(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】基油拡散防止剤及び基油拡散防止剤として用いる重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C10M 147/04 20060101AFI20220516BHJP
C10M 153/02 20060101ALI20220516BHJP
C10N 20/04 20060101ALN20220516BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20220516BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20220516BHJP
C10N 50/10 20060101ALN20220516BHJP
【FI】
C10M147/04
C10M153/02
C10N20:04
C10N30:00 Z
C10N40:02
C10N50:10
(21)【出願番号】P 2018187863
(22)【出願日】2018-10-03
【審査請求日】2021-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】503121505
【氏名又は名称】株式会社フロロテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100089152
【氏名又は名称】奥村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】神保 雅子
(72)【発明者】
【氏名】服部 雅高
(72)【発明者】
【氏名】小原 弘明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆彦
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-194006(JP,A)
【文献】特開平6-299182(JP,A)
【文献】特開2014-231547(JP,A)
【文献】特開昭63-57693(JP,A)
【文献】特開昭57-47373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M,C10N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化1を構成単位として含む重合体であって、その末端の少なくとも一方に、水酸基、カルボキシル基及びリン酸基よりなる群から選ばれた基が結合してなる重合体を含むことを特徴とする基油拡散防止剤。
【化1】
(化1中、R
1は水素原子又はメチル基であり、R
2はメチレン基又はエチレン基であり、R
fは炭素数1~10のフルオロアルキル基である。)
【請求項2】
R
fがC
6F
13である請求項1記載の基油拡散防止剤。
【請求項3】
R
1が水素原子である請求項1又は2記載の基油拡散防止剤。
【請求項4】
重合体中に、化2を構成単位として含んでなる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基油拡散防止剤。
【化2】
(化2中、R
3は水素原子又はメチル基であり、Lはフッ素原子を含まない有機基である。)
【請求項5】
Lは、ポリエチレングリコールの残基、アルキレングリコールの残基、ポリエチレングリコールジメチルエーテルの残基、アルキルアルコールの残基及びリン酸エステルの残基よりなる群から選ばれる有機基である請求項4記載の基油拡散防止剤。
【請求項6】
重合体の数平均分子量が、1,000~8,000である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の基油拡散防止剤。
【請求項7】
重合体中における化1の構成単位数は1~15個であり、化2の構成単位数は0~7個である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の基油拡散防止剤。
【請求項8】
基油、増ちょう剤及び請求項1乃至7のいずれか一項に記載の基油拡散防止剤を含有するグリース。
【請求項9】
基油がフッ素原子を含まないものである請求項8記載のグリース。
【請求項10】
水酸基又はカルボキシル基を持つチオール化合物を連鎖移動剤として、化3のモノマーを重合させることを特徴とする基油拡散防止剤として用いる重合体の製造方法。
【化3】
(化3中、R
1は水素原子又はメチル基であり、R
2はメチレン基又はエチレン基であり、R
fは炭素数1~10のフルオロアルキル基である。)
【請求項11】
化3のモノマーと共に化4のモノマーを共重合させる請求項10記載の基油拡散防止剤として用いる重合体の製造方法。
【化4】
(化4中、R
3は水素原子又はメチル基であり、Lはフッ素原子を含まない有機基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリースの潤滑性能を維持しつつ、基油の拡散を防止するために用いる基油拡散防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
各種機器の急速な高性能化及び小型化に伴って、その機械的な回転部や摺動部等に使用されるグリースに対して、従来よりも優れた特性が求められている。たとえば、小型化された各種機構部、モーター類、各種ベアリング類、接点類又はスイッチ類等に使用するグリースでは、特に、耐熱性、低温安定性及び軽トルク性等の特性が求められている。
【0003】
この特性を満足するために、エステル系又はポリアルファオレフィン系等の合成潤滑油を基油として、ウレア系又は石鹸系等の増ちょう剤を添加したグリースが市販されている。しかしながら、かかる市販のグリースは、基油が比較的低粘度であるため、グリース塗布後に、時間の経過と共に基油が塗布面から拡散してしまうという問題があった。特に、小型化された機器に適用されるグリースでは、基油の拡散は防止されるべき事項である。このため、基油拡散防止剤として、フルオロアルキル基を含有する(メタ)アクリレートの重合体を用い、これを含むグリースが提案されている(特許文献1及び2)。
【0004】
【文献】特開平6-299182号公報
【文献】特開2014-194006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、特許文献1及び2記載の基油拡散防止剤よりも、優れた拡散防止性能を有する剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、フルオロアルキル基を含有する(メタ)アクリレートの重合体の末端に特定の基を導入することにより、上記の課題を解決したものである。すなわち、本発明は、化1を構成単位として含む重合体であって、その末端の少なくとも一方に、水酸基、カルボキシル基及びリン酸基よりなる群から選ばれた基が結合してなる重合体を含むことを特徴とする基油拡散防止剤に関するものである。
【化1】
化1中、R
1は水素原子又はメチル基であり、R
2はメチレン基又はエチレン基であり、R
fは炭素数1~10のフルオロアルキル基である。特に、R
fは炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であるのが好ましく、炭素数6のパーフルオロアルキル基であるのが最も好ましい。
【0007】
本発明で用いる重合体の構成単位である化1は、化3で表されるモノマーを重合することにより得られるものである。
【化3】
化3中のR
1、R
2及びR
fは、化1のものと同様である。化3で表されるモノマーの具体例として、C
6F
13CH
2CH
2OC(O)CH=CH
2、C
6F
13CH
2CH
2OC(O)C(CH
3)=CH
2、C
4F
9CH
2CH
2OC(O)CH=CH
2、C
4F
9CH
2CH
2OC(O)C(CH
3)=CH
2、H(CF
2)
6CH
2OC(O)CH=CH
2、H(CF
2)
6CH
2OC(O)C(CH
3)=CH
2、H(CF
2)
4CH
2OC(O)CH=CH
2又はH(CF
2)
4CH
2OC(O)C(CH
3)=CH
2等を挙げることができる。本発明においては、特に、C
6F
13CH
2CH
2OC(O)CH=CH
2又はC
4F
9CH
2CH
2OC(O)CH=CH
2を用いるのが好ましい。これらのモノマーを単独で又は2種以上を混合して、重合することにより、化1で表される構成単位を含む重合体が得られる。
【0008】
本発明で用いる重合体中には、他の構成単位が含まれていてもよい。他の構成単位としては、化2で表される構成単位を採用するのが好ましい。
【化2】
化2中、R
3は水素原子又はメチル基であり、Lはフッ素原子を含まない有機基である。特に、Lとしては、ポリエチレングリコールの残基,アルキレングリコールの残基、ポリエチレングリコールジメチルエーテルの残基、アルキルアルコールの残基又はリン酸エステルの残基等を採用するのが好ましい。具体的には、Lとして、HO(CH
2)
4、H(OCH
2CH
2)
4、H
3C(OCH
2CH
2)
9又は(HO)
2P(O)OCH
2CH
2なる基を用いるのが好ましい。
【0009】
化2の構成単位は、化4で表されるモノマーを重合することにより得られる。
【化4】
化4中のR
3及びLは、化2のものと同様である。化4で表されるモノマーの具体例として、HO(CH
2)
4OC(O)CH=CH
2、HO(CH
2)
4OC(O)C(CH
3)=CH
2、H(OCH
2CH
2)
4OC(O)CH=CH
2、H(OCH
2CH
2)
4OC(O)C(CH
3)=CH
2、H(OCH
2CH
2)
8OC(O)CH=CH
2、H(OCH
2CH
2)
8OC(O)C(CH
3)=CH
2、H
3C(OCH
2CH
2)
9OC(O)CH=CH
2、H
3C(OCH
2CH
2)
9OC(O)C(CH
3)=CH
2、H
3COC
2H
4OC(O)CH=CH
2、H
3COC
2H
4OC(O)C(CH
3)=CH
2、H
25C
12OC(O)CH=CH
2、H
25C
12OC(O)C(CH
3)=CH
2、(HO)
2P(O)OCH
2CH
2OC(O)CH=CH
2又は(HO)
2P(O)OCH
2CH
2OC(O)C(CH
3)=CH
2等を挙げることができる。本発明においては、特に、HO(CH
2)
4OC(O)CH=CH
2、H(OCH
2CH
2)
8OC(O)C(CH
3)=CH
2、H
3C(OCH
2CH
2)
9OC(O)C(CH
3)=CH
2又は(HO)
2P(O)OCH
2CH
2OC(O)C(CH
3)=CH
2を用いるのが好ましい。これらのモノマーを単独で又は2種以上を混合して、重合することにより、化2で表される構成単位を含む重合体が得られる。
【0010】
本発明で用いる重合体の末端の少なくとも一方に、水酸基、カルボキシル基又はリン酸基が結合している。かかる基が末端に結合していることにより、基油の拡散を良好に防止しうるのである。かかる基を重合体の末端に導入するには、重合時に連鎖移動剤として、水酸基又はカルボキシル基等を持つ化合物を用いればよい。具体的には、水酸基又はカルボキシル基等を持つチオール化合物を用いるのが好ましい。かかるチオール化合物としては、HSCH2CH(OH)CH2OH、HSCH2CH2OH又はHSCH2CH2CO2H等を例示することができる。なお、重合体の末端にリン酸基を結合するには、水酸基を含む連鎖移動剤を用いて重合を行った後、得られた重合体の末端に存在する水酸基をリン酸エステル化すればよい。
【0011】
本発明で用いる重合体の数平均分子量は任意であるが、1,000~8,000の範囲内であるのが好ましく、特に1,000~5,000であるのが最も好ましい。また、重合体中における化1の構成単位数は1~15個であるのが好ましく、化2の構成単位数は0~7個であるのが好ましい。化1の構成単位数が1個の場合には、化2の構成単位と結合して重合体となる。また、化2の構成単位数が0個の場合は、化1の構成単位数が2個以上で化1の構成単位のみからなる重合体となる。化1と化2の共重合体である場合、ブロック共重合体でもランダム共重合体であってもよい。なお、重合体の数平均分子量及び構成単位数は、プロトン核磁気共鳴分光法(日本電子株式会社製「JNM-ECS400」、1H-NMR、CDCl3、TMS、390MHz)にて測定したものである。
【0012】
本発明で用いる重合体を製造するには、化3で表されるモノマーを重合するか、又は所望により化4で表されるモノマーを併存させて共重合すればよい。重合又は共重合は、たとえば、有機溶媒中に各モノマー及び連鎖移動剤を溶解させ、得られた溶液を加温し攪拌しながら重合開始剤を添加して行えばよい。重合開始剤として、公知のものが用いられる。たとえば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾイソ酪酸メチル又はアゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ系開始剤が用いられる。その他、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、ベンゾフェノン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ベンゾケトン誘導体又はフェニルチオエーテル誘導体等が用いられる。連鎖移動剤としては、上記したとおり、水酸基又はカルボキシル基等の基を持つチオール化合物が用いられる。重合開始剤の使用量は、モノマー100重量部に対して、0.1~20重量部程度が好ましく、特に1~10重量部程度が最も好ましい。また、連鎖移動剤の使用量は、モノマー100重量部に対して、0.1~10重量部程度が好ましく、特に1~5重量部程度であるのが最も好ましい。
【0013】
重合温度及び重合時間等の重合条件は、モノマーの種類及び使用量や重合開始剤の種類及び使用量等に応じて適宜調整すればよい。一般的には、重合温度は50~100℃程度で、重合時間は4~12時間程度である。重合体を回収するには、重合反応終了後、反応溶液へ貧溶媒を投入するか、又は貧溶媒へ反応溶液を投入して、重合体を沈澱させればよい。また、反応溶液から使用した有機溶媒を留去することにより、重合体を回収してもよい。
【0014】
重合体は単独で又は所望の添加剤を添加して、基油拡散防止剤となる。基油拡散防止剤、基油及び増ちょう剤を混合してグリース等の潤滑剤が得られる。基油としては従来公知のものが用いられ、たとえば、エステル油、炭化水素系合成油又は鉱物油等が用いられる。本発明においては、基油として、フッ素原子を含まない基油を用いるのが好ましい。本発明に係る基油拡散防止剤を用いた場合、フッ素原子を含まない基油の方が、優れた拡散防止効果を発揮するからである。増ちょう剤としても、従来公知のものが用いられ、たとえば、リチウム石鹸やカルシウム石鹸等の金属石鹸系増ちょう剤又はウレア、PTFE或いはベントン等の非石鹸系増ちょう剤が用いられる。本発明に係る基油拡散防止剤は、基油及び増ちょう剤の総量に対して、0.1~10重量%程度添加され、特に0.5~5重量%程度添加されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る基油拡散防止剤が添加されたグリース等の潤滑剤は、基油拡散防止剤の主体となっている重合体として、末端に特定の基が結合したフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートを用いたので、潤滑剤の使用時に基油の拡散を良好に防止しうるという効果を奏する。
【実施例】
【0016】
[重合体の製造例]
重合体1
有機溶媒として酢酸エチル50g、モノマーとしてパーフルオロヘキシルエチルアクリレート[C6F13CH2CH2OC(O)CH=CH2]50g、連鎖移動剤として1-チオグリセロール[HSCH2CH(OH)CH2OH]2g及び重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.5gを用い、容量300mlの重合反応容器中で、80℃にて8時間攪拌しながら重合反応を行った。反応終了後、反応液にメタノールを過剰に投入し、反応生成物を沈澱させた。沈澱した反応生成物を回収し、エパポレーターで減圧乾燥し、重合体1を得た。重合体1の数平均分子量及び構成単位数をプロトン核磁気共鳴分光法で分析した結果、数平均分子量が4,000で、パーフルオロヘキシルエチルアクリレートに由来する構成単位数は9~10個であった。
【0017】
重合体2
パーフルオロヘキシルエチルアクリレート50gに代えて、パーフルオロヘキシルエチルアクリレート35gと4-ヒドロキシブチルアクリレート[HO(CH2)4OC(O)CH=CH2]15gを使用する他は、重合体1の製造例と同様の方法で重合体2を得た。重合体2の数平均分子量は4,500で、パーフルオロヘキシルエチルアクリレートに由来する構成単位数は8個であり、4-ヒドロキシブチルアクリレートに由来する構成単位数も8個であった。
【0018】
重合体3
パーフルオロヘキシルエチルアクリレート50gに代えて、パーフルオロヘキシルエチルアクリレート35gとポリエチレングリコール(EO8)モノメタクリレート[H(OCH2CH2)8OC(O)C(CH3)=CH2]15gを使用し、かつ、1-チオグリセロールに代えてチオグリコール[HSCH2CH2OH]を使用する他は、重合体1の製造例と同様の方法で重合体3を得た。重合体3の数平均分子量は1,500で、パーフルオロヘキシルエチルアクリレートに由来する構成単位数は2~3個であり、ポリエチレングリコール(EO8)モノアクリレートに由来する構成単位数は1個であった。
【0019】
重合体4
1-チオグリセロールに代えて、3-チオプロピオン酸[HSCH2CH2CO2H]を使用する他は重合体1の製造例と同様の方法で重合体4を得た。重合体4の数平均分子量は2,400で、パーフルオロヘキシルエチルアクリレートに由来する構成単位数は5~6個であった。
【0020】
重合体5
パーフルオロヘキシルエチルアクリレート50gに代えて、パーフルオロヘキシルエチルアクリレート35gとモノメチルポリエチレングリコール(EO9)モノメタクリレート[H3C(OCH2CH2)9OC(O)C(CH3)=CH2]15gを使用する他は、重合体1の製造例と同様の方法で重合体5を得た。重合体5の数平均分子量は1,400で、パーフルオロヘキシルエチルアクリレートに由来する構成単位数は2~3個であり、モノメチルポリエチレングリコール(EO9)モノメタクリレートに由来する構成単位数は1個であった。
【0021】
重合体6
パーフルオロヘキシルエチルアクリレート50gに代えて、パーフルオロヘキシルエチルアクリレート45gとリン酸2-(メタクリロオキシ)エチル[(HO)2P(O)OCH2CH2OC(O)C(CH3)=CH2]5gを使用し、かつ、1-チオグリセロールに代えて3-チオプロピオン酸[HSCH2 CH2 CO2 H]を使用する他は、重合体1の製造例と同様の方法で重合体6を得た。重合体6の数平均分子量は4,700で、パーフルオロヘキシルエチルアクリレートに由来する構成単位数は10個であり、リン酸2-(メタクリロオキシ)エチルに由来する構成単位数は2~3個であった。
【0022】
重合体7
パーフルオロヘキシルエチルアクリレートに代えて、パーフルオロヘキシルエチルメタクリレート[C6F13CH2CH2OC(O)C(CH3)=CH2]を使用する他は、重合体1の製造例と同様の方法で重合体7を得た。重合体7の数平均分子量は4,400で、パーフルオロヘキシルエチルメタクリレートに由来する構成単位数は10個であった。
【0023】
重合体8
パーフルオロヘキシルエチルアクリレートに代えてパーフルオロヘキシルエチルメタクリレートを使用し、かつ、1-チオグリセロールに代えてチオグリコールを使用する他は、重合体1の製造例と同様の方法で重合体8を得た。重合体8の数平均分子量は2,400で、パーフルオロヘキシルエチルメタクリレートに由来する構成単位数は5~6個であった。
【0024】
重合体9
1-チオグリセロールに代えて、1-オクタンチオール[HSC8H17]を使用する他は重合体1の製造例と同様の方法で重合体9を得た。重合体9の数平均分子量は3,000で、パーフルオロヘキシルエチルアクリレートに由来する構成単位数は7個であった。
【0025】
重合体10
パーフルオロヘキシルエチルアクリレート50gに代えて、パーフルオロヘキシルエチルメタクリレート25gとモノメチルポリエチレングリコール(EO9)モノメタクリレート25gを使用し、かつ、1-チオグリセロールに代えて1-オクタンチオールを使用する他は、重合体1の製造例と同様の方法で重合体10を得た。重合体10の数平均分子量は2,300で、パーフルオロヘキシルエチルメタクリレートに由来する構成単位数は4個であり、モノメチルポリエチレングリコール(EO9)モノメタクリレートに由来する構成単位数は1~2個であった。
【0026】
重合体11
パーフルオロヘキシルエチルアクリレート50gに代えて、パーフルオロヘキシルエチルアクリレート25gと4-ヒドロキシブチルアクリレート[HO(CH2)4OC(O)CH=CH2]25gを使用し、かつ、1-チオグリセロールに代えて1-オクタンチオールを使用する他は、重合体1の製造例と同様の方法で重合体11を得た。重合体11の数平均分子量は2,500で、パーフルオロヘキシルエチルアクリレートに由来する構成単位数は3個であり、4-ヒドロキシブチルアクリレートに由来する構成単位数も9個であった。
【0027】
実施例1
市販のエステル系グリース本体(住鉱潤滑剤株式会社製「スミテックSG402」)100重量部に対して、重合体1よりなる基油拡散防止剤1.0重量部を添加してグリースを得た。
【0028】
実施例2
重合体1よりなる基油拡散防止剤の添加量を0.5重量部に変更する他は、実施例1と同様にしてグースを得た。
【0029】
実施例3
重合体1よりなる基油拡散防止剤に代えて、重合体2よりなる基油拡散防止剤を添加する他は、実施例1と同様にしてグリースを得た。
【0030】
実施例4
重合体1よりなる基油拡散防止剤に代えて、重合体3よりなる基油拡散防止剤を添加する他は、実施例1と同様にしてグリースを得た。
【0031】
実施例5
重合体1よりなる基油拡散防止剤に代えて、重合体4よりなる基油拡散防止剤を添加する他は、実施例1と同様にしてグリースを得た。
【0032】
実施例6
重合体1よりなる基油拡散防止剤に代えて、重合体5よりなる基油拡散防止剤を添加する他は、実施例1と同様にしてグリースを得た。
【0033】
実施例7
重合体1よりなる基油拡散防止剤に代えて、重合体6よりなる基油拡散防止剤を添加する他は、実施例1と同様にしてグリースを得た。
【0034】
実施例8
重合体1よりなる基油拡散防止剤に代えて、重合体7よりなる基油拡散防止剤を添加する他は、実施例1と同様にしてグリースを得た。
【0035】
実施例9
重合体1よりなる基油拡散防止剤に代えて、重合体8よりなる基油拡散防止剤を添加する他は、実施例1と同様にしてグリースを得た。
【0036】
実施例10
市販のPAO系合成油グリース本体(住鉱潤滑剤株式会社製「スミテック331」)100重量部に対して、重合体1よりなる基油拡散防止剤1.0重量部を添加してグリースを得た。
【0037】
実施例11
市販のウレア系グリース本体(株式会社三共コーポレーション製「ウレアグリース」)100重量部に対して、重合体1よりなる基油拡散防止剤1.0重量部を添加してグリースを得た。
【0038】
比較例1
重合体1よりなる基油拡散防止剤に代えて、重合体9よりなる基油拡散防止剤を添加する他は、実施例1と同様にしてグリースを得た。
【0039】
比較例2
重合体1よりなる基油拡散防止剤に代えて、重合体10よりなる基油拡散防止剤を添加する他は、実施例1と同様にしてグリースを得た。
【0040】
比較例3
重合体1よりなる基油拡散防止剤に代えて、重合体11よりなる基油拡散防止剤を添加する他は、実施例1と同様にしてグリースを得た。
【0041】
比較例4
市販のエステル系グリース本体(住鉱潤滑剤株式会社製「スミテックSG402」)に、基油拡散防止剤を添加せずにグリースとした。
【0042】
比較例5
市販のPAO系合成油グリース本体(住鉱潤滑剤株式会社製「スミテック331」)に、基油拡散防止剤を添加せずにグリースとした。
【0043】
比較例6
市販のウレア系グリース本体(株式会社三共コーポレーション製「ウレアグリース」)に、基油拡散防止剤を添加せずにグリースとした。
【0044】
[基油拡散試験]
A1050Pアルミニウム板(表面を布ヤスリ♯150で擦って粗面とし、基油の拡散を確認しやすくしたもの)の粗面に、実施例1~11及び比較例1~6で得られた各グリースを、直径6mmで高さ1mmの円柱状に塗布した。そして、80℃の恒温器に入れて促進試験を行い、24時間後の基油の拡散状態を評価した。
図1に示すように、基油は塗布したグリースの径方向に拡散するので、基油の直径(Amm)を測定した。そして、拡散幅(mm)=A-6を求めた。この結果を表1に示した。
【0045】
[表1]
━━━━━━━━━━━━━━━
拡散幅
━━━━━━━━━━━━━━━
実施例1 0mm
実施例2 0mm
実施例3 0mm
実施例4 0mm
実施例5 0mm
実施例6 5mm
実施例7 0mm
実施例8 4mm
実施例9 5mm
実施例10 0mm
実施例11 0mm
比較例1 14mm
比較例2 10mm
比較例3 13mm
比較例4 >20mm
比較例5 >20mm
比較例6 >20mm
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【0046】
表1の結果から明らかなように、実施例に係る各グリースは、比較例に係る各グリースに比べて、基油の拡散が顕著に防止されていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】実施例及び比較例に係る各グリースの基油拡散試験を行った際のグリースの塗布状態及び基油の拡散状態を示した模式的平面図である。