IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ホワイトラインの特許一覧

<>
  • 特許-マウスガードの製造方法 図1
  • 特許-マウスガードの製造方法 図2
  • 特許-マウスガードの製造方法 図3
  • 特許-マウスガードの製造方法 図4
  • 特許-マウスガードの製造方法 図5
  • 特許-マウスガードの製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】マウスガードの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 71/08 20060101AFI20220516BHJP
【FI】
A63B71/08 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020198321
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】520154416
【氏名又は名称】株式会社ホワイトライン
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】松下 浩之
(72)【発明者】
【氏名】堀米 伸康
【審査官】大隈 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-531960(JP,A)
【文献】国際公開第2020/005413(WO,A1)
【文献】特開2020-6169(JP,A)
【文献】近藤 尚知, 深澤 翔太,「口腔内スキャナを応用したマウスガード製作法」,日本歯科理工学会誌,日本,一般社団法人 日本歯科理工学会,2016年11月25日,第35巻 第6号,p.333-336
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 71/08
A61C 7/08
G10D 9/02~9/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウスガードを装着する装着者の歯の形状を含む口腔内の3次元形状データに基づいて、マウスガードを形成するステップを備え、
前記マウスガードを形成するステップにおいて、前記装着者の装着時において前記装着者の実際の前記歯の形状寸法と異なる寸法を有するように前記3次元形状データが有する形状寸法を拡大又は縮小して、又は、前記装着者の装着時において前記装着者の実際の前記歯の形状寸法と異なる寸法を有するように前記3次元形状データに基づいて作成される前記マウスガードの形状に関するマウスガード形状データが有する形状寸法を拡大又は縮小して、前記装着者の装着時において前記装着者の実際の前記歯の形状寸法と異なる寸法を有する前記マウスガードを形成するマウスガードの製造方法。
【請求項2】
前記マウスガードを形成するステップにおいて、前記装着者の装着時において前記装着者の実際の前記歯の形状寸法と異なる寸法を有するように前記3次元形状データが有する形状寸法を拡大又は縮小して、前記装着者の装着時において実際の前記歯の形状寸法と異なる寸法を有する前記マウスガードに対応した型に関する型形状データを作成するステップを有する請求項1に記載のマウスガードの製造方法。
【請求項3】
作成された前記型形状データに基づいて、歯型模型を3次元造形装置によって形成する請求項2に記載のマウスガードの製造方法。
【請求項4】
前記歯型模型に対して前記マウスガードの材料である樹脂材料が圧着されて前記マウスガードが形成される請求項3に記載のマウスガードの製造方法。
【請求項5】
作成された前記型形状データに基づいて、前記マウスガードの形状に関する3次元造形用マウスガード形状データを作成するステップを更に備え、
作成された前記3次元造形用マウスガード形状データに基づいて、前記マウスガードを3次元造形装置によって形成する請求項2に記載のマウスガードの製造方法。
【請求項6】
前記型形状データを作成するステップにおいて、前記型が実際の前記歯に対して相似形状となり、前記装着者の装着時において前記装着者の実際の前記歯の形状寸法と異なる寸法を有するように、前記3次元形状データが有する形状寸法を拡大又は縮小する請求項2から5のいずれか1項に記載のマウスガードの製造方法。
【請求項7】
前記マウスガードを形成するステップにおいて、前記装着者の装着時において前記装着者の実際の前記歯の形状寸法と異なる寸法を有するように前記マウスガード形状データが有する形状寸法を拡大又は縮小して、前記装着者の装着時において実際の前記歯の形状寸法と異なる寸法を有する前記マウスガードの形状に関する3次元造形用マウスガード形状データを作成するステップを有し、
作成された前記3次元造形用マウスガード形状データに基づいて、前記マウスガードを3次元造形装置によって形成する請求項1に記載のマウスガードの製造方法。
【請求項8】
前記3次元形状データが3次元スキャナーによって取得される請求項1から7のいずれか1項に記載のマウスガードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マウスガードの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
野球、ラグビーなどのスポーツを行う際、歯にスポーツ用マウスピースとも呼ばれるマウスガードを装着する場合がある。マウスガードを装着することによって、歯や口腔内の損傷が防止される。また、マウスガードを装着しない場合と異なり、歯を噛み合わせて食いしばるときに生じる力のかかり方が変わることから、運動パフォーマンスが向上するなどの効果が知られている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、顎関節の位置が全身の筋肉及び関節と連動した状態でリラックスした状態の位置(中立位)になるようにマウスピースを作製することで、マウスピース使用時の全身の筋肉及び関節のバランスを向上させ、ひいてはスポーツや日常生活におけるパフォーマンスを向上させるという技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-6169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マウスガードを装着したとき、歯や顎への装着具合に応じて、運動パフォーマンスの良否に影響を与える可能性がある。また、異物を口腔内に常時挿入した状態になることから、装着者はマウスガードに対して感じる感覚(装着感)に敏感になる。そのため、確実にしっかり装着されているというフィット感を感じるのか、緩く装着されていて外れそうであると感じるのかによっても、装着者の運動パフォーマンスが異なってくる。
【0006】
さらに、マウスガードを装着するときに、歯の配置や向きの個人差によって、歯に対する嵌めやすさが異なる。そのため、人によっては、マウスガードを嵌めにくかったり取り外しにくかったりする場合がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、マウスガードを装着したときに感じる装着感の調整や、歯に対する着脱の調整を容易に行うことが可能なマウスガードの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のマウスガードの製造方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係るマウスガードの製造方法は、マウスガードを装着する装着者の歯の形状を含む口腔内の3次元形状データに基づいて、マウスガードを形成するステップを備え、前記マウスガードを形成するステップにおいて、前記装着者の装着時において前記装着者の実際の前記歯の形状寸法と異なる寸法を有するように前記3次元形状データが有する形状寸法を拡大又は縮小して、又は、前記装着者の装着時において前記装着者の実際の前記歯の形状寸法と異なる寸法を有するように前記3次元形状データに基づいて作成される前記マウスガードの形状に関するマウスガード形状データが有する形状寸法を拡大又は縮小して、前記装着者の装着時において前記装着者の実際の前記歯の形状寸法と異なる寸法を有する前記マウスガードを形成する。
【0009】
この構成によれば、マウスガードを装着する装着者の歯の形状を含む口腔内の3次元形状データに基づいてマウスガードが形成される。マウスガードが形成される際、3次元形状データが有する形状寸法が拡大又は縮小されて、拡大又は縮小された形状寸法に基づいて、装着者の実際の歯の形状寸法と異なる寸法を有するマウスガードが形成される。または、マウスガードが形成される際、マウスガードの形状に関するマウスガード形状データが有する形状寸法が拡大又は縮小されて、拡大又は縮小された形状寸法に基づいて、装着者の実際の歯の形状寸法と異なる寸法を有するマウスガードが形成される。ここで、マウスガード形状データは、3次元形状データに基づいて作成されたものである。
【0010】
これにより、実際の歯の形状に対して拡大又は縮小された寸法を有するマウスガードが形成される。実際の歯の形状よりも小さい寸法を有するマウスガードは、歯や顎に確実に装着される。また、実際の歯の形状よりも大きい寸法を有するマウスガードは、歯に対する装着や取り外しが容易になる。
【0011】
上記発明における前記マウスガードを形成するステップにおいて、前記装着者の装着時において前記装着者の実際の前記歯の形状寸法と異なる寸法を有するように前記3次元形状データが有する形状寸法を拡大又は縮小して、前記装着者の装着時において実際の前記歯の形状寸法と異なる寸法を有する前記マウスガードに対応した型に関する型形状データを作成するステップを有してもよい。
【0012】
この構成によれば、マウスガードが形成される際、3次元形状データが有する形状寸法が拡大又は縮小されて、拡大又は縮小された形状寸法に基づいて、実際の歯の形状寸法と異なる寸法を有するマウスガードに対応した型に関する型形状データが作成される。
【0013】
上記発明における作成された前記型形状データに基づいて、歯型模型を3次元造形装置によって形成してもよい。
【0014】
この構成によれば、作成された型形状データに基づいて、歯型模型が3次元造形装置によって形成される。
【0015】
上記発明において、前記歯型模型に対して前記マウスガードの材料である樹脂材料が圧着されて前記マウスガードが形成されてもよい。
【0016】
この構成によれば、歯型模型に対して樹脂材料を圧着することによって、実際の歯の形状に対して拡大又は縮小された寸法を有するマウスガードが形成される。
【0017】
上記発明において、作成された前記型形状データに基づいて、前記マウスガードの形状に関する3次元造形用マウスガード形状データを作成するステップを更に備え、作成された前記3次元造形用マウスガード形状データに基づいて、前記マウスガードを3次元造形装置によって形成してもよい。
【0018】
この構成によれば、作成された型形状データに基づいて、マウスガードの形状に関する3次元造形用マウスガード形状データが作成され、作成された3次元造形用マウスガード形状データに基づいて、マウスガードが3次元造形装置によって形成される。
【0019】
上記発明における前記型形状データを作成するステップにおいて、前記型が実際の前記歯に対して相似形状となり、前記装着者の装着時において前記装着者の実際の前記歯の形状寸法と異なる寸法を有するように、前記3次元形状データが有する形状寸法を拡大又は縮小してもよい。
【0020】
この構成によれば、口腔内の3次元形状データが有する形状寸法が拡大又は縮小されて、実際の歯に対して相似形状となるように型形状データが作成される。
【0021】
上記発明において、前記マウスガードを形成するステップにおいて、前記装着者の装着時において前記装着者の実際の前記歯の形状寸法と異なる寸法を有するように前記マウスガード形状データが有する形状寸法を拡大又は縮小して、前記装着者の装着時において実際の前記歯の形状寸法と異なる寸法を有する前記マウスガードの形状に関する3次元造形用マウスガード形状データを作成するステップを有し、作成された前記3次元造形用マウスガード形状データに基づいて、前記マウスガードを3次元造形装置によって形成してもよい。
【0022】
この構成によれば、マウスガードが形成される際、マウスガード形状データが有する形状寸法が拡大又は縮小されて、実際の前記歯の形状寸法と異なる寸法を有するマウスガードの形状に関する3次元造形用マウスガード形状データが作成される。そして、作成された3次元造形用マウスガード形状データに基づいて、マウスガードが3次元造形装置によって形成される。
【0023】
上記発明において、前記3次元形状データが3次元スキャナーによって取得されてもよい。
【0024】
この構成によれば、マウスガードを装着する装着者の歯の形状を含む口腔内の3次元形状データが3次元スキャナーによって取得される。3次元形状データには、装着者の実際の歯の形状寸法が含まれる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、マウスガードを装着したときに感じる装着感の調整や、歯に対する着脱の調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態に係るマウスガードの製造方法で用いられる装置を示す構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るマウスガードの製造方法を示すフローチャートである。
図3】本発明の第2実施形態に係るマウスガードの製造方法で用いられる装置を示す構成図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るマウスガードの製造方法を示すフローチャートである。
図5】本発明の第2実施形態に係るマウスガードの製造方法における3次元造形用マウスガード形状データの作成方法を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2実施形態に係るマウスガードの製造方法における3次元造形用マウスガード形状データの作成方法の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[第1実施形態]
以下に、本発明の第1実施形態に係るマウスガードの製造方法について、図面を参照して説明する。
【0028】
本実施形態に係るマウスガードの製造方法では、例えば、図1に示すように、3Dスキャナー(3次元スキャナー)1、3Dプリンター(3次元造形装置)2、これらを動作させるための情報処理装置3,4及び歯型模型5などが用いられる。情報処理装置3,4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0029】
情報処理装置3は、3Dスキャナー1で取得された3次元形状データに対して演算処理を行い、歯型模型5の形状に関する3次元造形用型形状データを作成する。本実施形態における3次元造形用型形状データは、本発明に係る型形状データの一例である。情報処理装置4は、3次元造形用型形状データに基づいて、3Dプリンター2の動作を実行させる。
【0030】
歯型模型5は、3Dプリンター2によって形成され、マウスガードが装着者の歯の形状に対応した形状となるように成形型として用いられる。
【0031】
本実施形態では、マウスガードを装着する装着者の歯の形状を含む口腔内の3次元形状データが取得され、取得された3次元形状データに基づいて歯型模型5が形成される。本実施形態では、取得された3次元形状データに基づいて、歯型模型5が3Dプリンター2によって造形されて作成される。3Dプリンター2による3次元造形方法は、限定されないが、例えば液槽光重合(光造形)法である。そして、歯型模型5が形成された後、マウスガードの材料である樹脂材料が歯型模型5に対して圧着されることによって、マウスガードが形成される。
【0032】
図2に示すように、まず、3Dスキャナー1によるスキャンによって、装着者の歯を含む口腔内の形状、すなわち、歯列及び上顎又は下顎の形状が3次元形状データとして取得される(ステップS11)。3次元形状データには、装着者の実際の歯などの形状寸法に関する情報が含まれる。取得された3次元形状データは、一時的に記憶装置に記録される。記憶装置は、メモリ、ハードディスクなどの記憶媒体を有し、ローカルに設置されたパーソナルコンピュータ又はインターネットなどを介して接続されたサーバ装置などに内蔵されてもよい。歯型模型5に関する3次元造形用型形状データを作成するための情報処理装置3(例えばパーソナルコンピュータなど)は、記憶装置から3次元形状データを取得する。
【0033】
次に、歯型模型5が3Dプリンター2によって造形されるように、歯型模型5の形状に関する3次元造形用型形状データを作成する(ステップS12)。このとき、3次元形状データにおける装着者の実際の歯などの形状寸法が演算処理されることによって、後述するとおり、3次元造形用型形状データには、実際の歯などの形状寸法とは異なる寸法に関する情報が含まれる。
【0034】
3次元造形用型形状データは、歯型模型5の外形に関するデータであり、取得された3次元形状データに基づいて、例えば3次元CADソフトウェアを用いて作成される。作成された3次元造形用型形状データは、一時的に記憶装置に記録される。記憶装置は、メモリ、ハードディスクなどの記憶媒体を有し、ローカルに設置されたパーソナルコンピュータ又はインターネットなどを介して接続されたサーバ装置などに内蔵されてもよい。3Dプリンター2を動作させるための情報処理装置4(例えばパーソナルコンピュータなど)は、記憶装置から3次元造形用型形状データを取得する。
【0035】
その後、作成された歯型模型5に関する3次元造形用型形状データに基づいて、3Dプリンター2によって歯型模型5を造形する(ステップS13)。3Dプリンター2は、例えば情報処理装置4によって、動作が制御される。3Dプリンター2による造形が完了すると、3Dプリンター2によって造形された造形物からサポート部を除去するなどの仕上げが行われて、歯型模型5が完成する。歯型模型5の材料は、歯型模型5の材料として通常用いられる材料、特に3Dプリンター2によって造形されるときの歯型模型5に適した材料が適用される。
【0036】
歯型模型5が完成した後、マウスガードの材料である樹脂材料が、歯型模型5に加熱しながら圧着される。これにより、歯型模型5の形状に対応してマウスガードが形成される(ステップS14)。歯型模型5にフィットするように樹脂材料が成形された後、仕上げが行われることによって、マウスガードが完成する。マウスガードの材料は、マウスガードの材料として通常用いられるものが適用される。
【0037】
次に、歯型模型5に関する3次元造形用型形状データの作成方法と、3次元造形用型形状データに基づく歯型模型5の形成方法について説明する。
【0038】
3次元造形用型形状データは、3次元形状データが有する実際の歯の形状寸法そのままの値ではなく、3次元形状データが有する形状寸法が拡大又は縮小されることによって作成される。例えば、歯型模型5が実際の歯に対して相似形状となるように、3次元形状データが有する形状寸法が拡大又は縮小される。なお、3次元形状データが有する形状寸法に対する拡大又は縮小は、全体的に相似形状とする場合に限られず、歯の部分のみ、又は、顎の部分のみを相似形状としてもよいし、幅方向、奥行方向及び高さ方向の少なくとも一つの方向のみを拡大又は縮小してもよい。幅方向、奥行方向及び高さ方向は、例えば、3次元CADソフトウェアにおける互いに直交するX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に対応する。
【0039】
拡大又は縮小された形状寸法に基づいて3次元造形用型形状データが作成されることから、3Dプリンター2によって、実際の歯の形状寸法と異なる寸法を有する歯型模型5が形成される。
【0040】
そして、このように形成された歯型模型5に対して樹脂材料を圧着することによって、実際の歯の形状に対して拡大又は縮小された寸法を有するマウスガードが形成される。実際の歯の形状よりも小さい寸法を有するマウスガードは、歯や顎に確実に装着される。また、実際の歯の形状よりも大きい寸法を有するマウスガードは、歯に対する装着や取り外しが容易になる。
【0041】
例えば、3次元形状データが有する形状寸法を拡大する場合は、3次元形状データの形状寸法に対して100.2%とし、3次元形状データが有する形状寸法を縮小する場合は、3次元形状データの形状寸法に対して99.8%とする。なお、これらの倍率は、例示であり、本発明に適用される倍率はこれらの例に限定されない。拡大又は縮小の倍率は、マウスガードが歯に装着されたとき、マウスガードの本来の機能が維持される範囲で設定される。
【0042】
3次元造形用型形状データは、情報処理装置3において、3次元形状データに対して、任意に倍率を変更して作成できることから、装着者の歯の配置や向きやフィット感などを考慮して倍率を決定して作成可能である。従来、歯型模型は、歯科医院などの歯科医によって印象材を用いた型取りが行われた後、歯科技工所などの歯科技工士によって型に石膏を流すことで形成されている。この場合、印象材による型の形状寸法を変更できないため、装着者の実際の歯の形状寸法と異なる歯型模型を形成することは困難である。
【0043】
これに対して、本実施形態では、3Dスキャナー1によるスキャンによって、装着者の歯を含む口腔内の形状が3次元形状データとして取得された後、3次元形状データに基づいて、歯型模型5が3Dプリンター2によって造形されて作成されるため、歯型模型5の形状寸法の調整が容易である。したがって、従来のマウスガードと異なり、実際の歯の形状寸法と異なる寸法を有するマウスガードを容易に形成できる。そして、実際の歯の形状よりも小さい寸法を有するマウスガードは、歯や顎に確実に装着されることから、確実にしっかり装着されているというフィット感を感じることができ、運動パフォーマンスが向上する場合がある。また、実際の歯の形状よりも大きい寸法を有するマウスガードは、実際の歯の寸法と同じ場合と異なり、マウスガードの着脱がしづらい歯の配置や向きであっても、歯に対する装着や取り外しが容易になる。
【0044】
[第2実施形態]
以下に、本発明の第2実施形態に係るマウスガードの製造方法について、図面を参照して説明する。上述した第1実施形態では、3Dプリンター2によって歯型模型5を形成して、その後、歯型模型5に樹脂材料を圧着させてマウスガードを形成する場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。本実施形態で後述するとおり、歯型模型5を形成せずに3Dプリンター2によってマウスガードを形成してもよい。
【0045】
本実施形態に係るマウスガードの製造方法では、例えば、図3に示すように、3Dスキャナー(3次元スキャナー)1、3Dプリンター(3次元造形装置)2、及び、これらを動作させるための情報処理装置3,4などが用いられる。情報処理装置3,4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0046】
情報処理装置3は、3Dスキャナー1で取得された3次元形状データに対して演算処理を行い、3次元造形用マウスガード形状データを作成する。情報処理装置4は、3次元造形用マウスガード形状データに基づいて、3Dプリンター2の動作を実行させる。
【0047】
本実施形態では、マウスガードを装着する装着者の歯の形状を含む口腔内の3次元形状データが取得され、取得された3次元形状データに基づいてマウスガードが3Dプリンター2によって造形され作成される。3Dプリンター2による3次元造形方法は、限定されないが、例えば液槽光重合(光造形)法である。すなわち、歯型模型5が形成されることなく、マウスガードの材料である樹脂材料を適用して3Dプリンター2がマウスガードを形成する。
【0048】
図4に示すように、まず、3Dスキャナー1によるスキャンによって、装着者の歯を含む口腔内の形状、すなわち、歯列及び上顎又は下顎の形状が3次元形状データとして取得される(ステップS21)。3次元形状データには、装着者の実際の歯などの形状寸法に関する情報が含まれる。取得された3次元形状データは、一時的に記憶装置に記録される。記憶装置は、メモリ、ハードディスクなどの記憶媒体を有し、ローカルに設置されたパーソナルコンピュータ又はインターネットなどを介して接続されたサーバ装置などに内蔵されてもよい。マウスガードに関する3次元造形用マウスガード形状データを作成するための情報処理装置3(例えばパーソナルコンピュータなど)は、記憶装置から3次元形状データを取得する。
【0049】
次に、マウスガードが3Dプリンター2によって造形されるように、マウスガードの形状に関する3次元造形用マウスガード形状データを作成する(ステップS22)。このとき、3次元形状データにおける装着者の実際の歯などの形状寸法が演算処理されることによって、後述するとおり、3次元造形用マウスガード形状データには、実際の歯などの形状寸法とは異なる寸法に関する情報が含まれる。
【0050】
3次元造形用マウスガード形状データは、マウスガードの外形に関するデータであり、取得された3次元形状データに基づいて、例えば3次元CADソフトウェアを用いて作成される。作成された3次元造形用マウスガード形状データは、一時的に記憶装置に記録される。記憶装置は、メモリ、ハードディスクなどの記憶媒体を有し、ローカルに設置されたパーソナルコンピュータ又はインターネットなどを介して接続されたサーバ装置などに内蔵されてもよい。3Dプリンター2を動作させるための情報処理装置4(例えばパーソナルコンピュータなど)は、記憶装置から3次元造形用マウスガード形状データを取得する。
【0051】
その後、作成された3次元造形用マウスガード形状データに基づいて、3Dプリンター2によってマウスガードを造形する(ステップS23)。3Dプリンター2は、例えば情報処理装置4によって、動作が制御される。3Dプリンター2による造形が完了すると、3Dプリンター2によって造形された造形物からサポート部を除去するなどの仕上げが行われて、マウスガードが完成する。マウスガードの材料は、マウスガードの材料として通常用いられる材料、特に3Dプリンター2によって造形されるときのマウスガードに適した材料が適用される。
【0052】
次に、3次元造形用マウスガード形状データの作成方法について説明する。
【0053】
3次元造形用マウスガード形状データは、3次元形状データが有する実際の歯の形状寸法そのままの値ではなく、マウスガードの形状に関するマウスガード形状データが有する形状寸法が拡大又は縮小されることによって作成される。なお、マウスガード形状データは、3次元形状データに基づいて作成されるものである。
【0054】
すなわち、図5に示すように、まず、3次元形状データに基づいて、実際の歯に対応するように、実際の歯の形状寸法を有する仮想上の基準マウスガードが情報処理装置3において作成される(ステップS31)。この結果、基準マウスガードに関するマウスガード形状データが取得される(ステップS32)。そして、仮想上の基準マウスガードのマウスガード形状データに対して形状寸法を拡大又は縮小することによって、3次元造形用マウスガード形状データが作成される(ステップS33)。
【0055】
造形されるマウスガードは、例えば、実際の歯の形状寸法を有する仮想上の基準マウスガードに対して相似形状となるように、基準マウスガードの形状寸法が拡大又は縮小された寸法を有する。なお、仮想上の基準マウスガードが有する形状寸法に対する拡大又は縮小は、全体的に相似形状とする場合に限られず、歯の部分のみ、又は、顎の部分のみを相似形状としてもよいし、幅方向、奥行方向及び高さ方向の少なくとも一つの方向のみを拡大又は縮小してもよい。
【0056】
実際の歯の形状寸法を有する仮想上の基準マウスガードに対して拡大又は縮小された形状寸法に基づいて、3次元造形用マウスガード形状データが作成されることから、3Dプリンター2によって、実際の歯の形状寸法と異なる寸法を有するマウスガードが形成される。実際の歯の形状よりも小さい寸法を有するマウスガードは、歯や顎に確実に装着される。また、実際の歯の形状よりも大きい寸法を有するマウスガードは、歯に対する装着や取り外しが容易になる。
【0057】
例えば、基準マウスガードが有する形状寸法を拡大する場合は、基準マウスガードに関するマウスガード形状データの形状寸法に対して100.2%とし、基準マウスガードが有する形状寸法を縮小する場合は、基準マウスガードに関するマウスガード形状データの形状寸法に対して99.8%とする。なお、これらの倍率は、例示であり、本発明に適用される倍率はこれらの例に限定されない。拡大又は縮小の倍率は、マウスガードが歯に装着されたとき、マウスガードの本来の機能が維持される範囲で設定される。
【0058】
3次元造形用マウスガード形状データは、情報処理装置3において、3次元形状データに基づく基準マウスガードのマウスガード形状データに対して、任意に倍率を変更して作成できることから、装着者の歯の配置や向きやフィット感などを考慮して倍率を決定して作成可能である。
【0059】
本実施形態では、3Dスキャナー1によるスキャンによって、装着者の歯を含む口腔内の形状が3次元形状データとして取得された後、3次元形状データに基づいて、マウスガードが3Dプリンター2によって造形されて作成されるため、マウスガードの形状寸法の調整が容易である。したがって、従来のマウスガードと異なり、実際の歯の形状寸法と異なる寸法を有するマウスガードを容易に形成できる。そして、実際の歯の形状よりも小さい寸法を有するマウスガードは、歯や顎に確実に装着されることから、確実にしっかり装着されているというフィット感を感じることができ、運動パフォーマンスが向上する場合がある。また、実際の歯の形状よりも大きい寸法を有するマウスガードは、実際の歯の寸法と同じ場合と異なり、マウスガードの着脱がしづらい歯の配置や向きであっても、歯に対する装着や取り外しが容易になる。
【0060】
上述した第2実施形態では、実際の歯の形状寸法を有する仮想上の基準マウスガードを作成して、作成された基準マウスガードに対して形状寸法を拡大又は縮小することによって、3次元造形用マウスガード形状データが作成される場合について説明したが、本実施形態において、3次元造形用マウスガード形状データの作成手順はこの方法に限定されない。
【0061】
例えば、第1実施形態と異なり、第2実施形態と同様に、歯型模型を実際には形成しないが、情報処理装置3において仮想上のマウスガード用型を作成して、仮想上のマウスガード用型が有する形状寸法を拡大又は縮小するようにしてもよい。そして、仮想上のマウスガード用型に対応するようにマウスガードの形状に関する3次元造形用マウスガード形状データが作成される。
【0062】
以下、この例について、第2実施形態に係る3次元造形用マウスガード形状データの作成方法の変形例として説明する。
【0063】
本変形例において、3次元造形用マウスガード形状データは、3次元形状データが有する実際の歯の形状寸法そのままの値ではなく、3次元形状データが有する形状寸法が拡大又は縮小されることによって作成される。例えば、情報処理装置3において、仮想上のマウスガード用型が実際の歯に対して相似形状となるように、3次元形状データが有する形状寸法が拡大又は縮小される。なお、3次元形状データが有する形状寸法に対する拡大又は縮小は、全体的に相似形状とする場合に限られず、歯の部分のみ、又は、顎の部分のみを相似形状としてもよいし、幅方向、奥行方向及び高さ方向の少なくとも一つの方向のみを拡大又は縮小してもよい。
【0064】
図6に示すように、情報処理装置3において、3次元形状データが有する形状寸法が拡大又は縮小されることによって、実際の歯の形状寸法と異なる寸法を有する仮想上のマウスガード用型が作成される(ステップS41)。これにより、仮想上のマウスガード用型の型形状データが取得される(ステップS42)。本変形例における仮想上のマウスガード用型の型形状データは、本発明に係る型形状データの一例である。
【0065】
次に、型形状データに基づいて、仮想上のマウスガード用型に対応するように、情報処理装置3において、仮想上のマウスガードが作成される(ステップS43)。この結果、実際の歯の形状寸法と異なる寸法を有する3次元造形用マウスガード形状データが作成される(ステップS44)。
【0066】
拡大又は縮小された形状寸法に基づいて3次元造形用マウスガード形状データが作成されることから、3Dプリンター2によって、実際の歯の形状寸法と異なる寸法を有するマウスガードが形成される。実際の歯の形状よりも小さい寸法を有するマウスガードは、歯や顎に確実に装着される。また、実際の歯の形状よりも大きい寸法を有するマウスガードは、歯に対する装着や取り外しが容易になる。
【0067】
例えば、3次元形状データが有する形状寸法を拡大する場合は、3次元形状データの形状寸法に対して100.2%とし、3次元形状データが有する形状寸法を縮小する場合は、3次元形状データの形状寸法に対して99.8%とする。なお、これらの倍率は、例示であり、本発明に適用される倍率はこれらの例に限定されない。拡大又は縮小の倍率は、マウスガードが歯に装着されたとき、マウスガードの本来の機能が維持される範囲で設定される。
【符号の説明】
【0068】
1 :3Dスキャナー
2 :3Dプリンター
3 :情報処理装置
4 :情報処理装置
5 :歯型模型
【要約】
【課題】マウスガードを装着したときに感じる装着感の調整や、歯に対する着脱の調整を容易に行うことが可能なマウスガードの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】マウスガードの製造方法は、マウスガードを装着する装着者の歯の形状を含む口腔内の3次元形状データに基づいてマウスガードを形成するステップ(S14)を備え、マウスガードを形成するステップにおいて、3次元形状データが有する形状寸法を拡大又は縮小して、装着者の実際の歯の形状寸法と異なる寸法を有するマウスガードを形成する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6