるように設けられている。
【0077】
ここで、凹部付きディスク231~233のそれぞれの厚みは、選別対象の種子の種類によっても異なるが、選別対象の種子がソバ(丸抜きそば)である場合には、例えば、5mmとする。また、振動付与ディスクの厚みは、例えば、10mmとしている。また、凹部付きディスク231~233と振動付与ディスクとの間には、0.5mmの隙間が存在する。このため、隣り合う凹部付きディスクと振動付与ディスクとの合計の厚みは、0.5mmの隙間を合計して、15.5mmとなる。例えば、凹部付きディスク231と振動付与ディスク241との合計の厚みは15.5mmとなり、凹部付きディスク232と振動付与ディスク242との合計の厚みも同様に15.5mmとなる。
【0078】
また、3枚の凹部付きディスク231~233のうちの両端に位置する凹部付きディスク231,233には、円盤状の押さえディスク281,282がそれぞれ並設されており、これら押さえディスク281,282によって凹部付きディスク231、振動付与ディスク241、凹部付きディスク232、振動付与ディスク242、凹部付きディスク233がそれぞれ所定の隙間を有して両端から挟まれた状態となっている。
【0079】
これら、凹部付きディスク231~233、振動付与ディスク241,242及び押さえディスク281,282は、それぞれ合成樹脂で形成されており、特に、凹部付きディスク231~233及び振動付与ディスク241,242は透明な合成樹脂で形成されている。このように、凹部付きディスク231~233及び振動付与ディスク241,242を透明な合成樹脂で形成したのは、ダークノイズ(励起光を照射したときに、ソバ以外の凹部付きディスク231~233などが発する蛍光)を抑制することができるためである。
【0080】
また、押さえディスク281,281も透明な合成樹脂で形成するようにしてもよい。また、凹部付きディスク231~233、振動付与ディスク241,242及び押さえディスク281,282の材料として金属を用いれば、ダークノイズの抑制効果は高いが、軽量化及び加工の容易化を図るため、ここでは、これらの材料としては、合成樹脂を用いている。
なお、
図2などにおいては、凹部付きディスク231~233は、凹部221~223以外の部分を灰色で示しているが、これは、凹部221~223の存在を分かり易くするためである。
【0081】
また、回転軸に270には、凹部付きディスク駆動用モーターとしてのパルスモーター250の回転力を当該回転軸270に伝達するプーリー290が取り付けられている。このため、パルスモーター250の回転力はプーリー290を介して回転軸270に伝達される。
【0082】
ところで、凹部付きディスク231~233、振動付与ディスク241,242及び押さえディスク281,282は、具体的には、次のようにして回転軸270に軸支されている。
【0083】
振動付与ディスク241,241は、シャフトカラー(回転軸270に環装される円筒体)271,272を介して回転軸270に軸支されている。なお、シャフトカラー271,272は回転軸270とともに回転するように回転軸270に取り付けられており、振動付与ディスク241,242は、シャフトカラー271,272に対しては空転可能に取り付けられている。また、当該シャフトカラー271,272の軸方向長さは、振動付与ディスク241,242の厚み(この場合、10mmとしている)よりもわずかに長いものとなっており、例えば、11mmとしている。
【0084】
一方、凹部付きディスク231~233は、シャフトカラーを介さずに回転軸270に直接的に取り付けられているが、当該凹部付きディスク231~233は、回転軸270に固定されておらず、空転可能となっている。
【0085】
また、押さえディスク281,282もそれぞれシャフトカラー273,274を介して回転軸270に軸支されている。これらシャフトカラー273,274も回転軸270とともに回転するように回転軸270に取り付けられており、押さえディスク281,282は、シャフトカラー273,274に空転可能に取り付けられている。これらシャフトカラー273,274も、押さえディスク281,282の厚みよりもわずかに長いものとなっている。例えば、押さえディスク281,282の厚みをそれぞれ5mmとすれば、シャフトカラー273,274は、それぞれ6mmとする。
【0086】
また、回転軸270は、両端に雄ネジ275,276(
図2参照。)が形成されている両端雄ネジ付きシャフトとなっている。そして、回転軸270の両端に形成されている雄ネジ275,276は、フレーム311,312から外方に突出し、ベアリング付きの軸受け部321,322を介して両端をナット331,332で締め付けるようになっている。なお、ベアリング軸受け部321,322は、内輪と外輪と有し、これら内輪と外輪との間にベアリングが存在する。
【0087】
このような構成となっていることにより、フレーム311,312の両端側から、ナット締めすると、シャフトカラー271~274が凹部付きディスク231~233のディスク面を両側から押圧することとなる。
【0088】
すなわち、振動付与ディスク241,242が空転可能に取り付けられているシャフトカラー271,272及び押さえディスク281,282が空転可能に取り付けられているシャフトカラー273,274の軸方向長さは、振動付与ディスク241,242及び押さえディスク281,282の厚みよりもわずかに長いものとなっているため、回転軸270(両端雄ネジ付きシャフト)の両端側からそれぞれナット締めを行うことにより、各シャフトカラー271~274が凹部付きディスク231~233側面部を両側から押圧することができる。また、このとき、隣り合う凹部付きディスクと振動付与ディスクとの間、及び、隣り合う凹部付きディスクと押さえディスクとの間には、わずかな隙間(0.5mmとする。)が生じる。
【0089】
これにより、パルスモーター250によってプーリー290が回転すると、その回転力が回転軸270に伝わり、回転軸270とともにシャフトカラー270も回転して、凹部付きディスク231~233を回転させることができる。
【0090】
このとき、振動付与ディスク241,242及び押さえディスク281,282は、それぞれ対応するシャフトカラー271~274に対して空転可能に取り付けられており、かつ、隣り合う凹部付きディスクとの間にわずかな隙間が存在しているため、回転軸270の回転力は振動付与ディスク241,242及び押さえディスク281,282には伝達されない。このため、凹部付きディスク231~233が回転しても、振動付与ディスク241,242は凹部付きディスク231~233と同一回転しない。同様に、押さえディスク281,282も振動付与ディスク241,242と同様、凹部付きディスク231~233と同一回転しない。
【0091】
また、回転軸270には、原点スリットディスク(図示は省略する。)が取り付けられており、原点スリットディスクの原点スリットをセンサー(図示は省略する。)によって検知することによって、パルスモーター250が1回転するごとに原点調整を行うようにしている。この原点調整は、回転数の増大に伴って生じる「ずれ」を補正するために行われる。
【0092】
すなわち、パルスモーター250が、例えば、10パルスで10度回転するというように設定されていた場合には、本来は、パルスモーター250は10パルスで10度の回転を行うが、大きな負荷が加わるなど何らかの原因で脱調を起こして、例えば、10パルスで9度しか回転しない場合がある。このような場合、設定したパルスを与えても回転角度に「ずれ」が生じて、正確な回転角度が得られないこととなる。このような「ずれ」は回転数の増大に伴って大きくなって行く。このような「ずれ」を補正するため、例えば、一回転ごとに、原点スリットを原点センサーによって検知して、「ずれ」を補正するようにしている。
【0093】
また、凹部付きディスク231~232の周面に対向して設けられている測定位置P2(
図1及び
図3参照。)には、凹部付きディスク231~233に対応して、品質評価装置100の励起光源110が発する紫連続レーザーを照射するための照射用光ファイバー(プラスチック光ファイバーとする。)121~123が設けられている(
図2参照。)。この場合、測定位置P2は、フィーダー210からソバ10が供給される供給位置P1(
図1及び
図3参照。)から凹部付きディスク231~233が所定角度(例えば、15度×6=90度とする。)だけ回転した位置に設定されている。
【0094】
なお、照射用光ファイバー121~123の励起光照射口にはレンズが設けられるが、当該レンズの図示は省略している。また、測定位置P2の周辺は、図示は省略するが、外来光などの光が入らないように暗箱などを設けることが好ましい。
【0095】
また、凹部付きディスク231~233における測定位置P2には、受光用ファイバー(プラスチック光ファイバーとする。)131~133が設けられている(
図2参照。)。この受光用光ファイバー131~133は、短波長カットフィルター141~143を介してそれぞれ対応する分光器151~153に接続されており、照射用光ファイバー121~123から照射された励起光によって生じた蛍光を短波長カットフィルター141~143を介してそれぞれ対応する分光器151~153に送る。
【0096】
そして、分光器151~153からの分光データはマイクロコンピュータなどで構成される分光データ処理部160に送られて、品質評価が行われる。分光データ処理部160による品質評価については後述する。なお、分光器151~153の入射口にはレンズが設けられるが、当該レンズの図示は省略している。
【0097】
また、凹部付きディスク231~233の測定位置P2よりも回転方向(矢印A方向)の前方側周面には、凹部221~223に入っているソバが落下することを防止するための落下防止カバー300(
図1及び
図3参照。)が設けられている。この落下防止カバー300は、測定位置P2とソバ10の落下位置P3との間に設けられる。
【0098】
続いて、凹部付きディスク231~232における凹部221~223について
図3、
図4及び
図5を参照してさらに詳細に説明する。凹部付きディスク231~232における凹部221~223は同じ構成となっているため、ここでは、凹部付きディスク231の凹部221について説明する。凹部221は、
図3及び
図4に示すような形状をなしている。なお、ここでは、種子としては「丸抜きソバ」の場合を例示しているため、凹部221は丸抜きソバ用の凹部である。
【0099】
図3に示す凹部付きディスク231のディスク面(側面ともいう。)をy軸に沿って見たときの凹部221の形状は、ほぼV字形状をなしている。そして、当該凹部221の径方向の深さは、例えば、3.0mm~6.0mm程度とし、V字形状をなす壁面のうちの一方の壁面a1と他方の壁面a2とのなす角度θは60度程度(
図4(a)参照。)としている。なお、これらの数値は特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。また、「一方の壁面a1」を、以下、「回転方向後方側の壁面a1」と表記し、「他方の壁面a2」を、以下、「回転方向前方側の壁面a2」と表記する。ここで、回転方向とは、矢印A方向である。なお、これら凹部の各部の寸法は、このような値に限られるものではなく、必死つ評価・選別対象とするソバの品種などによって、適宜設定可能である。
【0100】
また、回転方向後方側の壁面a1及び回転方向前方側の壁面a2は、凹部付きディスク231の径に沿った線Lを基準にした場合、回転方向後方側の壁面a1の方が回転方向前方側の壁面a2よりも径に沿った線Lに対して小さな角度をなしている。
【0101】
回転方向後方側の壁面a1及び回転方向前方側の壁面a2の径に対する角度をこのように設定することにより、フィーダー210を
図1及び
図3に示すように配置した場合、フィーダー210から流れ出てくるソバ10を凹部221で受け易くすることができ、凹部221に入り込もうとしているソバ10が後方側に、こぼれ落ちたりすることを防止できる。なお、回転方向後方側の壁面a1及び回転方向前方側の壁面a2の径に沿った線Lに対する角度は、フィーダー210の設置の仕方などに応じて、適宜設定することが可能である。
【0102】
また、凹部221は、凹部付きディスク231を周面側からから見たときには、
図4(b)に示すように、当該凹部付きディスク231の厚み方向における一方の端面231aから他方の端面231bまでに渡って、切り欠き溝のごとく形成されており、周方向に沿った幅W1は、4mm~6mm程度としている。一方、凹部221の幅W2(凹部付きディスク231の厚み方向に沿った幅W2)は、凹部付きディスク231の厚みを5mmとしているため、当該凹部221の幅W2は5mmとなる。
図4(a)及び
図4(b)においては、凹部221に1粒のソバ10が収納されている状態が示されている。
【0103】
ここで、ソバ10は、
図5に示すように、膨らみを持ったほぼ三角錐状をなしており、当該ソバ10の「臍(ほぞ)11」が存在する面をソバの底面とし、当該底面以外の3つの面をソバの「腹面13」とし、当該3つの「腹面13」のそれぞれの境界をソバの「稜」14とする。
【0104】
このような形状をなすソバ10の品質評価を行う際には、ソバの「臍(ほぞ)11」が存在する面(底面)又はソバの頂点12を測定して品質評価を行うと、適切な品質評価が行えないということが発明者等の実験により確かめられている。特に、ソバの「臍11」が存在する面(底面)を測定して品質評価を行うと、適切な品質評価が行えない。このため、ソバ10の品質評価を適切に行うには、
図4(a)及び
図4(b)に示すような姿勢(ソバ10の「腹面13」が凹部221の周面側開口に位置するような姿勢)で測定を行うことが、適切な高い品質評価をする上で重要となる。換言すれば、
図4(a)及び
図4(b)に示すような姿勢で測定を行わないと、適切な品質評価ができないこととなる。
【0105】
従って、ソバ10においては、ソバ10の「腹面13」がこの明細書でいう「特定面」であり、当該特定面すなわち「腹面13」が凹部221の周面側開口に位置するような姿勢が「測定好適姿勢」であるといえる。このため、フィーダー210から凹部221に供給されたソバ10が測定位置P2に達したときには、ソバの「腹面13」が凹部221の周面側開口に位置するような測定好適姿勢となるようにすることが重要となる。
【0106】
凹部付きディスク231~233の凹部221~223はこの点を考慮した形状となっている。すなわち、凹部(ここでも、凹部221を例に取って説明する。)を
図3及び
図4に示すような形状とすることによって、フィーダー210から供給された1粒ごとのソバ10は、確実に、当該ソバ10の「臍11」が存在する面以外の面(腹面13)が、凹部221の周面側開口に位置するような姿勢(測定好適姿勢)となる。
【0107】
具体的には、凹部221を
図3及び
図4に示すような形状とすることによって、フィーダー210から供給された1粒ごとのソバ10は、ソバ10の3つの「稜14」のうちの1つの「稜14」が当該V字形状をなす凹部221の底部側でかつ凹部付きディスク231の厚み方向に沿って位置し、3つの「腹面13」のうち2つの「腹面13」が当該V字形状をなす凹部221の回転方向後方側の壁面a1と回転方向前方側の壁面a2とで支持される姿勢(測定好適姿勢)で収納可能となる。
【0108】
特に、ソバ10は、「腹面13」及び「稜14」の部分には、それぞれ膨らみ部分c(
図4参照。)を有しているため、腹面13又は「稜」の膨らみ部分cが凹部221の壁面a1,a2に回転軸の如く支持されることとなる。このため、凹部221を
図4に示すような形状としておけば、ソバ10が凹部221に入ると、膨らみ部分cを回転軸として横転して、
図4に示すような姿勢となることが多い。すなわち、そば10は、V字形状の凹部221においては、ソバ10の頂点12が周面側開口に位置する姿勢(立位姿勢とする。)又はソバ10の「臍11」が周面側開口に位置する姿勢(逆立ち姿勢とする。)を保つことは難しく、少しの振動が付与されれば、膨らみ部分cを回転軸として横転して、
図4に示すように、ソバ10の腹面13が凹部221の周面側開口に位置するような姿勢(測定好適姿勢)となる。
【0109】
従って、仮に、ソバ10はフィーダー210から凹部221に入った時点では、立位姿勢又は逆立ち姿勢であっても、結局は、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、ソバ10の「腹面13」が、凹部221の周面側開口に位置するような姿勢(測定好適姿勢)で凹部221に収納されることとなる。しかも、詳細は後述するが、凹部付きディスク231に収納されているソバ10には、振動付与ディスク241によって周方向に沿った振動が付与されるため、凹部221に収納されているソバ10は、より確実に測定好適姿勢となる。
なお、凹部付きディスク231~232における凹部221~223についてのこれまでの説明は、主に凹部付きディスク231の凹部221について説明したが、凹部付きディスク232,233の凹部222,223についても同様である。
【0110】
続いて、凹部付きディスク231~233を周方向に沿って振動させるための振動付与装置について説明する。振動付与装置400は、
図1及び
図2において示した実施形態1に係る品質評価・選別システム1内に備えられているものであるが、
図1及び
図2においては、当該振動付与装置400は図示が省略されている。
【0111】
図6は、振動付与ディスク241,242を周方向に沿って振動させるための振動付与装置400を模式的に示す図である。振動付与装置400は、所定の回転角度で正逆回転する振動付与用モーター(サーボモーターとする。)410と、当該サーボモーター410の駆動片411と振動付与ディスク241,242とを連結して、サーボモーター410の駆動力(正逆回転力)を振動付与ディスク241,242に伝達する駆動軸(ピアノ線とする。)421,422とを有している。
【0112】
ここで、サーボモーター410の駆動片411と振動付与ディスク241,242とを連結するための連結構造について説明する。なお、サーボモーター410は、2枚の振動付与ディスク241,242の両方を駆動するように構成されているが、ここでは、サーボモーター410の駆動片411と振動付与ディスク241とを連結するための連結構造について説明する。
【0113】
ピアノ線421の一端は、サーボモーター410の駆動片411における第1取り付け孔411aに取り付けられ、ピアノ線421の他端側は、振動付与ディスク241の周面に形成されている取り付け孔241aに取り付けられる。
【0114】
なお、ピアノ線421の他端側を振動付与ディスク241の周面に形成されている取り付け孔241aに取り付けるには、例えば、当該取り付け孔241aにピアノ線421の他端側をほぼ90度折り曲げて折り曲げ部421aを形成し、当該折り曲げ部421aを、ピアノ線421の弾性を利用して差し込むことにより取り付けることができる。すなわち、ピアノ線421を少しだけ下方向に撓ませて、ピアノ線421の弾性(復帰力)を利用して、折り曲げ部421aを振動付与ディスク241の周面に形成されている取り付け孔241aに取り付ける。
【0115】
このようにすることで、特別な固定手段を設けることなく、容易にピアノ線421を振動付与ディスク241に取り付けることができる。なお、この場合、振動付与ディスク241に発生させる振動は微振動でよいため、サーボモーター410の駆動片411の振れ角度はわずかでよく、ピアノ線の往復動もわずかであるため、強固な固定手段は不要である。
【0116】
このように構成されている振動付与ディスク241,242は、隣り合う凹部付きディスク231~233とわずかな隙間(0.5mmとしている。)を有して配置されており、周方向に沿って振動(微振動)を行うように構成されているため、フィーダー210から凹部221~223にソバ10が供給される際にフィーダー210から凹部221~223に入り込もうとするソバ10及び凹部221~223に収納されているソバ10に対して微振動を付与する働きをする。具体的には、フィーダー210から凹部221~223に入り込もうとしているソバ10に対して周方向に沿った微振動を付与するとともに、凹部221~223に収納されているソバ10に対しても周方向に沿った微振動を付与する働きをする。
【0117】
以上は、サーボモーター410の駆動片411と振動付与ディスク241とを連結するための連結構造について説明したが、サーボモーター410の駆動片411と振動付与ディスク242とを連結するための連結構造についても同様であるため、説明は省略する。
【0118】
振動付与ディスク241,242を振動させるための振動付与装置400がこのような構成となっていることにより、サーボモーター410がわずかな回転角度で正逆回転することによって、駆動片411が左右に往復動し、その往復動がピアノ線421,422を介して振動付与ディスク241,242に伝わる。これによって、振動付与ディスク241,242は周方向に沿って振動(微振動)を行う。振動付与ディスク241,242の振動の周期は種々設定可能であるが、この場合は、ごく短い周期でよい。
【0119】
このように、振動付与ディスク241,242が振動(微振動)すると、当該振動付与ディスク241,242の振動は、凹部付きディスク231~233に収納されているソバ10にも伝わって、当該ソバ10も振動(微振動)する。なお、凹部付きディスク231~233自体も、測定動作中においては、一時的に振動(微振動)するようにしているが、これについては後述する。
【0120】
続いて、振分け装置260について説明する。
図7は、振分け装置260の構成を模式的に説明するために示す図である。なお、
図7においては、凹部付きディスク231~233などの図示は省略している。また、
図7においては、振分けシュート261~263の隣り合う振分けシュート間の間隔などは
図2に比べて広く描かれている。
【0121】
振分け装置260は、
図1、
図2及び
図7に示すように、凹部付きディスク231~233に対応して設けられている振分けシュート261~263(
図1においては、振分けシュート261のみが示されている。)と、振分けシュート261~263を駆動するための振分けシュート駆動用モーター(サーボモーターとする。)264と、振分けシュート261~263によって振分けられたソバを、ここでは5段階の評価(A,B,C,D,Eとする。)に対応して設けられている回収箱269A~269E(
図1及び
図7参照。)に滑り落すためのガイド部266と、を有している。
【0122】
振分けシュート駆動モーター264は、
図7に示すように、振分けシュート261~264に対応するサーボモーター264a、264b,264cによって構成されている。そして、サーボモーター264a、264b,264cの駆動片265a,265b,265cと振分けシュート261~263とは駆動軸(ピアノ線267a,267b,267cとする。)によって連結されている。
【0123】
また、振分けシュート261~263は、一本の連結軸268(
図2及び
図7参照。)に回転自在に取り付けられていて、それぞれに対応するサーボモーター264a~264cによって、それぞれ別々に回転動作するようになっている。なお、振分けシュート261~263は、細長い角筒状をなし、先端落下口261a,262a,263aに向かって、やや先細りとなっている。
【0124】
サーボモーター264a,264b,264cは、品質評価装置100の分光データ処理部160から出力される制御信号(1粒ごとの評価結果に基づく制御信号)によってそれぞれ対応する駆動片264a,265b,265cを所定角度だけ回転する動作を行う。この場合、分光データ処理部160からは、A~Eの5段階の評価(「評価A」、「評価B」、「評価C」、「評価D」、「評価E」とする。)に対応する制御信号が出力される。このため、サーボモーター264a~264cは、分光データ処理部160から出力される5段階の評価に対応する制御信号に基づいて、振分けシュート261を回転させる。
【0125】
また、振分け装置260は、振分けシュート261~263で振分けられたソバを、A~Eの5段階の評価に対応した回収箱269A~269Eに滑り落とすためのガイド266(266A~266E)が設けられている。
【0126】
以上、搬送選別装置200の全体に渡って説明したが、続いて、実施形態1に係る種子の品質評価・選別システム1の品質評価・選別動作について説明する。
【0127】
フィーダー210に投入されている多数のソバ10は、制限板213によってソバ供給口212へのソバの流れ量が制限され、ソバ10の重なりが制限された状態でフィーダー210のソバ供給口に212に流れて行く。そして、フィーダー210のソバ供給口212から流れ出たソバは、供給位置P1において、矢印A方向に15度ずつ間欠的に回転している凹部付きディスク231~233の各凹部221~223に入る。
【0128】
このとき、フィーダー210は、図示しない振動付与機構によって、微振動を行っている。このため、フィーダー210に投入されているソバ10をフィーダー210のソバ供給口212から円滑に流出させることができ、凹部付きディスク231~233の各凹部221~223に入って行く。
【0129】
なお、フィーダー210から凹部221~223にソバ10が供給される際にフィーダー210から凹部に入り込もうとしているソバ10には、振動付与ディスク241,242が周方向に沿って微振動しているため、当該ソバ10には、周方向に沿った微振動が伝わり、当該ソバ10は、フィーダー210と凹部221~223との間でブリッジ形成しにくくなり、ソバ10の凹部221~223への収納が円滑に行われ、凹部221~223への種子の収納率が高まる。
【0130】
また、フィーダー210から凹部221~223に入り込もうとしているソバ10に対して周方向に沿った微振動を付与することにより、1つの凹部には1粒だけのソバ10が入り込むようにすることができる。換言すれば、1つの凹部に2粒以上のソバ10が入り込んでしまうことを確実に防止できる。
【0131】
また、凹部221~223が、
図3及び
図4において説明したような構成となっており、また、振動付与ディスク241~243が微振動を行っているため、凹部付きディスク231~233の各凹部221~223に入ったソバ10の姿勢は、測定位置P2に達するまでには、ソバ10の腹面13が凹部221~223の周面側開口に位置する。
【0132】
そして、凹部付きディスク231~233の各凹部221~223に入っているソバ10が測定位置P2に達すると、当該測定位置P2おいて、測定動作が行われる。すなわち、ソバ10が測定位置P2に達すると、各凹部221~223に入っているソバ10に励起光が照射され、ソバ10からは蛍光が発せられ、ソバが発した蛍光は受光用光ファイバー131~133によって短波長カットフィルター141~143に導かれて、当該短波長カットフィルター141~143で所定以下の波長帯(例えば、450nm以下の波長帯)がカットされたのち、分光器151~153に導かれる。
【0133】
このような測定動作を行っている最中において、凹部付きディスク231~233自体を周方向に沿って振動(微振動)させるように、パルスモーター250を制御してもよい。なお、このときのパルスモーター250に対して行う制御は、パルスモーター250の駆動を制御するパルスモーター制御装置(図示は省略する。)によって行うことができる。
【0134】
図8は、測定動作を行っている最中に凹部付きディスクを微振動させるときのパルスモーターの動作を模式的に示す図である。この場合、凹部付きディスク231~233は、15度ずつの間欠的な回転を行うように設定されているため、1回転で24回の測定動作を行うこととなる。
【0135】
実施形態1に係る種子の品質評価・選別システム1においては、凹部付きディスク231~233は、8秒で1回転するように設定されているものとする。このため、凹部付きディスク231~233のそれぞれ1つの凹部221~223に収納されているソバ10に対する測定時間は、8/24≒0.33秒であるが、実際には、
図8に示すように、回転開始(時刻t1)から時刻t2までの間の約0.33/2秒間で、15度の回転が終了して、時刻t2から時刻t3までの間の約0.33/2秒間で測定動作を行うといった動作を繰り返し行う。なお、
図8においては、回転に要する時間と測定時間は、それぞれ0.33/2秒というように同じ時間(1/2ずつ)としている場合を例示しているが、回転に要する時間と測定時間は、必ずしも、同じ時間(1/2ずつ)である必要はない。
【0136】
そして、測定動作を行っている約0.33/2秒間においては、パルスモーター250を
図8に示すように、細かい周期で、かつ、わずかな回転角度で正逆回転させるように制御する。パルスモーター250をこのように制御することによって、凹部付きディスク231~233は、周方向に沿って微振動を行う。
【0137】
このように、パルスモーター250は、凹部付きディスクに対して一方向に15度ごとの間欠回転を行わせる際において、15度の回転が終了するごとに、所定時間内で正逆回転を行うようにしている。これにより、測定動作中においては、凹部221~223に収納されているソバ10の姿勢は、振動付与ディスク241,242から伝わる微振動に加えて、凹部付きディスク231~233自体も微振動するため、より確実に測定好適姿勢とすることができる。
【0138】
なお、凹部付きディスク231~233を周方向に沿って微振動させる動作は、測定動作開始からΔt時間(
図8参照。)のみであってもよく、また、
図8の「実線+破線」で示すように、測定動作の間全体に渡って凹部付きディスク231~233を微振動させ続けるようにしてもよい。
【0139】
そして、各凹部221~223に収納されているソバが発したそれぞれの蛍光は、受光用光ファイバー131,132,133によって導かれて、それぞれ対応する短波長カットフィルター141,142,143(
図1参照。)で所定以下の波長帯がカットされたのち、それぞれ対応する分光器151~153に導かれて分光される。その後、分光データ処理部160においては、分光器151,152,153からの分光データに基づいて、所定波長帯の蛍光成分の蛍光量(蛍光強度)に基づいて品質評価を行う。
【0140】
なお、分光データ処理部160が品質評価を行う際には、ダークノイズを予め考慮して品質評価を行う。ここでのダークノイズとは、例えば、測定位置P2にソバがない状態で励起光を照射したときに発生する蛍光などを例示できる。このようなダークノイズによる蛍光量を予め取得しておき、取得したダークノイズを考慮した品質評価を行う。
【0141】
なお、ダークノイズによる蛍光強度の取得と、取得したダークノイズによる蛍光強度を分光データ処理部160に与えておく処理は、実施形態1に係る種子の品質評価・選別システム1による品質評価・選別動作を開始する前の準備として行っておく。これにより、実際に品質評価・選別動作を行う際においては、分光データ処理部160は、ダークノイズの蛍光量を考慮した品質評価を行うことができる。
【0142】
また、実施形態1に係る種子の品質評価・選別システム1による品質評価・選別動作を開始する前の準備としては、このようなダークノイズによる蛍光量を取得して、取得したダークノイズによる蛍光量を分光データ処理部160に与えておくといった処理の他に、3枚の凹部付きディスク231~233のキャリブレーションを行っておくことも望ましい。
【0143】
すなわち、3枚の凹部付きディスク231~233に対応して設けられているそれぞれの分光器151~153の感度などの性能の「ばらつき」、照射用光ファイバー121~123及び受光用光ファイバー131~133それぞれの減衰量の差などを考慮したキャリブレーションを行う。これを行うには、例えば、標準となる蛍光量を発する標準プレートなどを凹部付きディスク231~233の1つの凹部付きディスクにおける測定位置P2に置き、励起光を照射して当該標準プレートから発せられる蛍光量を測定する。これを3つの凹部付きディスク231~233ごとに順次行い、どの凹部付きディスクにおいても同じ蛍光量が得られるように分光器151~153の調整を行う。
このようなキャリブレーションを行うことによって、同じ蛍光量を発するものを、3枚の凹部付きディスク231~233のいずれの凹部においた場合に、同じ蛍光量を得ることができ。
【0144】
続いて、分光データ処理部160による品質評価について説明する。
図9は、品質評価を行うための蛍光の分光分析結果の一例を示す図である。なお、
図9においては、説明の簡略化のため、4粒のソバ(ソバS1、ソバS2、ソバS3、ソバS4とする。)において得られた分光分析結果を示している。また、
図9において、ソバS1において得られた分光分析結果を「破線」で示し、ソバS2において得られた分光分析結果を「点線」で示、ソバS3において得られた分光分析結果を「一点鎖線」で示し、ソバS4において得られた分光分析結果を「実線」で示している。なお、
図9において、横軸は波長(nm)/センサー素子Noを示し、縦軸は蛍光量(蛍光強度としている。)を示している。
【0145】
ソバ(丸抜きソバ)の場合、丸抜きソバの品質評価が高いほど、タンパク質(Protein)由来の蛍光強度が高く、また、クロロフィル(Chlorophyll)由来の蛍光強度が高いとされている。また、タンパク質由来の蛍光強度が高いほど、種皮が厚く充実しておりソバが軟質であること、及び、クロロフィル由来の蛍光強度が高いほど、ソバが新鮮であるとされている。
【0146】
これに基づいて、
図9において、タンパク質由来の蛍光強度が高い波長帯を選定するとともに、クロロフィル由来の蛍光強度が高い波長帯を選定し、さらに、ベース(基準)となる波長帯を選定する。そして、タンパク質(Protein)由来の蛍光強度が高いとして選定した波長帯をPとし、クロロフィル(Chlorophyll)由来の蛍光強度が高いとして選定した波長帯をCとし、ベース(基準)となる波長帯をBとして、これら波長帯P、波長帯C及び波長帯Bにおける蛍光強度の平均値から、ソバの品質を評価するための指数(ソバ指数ともいう。)を求める。このソバ指数は、分光データ処理部160が有する演算機能によって求めることができる。
【0147】
ここで、タンパク質指数Pは、
P=(Ps-Bs)/(Ps+Bs)・・・・・・(1)
で求めることができ、クロロフィル指数Cは、
C=(Cs-Bs)/(Cs+Bs)・・・・・・(2)
で求めることができる。
【0148】
なお、上記(1)式及び(2)式において、Psは、波長帯Pにおける蛍光強度の平均値であり、Csは、波長帯Cにおける蛍光強度の平均値であり、Bsは、波長帯Bにおける蛍光強度の平均値である。
【0149】
図10は、
図9に示す分光分析結果から求められたソバS1、ソバS2、ソバS3、ソバS4のタンパク質指数P及びクロロフィル指数Cに基づく品質評価結果を示す図である。なお、以下、「タンパク質指数P」を単に「指数P」と表記する場合もあり、また、「クロロフィル指数」を単に「指数C」と表記する場合もある。
【0150】
図10において、横軸は指数Pを示し、縦軸は指数Cを示している。この場合、品質評価の仕方としては、指数Pについては、P=0.3を基準とし、指数CについてもC=0.3を基準として、品質評価を行うものとしている。すなわち、指数P及び指数Cがともに0.3以上であるソバは評価Aとし、指数Pが0.3以上で指数Cが0.3未満であるソバは評価Bとし、指数Pが0.3未満で指数Cが0.3以上であるソバは、評価Cとし、指数P及び指数Cがともに0.3未満であるソバは、評価Dとしている。
【0151】
なお、評価を決める際の基準は、ここでは、P=0.3とし、C=0.3とした場合を例示しているが、この基準は適宜設定でき、また、P及びCの値は必ずしも同じとする必要はない。例えば、P=0.3、C=0.25としたり、P=0.35、C=0.283としたりすることが可能である。
【0152】
ここで、
図9に示す分光分析結果に基づいて、ソバS1~ソバS4について、(1)式及び(2)式を用いて、それぞれの指数P及び指数Cを求めたところ、
図10に示す品質評価結果となった。すなわち、分光分析結果を示す
図9において「破線」で示すソバS1は評価Bであり、同じく
図9において「点線」で示すソバS2は評価Cであり、同じく
図9において「一点鎖線」で示すソバS3は評価Dであり、同じく
図9において「実線」で示すソバS4は評価Aであった。なお、
図10においては、ソバS1の座標上の位置は「◇」、ソバS2座標上の位置は「□」、ソバS3座標上の位置は「△」、ソバS4座標上の位置は「○」で表している。
【0153】
ここで、タンパク質及びクロロフィルがともに多いソバ(評価AのソバS4)は、軟質で風味や粘りがよく、鮮度も高い品質であるいえる。また、タンパク質が多く、クロロフィルが少ないソバ(評価BのソバS1)は、軟質で風味がよいが、鮮度が低い品質であるといえる。また、クロロフィルが多いが、タンパク質が少ないソバ(評価CのソバS2)は、鮮度は高いが風味や粘りが少ないといった品質であるといえる。また、タンパク質及びクロロフィルがともに少ないソバ(評価DのソバS3)は、鮮度が低く、風味や粘りに劣るといった品質であるといえる。このことから、ソバS4はタンパク質及びクロロフィルがともに多いソバであり、高品質なソバであるといえる。
【0154】
また、
図10の品質評価結果においては、欄外に評価Eを設けているが、この評価Eというのは、測定位置P2において、凹部(例えば、凹部221とする。)にソバが入っていなかったり、当該凹部221にソバが入っていても測定不能であったり、当該凹部221にソバ以外の異物などが入っていたりした場合の品質評価結果である。
【0155】
以上のようにして、分光データ処理部160によって、1粒ごとのソバの品質評価が行われると、当該分光データ処理部160は、品質評価結果に基づいて、サーボモーター264a~264cに対して制御信号を出力する。これにより、サーボモーター264a~264cは、分光データ処理部160からの制御信号に基づいて、振分けシュート261~263を駆動する。
【0156】
例えば、上記ソバS1、ソバS2、ソバS3、ソバS4のうち、ソバS1、ソバS2、ソバS3が凹部付きディスク231,232,233の回転軸280に沿った方向(厚み方向)において同一直線上の並びとなっている凹部221,222,223に入っていたとする。ここで、ソバS1は凹部付きディスク231の凹部221、ソバS2は凹部付きディスク232の凹部222、ソバS3は凹部付きディスク233の凹部223にそれぞれ入っていたとする。そして、これら凹部221~223における測定動作が終わって、凹部221~223が落下位置P3(
図1及び
図3参照。)に達すると、分光データ処理部160(
図1参照。)は、ソバS1、ソバS2、ソバS3の品質評価結果に応じた制御信号を、サーボモーター264a,264b,264c(
図7参照。)に出力する。
【0157】
これにより、サーボモーター264a~264cは、それぞれ対応する振分けシュート261~263を所定の回転角度で回転させるように駆動する。この場合、サーボモーター264aは、振分けシュート261に対して、ソバS1が評価Bの回収箱269Bに入るような回転角度で回転するように駆動する。また、サーボモーター264bは、振分けシュート262に対して、ソバS2が評価Cの回収箱269Cに入るような回転角度で回転するように駆動する。サーボモーター264cは、振分けシュート263に対して、ソバS3が評価Dの回収箱269Dに入るような回転角度で回転するように駆動する。
【0158】
振分けシュート261~263それぞれが上記した回転角度で回転することによって、ソバS1はガイド部266Bを滑り落ちて回収箱269Bに入り、ソバS2はガイド部266Cを滑り落ちて回収箱269Cに入り、ソバS3はガイド部266Dを滑り落ちて回収箱269Dに入る。
【0159】
このようにして、ソバS1~ソバS3に対する選別が終わる。続いて、ソバS4が凹部付きディスク231の凹部221に入っていたとすると、当該凹部221が落下位置P3に達すると、サーボモーター264aは、振分けシュート261に対して、ソバS4が評価Aの回収箱269Aに入るような回転角度で回転するように駆動する。これにより、ソバS4はガイド部266Aを滑り落ちて回収箱269Aに入る。
【0160】
このように、それぞれのソバの品質評価結果に応じて、凹部付きディスクート231,~233に対応して設けられている振分けシュート261~263を駆動制御することによって、1粒ごとのソバを連続的に順次、評価A~Eごとに選別できる。
なお、評価Eとなったソバがあった場合には、当該ソバは回収箱Eに貯留されるが、当該回収箱Eに貯留されたソバについては、再度、フィーダー210に戻して測定を行うようにしてもよい。
【0161】
ところで、測定位置P2における測定動作に対する振分けシュートの駆動のタイミングは、測定位置P2からの凹部付きディスク231~233の回転角度から求めることができる。例えば、測定位置P2を起点に凹部付きディスク231~233が120度回転(15度×8)したときに、測定位置P2で測定されたソバが、落下位置P3に到達するということを予め決めておけばよい。これにより、測定位置P2から凹部付きディスク231~233が120度だけ回転したタイミングで、振分けシュート261~263を駆動させれば、ソバが落下位置P3に達したタイミングで振分けシュート261~263を駆動させることができる。
【0162】
以上説明したように、実施形態1に係る種子の品質評価・選別システム1によれば、凹部付きディスク231~233には、ソバ10の特定面(ソバ10の「腹面13」)が周面側の開口に位置する姿勢でソバを収納可能とする凹部221~223が周方向に沿って多数形成されているため、フィーダー210から供給される1粒ごとのソバは、当該ソバの「腹面13」が凹部221~223の開口に位置するような姿勢で凹部221~223に収納されるようになる。
【0163】
また、実施形態1に係る品質評価・選別システム1によれば、振動付与ディスク241,242は、凹部付きディスク231~233の凹部221~223に収納されているソバ10に対して周方向に沿った微振動を付与するような動作を行うため、凹部221~223に収納されているソバが微振動することとなる。これにより、フィーダー210から凹部221~223に供給された時点では、1粒1粒のソバの姿勢がそれぞれ不安定であったり、姿勢に規則性が無かったりしていても、当該ソバが測定位置P2に達するまでには、確実に、ソバの「腹面13」が凹部221~223の周面側開口に位置するような姿勢(測定好適姿勢)で凹部221~223に収納される。
【0164】
このため、実施形態1に係る品質評価・選別システム1によれば、測定位置P2においては、1粒ごとのソバ10を規則性を有した姿勢とすることができ、ソバ10を1粒ごとに品質を評価して選別する際の品質評価の信頼性を高くすることができる。
【0165】
また、実施形態1に係る品質評価・選別システム1は、フィーダー210から供給されるソバ10を凹部付きディスク231~233の回転によって振分け装置260まで搬送する構成となっている。このため、搬送路は凹部付きディスク213~233の周面に沿ったものとなるため、搬送路の長さを短くすることができ、かつ、構成も単純なものとなることから、システム全体を小型化することができる。
【0166】
また、実施形態1に係る品質評価・選別システム1においては、1粒のソバを収納可能な凹部221~223を周方向に沿って15度ごとに設けた3枚の凹部付きディスク231~233を並列して配置し、これら3枚の凹部付きディスク231~233を同時に15度ごとに間欠回転させて、並列配置された3粒のソバ10に対して、測定位置P2で同時に測定動作を行うようにしている。実施形態1に係る種子の品質評価・選別システム1においては、15度ごとの回転は、0.33秒程度であるため、測定位置P2においては、0.33秒で3粒のソバを測定できる。従って、1秒では約10粒(1分間で600個程度)のソバを測定できることとなり、品質評価・選別動作を高速化できる。
【0167】
また、ソバが発した蛍光に基づいて得られた蛍光量(蛍光強度)から品質評価・選別を行う際には、ソバのタンパク質指数Pとソバのクロロフィル指数Cとを求めて、これら指数P及び指数Cによって、ソバの品質を4段階(測定不能の評価を含めると5段階)で評価して、それぞれの評価ごとに選別している。このような評価を1粒ごとに行っているため、例えば、評価Aとして選別されたソバは、その1粒1粒のソバが評価Aであるということができ、多数のソバを1粒ごとに評価に応じて適切に選別できる。
【0168】
このようにして選別されたソバは、ソバ粉を扱う製粉業者や、ソバを提供する蕎麦店などにおいては、評価ごとに適切に選別されたソバ(この場合、丸抜きソバ)を仕入れることができ、仕入れたソバは、評価に見合ったものとなる。
【0169】
また、このようにして選別されたソバは、製粉会社や蕎麦店だけはなく、ソバの種を扱う種苗店やソバを栽培する農家などにおいては、品質評価結果に基づいて選別されたソバを生育用の種として用いることもでき、また、品種改良にも役立つものとなる。
【0170】
[実施形態2]
図11は、実施形態2に係る種子の品質評価・選別システム2の概略構成図である。実施形態2に係る種子の品質評価・選別システム2の基本的な構成は、実施形態1に係る種子の品質評価・選別システム1とほぼ同様である。実施形態2に係る種子の品質評価・選別システム2が実施形態1に係る種子の品質評価・選別システム1と異なる点は、品質評価装置100において、白色光源170をさらに有している点である。その他の構成は、実施形態1に係る種子の品質評価・選別システム1と同じであるため、同一構成要素については同一符号が付されている。なお、白色光源としては、太陽光に近い波長域を発するLEDなどを用いることが可能である。
【0171】
実施形態2に係る種子の品質評価・選別システム2は、紫レーザーを発する励起光源110に加えて、白色光源170を有していることから、実施形態1に係る種子の品質評価・選別システム1において説明した品質評価(蛍光量に基づく品質評価)に加えて、反射光に基づく品質評価も可能となる。これによって、人間の見た目の色による評価が行える。
【0172】
このように、ソバに対して人間の見た目の色による評価が行えるのは、ソバの「臍(ほぞ)」が存在する面を測定対象面としないためである。すなわち、ソバの「臍」が存在する面の反射光を分析すると、「ほぞ」の色が評価すべき色と異なってしまい、ソバの色を適切に表すものではなくなってしまうためである。これに対して、実施形態2に係る種子の品質評価・選別システム2によれば、実施形態1に係る種子の品質評価・選別システム1において説明したように、測定位置P2においては、凹部221~223におけるソバの姿勢は
図4に示すような姿勢(測定好適姿勢)となり、ソバの色(表面の色)を適切に評価できる。
【0173】
また、励起光源110と白色光源170とを切り替えるための光源切り替え装置(図示せず。)を設けて、同じ種子(ソバ)に対して、始めに、励起光源による蛍光分析を行い、その後、白色光源による反射光分析を行うということもできる。この場合、励起光源110が発する励起光はパルス発振する紫レーザー励起光とし、白色光源170が発する白色光は、パルス発振する白色光とし、測定位置P2に到達したソバに対して紫レーザー励起光のパルスと白色光のパルスとを所定の時間差で照射するようにしてもよい。
【0174】
このようにすることで、1粒のソバに対して、蛍光分析と色分析の両方を行うことができ、実施形態1に係る種子の品質評価・選別システム1において行った品質評価(蛍光に基づく品質評価)と、見た目の色による品質評価の両方を行うことができる。特に、1粒ずつのソバに対して、蛍光量(蛍光強度)に基づく品質評価に加えて、見た目の色を重視した品質評価をも行う場合には、有効なものとなる。
【0175】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、下記に示すような変形実施も可能である。
【0176】
(1)上記各実施形態においては、種子としては、ソバ(丸抜きソバ)を例にとって説明したが、ソバに限られるものではなく、米、麦、大豆、小豆又はトウモロコシなどの種子も品質評価・選別対象とすることができる。
【0177】
図12は、種子として大豆20を品質評価・選別対象とした場合を説明するために示す図である。なお、
図12は、凹部付きディスク231~233のうちの一枚の凹部付きディスク(例えば、凹部付きディスク231)における1つの凹部221を拡大して示す図であり、
図4に対応する図である。大豆20は、ソバと異なり、比較的単純な形状(例えば、やや平たい球状)をなしているため、凹部付きディスク231~233に設けられる凹部221~223は、このような形状の大豆が収まるような形状とすればよい。
図12においては、凹部221は、凹部付きディスク231のディスク面(側面ともいう。)をy軸に沿って見たときの形状は、ほぼコの字形状をなしている。
【0178】
なお、大豆20の「臍(ほぞ)21」は、
図12に示すように、大豆20の脇に存在しているため、大豆20をフィーダー210から凹部221~223に転がすように入れた場合には、殆どが
図12に示すように、「臍21」の部分が凹部221の周面側開口に位置することはなく、大豆20の腹面22(「臍21」が存在する以外の面)が凹部221の周面側開口に位置する姿勢(測定好適姿勢)となる場合が多い。この場合も、実施形態1に係る品質評価・選別システム1と同様に、凹部付きディスク231~233の凹部221~223に収納されている大豆20に対して周方向に沿った振動(微振動)を付与することにより、凹部に収納されている大豆は、確実に測定好適姿勢となる。
【0179】
ところで、大豆20はソバ10に比べてサイズが大きい。例えば、やや横長の球状でやや平たい形状の大豆の場合を例に取ると、当該大豆の横長方向のサイズは7m~12mm程度であり、幅は6mm~10mm程度である。このため、凹部221のサイズとしては、
図12に示すように、w1を10mm程度とし、w2を12mm程度とする。なお、w2は凹部付きディスク231の厚みである。これは、他の凹部付きディスク232,233についても同様である。
【0180】
ここで、凹部付きディスク231~233の厚みを例えば12mmとした場合には、振動付与ディスク241の厚みを3mmとする。すなわち、1枚の凹部付きディスク(例えば、凹部付きディスク231)の厚みと1枚の振動付与ディス(例えば、振動付与ディスク241)との合計の厚みを15mmとする。なお、前述したように、実際には、凹部付きディスクと振動付与ディスクとの間には、0.5mmの隙間が存在するため、1枚の凹部付きディスク(例えば、凹部付きディスク231)の厚みと1枚の振動付与ディスク(例えば、振動付与ディスク241)との合計の厚みは、0.5mmの隙間を含めて15.5mmとする。
【0181】
このように、1枚の凹部付きディスクの厚みと1枚の振動付与ディスクとの合計の厚みを0.5mmの隙間を含めて15.5mmで一定とすることによって、凹部付きディスク231~233の厚みを種子の種類によって種々設定した場合においても、実施形態1に係る種子の品質評価・選別システム1を使用できる。すなわち、実施形態1に係る種子の品質評価・選別システム1における凹部付きディスク231~233及び振動付与ディスク241,242などからなる構成部(ディスクユニットとする。)を取り換えるだけで、振分けシュート261,261,263の並び方向の間隔やガイド部266の配置などを変えることなく、実施形態1に係る種子の品質評価・選別システム1を使用できる。
【0182】
このことは、種子のサイズがソバよりも小さいサイズの種子を品質評価・選別対象とした場合にも同様のことが言える。例えば、凹部付きディスク231~233の厚みを3mmとした場合には、振動付与ディスク241,242の厚みをそれぞれ12mmとする。これにより、1枚の凹部付きディスクの厚みと1枚の振動付与ディスクとの合計の厚みは、隙間(0.5mm)を含めて15.5mmとなり、この場合も、実施形態1に係る種子の品質評価・選別システム1におけるディスクユニットを取り換えるだけで、実施形態1に係る種子の品質評価・選別システム1を使用できる。
【0183】
なお、
図12においては大豆について説明したが、米、麦、小豆、トウモロコシなども、それぞれの種子の形状に合わせた凹部を設けることにより、同様に実施できる。
また、これら、大豆、米、麦、小豆、トウモロコシなどを品質評価・選別対象とした場合においても、実施形態2に係る種子の品質評価・選別システム2を適用できる。
【0184】
(2)上記各実施形態においては、品質評価として、540nm付近の所定範囲の波長帯における指数P(タンパク質指数)及び720nm付近の所定範囲の波長帯における指数C(クロロフィル指数)によって、ソバの品質を評価したが、これとは異なる波長域(例えば、740nm付近)における蛍光量(蛍光強度)を用いることにより、ソバの生理情報(水分履歴など)を取得できる。これは、740nm付近の赤外光を検出することにより、ソバ10の腹面13における表面近傍において、反応進行に水分を必要とする明反応がどの程度起こっているか、ひいては、ソバに含まれる水分の量を評価できるからである。
なお、このことは、ソバに限らず、大豆などの穀類に対しても、それぞれの穀類に応じた波長域における蛍光量(蛍光強度)を用いることにより、当該穀類の生理情報(水分履歴まど)を取得できる。
【0185】
(3)上記各実施形態においては、励起光としては405nmの波長のレーザー光を用いた場合を例示したが、励起光の波長を変えて、当該励起光の波長、蛍光波長及び蛍光強度を3次元蛍光スペクトルとして取得することで、種子の特性を反映する蛍光指紋を得ることができ、この蛍光指紋から、種子の産地、品質等(カビ毒等も含めて)を詳細に選別することも可能となる。特に、1粒ずつの種子に対して、この蛍光指紋から、種子の産地、カビ毒等の混入状況を把握して、把握した結果に応じた選別も可能となる。
【0186】
(4)上記各実施形態においては、凹部付きディスク231~233は、15度ずつ間欠的に回転するようにした場合を例示したが、個々の回転角度は必ずしも15度とする必要はなく、適宜、最適な角度を設定可能である。例えば、測定動作速度が大幅に落ちない範囲で15度よりも大きな回転角度としてもよく、また、逆に、分光データ処理部160における演算動作などが追従できる範囲で、より小さな回転角度としてもよい。
【0187】
(5)上記各実施形態においては、品質評価として、評価A~Dの4段階及び測定不能などの評価Eの5段階での評価としたが、これ以外の評価の仕方であってもよい。
【0188】
(6)上記各実施形態においては、凹部付きディスク231~233は3枚とした場合を例示したが、3枚に限られるものではなく、より高速化を図るために、より多くの枚数としてもよい。例えば、凹部付きディスク231~233を6枚とすれば、上記各実施形態のほぼ2倍の速度で品質評価・選別が可能となる。また、逆に、システムをよりコンパクトでかつ安価なものとするため、凹部付きディスクを2枚又は1枚とすることも可能である。
【0189】
(7)上記各実施形態においては、測定動作中においては、凹部付きディスク231~233を微振動(
図8参照。)させるようにしたが、これに限られるものではなく、測定動作中においては、凹部付きディスク231~233を15°よりも小さい微小の回転角度で矢印A方向に回転させるような制御を行ってもよい。このような制御は、種子が大豆などのようにサイズの大きい場合に特に有効なものとなる。このような制御を行うことにより、種子のサイズが大きい場合でも、測定対象面を広くすることができる。
【符号の説明】
【0190】
1,2・・・品質評価・選別システム、10・・・ソバ(丸抜きソバ)、11・・・臍、12・・・頂点、13・・・腹面、14・・・稜、20・・・大豆、100・・・品質評価装置、110・・・励起光源、121~123・・・照射用光ファイバー、131~133・・・受光用光ファイバー、141~143・・・短波長カットフィルター、151~153・・・分光器、160・・・分光データ処理部、200・・・搬送選別装置、210・・・フィーダー、221・・・凹部、231~233・・・凹部付きディスク、241,242・・・振動付与ディスク、250・・・凹部付きディスク駆動用モーター(パルスモーター)、260・・・選別装置、261~263・・・振分けシュート、264(264a~264c)・・・振分けシュート駆動用モーター、266・・・ガイド部、265a~265c・・・駆動片、267a~267c・・・駆動軸(ピアノ線)、269A~269E・・・回収箱、300・・・押さえ板、P1・・・供給位置、P2・・・測定位置、P3・・・落下位置