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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 11/00 20060101AFI20220516BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
H02G11/00
B60R16/02 623T
B60R16/02 620C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018072848
(22)【出願日】2018-04-05
(65)【公開番号】P2019187020
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】関野 司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 光伸
(72)【発明者】
【氏名】大塚 竜也
(72)【発明者】
【氏名】横山 真樹
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-073428(JP,A)
【文献】特開2017-192259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体とスライドドアとを有する車両において、前記車体と前記スライドドアとを電気的に接続する給電装置であって、
前記車体と前記スライドドアとの間に配索されるワイヤハーネスと、
前記車体に水平方向に揺動自在に支持されるロータと、を備え、
前記ワイヤハーネスが、電線と、該電線に外装される外装部材と、を有し、
前記ロータが、前記外装部材の一端が固定される外装部材固定部を有し、
前記ロータの回転中心軸方向と、前記外装部材固定部に固定された前記外装部材の一端の軸方向と、が交わることはない関係であり、
前記スライドドアは、前記車体の昇降口を開閉するものであり、
前記ロータが、前記昇降口近傍に設けられ、
前記スライドドアが前記昇降口を全閉する全閉位置にある際に、前記外装部材の前記一端は、前記外装部材固定部によって、前記車体の前記昇降口を構成する段差から車幅方向に離間した位置に固定されていることを特徴とする給電装置。
【請求項2】
前記スライドドアが閉位置にある際に、前記外装部材の一端における軸方向が、前記車両に進行方向に沿うように、前記外装部材固定部に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の給電装置。
【請求項3】
前記外装部材の所定の許容方向への湾曲を許容し、反対側となる規制方向への所定の限界状態以上の湾曲を規制する湾曲規制部材を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、スライドドアを備えた車両には、車両本体からスライドドアに電力を供給するための給電装置が設けられる。即ち、給電装置のワイヤハーネスによって、車両本体に搭載されたバッテリ等と、スライドドアに設けられた電装部品と、が電気的に接続されて電力が供給されるようになっている。このような給電装置のワイヤハーネスは、電線がコルゲートチューブ等の外装部材によって覆われて形成されるとともに、車体側において揺動可能に支持される(例えば、特許文献1参照)。即ち、スライドドアの開閉時には、ワイヤハーネスがスライドドアの移動に追随してスライドドアと平行かつスライドドアの開閉方向と直交する揺動軸回りに揺動するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-150540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来の給電装置では、スライドドアが移動することで、揺動軸近傍に支持されたワイヤハーネスの外装部材の車体側の端部に、局部的に大きな負荷がかかってしまう場合があった。このため、外装部材を長期に亘って使用することと破損することが懸念される。
【0005】
本発明の目的は、電線に外装される外装部材を破損を伴わずに長期に亘って使用できる給電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、車体とスライドドアとを有する車両において、前記車体と前記スライドドアとを電気的に接続する給電装置であって、前記車体と前記スライドドアとの間に配索されるワイヤハーネスと、前記車体に水平方向に揺動自在に支持されるロータと、を備え、前記ワイヤハーネスが、電線と、該電線に外装される外装部材と、を有し、前記ロータが、前記外装部材の一端が固定される外装部材固定部を有し、前記ロータの回転中心軸方向と、前記外装部材固定部に固定された前記外装部材の一端の軸方向と、が交わることはない関係であり、前記スライドドアは、前記車体の昇降口を開閉するものであり、
前記ロータが、前記昇降口近傍に設けられ、前記スライドドアが前記昇降口を全閉する全閉位置にある際に、前記外装部材の前記一端は、前記外装部材固定部によって、前記車体の前記昇降口を構成する段差から車幅方向に離間した位置に固定されていることを特徴とする給電装置である。
【0007】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載の発明において、前記スライドドアが閉位置にある際に、前記外装部材の一端における軸方向が、前記車両に進行方向に沿うように、前記外装部材固定部に固定されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載された発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記外装部材の所定の許容方向への湾曲を許容し、反対側となる規制方向への所定の限界状態以上の湾曲を規制する湾曲規制部材を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、前記ロータの回転中心軸方向と、前記外装部材固定部に固定された前記外装部材の一端の軸方向と、が交わることはない関係である。即ち、外装部材固定部により、外装部材の一端が、ロータの回転中心からオフセットされた位置にあるから、従来技術の如く、車体側の端部に作用する局部的な負荷が軽減される。従って、外装部材を破損を伴わずに長期に亘って使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態にかかる給電装置を示す平面図である。
図2】前記給電装置のワイヤハーネスを構成する湾曲規制部材を上方から見た平面図である。
図3】前記湾曲規制部材の図2中のA-A線に沿う断面図である。
図4】前記給電装置を構成するロータを示す斜視図である。
図5図4の前記ロータを車体側支持部材に組み付け、上方から見た模式的平面図である。
図6】スライドドアが閉位置にある際における図1中のJ-J線に沿う模式的断面図である。
図7】本発明の第2実施形態にかかる給電装置を示す平面図である。
図8】前記給電装置を構成するロータを示す斜視図である。
図9】前記ロータを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施の形態にかかる給電装置1を示す平面図である。また、図1は、スライドドア3の全閉状態、半開状態及び全開状態のそれぞれにおける給電装置1の様子を示している。なお、スライドドア3は、車両4の側面に設けられて進行方向の後方側に向かってスライドして開くものである。
【0013】
本実施形態の給電装置1は、図1に示すように、車体2とスライドドア3を有する車両4において、車体2とスライドドア3との間に配索されるワイヤハーネス10を介して両者を電気的に接続する装置である。尚、この図1では、図中右側が車両4の前側に相当し、図中左側が車両4の後側に相当し、図中上側が車両4の室外側に相当し、図中下側が車両4の室内側に相当する。また、図中上下方向が車幅方向(X方向で示す)であり、図中左右方向が車両4の進行方向(Y方向で示す)であり、紙面に対する垂直方向が高さ方向(Z方向で示す)である。
【0014】
給電装置1では、車体2に設けられた不図示の電源からスライドドア3に設けられた不図示の電気機器へとワイヤハーネス10を介して電力が供給される。また、この給電装置1では、車体2に設けられた不図示の制御手段とスライドドア3に設けられた不図示の電気機器との間でワイヤハーネス10を介して電気信号の授受も行われる。給電装置1は、ワイヤハーネス10、ドア側保持部5、及び車体側保持部6を備えている。ワイヤハーネス10は、複数本の電線が束ねられた電線束11(電線)における一部が樹脂製のコルゲートチューブ12(外装部材)に通されたものとなっている。電線束11では、車体2とスライドドア3との間の部分がコルゲートチューブ12に通されている。
【0015】
コルゲートチューブ12におけるスライドドア3側の端部がドア側保持部5に、車両4の上下方向であるZ方向を揺動軸方向としてXY平面上で揺動自在に保持されている。このXY平面は、スライドドア3と交差するとともにスライドドア3の開閉方向D11(車両4の前後方向であるY方向)に沿った平面(水平方向の面)となっている。ドア側保持部5は、スライドドア3に固定されている。ドア側保持部5に設けられたZ方向に沿ったドア側揺動軸51は、スライドドア3と平行でかつスライドドア3の開閉方向D11と直交する軸となっている。
【0016】
ドア側保持部5によるコルゲートチューブ12の保持により、ワイヤハーネス10は、そのスライドドア3側の部分がドア側揺動軸51回りにXY平面上で揺動自在に保持されている。ワイヤハーネス10を構成する電線束11におけるスライドドア3側は、コルゲートチューブ12のスライドドア3側の端部から出ている。さらに、電線束11は、ドア側保持部5の内部の不図示の通路を通ってこのドア側保持部5からも出た後に、スライドドア3の電気機器へと延びている。
【0017】
他方、コルゲートチューブ12における車体2側の端部が車体側保持部6に、車両4の上下方向であるZ方向を揺動軸方向としてXY平面上で揺動自在に保持されている。車体側保持部6は、車体2に固定されている。車体側保持部6に設けられたZ方向に沿った車体側揺動軸61は、スライドドア3と平行かつスライドドア3の開閉方向D11と直交する軸となっている。コルゲートチューブ12における車体2側の端部は、車体側保持部6によって車体側揺動軸61回りに揺動自在に保持されている。車体側保持部6によるコルゲートチューブ12の保持により、ワイヤハーネス10は、その車体2側の部分が車体側揺動軸61回りにXY平面上で揺動自在に保持されている。電線束11における車体2側は、コルゲートチューブ12の車体2側の端部から出て、さらに、車体側保持部6の内部の通路を通ってこの車体側保持部6からも出た後に、車体2における不図示の電源や制御手段へと延びている(図6参照)。
【0018】
スライドドア3の開閉時には、コルゲートチューブ12の両端部がスライドドア3の移動に追随して各揺動軸51、61回りに揺動する。これにより、コルゲートチューブ12、つまりは、その内部に電線束11が通されたワイヤハーネス10が、スライドドア3の移動に追随して変形しつつ移動する。
【0019】
さらに、ワイヤハーネス10は、図2図3に示すように、コルゲートチューブ12の内側で、電線束11の周囲を囲みこれに沿わされて、電線束11やコルゲートチューブ12の湾曲をガイドするコルゲートガイド13を有している。コルゲートガイド13は、コルゲートチューブ12と略同じ長さを有している。図3において、コルゲートチューブ12は省略されている。
【0020】
コルゲートガイド13は、電線束11の軸方向に配列された複数の部材131と、複数の部材131を連結する連結部132と、を備えている。本実施形態では、複数の部材131及び連結部132が、樹脂により互いに一体に成型されている。
【0021】
複数の部材131は、それぞれ、上下に対向して設けられて互いの間に電線束11を位置させる一対の対向壁133、133と、一対の対向壁133、133に連続される連続壁134と、を備えて略コ字状に形成されている。各対向壁133は、略長方形板状の対向壁本体135と、対向壁本体135の長手方向の中央部から連続壁134に向けて延出されて対向壁本体135と連続壁134とを連結する連結壁136と、を一体に備えて構成されている。各対向壁本体135は、その長手方向の一方の端部に設けられているとともに該一方に向けて凸の凸状部135Aと、その長手方向の他方の端部に設けられているとともに該他方に向けて凹の凹状部135Bと、を有している。隣接する対向壁133、133は、電線束11の軸方向の一方に設けられた凸の凸状部135Aと、電線束11の軸方向の他方に設けられた凹の凹状部135Bとが、係合可能に形成されている。
【0022】
このようなコルゲートガイド13は、複数の部材131の配列方向が電線束11の軸方向に沿うとともに、後述する車体側揺動部6の車体側揺動部本体630(図4図5に示す)の長方形状部634における、第1軸部61A及び第2軸部61Bが設けられた一端側に対向壁133が位置し、長方形状部634の長手方向の他端側に連続壁134が位置する姿勢で設けられている。これにより、コルゲートガイド13は、スライドドア3の開閉移動に伴う許容方向(車幅方向(矢印X方向)の車体2から離れる方向)への湾曲を許容し、規制方向(車幅方向の車体2に近付く方向)へ湾曲した際に、隣接する対向壁133の凸の凸状部135Aと凹の凹状部135Bとが係合されることで、規制方向への所定の限界状態以上の湾曲を規制する。
【0023】
ドア側保持部5は、図1に示すように、案内部材54が一体に成形されたドア側支持部材52と、ドア側揺動軸51を有するドア側揺動部材50と、を備えている。ドア側支持部材52は、スライドドア3のドアパネル51に固定される。ドア側揺動部材50は、コルゲートチューブ12におけるスライドドア3側の端部を保持することで、その内部に電線束11が通されたワイヤハーネス10におけるスライドドア3側の一部を保持する。そして、ドア側揺動部材50は、スライドドア3と平行かつスライドドア3の開閉方向D11(Y方向)と直交するZ方向を軸方向とするドア側揺動軸51回りに、スライドドア3の開閉方向D11に揺動自在に、ドア側支持部材52に軸支される。案内部材54は、コルゲートチューブ12を出てドア側揺動部材50の内部を通った電線束11をY方向後側に向けて案内する。
【0024】
車体側保持部6は、車体側支持部材62と、車体側揺動軸61を有する車体側揺動部材63と、を備えている。車体側支持部材62は、車体2の不図示のフレームに固定される。車体側揺動部材63は、図4図5に示すように、コルゲートチューブ12における車体2側の端部を保持することで、その内部に電線束11が通されたワイヤハーネス10における車体2側の一部を保持する。そして、車体側揺動部材63は、スライドドア3と平行かつスライドドア3の開閉方向D11(Y方向)と直交するZ方向を軸方向とする車体側揺動軸61回りに、スライドドア3の開閉方向D11(Y方向)に揺動自在に、車体側支持部材62に軸支される。
【0025】
車体側支持部材62は、第1支持部材62Aと不図示の第2支持部材とを備えている。第1支持部材62Aには、第1軸部61Aが挿入されて、その第1軸部61Aを軸支する不図示の第1軸受部が設けられている。 車体側支持部材62における不図示の第2支持部材には、第2軸部61Bが挿入されて、その第2軸部61Bを軸支する不図示の第2軸受部が設けられている。 第1軸部61Aが第1軸受部に軸支され、第2軸部61Bが第2軸受部に軸支された状態で、第1支持部材62Aと第2支持部材とが互いに組み付けられる。そして、第1支持部材62Aが不図示の固定手段(例えば、ボルト固定)により、車体2に固定される。
【0026】
車体側揺動部材63は、図4図5に示すように、車体側揺動部本体630と、車体側揺動部本体630からZ方向下側に突出した第1軸部61Aと、車体側揺動部本体630からZ方向上側に突出した第2軸部61Bと、Z方向と直交する方向に向かって開口されてコルゲートチューブ12の車体2側の端部が固定される車体側チューブ固定口633(外装部材固定部)と、を有している。第1軸部61A及び、第2軸部61Bは、車体側揺動軸61を構成する。この車体側揺動部材63では、この車体側チューブ固定口633から、車体側揺動部本体630の長方形状部634側へ貫通する電線束11の挿通路(不図示)が形成されている。コルゲートチューブ12の車体2側の端部を出た電線束11は、この挿通路を通って車両4の内側へと向かう。
【0027】
車体側揺動部本体630は、図4図5に示すように、一端に第1軸部61A及び第2軸部61Bが位置された長方形状部634と、長方形状部634の長手方向(矢印W方向)の他端に連続されるとともに、長方形状部634の長手方向(矢印W方向)に直交(交差)する方向(矢印V方向)に角筒状に延出される延出部635と、を有して、平面視が略L字状に形成されている。延出部635の先端部に、車体側チューブ固定口633が形成されている。即ち、第1軸部61A及び第2軸部61B(車体側揺動軸61)の軸方向(矢印Z方向)と、車体側チューブ固定口633に固定されたコルゲートチューブ12の車体2側の端部における軸方向(矢印V方向)は、ねじれの関係にあり、第1軸部61A及び第2軸部61Bの軸方向(矢印Z方向)と、コルゲートチューブ12の車体2側の端部における軸方向(矢印V方向)と、は同一平面上になく、交わることはない。
【0028】
また、車体側揺動軸61と、車体側チューブ固定口633に固定されたコルゲートチューブ12の車体2側の端部における軸と、の車幅方向(矢印X方向)の離間寸法は、コルゲートチューブ12の半径寸法より大きくなるように形成されている。また、スライドドア3が全閉位置にある際に、車体側搖動軸61は、コルゲートチューブ12の車体2側の端部におけるスライドドア3の全開方向D111への延長領域に対して、車幅方向(矢印X方向)に外れた位置にある。
【0029】
このような車体側揺動部材63は、第1軸部61A及び第2軸部61Bの各軸がZ方向に延在するように車体側支持部材62に支持されている。また、車体側揺動部材63は、スライドドア3が全開位置にある際に、車体側揺動部本体630の長尺方向(矢印W方向)がY方向に沿うとともに、車体側チューブ固定口633が矢印X方向に開口する姿勢であり、スライドドア3が全閉位置にある際に、車体側揺動部本体630の長尺方向が矢印X方向に沿うとともに、車体側チューブ固定口633が矢印Y方向に開口する姿勢となる。これにより、車体側揺動部材63は、スライドドア3が全閉位置にある際に、図6に示すように、コルゲートチューブ12の車体2側の端部は、その軸方向が車両4の進行方向(Y方向で示す)に沿うように車体側チューブ固定口633により固定されている。さらに、コルゲートチューブ12の車体2側の端部は、車体側チューブ固定口633によって、車体2のステップの垂直な段差22に位置する不図示のスカッフトリムから矢印X方向に離間した位置に固定されている。即ち、車体側チューブ固定口633に固定されたコルゲートチューブ12の車体2側の端部と車体2との間に隙間Sが確保される。図6では、車体側保持部6は省略されている。
【0030】
ここで、スライドドア3の開閉時には、図1に示すように、ワイヤハーネス10が次のように変形しつつ移動する。
【0031】
スライドドア3が全開位置にある際に、車体側保持部6は、車体側揺動部本体630の長尺方向(矢印W方向)が矢印Y方向に沿うとともに、車体側チューブ固定口633が矢印X方向に開口する姿勢である。ドア側揺動部材50は、ドア側支持部材52に軸支されて、スライドドア3の閉方向D112側を向いている。この状態から、ワイヤハーネス10は、スライドドア3によって閉方向D112に押されて移動を開始する。
【0032】
そして、スライドドア3の半開時において、ワイヤハーネス10は、スライドドア3側の端部から、スライドドア3の閉方向D112前方側に延出し、途中でU字状に湾曲して車体側保持部6へと向かう姿勢を経由する。これに伴い、ワイヤハーネス10のU字における車体2側の一部が閉方向D112に向かう力を受け、車体側揺動軸61を中心として車体側揺動部本体630がスライドドア3の閉方向D112側に回転されて、車体側揺動部材63は、車体側揺動部本体630の長尺方向(矢印W方向)が矢印X方向に沿うとともに、車体側チューブ固定口633が矢印Y方向に開口する姿勢となる。
【0033】
さらなるスライドドア3の閉方向への移動に伴って、スライドドア3により、U字におけるスライドドア3側の一部が閉方向D112に引っ張られ、ドア側揺動部材50が回転される。ドア側揺動部材50は、ドア側支持部材52に軸支されて、スライドドア3の開方向D111側を向いている。この際、ワイヤハーネス10は、ドア側保持部5から車体側保持部6へと延びた姿勢となるが、コルゲートガイド13により、隣接する対向壁133の凸の凸状部135Aと凹の凹状部135Bとが係合されることで、規制方向(車体2側)への所定の限界状態以上の湾曲が規制される。こうして、スライドドア3は全閉位置に到達する。このように、スライドドア3が閉方向へ移動する際、車体側揺動部材63は、車体側揺動部本体630の長尺方向(矢印W方向)が矢印X方向に沿うとともに、車体側チューブ固定口633が矢印Y方向に開口する姿勢となる。この際、車体側チューブ固定口633に固定されたコルゲートチューブ12の車体2側の端部と車体2との間に隙間Sが確保されている。また、コルゲートガイド13により、規制方向(車体2側)への所定の限界状態以上の湾曲が規制されているから、コルゲートチューブ12と車体2との干渉の抑制が図られる。
【0034】
上述した実施形態によれば、車体側揺動部材63(ロータ)が、コルゲートチューブ12(外装部材)の一端が固定される車体側チューブ固定口633(外装部材固定部)を有し、車体側揺動部材63の車体側揺動軸61(回転中心)と、車体側チューブ固定口633に固定されたコルゲートチューブ12の一端の軸方向と、がねじれの関係である。即ち、車体側チューブ固定口633により、コルゲートチューブ12の一端が、車体側揺動部材63の車体側揺動軸61からオフセットされた位置にあるから、コルゲートチューブ12の車体2側の端部に作用する局部的な負荷が軽減される。従って、コルゲートチューブ12を破損を伴わずに長期に亘って使用することができる。
【0035】
また、スライドドア3は、車体2の昇降口を開閉するものであり、車体側揺動部材63(ロータ)が、昇降口近傍に設けられ、スライドドア3が昇降口を全閉する全閉位置にある際に、コルゲートチューブ12(外装部材)の車体2側の端部(一端)は、車体側チューブ固定口633(外装部材固定部)によって、車体2の昇降口を構成する段差22から車幅方向(矢印X方向)に離間した位置に固定されている。これによれば、スライドドア3が閉位置にある際に、コルゲートチューブ12の車体2側の端部と車体2との間に隙間Sを確保することが出来るから、スライドドア3の移動に伴うコルゲートチューブ12と車体2との干渉の抑制を図ることができる。これにより、コルゲートチューブ12の損傷が抑制されつつ、車体2の意匠面としてのスカッフトリムの傷付きが抑制される。
【0036】
また、スライドドア3が閉位置にある際に、車体側チューブ固定口633(外装部材固定部)により、コルゲートチューブ12(外装部材)の車体2側の端部(一端)における軸方向が、車両4に進行方向(矢印Y方向)に沿うように固定されている。これによれば、スライドドア3が閉位置にある際に、コルゲートチューブ12の車体2側の端部と車体2との間に隙間Sをより確実に確保することが出来るから、スライドドア3の移動に伴うコルゲートチューブ12と車体2との干渉の抑制を図ることができる。
【0037】
また、コルゲートチューブ12(外装部材)の所定の許容方向である車幅方向(矢印X方向)の車体2から離れる方向への湾曲を許容し、反対側となる規制方向規制方向である車幅方向の車体2に近付く方向への所定の限界状態以上の湾曲を規制するコルゲートチューブガイド13(湾曲規制部材)を有している。これによれば、コルゲートチューブガイド13が設けられていることで、コルゲートチューブ12(外装部材)の車幅方向の車体2に近付く方向への所定の限界状態以上の湾曲が規制されるから、コルゲートチューブ12と車体2との干渉の抑制をより一層、図ることができる。
【0038】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態にかかる給電装置1Aを、図7図9を参照して説明する。図7は、本発明の第2実施形態にかかる給電装置1Aを示す平面図である。図8は、給電装置1Aを構成する車体側揺動部材73(ロータ)を示す斜視図である。図9は、車体側揺動部材73(ロータ)を示す平面図である。なお、図7図9において、第1実施形態と略同一機能乃至略同一構成を有する部材には、同一符号を付して、その説明を省略する。第1実施形態に係る給電装置1と第2実施形態に係る給電装置1Aは、車体側揺動部材63、73の形状が異なる。従って、第2実施形態では、車体側揺動部材73について説明する。
【0039】
第2実施形態において、車体側揺動部材73(ロータ)は、図8に示すように、車体側揺動部本体730と、車体側揺動部本体730からZ方向下側に突出した第1軸部71Aと、車体側揺動部本体730からZ方向上側に突出した第2軸部71Bと、Z方向と直交する方向に向かって開口されてコルゲートチューブ12の車体2側の端部(一端)が固定される車体側チューブ固定口733(外装部材固定部)と、を有している。
【0040】
車体側揺動部本体730は、図9に示すように、約3/4の円形部734と、延出部735と、を有して構成されている。
【0041】
第1軸部71A及び第2軸部71Bは、円形部734を形成する円弧の中心Pを含む位置に設けられている。車体側チューブ固定口733は、延出部735に設けられている。車体側チューブ固定口733は、第1軸部71A及び第2軸部71Bの方向(矢印Z方向)と直交する方向に向かって開口されてコルゲートチューブ12の車体2側の端部が固定される。そして、車体側チューブ固定口733は、コルゲートチューブ12の車体2側の端部の軸方向が、車両4の進行方向(矢印Y方向)となる向きで、コルゲートチューブ12の車体2側の端部を固定している。
【0042】
即ち、第1軸部71A及び第2軸部71B(車体側揺動軸71)の軸方向(矢印Z方向)と、車体側チューブ固定口733に固定されたコルゲートチューブ12の車体2側の端部における軸方向は、ねじれの関係にあり、第1軸部71A及び第2軸部71Bの軸方向と、コルゲートチューブ12の車体2側の端部における軸方向と、は同一平面上になく、交わることはない。
【0043】
このような車体側揺動部材73は、第1軸部71A及び第2軸部71Bの各軸がZ方向に延在するように車体側支持部材62に支持されている。また、車体側揺動部材73は、スライドドア3が全開位置にある際に、車体側チューブ固定口733が車幅方向(矢印X方向に開口する姿勢であり、かつ、車体側チューブ固定口733が、車体2のステップの垂直な段差22より車室内側に位置し、スライドドア3が全閉位置にある際に、車体側チューブ固定口733が矢印Y方向に開口する姿勢であり、かつ、車体側チューブ固定口733が、車体2のステップの垂直な段差22より車室外側に位置している。これにより、スライドドア3が全閉位置にある際に、コルゲートチューブ12の車体2側の端部は、その軸方向が車両4の進行方向(Y方向で示す)に沿うように車体側チューブ固定口733により固定されている。さらに、コルゲートチューブ12の車体2側の端部は、車体側チューブ固定口733によって、車体2のステップの垂直な段差22に位置する不図示のスカッフトリムから車幅方向に離間した位置に固定されている。即ち、車体側チューブ固定口733に固定されたコルゲートチューブ12の車体2側の端部と車体2との間に隙間Sが確保される。このような第2実施形態によれば、上述した第1実施形態と略同様の効果が奏される。
【0044】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0045】
1、1A 給電装置
2 車体
3 スライドドア
4 車両
10 ワイヤハーネス
11 電線束(電線)
12 コルゲートチューブ(外装部材)
13 コルゲートガイド(湾曲規制部材)
22 車体の昇降口を構成する垂直な段差
61、71 車体側揺動部材(ロータの回転中心)
63、73 車体側揺動部材(ロータ)
633、733 車体側チューブ固定口(外装部材固定部)
Y 車両の進行方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9