(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】スピンドルユニット及びこれを備えた歯車加工装置
(51)【国際特許分類】
B23F 23/06 20060101AFI20220516BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20220516BHJP
B23Q 3/06 20060101ALI20220516BHJP
B23B 31/00 20060101ALI20220516BHJP
B23B 31/02 20060101ALI20220516BHJP
B23B 31/117 20060101ALI20220516BHJP
B23Q 3/12 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
B23F23/06
B23Q17/00 B
B23Q3/06 304K
B23B31/00 D
B23B31/02 610D
B23B31/117 601A
B23Q3/12 J
(21)【出願番号】P 2018058316
(22)【出願日】2018-03-26
【審査請求日】2020-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000125853
【氏名又は名称】株式会社 神崎高級工機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】泉 孝明
(72)【発明者】
【氏名】垣内 裕貴
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-012175(JP,A)
【文献】特開2016-049580(JP,A)
【文献】特開2009-233844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 23/06
B23Q 3/06、 3/12、17/00
B23B 31/00、31/02、31/117、31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを着脱自在に固定するスピンドルユニットであって、
取付部を有し、軸周りに回転駆動可能に支持されたワーク支持体と、
前記ワークの貫通孔に挿入可能で、前記取付部を覆うように配置され、軸方向の先端側に移動すると径が小さくなり、軸方向の後端側に移動すると径が大きくなるように径が拡縮可能な固定部材と、
前記ワーク支持体の内部に軸方向に挿通され、前記固定部材を前記先端側に配置する第1位置と、前記後端側に配置する第2位置との間で軸方向に移動可能な移動部材と、
前記移動部材を前記第2位置側に付勢する第1バネ部材と、
前記移動部材を軸方向の後端側から前記第1位置に押圧可能な押圧部材と、
を備え、
前記ワーク支持体には、前記固定部材に取り付けられたときのワークの着座面と、該着座面から空気を噴出可能な開口と、前記開口に連通する第1連通路と、が形成され、
前記移動部材には、前記第1連通路と連通する第2連通路が形成され、
前記押圧部材には、空気を噴射する噴射口が形成され、前記移動部材が前記第2位置にあるとき前記移動部材との接触を維持可能とし、その状態のときに前記噴射口から前記第2連通路及び第1連通路を介して、前記開口から空気を噴出可能に構成され、
前記押圧部材は、
前記移動部材を前記第1位置に移動させるように、前記第1バネ部材に抗して前記移動部材を押圧する押圧位置と、
前記移動部材が第2位置に移動した状態で、前記移動部材に接触する接触位置と、
前記移動部材から離間した待避位置と
を取り得るように軸方向に移動可能に支持されており、
前記押圧部材は、
軸方向に移動可能な押圧本体と、
前記押圧本体の軸方向の先端部に、前記第1バネ部材よりも弱い付勢力の第2バネ部材を介して取り付けられ、前記噴射口が形成された可動部と、
を備え、
前記押圧部材が前記接触位置にあるとき、前記押圧部材は、前記第2バネ部材により前記可動部を前記移動部材に押しつけるように構成されている、スピンドルユニット。
【請求項2】
前記移動部材が、前記第2位置から第1位置へ移動する距離A、
前記待避位置にある前記押圧部材の可動部先端と前記移動部材の後端との距離B、及び
前記可動部が、自由長にある前記第2バネ部材により前記移動部材から突出した距離C、
を規定したとき、
前記押圧部材の、押圧位置への移動量が距離A+距離B+距離Cとなるように設定されている、請求項
1に記載のスピンドルユニット。
【請求項3】
前記ワーク支持体は、
回転可能に支持された支持本体と、
前記支持本体の先端部に着脱自在に取り付けられ、前記取付部が設けられた治具と、
を備え、
前記移動部材は、
前記支持本体内に、軸方向に移動可能に収容されて前記第1バネ部材の付勢力を受けるプッシュロッドと、
前記治具内に、軸方向に移動可能に収容され、前記固定部材を軸方向に移動させるための軸部材と、
を備えている、請求項
1または2に記載のスピンドルユニット。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれかに記載のスピンドルユニットと、
前記ワークの外周面を加工して歯車形状に仕上げるための歯車状もしくはネジ状の工具、を有する工具ユニットと、
を備えている、歯車加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンドルユニット及びこれを備えた歯車加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯切りされたワークの歯の表面を仕上げる際には、スピンドルユニットにワーク(被加工歯車)を取り付けた後、歯車状の工具をワークと噛み合わせ、両者を同期駆動させながら、ワークを加工する装置がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ワークを正しく工具に噛み合わせるには、ワークがワーク支持具に正しく取り付けられていなければならない。しかしながら、従来は、ワークが正しく取り付けられているか否かを作業者が都度、確認していたため、作業効率が低いという問題があった。本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ワークが正しい位置に取り付けられているか否かを効率的に確認することができる、スピンドルユニット、及びこれを備えた歯車加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ワークを着脱自在に固定するスピンドルユニットであって、円柱状の取付部を有し、軸周りに回転駆動可能に支持されたワーク支持体と、前記ワークの貫通孔に挿入可能で、前記取付部を覆うように配置され、軸方向の先端側に移動すると径が小さくなり、軸方向の後端側に移動すると径が大きくなるように径が拡縮可能な固定部材と、前記ワーク支持体の内部に軸方向に挿通され、前記固定部材を前記先端側に配置する第1位置と、前記後端側に配置する第2位置との間で軸方向に移動可能な移動部材と、前記移動部材を前記第2位置側に付勢する第1バネ部材と、前記移動部材を軸方向の後端側から前記第1位置に押圧可能な押圧部材と、を備え、前記ワーク支持体には、前記固定部材に取り付けられたときのワークの着座面と、該着座面から空気を噴出可能な開口と、前記開口に連通する第1連通路と、が形成され、前記移動部材には、前記第1連通路と連通する第2連通路が形成され、前記押圧部材には、空気を噴射する噴射口が形成され、前記移動部材が前記第2位置にあるとき前記移動部材との接触を維持可能とし、その状態のときに前記噴射口から前記第2連通路及び第1連通路を介して、前記開口から空気を噴出可能に構成されている。
【0006】
上記スピンドルユニットにおいて、前記押圧部材は、前記移動部材を前記第1位置に移動させるように、前記第1バネ部材に抗して前記移動部材を押圧する押圧位置と、前記前記移動部材が第2位置に移動した状態で、前記移動部材に接触する接触位置と、前記移動部材から離間した待避位置と、を取り得るように軸方向に移動可能に支持することができる。
【0007】
上記スピンドルユニットにおいて、前記押圧部材は、軸方向に移動可能な押圧本体と、前記押圧本体の軸方向の先端部に、前記第1バネ部材よりも弱い付勢力の第2バネ部材を介して取り付けられ、前記噴射口が形成された可動部と、を備え、前記押圧部材が前記接触位置にあるとき、前記押圧部材は、前記第2バネ部材により前記可動部を前記移動部材に押しつけるように構成することができる。
【0008】
上記スピンドルユニットにおいては、前記移動部材が、前記第2位置から第1位置へ移動する距離A、前記待避位置にある前記押圧部材の可動部先端と前記移動部材の後端との距離B、及び前記可動部が、自由長にある前記第2バネ部材により前記移動部材から突出した距離C、を規定したとき、前記押圧部材の、押圧位置への移動量が距離A+距離B+距離Cとなるように設定することができる。
【0009】
上記スピンドルユニットにおいて、前記ワーク支持体は、回転可能に支持された支持本体と、前記支持本体の先端部に着脱自在に取り付けられ、前記取付部が設けられた治具と、を備え、前記移動部材は、前記支持本体内に、軸方向に移動可能に収容されて前記第1バネ部材の付勢力を受けるプッシュロッドと、前記治具内に、軸方向に移動可能に収容され、前記固定部材を軸方向に移動させるための軸部材と、を備えることができる。
【0010】
本発明に係る歯車加工装置は、上述したいずれかのスピンドルユニットと、前記ワークの外周面を加工して歯車形状に仕上げるための歯車状もしくはネジ状の工具、を有する工具ユニットと、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ワークが正しい位置に取り付けられているか否かを効率的に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る歯車加工装置の正面図である。
【
図7】スピンドルユニットの動作を示す断面図である。
【
図8】スピンドルユニットの動作を示す断面図である。
【
図9】スピンドルユニットの動作を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る歯車加工装置の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る歯車加工装置の正面図である。なお、以下の説明では、
図1の左右をX軸方向または左右方向、
図1の上下をZ軸または上下方向、
図1の紙面と垂直な方向をY軸方向または前後方向と称し、これを基準に説明をしていく。但し、本発明はこれらの方向に限定されるものではない。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る歯車加工装置は、基台1上に配置された工具ユニット2及びワーク支持ユニット30を備えている。工具ユニット2は、その内部に環状の工具4が保持された環状のハウジング21を有しており、その軸方向が、概ねX軸方向に向くように配置されて、ワークWである歯車と噛合するようになっている。ワーク支持ユニット30は、ワークWを両持ち状に挟持するスピンドルユニット5と心押し台3とで構成されており、これらは、工具ユニット2を挟んで、基台1のX軸方向の両側に配置されている。
【0015】
まず、ワーク支持ユニット30について説明する。
図1に示すように、ワーク支持ユニット30は、上述したスピンドルユニット5と、心押し台3とで構成されており、これらは、X軸方向に互いに近接離間し、ワークWを回転自在に挟持するようになっている。
【0016】
次に、スピンドルユニット5について説明する。スピンドルユニット5は、工具ユニット2を挟んで基台1上の左側に配置された第1支持フレーム311上に配置されている。第1支持フレーム311上には、両レール312に支持されY軸方向に傾斜して移動可能な第1支持ブロック313が配置されている。この第1支持ブロック313の下面にはナット(図示せず)が連結されており、このナットに、レール312と平行に延びるボールネジ(図示せず)が螺合している。このボールネジの一端部には、軸受316が連結されている。該ボールネジの他端側に設けた図外のモータによりボールネジが回転すると、これによって、第1支持ブロック313が傾斜したレール312の傾斜面に沿ってY軸方向に移動する。
【0017】
第1支持ブロック313の上面には、X軸方向に平行に延びる一対のレール317が配置されており、これらレール317に沿ってスピンドルユニット5がX軸方向に移動可能となっている。スピンドルユニット5の下面にはナット(図示せず)が連結されており、このナットに、レール317と平行に延びるボールネジ(図示せず)が螺合している。このボールネジは、モータ3190が連結されている。したがって、モータ3190によりボールネジが回転すると、これによって、スピンドルユニット5が、第1支持ブロック313上をX軸方向に移動する。
【0018】
スピンドルユニット5の先端には、ワークWが取り付け可能となっており、ワークWは、スピンドルユニット5に内蔵されている電動モータ63によって回転駆動される。なお、スピンドルユニット5の構成の詳細は、後述する。
【0019】
次に、心押し台3について説明する。心押し台3もスピンドルユニット5と同様にX-Y方向に移動自在に構成されている。すなわち、心押し台3は、工具ユニット2を挟んで基台1上の右側に配置された第2支持フレーム321上に配置されている。第2支持フレーム321上には、両レール322に支持されY軸方向に傾斜して移動可能な第2支持ブロック323が配置されている。この第2支持ブロック323の下面にはナット(図示せず)が連結されており、このナットに、レール322と平行に延びるボールネジ(図示せず)が螺合している。このボールネジの一端側には、軸受326が連結されている。該ボールネジの他端側に設けた図外のモータによりボールネジが回転すると、これによって、第2支持ブロック323が傾斜したレール322に沿ってY軸方向に移動する。
【0020】
第2支持ブロック323の上面には、X軸方向に平行に延びる一対のレール327が配置されており、これらレール327に沿って心押し台3がX軸方向に移動可能となっている。心押し台3の下面にはナット(図示せず)が連結されており、このナットに、レール327と平行に延びるボールネジ(図示せず)が螺合している。このボールネジは、モータ3290が連結されている。したがって、モータ3290によりボールネジが回転すると、これによって、心押し台3が、第2支持ブロック323上をX軸方向に移動する。
【0021】
また、心押し台3の先端には、スピンドルユニット5の先端に当接する軸部材3201が同一軸線上で回転自在に設けられており、スピンドルユニット5の先端を支持するようになっている。スピンドルユニット5と心押し台3とは、一体的にX軸方向及びY軸方向に移動するように制御されており、両者がワークWを狭持した状態でX軸方向及びY軸方向に移動し、ワークWを工具ユニット2の工具4に対して近接離間するようになっている。
【0022】
次に、工具ユニット2について、
図2を参照しつつ説明する。
図2は工具ユニットをX軸方向から見た側面図である。
図2に示すように、工具ユニット2のハウジング21は、環状に形成されており、ワークWに対して交差角を形成したりクラウニングを施すために、Y軸方向に移動可能で、且つYZ平面内でY軸と傾斜する回転軸S周りに揺動可能となっている。そのため、工具ユニット2は、基台1上に配置され、上述したハウジング21を支持する支持体23を備えている。また、ハウジング21は、上述した回転軸Sの両端で、支持体23によって回転可能に支持されている。すなわち、ハウジング21の回転軸Sの両端には、前端側に第1軸端部材41が取り付けられ、後端側に第2軸端部材42が取り付けられている。そして、これら第1及び第2軸端部材41,42が支持体23によって、揺動可能に支持されている。以下、支持体23について詳細に説明する。
【0023】
図2に示すように、この支持体23は基台1上をY軸方向に移動可能な基部231と、この基部231の前端部に設けられ、ハウジング21の第1軸端部材41を支持する第1支持部232と、基部231の後端部に設けられ、ハウジング21の第2軸端部材42を支持する第2支持部233と、を備えている。基部231は、側面視において、上方に向かって傾斜した前端面2311、この前端面2311に連続し円弧状に形成された中央面2312、及び中央面2312の後端に連続し上方に向かって傾斜した後端面2313を有しており、これらの面が、前方から後方へこの順で並んでいる。前端面2311と後端面2313の傾斜角度は、ワーク支持ユニット3の傾斜面と同じである。この構成において、後端面2313は、前端面2311よりも高い位置にあり、前端面2311には第1支持部232が取り付けられ、後端面2313に第2支持部233が取り付けられる。
【0024】
そして、ハウジング21の第1軸端部材41が第1支持部232によって回転可能に支持されるとともに、第2軸端部材42が第2支持部233によって回転自在に支持される。これにより、ハウジング21は、上記傾斜角度で延びる回転軸S周りに所定角度範囲内で揺動可能となっている。なお、中央面2312の円弧形状は、ハウジング21に外周面に沿うようにしたものである。
【0025】
次に、ハウジング21を含む、工具ユニット2における工具4の取付構造等について、説明する。工具ユニット2は、全体として環状のハウジング21と、このハウジング21の内周側にベアリングを介して回転自在に設けられた工具支持体25と、この工具支持体25の内周面に取り付けられた、内歯車状の工具4と、を備えている。また、工具ユニット2には、工具支持体25をハウジング21に対して回転させるための電動モータ(図示省略)が設けられている。
【0026】
次に、スピンドルユニット5について、
図3を参照しつつ詳細に説明する。
図3は、スピンドルユニットの断面図である。以下では、
図3の右側を先端側または前方、左側を後端側または後方、
図3の左右方向を軸方向と称することとし、この方向にしたがって説明を行う。
【0027】
図3に示すように、スピンドルユニット5は、軸線がX軸方向に延びる円筒状の筐体6と、この筐体6の内部に収容される円筒状のワーク支持体7とを備えており、ワーク支持体7は、筐体6の内部で軸線周りに回転可能に支持されている。また、ワーク支持体7の後方には、後述するように、ワーク支持体7内のプッシュロッド73を軸方向に押圧する押圧部材8が同一軸線上に配置されている。
【0028】
ワーク支持体7は、円筒状の支持本体71と、この支持本体71の先端に着脱自在に取り付けられるワーク支持用の治具72と、を備えており、これらはボルトなどによって固定されている。支持本体71の先端は、筐体6から突出しており、この突出部分に、加工対象となるワークWの形状に応じて選定される治具72が取り付けられている。
【0029】
筐体6の内部においては、支持本体71の前端側及び後端側が、ベアリング61,62によって回転可能に支持されており、これらベアリング61,62の間の支持本体71上に、スピンドルモータ等の電動モータ63のロータが取付けられている。このモータ63により、ワーク支持体7は、軸線周りに回転駆動するようになっている。また、支持本体71の内部には、軸方向に延びる内部空間70が形成されており、この内部空間70にプッシュロッド(移動部材)73が軸方向に移動可能に配置されている。
【0030】
内部空間70は、支持本体71の先端側で外部に開放される断面円形の第1部位701、第1部位701の後端に連結され、第1部位701よりも径が小さい断面円形の第2部位702、及び第2部位702の後端に連結され、第2部位702よりも径が大きい断面円形の第3部位703、が連通するように形成されている。そして、第3部位703の後端は、支持本体71の後部から筐体6の内部に開放されている。
【0031】
プッシュロッド73は、棒状の本体部731と、この本体部731の先端に連結された第1ストッパ732と、本体部731の後端に連結された第2ストッパ733と、を備えている。第1ストッパ732及び第2ストッパ733は、いずれも本体部731よりも大径の円柱状に形成されている。第1ストッパ732は、内部空間70の第1部位701に配置され、本体部731が第2部位702及び第3部位703に亘って延びている。また、第1ストッパ732は、第1部位701の内壁面に気密に接する一方、第1ストッパ732近傍の本体部731も第2部位702の内壁面に気密に接しており、第1ストッパ732の後端面と第1部位701の後端面との間には気密な空間が形成されている。第2ストッパ733は、第3部位703の内壁面にスライド可能に接しており、第3部位703の後端から筐体6内に露出するように配置されている。さらに、第3部位703において、この第3部位703の先端面と第2ストッパ733との間には、本体部731の周囲を覆うように、皿ばね(第1バネ部材)74が配置されている(
図3では一部のみ表示)。これにより、皿ばね74が第2ストッパ733を後端側に押し出すように弾性力が作用している。一方、第1ストッパ732は、第1部位701と第2部位702との段差に係合する抜け止めになっており、皿ばね74の弾性力によってプッシュロッド73が後端側に抜けるのを防止している。このように、プッシュロッド73は、皿ばね74により、常時、後方に押されており、押し込まれた位置が本発明の第2位置に相当する。そして、後述する押圧部材8によって前方に押し込まれた位置が本発明の第1位置に相当する。
【0032】
また、第1ストッパ732の先端には、チャック75が取り付けられており、後述する治具72の軸部材77を押し引きするように形成されている。より詳細には、チャック75は、プッシュロッド73が前進すると、先端側の径が大きくなるように開き、プッシュロッド73が後退すると、径が小さくなるように閉じる複数の爪が設けられている。そのため、このチャック75は、プッシュロッド73が第1位置または第2位置に配置されているときには、後述するように、軸部材77の後端部の係合部774を介して、ワークWを治具72に対して解放あるいは拘束するようになっている。
【0033】
次に、治具72について、
図4も参照しつつ説明する。
図4は、治具の先端付近の断面図である。
図3及び
図4に示すように、治具72は、円柱状の治具本体721と、この治具本体721の後端付近の外周面から径方向外方に突出するフランジ部722と、を備えている。
図4に示すように、治具本体721の先端部には、外径が小さい円柱状の取付部723が設けられている。この取付部723の外周面には、先端にいくにしたがって径が細くなるテーパ面724が形成されている。そして、この取付部723の外周面を覆うように、円筒状の、コレットチャックと称される固定部材76が取り付けられている。この固定部材76の内壁面の後端部には、後方にいくにしたがって内径が大きくなるテーパ面761が形成されている。また、この固定部材76には、軸方向に延びる複数のスリット(図示省略)が形成されており、径方向に拡縮可能に構成されている。そして、取付部723のテーパ面724と固定部材76のテーパ面761とが接した状態で、固定部材76が軸方向の後方に移動すると(後端位置)、固定部材76のテーパ面761は、取付部723のテーパ面724に押圧され拡径するように構成されている。一方、固定部材76が軸方向の前方に移動すると(先端位置)、固定部材は縮径するように構成されている。
【0034】
このように固定部材76は軸方向に移動することで、拡縮するが、固定部材76を軸方向に移動させるため、治具72には、軸方向に延びる軸部材77が取り付けられている。治具本体721の内部には、軸方向に延びる貫通孔が形成されており、この貫通孔に軸部材77が挿通されている。軸部材77は、治具本体771に挿通される棒状の本体部771と、この本体部771の先端に取り付けられ、固定部材76を軸方向の後方へ押圧する押圧部772と、本体部771の後端に取り付けられ、後方へ延びる連結部773とを備えている。押圧部772は、円柱状に形成され、本体部771よりも大径に形成されている。一方、連結部773は、治具本体721から後方に突出し、支持本体71の内部空間70の第1部位701に収容されている。そして、連結部773の後端部には、径のやや大きい算盤珠状の係合部774が設けられている。ワークWを治具72に拘束する際はこの係合部774の外周面が、上述したように、プッシュロッド73の先端のチャック75に連結されて軸部材77を後方に引き込む。ワークWの拘束を解く際は、係合部774の後端面がプッシュロッド73の第1ストッパ732の前端面に当接して軸部材77を前方に押し込むようになっている。
【0035】
次に、スピンドルユニット5の内部に形成された、ワークWの着座を確認するための空気の通路について、
図5を参照しつつ説明する。
図5はスピンドルユニットの断面図である。
図5に示すように、プッシュロッド73の内部には軸方向に延びる第1通路51が形成されている。この第1通路51は、後述するように、空気が注入されるようになっている。そして、この第1通路51の前方の端部は、内部空間70の第1部位701に開放されるように第1部位701基部側の外周面に開口している。また、支持本体71の内部には、後端が第1部位701を介して第1通路51と連通し、前方に延びる複数の第2通路52が形成されている。この第2通路52の前端は、治具72の内部に形成された第3通路53の後端に連通している。
図4に示すように、治具72に形成された第3通路53は、取付部723よりも径方向の外側の面に開放している。そして、第3通路53の先端はワーク着座面54に開口して、固定部材76にワークWが正しい姿勢で取り付けられたときにワークWによって塞がれるようになっている。
【0036】
続いて、押圧部材8について、
図6も参照しつつ説明する。
図6は、押圧部材を示す拡大断面図である。
図6に示すように、押圧部材8は、筐体6の後端部において、ワーク支持体7のプッシュロッド73を押圧するための部材であり、棒状の本体81と、この本体81の先端部にバネ(第2バネ部材)82を介して取り付けられた可動部83と、本体81の軸方向の中心付近に形成され、径方向外方に延びるピストン部84と、本体81の後端部に取り付けられた円板状の検出体85とを備えている。
図6に示すように、本体81及び可動部83には、軸方向に延びる貫通孔801が形成されており、本体81の後端から注入された空気を可動部83の先端から噴射できるようになっている。また、図示を省略するが、押圧部材8に空気を注入する空気注入手段は、コンプレッサ等を用いるほか、貫通孔801から第3通路に至る空気圧を計測することもできるようになっている。
【0037】
可動部83は、先端に大径部を備えて円柱状に形成されており、先端面が、プッシュロッド73の第2ストッパ733に接触可能となっている。貫通孔801の開口端周囲には、第2ストッパ733と接触した箇所から空気漏れを防ぐシール83aが装備され、また、可動部83は、前記皿ばね74の弾性力よりも弱いバネ82によって前方に押し出された前方位置と、バネ82に抗して後方に押し込まれた後方位置との間を往復動可能となっており、その摺動面には気密保持のためのシール83bが装備されている。
【0038】
本体81に取り付けられたピストン部84は、筐体6の後端部に形成された円筒状の油室64に収容されており、この油室64内を前後方向に移動可能となっている。より詳細に説明すると、ピストン部84の径方向外方の端面にはシール841が取り付けられており、このシール841によってピストン部84は油室64の内壁面に液密に接している。そのため、油室64においては、ピストン部84を挟んで前側及び後側に液密の空間が形成されている。そして、ピストン部84の前側の空間または後側の空間に作動油を択一供給することで、ピストン部84は本体81とともに、前方または後方に移動するようになっている。
【0039】
また、筐体6の後端からは、本体81が突出し、その突出した部分に、上記検出体85が取付られている。そして、筐体6の後端には、検出体85を検出する3つのポジションセンサ65~67が取り付けられている。これらポジションセンサ65~67は、軸方向に並んでおり、押圧部材8の軸方向の3つの位置を検出可能となっている。すなわち、押圧部材8が最も前進した押圧位置、押圧部材8が最も後退した待避位置、及びこれら押圧位置及び待避位置の間の接触位置の3つのポジションを検出することができる。
【0040】
また、
図6に示すように押圧部材8が最も後退した待避位置にあるとき、プッシュロッド73は第2位置にあり、第1位置へ移動させるにはその後端面を距離Aだけ押し込む必要がある。一方、可動部83の大径部は、待避位置にある押圧部材8の先端から、自由長となったバネ82の長さにより距離Cだけ突出するように位置設定すると共にプッシュロッド73との間には距離Bを設ける。したがってプッシュロッド73が第1位置をとるためのピストン部84の最大移動距離Sは、基本的には、距離A+距離B+距離Cとなるように油圧空間64の軸方向の長さを設定すればよい。押圧部材8が接触位置のときは、距離B以上で、かつ、距離B+距離C以下だけピストン部84を移動させるようにポジションセンサ66の位置を定めている。
【0041】
次に、上記のように構成されたスピンドルユニット5の動作について、
図7~
図9も参照しつつ説明する。以下では、スピンドルユニット5にワークWを取り付ける動作について説明する。
【0042】
まず、
図5及び
図6に示す初期状態から、収縮側の油室64に給油し、待避位置にある押圧部材8を押圧位置まで前進させる。この過程で、押圧部材8がバネ82を介して可動部83をプッシュロッド73の後端の第2ストッパ733に押しつける。そして、可動部83が第2ストッパ733に接した状態で、本体81がさらに前進し、可動部83は、バネ82を縮めながら、本体81側に押し込まれていく。そして、可動部83が本体81側に完全に押し込まれた状態から、本体81がさらに前進し、
図7に示すように、押圧部材8により第2ストッパ733が押圧され、プッシュロッド73が皿ばね74の弾性力に抗して前進する。これにより、プッシュロッド73は、治具72の軸部材77を押圧し、軸部材77が前進する。
【0043】
そして、固定部材76を押圧していた押圧部772も前進するため、固定部材76に作用していた後方への押圧力が開放され、固定部材76が自身の弾性力で縮径し、固定部材76にワークWの貫通孔が挿通可能となる。
【0044】
次に、この固定部材76にワークWを取り付ける。このとき、
図4に示すように、ワークWは、治具72の先端部に形成された第3通路53の開口54を塞いだ状態となる。続いて、ピストン部84の収縮側油室に給油し、押圧部材8を後退させる。これにより、プッシュロッド73は、皿ばね74により押圧され、第2位置まで後退する。このとき、プッシュロッド73の後退とともに、チャック75が治具72の係合部774を掴みつつ後退するため、治具72の軸部材77は後退し、これに伴い、押圧部772が固定部材76を後方に押圧する。そのため、固定部材76は取付部723のテーパ面724により押圧され、径方向に拡経する。その結果、固定部材76がワークWの貫通孔を内側から押圧し、ワークWが固定部材76に拘束される。
【0045】
そして、
図8に示すように、押圧部材8が接触位置まで後退したときには、プッシュロッド73も連れて第2位置に後退するが、可動部83は、本体81により依然としてバネ82に抗して押し込まれている。したがって、可動部83は、プッシュロッド73の第2ストッパ733に対して密着した状態(距離Bがゼロ、可動部83の大径部と本体81との間が距離B+距離C)となる。押圧部材8のバネ82による弾性力は、プッシュロッド73の皿ばね74の弾性力よりも弱く、これによって、第2位置にあるプッシュロッド73を第1位置側へと押し込まれることがない。したがってワークWの拘束が解かれる心配がない。
【0046】
押圧部材8の接触位置をポジションセンサ66が検知すると図外の空気注入手段を作動させるのがよい。押圧部材8の後端から空気が注入されると、押圧部材8、プッシュロッド73の第1通路51、第1部位701、第2通路52、及び第3通路53を経て治具72の開口54から噴射される。このとき、ワークWにより開口54が塞がれている場合には、開口54から空気が噴射されないため、空気圧が上昇する。これにより、ワークWが正しい位置に取り付けられていることが検知できる。一方、ワークWが正しい位置に取り付けられていない場合には、開口54から空気が漏れるため、空気圧が下がる。そのため、これを検出した場合には、図外のアラームを作動させると共に押圧部材8を再度、押圧位置に前進させワークWを正しい位置に取り付けるのを促すのがよい。
【0047】
こうして、ワークWの取付位置の確認が完了すると、
図9に示すように、押圧部材8を待避位置まで後退させる。これにより、押圧部材8の可動部83は、プッシュロッド73から離間するため、ワーク支持体7は、ワークWを固定したままで電動モータ63により回転可能な状態となる。
【0048】
次に、上記のように構成された歯車加工装置の動作について説明する。まず、上記のようにワークWをスピンドルユニット5の取付部723に取り付けた後、スピンドルユニット5及び心押し台3を互いに近接させ、スピンドルユニット5の押圧部772に、心押し台3の軸部材3201を当接させるとともに、ハウジング21の内方にワークWを配置する。この状態で、スピンドルユニット5のワーク支持体7をワークWとともに回転させる。これと並行して、モータ(図示せず)を駆動し工具ユニット2の工具4をワークWと同期するように、回転させる。続いて、スピンドルユニット5及び心押し台3を一体的にY軸方向に移動させ、ワークWを工具4に近接させる。そして、ワークWと工具4とを噛み合わせことで、ワークWの加工を行う。また、必要に応じて支持体23とともにハウジング21をY軸方向に移動させ、ワークWにクラウニングを施す。また、このような加工作業と同時に、工具4とワークWとの噛み合わせ部分に切削油を噴射し、加工部位の冷却、潤滑、切り屑除去を行う。こうして、所定時間加工を行った後、各モータの駆動を停止し、加工されたワークWを取り外す。
【0049】
以上のように、本実施形態では、押圧部材8により、プッシュロッド73を押圧することで、ワークWを拘束する固定部材76の拡縮を行うことできる。そして、押圧部材8がプッシュロッド73から離間した状態では、プッシュロッド73とともにワーク支持体7が回転できるため、加工のために、ワークWを拘束して回転させることができる。また、押圧部材8の可動部83をプッシュロッド73に接触した状態で、プッシュロッド73内に空気を注入し、ワークWの取付位置に形成された開口54から空気を噴射することができるようになっている。そのため、開口54がワークWによって塞がれ、空気が漏れないときには、空気圧が低下しないため、ワークWが正しく取り付けられていると判断することができ、空気が開口54から漏れるときには、空気圧が低下するため、ワークWが正しく取り付けられていると判断することができる。
【0050】
このとき可動部83はプッシュロッド73に接触するもプッシュロッド73を押圧するまでには至らないのでワークWの拘束は持続され着座確認を精度良く行うことができる。
【0051】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜、組合せ可能である。
【0052】
上記実施形態において、
図7に示すように、プッシュロッド73が軸部材77を押圧しているときには、チャック75が開き、軸部材77の係合部774を掴んでいないため、この状態で、ボルト等を外し、支持本体71から治具72を取り外すこともできる。これにより、歯車の大きさ、形状等に応じて、治具72を交換することができる。但し、軸部材77とプッシュロッド77とを一体化し、治具72が交換できないようにすることもできる。この場合、支持本体71と治具72とを一体化してもよい。
【0053】
上記実施形態では、ワーク支持ユニット30においては、スピンドルユニット5と心押し台3とでワークWを支持しているが、スピンドルユニット5のみでワークWを支持するような形態であってもよい。
【0054】
上記実施形態で説明した工具ユニット2の構成は一例であり、スピンドルユニット5に取り付けられたワークWの外周面に歯車を成形できるような工具を備えていればよい。したがって、外歯車状あるいはねじ状の工具を備えた歯切り用や歯車研削用の工具ユニットであってもよい。
【0055】
また、工具ユニット2及びワーク支持ユニット30の少なくとも一方が移動し、歯車を加工できればよいため、これらの移動機構についても特には限定されない。
【符号の説明】
【0056】
2 工具ユニット
5 スピンドルユニット
7 ワーク支持体
71 支持本体
72 治具
73 プッシュロッド
74 皿ばね(第1バネ部材)
76 固定部材
77 軸部材
8 押圧部材
82 バネ(第2バネ部材)
83 可動部