(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】運動訓練システム、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61H 1/02 20060101AFI20220516BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
A61H1/02 C
A61H1/02 R
A61B5/1455
(21)【出願番号】P 2018133483
(22)【出願日】2018-07-13
【審査請求日】2021-04-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年1月17日~19日に「第2回ロボデックス ロボット開発・活用展」における「産学連携 ロボットフォーラム」での展示にて公開 平成30年1月17日に「第2回ロボデックス ロボット開発・活用展」における「産学連携 ロボットフォーラム」での資料を用いた口頭発表にて公開 平成30年6月13日~15日に「ロボット産業マッチングフェア北九州2018」での展示にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】503361813
【氏名又は名称】学校法人 中村産業学園
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 和寛
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-510560(JP,A)
【文献】特開2018-102842(JP,A)
【文献】特開2016-013182(JP,A)
【文献】国際公開第2017/213202(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
A61B 5/1455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
訓練者に対して運動の支援及び分析を行う運動訓練システムであって、
前記訓練者の人体の一部が載置されるスライダの移動を制御する制御装置と、
前記スライダを用いた前記訓練者の訓練期間における前記訓練者の脳機能に関する脳機能情報を取得し、前記脳機能情報を分析する分析装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記スライダに対して、前記訓練期間における第1の期間に、周期的な移動を行うよう指示し、前記訓練期間における第2の期間に、前記周期的な移動とは異な
り、前記スライダの時間位置、移動振幅、移動周期のうち少なくとも一つがランダムである非周期的な移動を行うよう指示し、
前記分析装置は、
前記脳機能情報における複数の特徴量を抽出し、
前記複数の特徴量に基づいて、前記脳機能情報のスコアを算出し、
前記スコアに基づいて、前記脳機能情報を、前記第1の期間における前記訓練者の脳機能に関する第1の脳機能情報、又は、前記第2の期間における前記訓練者の脳機能に関する第2の脳機能情報、に分類する、
運動訓練システム。
【請求項2】
前記スライダは、所定方向に沿って反復移動可能であり、
前記周期的な移動は、前記所定方向に沿った周期的な反復移動であり、
前記非周期的な移動は、前記所定方向に沿った非周期的な反復移動である、
請求項1に記載の運動訓練システム。
【請求項3】
前記周期的な移動において、前記スライダの移動周期及び前記スライダの1回の移動周期における移動距離が不変であり、
前記非周期的な移動において、前記スライダの移動周期及び前記スライダの1回の移動周期における移動距離のうち少なくとも一方が変化する、
請求項2に記載の運動訓練システム。
【請求項4】
前記スライダは、
前記訓練者の第1の足が載置される第1のスライダと、
前記訓練者の第2の足が載置される第2のスライダと、を含む、
請求項2または3に記載の運動訓練システム。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記第1のスライダにかかる第1の負荷値と、前記第2のスライダにかかる第2の負荷値と、を取得し、
前記第1の負荷値と前記第2の負荷値とを基に、前記第1の負荷値と前記第2の負荷値との差分が小さくなるように、前記第1のスライダに駆動力を供給する第1のモータへのトルク指令値を決定し、前記第2のスライダに駆動力を供給する第2のモータへのトルク指令値を決定する、
請求項4に記載の運動訓練システム。
【請求項6】
加速度を検出する加速度センサ、を更に備え、
前記制御装置は、
前記加速度センサにより検出された加速度を取得し、
前記加速度に基づいて、前記スライダに駆動力を供給するモータへのトルク指令値を決定する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の運動訓練システム。
【請求項7】
前記分析装置は、
前記脳機能情報を分類するための分類モデルを、前記複数の特徴量を用いて機械学習させ、
前記スコアに基づいて、機械学習された前記分類モデルに従って前記複数の脳機能情報を分類する、
請求項
1の運動訓練システム。
【請求項8】
前記脳機能情報を計測する計測装置、を更に備え、
前記計測装置は、
前記訓練者の頭部における任意の位置に第1の光を送光し、
前記訓練者の頭部における任意の位置からの、前記第1の光に応じた第2の光を受光し、
前記第2の光の光量に基づいて、前記訓練者の脳における血流に関する脳血流情報を計測し、
計測された前記脳血流情報を前記分析装置へ伝達する、
請求項1~
7のいずれか1項に記載の運動訓練システム。
【請求項9】
前記計測装置は、
前記第1の期間に含まれ、前記スライダの移動周期及び前記スライダの1回の移動周期における移動距離が一定となる
第1の期間内第3の期間において、前記第1の光を送光し、前記第2の光を受光し、
前記第2の期間
に含まれ、前記スライダの移動周期及び前記スライダの1回の移動周期における移動距離が一定となる第2の期間内第3の期間において、
前記第1の光を送光し、前記第2の光を受光する、
請求項
8に記載の運動訓練システム。
【請求項10】
前記計測装置は、
前記訓練者の頭部における1次体性感覚野及び高次運動野の位置に前記第1の光を送光し、
前記訓練者の頭部における1次体性感覚野及び高次運動野の位置から、前記第1の光に応じた前記第2の光を受光する、
請求項
8または
9に記載の運動訓練システム。
【請求項11】
前記制御装置による前記スライダへの移動の指示に関する情報を表示する表示装置、を更に備える、
請求項1~
10のいずれか1項に記載の運動訓練システム。
【請求項12】
訓練者に対して運動の支援及び分析を行う運動訓練システムの制御方法であって、
前記運動訓練システムの制御装置が、前記訓練者の人体の一部が載置されるスライダの移動を制御するステップと、
前記運動訓練システムの分析装置が、前記スライダを用いた前記訓練者の訓練期間における前記訓練者の脳機能に関する脳機能情報を取得し、前記脳機能情報を分析するステップと、
を有し、
前記制御装置が前記スライダの移動を制御するステップは、
前記スライダに対して、前記訓練期間における第1の期間に、周期的な移動を行うよう指示し、前記訓練期間における第2の期間に、前記周期的な移動とは異な
り、前記スライダの時間位置、移動振幅、移動周期のうち少なくとも一つがランダムである非周期的な移動を行うよう指示するステップを含み、
前記分析装置が前記脳機能情報を分析するステップは、
前記脳機能情報における複数の特徴量を抽出するステップと、
前記複数の特徴量に基づいて、前記脳機能情報のスコアを算出するステップと、
前記スコアに基づいて、前記脳機能情報を、前記第1の期間における前記訓練者の脳機能に関する第1の脳機能情報、又は、前記第2の期間における前記訓練者の脳機能に関する第2の脳機能情報、に分類するステップを含む、
制御方法。
【請求項13】
訓練者に対して運動の支援及び分析を行う運動訓練システムの制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記制御方法は、
前記訓練者の人体の一部が載置されるスライダの移動を制御するステップと、
前記スライダを用いた前記訓練者の訓練期間における前記訓練者の脳機能に関する脳機能情報を取得し、前記脳機能情報を分析するステップと、
を有し、
前記スライダの移動を制御するステップは、
前記スライダに対して、前記訓練期間における第1の期間に、周期的な移動を行うよう指示し、前記訓練期間における第2の期間に、前記周期的な移動とは異な
り、前記スライダの時間位置、移動振幅、移動周期のうち少なくとも一つがランダムである非周期的な移動を行うよう指示するステップを含み、
前記脳機能情報を分析するステップは、
前記脳機能情報における複数の特徴量を抽出するステップと、
前記複数の特徴量に基づいて、前記脳機能情報のスコアを算出するステップと、
前記スコアに基づいて、前記脳機能情報を、前記第1の期間における前記訓練者の脳機能に関する第1の脳機能情報、又は、前記第2の期間における前記訓練者の脳機能に関する第2の脳機能情報、に分類するステップを含む、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、訓練者に対して運動の支援及び分析を行う運動訓練システム、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、訓練者のリハビリテーションを行うリハビリテーションシステムが知られている(特許文献1参照)。このリハビリテーションシステムは、上肢を動かすための手足マニピュレータを含むアクチュエータ装置を備える。手足マニピュレータは、手足の運動を測定し、訓練者への運動感覚のフィードバックを提供する。また、このリハビリテーションシステムは、脳機能の様々な測定値、例えばSCP(緩徐皮質電位)、MAC(随意運動に伴う運動関連脳電位)、ミューリズム、生理学的測定値、を測定し、コントローラやソフトウェアモジュールが、測定値を入力して、中枢(脳)活動に関する処理や監視を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のリハビリテーションシステムは、単一の運動の制御や測定を複数回繰り返したり、より複雑な運動の制御や測定を複数回繰り返したりする。しかし、同じ運動を反復することで、脳に対して同じ刺激が与えられることで、同じ運動に対して慣れが生じる。この場合、脳への刺激が定常的となり、運動能力を向上することが困難になり得る。
【0005】
本開示は、上述した従来の状況に鑑みてなされたものであり、訓練者の体のいずれかの部位を様々に動かすことで脳に対して異なる刺激を与え、運動能力の向上を期待できる運動訓練システム、制御方法、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、訓練者に対して運動の支援及び分析を行う運動訓練システムであって、前記訓練者の人体の一部が載置されるスライダの移動を制御する制御装置と、前記スライダを用いた前記訓練者の訓練期間における前記訓練者の脳機能に関する脳機能情報を取得し、前記脳機能情報を分析する分析装置と、を備え、前記制御装置は、前記スライダに対して、前記訓練期間における第1の期間に、周期的な移動を行うよう指示し、前記訓練期間における第2の期間に、前記周期的な移動とは異なり、前記スライダの時間位置、移動振幅、移動周期のうち少なくとも一つがランダムである非周期的な移動を行うよう指示し、前記分析装置は、前記脳機能情報における複数の特徴量を抽出し、前記複数の特徴量に基づいて、前記脳機能情報のスコアを算出し、前記スコアに基づいて、前記脳機能情報を、前記第1の期間における前記訓練者の脳機能に関する第1の脳機能情報、又は、前記第2の期間における前記訓練者の脳機能に関する第2の脳機能情報、に分類する、運動訓練システムである。
【0007】
本開示の一態様は、訓練者に対して運動の支援及び分析を行う運動訓練システムの制御方法であって、前記運動訓練システムの制御装置が、前記訓練者の人体の一部が載置されるスライダの移動を制御するステップと、前記運動訓練システムの分析装置が、前記スライダを用いた前記訓練者の訓練期間における前記訓練者の脳機能に関する脳機能情報を取得し、前記脳機能情報を分析するステップと、を有し、前記制御装置が前記スライダの移動を制御するステップは、前記スライダに対して、前記訓練期間における第1の期間に、周期的な移動を行うよう指示し、前記訓練期間における第2の期間に、前記周期的な移動とは異なり、前記スライダの時間位置、移動振幅、移動周期のうち少なくとも一つがランダムである非周期的な移動を行うよう指示するステップを含み、前記分析装置が前記脳機能情報を分析するステップは、前記脳機能情報における複数の特徴量を抽出するステップと、前記複数の特徴量に基づいて、前記脳機能情報のスコアを算出するステップと、前記スコアに基づいて、前記脳機能情報を、前記第1の期間における前記訓練者の脳機能に関する第1の脳機能情報、又は、前記第2の期間における前記訓練者の脳機能に関する第2の脳機能情報、に分類するステップを含む、制御方法である。
【0008】
本開示の一態様は、訓練者に対して運動の支援及び分析を行う運動訓練システムの制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記制御方法は、前記訓練者の人体の一部が載置されるスライダの移動を制御するステップと、前記スライダを用いた前記訓練者の訓練期間における前記訓練者の脳機能に関する脳機能情報を取得し、前記脳機能情報を分析するステップと、を有し、前記スライダの移動を制御するステップは、前記スライダに対して、前記訓練期間における第1の期間に、周期的な移動を行うよう指示し、前記訓練期間における第2の期間に、前記周期的な移動とは異なり、前記スライダの時間位置、移動振幅、移動周期のうち少なくとも一つがランダムである非周期的な移動を行うよう指示するステップを含み、前記脳機能情報を分析するステップは、前記脳機能情報における複数の特徴量を抽出するステップと、前記複数の特徴量に基づいて、前記脳機能情報のスコアを算出するステップと、前記スコアに基づいて、前記脳機能情報を、前記第1の期間における前記訓練者の脳機能に関する第1の脳機能情報、又は、前記第2の期間における前記訓練者の脳機能に関する第2の脳機能情報、に分類するステップを含む、プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、訓練者の体のいずれかの部位を様々に動かすことで脳に異なる刺激を与え、運動能力の向上を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の運動訓練システムの構成例を示すブロック図
【
図3A】右足のスライダの位置の指令値と右足のスライダの位置の検出値との一例を時系列で示す図
【
図3B】左足のスライダの位置の指令値と左足のスライダの位置の検出値との一例を時系列で示す図
【
図4A】右足のスライダにかかる負荷の値と右足のスライダに対する右手のアクションの値との一例を時系列で示す図
【
図4B】左足のスライダにかかる負荷の値と左足のスライダに対する右手のアクションの値との一例を時系列で示す図
【
図6】動作制御装置による運動スケジュールに従った運動訓練の動作例を示すフローチャート
【
図9】頭部に脳計測装置の装着部を装着した訓練者の一例を示す外観図
【
図10】送光プローブと受光プローブとを用いた光の伝達の一例を示す図
【
図11】訓練者の頭部における送光プローブによる送光位置及び受光プローブによる受光位置の一例を示す図
【
図12】訓練者における頭部の脳機能計測チャネルの一例を示す図
【
図13A】単純反復動作時の右足のスライダの位置の指令値の一例を示す図
【
図13B】単純反復動作時の左足のスライダの位置の指令値の一例を示す図
【
図13C】非単純反復動作時の右足のスライダ20aの位置の指令値の一例を示す図
【
図13D】非単純反復動作時の左足のスライダ20bの位置の指令値の一例を示す図
【
図13E】運動訓練装置により単純反復動作を行った場合における、酸素化ヘモグロビン濃度の変化を時系列で示す図
【
図13F】運動訓練装置により非単純反復動作を行った場合における、酸素化ヘモグロビン濃度の変化を時系列で示す図
【
図14】脳分析装置によるNIRSデータの分析時の動作例を示すフローチャート
【
図15】第1解析例における、運動訓練装置の動作別の、特徴量の次元削減後の第1主成分及び第2主成分の値の一例を示す図
【
図16】第1解析例における、第1主成分及び第2の主成分の値と分類スコアとの関係の一例を示す図
【
図17】第1解析例における、NIRSデータの分類結果の一例を示す図
【
図18A】訓練者tr1のNIRSデータの分類結果の一例を示す図
【
図18B】訓練者tr2のNIRSデータの分類結果の一例を示す図
【
図18C】訓練者tr3のNIRSデータの分類結果の一例を示す図
【
図18D】訓練者tr4のNIRSデータの分類結果の一例を示す図
【
図18E】訓練者tr5のNIRSデータの分類結果の一例を示す図
【
図19A】運動訓練装置により単純反復動作を行った場合における、運動訓練装置の解析に用いる動作範囲の制限の一例を示す図
【
図19B】運動訓練装置により非単純反復動作を行った場合における、運動訓練装置の解析に用いる動作範囲の制限の一例を示す図
【
図20】第3解析例における、運動訓練装置の動作別の、特徴量の次元削減後の第1主成分及び第2主成分の値の一例を示す図
【
図21】第3解析例における、第1主成分及び第2の主成分の値と分類スコアとの関係の一例を示す図
【
図22】第3解析例における、NIRSデータの分類結果の一例を示す図
【
図23】選出された脳機能計測チャネルの設定例を示す図
【
図24】第4解析例における、運動訓練装置の動作別の、特徴量の次元削減後の第1主成分及び第2主成分の値の一例を示す図
【
図25】第4解析例における、第1主成分及び第2の主成分の値と分類スコアとの関係の一例を示す図
【
図26】第4解析例における、NIRSデータの分類結果の一例を示す図
【
図27】第5解析例における、運動訓練装置の動作別の、特徴量の次元削減後の第1主成分及び第2主成分の値の一例を示す図
【
図28】第5解析例における、第1主成分及び第2の主成分の値と分類スコアとの関係の一例を示す図
【
図29】第5解析例における、NIRSデータの分類結果の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、運動訓練システム100の構成例を示すブロック図である。運動訓練システム100は、動作制御装置10、サーボアンプ15(15a~15d)、スライダ20(20a~20d)、モータ22(モータ22a~22d)、動作制御生成装置25、表示装置30、脳分析装置40、脳計測装置45、加速度センサ50(50a,50b)を備える。運動訓練システム100は、訓練者trの運動訓練に使用され、例えば、健常高齢者の運動訓練、トレーニングジム等での健常者の運動訓練、患者のリハビリテーション、等で使用されることが想定される。
【0013】
運動訓練システム100が備える各装置(例えば、動作制御装置10、動作制御生成装置25、表示装置30、脳分析装置40、脳計測装置45、加速度センサ50)は、情報処理装置が備えるような構成部を備えてよい。
【0014】
例えば、各装置は、プロセッサ、メモリ、通信デバイス、入力デバイス、表示デバイス、を備えてよい。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit))、等を含んでよい。メモリは、例えば、1次記憶装置を含み、2次記憶装置や3次記憶装置を含んでよい。1次記憶装置は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、等を含んでよい。2次記憶装置は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、等を含んでよい。3次記憶装置は、光ディスク、フラッシュメモリ、SDカード等を含んでよい。通信デバイスは、無線又は有線を介して通信してよい。入力デバイスは、例えば、各種ボタン、キー、キーボード、タッチパネル、マイクロホン、等を含んでよい。表示デバイスは、有機EL(Electro Luminescence)デバイス、液晶デバイス、等を含んでよい。
【0015】
動作制御装置10は、スライダ20の位置制御機能、スライダ20の速度制御機能、外乱観測機能、バイラテラル制御機能、及びハプティクス制御機能を有してよい。動作制御装置10は、例えば、任意の運動スケジュールに従って、スライダ20の移動を制御する。この場合、動作制御装置10は、スライダ20の動きを制御するためのトルク指令値を算出し、サーボアンプ15やスライダ20に駆動力を提供するモータ22を介して、トルク指令値に従ったトルク指令をスライダ20に伝達してよい。運動スケジュールは、メモリに保持されていてよい。運動スケジュールは、運動訓練内容、訓練者trのレベル、等に応じて、複数用意されてよい。また、動作制御装置10は、DA変換器、AD変換器、カウンタ、等を含んでよい。
【0016】
サーボアンプ15は、動作制御装置10から取得したトルク指令に応じて、モータ22を介して、スライダ20の動作を制御する。サーボアンプ15は、右足のスライダ20a用のサーボアンプ15aと、左足のスライダ20b用のサーボアンプ15bと、右手のスライダ20c用のサーボアンプ15cと、左手のスライダ20d用のサーボアンプ15dと、を含む。
【0017】
サーボアンプ15は、モータ22からモータ22の角度の検出値(例えばモータ22の回転角度)を取得し、モータ22の制御(例えばトルク制御)を行ってよい。モータ22の角度は、角度検出器(エンコーダ)により検出されてよく、角度検出器がサーボアンプ15にモータ22の角度を通知してよい。モータ22の回転によってスライダ20が移動してよく、モータ22の角度制御に応じて、スライダ20の位置が制御されてよい。
【0018】
サーボアンプ15は、動作制御装置10からトルク指令値を受け取り、モータ22を駆動するための駆動電流を生成し、駆動電流をモータ22へ送ってよい。
【0019】
スライダ20は、サーボアンプ15による制御に応じて動作する。各スライダ20は、モータ22から供給される駆動力によって動作する。スライダ20は、所定の方向に沿って、訓練者trの手足(右足、左足、右手、左手)の各部を往復運動させてよい。スライダ20は、右足が載置される右足のスライダ20aと、左足が載置される左足のスライダ20bと、右手が載置される右手のスライダ20cと、左手が載置される左手のスライダ20dと、を含む。なお、手用のスライダ20への手の載置には、手用のスライダ20を手で把持することを含んでよい。
【0020】
スライダ20は、歩行訓練に用いられてよい。したがって、周期的な動作の期間では、右足のスライダ20aと左足のスライダ20bとは、反対方向に動いてよく、右手のスライダ20cと左手のスライダ20dとは、反対方向に動いてよい。また、周期的な動作の期間では、右足のスライダ20aと右手のスライダ20cとは、反対方向に動いてよく、左足のスライダ20bと左手のスライダ20dとは、反対方向に動いてよい。
【0021】
モータ22は、カップリングを介してスライダ20に接続される。モータ22は、サーボアンプ15から駆動電流を受け取り、モータ22を回転させて駆動力を発生させ、スライダ20に駆動力を供給する。スライダ20は、モータ22からの駆動力に従って移動する。
【0022】
モータ22は、各スライダ20に対応して設けられる。つまり、モータ22aは、スライダ20aが移動するための駆動力を供給する。モータ22bは、スライダ20bが移動するための駆動力を供給する。モータ22cは、スライダ20cが移動するための駆動力を供給する。モータ22dは、スライダ20dが移動するための駆動力を供給する。
【0023】
したがって、スライダ20は、多軸(例えば両手及び両足の4軸)で独立制御可能でよい。つまり、運動訓練装置5は、4軸のアクチュエータを用いて昇降運動訓練を実施可能でよい。
【0024】
動作制御生成装置25は、例えば、動作制御装置10が実行する動作制御プログラムを生成する。動作制御プログラムは、例えば、各スライダ20を動作させるための運動スケジュールの情報を含んでよい。動作制御生成装置25は、脳分析装置40による分析結果に従って、動作制御プログラムを生成してよい。運動スケジュールに従った運動には、周期的な動作を行う期間、非周期的な動作を行う期間を含んでよい。非周期的な動作では、スライダ20の時間位置やスライダ20の移動振幅や移動周期がランダムであることが含まれてよい。なお、周期的な動作は、単純な往復動作以外の周期的な動作を含んでよい。
【0025】
動作制御生成装置25は、例えばMatheWorks社が提供する数式演算ソフトウエアであるMATLABやSIMULINKを利用して、制御ソフトウェア(運動制御プログラム)を生成する。動作制御装置10は、生成された運動制御プログラムをダウンロードし、運動制御プログラムを実行して運動訓練における各種指示を行ってよい。なお、動作制御装置10と動作制御生成装置25とが一体に形成されてもよい。
【0026】
表示装置30は、各種データや各種情報を表示する。表示装置30は、例えば、動作制御生成装置25により動作制御プログラムを生成する際に用いられるデータや情報を表示してよい。また、表示装置30は、動作制御プログラムに従って実行される運動訓練において、運動訓練を行う訓練者trを補助するための情報を表示してよい。
【0027】
脳分析装置40は、脳計測装置45から脳機能情報を取得する。脳分析装置40は、取得した脳機能情報を分析し、分析結果を動作制御生成装置25へ送る。
【0028】
脳計測装置45は、近赤外分光法(NIRS:Near‐InfraRed Spectroscopy)を用いて脳表面の酸素状態を計測する。この計測結果は、脳の活動状態としてリアルタイムにカラーマッピングされてよい。脳計測装置45は、脳表面の酸素状態の計測結果を脳分析装置40へ送る。
【0029】
加速度センサ50は、3軸方向(例えば水平方向における相互に垂直な2つの方向と水平方向に垂直な方向との3つの方向)の加速度を検出する。加速度センサ50は、複数存在してよく、例えば加速度センサ50a,50bを含む。加速度センサ50の測定結果は、動作制御装置10へ送られる。加速度センサ50は、運動訓練装置5(
図2参照)に設けられていてよい。加速度センサ50は、訓練者trに装着され、訓練者trの運動訓練に合わせて加速度が検知されてもよい。加速度センサ50は、3軸方向の加速度を検出してよく、各方向の加速度が合成されてよい。また、加速度センサ50を使って、外部から刺激を与えて、外部刺激に応じたトルク指令を発生させてもよい。この場合、訓練者trや運動訓練の管理者が加速度センサ50を振動させることで、動作制御装置10は、手動でスライダ20に通常の運動スケジュールとは異なる動きをつけてもよい。
【0030】
加速度センサ50は、訓練者trの手に把持されたり、訓練者trの体部の一部に装着されたりしてよい。加速度センサ50の振動により、振動トルクが与えられてよい。加速度センサは、左足用及び右足用のスライダ20毎に対応して設けられ、つまり2つ設けられてよい。加速度センサ50aが右手用の加速度センサであり、加速度センサ50bが左手用の加速度センサでよい。
【0031】
次に、脳計測装置45による計測方法の一例について説明する。
【0032】
人間は、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚などの情報を目、耳などの感覚器から取り込み、それらを電気信号に変換し、脳に伝達する。そして、脳内に約1000憶個存在するニューロンがシナプスを介して相互にそれらの情報を伝達・処理することによって、次の行動を決定する。この場合、酸素化ヘモグロビン(oxyHb)が、毛細血管を経由して酸素を供給する。脳計測装置45は、NIRSを用いて脳表面の酵素状態を捉えることで、脳の活動状態をリアルタイムに計測し、脳の機能局在を解析する。
【0033】
血液成分のヘモグロビンは、光を散乱させる。ヘモグロビンに酸素が付加されているか否かに応じて、光の吸収・散乱の度合いが変化する。脳計測装置45は、ヘモグロビンによる光の吸収、散乱の度合いを測定し、酸素化ヘモグロビンの濃度変化を計測する。生体組織の光計測では、例えば波長が700~900nmの近赤外光が使用される。なお、可視光(400~700nm)の波長帯では、ヘモグロビンや他の生体構成物質の吸収が大きい。また、近赤外光よりも長い波長の波長帯では、水の吸収が大きくなり、生体内を光が進行できない。これに対し、近赤外線の波長帯では、光が生体を透過し易い。
【0034】
近赤外光の波長帯での光の吸収は、主に、酸素化ヘモグロビン(oxyHb)と脱酸素化ヘモグロビン(deoxyHb)とによって生じる。oxyHbとdeoxyHbとは、異なる吸収スペクトルを持つ。このため、脳計測装置45は、oxyHbとdeoxyHbのモル分子吸光係数が既知であれば、2波長以上での吸光度変化を計測することで、oxyHbの濃度変化とdeoxyHbの濃度変化とを算出できる。
【0035】
近赤外光は、比較的生体を透過するが、人間の頭部を透過させることが困難である。そのため、脳計測装置45は、光ファイバを用いて頭表から近赤外光を脳内に照射し、大脳皮質で吸収・散乱を起こした光を、例えば30mm程度離れた頭表上の光ファイバで集光する。照射された光は、頭表から約20mm程度の深部まで到達し、大脳皮質でのヘモグロビンの吸収を受ける。生体は強い散乱体であるので、光ファイバによって導入された近赤外線は、頭部の組織の色々な部分によって散乱され、散乱された光の一部が受光部の光ファイバに到達する。受光された光は、光電子増倍管に導かれ、電気信号に変換される。得られた電気信号やデータを、NIRS信号やNIRSデータとも称する。
【0036】
図2は、運動訓練装置5の外観例を示す斜視図である。ここでは、運動訓練として歩行訓練を例示する。
【0037】
運動訓練装置5は、ガイド部材26と、ガイド部材26に取り付けられた足用のスライダ機構27(27a,27b)と、運動訓練(例えば歩行訓練)する訓練者trの周囲に配置される門形のフレームfrと、フレームfrに取り付けられる手用のスライダ機構28(28a,28b)と、を含む。なお、フレームfrは、門形以外の形状でもよい。
【0038】
スライダ機構27(27a,27b)は、足用のスライダ20(20a,20b)、モータ22(22a,22b)、及びボールねじ24(24a,24b),を含む。スライダ機構28(28c,28d)は、手用のスライダ20(20c,20d)、モータ22(22c,22d)、及びボールねじ(不図示)を含む。ここでは、足用のスライド方法の詳細を例示するが、手用のスライド方法の詳細も同様でよい。
【0039】
スライダ機構27a,27bでは、それぞれモータ22a,22bがボールねじ24a,24bを正転・逆転させることで、スライダ20a,20bが前方斜め上方向及び後方斜め下方向に移動する。従って、左右のスライダ20a,20bは、独立に移動自在である。
【0040】
水平方向に対するガイド部材26の角度は、固定でもよいし、調整自在でもよい。例えば、運動訓練装置5は、前後方向にスライダ20を移動させるすり足歩行の歩行訓練を可能としたり、前方斜め上方向及び後方斜め下方向や上下方向に移動する0が運動の歩行訓練を可能としたりしてよい。
【0041】
スライダ20a,20bは、スライダ20a,20b用のモータ22の駆動により、同期して又は同期しないで反対方向に移動してよい。スライダ20a,20bは、スライダ20a,20b用のモータ22の駆動により、同期して又は同期しないで同一方向に移動してよい。訓練者trは、スライダ20a,20bに足を載置することで、様々な歩行方法での歩行時の足の動きを体験できる。
【0042】
足用のスライダ20a,20bは、前方斜め上方向及び後方斜め下方向に往復移動可能である。つまり、訓練者trは、スライダ20a,20bにより、昇降運動が可能である。手用のスライダ20c,20は、前後方向に往復運動可能である。つまり、訓練者trは、スライダ20a,20bにより、昇降運動時にバランス維持のサポートを受けることができる。
【0043】
右足のスライダ20aと右手のスライダ20cとは、水平方向において同じ位置となるよう移動してよい。つまり、スライダ20a,20cは、それぞれの往復軌道において同じ位置にとなってよい。
【0044】
足用のスライダ20a,20bは、
図2に示す矢印αの方向に摺動可能である。手用のスライダ20c,20は、
図2に示す矢印βの方向に摺動可能である。これにより、訓練者trは、スライダ20a,20bに足を載置し、スライダ20c,20dに手を載置することで、スライダ20a,20bとともに足が移動し、スライダ20c,20dとともに手が移動するので、疑似的に歩行時の手足の動きを体験できる。
【0045】
右足のスライダ20a及び右手のスライダ20cと左足のスライダ20b及び左手のスライダ20dとは、同期して、交互に、定常的に、前方斜め上方向及び後方斜め下方向の往復移動を行ってよい。この往復移動は、訓練者trにとって予測可能な移動となる。右足のスライダ20a及び右手のスライダ20cと左足のスライダ20b及び左手のスライダ20dとは、同期せずに、非定常的に、不定なリズムで、前方斜め上方向及び後方斜め下方向の往復移動を行ってよい。この往復移動は、訓練者trにとって予測不可能な移動となる。
【0046】
各スライダ20のモータ22は、各サーボアンプ15の制御に従って、他のスライダの動きに依存せずに独立に移動可能である。よって、右足のスライダ20aの動きと左足のスライダ20bの動きとが、別々であってよい。例えば、右足のスライダ20aの動きの周期と左足のスライダ20bの動きの周期とが、異なってよいし、右足のスライダ20aの動きの範囲(つまり歩幅)と左足のスライダ20bの動きの範囲とが異なってよい。
【0047】
次に、動作制御装置10の詳細について説明する。
【0048】
動作制御装置10は、訓練者trの運動訓練に関する処理(例えばデータや情報の取得処理、記録処理、演算処理、表示処理、音声出力処理)を行う。動作制御装置10は、各スライダ20のモータ22をサーボ制御し、スライダ20を目標の足位置に位置決めしてよい。運動訓練を行うための訓練コースは、複数用意されてよい。訓練コース毎に、異なる評価基準で歩行訓練の結果が評価されてよい。
【0049】
動作制御装置10のメモリは、運動訓練に係る各種設定情報を保持してよい。設定情報には、例えば、運動訓練するための運動スケジュールにおける各スライダ20の移動に関する情報(例えば運動訓練開始からの時刻における各スライダ20の位置、各スライダ20のスライド周期、各スライダ20のスライド幅、等)が含まれてよい。
【0050】
動作制御装置10のメモリは、歩行訓練により得られたデータ(例えばトルク指令値やモータ22の角度センサ23の値、角度センサの値に対応するトルク検出値)を記録し、蓄積してよい。なお、動作制御装置10は、各スライダ20のトルク指令値と各スライダ20の角度センサ23のセンサ値とに基づいて、次のタイミングでのトルク指令値を決定してよい。これにより、運動訓練システム100は、右足のスライダ20aと左足のスライダ20bとの変位を基に、訓練者trの体重のかけ方や歩行バランスを推定してよい。例えば、動作制御装置10は、その後のトルク指令値として、訓練者trの歩行バランスをより取り易いように、調整してよい。
【0051】
動作制御装置10は、スライダ20の位置の指令値とスライダ20の位置の検出値とを取得する。スライダ20の位置の指令値は、運動スケジュールに従って決定され、スライダ20a,20bが所定時刻に配置されるべき位置の値である。スライダ20の位置の検出値は、角度センサ23の検出値に基づく値であり、実際のスライダ20a,20の位置を示す。例えば、動作制御装置10は、モータ22の回転角度と、ボールねじ24の1周分のスライダ20の移動距離と、に基づいて、スライダ20の位置の検出値を算出してよい。
【0052】
図3Aは、右足のスライダ20aの位置の指令値と右足のスライダ20aの位置の検出値とを時系列で示す図であり、図fg1とも称する。
図3は、左足のスライダ20bの位置の指令値と左足のスライダ20bの位置の検出値とを時系列で示す図であり、図fg2とも称する。なお、
図3A及び
図3Bでは、スライダ20(20a,20b)の位置の指令値と検出値とが一致しているため、波形が重なって1つになっている。
【0053】
動作制御装置10は、スライダ20(20a,20b)にかかる負荷(力)の値を取得してよい。スライダ20a,20bにかかる負荷は、モータ22(22a,22b)の角度センサ23(23a,23b)により検出されたモータ22の回転角度に基づく負荷でよい。負荷は、力換算されて示されてもよいし、トルク換算されてもよい。ここでは一例として、トルクの検出値として示す。トルク検出値には、トルク指令値とともに、訓練者trの体重移動が不十分であるためにスライダ20にかかる負荷も反映され得る。
【0054】
動作制御装置10は、スライダ20に対する右手のアクションの値を取得してよい。ここでのアクションとは、加速度センサ50を例えば人為的に振動させることを意味する。検出されるアクションの値は、例えば、加速度センサ50の振動に対応するトルク指令値でよい。つまり、アクションの値は、左手用又は右手用の加速度センサ50(50a,50b)を動かした(例えば振動させた)大きさを、トルクに換算したものであり、例えば通常の運動スケジュールに従ったトルク指令値に加算される。
【0055】
図4Aは、右足のスライダ20aにかかる負荷(力)の値と右足のスライダ20aに対する右手のアクションの値とを時系列で示す図であり、図fg3とも称する。
図4Bは、左足のスライダ20bにかかる負荷(力、ウェイト)の値と左足のスライダ20bに対する左手のアクションの値とを時系列で示す図であり、図fg4とも称する。
【0056】
【0057】
表示装置30は、図fg1~fg4を表示する。表示装置30は、バランスメータfg5を表示する。バランスメータfg5の値は、右足のスライダ20aにかかる負荷と左足のスライダ20bにかかる負荷との差分でよい。バランスメータfg5の値は、右足のスライダ20aの位置と左足のスライダ20bの位置との差分でもよい。この差分は、外乱オブザーバにより推定されてよい。
【0058】
表示装置30は、バランスグラフfg6を表示する。バランスグラフfg6は、バランスメータfg5の値を時系列に並べてグラフ化したものである。
【0059】
動作制御装置10は、左右のスライダ20a,20bにかかる負荷のバランスに基づくバランススコアを算出する。動作制御装置10は、右足のスライダ20aにかかる負荷と左足のスライダ20bにかかる負荷との差分が値0でない場合、つまり左右のバランスが崩れている場合に、ペナルティの値を初期値(例えば値100)から減算していくことで、バランススコアを算出してよい。動作制御装置10は、運動訓練中に定期的に(例えば常時)バランススコアを算出して更新してよい。表示装置30は、このバランススコアfg7を表示してよい。
【0060】
動作制御装置10は、バランススコアに基づいて、スライダ20a,20bの少なくとも一方に付加される補助力を算出する。補助力は、左右のスライダ20a,20bにかかる負荷を均等とするために、スライダ20a又はスライダ20bに付加される。したがって、スライダ20a,20bを駆動するモータ22には、運動スケジュールに従って供給されるトルク指令値とともに、補助力を供給するためのトルク指令値、が与えられ得る。動作制御装置10は、補助力を供給するためのトルク指令値に関するパラメータを、バランス補助値(
図5では値「15」)として算出してよい。バランス補助値は、後述するバイラテラル制御に係るパラメータK
Bに相当する。表示装置30は、バランス補助値fg8を表示してよい。
【0061】
次に、運動訓練システム100の動作について説明する。
【0062】
図6は、運動スケジュールに従った運動訓練の動作例を示すフローチャートである。
【0063】
動作制御装置10は、各スライダ20の動作に関する動作指令情報の表示を指示する(S11)。この場合、動作制御装置10は、動作制御生成装置25を介して表示装置30へ表示の指示を送信してよい。つまり、動作制御装置10は、表示装置30による表示を介して、昇降運動のイメージを訓練者trに教示してよい。動作指令情報は、例えば、左右のスライダ20の位置の指令値やトルクの指令値を含んでよい。
【0064】
動作制御装置10は、運動スケジュールに従って、両足交互に昇降動作するよう、サーボアンプ15を介してモータ22に指示する(S12)。ここでの両足交互の昇降動作は、通常昇降とも称し、スライダ20が移動する振幅及び周波数が一定となる動作であり、つまりスライダ20の移動が周期的となる動作である。この場合、動作制御装置10は、通常昇降させるトルク指令値を生成し、サーボアンプ15を介してモータ22に送信する。
【0065】
動作制御装置10は、運動スケジュールに従って、両足交互に昇降動作するよう、サーボアンプ15を介してモータ22に指示する(S13)。ここでの両足交互の昇降動作は、スライダ20(20a,20b)が移動する振幅が不定期に(例えば突然)変化する動作であり、つまりスライダ20の移動が非周期的となる動作である。この場合、動作制御装置10は、振幅が不定期に変化するトルク指令値を生成し、サーボアンプ15を介してモータ22に送信する。非周期的な動作は、訓練者trにとって予想外の動きとなる。
【0066】
動作制御装置10は、運動スケジュールに従って、両足交互に昇降動作するよう、サーボアンプ15を介してモータ22に指示する(S14)。ここでの両足交互の昇降動作は、スライダ20(20a,20b)が移動する周波数が不定期に(例えば突然)変化する動作であり、つまりスライダ20の周波数が非周期的となる動作である。この場合、動作制御装置10は、周波数が不定期に変化するトルク指令値を生成し、サーボアンプ15を介してモータ22に送信する。
【0067】
動作制御装置10は、運動スケジュールに従って、両足同時に昇降動作するよう、サーボアンプ15を介してモータ22に指示する(S15)。両足同時に昇降動作では、左右のスライダ機構27a,27bにおけるスライダ20a,20bの位置が同じになる。ここでの両足同時の昇降動作は、スライダ20(20a,20b)が移動する振幅及び周波数が一定となる動作であり、つまりスライダ20の移動が周期的となる動作でよい。なお、両足同時の昇降動作は、スライダ20(20a,20b)が移動する振幅及び周波数が不定となる動作を含んでもよい。
【0068】
動作制御装置10は、運動スケジュールに従って、片足の昇降動作を行うよう、サーボアンプ15を介してモータ22に指示する(S16)。片足の昇降動作は、右足でも左足でもよい。また、片足の走行動作が、右足、左足に対して順に行われてもよい。
【0069】
動作制御装置10は、表示装置30に、動作指令情報(例えば位置の指令値、トルクの指令値)、右足及び左足の動作結果(例えば位置の検出値、トルクの検出値)の表示を指示する(S17)。この場合、動作制御装置10は、動作制御生成装置25を介して表示装置30へ表示の指示を送信してよい。
【0070】
このように、運動訓練システム100は、
図6に示した運動スケジュールに従った運動訓練の動作において、動作指令をモニタ表示し、リハビリトレーニングする訓練者trに視覚や聴覚で教示できる。この動作指令は、スライダ20の移動に関する指令情報でよく、例えば位置の指令値やトルクの指令値を示す情報でよい。
【0071】
また、運動訓練システム100は、S12において、この動作指令に従い、まずは両足交互に予想通りの昇降動作を、訓練者trに実施させることができる。運動訓練システム100は、S13において、両足交互の昇降動作中に片方の動作振幅が突然変化する昇降動作を、訓練者trに実施させることができる。運動訓練システム100は、S14において、両足交互の昇降動作中に片方の動作周波数が突然変化する昇降動作を、訓練者trに実施させることができる。運動訓練システム100は、S15において、両足交互の昇降動作から同時昇降に突然変化する昇降動作を、訓練者trに実施させることができる。運動訓練システム100は、S16において、両足昇降から片足昇降に突然変化する昇降動作を、訓練者trに実施させることができる。
【0072】
したがって、一定期間同じ歩行訓練(例えば振幅や周波数が同じ両足交互の昇降動作、両足同時の昇降動作、片足昇降動作)を行うことで、脳に同じような刺激が与えられることが予想されるが、運動訓練システム100は、不規則に振幅や周波数が異なる動作を取り入れることで、異なる運動訓練を実施した足の動きを通じて、脳に刺激を与えることができる。このことは、脳計測装置45により計測され、脳分析装置40により分析される脳機能情報を参照することで、確認できる。
【0073】
次に、動作制御装置10によるバイラテラル制御の詳細について説明する。
図7は、バイラテラル制御を説明するための図である。
図7では、バイラテラル制御に係る機能が記載されている。
【0074】
動作制御装置10は、外乱オブザーバ11(11a,11b)、PID制御部12(12a,12b)、バイラテラル制御部13、の各機能を有する。
図7では、右用の構成部には、符号の末尾に「a」を付し、左用の構成部には、符号の末尾に「b」を付している。
【0075】
PID制御部12は、動作制御装置10のメモリから位置参照情報を取得する。位置参照情報は、例えば
図3A,
図3Bに示すような、運動スケジュールに従って定められているスライダ20の位置の指令値やトルク指令値v1を含んでよい。PID制御部12は、PID制御部12は、バイラテラル制御部13により導出されたトルク指令値v2を取得(例えば算出)してよい。バイラテラル制御部13からのトルク指令値v2は、左右のスライダへの負荷バランスが考慮された値でよい。
【0076】
PID制御部12は、位置参照情報からのトルク指令値v1とバイラテラル制御部13からのトルク指令値v2とを基に、例えばトルク指令値v1,v2を加算して、モータ22a,22bに提供されるトルク指令値v3を算出する。
【0077】
なお、右足用のスライダのトルク指令値には、符号の末尾にaを付し、左足用のスライダのトルク指令値には、符号の末尾にbを付している。つまり、図面では、トルク指令値v1a,v1b,v2a,v2b,v3a,v3b、と記載している。
【0078】
外乱オブザーバ11は、PID制御部12からのPID制御の結果を取得してよい。PID制御の結果は、右足用又は左足用のスライダ20を駆動するモータ22へのトルク指令値v3を含んでよい。また、外乱オブザーバ11は、右足用又は左足用のスライダ20にかかる実際の負荷を検出してよい。この場合、外乱オブザーバ11は、トルク換算されたトルク検出値を取得してよい。外乱オブザーバ11は、例えば、角度センサ23により検出されたモータ22の角度を取得し、角度に対応するトルク値(トルク検出値)や負荷を算出してよい。
【0079】
つまり、外乱オブザーバ11bは、右足用のPID制御部12aの結果(例えばトルク指令値v3)を取得してよい。外乱オブザーバ11aは、右足用のスライダ20aにかかる実際の負荷を検出してよい。また、外乱オブザーバ11bは、左足用のPID制御部12bの結果(例えばトルク指令値v3)を取得してよい。外乱オブザーバ11bは、左足用のスライダ20bにかかる実際の負荷を検出してよい。
【0080】
外乱オブザーバ11aは、右足用のPID制御部12aの結果(例えばトルク指令値v3)と実際の負荷(例えばトルク検出値)との差分h_Dis1を算出する。外乱オブザーバ11bは、左足用のPID制御部12bの結果(例えばトルク指令値v3)と実際の負荷(例えばトルク検出値)との差分h_Dis2を算出する。
【0081】
バイラテラル制御部13は、外乱オブザーバ11a,11bから差分h_Dis1,h_Dis2を取得する。バイラテラル制御部13は、差分h_Dis1,h_Dis2と、PID制御に用いられるパラメータK
B(例えば
図5では値「15」)と、を基に、トルク指令値v2を決定する。パラメータK
Bの値は、例えば、訓練者trの運動を管理する管理者が、図示しない操作部を介して入力してもよいし、所定の値が定められており、メモリに保持されていてもよい。パラメータK
Bは、差分h_Dis1と差分h_Dis2との差分に対する倍率を示す。
【0082】
つまり、(h_Dis1-h_Dis2)×KBの値が、トルク指令値v2として、左右のPID制御部12a,12bの少なくとも一方にフィードバックされてよい。この場合、例えば左右のスライダ20(例えば左用)において検出された負荷が小さい方のスライダ20(例えば右用)に対応するPID制御部12(例えば右用のPID制御部12aに、トルク指令値v2が送られてよい。PID制御部12は、フィードバックされたトルク指令値v2を基に、トルク指令値v3を生成する。
【0083】
つまり、動作制御装置10は、例えば、無理な動きによる負荷変動を外乱オブザーバ11で推定し、左右軸(左右のスライダ20a,20b)にかかる負荷を均等化することで、左右のバランスを保持するバイラテラル制御機能を有する。
【0084】
このように、運動訓練システム100は、訓練者trの身体におけるスムーズに動かすことができる可動域と、スムーズに動かすことが困難な可動域と、の動作抵抗を、モータ22に戻ってくる負荷外乱力として推定できる。つまり、訓練者trが左右のスライダ20a,20bの間での体重移動が不十分である場合、体重に基づく負荷が負荷外乱力として表れる。運動訓練システム100は、左右の足にかかる負荷を外乱オブザーバ等で推定し、左右の足にかかる負荷が同等になるように左右のバランスを保持するよう制御(バイラテラル制御)できる。この場合、運動訓練システム100は、スライダ20の動作を制限する等により、訓練者trにとって無理な運動となることを抑制できる。よって、運動訓練システム100は、運動訓練時(例えばリハビリテーション実施時)に、訓練者trが左右のバランスを崩して転倒する可能性を低減できる。
【0085】
次に、動作制御装置10によるハプティクス制御の詳細について説明する。
図8は、ハプティクス制御を説明するための図である。
図8では、ハプティクス制御に係る機能が記載されている。
【0086】
動作制御装置10は、PID制御部12(12a,12b)、ハプティクス制御部14、の各機能を有する。
図8では、右用の構成部には、符号の末尾に「a」を付し、左用の構成部には、符号の末尾に「b」を付している。
【0087】
ハプティクス制御部14は、加速度センサ50(50a,50b)により検出された加速度を取得する。ハプティクス制御部14は、取得された加速度に基づくトルク指令値v4を導出(例えば算出)し、PID制御部12へ送る。この場合、加速度センサ50aに基づくトルク指令値v4aを、右用のPID制御部12aへ送り、加速度センサ50bに基づくトルク指令値v4bを、右用のPID制御部12bへ送ってよい。加速度の大きさとトルク指令値v2との大きさの関係は、予め定められていてよく、メモリに保持され、参照されてよい。
【0088】
PID制御部12は、動作制御装置10のメモリから位置参照情報を取得する。位置参照情報は、例えば
図3A,
図3Bに示すような、運動スケジュールに従って定められているスライダ20の位置の指令値やトルク指令値v1を含んでよい。PID制御部12は、PID制御部12は、ハプティクス制御部14により導出されたトルク指令値v4を取得(例えば算出)してよい。ハプティクス制御部14からのトルク指令値v2は、加速度センサ50に与えられた振動が考慮された値でよい。
【0089】
PID制御部12は、位置参照情報からのトルク指令値v1とハプティクス制御部14からのトルク指令値v4とを基に、例えばトルク指令値v1,v4を加算して、モータ22a,22bに提供されるトルク指令値v5を算出する。
【0090】
なお、右足用のスライダ20aのトルク指令値には、符号の末尾にaを付し、左足用のスライダ20bのトルク指令値には、符号の末尾にbを付している。つまり、図面では、トルク指令値v1a,v1b,v4a,v4b,v5a,v5b、と記載している。
【0091】
したがって、PID制御部12には、位置参照情報に基づくトルク指令値v1と、加速度に基づくトルク指令値v4が入力される。動作制御装置10は、位置参照情報に基づくトルク指令値v1と、加速度に基づくトルク指令値v4と、に基づいて、PID制御し、モータ22へのトルク指令値v5を算出し、モータ22へ送る。モータ22は、トルク指令値v5に従って駆動することで、スライダ20を移動させる。よって、訓練者trは、加速度センサ50に例えば人為的に与えられた振動を、スライダ20の振動として体感できる。
【0092】
つまり、動作制御装置10は、加速度センサ50等で測定された外部信号を、モータ22を駆動する駆動軸に振動トルクとして感覚的に伝達するハプティクス制御機能を有する。
【0093】
このように、運動訓練システム100は、加速度センサ50から取得した加速度を基に、位置参照情報に基づくPID制御とは異なる観点で導入された負荷外乱力(例えば振動による振動トルク)として推定できる。運動訓練システム100は、この負荷外乱力を感覚的に伝える制御(ハプティクス制御)を行うことができる。
【0094】
このように、運動訓練システム100は、バイラテラル制御及びハプティクス制御を実施することで、訓練者trによる無理な運動を抑制でき、バランスの保持性能を向上して訓練者trの転倒を抑制できる。よって、運動訓練システム100は、運動訓練時の安全性を向上できる。
【0095】
また、運動訓練システム100は、バイラテラル制御やハプティクス制御を行うことで、バランス保持機能、外部刺激機能、負荷推定機能を実現できる。これにより、訓練者trは、無理のあるリハビリ訓練を回避できる。
【0096】
次に、脳計測装置45と脳分析装置40の詳細について説明する。
【0097】
図9は、頭部に脳計測装置45の装着部46を装着した訓練者trの一例を示す外観図である。
図10は、送光プローブpr1と受光プローブpr2とを用いた光の伝達の一例を示す図である。
【0098】
脳計測装置45は、装着部46と、送光プローブpr1と、受光プローブpr2と、処理部47と、を備える。装着部46は、訓練者trの頭部に装着される。送光プローブpr1は、装着部46に配置され、訓練者trの頭部に向けて光を送光(照射)する。受光プローブpr2は、訓練者trの頭部から光を受光する。送光プローブpr1と受光プローブpr2とは、1つ以上設けられる。送光プローブpr1から送光される光は、近赤外光でよい。受光プローブpr2で受光される光は、近赤外光でよい。送光プローブpr1及び受光プローブpr2とは、有線(例えば光ファイバ)で接続されてよい。
【0099】
処理部47は、プロセッサがプログラムを実行することで、各種処理を行う。例えば、処理部47は、送光プローブpr1による送光タイミング及び受光プローブpr2による受光タイミングを制御してよい。送光プローブpr1による送光及び受光プローブpr2による受光は、運動訓練期間中において定期的に(例えば常時)行われてよい。処理部47は、通信機能を用いて受光プローブpr2により受光された光を基に、計測結果としてのNIRS信号を取得する。処理部47は、有線又は無線を介して他の装置(例えば脳分析装置40)へ送信してよい。NIRS信号は、酸素化ヘモグロビン(oxyHb)の濃度や濃度変化の情報を含んでよい(例えば
図13E,
図13F参照)。
【0100】
図11は、訓練者trの頭部における送光プローブpr1による送光位置Tp及び受光プローブpr12による受光位置Rpの一例を示す図である。送光位置Tpと受光位置Rpの「p」は、1以上の整数である。つまり、送光位置T1,T2,・・・、受光位置R1,R2,・・・、で示される。
図11では、送光位置Tp及び受光位置Rpともに16個存在する。つまり、送光チャネル及び受光チャネルが16チャネル存在する。
【0101】
図12は、訓練者trにおける頭部の脳機能計測チャネルCHqの一例を示す図である。脳機能計測チャネルCHqの「q」は、1以上の整数である。つまり、脳機能計測チャネルCH1,CH2,・・・で示される。
図12では、脳機能計測チャネルCHqが52個存在する。脳機能計測チャネルChqは、任意の送光位置Tpとその近傍に位置する受光位置Rpとの間の位置での脳機能を計測するためのチャネルである。
【0102】
したがって、脳計測装置45は、送光プローブpr1で送光される送光信号及び受光プローブpr2で受光される受光信号を利用し、複数(例えば52個又はその一部)の脳機能計測チャネルChqでの運動訓練中(例えば昇降動作中)の脳血流酸素濃度(例えば酸素化ヘモグロビンの濃度)を測定(計測)してよい。脳血流酵素濃度の情報は、脳機能情報の一例である。
【0103】
なお、送光チャネル及び受光チャネルの数は16であり、脳機能計測チャネルCHqの数は52である。つまり、1つの送光チャネル(例えばT6)からの光に応じた光が、複数の受光チャネル(例えばR2,R6,R7,R10)で取得されてよい。また、例えば、送光チャネルT6で送光された光に応じて、受光チャネルR6で光が受光された場合、脳機能計測チャネルCH18の情報が得られたこととなる。
【0104】
次に、NIRS信号に基づくデータの具体例について説明する。
【0105】
運動訓練装置5は、動作制御装置10からの動作指令に応じて動作する。この動作は、単純反復動作(repetition)及び非単純反復動作(illusion)を含む。単純反復動作は、周期的な動作の一例であり、非単純反復動作は、周期的な動作とは異なる非周期的な動作の一例である。
【0106】
単純反復動作では、スライダ20a~20dは、単純反復して移動し、周期的に移動する。
図13Aは、単純反復動作時の右足のスライダ20aの位置の指令値の一例を示す図である。
図13Bは、単純反復動作時の左足のスライダ20bの位置の指令値の一例を示す図である。つまり、
図13A及び
図13Bは単純反復動作時の動作指令の一例である。
【0107】
非単純反復動作では、スライダ20a~20dは、非単純反復して移動し、非周期的に移動する。
図13Cは、非単純反復動作時の右足のスライダ20aの位置の指令値の一例を示す図である。
図13Dは、非単純反復動作時の左足のスライダ20bの位置の指令値の一例を示す図である。つまり、
図13A及び
図13Bは非単純反復動作時の動作指令の一例である。
【0108】
図13Eは、運動訓練装置5により単純反復動作を行った場合における、酸素化ヘモグロビン濃度の変化を時系列で示す図である。つまり、
図13Eは、単純反復動作時のNIRS信号の実測値の一例を示す。
【0109】
図13Fは、運動訓練装置5により非単純反復動作を行った場合における、酸素化ヘモグロビン濃度の変化を時系列で示す図である。つまり、
図13Fは、非単純反復動作時のNIRS信号の実測値の一例を示す。
【0110】
なお、
図13E,
図13Fでは、複数の脳機能計測チャネルCHqのうち、右足運動野付近の脳機能を司る頭部の位置に対応する脳機能計測チャネルCHqの脳機能を計測したNIRS信号の値が示されている。
【0111】
脳分析装置40は、運動訓練装置5から動作指令(例えばスライダ20の位置の指令値やトルクの指令値)の情報や動作結果(例えばスライダ20の位置の検出値やトルクの検出値)の情報を取得してよい。よって、脳分析装置40は、運動訓練装置5の動作と、脳計測装置45からのNIRS信号とを、タイミングを同期して観察することで、運動訓練時の脳機能を分析可能である。
【0112】
脳分析装置40は、脳計測装置45から複数(例えば多数)のNIRS信号の実測値を取得可能である。脳分析装置40は、運動訓練装置5の動作(単純反復動作及び非単純反復動作)と、この動作時に取得された複数のNIRS信号の実測値と、の関係について分析する。
【0113】
なお、NIRS信号は、様々な訓練者trにおける様々な測定箇所(送光位置Tp、受光位置Rp、脳機能計測チャネルCHq)で計測される。また、NIRS信号は、例えば酸素化ヘモグロビン濃度を示すが、この信号は個人差があるので、同じ運動訓練を実施した複数の訓練者trについてのNIRS信号の実測値が異なる値となり得る。したがって、脳分析装置40は、運動訓練装置5の動作(単純反復動作及び非単純反復動作)と、この動作時に取得された複数のNIRS信号の実測値と、の関係について一見して関連性を導出することが困難であり得る。
【0114】
脳分析装置40は、機械学習(例えばディープラーニング)の手法を用いて、運動訓練装置5の動作(単純反復動作及び非単純反復動作)と、この動作時に取得された複数のNIRS信号の実測値と、の関係について分析してよい。これにより、脳分析装置40は、一見して関連性の導出が困難な場合でも、運動訓練装置5の動作(単純反復動作及び非単純反復動作)と、この動作時に取得された複数のNIRS信号の実測値と、の関連性を導出し得る。
【0115】
脳分析装置40は、機械学習において、例えばCNN(Convolutional Neural Network)に従ってNIRS信号の実測値における特徴点を抽出してよい。脳分析装置40は、センサ信号解析(例えばNIRS信号の実測値の解析)と機械学習とを基に、訓練者trの運動訓練時の脳機能を診断してよい。
【0116】
次に、以下の第1解析例~第5解析例を用いて、運動訓練装置5の動作(単純反復動作及び非単純反復動作)と、この動作時に取得された複数のNIRS信号の実測値と、の関連性について考察する。
【0117】
(第1解析例)
第1解析例では、以下の内容の運動訓練のデータが得られる。1回の運動訓練の時間長さは、91秒であり、この期間に1784サンプル得られる。脳機能が計測される脳機能計測チャネルCHqの数は52個である。運動訓練は、3回連続して実施される。運動訓練の動作指令として、単純反復動作の指令と非単純反復動作の指令との2種類の指令を含む。訓練者trは5人である。なお、訓練者tr毎にNIRSデータが区別されていない。
【0118】
図14は、脳分析装置40によるNIRSデータの分析時の動作例を示すフローチャートである。
図14の動作例は、第1解析例~第5解析例において同様でよい。
【0119】
まず、脳分析装置40は、NIRS信号を取得し、NIRS信号に基づくデータであるNIRSデータを複数取得する(S21)。ここでは、例えば、1784サンプル×52チャネル×3回連続×2種類の動作指令×5人、分のNIRSデータが入力される。NIRSデータは、NIRS信号の実測値でよい。
【0120】
脳分析装置40は、入力されたNIRSデータの特徴量を抽出する(S22)。脳分析装置40は、自己回帰モデル(Auto Regressive Model)を用いて、特徴量の抽出を行ってよい。自己回帰モデルは、以下の式(1)で定義される。
【0121】
【数1】
なお、Xn:NIRSデータ、a
0:定数項、ai:モデルのパラメータ、ε
t:ホワイトノイズ、である。Xnは、例えば、時系列に並ぶ91秒間に含まれる1784個のサンプル値(例えば
図13E、
図13F参照)を数式化したものである。脳分析装置40は、N=10として、NIRSデータを10次元でモデル化し、重み(a
0,ai)を同定(推定)してよい。式(1)で定義される自己回帰モデルは、52(脳機能計測チャネル数)×2(動作指令の数)=104個、生成されてよい。
【0122】
脳分析装置40は、自己回帰モデルの式(1)に各NIRSデータを当てはめ、AutoEncoderにより特徴量の次元削減(dimension reduction)を行ってよい(S23)。脳分析装置40は、AutoEncoderにより、例えば、10次元のモデルを2次元のモデルとするように次元削減してよい。2次元のモデルは、第1主成分(first principal ingredient)及び第2主成分(second principal ingredient)を含んでよい。脳分析装置40は、2次元のモデルとすることで、扱うデータの情報量を小さくし、可視化し易くできる。また、次元削減されたデータを用いて機械学習を行うことで、学習精度が向上する傾向にある。第1主成分及び第2主成分は、主成分分析の結果としての、一番目に影響が大きい成分及び二番目に影響が大きい成分に相当してよい。なお、S23の処理は省略されてもよい。
【0123】
図15は、第1解析例における、運動訓練装置5の動作別の、特徴量の次元削減後の第1主成分及び第2主成分の値の一例を示す図である。なお、第1主成分及び第2主成分は、NIRSデータの特徴量における複数の成分において、NIRSデータ全体に対する影響が1番目及び2番目に大きい成分である。
【0124】
脳分析装置40は、次元削減された各NIRSデータの特徴量(例えば第1主成分及び第2主成分)を、運動訓練装置5の動作(単純反復動作及び非単純反復動作)別に分類する(S24)。
【0125】
脳分析装置40は、one-class SVM(Support Vector Machine)によって分類モデルを生成し、分類モデルに従って上記分類を行ってよい。One-class SVMは、教師無し学習の一手法である。脳分析装置40は、One-class SVMにおいて、単純反復動作時のNIRSデータ及び非単純反復動作時のNIRSデータのいずれか一方のデータを正常値とし、単純反復動作時のNIRSデータ及び非単純反復動作時のNIRSデータのいずれか他方のデータを異常値として、上記分類を行ってよい。
【0126】
ここでは主に、単純反復動作時のNIRSデータを正常値とし、非単純反復動作時のNIRSデータのいずれか他方のデータを異常値とすることを例示する。なお、理想的な分類でない場合には、単純反復動作時のNIRSデータが異常値に分類され、非単純反復動作時のNIRSデータが正常値に分類され得る。
【0127】
脳分析装置40は、one-class SVMに従って、第1主成分及び第2主成分の値によって各NIRSデータをマッピングし、第1主成分及び第2主成分の値の場合における分類スコアを算出する。分類スコアを、単にスコアとも称する。
【0128】
図16は、第1解析例における、第1主成分及び第2の主成分の値と分類スコアとの関係の一例を示す図である。例えば、単純反復動作時の5個のNIRSデータを基準に、単純反復動作以外のデータ(つまり非単純反復動作のNIRSデータ)が判別される。分類スコアが大きい程、異常値を示すデータであり、つまり非単純反復動作のNIRSデータである。したがって、脳分析装置40は、分類スコアが閾値th以上であるか未満であるかによって、正常値(単純反復動作のNIRSデータ)であるか異常値(非単純反復動作のNIRSデータ)であるかを判別してよい。閾値thは、固定値でも可変値でもよい。脳分析装置40が、閾値thを任意の値に設定してよい。これにより、例えば、訓練者trの訓練を管理する管理者は、脳分析装置40の操作部等を介して、閾値thがNIRSデータを所望な状態に分類可能な値に設定できる。
【0129】
具体的には、脳分析装置40は、例えばSurf関数を基に、分類スコアを算出してよい。分類スコア(Score)は、例えば式(2)に従って算出されてよい。
【数2】
なお、式(2)中の「γρ(f(xi))」は、損失係数であるが、損失係数は式(3)で表されてよい。
【数3】
【0130】
式(2)の分類スコアの算出式を用いて、予想外のデータ(非単純反復動作時のNIRSデータ)のクラスタがまとまった範囲となるように、つまり非単純反復動作時のNIRSデータについて分類スコアが所定範囲に収まるように、式(2),式(3)におけるρの値が調整してよい。このρが上記の閾値thに相当してよい。よって、式(2)で算出される分類スコアの値が大きく、且つ、式(3)で示された損失関数の値が小さくなるように、ρが調整されてよい。
【0131】
ρの調整精度に、分類スコアによる分類精度が影響され得る。例えば、脳分析装置40は、
図16において、分類スコアの閾値th=5とすることで、分類スコア(Score)が値5以上の場合に異常値(非単純反復動作時のNIRSデータ)と判定し、分類スコア(Score)が値5未満の場合に正常値(単純反復動作時のNIRSデータ)と判定してよい。なお、この場合でも、分類スコアが値5以上の範囲に正常値が入り込んだり、分類スコアが値5未満の範囲に異常値が入り込んだりすることがあり得る。つまり、分類不正解となることがあり得る。
【0132】
また、脳分析装置40は、One-class SVMに従った分類の結果を蓄積して分類モデル(分類アルゴリズム)を生成し、機械学習させてよい。これにより、脳分析装置40は、機械学習後のタイミングで行われる運動訓練装置5の動作別でのNIRSデータの特徴量の分類精度を向上できる。
【0133】
図17は、第1解析例における、NIRSデータの分類結果の一例を示す図である。
図17では、単純反復動作時の5個のNIRSデータと、非単純反復動作時の260個のNIRSデータとの分類結果を示している。ここでは、単純反復動作時のNIRSデータからランダムに5個のサンプルデータが抽出され、抽出されたサンプルデータを基に、分類モデルが生成されてよい。脳分析装置40は、生成された分類モデルに従って、刺激無しのデータとしての単純反復動作(repetition)結果のNIRSデータと、刺激ありのデータとしての非単純反復動作(illusion)結果のNIRSデータと、に分類されている。この分類の手法は、第1解析例~第5解析例において同様である。
【0134】
図17に示すように、単純反復動作時の5個のNIRSデータ(実データ)のうち、4個のNIRSデータが単純反復動作時のデータに分類され、1個のNIRSデータが非単純反復動作時のデータに分類された。つまり、単純反復動作時のNIRSデータの分類正解率は、80%である。また、非単純反復動作時の260個のNIRSデータ(実データ)のうち、155個のNIRSデータが単純反復動作時のデータに分類され、103個のNIRSデータが非単純反復動作時のデータに分類された。つまり、非単純反復動作時のNIRSデータの分類正解率は、40%である。
【0135】
脳分析装置40は、導出されたNIRSデータの分類結果を提示する。この場合、脳分析装置40は、例えば
図17に示す情報を、表示装置30にNIRSデータの分類結果として表示させてよい。
【0136】
(第2解析例)
第2解析例では、以下の内容の運動訓練のデータが得られる。1回の運動訓練の時間長さは、91秒であり、この期間に1784サンプル得られる。脳機能が計測される脳機能計測チャネルCHqの数は52個である。運動訓練は、3回連続して実施される。運動訓練の動作指令として、単純反復動作の指令と非単純反復動作の指令との2種類の指令を含む。訓練者trは5人である。なお、訓練者tr毎にNIRSデータが区別されており、訓練者trの個人単位で上記関連性が解析されている。
【0137】
第2解析例においても、
図14と同様の手法で、NIRSデータが分析されてよい。なお、S12で取得されるNIRSデータは、訓練者tr毎に区別され、訓練者毎に、例えば、1784サンプル×52チャネル×3回連続×2種類の動作指令、分のNIRSデータが入力される。
【0138】
図18A~
図18Eは、第2解析例における、訓練者tr毎(訓練者tr1~tr5)のNIRSデータの分類結果の一例を示す図である。
図18Aは、訓練者tr1についての分類結果を示す。
図18Bは、訓練者tr2についての分類結果を示す。
図18Cは、訓練者tr3についての分類結果を示す。
図18Dは、訓練者tr4についての分類結果を示す。
図18Eは、訓練者tr5についての分類結果を示す。
【0139】
訓練者tr1については、
図18Aに示すように、単純反復動作時の5個のNIRSデータ(実データ)のうち、4個のNIRSデータが単純反復動作時のデータに分類され、1個のNIRSデータが非単純反復動作時のデータに分類された。つまり、単純反復動作時のNIRSデータの分類正解率は、80%である。また、非単純反復動作時の52個のNIRSデータ(実データ)のうち、32個のNIRSデータが単純反復動作時のデータに分類され、20個のNIRSデータが非単純反復動作時のデータに分類された。つまり、非単純反復動作時のNIRSデータの分類正解率は、38%である。
【0140】
訓練者tr2については、
図18Bに示すように、単純反復動作時の5個のNIRSデータ(実データ)のうち、4個のNIRSデータが単純反復動作時のデータに分類され、1個のNIRSデータが非単純反復動作時のデータに分類された。つまり、単純反復動作時のNIRSデータの分類正解率は、80%である。また、非単純反復動作時の52個のNIRSデータ(実データ)のうち、29個のNIRSデータが単純反復動作時のデータに分類され、23個のNIRSデータが非単純反復動作時のデータに分類された。つまり、非単純反復動作時のNIRSデータの分類正解率は、44%である。
【0141】
訓練者tr3については、
図18Cに示すように、単純反復動作時の5個のNIRSデータ(実データ)のうち、4個のNIRSデータが単純反復動作時のデータに分類され、1個のNIRSデータが非単純反復動作時のデータに分類された。つまり、単純反復動作時のNIRSデータの分類正解率は、80%である。また、非単純反復動作時の52個のNIRSデータ(実データ)のうち、31個のNIRSデータが単純反復動作時のデータに分類され、21個のNIRSデータが非単純反復動作時のデータに分類された。つまり、非単純反復動作時のNIRSデータの分類正解率は、40%である。
【0142】
訓練者tr4については、
図18Dに示すように、単純反復動作時の5個のNIRSデータ(実データ)のうち、4個のNIRSデータが単純反復動作時のデータに分類され、1個のNIRSデータが非単純反復動作時のデータに分類された。つまり、単純反復動作時のNIRSデータの分類正解率は、80%である。また、非単純反復動作時の52個のNIRSデータ(実データ)のうち、31個のNIRSデータが単純反復動作時のデータに分類され、21個のNIRSデータが非単純反復動作時のデータに分類された。つまり、非単純反復動作時のNIRSデータの分類正解率は、40%である。
【0143】
訓練者tr5については、
図18Eに示すように、単純反復動作時の5個のNIRSデータ(実データ)のうち、4個のNIRSデータが単純反復動作時のデータに分類され、1個のNIRSデータが非単純反復動作時のデータに分類された。つまり、単純反復動作時のNIRSデータの分類正解率は、80%である。また、非単純反復動作時の52個のNIRSデータ(実データ)のうち、30個のNIRSデータが単純反復動作時のデータに分類され、22個のNIRSデータが非単純反復動作時のデータに分類された。つまり、非単純反復動作時のNIRSデータの分類正解率は、42%である。
【0144】
このように、第2解析例では、非単純反復動作時のNIRSデータの分類正解率は、38%~44%の範囲に収まっており、分類結果に個人差はほとんど無いことが理解できる。また、第1解析例の訓練者tr毎にデータを区別しない場合には、非単純反復動作時のNIRSデータの分類正解率は40%であったので、訓練者tr毎にデータを区別してもしなくても、分類結果にほとんど差が無いことが理解できる。
【0145】
(第3解析例)
第3解析例では、以下の内容の運動訓練のデータが得られる。解析に用いるNIRS信号の実測値の時間的な範囲の制限が考慮される。1回の運動訓練の時間長さは60秒であり、この期間に1177サンプル得られる。脳機能が計測される脳機能計測チャネルCHqの数は52個である。運動訓練は、3回連続して実施される。運動訓練の動作指令として、単純反復動作の指令と非単純反復動作の指令との2種類の指令を含む。訓練者trは5人である。なお、訓練者tr毎にNIRSデータが区別されていない。
【0146】
図19Aは、運動訓練装置5により単純反復動作を行った場合における、運動訓練装置5の解析に用いる動作範囲の制限の一例を示す図である。
図19Bは、運動訓練装置5により非単純反復動作を行った場合における、運動訓練装置5の解析に用いる動作範囲の制限の一例を示す図である。
【0147】
図19A及び
図19Bでは、時刻20秒(s)~80秒(s)の間(期間P1)の動作に伴う運動訓練時のNIRS信号が、解析に用いられる。この時間範囲は、単純反復動作(repetitive)と非単純反復動作(illusion)とで、スライダ20の移動周期やスライダ20の移動周期における移動距離(移動振幅)が異なる範囲に相当する。このように、第3解析例では、解析に用いるNIRS信号の実測値の時間的な範囲の制限が考慮される。なお、後述する第5解析例でも同様である。
【0148】
第3解析例においても、
図14と同様の手法で、NIRSデータが分析されてよい。なお、S12で取得されるNIRSデータは、時間制限が加味され、例えば、1177サンプル×52チャネル×3回連続×2種類の動作指令×5人、分のNIRSデータが入力される。
【0149】
図20は、第3解析例における、運動訓練装置5の動作別の、特徴量の次元削減後の第1主成分及び第2主成分の値の一例を示す図である。第3解析例では、訓練者tr5人分のNIRSデータを利用し、脳刺激に影響があると思われる時間範囲を限定して、NIRSデータが分析される。
【0150】
図21は、第3解析例における、第1主成分及び第2の主成分の値と分類スコアとの関係の一例を示す図である。
図22は、第3解析例における、NIRSデータの分類結果の一例を示す図である。
【0151】
第3解析例では、
図22に示すように、単純反復動作時の5個のNIRSデータ(実データ)のうち、4個のNIRSデータが単純反復動作時のデータに分類され、1個のNIRSデータが非単純反復動作時のデータに分類された。つまり、単純反復動作時のNIRSデータの分類正解率は、80%である。また、非単純反復動作時の260個のNIRSデータ(実データ)のうち、146個のNIRSデータが単純反復動作時のデータに分類され、112個のNIRSデータが非単純反復動作時のデータに分類された。つまり、非単純反復動作時のNIRSデータの分類正解率は、43%である。
【0152】
(第4解析例)
第4解析例では、以下の内容の運動訓練のデータが得られる。1回の運動訓練の時間長さは、91秒であり、この期間に1784サンプル得られる。脳機能が計測される脳機能計測チャネルCHqの数は、12個であり、脳機能計測チャネル数(頭部における測定点の数)が制限されている。運動訓練は、3回連続して実施される。運動訓練の動作指令として、単純反復動作の指令と非単純反復動作の指令との2種類の指令を含む。訓練者trは5人である。なお、訓練者tr毎にNIRSデータが区別されていない。
【0153】
第4解析例では、複数の脳機能計測チャネルのうち、運動に関係が深いと推測される脳機能計測チャネルが12個選出され、選出された脳機能計測チャネルで計測されたNIRSデータが解析される。
【0154】
図23は、選出された脳機能計測チャネルの設定例を示す図である。
図23では、1次体性感覚野及び高次運動野の脳機能計測チャネルが示されている。1次体性感覚野には、感覚運動野(SMC:sensorimotor cortex)が含まれる。高次運動野には、運動前野(PMC:Premotor cortex)、補足運動野(SMA:supplementary motor area)、及び前補足運動野(preSMA)が含まれる。SMCの脳機能計測チャネルは、脳機能計測チャネルCH33,CH34である。PMCの脳機能計測チャネルは、脳機能計測チャネルCH10,CH17,CH25,CH12,CH20,CH27である。SMAの脳機能計測チャネルは、脳機能計測チャネルCH18,CH19である。preSMAの脳機能計測チャネルは、脳機能計測チャネルCH3、CH18,CH4,CH19である。なお、選出されたチャネルは一例であり、他の脳機能計測チャネルが選出されてもよい。
【0155】
第4解析例においても、
図14と同様の手法で、NIRSデータが分析されてよい。なお、S12で取得されるNIRSデータは、測定点(チャネル)の制限が加味され、例えば、1784サンプル×12チャネル×3回連続×2種類の動作指令×5人、分のNIRSデータが入力される。
【0156】
図24は、第4解析例における、運動訓練装置5の動作別の、特徴量の次元削減後の第1主成分及び第2主成分の値の一例を示す図である。
図25は、第4解析例における、第1主成分及び第2の主成分の値と分類スコアとの関係の一例を示す図である。
図26は、第4解析例における、NIRSデータの分類結果の一例を示す図である。
【0157】
第4解析例では、
図26に示すように、単純反復動作時の5個のNIRSデータ(実データ)のうち、4個のNIRSデータが単純反復動作時のデータに分類され、1個のNIRSデータが非単純反復動作時のデータに分類された。つまり、単純反復動作時のNIRSデータの分類正解率は、80%である。また、非単純反復動作時の60個のNIRSデータ(実データ)のうち、8個のNIRSデータが単純反復動作時のデータに分類され、52個のNIRSデータが非単純反復動作時のデータに分類された。つまり、非単純反復動作時のNIRSデータの分類正解率は、87%である。
【0158】
このように、第4解析例では、測定点(つまり脳機能計測チャネル)の選定が、NIRSデータの分類精度に大きな影響を与えることが理解できる。また、運動に関係が深いと推測される脳部分に対して、運動訓練を介して刺激を与えることに成功していると言える。また、非単純反復動作の刺激と単純反復動作の刺激とが分離して認識されていると言える。
【0159】
(第5解析例)
第5解析例では、以下の内容の運動訓練のデータが得られる。解析に用いるNIRS信号の実測値の時間的な範囲の制限が考慮される。1回の運動訓練の時間長さは、60秒であり、この期間に1177サンプル得られる。脳機能が計測される脳機能計測チャネルCHqの数は、12個であり、脳機能計測チャネル数(頭部における測定点の数)が制限されている。運動訓練は、3回連続して実施される。運動訓練の動作指令として、単純反復動作の指令と非単純反復動作の指令との2種類の指令を含む。訓練者trは5人である。つまり、第5解析例では、第3解析例の時間制限と第4解析例の測定点(チャネル)の制限との双方が加味されている。なお、訓練者tr毎にNIRSデータが区別されていない。
【0160】
第5解析例においても、
図14と同様の手法で、NIRSデータが分析されてよい。なお、S12で取得されるNIRSデータは、時間制限及び測定点の制限が加味され、例えば、1177サンプル×12チャネル×3回連続×2種類の動作指令×5人、分のNIRSデータが入力される。
【0161】
図27は、第5解析例における、運動訓練装置5の動作別の、特徴量の次元削減後の第1主成分及び第2主成分の値の一例を示す図である。
図28は、第5解析例における、第1主成分及び第2の主成分の値と分類スコアとの関係の一例を示す図である。
図29は、第5解析例における、NIRSデータの分類結果の一例を示す図である。
【0162】
第5解析例では、
図29に示すように、単純反復動作時の5個のNIRSデータ(実データ)のうち、4個のNIRSデータが単純反復動作時のデータに分類され、1個のNIRSデータが非単純反復動作時のデータに分類された。つまり、単純反復動作時のNIRSデータの分類正解率は、80%である。また、非単純反復動作時の60個のNIRSデータ(実データ)のうち、5個のNIRSデータが単純反復動作時のデータに分類され、55個のNIRSデータが非単純反復動作時のデータに分類された。つまり、非単純反復動作時のNIRSデータの分類正解率は、92%である。
【0163】
このように、第5解析例では、測定点(つまり脳機能計測チャネル)を選定するとともに、時間範囲を限定することがが、NIRSデータの分類精度に更に大きな影響を与えることが理解できる。
【0164】
したがって、単純反復動作時のNIRSデータをサンプルとして分類モデルを生成し、分類モデルに従って単純反復動作時のNIRSデータと非単純反復動作時のNIRSデータとを分類した場合、第1解析例における想定(訓練者trを区別せず、時間範囲の制限を考慮せず、測定点の制限を考慮しない想定)を基準とすると、以下の事項が言える。
【0165】
つまり、第2解析例に示したように、分類モデルに従ったNIRSデータの分類では、訓練者tr毎に分類結果が大きく異なるものではなく、訓練者trが誰であるかは、分類結果に影響を与えないことが理解できる。
【0166】
また、第3解析例に示したように、分類モデルに従ったNIRSデータの分類では、NIRSデータが取得される時間範囲が制限されたか否かは、分類結果に大きな影響を与えないことが理解できる。
【0167】
また、第4解析例に示したように、分類モデルに従ったNIRSデータの分類では、NIRSデータが取得される測定点が制限されたか否かは、分類結果に大きな影響を与えることが理解できる。
【0168】
さらに、第5解析例に示したように、分類モデルに従ったNIRSデータの分類では、NIRSデータが取得される測定点とともに時間範囲が制限されたか否かは、分類結果に一層大きな影響を与えることが理解できる。
【0169】
このように、運動訓練システム100は、各NIRSデータを分析することで、訓練者trの予想と異なる運動訓練が脳賦活(刺激)に影響し得ることを、確認することができた。
【0170】
なお、予想通りの運動による(単純反復動作時の)NIRSデータについて特徴量を検出して、予想外の運動による(非単純反復動作時の)NIRSデータを分類することを例示したが、予想外の運動によるNIRSデータについて特徴量を検出して、予想通りの運動によるNIRSデータを分類してもよい。
【0171】
分類モデルを生成し、機械学習する際に、5個のサンプルデータを用いることを例示したが、このデータ数は一例であり、他の数でよい。例えば、訓練者trを多数、サンプルデータを多数、として分類結果を蓄積し、分類モデルを多数のサンプルで機械学習させてよい。
【0172】
このように、運動訓練システム100は、運動訓練装置5などのロボット制御技術を脳リハビリに応用して、運動訓練中の訓練者trの脳機能を分析できる。また、脳計測装置45によって、脳血流酸素濃度を測定できる。また、脳計測装置45は、機械学習技術によって訓練者trの脳機能を分類したり、解析したり、評価したりできる。
【0173】
また、運動訓練システム100は、単純反復動作と非単純反復動作とで、計測された脳血流のパターンが異なることを認識できる。よって、運動訓練システム100は、単純反復動作による定常的な脳刺激にとともに、非単純反復動作による非定常的な脳刺激を訓練者trの脳に与えることができる。訓練者trは、非定常的な脳刺激を慣れない刺激として受け取れ、脳刺激の差異を認識できる。よって、仮に訓練者trの体の一部(例えば足、手)を動かすことが困難でも、運動訓練装置5のスライダ20を用いて訓練者trの体部を強制的に動かし、脳刺激を与えることができる。つまり、訓練者trの体の一部(例えば足、手)を動かすことが困難でも、訓練者trは、運動しているような錯覚を脳に発生させることができる。
【0174】
このように、運動訓練システム100は、訓練者trの体のいずれかの部位を様々に動かすことで脳に対して異なる刺激を与え、訓練者trの運動能力の向上を期待できる。
【0175】
以上、図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0176】
上記実施形態は、宇宙空間における訓練者trの運動訓練にも適用可能である。宇宙空間に滞在すると、宇宙空間での脳の刺激に脳が慣れ、地上において本来訓練者trが持つべきバランス感覚がくずれ、訓練者trが健康を害する可能性がある。運動訓練システム100は、宇宙空間に所在する訓練者trの運動訓練にも適用でき、地上に帰還するための運動訓練に利用され得る。
【0177】
上記実施形態では、脳分析装置40が、運動訓練装置5の動作(単純反復動作及び非単純反復動作)と、この動作時に取得された複数のNIRS信号の実測値との関係について分析や分類することを例示したが、実測値以外の値(例えば解析値)が用いられてもよい。例えば、脳分析装置40は、脳計測装置45からNIRS信号の実測値を計測結果として取得し、NIRS信号の実測値を基に、様々な解析値を生成する。解析値には、例えば、NIRS信号の実測値のばらつきを示すヒストグラム、NIRS信号の実測値の周波数解析により得られる固有値、が含まれてよい。固有値は、酸素化ヘモグロビン濃度/周波数で示されてよい。脳分析装置40は、運動訓練装置5の動作(単純反復動作及び非単純反復動作)と、この動作時の解析値との関係について分析や分類を行ってもよい。
【0178】
上記実施形態では、脳計測装置45が、脳の血流に関する脳血流情報の一例として酸素化ヘモグロビン濃度を計測することを例示したが、脳血流情報以外の脳の機能に関する脳機能情報が計測されてもよい。脳計測装置45は、例えば、訓練者trの運動訓練時の脳波を計測してもよい。また、脳計測装置45の代わりに、脳機能情報を計測するための訓練者trの生体信号を計測する計測装置が設けられてもよい。
【0179】
例えば、計測装置は、心電計や筋電計でよい。心電計は、訓練者trの運動中や非運動中における心電図を計測し、心電図情報を得る。心電計は、心電図情報を脳分析装置40へ送る。脳分析装置40は、運動訓練装置5の動作(単純反復動作及び非単純反復動作)と、この動作時の心電図情報との関係について分析や分類を行ってもよい。筋電計は、訓練者trの運動中や非運動中における筋電図を計測し、筋電図情報を得る。筋電計は、筋電図情報を脳分析装置40へ送る。脳分析装置40は、運動訓練装置5の動作(単純反復動作及び非単純反復動作)と、この動作時の筋電図情報との関係について分析や分類を行ってもよい。
【0180】
上記実施形態では、加速度センサ50を用いて人為的に振動を加え、振動トルクにより、動作制御装置10がスライダ20の移動を制御することを例示したが、加速度センサ50以外の外部装置かあらの信号に応じて、動作制御装置10がスライダ20の移動を制御してもよい。例えば、動作制御装置10が心電図と連動して、心臓の拍動に同期してトルク指令を行い、スライダ20の移動を制御してもよい。
【0181】
[運動訓練システムの作用効果等]
以上のように、運動訓練システム100は、訓練者trに対して運動の支援及び分析を行う。運動訓練システム100は、訓練者trの人体の一部が載置されるスライダ20の移動を制御する動作制御装置10(制御装置の一例)と、スライダ20を用いた訓練者trの訓練期間における訓練者54の脳機能に関する脳機能情報を取得し、脳機能情報を分析する脳分析装置40(分析装置の一例)と、を備える。動作制御装置10は、スライダ20に対して、訓練期間における単純反復動作期間(第1の期間の一例)に、周期的な移動を行うよう指示し、訓練期間における非単純反復動作期間(第2の期間の一例)に、周期的な移動とは異なる非周期的な移動を行うよう指示する。脳分析装置40は、脳機能情報を、単純反復動作期間における訓練者trの脳機能に関する第1の脳機能情報、又は、非単純反復動作期間における訓練者trの脳機能に関する第2の脳機能情報、に分類する。
【0182】
これにより、運動訓練システム100は、脳機能情報を周期的な移動期間の脳機能情報か非周期的な移動期間の脳機能情報かに分類できる。つまり、周期的な運動訓練と非周期的な運動訓練とによって、訓練者の脳血流のパターンを変化させることができた。よって、周期的な運動訓練では脳が慣れ、脳への刺激が鈍化するが、非周期的な運動訓練を取り入れることで、脳への刺激となり得ることが理解できる。また、運動訓練した人体の一部(足、手、等)から、非侵襲的に脳に刺激を与えられることができる。そのため、非侵襲で脳へ刺激を与えることができ、安全性を向上できる。
【0183】
スライダ20は、所定方向に沿って反復移動可能でよい。周期的な移動は、前記所定方向に沿った周期的な反復移動でよい。非周期的な移動は、前記所定方向に沿った非周期的な反復移動でよい。
【0184】
これにより、運動訓練システム100は、訓練者trの運動による体の移動が往復運動となるので、体を動かす範囲を小さくでき、安全性に配慮できる。
【0185】
周期的な移動において、スライダ20の移動周期及びスライダ20の1回の移動周期における移動距離が不変でよい。非周期的な移動において、スライダ20の移動周期及びスライダ20の1回の移動周期における移動距離のうち少なくとも一方が変化してよい。
【0186】
これにより、運動訓練システム100は、スライダ20の移動周期及びスライダ20の1回の移動周期における移動距離が一定であることによる脳への刺激を訓練者trに与えることができる。また、運動訓練システム100は、スライダ20の移動周期及びスライダ20の1回の移動周期における移動距離が不定であることによる脳への刺激を訓練者trに与えることができる。
【0187】
スライダ20は、訓練者trの右足(第1の足の一例)が載置される右足のスライダ20a(第1のスライダn一例)と、訓練者trの左足(第2の足の一例)が載置される左足のスライダ20b(第2のスライダの一例)と、を含んでよい。
【0188】
これにより、運動訓練システム100は、第1のスライダと第2のスライダを用いて歩行訓練できる。また、訓練者54の体重を支える人体の部位の運動を訓練することで、脳の刺激量が多くなり、脳機能情報に出やすい、と期待できる。
【0189】
動作制御装置10は、右足のスライダ20aにかかる第1の負荷値と、左足のスライダ20bにかかる第2の負荷値と、を取得してよい。動作制御装置10は、第1の負荷値と第2の負荷値とを基に、第1の負荷値と第2の負荷値との差分が小さくなるように、右足のスライダ20aに駆動力を供給するモータ22a(第1のモータの一例)へのトルク指令値を決定し、左足のスライダ20bに駆動力を供給するモータ22b(第2のモータの一例)へのトルク指令値を決定してよい。
【0190】
これにより、運動訓練システム100は、左足のスライダ20のバランスを保つことできる。よって、訓練者trは、例えば左右いずれかの足の運動能力が不十分であり、体重移動を十分に行うことが困難な場合でも、左右のバランスを崩して転倒する可能性を低減できる。
【0191】
運動訓練システム100は、加速度を検出する加速度センサ50、を更に備えてよい。動作制御装置10は、加速度センサ50により検出された加速度を取得し、加速度に基づいて、スライダ20に駆動力を供給するモータ22へのトルク指令値を決定してよい。
【0192】
これにより、加速度センサ50に加速度が与えられることで、例えば加速度センサ50が振動するように外力を与えられることで、運動訓練システム100は、加速度センサ50の検出に基づくトルク指令をモータ22に供給し、スライダ20を移動させることができる。よって、運動訓練システム100は、加速度センサ50を用いてスライダ20上の人体の一部に外乱刺激を与えることができ、人体の一部を介して脳に刺激を与えることができる。
【0193】
脳分析装置40は、脳機能情報における複数の特徴量を抽出してよい。脳分析装置40は、複数の特徴量に基づいて、脳機能情報のスコアを算出してよい。脳分析装置40は、スコアに基づいて、脳機能情報を分類してよい。
【0194】
これにより、運動訓練システム100は、脳機能情報を例えば主成分分析を用いて特徴量を抽出し、特徴量に応じた脳機能情報の分類を行うことができる。
【0195】
脳分析装置40は、脳機能情報を分類するための分類モデルを、複数の特徴量を用いて機械学習させてよい。脳分析装置40は、スコアに基づいて、機械学習された前記分類モデルに従って前記複数の脳機能情報を分類してよい。
【0196】
これにより、運動訓練システム100は、例えば多数の訓練者trの脳機能情報の特徴量を蓄積して分類モデルを機械学習させることで、分類モデルによる分類精度を向上できる。よって、運動訓練システム100は、機械学習された分類モデルに従うことで、脳機能情報の分類精度を向上できる。
【0197】
また、運動訓練システム100は、脳機能情報を計測する脳計測装置45(計測装置の一例、を更に備えてよい。脳計測装置45は、訓練者trの頭部における任意の位置に第1の光を送光してよい。脳計測装置45は、訓練者trの頭部における任意の位置からの、第1の光に応じた第2の光を受光してよい。脳計測装置45は、第2の光の光量に基づいて、訓練者trの脳における血流に関する脳血流情報を計測してよい。脳計測装置45は、計測された脳血流情報を脳分析装置40へ伝達してよい。
【0198】
これにより、運動訓練システム100は、例えば近赤外分光法を用いて計測された酸素化ヘモグロビン(oxyHb)で示された脳血流情報を取得できる。
【0199】
脳計測装置45は、単純反復動作期間に含まれ、スライダ20の移動周期及びスライダ20の1回の移動周期における移動距離が一定となる期間P1(第3の期間の一例)において、第1の光を送光し、第2の光を受光してよい。脳計測装置45は、非単純反復動作期間における期間P1において、第1の光を送光し、第2の光を受光してよい。
【0200】
これにより、脳計測装置45は、例えば、動作制御装置10により制御される運動訓練と同期して動作することで、スライダ20の周期的な移動と非周期的な移動との差が最もよく表れている期間P1における脳機能情報を計測できる。脳分析装置40は、この脳機能情報を取得して分類することで、分類精度を向上できる。
【0201】
脳計測装置45は、訓練者trの頭部における1次体性感覚野及び高次運動野の位置に第1の光を送光してよい。脳計測装置45は、訓練者54の頭部における1次体性感覚野及び高次運動野の位置から、第1の光に応じた第2の光を受光してよい。
【0202】
これにより、例えば、脳計測装置45が運動に関連性の高い測定点を選択して脳機能情報を計測することで、運動訓練に対応して脳機能情報が変化することが期待できる。
【0203】
運動訓練システム100は、動作制御装置10によるスライダ20への移動の指示に関する情報を表示する表示装置30、を更に備えてよい。
【0204】
これにより、運動訓練システム100は、訓練者trがスライダ20の動きを予測でき、安全性を向上できる。具体的には、訓練者trは、表示装置30に表示された情報を確認することで、周期的又は非周期的に変化するスライダ20の位置指令やトルク指令値などを確認できる。また、表示装置30がバランスの表示機能等を表示すると、訓練者trは、ゲーム感覚で運動訓練でき、楽しみながらリハビリができる。また、スライダ20への移動の指示に関する情報は、表示装置30以外の提示装置(例えばスピーカや振動)によって訓練者trに知らされてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0205】
本開示は、訓練者の体のいずれかの部位を様々に動かすことで脳に対して異なる刺激を与え、運動能力の向上を期待できる運動訓練システム、制御方法、及びプログラム等に有用である。
【符号の説明】
【0206】
100 運動訓練システム
5 運動訓練装置
10 動作制御装置
11,11a,11b 外乱オブザーバ
12,12a,12b PID制御部
13 バイラテラル制御部
14 ハプティクス制御部
15,15a,15c,15c,15d サーボアンプ
20,20a,20b,20c,20d スライダ
22,22a,22b,22c,22d モータ
24,24a,24b ボールねじ
25 動作制御生成装置
26 ガイド部材
27,27a,27b スライダ機構
28,28a,28b スライダ機構
30 表示装置
40 脳分析装置
45 脳計測装置
46 装着部
47 処理部
50,50a,50b 加速度センサ
pr1 送光プローブ
pr2 受光プローブ