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  • 特許-吊り下げ型乗物システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】吊り下げ型乗物システム
(51)【国際特許分類】
   B61B 12/02 20060101AFI20220516BHJP
   B61D 37/00 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
B61B12/02 C
B61D37/00 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019014047
(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公開番号】P2020121621
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390002196
【氏名又は名称】泉陽興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 勇作
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-187542(JP,A)
【文献】特開2007-326442(JP,A)
【文献】特表2017-530681(JP,A)
【文献】特表2012-532784(JP,A)
【文献】特開2000-052983(JP,A)
【文献】特表2018-531474(JP,A)
【文献】特表2019-502183(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0231123(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 12/02
B61D 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道に吊り下げられ、前記軌道に沿って移動する複数の搬器と、
前記複数の搬器のそれぞれに設置される電気機器と、
前記複数の搬器とは別の箇所に位置し、前記複数の搬器のそれぞれとの間で通信可能な監視制御ユニットと、
を備え、
前記監視制御ユニットは、
前記複数の搬器のそれぞれの前記電気機器の状態を表示する表示部と、
前記複数の搬器のそれぞれの前記電気機器の状態を制御するための制御装置と、
を有する、
吊り下げ型乗物システム。
【請求項2】
前記電気機器は、前記搬器内の空調を行う空調装置と、前記空調装置に電力を供給する蓄電装置とを含む、
請求項1の吊り下げ型乗物システム。
【請求項3】
前記電気機器は、前記搬器の外側に向けて発光し、表示内容を切り替え可能な表示装置を含む、
請求項1または2の吊り下げ型乗物システム。
【請求項4】
前記複数の搬器のそれぞれは、ロープウェイのゴンドラである、
請求項1から3のいずれか一つの吊り下げ型乗物システム。
【請求項5】
前記複数の搬器のそれぞれには、無線通信機が設置され、
前記監視制御ユニットは、無線通信機を含み、
前記複数の搬器のそれぞれの前記無線通信機と、前記監視制御ユニットの前記無線通信機とは、メッシュネットワークを形成して無線通信を行うように構成されている、
請求項1から4のいずれか一つの吊り下げ型乗物システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吊り下げ型乗物システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴンドラリフトやロープウェイ等の索道設備が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の索道設備では、搬器内に、空調装置と空調装置に電力を供給するバッテリとを備えている。この索道設備では、搬器が停留場内を移動するときに、電力の供給を受けてバッテリが充電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-65362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の索道設備では、バッテリや空調装置等の電気機器の状態の管理が、運転室等から遠隔で行えるようになっていない。
【0006】
そのため、搬器が強風等で緊急停止した場合等の、停止が長引いた場合に、バッテリの残量が切れて、空調装置の駆動が停止する等の不具合が生じるおそれがある。
【0007】
上記事情に鑑みて、本開示は、搬器に搭載した電気機器の状態を適正に維持することができる、吊り下げ型乗物システムを提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る一態様の吊り下げ型乗物システムは、軌道に吊り下げられ、前記軌道に沿って移動する複数の搬器と、前記複数の搬器のそれぞれに設置された電気機器と、前記複数の搬器とは別の箇所に位置し、前記複数の搬器のそれぞれとの間で通信可能な監視制御ユニットと、を備える。前記監視制御ユニットは、前記複数の搬器のそれぞれの前記電気機器の状態を表示する表示部と、前記複数の搬器のそれぞれの前記電気機器の状態を制御するための制御装置と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、搬器に搭載した電気機器の状態を適正に維持することができる、吊り下げ型乗物システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示に係る一実施形態の吊り下げ型乗物システムを概略的に示す図である。
図2図2は、同上の吊り下げ型乗物システムが備える搬器と監視制御ユニットを概略的に示すブロック図である。
図3図3Aは、同上の搬器を示す背面図であり、図3Bは、同上の搬器を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)概要
図1に示すように、一実施形態の吊り下げ型乗物システム(以下「乗物システム」という)は、複数の搬器3と、電気機器4と、監視制御ユニット6と、を備える。
【0012】
複数の搬器3は、軌道2に吊り下げられ、軌道2に沿って移動する。電気機器4は、複数の搬器3のそれぞれに設置されている。監視制御ユニット6は、複数の搬器3とは別の箇所に位置し、複数の搬器3のそれぞれとの間で通信可能である。監視制御ユニット6は、図2に示すように、複数の搬器3のそれぞれの電気機器4の状態を表示する表示部60と、複数の搬器3のそれぞれの電気機器4の状態を制御するための制御装置61とを有する。
【0013】
上記構成を備えることで、乗物システムでは、監視制御ユニット6の表示部60に表示される電気機器4の状態を監視でき、電気機器4の状態を制御装置61で制御することができて、電気機器4の状態を適正に維持することができる。
【0014】
(2)詳細
続いて、本実施形態の乗物システムについて、更に詳しく説明する。
【0015】
本実施形態の乗物システムは、ロープウェイ1の設備の一部を構成する。複数の搬器3のそれぞれは、ロープウェイ1のゴンドラである。ロープウェイ1としては、例えば、都市部の上空(主に、都市部の河川の上空)を運行するように設置されたものが挙げられる。
【0016】
ロープウェイ1は、軌道2を構成する索条(支索)20と、複数の搬器3を牽引する曵索(図示せず)と、索条20を支持する支柱21と、人や貨物が乗降する乗降場22を備える。索条20と支曵索のそれぞれは、その大半が、都市部の河川の上空に位置している。本実施形態では、ロープウェイ1は、二つの乗降場22を有している。本実施形態では、二つの乗降場22の両方に、複数の搬器3を運転操作するための運転室23が設けられている。二つの運転室23のそれぞれに、監視制御ユニット6が設置されている。
【0017】
図2に示すように、複数の搬器3のそれぞれには、電気機器4と、無線通信機7が設置される。監視制御ユニット6は、表示部60と、制御装置61と、無線通信機8を含んでいる。
【0018】
電気機器4は、空調装置40、表示装置41、放送装置42、撮像装置43、位置測定装置44、制御装置45、及び蓄電装置46を含む。装置40~45のそれぞれは、直接または間接的に蓄電装置46に電気的に接続されており、蓄電装置46から供給される電力によって駆動する。
【0019】
制御装置45は、装置40~44のそれぞれを制御する装置である。制御装置45は、マイクロコンピューターやパーソナルコンピューター等のコンピューターシステムを主構成とする。制御装置45は、無線通信機7を介して監視制御ユニット6との間で無線通信を行う。制御装置45は、監視制御ユニット6から受信した指示信号に応じて、装置40~44のそれぞれを制御する。
【0020】
空調装置40は、搬器3内の空調を行う装置である。空調装置40は、例えば、搬器3内に冷風を供給するクーラーである。なお、空調装置40は、搬器3内に温風を供給する機能を更に備えたエアコンであってもよい。空調装置40の電源のオン、オフの切り替え、温度調節等の制御は、制御装置45によって行われる。
【0021】
表示装置41は、搬器3の外部に向けて発光し、表示内容を切り替え可能な装置である。表示装置41は、例えば、シート状の照明装置410(図3A,B参照)と、照明装置410の照明を操作するコントローラーと、コントローラーに操作内容を指示する指示装置を含む。
【0022】
照明装置410は、例えば、導電性の透明フィルムの表面に、多数の発光素子を、電気的に接続されるようにマトリクス状に配置したものである。発光素子は、例えば、発光ダイオードである。
【0023】
コントローラーは、例えば、DMX(Digital MultipleX)コントローラーである。コントローラーによって、多数の発光素子のそれぞれの発光の有無や色や明るさが制御され、これにより、照明装置410には、所定の文字や絵柄が表示される。
【0024】
指示装置には、演出パターンが登録されている。演出パターンは、誕生日等の記念日を祝うメッセージを表示するパターンや、緊急停止していることを知らせるパターンや、指定された文字を表示するパターン等を含む。コントローラーは、指示部から指示された演出パターンで、照明装置410を発光させる。
【0025】
指示装置には、制御装置45が電気的に接続されている。指示装置からコントローラーに指示される操作内容(演出パターン)は、制御装置45によって選択される。制御装置45は、監視制御ユニット6から受信した指示信号に応じて、演出パターンを選択する。各搬器3の表示装置41は、監視制御ユニット6から受信した指示信号に応じて、連動して演出パターンを表示することも可能である。
【0026】
放送装置42は、アンプとスピーカーを含む。放送装置42は、制御装置45によって制御されて、監視制御ユニット6から受信した指示信号に応じた内容を放送する。放送装置42は、緊急停止していることを知らせる内容や、トランシーバー等の無線機の使用を促す内容や、BGM等を放送する。
【0027】
撮像装置43は、カメラと記憶装置を含む。記憶装置は、例えば、DVR(Digital Video Recorder)である。カメラは、搬器3の内部の様子を撮像する。カメラで撮像された撮像データは、記憶装置に保存される。
【0028】
位置測定装置44は、GPS(Global Positioning System)を含む。位置測定装置44による測定結果は、例えば、撮像装置43の記憶装置の時刻補正に用いられる。
【0029】
無線通信機7は、アンテナを含む。本実施形態では、複数の搬器3のそれぞれの無線通信機7と、監視制御ユニット6の無線通信機8とは、メッシュネットワークを形成して無線通信を行うように構成されている。
【0030】
詳しくは、各搬器3の無線通信機7は、所定の距離範囲内に位置する他の少なくとも一つの搬器3の無線通信機7と無線通信を行う。複数の搬器3のうち、監視制御ユニット6の無線通信機8から所定の距離範囲内に位置する搬器3の無線通信機7は、監視制御ユニット6の無線通信機8と無線通信を直接的かつ間接的に行う。複数の搬器3のうち、監視制御ユニット6の無線通信機8から所定の距離範囲内に位置する搬器3の無線通信機7は、監視制御ユニット6の無線通信機8との間に位置する他の搬器3の無線通信機7を介して、監視制御ユニット6の無線通信機8と無線通信を間接的に行う。
【0031】
このようにメッシュネットワークを形成して無線通信を行うことで、各搬器3の無線通信機7と監視制御ユニット6の無線通信機8との間での無線通信の遮断を防ぐことができる。複数の搬器3のそれぞれの無線通信機7と監視制御ユニット6の無線通信機8とは、例えば、2.4GHz帯の周波数で、無線通信を行う。
【0032】
蓄電装置46は、リチウム電池等のバッテリである。なお、蓄電装置46は、バッテリに限らず、キャパシタであってもよいし、バッテリとキャパシタの組み合わせであってもよい。蓄電装置46は、例えば、DC24Vを装置40~45のそれぞれに供給する。
【0033】
蓄電装置46の電気残量、内部温度、電圧値等のデータは、BMU(Battery Management Unit)等の監視通知装置によって監視され、制御装置45に送信される。制御装置45で受信した蓄電装置46の各種のデータは、無線通信機7を介して、監視制御ユニット6に送信される。これにより、監視制御ユニット6では、蓄電装置46の状態を、遠隔で監視可能である。
【0034】
図3A及び図3Bに示すように、搬器3は、進行方向D1における前側に位置する前壁30と、後側に位置する後壁31と、左右に位置する側壁32,33と、上壁34と、底壁35と、4つのフレーム36とを有する。前壁30、後壁31、側壁32,33のそれぞれは、透光性を有し、ポリカーボネイト等のような強度の高い透明部材で形成されている。上壁34、底壁35及び4つのフレーム36のそれぞれは、アルミニウム合金等のような強度の高い部材で形成されている。
【0035】
前壁30、後壁31、側壁32,33のそれぞれは、上下方向の中央部が他の部分に比べて外側に膨らむように円弧状に湾曲した断面形状を有する。つまり、前壁30では、上下方向の中央部が他の部分(上端部や下端部)に比べて前側に位置するように、側方から見て、全体が円弧状に湾曲している。
【0036】
4つのフレーム36のそれぞれは、上下方向の中央部が他の部分に比べて外側に位置するように円弧状に湾曲した柱状である。4つのフレーム36のそれぞれは、上端部が上壁34と連結され、下端部が底壁35に連結されている。前壁30、後壁31、及び側壁32,33は、それぞれの幅方向の端部がフレーム36に接続されて、互いに連結されている。
【0037】
搬器3は、側壁32に開閉可能に設けられたドア37と、搬器3の内部に設けられた座席38と、上壁34から上方に延びたサスペンダー39と、サスペンダー39の上端部に設けられた握索装置390とを更に有する。サスペンダー39の上端部には、スリップリング等の集電装置(図示せず)が設けられている。集電装置は、蓄電装置46に電気的に接続されている。
【0038】
表示装置41が有するシート状の照明装置410は、前壁30と後壁31と側壁33のそれぞれに取り付けられている。詳しくは、照明装置410は、壁30,31,33のそれぞれの内面(搬器3の内部側を向く面)の下側の部分に、貼り付けられている。照明装置410は、座席38に座った乗客の目の高さよりも低い位置に配置されている。そのため、座席38に座る利用者が搬器3の外部を見るときに、照明装置410が邪魔になりにくい。
【0039】
照明装置410は、円弧状に湾曲した壁30,31,33のうち、上下方向の中央部よりも下側の部分に貼り付けることで、壁30,31,33の内面に沿って円弧状に湾曲して、斜め下方に向かって発光することができる。これにより、照明装置410の表示内容は、下方(地上)から見えやすくなっている。
【0040】
その他の装置40,42,43,44,45、蓄電装置46及び無線通信機7は、搬器3内の適宜の箇所に設置される。例えば、無線通信機7は、アンテナが搬器3の上側にて露出するように設置され、撮像装置43は、カメラが搬器3の内部を上側から撮像するように設置される。
【0041】
監視制御ユニット6の表示部60は、各搬器3の電気機器4の状態を表示する装置である。表示部60は、例えばモニターである。なお、表示部60は、モニターに限らず、電気機器4の状態を表示可能なその他の装置であってもよい。各搬器3の無線通信機7から無線通信機8へ送信された電気機器4の状態のデータは、制御装置61によって処理されて、表示部60に表示される。
【0042】
制御装置61は、マイクロコンピューターやパーソナルコンピューター等のコンピューターシステムを主構成とする。制御装置61では、各搬器3の電気機器4を制御するための操作が可能である。
【0043】
本実施形態のロープウェイ1では、運転室23には、複数の搬器3の運転を操作するための運転操作装置9と、放送装置10と、信号灯11が、更に設置されている。制御装置61は、運転操作装置9、放送装置10及び信号灯11を制御する制御装置を兼ねている。
【0044】
制御装置61を操作することで、運転操作装置9を介して、各搬器3の運行と運行停止の切り替え、及び運行速度の変更等の制御を行うことができる。
【0045】
放送装置10は、スピーカーとアンプを含む。信号灯11は、パトランプ等の警光灯である。放送装置10は、制御装置61によって放送内容が制御され、信号灯11は、制御装置61によって、点灯及び消灯が制御される。例えば、制御装置61が運転操作装置9から不具合等を知らせる信号を受信したときや、制御装置61が各搬器3から強風等による大きな揺れを知らせる信号を受信したときに、制御装置61は、放送装置10と信号灯11を連動させて制御し、音と光で状態を報知する。
【0046】
図1に示すように、ロープウェイ1は、各乗降場22に位置して、蓄電装置46を充電する給電レール24を更に備える。給電レール24は、搬器3の索条20に沿って延びるように、各乗降場22に設置されている。各搬器3は、サスペンダー39の上端部の集電装置が給電レール24に接触することで、蓄電装置46への充電が行われる。蓄電装置46への充電は、蓄電装置46と装置40~45のそれぞれを電気的に接続する回路を閉じた状態で行われる。各乗降場22における蓄電装置46の充電時間は、例えば1分間程度である。
【0047】
給電レール24から出力される電流の大きさは、制御装置61によって制御可能である。制御装置61では、給電レール24から出力される電流値の調整や、出力の有無を切り替える制御を行うことができる。
【0048】
制御装置61では、給電レール24から出力される電流の大きさを、例えば大小2つの電流値から選択することができ、急速充電モードと通常充電モードのうち一方を選択することができる。
【0049】
給電レール24は、例えば、蓄電装置46から装置40~45に供給される合計の負荷電流がaアンペアである場合、通常充電モードでは、(b-a)アンペア(ただし、b>a)の電流を出力し、急速充電モードでは、(2b-a)アンペアの電流を出力する。給電レール24の供給電圧は、例えば、DC110Vである。
【0050】
(3)監視制御ユニットによる監視及び制御の方法
続いて、上述した乗物システムの監視制御ユニット6による監視及び制御の方法について説明する。
【0051】
乗物システムでは、各搬器3の電気機器4の状態のデータが、無線通信機7,8を介して、監視制御ユニット6の制御装置61へと送られる。
【0052】
例えば、各搬器3からは、空調装置40の駆動状況、表示装置41の表示内容、放送装置42の放送内容、撮像装置43の撮像内容、位置測定装置44の位置測定情報、蓄電装置46の電気残量、内部温度、電圧値等のデータが、監視制御ユニット6の制御装置61に送られる。
【0053】
監視制御ユニット6では、制御装置61によって受信したデータが処理されて、表示部60に、各搬器3の電気機器4の状態が表示される。これにより、運転室23では、各搬器3の電気機器4の状態を常時監視することができる。
【0054】
監視制御ユニット6では、制御装置61を操作することによって、表示部60に表示される各搬器3の電気機器4の状態に対応して、各搬器3の電気機器4の状態を制御することができる。
【0055】
例えば、蓄電装置46の電気残量が少ない場合には、空調装置40の設定温度を変更して消費電力を抑える制御や、空調装置40を停止する制御を行うことができる。これにより、蓄電装置46の消費電力を抑えることができ、各搬器3の装置40~45の継続的な駆動が可能となる。
【0056】
また、蓄電装置46の電気残量が少ない場合には、給電レール24から出力される電流を大きくする制御を行って、乗降場22にて蓄電装置46を急速充電モードで充電することが可能である。
【0057】
また、表示部60では充電中も蓄電装置46の電気残量を監視可能であるため、給電レール24からの出力を停止する制御を行うことができ、蓄電装置46が過充電されることを防ぐことができる。
【0058】
また、蓄電装置46の電気残量が多い場合には、給電レール24から出力される電流を小さくする制御を行って、乗降場22にて蓄電装置46を通常充電モードで充電することが可能である。これにより、蓄電装置46が過充電されることを防ぐことができる。
【0059】
また、監視制御ユニット6では、複数の搬器3のそれぞれの表示装置41の表示内容を連動させる制御を行うことが可能である。
【0060】
例えば、監視制御ユニット6では、複数の搬器3の表示装置41のそれぞれに文字を表示して、複数の表示装置41で文章を形成するように、各表示装置41の表示内容を制御することが可能である。なお、表示装置41には、電子広告を表示してもよい。
【0061】
(4)作用効果
以上説明した乗物システムでは、監視制御ユニット6にて、各搬器3に搭載された電気機器4の状態を監視して、電気機器4の状態を制御できるため、各搬器3の電気機器4の管理が行いやすい。
【0062】
例えば、乗物システムでは、蓄電装置46の電気残量を監視及び制御して、空調装置40の駆動を継続的に行うことができるため、緊急停止時のような停止が長引く場合でも、搬器3内の温度を快適な温度に保ちやすい。
【0063】
また、乗物システムでは、監視制御ユニット6にて、各搬器3の蓄電装置46の電気残量を監視及び制御できるため、各乗降場22において、各搬器3の蓄電装置46の電気残量に応じた充電モードで、各搬器3の蓄電装置46を効率よく充電することができる。
【0064】
また、乗物システムでは、監視制御ユニット6にて、各搬器3の表示装置41の表示内容を監視及び制御できるため、各搬器3の表示装置41の表示内容を連動させて、多様な演出を行うことができる。特に、本実施形態の乗物システムの搬器3は、都市部の上空を運行するロープウェイ1のゴンドラであるため、都市部の上空に、多様な演出が行えて、効果的である。
【0065】
また、乗物システムでは、各搬器3の無線通信機7と監視制御ユニット6の無線通信機8とが、メッシュネットワークを形成して無線通信を行うため、無線通信が遮断されにくく、各搬器3の電気機器4の状態を、監視制御ユニット6にてより確実に監視及び制御することができる。
【0066】
(5)変形例
続いて、上述した一実施形態の乗物システムの変形例について説明する。
【0067】
乗物システムは、ロープウェイ1に限らず、支曳索からなる軌道2に搬器3を吊り下げて牽引するゴンドラリフトを構成してもよいし、高架構造の軌道桁からなる軌道2に搬器3を吊り下げて牽引するスカイレールを構成してもよい。また、ロープウェイ1は、都市部の河川の上空に限らず、都市部の建物の上空を運行するものであってもよいし、山間部の上空を運行するものであってもよい。
【0068】
各搬器3に設置される電気機器4は、上述した各装置40~46の一部のみを含んでもよいし、上述した各装置40~46に加えて他の電気で駆動する装置を更に含んでもよい。例えば、電気機器4は、安全装置としてSOSボタンを含んでもよい。SOSボタンが押されると、対応する搬器3の無線通信機7から運転室23の無線通信機8にSOS信号が送信され、運転手に知らせることができる。このとき、対応する搬器3には、予め登録された内容の案内放送を放送装置42から自動的に再生することも可能である。
【0069】
また、電気機器4は、搬器3に設置されるソーラーパネルを含んでもよい。この場合、蓄電装置46の充電は、ソーラーパネルと給電レール24の両方で行うことが可能となる。
【0070】
また、電気機器4は、搬器3の内部の様子を撮像する撮像装置43に限らず、搬器3の握索装置390とその周囲の部分の状態や振動を撮像する他の撮像装置を更に含んでもよい。
【0071】
また、乗物システムは、支柱21に設置されて、支柱21が有する支持装置(滑車)の状態及び振動や索条20を撮像する撮像装置と、この撮像装置によって撮像された撮像データを監視制御ユニット6の制御装置61へ無線送信する無線通信機とを更に備えてもよい。この場合、支持装置による索条20の支持位置の位置ずれや、支持装置の劣化具合や、索条20の表面の状態等を、監視制御ユニット6の表示部60にて監視することができる。無線通信機は、例えば、LTE(Long Term Evolution)を利用した無線通信を行う装置である。
【0072】
また、乗物システムは、乗降場22に設置されて、給電レール24の状態を撮像する撮像装置と、この撮像装置によって撮像された撮像データを監視制御ユニット6の制御装置61へ送信する無線通信機とを更に備えてもよい。また、乗物システムは、乗降場22に設置されて、各搬器3を索条20に支持される位置と索条20から離れる待機位置との間で移動させるターンテーブル等の移動装置の状態を撮像する撮像装置と、この撮像装置によって撮像された撮像データを監視制御ユニット6の制御装置61へ送信する無線通信機とを更に備えてもよい。無線通信機は、例えば、LTE(Long Term Evolution)を利用した無線通信を行う装置である。なお、撮像装置と、監視制御ユニット6の制御装置61とは有線で接続されてもよい。この場合、給電レール24と搬器3の集電装置の接触の様子や、給電レール24の劣化具合等の状態や、移動装置の状態等を、監視制御ユニット6の表示部60にて監視することができる。
【0073】
また、電気機器4は、搬器3の振動を検出する振動センサー、蓄電装置46からその他の機器へ流れる電流値を検出する電流センサー、搬器3内の温度と湿度を検出する温湿度センサー、給電レール24に対する搬器3の集電装置のゆがみを検出するゆがみセンサー等の、各種のセンサーを含んでもよい。
【0074】
監視制御ユニット6は、二つの乗降場22の運転室23のうちの一方にのみ設けられてもよい。また、監視制御ユニット6は、乗降場22の運転室23以外の、搬器3とは別の箇所に設置されてもよい。
【0075】
運転室23の運転操作装置9、放送装置10及び信号灯11の制御を行う制御装置は、監視制御ユニット6の制御装置61とは別の制御装置で行ってもよい。
【0076】
乗降場22の数は、二つに限らず、一つであってもよいし、三つ以上であってもよい。
【0077】
複数の搬器3のそれぞれの無線通信機7と、監視制御ユニット6の無線通信機8とは、無線通信可能なものであればよく、メッシュネットワークを形成せずに、無線通信を行うものであってもよい。つまり、各搬器3の無線通信機7は、他の搬器3の無線通信機7と無線通信を行わず、監視制御ユニット6の無線通信機8とのみ無線通信を行うものであってもよい。
【0078】
また、複数の搬器3のそれぞれの無線通信機7と、監視制御ユニット6の無線通信機8とは、ビル間の通信に用いられる光無線通信や、インターネット回線を利用した無線通信や、LTE(Long Term Evolution)を利用した無線通信や、Wi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)を利用した無線通信等の、その他の方法を利用して、無線通信を行ってもよい。
【0079】
また、複数の搬器3と監視制御ユニット6とは、通信可能であればよく、ケーブル等を介して有線で接続されてもよい。
【0080】
各搬器3の無線通信機7と、監視制御ユニット6の無線通信機8との間で通信されるデータは、上述した各データのうちの一部であってもよいし、更に他のデータを含んでもよい。
【0081】
各搬器3の位置測定装置44は、各搬器3の位置情報を測定してもよく、各搬器3の無線通信機7と監視制御ユニット6の無線通信機8との間で通信されるデータは、各搬器3の位置情報を含んでもよい。この場合、監視制御ユニット6では、例えば、所定の範囲に位置する複数の搬器3の表示内容を、各搬器3の位置情報に対応させて連動させたり、ロープウェイの往路を運行する複数の搬器3の表示装置41の表示内容と、ロープウェイの復路を運行する複数の搬器3の表示装置41の表示内容とを、各搬器3の位置情報に対応させて連動させることも可能であり、多様な演出を行うことができる。
【0082】
表示装置41の照明装置410は、視界の妨げになりにくい透過度を有するものであれば、各搬器3の壁30,31,33のそれぞれの下側の部分に限らず、各搬器3の壁30,31,33のそれぞれの全体に取り付けられてもよい。なお、照明装置410は、各搬器3の壁32にも取り付けられてもよい。また、照明装置410は、各搬器3の上壁34の上面や、底壁35の下面にも取り付けられてもよい。
【0083】
また、表示装置41は、搬器3の外部に向けて発光し、表示内容を切り替え可能な装置であればよく、上述した照明装置410に限らず、液晶や有機EL(electro-luminescence)などのモニターを含んでもよい。
【0084】
監視制御ユニット6では、表示装置41、放送装置42、撮像装置43、及び位置測定装置44への蓄電装置46からの電力供給を選択的に停止する制御を行うことで、蓄電装置46の消費電力を抑えて、各搬器3の必要な電気機器4(例えば空調装置40)の継続的な駆動を可能としてもよい。
【0085】
(6)まとめ
以上説明した一実施形態の乗物システムのように、第一態様の乗物システムは、下記の構成を備える。
【0086】
すなわち、第一態様の乗物システムは、複数の搬器3と電気機器4と監視制御ユニット6とを備える。複数の搬器3は、軌道2に吊り下げられ、軌道2に沿って移動する。電気機器4は、複数の搬器3のそれぞれに設置されている。監視制御ユニット6は、複数の搬器3とは別の箇所に位置し、複数の搬器3のそれぞれとの間で通信可能である。監視制御ユニット6は、複数の搬器3のそれぞれの電気機器4の状態を表示する表示部60と、複数の搬器3のそれぞれの電気機器4の状態を制御するための制御装置61と、を有する。
【0087】
上記構成を備えることで、第一態様の乗物システムでは、監視制御ユニット6の表示部60に表示される電気機器4の状態を監視でき、電気機器4の状態を制御装置61で制御することができて、各搬器3の電気機器4の状態を適正に維持することができる。
【0088】
また、上述した一実施形態の乗物システムのように、第二態様の乗物システムは、第一態様の乗物システムの構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0089】
すなわち、第二態様の乗物システムでは、電気機器4は、搬器3内の空調を行う空調装置40と、空調装置40に電力を供給する蓄電装置46とを含む。
【0090】
上記構成を備えることで、第二態様の乗物システムでは、蓄電装置46の電気残量を監視及び制御して、空調装置40の駆動を継続的に行うことができ、緊急停止時等の乗車時間が長くなる場合でも、搬器3内の温度を快適な温度に維持しやすい。
【0091】
また、上述した一実施形態の乗物システムのように、第三態様の乗物システムは、第一または第二態様の乗物システムの構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0092】
すなわち、第三態様の乗物システムでは、電気機器4は、搬器3の外側に向けて発光し、表示内容を切り替え可能な表示装置41を含む。
【0093】
上記構成を備えることで、第三態様の乗物システムでは、監視制御ユニット6によって複数の搬器3の表示装置41をそれぞれ監視及び制御することができ、複数の表示装置41の表示内容を連動させやすい。
【0094】
また、上述した一実施形態の乗物システムのように、第四態様の乗物システムは、第一から第三態様のいずれか一つの乗物システムの構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0095】
すなわち、第四態様の乗物システムでは、複数の搬器3のそれぞれは、ロープウェイ1のゴンドラである。
【0096】
上記構成を備えることで、第四態様の乗物システムでは、ロープウェイ1は強風等によって緊急停止して乗車時間が長くなる場合があるものの、ロープウェイ1のゴンドラに搭載された電気機器4の状態を監視及び制御でき、電気機器4の停止による不具合が生じにくい。
【0097】
また、上述した一実施形態の乗物システムのように、第五態様の乗物システムは、第一から第四態様のいずれか一つの乗物システムの構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0098】
すなわち、第五態様の乗物システムでは、複数の搬器3のそれぞれには、無線通信機7が設置され、監視制御ユニット6は、無線通信機8を含む。複数の搬器3のそれぞれの無線通信機7と、監視制御ユニット6の無線通信機8とは、メッシュネットワークを形成して無線通信を行うように構成されている。
【0099】
上記構成を備えることで、第五態様の乗物システムでは、各搬器3の無線通信機7と監視制御ユニット6の無線通信機8の間での無線通信の遮断を抑制することができ、監視制御ユニット6による電気機器4の監視及び制御をより確実に行うことができる。
【0100】
以上、本開示を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本開示は上記の実施形態に限定されるものではなく、本開示の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 ロープウェイ
2 軌道
3 搬器
4 電気機器
40 空調装置
41 表示装置
46 蓄電装置
6 監視制御ユニット
60 表示部
61 制御装置
7 無線通信機
8 無線通信機
図1
図2
図3