(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】遊技機
(51)【国際特許分類】
A63F 7/02 20060101AFI20220516BHJP
【FI】
A63F7/02 326Z
A63F7/02 315A
(21)【出願番号】P 2018055723
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2020-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】599104196
【氏名又は名称】株式会社サンセイアールアンドディ
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】續木 清貴
(72)【発明者】
【氏名】古橋 和宏
【審査官】小泉 早苗
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-038006(JP,A)
【文献】特開2014-004193(JP,A)
【文献】特開2014-166303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技盤の前面側に形成された遊技領域に向かって遊技球を発射する発射装置と、
前記遊技領域を流下する遊技球が入球可能な入球部と、
前記入球部に遊技球が入球したときに賞球の払い出しを行う払出手段と、を有する遊技機において、
前記入球部には、その入球に基づいて特別遊技の抽選が実行される始動入球部と、前記特別遊技において遊技球の入球が許容される特別入球部と、が含まれ、
図柄の変動を伴って前記特別遊技の抽選結果を報知する図柄変動手段と、
予め設定されたタイミングで、所定時間あたりの賞球数と発射球数から算出される出玉率に基づいて、前記図柄の変動の
最低所要時間を設定する変動時間設定手段と、を備え、
前記変動時間設定手段は、前記特別遊技の
終了のタイミングでのみ、前記図柄の変動の
最低所要時間を設定する、遊技機。
【請求項2】
遊技状態を、通常状態と、前記通常状態より前記特別遊技が実行され易い有利状態と、に制御する状態制御手段を備え、
前記変動時間設定手段は、前記有利状態に移行するタイミングで前記図柄の変動の所要時間を設定する、請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
前記変動時間設定手段は、前記出玉率が予め定められた基準値を超えないように、前記図柄の変動の所要時間を設定する、請求項1又は2に記載の遊技機。
【請求項4】
前記図柄の変動には、前記図柄の変動に最低限必要な時間が異なる複数種類のモードが設けられ、
前記変動時間設定手段は、現在の前記出玉率と前記基準値との差に基づいて、複数種類のモードから1つのモードを選択する、請求項3に記載の遊技機。
【請求項5】
前記特別遊技の終了後に、遊技状態を、通常状態と、前記通常状態よりも前記特別遊技が実行され易い有利状態と、に制御する状態制御手段を備え、
前記有利状態に移行してから前記通常状態に戻るまでに前記特別遊技が実行される回数の上限が予め設定されている、請求項1乃至4のうち何れか1の請求項に記載の遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技領域に向けて発射された遊技球が入球部に入球すると賞球が払い出される遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の遊技機では、大当り遊技終了後に、遊技状態が通常状態よりも大当り確率の高い高確率状態に制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-150314号(段落[0284]~[0286]、
図29)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の遊技機では、高確率状態から通常状態へ移行することなく大当りが連続する(連チャンする)と、所定時間あたりの賞球数と発射球数から算出される出玉率が規定値を超えるという問題が起こり得る。
【0005】
本発明は、出玉率の急激な変化を抑制可能な遊技機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の手段は、遊技盤の前面側に形成された遊技領域に向かって遊技球を発射する発射装置と、前記遊技領域を流下する遊技球が入球可能な入球部と、前記入球部に遊技球が入球したときに賞球の払い出しを行う払出手段と、を有する遊技機において、前記入球部には、その入球に基づいて特別遊技の抽選が実行される始動入球部と、前記特別遊技において遊技球の入球が許容される特別入球部と、が含まれ、図柄の変動を伴って前記特別遊技の抽選結果を報知する図柄変動手段と、予め設定されたタイミングで、所定時間あたりの賞球数と発射球数から算出される出玉率に基づいて、前記図柄の変動の最低所要時間を設定する変動時間設定手段と、を備え、前記変動時間設定手段は、前記特別遊技の終了のタイミングでのみ、前記図柄の変動の最低所要時間を設定する、遊技機である。
【発明の効果】
【0007】
上記発明によれば、出玉率の急激な変化を抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示されるように、本実施形態に係る遊技機10は、遊技盤11を前面枠10Zで覆ってなり、その前面枠10Zに形成されたガラス窓10Wを通して、遊技盤11の前面に形成された略円形の遊技領域R1の全体が視認可能となっている。遊技領域R1は、遊技盤11の前面から突出した略円形のガイドレール12に囲まれている。なお、以下の説明において、特記しない限り「右」及び「左」とは、遊技機10を前方から見た場合の「右」及び「左」を指すものとする。
【0010】
前面枠10Zのうちガラス窓10Wより下方には、上皿26と下皿27が上下2段にして設けられ、下皿27の右側には、発射用ハンドル28が備えられている。そして、発射用ハンドル28が回動操作されると、上皿26に収容された遊技球が発射装置41〈(〉
図2参照)によって1球ずつ遊技領域R1に向けて弾き出される。
【0011】
遊技盤11のうち遊技領域R1の中央には、表示開口11Hが貫通形成されていて、その表示開口11Hに遊技盤11の裏面側から表示装置30が対向している。表示装置30は、例えば、液晶モジュールで構成され、遊技に関する演出を行う表示画面30Gを前面に有する。表示画面30Gでは、遊技に関する種々の演出が行われる。
【0012】
遊技盤11の前面中央には、表示画面30Gを囲むように表示装飾枠23が取り付けられている。表示装飾枠23は、遊技盤11の前面側から表示開口11Hに嵌め込まれると共に、遊技盤11の前面より前側に突出している。これにより、遊技領域R1を流下する遊技球が、表示装飾枠23を乗り越えて表示装飾枠23の内側に進入することが規制されている。
【0013】
表示装飾枠23の左側には、遊技球が潜って通過可能な門形構造をなす始動ゲート18が備えられている。そして、始動ゲート18を遊技球が通過すると、普通図柄当否判定(以下、「普図判定」という。)が行われる。普図判定が行われると、普図判定表示部18H(
図2参照)にて普通図柄が変動表示され、所定時間経過後に、停止表示される。そして、停止した普通図柄によって普図判定の結果が表示される。
【0014】
普通図柄の変動中に始動ゲート18を遊技球が通過した場合、その通過に起因した普図判定に関する情報(具体的には、普図判定の結果表示とそれに伴う図柄変動)は、予め設定された保留上限数まで保留される。そして、実行中の普通図柄の変動が終了すると、保留が1つ消化されて、保留されていた普通図柄の変動と判定結果の表示が行われる。普図判定に関する情報の保留(以下、「普図保留」と呼ぶ。)の保留上限数は、例えば、4つである。なお、複数の普図保留がある場合、普図保留は、発生順に消化される。
【0015】
図1に示されるように、遊技領域R1のうち表示装飾枠23の下方における左右方向の中央部には、第1と第2始動入賞口14A,14B及び大入賞口15が、上から順に間隔を開けて並べて設けられている。
【0016】
第1始動入賞口14Aは、常時開放していて、具体的には、遊技盤11から突出した部材の上面に開口を備えた、所謂、ポケット構造をなしている。
【0017】
第2始動入賞口14Bは、第1始動入賞口14Aの真下に配置され、可動翼片14C,14Cによって開閉される。具体的には、第2始動入賞口14Bは、上方と左右両側が開放した構造になっていて、第2始動入賞口14Bへ上側から入球することは第1始動入賞口14Aによって規制されている。両可動翼片14C,14Cは、第2始動入賞口14Bの左右両側で、通常は、起立した閉位置に制御されている。両可動翼片14C,14Cは、上述の普図判定で当りとなったことを条件にして、下端部を中心に回動し、横倒しとなった開位置(
図1に示す位置)に制御される。開位置に配置された可動翼片14Cは、上方から流下する遊技球を受け止めて第2始動入賞口14Bへと案内する。
【0018】
大入賞口15は、横長矩形に形成されて、常には、可動扉15Tにて閉塞されている。可動扉15Tは、大入賞口15の下端縁を中心にして回動可能に構成されていて、可動扉15Tが前側に倒されると、可動扉15Tを案内にして、大入賞口15に多くの遊技球が入球可能となる。
【0019】
第1始動入賞口14A又は第2始動入賞口14Bに遊技球が入球すると、所定数の遊技球が賞球として上皿26(
図1参照)に払い出されると共に、特別図柄当否判定(以下、「特図判定」という。)が行われる。この判定の結果は、特図判定表示部14H(
図2参照)と表示画面30Gに表示される。以下では、第1始動入賞口14Aに基づく特図判定と第2始動入賞口14Bに基づく特図判定を、第1特図判定と第2特図判定と称して適宜区別することにする。
【0020】
表示画面30Gにおいて特図判定の結果は以下のようにして表示される。即ち、表示画面30Gには、通常、3つの左、中、右の特別図柄30L,30C,30Rが横並びに停止表示されている。各特別図柄30L,30C,30Rは、例えば、「0」~「9」の数字を表記した複数種類のもので構成されており、各特別図柄30L,30C,30Rごと、所定の種類のものが停止表示されている。特図判定が行われると、3つの特別図柄30L,30C,30Rが、上下方向にスクロール表示(変動表示)され、所定時間経過後に、例えば、左、右、中の順に停止表示される。そして、停止した特別図柄30L,30C,30Rの組合せにより、特図判定の結果を表示するようになっている。
【0021】
表示画面30Gに特図判定の結果が大当りであることが表示されると、遊技状態が大当り遊技状態になって、大当り遊技が実行され、大入賞口15に遊技球が入球可能となる。大入賞口15に遊技球が入球すると、所定数の遊技球が賞球として上皿26(
図1参照)に払い出される。ここで、大入賞口15が開放されてから閉じられるまでの動作を「ラウンド」と称すると、1回の大当り遊技は、所定回数のラウンドが実行されるまで継続する。1回のラウンドは、大入賞口15の開放時間が所定時間(例えば、29秒)に達したこと、又は、大入賞口15に遊技球が所定個数(例えば、10個)入賞したこと、の何れかが先に成立したときに終了する。なお、大入賞口15の内部には、入賞センサ(図示せず)が設けられており、入賞球数をカウントする。
【0022】
遊技機10では、特別図柄30L,30C,30Rの変動中又は大当り遊技中に第1始動入賞口14A又は第2始動入賞口14Bに遊技球が入球した場合、その入球に起因した特図判定に関する情報(具体的には、特図判定の結果表示とそれに伴う図柄変動)は、予め設定された保留上限数まで保留される。そして、実行中の図柄変動又は大当り遊技が終了すると、保留が1つ消化されて、保留されていた図柄変動と結果表示が行われる。ここで、第1特図判定に関する情報の保留と第2特図判定に関する情報の保留を、第1特図保留と第2特図保留と称して適宜区別することにすると、保留上限数は、第1特図保留と第2特図保留のそれぞれについて設定されていて、共に4つである。第1特図保留と第2特図保留の数は、例えば、保留表示部30H(
図2参照)に表示されることで遊技者に認識可能となっている。
【0023】
遊技領域R1には、上述した入賞口14A,14B,15のほかに、上方又は側方に開放して遊技球が常時入球可能な一般入賞口20が複数設けられている。また、遊技領域R1の下端部、具体的には、大入賞口15の下方には、何れの入賞口にも入球しなかった遊技球を遊技領域R1の外側に排出するためのアウト口16が設けられている。さらに、遊技領域R1には、遊技球の流下方向をランダムに変更するための図示しない障害釘が多数植設されている。
【0024】
図2には、遊技機10の電気的な構成が示されている。同図において、符号50は、主制御回路50であって、CPU50A、RAM50B、ROM50C及び複数のカウンタを備えたマイクロコンピュータと、該マイクロコンピュータとサブ制御回路52を結ぶ入出力回路と、大入賞装置等が接続された中継回路及び払出制御回路60等を結ぶ入出力回路とを備え、遊技に関わる主制御を行う。CPU50Aは、当否判定部、制御部、演算部、各種カウンタ、各種レジスタ、各種フラグ等を備え、演算制御を行う他、特図判定や普図判定に関する乱数等も生成し、制御信号をサブ制御回路52等へ出力(送信)可能に構成されている。RAM50Bは、CPU50Aで生成される各種乱数値用の記憶領域、各種データを一時的に記憶する記憶領域やフラグ、CPU50Aの作業領域を備える。ROM50Cには、制御データ、特別図柄30L,30C,30R及び普通図柄の変動表示に関する図柄変動データ等が書き込まれている他、特図判定及び普図判定の判定値、大当り遊技のラウンド数等が書き込まれている。なお、第1特図保留に係る第1特図判定の情報と第2特図保留に係る第2特図判定の情報は、RAM50Bに記憶される。また、普図保留に係る普図判定の情報もRAM50Bに記憶される。
【0025】
サブ制御回路52は、主制御回路50と同様に、CPU52A、RAM52B、ROM52C及び複数のカウンタを備えたマイクロコンピュータと、該マイクロコンピュータと主制御回路50を結ぶ入出力回路と、表示制御回路54等を結ぶ入出力回路を備えている。CPU52Aは、制御部、演算部、各種カウンタ、各種レジスタ、各種フラグ等を備え、演算制御を行う他、制御信号を表示制御回路54等へ出力(送信)可能に構成されている。RAM52Bは、各種データの記憶領域とCPU52Aによる作業領域を有している。ROM52Cには、各種演出のデータ等が記憶されている。
【0026】
表示制御回路54は、表示装置30に設けられていて、CPU、RAM及びROMを有している。表示制御回路54のCPUは、サブ制御回路52から出力される制御信号に基づき、画像データをROMから取得し、その画像データに基づいて表示画面30Gに画像を表示する。
【0027】
払出制御回路60には、払出装置61、カードユニット62、球貸し装置63、発射制御回路40等が接続され、当該発射制御回路40には発射装置41が接続されている。払出制御回路60は、各入賞口14,15,20への遊技球の入球に基づいた主制御回路50からの信号に基づいて払出装置61を作動させると共に、遊技機10の側面に備えたカードユニット62からの信号に基づいて球貸し装置63を作動させる。これにより、上皿26に遊技球が払い出される。払出制御回路60は、主制御回路50と発射制御回路40との間で信号を中継する中継回路としても機能する。
【0028】
遊技機10では、遊技状態として、通常遊技状態と、通常遊技状態よりも特図判定の大当り確率が高い高確率状態と、を備えている。高確率状態への移行は、大当りを契機にして行われる。具体的には、特図判定で大当りとなったときに、その大当りの乱数値に基づいて大当り遊技後の遊技状態を高確率状態にするか否かが決定される。高確率状態は、次の大当りまで継続する。
【0029】
また、高確率状態では、普図判定で当りとなり易く、第2始動入賞口14Bへ遊技球を入球させ易くなる。従って、高確率状態になると、遊技球の減少が抑制されると共に、大当りが発生し易くなっているので、大当り遊技終了後の遊技状態が高確率状態となる事象が連続すると、高確率状態を挟んで大当り遊技が連続する(連チャンする)ことになり、遊技球の大量増加が見込めることになる。
【0030】
ここで、遊技領域R1に発射した遊技球の数(以下、「発射球数」という。)に対する入賞口14A,14B,15,20への入球によって払い出された賞球の数(以下、「払出球数」という。)の割合(即ち、払出球数を発射球数で除した値)を出玉率と呼ぶことにすると、一般に、遊技機では、単位時間あたりの出玉率が、規定上限値以上とならないように制御されることが求められている。単位時間あたりの出玉率が規定上限値以上とならないようにする手段として、大当りの連続(連チャン)を制限するためのリミッタ機能を備え、出玉率が規定上限値以上になる前にリミッタを発動させる構成にすることが考えられる。具体的には、大当りが連続した回数(連チャン回数)が所定数に達すると、その大当り遊技終了後の遊技状態を必ず通常遊技状態にする。しかしながら、このような遊技機では、リミッタ発動後の遊技が興趣に欠けるという問題がある。
【0031】
上記問題に鑑みて、遊技機10では、大当り遊技が終了する毎に、特別図柄30L,30C,30Rの変動時間を制御することで、次の大当りの発生を遅延させ、結果的に、単位時間当たりの出玉率を制御するようになっている。具体的には、遊技機10では、特別図柄30L,30C,30Rの変動(以下、「特図変動」という。)に関するモードが複数種類備えられている。モード間では、特図変動の最低所要時間(即ち、特図変動の最短時間)が異なっている。なお、本実施形態の遊技機10は、リミッタ機能を備えてはいるが、リミッタ発動の条件は、大当りが連続した回数(連チャン回数)が制限回数に達することになっていて、その制限回数は、1日の遊技において実現困難な回数(例えば、256回)に設定されている。
【0032】
ここで、表示画面30Gでは、特図変動に伴って種々の演出が行われることがある。そのような演出の一例として、リーチ状態(3つの特別図柄30L,30C,30Rのうち2つの特別図柄30L,30Rが同じ図柄で停止し、残りの1つの特別図柄30Cが特別図柄30L,30Rと同じ図柄で停止すれば大当りである状態)で行われるリーチ演出がある。リーチ演出が行われると、特別図柄30L,30C,30Rはリーチ演出の終了を待ってから停止表示されるので、特図変動の時間が長くなる。このように、特図変動の時間は、リーチ演出の有無等によって変化する。そして、特図変動の最低所要時間は、リーチ演出のように特別図柄30L,30C,30Rの停止表示を遅らせる演出が行われない場合のデフォルトの変動時間となっている。
【0033】
遊技機10では、特図判定に関する情報の保留数によって特図変動の最低所要時間が異なっている。詳細には、特図判定に関する情報の保留数が保留上限数から1を差し引いた3つ未満である場合の特図変動の最低所要時間T1(以下、「第1最低所要時間T1」という。)は、保留数が3つ以上である場合の特図変動の最低所要時間T2(以下、「第2最低所要時間T2」という。)よりも長く設定されている。そして、遊技機10では、特図変動に関する各モードの間で、第1最低所要時間T1と第2最低所要時間の両方が異なっている。具体的には、複数の変動モードの間では、第1最低所要時間T1が長い順に複数の変動モードを並べたときの順番と、第2最低所要時間T2が長い順に複数の変動モードを並べたときの順番は同じになっていて、第1最低所要時間T1が最も短い変動モードでは第2最低所要時間T2も最も短く、第1最低所要時間T1が最も長い変動モードでは、第2最低所要時間T2も最も長くなっている。
【0034】
図3には、特図変動に関するモードの一例が示されている。
図3の例では、変動モードA~Cの3種類が設けられていて、第1最低所要時間T1は、変動モードAで5秒、変動モードBで7秒、変動モードCで10秒となっていて、第2最低所要時間T2は、変動モードAで1秒、変動モードBで3秒、変動モードCで5秒となっている。
【0035】
図4には、大当り遊技が終了したときに遊技機10のサブ制御回路52が実行する変動モード設定処理S10が示されている。変動モード設定処理S10では、まず、単位時間当たりの出玉率が第1閾値以上であるかが判断される(ステップS11)。遊技機10では、第1閾値が150%に設定されている。
【0036】
単位時間あたりの出玉率が第1閾値未満である場合(ステップS11でNo)、特図変動のモードを変動モードA(
図3参照。第1最低所要時間T1及び第2最低所要時間T2が最も短いモード。)に設定し(ステップS15)、変動モード設定処理S10を終了する。
【0037】
単位時間あたりの出玉率が第1閾値以上である場合(ステップS11でYes)、次いで、単位時間あたりの出玉率が第2閾値以上であるかが判断される(ステップS12)。遊技機10では、第2閾値が200%に設定されている。なお、遊技機10では、出玉率の規定上限値が220%に設定されている。
【0038】
単位時間あたりの出玉率が第2閾値未満である場合(ステップS12でNo)、特図変動のモードを変動モードB(
図3参照。第1最低所要時間T1及び第2最低所要時間T2が2番目に短いモード。)に設定し(ステップS14)、変動モード設定処理S10を終了する。
【0039】
単位時間あたりの出玉率が第2閾値以上である場合(ステップS12でYes)、特図変動のモードを変動モードC(
図3参照。第1最低所要時間T1及び第2最低所要時間T2が最も長いモード。)に設定し(ステップS13)、変動モード設定処理S10を終了する。
【0040】
なお、単位時間あたりの出玉率の算出は、主制御回路50によって行われる。具体的には、主制御回路50は、払出装置61及び発射制御回路40に接続された払出制御回路60(
図2参照)からの信号に基づいて、単位時間あたりの発射球数と単位時間あたりの払出球数を計測する。そして、単位時間あたりの払出球数を単位時間あたりの発射球数で除すことによって、単位時間あたりの出玉率を算出する。
【0041】
図5には、遊技機10における出玉率の推移の一例が示されている。この例では、単位時間あたりの出玉率の規定上限値が220%に設定され、第1閾値と第2閾値がそれぞれ150%と200%に設定されている。遊技の開始時では、特図変動のモードは、変動モードA(第1最低所要時間T1及び第2最低所要時間T2が最も短いモード)に設定されている。同図の例では、1回目の大当りから高確率状態へ移行して大当りの連チャンが始まり、5回目の大当りで単位時間あたりの出玉率が第1閾値を超える。すると、その大当り遊技終了後の特図変動のモードが変動モードBに設定され、第1最低所要時間T1及び第2最低所要時間T2が長くなる。その結果、1~4回目の大当り遊技終了後の高確率状態における出玉率の低下の度合よりも5回目の大当り遊技終了後の高確率状態における出玉率の低下の度合の方が大きくなる。
【0042】
図5の例では、通常遊技状態に移行することなくさらに大当りが連続し、7回目の大当りで単位時間あたりの出玉率が第2閾値を超える。すると、その大当り遊技終了後の特図変動のモードが変動モードC((第1最低所要時間T1及び第2最低所要時間T2が最も長いモード)に設定される。その結果、5~6回目の遊技終了後の高確率状態における出玉率の低下の度合よりも7回目の大当り遊技終了後の高確率状態における出玉率の低下の度合の方が大きくなる。なお、高確率状態が終了したときに、特図変動のモードは、変動モードCのままであってもよいし、変動モードAに設定されてもよい。
【0043】
図5の例では、7回目の大当り遊技の終了後の遊技状態が高確率状態とならず、連チャンが終了する。そして、通常遊技状態において、通算8回目の大当りとなったときには、単位時間あたりの出玉率が低下して、第1閾値を下回る。従って、この大当り遊技終了後の特図変動のモードは、変動モードAに設定される。なお、7回目の大当り遊技の終了後、特図判定が所定回数実行されるまで普図判定で当りとなり易い時短遊技状態を経て、通常遊技状態へ移行している。
【0044】
本実施形態の遊技機10では、特図変動の最低所要時間(具体的には、第1最低所要時間T1及び第2最低所要時間T2)を設定することで、1回の特図変動に最低限かかる時間を変更することが可能となる。従って、例えば、20回目の特図判定で大当りとなる場合、その20回目の特図判定に係る特図変動が終了するタイミングが変更されることになる。その結果、大当り遊技が実行されるタイミングをずらすことが可能となり、単位時間あたりの出玉率を調整することが可能となる。これにより、出玉率の急激な変化が抑制される。
【0045】
また、遊技機10では、特図変動の最低所要時間の設定は、大当り遊技が終了したときに行われる。このように、遊技機10では、出玉率に大きな変化があったタイミングで、特図変動の最低所要時間が設定されるので、例えば、所定回数の特図判定が終了するごとに最低所要時間が設定される場合と比べて、最低所要時間の設定頻度を少なくすることが可能となる。
【0046】
また、遊技機10において、大当り遊技の終了後に高確率状態となる場合には、高確率状態に移行するタイミングで最低所要時間が設定される、と捉えることもできる。この場合には、出玉率に大きな変化が見込まれるタイミングで、最低所要時間が設定されるので、出玉率の急激な増加を予防することが可能となる。
【0047】
また、遊技機10では、特図変動の最低所要時間が異なる複数種類の変動モードA~Cが設けられているので、最低所要時間が段階的に変化するように変動モードが変更されることで、最低所要時間(第1最低所要時間T1及び第2最低所要時間T2)の急激な変化を抑制可能となっている。
【0048】
[上記実施形態から抽出される技術的な特徴群について]
以下、上述した各実施の形態から抽出される特徴について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお、以下では、理解の容易のため、上記実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0049】
<特徴A群>
以下の特徴A群は、「遊技領域に向けて発射された遊技球が入球部に入球すると賞球が払い出される」遊技機に関し、「特許文献A(特開2015-150314号(段落[0284]~[0286]、
図29))の遊技機では、大当り遊技終了後に、遊技状態が通常状態よりも大当り確率の高い高確率状態に制御される。」という背景技術について、「特許文献Aの遊技機では、高確率状態から通常状態へ移行することなく大当りが連続する(連チャンする)と、所定時間あたりの賞球数と発射球数から算出される出玉率が規定値を超えるという問題が起こり得る。」という課題をもってなされたものである。
【0050】
[特徴A1]
遊技盤(遊技盤11)の前面側に形成された遊技領域(遊技領域R1)に向かって遊技球を発射する発射装置(発射装置41)と、
前記遊技領域を流下する遊技球が入球可能な入球部(始動入賞口14A,14B、大入賞口15)と、
前記入球部に遊技球が入球したときに賞球の払い出しを行う払出手段(払出装置61)と、を有する遊技機(遊技機10)において、
前記入球部には、その入球に基づいて特別遊技(大当り遊技)の抽選が実行される始動入球部(第1始動入賞口14A、第2始動入賞口14B)と、前記特別遊技が実行されたときに所定数の賞球を付与可能な特別入球部(大入賞口15)と、が含まれ、
図柄(特別図柄30L,30C,30R)の変動を伴って前記特別遊技の抽選結果を報知する図柄変動手段(表示装置30)と、
予め設定されたタイミング(大当り遊技が終了したタイミング)で、所定時間あたりの賞球数と発射球数から算出される出玉率に基づいて、前記図柄の変動の所要時間(特図変動の最低所要時間)を設定する変動時間設定手段(サブ制御回路52)と、を備えた、遊技機。
【0051】
本特徴に示す構成では、図柄の変動の所要時間を設定することで、特別図柄の抽選結果の報知にかかる時間を変更することが可能となる。これにより、所定数の賞球が付与される特別遊技の実行タイミングをずらすことが可能となり、出玉率を調整することが可能となる。これにより、出玉率の急激な変化を抑制可能となる。
【0052】
[特徴A2]
前記変動時間設定手段は、前記特別遊技の実行後に、前記図柄の変動の所要時間を設定する、特徴A1に記載の遊技機。
【0053】
本特徴に示す構成では、出玉率に変化があったタイミングで、図柄の変動の所要時間を設定することが可能となる。
【0054】
[特徴A3]
遊技状態を、通常状態(通常遊技状態)と、前記通常状態よりも前記特別遊技が実行され易い有利状態(高確率状態)と、に制御する状態制御手段(主制御回路50)を備え、
前記変動時間設定手段は、前記有利状態に移行するタイミングで前記図柄の変動の所要時間を設定する、特徴A1又はA2に記載の遊技機。
【0055】
本特徴に示す構成では、出玉率の変化が見込まれるタイミングで、図柄の変動の所要時間を設定することが可能となる。
【0056】
[特徴A4]
前記変動時間設定手段は、前記出玉率が予め定められた基準値(規定上限値)を超えないように、前記図柄の変動の所要時間を設定する、特徴A1乃至A3のうち何れか1の請求項に記載の遊技機。
【0057】
本特徴に示す構成では、図柄の変動に所要時間を制御することで、出玉率が基準値を超えないように制御することが可能となる。
【0058】
[特徴A5]
前記図柄の変動には、前記図柄の変動に最低限必要な時間が異なる複数種類のモード(特図変動の変動モードA~C)が設けられ、
前記変動時間設定手段は、現在の前記出玉率と前記基準値との差に基づいて、複数種類のモードから1つのモードを選択する、特徴A4に記載の遊技機。
【0059】
本特徴に示す構成では、図柄の変動に最低限必要な時間が異なる複数種類のモードから1つのモードが選択されることで、図柄の変動の所要時間を制御可能となる。
【0060】
[特徴A6]
前記特別遊技の終了後に、遊技状態を、通常状態(通常遊技状態)と、前記通常状態よりも前記特別遊技が実行され易い有利状態(高確率状態)と、に制御する状態制御手段(主制御回路50)を備え、
前記有利状態に移行してから前記通常状態に戻るまでに前記特別遊技が実行される回数の上限が予め設定されている、特徴A1乃至A5のうち何れか1に記載の遊技機。
【0061】
本特徴に示す構成では、有利状態に移行してから通常状態に戻るまでの間の出玉に上限が設定されることになり、出玉率の制御が容易となる。
【0062】
遊技盤の前面側に形成された遊技領域(遊技領域R1)に向かって遊技球を発射する発射装置(発射装置41)と、
前記遊技領域を流下する遊技球が入球可能な入球部(始動入賞口14A,14B、大入賞口15)と、
前記入球部に遊技球が入球したときに賞球の払い出しを行う払出手段(払出装置61)と、を有する遊技機(遊技機10)において、
前記入球部には、特別遊技(大当り遊技)が実行されたときに所定数の賞球を付与可能な特別入球部(大入賞口15)が含まれ、
前記特別遊技の終了後に、所定時間あたりの賞球数と発射球数から算出される出玉率に基づいて、それ以降の出玉率を調整する調整手段(サブ制御回路52)を備えた、遊技機。
【0063】
本特徴に示す構成によれば、特別遊技の終了後に、それ以降の出玉率を調整することが可能となる。しかも、本特徴の構成では、出玉の大きな変化があったタイミングで、それ以降の出玉率を調整することが可能となる。これにより、出玉率の急激な変化を抑制可能となる。
【0064】
[特徴A8]
前記調整手段は、前記出玉率が予め定められた基準値(規定上限値)を超えないように調整する、特徴A7に記載の遊技機。
【0065】
本特徴に示す構成によれば、出玉率が基準値を超えないように制御することが可能となる。
【0066】
[特徴A9]
前記調整手段は、次に前記特別遊技が実行されるまでの時間(特別図柄30L,30C,30Rの変動時間)を調整することで出玉率を調整する、特徴A7又はA8に記載の遊技機。
【0067】
本特徴に示す構成によれば、次の特別遊技が実行されるまでにかかる時間を変更することで、特別遊技の実行タイミングをずらすことが可能となり、出玉率を調整することが可能となる。
【0068】
[特徴A10]
前記特別遊技の抽選結果を示唆する示唆演出(特別図柄30L,30C,30Rの変動)を実行した後に、その抽選結果を報知する報知手段(表示装置30)を備え、
前記調整手段は、前記特別遊技の抽選結果に関わらず前記示唆演出に最低限必要とされる最短演出時間(特図変動の最低所要時間)を変更することで、前記出玉率を調整する、特徴A9に記載の遊技機。
【0069】
本特徴に示す構成によれば、示唆演出に最低限必要とされる最短演出時間を変更して、特別遊技が実行されるまでにかかる時間を制御可能となる。
【0070】
[特徴A11]
遊技盤(遊技盤11)の前面側に形成された遊技領域(遊技領域R1)に向かって遊技球を発射する発射装置(発射装置41)と、
前記遊技領域を流下する遊技球が入球可能な入球部(始動入賞口14A,14B、第入賞口15)と、
前記入球部に遊技球が入球したときに賞球の払い出しを行う払出手段(払出装置61)と、を有する遊技機(遊技機10)において、
予め設定されたタイミング(大当り遊技が終了したタイミング)で、所定時間あたりの賞球数と発射球数から算出される出玉率に基づいて、それ以降の出玉率を調整可能な調整手段(サブ制御回路52)を備えた、遊技機。
【0071】
本特徴に示す構成では、予め設定されたタイミングで、それ以降の出玉率を調整することが可能となる。これにより、出玉率の急激な変化を抑制可能となる。
【0072】
なお、特徴A7~A10に示す構成に、特徴A1~A6に示す構成が組み合わされてもよいし、特徴A11に示す構成に、特徴A1~A10に示す構成が組み合わされてもよい。
【0073】
特徴A群には、以下の実施形態が含まれてもよい。
【0074】
(a1)上記実施形態の遊技機10は、大当り確率が変動する、所謂、確変機であったが、ST機であってもよいし、1種2種混合機であってもよい。なお、ST機では、確変機と同様に、特図判定の大当りを契機にして高確率状態に移行する。ST機の高確率状態は、特図判定での連続外れ回数が規定回数に達すると終了する。1種2種混合機では、始動口への入賞に基づいて特図判定が行われ、特図判定で大当りになると、1種大当りとして大当り遊技が実行される。始動口への入賞に基づく特図判定で小当りになると、小当り遊技が実行され、この小当り遊技中に特定領域(Vゾーン)へ遊技球が通過すると、2種大当りとして大当り遊技が実行される。
【0075】
(a2)上記実施形態では、遊技機10が、リミッタ機能を備える構成であったが、リミッタ機能を備えない構成であってもよい。
【0076】
(a3)上記実施形態では、特図変動の最低所要時間が特図判定に関する情報の保留数によって変化する構成(即ち、最低所要時間に第1最低所持時間T1と第2最低所要時間の2種類が存在する構成)であったが、保留数によって変化しない構成(即ち、最低所要時間が1種類のみである構成)であってもよい。
【0077】
(a4)上記実施形態では、変動モードの間で、第1最低所要時間T1と第2最低所要時間T2の両方が異なっていたが、第1最低所要時間T1のみが異なってもよいし、第2最低所要時間T2のみが異なってもよい。
【0078】
(a5)変動モードの種類は、2種類であってもよいし、4種類以上であってもよい。
【0079】
(a6)遊技機10では、単位時間あたりの出玉率が規定上限数以上とならないように変動モードを設定していたが、所定時間あたりの出玉率が基準値以上とならないようにすればよく、例えば、4時間あたりの出玉率が150%以上とならないように変動モードを設定してもよい。
【0080】
(a7)上記実施形態では、特図変動の変動モードを変更する基準となる閾値が、第1閾値と第2閾値の2段階で設けられていたが、1段階で設けられてもよいし、3つ以上の段階で設けられてもよい。
【符号の説明】
【0081】
10 遊技機
11 遊技盤
14A 第1始動入賞口
14B 第2始動入賞口
15 大入賞口
30 表示装置
30L,30C,30R 特別図柄
41 発射装置
50 主制御回路
52 サブ制御回路
61 払出装置