(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】情報処理システム
(51)【国際特許分類】
H04W 48/18 20090101AFI20220516BHJP
H04W 88/06 20090101ALI20220516BHJP
H04W 4/44 20180101ALI20220516BHJP
【FI】
H04W48/18 111
H04W88/06
H04W4/44
(21)【出願番号】P 2018095932
(22)【出願日】2018-05-18
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】王 鉄君
【審査官】伊東 和重
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-171313(JP,A)
【文献】特開2005-107957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージングサーバーと、本番サーバーと、前記ステージングサーバー及び前記本番サーバーのそれぞれと通信可能な車載機と、を備える情報処理システムであって、
前記車載機は、
前記ステージングサーバー及び前記本番サーバーの何れか一方と無線通信を行う通信モジュール部と、
前記通信モジュール部により無線通信を行う場合に参照されるものであって、且つ1つ及び他の1つのそれぞれの通信方式に応じたドメイン情報を記憶する記憶部と、
を備え、
前記通信モジュール部は、
前記記憶部に記憶される前記ドメイン情報に応じて、前記ステージングサーバー及び前記本番サーバーの何れか一方と通信を確立させる、
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
前記通信モジュール部は、
前記他の1つの通信方式により前記本番サーバーと無線通信を行う場合、前記ドメイン情報として、前記車載機で実行されるアプリケーションに関連付いて参照可能である固定ドメイン名が参照される、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記通信モジュール部は、
前記1つの通信方式により前記本番サーバー及び前記ステージングサーバーの何れか一方と無線通信を行う場合、又は前記他の1つの通信方式により前記ステージングサーバーと無線通信を行う場合、前記ドメイン情報として、機能テーブルで管理されている管理ドメイン名が参照され、
前記機能テーブルは、
前記管理ドメイン名と、該管理ドメイン名に対応する宛先IPアドレスと、前記本番サーバー及び前記ステージングサーバーの何れか一方を指定するサブネットマスクと、が関連付けて管理されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記通信モジュール部は、
前記1つ及び前記他の1つの何れか一方の通信方式の種類を特定する通信方式特定情報を保持し、
前記記憶部は、
前記車載機の起動が初回である場合、前記通信モジュール部から転送される前記通信方式特定情報が記憶される、
ことを特徴とする請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記ドメイン情報は、
前記車載機の起動が2回目以降である場合、前記記憶部に記憶される前記通信方式特定情報に応じて、前記固定ドメイン名及び前記管理ドメイン名の何れか一方が確定される、
ことを特徴とする請求項4に記載の情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載され、車速等の運行記録をデータセンターへ送付することで、車両状況をリアルタイムに確認できるデジタルタコグラフ等の車載機が知られている。また、車載機のような端末装置と、データセンターのようなサーバーとで構築される情報処理システムは、無線通信により各種情報が送受信されることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のような従来技術は、特定の通信方式、例えば、第3世代移動通信システムのような1つの世代の通信方式によるものが多い。よって、車載機のリリース前にデータセンターとして利用されるステージングサーバーであっても、車載機のリリース後にデータセンターとして利用される本番サーバーであっても、1つの世代の通信方式を想定している。したがって、ステージングサーバー又は本番サーバーと無線通信を行う車載機は、複数の通信方式が混在するような通信環境、例えば、第3世代移動通信システムの通信方式と、第4世代移動通信システムの通信方式とが混在するような通信環境を想定されずに何れか一方の通信方式に応じて通信設定がされる。第3世代移動通信システムの通信方式と、第4世代移動通信システムの通信方式とは、通信方式が異なるため、そのように通信設定がされた車載機は、データセンターと無線通信できない状況に至る可能性がある。つまり、上記従来技術では、1つの通信方式と、他の1つの通信方式とが混在するような通信環境下において、車載機と、ステージングサーバー又は本番サーバーとで無線通信を行うことができない状況に至る可能性がある。
【0005】
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、1つの通信方式と、他の1つの通信方式とが混在するような通信環境下であっても、車載機と、ステージングサーバー又は本番サーバーとで無線通信を行うことができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面である情報処理システムは、ステージングサーバーと、本番サーバーと、前記ステージングサーバー及び前記本番サーバーのそれぞれと通信可能な車載機と、を備える情報処理システムであって、前記車載機は、前記ステージングサーバー及び前記本番サーバーの何れか一方と無線通信を行う通信モジュール部と、前記通信モジュール部により無線通信を行う場合に参照されるものであって、且つ1つ及び他の1つのそれぞれの通信方式に応じたドメイン情報を記憶する記憶部と、を備え、前記通信モジュール部は、前記記憶部に記憶される前記ドメイン情報に応じて、前記ステージングサーバー及び前記本番サーバーの何れか一方と通信を確立させる。
【0007】
また、本開示の一側面である情報処理システムにおいて、前記通信モジュール部は、前記他の1つの通信方式により前記本番サーバーと無線通信を行う場合、前記ドメイン情報として、前記車載機で実行されるアプリケーションに関連付いて参照可能である固定ドメイン名が参照される、ことが好ましい。
【0008】
また、本開示の一側面である情報処理システムにおいて、前記通信モジュール部は、前記1つの通信方式により前記本番サーバー及び前記ステージングサーバーの何れか一方と無線通信を行う場合、又は前記他の1つの通信方式により前記ステージングサーバーと無線通信を行う場合、前記ドメイン情報として、機能テーブルで管理されている管理ドメイン名が参照され、前記機能テーブルは、前記管理ドメイン名と、該管理ドメイン名に対応する宛先IPアドレスと、前記本番サーバー及び前記ステージングサーバーの何れか一方を指定するサブネットマスクと、が関連付けて管理されている、ことが好ましい。
【0009】
また、本開示の一側面である情報処理システムにおいて、前記通信モジュール部は、前記1つ及び前記他の1つの何れか一方の通信方式の種類を特定する通信方式特定情報を保持し、前記記憶部は、前記車載機の起動が初回である場合、前記通信モジュール部から転送される前記通信方式特定情報が記憶される、ことが好ましい。
【0010】
また、本開示の一側面である情報処理システムにおいて、前記ドメイン情報は、前記車載機の起動が2回目以降である場合、前記記憶部に記憶される前記通信方式特定情報に応じて、前記固定ドメイン名及び前記管理ドメイン名の何れか一方が確定される、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一側面によれば、1つの通信方式と、他の1つの通信方式とが混在するような通信環境下であっても、車載機と、ステージングサーバー又は本番サーバーとで無線通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示を適用した実施形態に係る情報処理システム1のシステム構成例を示す図である。
【
図2】本開示を適用した実施形態に係る記憶部50の一部のデータ構成例を示す図である。
【
図3】本開示を適用した実施形態に係るイグニッションスイッチ12_1がオンされるのが初回であるときに実行される処理の一例を説明するフローチャートである。
【
図4】本開示を適用した実施形態に係るイグニッションスイッチ12_1がオンされるのが2回目以降であるときに実行される処理の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本開示の実施形態を説明するが、本開示は以下の実施形態に限られるものではない。
【0014】
図1は、本開示を適用した実施形態に係る情報処理システム1のシステム構成例を示す図である。
図1に示すように、情報処理システム1は、ステージングサーバー103_1と、本番サーバー103_2と、車載機3と、を備えている。情報処理システム1は、無線媒体又は有線媒体による通信が可能なネットワーク2を介して、車両に搭載された車載機3で記録した車速等の車両の運行記録を、ステージングサーバー103_1及び本番サーバー103_2の何れか一方に送信する。このように、車載機3がデジタルタコグラフとして機能することで、ステージングサーバー103_1又は本番サーバー103_2は、運行記録に基づく車両状況をリアルタイムで取得することができる。なお、ステージングサーバー103_1及び本番サーバー103_2のそれぞれを区別せず何れか一方を指す場合、サーバー103と称する。また、ステージングサーバー103_1は複数台設けられてもよく、本番サーバー103_2も同様である。
【0015】
車載機3は、ステージングサーバー103_1及び本番サーバー103_2のそれぞれと通信可能である。ステージングサーバー103_1及び本番サーバー103_2のそれぞれは、例えば、3Gすなわち第3世代移動通信システム又は4Gすなわち第4世代移動通信システム等の何れか一方に含まれる通信方式の通信設定がされている。第3世代移動通信システムのうち、第3世代の通信方式にはW-CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)又はCDMA2000が含まれ、第3.5世代の通信方式にはHSPA(High Speed Packet Access)又はEV-DO(Evolution-Data Optimized)が含まれ、第3.9世代の通信方式にはLTE(Long-Term Evolution)が含まれる。第4世代の通信方式にはLTE-Advancedが含まれる。ステージングサーバー103_1及び本番サーバー103_2のそれぞれは、第3世代移動通信システムの通信方式が採用されていれば、W-CDMA、CDMA2000、HSPA、又はEV-DO等のような通信方式の何れかの通信設定がされる。ステージングサーバー103_1及び本番サーバー103_2のそれぞれは、第4世代移動通信システムの通信方式が採用されていれば、LTE-Advancedの通信設定がされる。車載機3は、ステージングサーバー103_1及び本番サーバー103_2のそれぞれに採用される通信方式と同一の通信設定がされていれば、ステージングサーバー103_1及び本番サーバー103_2のそれぞれと通信可能である。
【0016】
よって、ステージングサーバー103_1及び本番サーバー103_2のそれぞれは、同一世代、例えば第3世代移動通信システムに含まれる何れかの通信方式であれば、車載機3にも同様の通信方式の通信設定がされる必要がある。ステージングサーバー103_1及び本番サーバー103_2のそれぞれが、第4世代移動通信システムに含まれる通信方式であれば、車載機3も同様の通信方式、すなわちLTE-Adancedの通信設定が設定される必要がある。仮に、ステージングサーバー103_1及び本番サーバー103_2のそれぞれが第4世代移動通信システムに含まれる通信方式の通信設定がされ、車載機4が第3世代移動通信システムの通信方式の通信設定がされている場合、サーバー103側で自己の通信方式に対応させる処理を実行しない限り、ステージングサーバー103_1及び本番サーバー103_2のそれぞれと、車載機4とは通信を行うことができない。なお、以降の説明では、第3世代移動通信システム及び第4世代移動通信システムのそれぞれの通信方式の通信設定がされる一例について説明を行うが、複数の通信方式のうち、1つの通信方式及び他の1つの通信方式のそれぞれの通信設定がされればよい。
【0017】
ステージングサーバー103_1は、車載機3のリリース前に車載機3又は後方支援ソフトウェアの品質等が評価される際、開発側又は品質管理側に利用されるものであって、第3世代移動通信システム及び第4世代移動通信システムのそれぞれの通信方式に応じたドメインが使用される。本番サーバー103_2は、車載機3のリリース後に車両の運行記録を管理する側に利用されるものであって、第3世代移動通信システム及び第4世代移動通信システムのそれぞれの通信方式に応じたドメインが使用される。
【0018】
例えば、車載機3及び後方支援ソフトウェアがバージョンアップされる都度、車載機3及び後方支援ソフトウェアの品質等の評価が行われる。このような品質等の評価の際、車両の運行記録を管理する側に利用される本番サーバー103_2に影響を与えないようにするために、ステージングサーバー103_1は利用される。車載機3及び後方支援ソフトウェアのバージョンアップは定期的に行われるため、ステージングサーバー103_1も常時稼働させている。なお、車載機3及び後方支援ソフトウェアに不具合が発生した場合、そのような不具合の再現試験を行う際にも、ステージングサーバー103_1は利用される。また、端末101が車載機3に接続されることで、開発側又は品質管理側は、端末101を介して車載機3の各種設定を変更することができる。例えば、車載機3のドメインの設定を端末101により書き換えさせることで、第3世代移動通信システム及び第4世代移動通信システムのそれぞれの通信方式に応じたドメインに対応するドメイン名の保存場所を、ステージングサーバー103_1用のものと、本番サーバー103_2用のものとに分けることができる。
【0019】
車載機3は、CPU31、LCD(Liquid Crystal Display)32、ブザー33、通信モジュール部34、速度インターフェース部35、エンジンインターフェース部36、電源インターフェース部37、及び記憶部50を備えている。車載機3は、運行記録として、車速及びエンジン回転数を取得して逐次記録する。CPU31は、デジタルタコグラフとして機能する車載機3を統括的に制御する。LCD32は、表示部として、運転者に画像表示により情報提供する機能を有する。ブザー33は、音声警告部として、運転者が予め定められた安全運転条件を逸脱する運転をしていると判定された場合、注意喚起を行う機能を有する。速度インターフェース部35は、CPU31及び車速センサー6のそれぞれと接続され、車速センサー6から入力される速度パルスをCPU31に供給する。車速センサー6は、車載機3が搭載された車両に取り付けられ、検知した車速を速度パルスに変換して出力する。CPU31は、入力された速度パルスに基づき、自車両の速度すなわち車速を求め、記憶部50に記録させる。エンジンインターフェース部36は、CPU31及びエンジン回転センサー7のそれぞれと接続され、エンジン回転センサー7から入力されるエンジンパルスをCPU31に供給する。エンジン回転センサー7は、車載機3が搭載された車両に取り付けられ、検知したエンジン回転数をエンジンパルスに変換して出力する。CPU31は、入力されたエンジンパルスに基づき、自車両のエンジン回転数を求め、記憶部50に記録させる。
【0020】
電源インターフェース部37は、+12Vライン及びイグニッションラインを介してバッテリ11と接続し、バッテリ11から供給される電力を車載機3に供給する。+12Vラインは、電源インターフェース部37に常時電力を供給する。よって、電源インターフェース部37は、常時電力の供給が必要な部位に+12Vラインから供給される電力を供給する。イグニッションラインにはイグニッションスイッチ12_1が設けられている。イグニッションラインは、イグニッションスイッチ12_1がオンされたときに電源インターフェース部37に電力を供給する。不図示の車両用灯具は、イルミネーションラインを介してバッテリ11と接続されている。イルミネーションラインにはライティングスイッチ12_2が設けられている。よって、ライティングスイッチ12_2がオンされたときに不図示の車両用灯具に電力が供給される。なお、イグニッションスイッチ12_1及びライティングスイッチ12_2を総称する場合、スイッチ12と称する。
【0021】
通信モジュール部34は、ステージングサーバー103_1及び本番サーバー103_2の何れか一方と無線通信を行う。無線媒体を介した無線通信により、通信モジュール部34と、ステージングサーバー103_1及び本番サーバー103_2の何れか一方との間で、各種データが送受信される。通信モジュール部34は、第3世代移動通信システムの通信方式によりステージングサーバー103_1及び本番サーバー103_2の何れか一方と無線通信を行う場合、並びに第4世代移動通信システムの通信方式によりステージングサーバー103_1及び本番サーバー103_2の何れか一方と無線通信を行う場合の何れにおいても、ドメイン情報を参照する。ドメイン情報は、詳細については
図2を用いて後述するが、第3世代移動通信システム及び第4世代移動通信システムのそれぞれの通信方式に応じたドメイン名が記憶部50に記憶される。つまり、通信モジュール部34は、記憶部50に記憶されるドメイン情報に応じて、ステージングサーバー103_1及び本番サーバー103_2の何れか一方と通信を確立させる。
【0022】
通信モジュール部34は、通信方式特定情報を保持する。通信方式特定情報は、第3世代移動通信システム及び第4世代移動通信システムの何れか一方の通信方式の種類を特定する。通信方式特定情報は、例えば、通信モジュール部34の型名である。通信モジュール部34の型名は、第3世代移動通信システム及び第4世代移動通信システムのそれぞれの通信方式で異なる。よって、通信モジュール部34の型名を参照することで、CPU31は、通信モジュール部34が、第3世代移動通信システム及び第4世代移動通信システムの何れか一方の通信方式に対応したものであるかを判定することができる。CPU31は、通信方式の判定結果を記憶部50に保存させる。例えば、通信モジュール部34は、CPU31から通信方式特定情報を要求された場合、保持している通信方式特定情報、例えば型名を返答する。CPU31は、通信モジュール部34から返答された型名と、型名に対応する通信方式とを比較することで、通信方式を判定する。なお、型名に対応する通信方式を示すデータは、例えば記憶部50に保持させる。
【0023】
具体的には、車載機3の起動が初回である場合、記憶部50は、通信モジュール部34から転送される通信方式特定情報が記憶される。車載機3の起動が初回であるか否かは、イグニッションスイッチ12_1がオンされたときが初回であるか否かをCPU31が判定する。車載機3の起動が2回目以降である場合、記憶部50に記憶される通信方式特定情報に応じて、固定ドメイン名及び管理ドメイン名の何れか一方がドメイン名として確定される。固定ドメイン名は、第4世代移動通信システムの通信方式であって、且つ本番サーバー103_2と車載機3とで通信を確立させる場合に利用されるドメイン名である。管理ドメイン名は、第4世代移動通信システムの通信方式であって、且つステージングサーバー103_1と車載機3とで通信を確立させる場合と、第3世代移動通信システムの通信方式であって、サーバー103と車載機3とで通信を確立させる場合とに利用されるドメイン名である。
【0024】
記憶部50は、不揮発性メモリから構成される。記憶部50は、設定プログラム格納部51、データ記録部52、情報保存部53、及びデータ処理部54が構成される。設定プログラム格納部51は、CPU31が車載機3の機能を実現するための各種プログラム及びデータが格納される。設定プログラム格納部51は、例えば、運行記録に関しては、車速及びエンジン回転数のそれぞれの制限値が格納される。また、詳細については
図2を用いて後述するが、ドメイン名も格納される。データ記録部52は、データ処理部54で記録される運行記録が一定量に達する都度、一定量に達した運行記録を記録する。データ記録部52は、車速及びエンジン回転数の他に、不図示のGPSから取得したGPSデータも記録する。GPSデータは、走行距離及び走行時間の演算に利用される。
【0025】
情報保存部53には、論理空間として、車載機情報管理エリア53_1、3G/4G情報管理エリア53_2、及びドメイン設定場所管理エリア53_3が割り当てられる。車載機情報管理エリア53_1には、車載機3に関する各種データが記憶される。3G/4G情報管理エリア53_2には、通信モジュール部34から転送される通信方式特定情報が記憶される。ドメイン設定場所管理エリア53_3には、詳細については
図2を用いて後述するが、設定プログラム格納部51に格納されるドメイン名に対応するデータの参照先データが記憶される。つまり、ドメイン名は、ドメイン設定場所管理エリア53_3に記憶される参照先データから参照可能である。参照先データは、例えば、設定プログラム格納部51の論理空間の番地から構成される。
【0026】
図2は、本開示を適用した実施形態に係る記憶部50の一部のデータ構成例を示す図である。
図2に示すように、設定プログラム格納部51には、アプリケーションエリアと、機能テーブルエリアとが動的又は静的に割り当てられている。アプリケーションエリアには、車載機3で実行されるアプリケーションに関する各種データが展開される。アプリケーションエリアには、例えば、静的データ、動的データ、固定ドメイン名、宛先IPアドレス、サブネットマスク、及びポート番号が格納されている。固定ドメイン名は、ドメイン設定場所管理エリア53_3から参照可能に構成されたデータであり、ドメイン名を特定する。CPU31は、固定ドメイン名を参照し、固定ドメイン名を宛先IPアドレスに変換する。CPU31は、宛先IPアドレスにサブネットマスクをかけて、該当する本番サーバー103_2を選択する。CPU31は、通信モジュール部34を介して、ポート番号を添えて、選択した本番サーバー103_2に問い合わせを行い、車載機3と本番サーバー103_2との通信を確立させる。換言すれば、通信モジュール部34は、第4世代移動通信システムの通信方式により本番サーバー103_2と無線通信を行う場合、ドメイン情報として、車載機3で実行されるアプリケーションに関連付いて参照可能である固定ドメイン名を参照する。
【0027】
機能テーブルエリアには、機能テーブルに関する各種データが展開される。機能テーブルは、システム構成データ及び警報データ等が記憶される。システム構成データは、車両の中の車両システム構成を示すものであって、例えば、ETCが車両システムに接続されているか否かを示すものである。警報データは、速度オーバー警報値等である。システム構成データ及び警報データは専用ソフトウェアにより作成されるものである。また、機能テーブルは、さらに、管理ドメイン名と、管理ドメイン名に対応する宛先IPアドレスと、本番サーバー103_2及びステージングサーバー103_1の何れか一方を指定するサブネットマスクと、が関連付けて管理されている。また、機能テーブルには、ポート番号が記憶される。
【0028】
管理ドメイン名データは、ドメイン設定場所管理エリア53_3から参照可能に構成されたデータであり、ドメイン名を特定する。CPU31は、管理ドメイン名を参照し、管理ドメインを宛先IPアドレスに変換する。CPU31は、宛先IPアドレスにサブネットマスクをかけて、本番サーバー103_2及びステージングサーバー103_1の何れか一方を選択する。CPU31は、通信モジュール部34を介して、ポート番号を添えて、選択したサーバー103に問い合わせを行い、車載機3とサーバー103との通信を確立させる。換言すれば、通信モジュール部34は、第3世代移動通信システムの通信方式により本番サーバー103_2及びステージングサーバー103_1の何れか一方と無線通信を行う場合、ドメイン情報として、機能テーブルで管理されている管理ドメイン名を参照する。また、通信モジュール部34は、第4世代移動通信システムの通信方式によりステージングサーバー103_1と無線通信を行う場合、ドメイン情報として、機能テーブルで管理されている管理ドメイン名を参照する。
【0029】
図3は、本開示を適用した実施形態に係るイグニッションスイッチ12_1がオンされるのが初回であるときに実行される処理の一例を説明するフローチャートである。ステップS11~ステップS18の処理は、第3世代移動通信システム及び第4世代移動通信システムの何れか一方の通信方式を決定し、ドメイン名に対応するサーバー103の宛先IPアドレスを参照可能に設定する。
【0030】
ステップS11において、CPU31は、Per2状態であるか否かを判定する。Per2状態とは、アプリケーションが記憶部50の論理空間に展開されているが、機能テーブルが記憶部50の論理空間に展開されていない状態である。具体的には、設定プログラム格納部51のアプリケーションエリアにはアプリケーションに関する各種データが展開されているが、設定プログラム格納部51の機能テーブルエリアには機能テーブルに関する各種データが展開されていない状態である。よって、Per2状態では、車載機3が動作しない。したがって、Per2状態は、通常は、工場出荷前しか存在しない、すなわち、車載機3の起動が初回である場合が、Per2状態に相当する。CPU31は、Per2状態であると判定する場合(ステップS11;Y)、ステップS12の処理に移行する。CPU31は、Per2状態でないと判定する場合(ステップS11;N)、ステップS12~ステップS18の処理を実行せずに終了する。
【0031】
ステップS12において、CPU31は、通信モジュール部34の型名が3G及び4Gの何れに対応するかを判定する。つまり、CPU31は、通信モジュール部34の型名が第3世代移動通信システム及び第4世代移動通信システムの何れか一方の通信方式に対応するものであるかを判定する。CPU31は、通信モジュール部34の型名が第4世代移動通信システムの通信方式に対応するものであると判定する場合(ステップS12;4G)、ステップS13の処理に移行する。CPU31は、通信モジュール部34の型名が第3世代移動通信システムの通信方式に対応するものであると判定する場合(ステップS12;3G)、ステップS17の処理に移行する。ステップS17において、CPU31は、3G/4G情報管理エリア53_2に00Hを記録させる。ステップS18において、CPU31は、ドメイン設定場所管理エリア53_3に01Hを記録させ、処理を終了する。
【0032】
ステップS13において、CPU31は、3G/4G情報管理エリア53_2に01Hを記録させる。ステップS14において、CPU31は、ドメイン設定場所管理エリア53_3に01Hを記録させる。ステップS15において、CPU31は、ドメイン設定場所管理エリア53_3に00Hが上書きされたか否かを判定する。CPU31は、ドメイン設定場所管理エリア53_3に00Hが上書きされたと判定する場合(ステップS15;Y)、ステップS16の処理に移行する。CPU31は、ドメイン設定場所管理エリア53_3に00Hが上書きされていないと判定する場合(ステップS15;N)、処理を終了する。ステップS16において、CPU31は、ドメイン設定場所管理エリア53_3に00Hを記録させ、処理を終了する。なお、ステップS15において、ドメイン設定場所管理エリア53_3に00Hが上書きされたと判定されるのは、例えば、車載機3に端末101が接続され、端末101から車載機3にドメイン設定場所管理エリア53_3の書き換え命令がなされた場合が想定される。
【0033】
図4は、本開示を適用した実施形態に係るイグニッションスイッチ12_1がオンされるのが2回目以降であるときに実行される処理の一例を説明するフローチャートである。ステップS31~ステップS36の処理は、ドメイン名に対応するサーバー103の宛先IPアドレスを参照可能に設定する。
【0034】
ステップS31において、CPU31は、3G/4G情報管理エリア53_2に01Hが記録されているか否かを判定する。CPU31は、3G/4G情報管理エリア53_2に01Hが記録されていると判定する場合(ステップS31;Y)、ステップS32の処理に移行する。CPU31は、3G/4G情報管理エリア53_2に01Hが記録されていないと判定する場合(ステップS31;N)、ステップS35の処理に移行する。ステップS35において、CPU31は、通信モジュール部34に初期化処理を実行し、処理を終了する。なお、ステップS35で初期化処理対象となる通信モジュール部34は、第3世代移動通信システムの通信方式に対応するものである。
【0035】
ステップS32において、CPU31は、ドメイン設定場所管理エリア53_3に01Hが記録されているか否かを判定する。CPU31は、ドメイン設定場所管理エリア53_3に01Hが記録されていると判定する場合(ステップS32;Y)、ステップS36の処理に移行する。ステップS36において、CPU31は、アプリケーションに関連付いて参照可能である固定ドメイン名を参照し、ステップS34の処理に移行する。CPU31は、ドメイン設定場所管理エリア53_3に01Hが記録されていないと判定する場合(ステップS32;N)、ステップS33の処理に移行する。ステップS33において、CPU31は、機能テーブルにある管理ドメイン名を参照し、ステップS34の処理に移行する。ステップS34において、CPU31は、通信モジュール部34に初期化処理を実行し、処理を終了する。なお、ステップS34で初期化処理対象となる通信モジュール部34は、第4世代移動通信システムの通信方式に対応するものである。つまり、ステップS33の処理は、車載機3にステージングサーバー103_1を参照させるものである。また、ステップS36の処理は、車載機3に本番サーバー103_2を参照させるものである。
【0036】
以上の説明から、本実施形態においては、ドメイン情報は、第3世代移動通信システムの通信方式に応じたものと、第4世代移動通信システムの通信方式に応じたものとが記憶部50に記憶される。通信モジュール部34は、記憶部50に記憶されるドメイン情報に応じて、ステージングサーバー103_1及び本番サーバー103_2の何れか一方と通信を確立させる。よって、車載機3は、記憶部50に記憶されるドメイン情報を参照すれば、第3世代移動通信システムの通信方式であっても、第4世代移動通信システムの通信方式であっても、無線通信を行うことができる。したがって、第3世代移動通信システムすなわち1つの通信方式と、第4世代移動通信システムすなわち他の1つの通信方式とが混在するような通信環境下であっても、車載機3と、ステージングサーバー103_1又は本番サーバー103_2とで無線通信を行うことができる。
【0037】
また、本実施形態においては、第4世代移動通信システムの通信方式により本番サーバー103_2と無線通信が行われる場合、ドメイン情報として、車載機3で実行されるアプリケーションに関連付いて参照可能である固定ドメイン名が参照される。よって、機能テーブルに第4世代移動通信システムの通信方式に対応するドメイン名がなかったとしても、第4世代移動通信システムの通信方式により使用される固定ドメイン名が車載機3で実行されるアプリケーションに関連付いていれば、その固定ドメイン名を参照することができる。したがって、第4世代移動通信システムすなわち他の1つの通信方式にも対応した無線通信を行うことができる。
【0038】
また、本実施形態においては、第3世代移動通信システムの通信方式により本番サーバー103_2及びステージングサーバー103_1の何れか一方と無線通信が行われる場合、又は第4世代移動通信システムの通信方式によりステージングサーバー103_1と無線通信が行われる場合、ドメイン情報として、機能テーブルで管理されている管理ドメイン名が参照される。機能テーブルは、管理ドメイン名と、その管理ドメイン名に対応する宛先IPアドレスと、本番サーバー103_2及びステージングサーバー103_1の何れか一方を指定するサブネットマスクと、が関連付けて管理されている。よって、車載機3のドメイン名として事前に設定された管理ドメイン名を参照することができるため、車載機3のドメイン名と、指定したサーバー103とを一致させることができる。したがって、第3世代移動通信システムすなわち1つの通信方式により、車載機3と、本番サーバー103_2及びステージングサーバー103_1の何れか一方と無線通信を行うことができ、第4世代移動通信システムすなわち他の1つの通信方式により、車載機3と、ステージングサーバー103_1と無線通信を行うことができる。
【0039】
また、本実施形態においては、車載機3の起動が初回である場合、通信モジュール部34から転送される通信方式特定情報が記憶部50に記憶される。よって、通信モジュール部34が保持する通信方式特定情報を取得することができる。したがって、通信モジュール部34に合わせた通信方式で無線通信に関する各種設定を行うことができる。
【0040】
また、本実施形態においては、車載機3の起動が2回目以降である場合、記憶部50に記憶される通信方式特定情報に応じて、固定ドメイン名及び管理ドメイン名の何れか一方が確定される。記憶部50に記憶される通信方式特定情報は、車載機3の起動が初回である場合、通信モジュール部34からCPU31を介して記憶部50に転送されたものである。よって、通信モジュール部34が、第3世代移動通信システムすなわち1つ及び第4世代移動通信システムすなわち他の1つの何れに対応するものであっても、車載機3は、ステージングサーバー103_1及び本番サーバー103_2の何れか一方と無線通信を行うことができる。
【0041】
以上、本開示を適用した情報処理システム1を実施形態に基づいて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0042】
例えば、本実施形態においては、第3世代移動通信システム及び第4世代移動通信システムのそれぞれの通信方式に応じたドメイン情報が記憶される一例について説明したが、特にこれに限定されない。例えば、第5世代移動通信システムの通信方式に応じたドメイン情報が記憶されてもよい。第5世代移動通信システムの通信方式に応じたドメイン情報は、第4世代移動通信システムの通信方式に応じたドメイン情報と同様に処理されればよい。
【0043】
なお、当業者であれば周知のことであるが、第3世代移動通信システムは、国際電気通信連合が定めるIMT-2000(International Mobile Telecommunication2000)規格に準拠した通信システムである。第3世代移動通信システムのうち、例えば、W-CDMAは、IMT-2000規格ではIMT-DS(Direct Speed)、3GPP(Third Generation Partnership Project)規格ではUTRA-FDD(UMTS Terrestrial Radio Access-FDD)にそれぞれ規定され、HSPAは、W-CDMAを拡張して高速化した規格に規定されている。第4世代移動通信システムは、国際電気通信連合が定めるIMT-Advanced規格に準拠する無線通信システムである。第4世代移動通信システムのうち、LTE-Adancedは、LTEの後継規格に位置づけられる無線通信方式である。第5世代移動通信システムは、現在規格化が進行中の次世代無線通信システムである。つまり、本開示における1つの通信方式及び他の1つの通信方式の相違点は、世代が異なることはもちろんであるが、少なくとも準拠する規格が異なるものであればよい。なお、本開示における1つの通信方式及び他の1つの通信方式のそれぞれは、準拠する規格が異なるものであるが、それに限定されず、方式、システム、機器種別、製造ベンダの少なくとも何れかに関して異なるものであってもよい。
【0044】
また、本実施形態においては、3G/4G情報管理エリア53_2には00H又は01Hが記録され、ドメイン設定場所管理エリア53_3には00H又は01Hが記録される一例について説明したが、特にこれに限定されない。例えば、別の数字が記録されてもよい。要するに、3G/4G情報管理エリア53_2には、第3世代移動通信システム及び第4世代移動通信システムの何れか一方を区別できるものが記録されればよい。同様に、ドメイン設定場所管理エリア53_3には、ドメイン名の参照先となるものが記録されればよい。
【0045】
また、本実施形態においては、運行記録として、車速及びエンジン回転数が記録される一例について説明したが、特にこれに限定されない。例えば、加速度、交差点進入速度、ウインカータイミングその他の車両状況に関する情報であればよい。例えば、運行時に取得される画像情報等であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 情報処理システム、2 ネットワーク
3 車載機、31 CPU、32 LCD、33 ブザー、34 通信モジュール部
35 速度インターフェース部、36 エンジンインターフェース部
37 電源インターフェース部
50 記憶部、51 設定プログラム格納部、52 データ記録部
53 情報保存部
53_1 車載機情報管理エリア、53_2 3G/4G情報管理エリア
53_3 ドメイン設定場所管理エリア、54 データ処理部
6 車速センサー、7 エンジン回転センサー、11 バッテリ、12 スイッチ
12_1 イグニッションスイッチ、12_2 ライティングスイッチ
101 端末、103 サーバー
103_1 ステージングサーバー、103_2 本番サーバー