(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】圧力調整器
(51)【国際特許分類】
F16L 37/088 20060101AFI20220516BHJP
【FI】
F16L37/088
(21)【出願番号】P 2018133984
(22)【出願日】2018-07-17
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】日爪 晃博
(72)【発明者】
【氏名】袴田 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】山岸 正樹
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-257440(JP,A)
【文献】特開2013-036560(JP,A)
【文献】実開平06-011009(JP,U)
【文献】特開2014-010784(JP,A)
【文献】特開平02-168084(JP,A)
【文献】特開昭58-106611(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0437035(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/088
F16K
G05D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LPガス容器からの燃料ガスを所定圧力まで減圧させたうえで、消費者側に供給する圧力調整器であって、
前記LPガス容器からの燃料ガスを導入する減圧室と、外部と連通する大気圧室とを隔てる薄膜状のダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムが固定されるハウジングと、
前記ハウジングに対して挿入取付されると共に、前記ダイヤフラムの動作と共に軸方向に動作する軸部材が挿通された軸受部材と、
前記軸受部材を前記ハウジングに対して挿入取付するための取付部材と、を備え、
前記取付部材は、平面視して略C形状である金属製のリング部材であって、
前記軸受部材は、前記軸部材が挿通される筒部を有し、前記筒部の外周側に周状の溝部が形成され、
前記ハウジングは、前記軸受部材の挿入完了時に前記溝部と対向する位置に形成された引っ掛け部を有し、
前記リング部材は、前記溝部に収納され、前記軸受部材の前記ハウジングへの挿入過程において内側に弾性変形し、前記軸受部材の前記ハウジングへの挿入完了時に弾性復帰して前記溝部と前記引っ掛け部との双方に跨って配置されるものである
ことを特徴とする圧力調整器。
【請求項2】
前記ハウジングの前記軸受部材が挿入される挿入部、及び、前記軸受部材の前記筒部は、挿入方向に向かって先細りとなる勾配が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力調整器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力調整器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LPガス容器からの高圧ガスを導入して減圧する圧力調整器が知られている。この圧力調整器は、ダイアフラムの動作によって高圧ガスの導入量を制限することで減圧を行う構成となっている。また、圧力調整器は、例えば左右のそれぞれに接続されるLPガス容器のうち、どちらから燃料ガスを導入するかを選択するための操作部となる切替レバーを正面側に備えている。切替レバーは切替軸と接続関係にあり、切替レバーの操作時には切替軸についても動作する。切替軸は、導入するLPガス容器を選択するための押圧部材に接続されている。よって、切替レバーが操作されると、燃料ガスを導入するLPガス容器が切り替えられることとなる(特許文献1参照)。
【0003】
ここで、切替軸の上部(切替レバー側)には、切替軸を回転可能に指示すると共に、LPガス容器の容量が充分であるかを表示するための表示部材が取り付けられる切替表示部品(上部軸受部材)が設けられている。切替表示部品については、圧力調整器の上部ハウジングに対して挿入固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の圧力調整器において、切替表示部品は爪部によって上部ハウジングに固定されていた。このため、樹脂製の爪部に対して過剰な応力が作用して、爪部が破損し、切替表示部品が上部ハウジングから外れてしまうことがあった。
【0006】
また、切替表示部品は
図11に示すように固定されることもある。
図11は、比較例に係る圧力調整器の一部構成を示す図であり、(a)は切替表示部品を示し、(b)は上部ハウジングを示している。
図11(a)に示すように、切替表示部品114は内部に切替軸が挿通される筒部114aと、筒部114aの上端から円周状に突出する鍔部114bとを有している。また、筒部114aには、下端部付近において側方に突出する2つの突起部114cが形成されている。一方、
図11(b)に示すように、上部ハウジング103には、筒部114aが挿入される円形開口部103aが形成されると共に、突起部114cの通過を許容すべく円形開口部103aから側方に設けられた溝部103bが形成されている。
【0007】
作業者は、切替表示部品114を上部ハウジング103に取り付ける際、まず切替表示部品114の突起部114cを溝部103bに合わせる。そして、作業者は、この状態を維持したまま、切替表示部品114の筒部114aを上部ハウジング103の円形開口部103aに挿入する。挿入後、作業者は、切替表示部品114を回転させる。これにより、突起部114cが所定の箇所に位置して抜け止め固定されることとなる。
【0008】
しかし、この比較例に係る構成である場合には、突起部114cを溝部103bに位置合わせする必要があり、組付方向が決まっており決して作業性が良いとはいえない。
【0009】
以上のように、切替表示部を上部ハウジングに取り付ける場合には、耐応力性を高めて破損によって切替表示部品が外れてしまう可能性を低減させると共に、作業性の向上を図ることの両立が困難となっていた。
【0010】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、破損によって切替表示部品が外れてしまう可能性を低減させると共に、作業性の向上を図ることが可能な圧力調整器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る圧力調整器は、ダイヤフラムとハウジングと軸受部材とを備えている。さらに、圧力調整器は、軸受部材をハウジングに対して挿入取付するための取付部材を備えている。取付部材は平面視して略C形状である金属製のリング部材である。軸受部材は、軸部材が挿通される筒部を有し、筒部の外周側に周状の溝部が形成されている。ハウジングは、軸受部材の挿入完了時に溝部と対向する位置に形成された引っ掛け部を有している。リング部材は、溝部に収納され、軸受部材のハウジングへの挿入過程において内側に弾性変形し、軸受部材の前記ハウジングへの挿入完了時に弾性復帰して溝部と引っ掛け部との双方に跨って配置されるものである。
【0012】
本発明に係る圧力調整器によれば、リング部材は、軸受部材のハウジングへの挿入過程において内側に弾性変形し、軸受部材のハウジングへの挿入完了時に弾性復帰して溝部と引っ掛け部との双方に跨って配置される。このため、金属製のリング部材が溝部と引っ掛け部とに跨って軸受部材がハウジングに対して抜け止め固定される。特に、リング部材が周状の溝部に対して収納されていれば、軸受部材をどの向きで挿入しても抜け止め固定できる。また、金属製のリング部材を用いることから樹脂製品による破損の可能性も低減される。従って、破損によって切替表示部品が外れてしまう可能性を低減させると共に、作業性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、破損によって切替表示部品が外れてしまう可能性を低減させると共に、作業性の向上を図ることが可能な圧力調整器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る圧力調整器の外観図である。
【
図2】
図1に示した圧力調整器のA-A断面図である。
【
図3】
図1に示した圧力調整器のB-B断面図である。
【
図4】上部軸受部材と、上部ハウジングとの接続状態を示す要部断面図である。
【
図7】
図4及び
図5に示した止め輪RRの変形例を示す平面図である。
【
図8】上部軸受部材を上部ハウジングに取り付ける際の初期状態を示す断面図であり、(a)は上部軸受部材と上部ハウジングとの全体を示し、(b)は要部を拡大したものを示している。
【
図9】上部軸受部材を上部ハウジングに取り付ける際の挿入過程の状態を示す第1の断面図であり、(a)は上部軸受部材と上部ハウジングとの全体を示し、(b)は要部を拡大したものを示している。
【
図10】上部軸受部材を上部ハウジングに取り付ける際の挿入過程の状態を示す第2の断面図であり、(a)は上部軸受部材と上部ハウジングとの全体を示し、(b)は要部を拡大したものを示している。
【
図11】比較例に係る圧力調整器の一部構成を示す図であり、(a)は切替表示部品を示し、(b)は上部ハウジングを示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る圧力調整器の外観図であり、
図2は、
図1に示した圧力調整器のA-A断面図である。また、
図3は、
図1に示した圧力調整器のB-B断面図である。本実施形態に係る圧力調整器1は、LPガス容器からの燃料ガスを所定圧力まで減圧して消費者側(ガスレンジなどの燃焼器)に供給するものである。
【0017】
この圧力調整器1は、下部ハウジング2と上部ハウジング3とを備え、これらが組み付けられることによりハウジングが形成されている。下部ハウジング2は、2つのガス入口流路4a,4bと、ガス出口流路5とが形成されている。ガス入口流路4a,4bは、それぞれ異なるLPガス容器(不図示)に接続され、LPガス容器からの高圧ガスを導入する流路である。ガス出口流路5は、ガス入口流路4a,4bに対して直交する方向に形成され、圧力調整器1にて減圧された燃料ガスを例えばガスメータ等に供給するための流路である。
【0018】
具体的に、圧力調整器1は、ガス入口流路4a,4bから導入される例えば0.1~1.56MPaの高圧ガスを、0.06MPa程度に減圧する中圧減圧部6と、それをさらに2.55~3.3kPa程度に減圧する低圧減圧部20とを備えている。
【0019】
中圧減圧部6は、中圧減圧室(減圧室)7と、大気圧室8と、中圧スプリング9と、中圧ダイヤフラム受板10と、中圧ダイヤフラム11と、下部軸受部材12と、切替軸(軸部材)13と、上部軸受部材(軸受部材)14と、切替レバー15と、押圧部材16と、中圧弁17と、表示部18と、表示窓19と、表示スプリングSとを備えている。
【0020】
中圧減圧室7は、ガス入口流路4a,4bから導入された高圧ガスを一時的に保持する部位である。大気圧室8は、外部と連通することにより内部が大気圧となる部位である。
【0021】
中圧ダイヤフラム11は、周縁が下部ハウジング2と上部ハウジング3との間に挟持固定されており、中圧減圧室7と大気圧室8とを気密に隔てる薄膜状の部材である。また、中圧ダイヤフラム11は、中圧ダイヤフラム受板10を介して中圧スプリング9により中圧減圧室7側に付勢されている。この中圧ダイヤフラム11は、中圧減圧室7の圧力が高まると中圧スプリング9の付勢力に抗して大気圧室8側に変位する。
【0022】
下部軸受部材12は、中圧ダイヤフラム11の軸心部に同軸的に固定されるものである。切替軸13は、下部軸受部材12に挿入される部材であって、下部軸受部材12の軸方向(以下単に軸方向という)の軸回りに回転自在となっている。また、切替軸13は、下部軸受部材12に対して軸方向には固定された状態になっており、中圧減圧室7内のガス圧力の変動に伴って、中圧ダイヤフラム11と共に軸方向に移動する。このような切替軸13の下部には、切替軸13の軸回り方向への回転に基づき作用して2つのガス入口流路4a,4bから中圧減圧室7へのガスの流入を調整する中圧弁17が配置されている。
【0023】
上部軸受部材14は、切替軸13の上部を囲むように形成された部材であって、上部ハウジング3に対して挿入取付されるものである。この上部軸受部材14は、この切替軸13を回転自在に支持するものであって、筒部14aと、鍔部14bとを有している。筒部14aは、切替軸13が挿通される筒体である。鍔部14bは、筒部14aの上端から円周状に突出するフランジである。
【0024】
切替レバー15は、上部ハウジング3の上部において軸回りに180度回転可能とされるものである。押圧部材16は、中圧ダイヤフラム11の軸心部に固定状態で設けられるものであり、切替軸13を通じて切替レバー15の回転と共に回転するものである。また、押圧部材16は、凹部16aと凸部16bと有している。凹部16aは、上部ハウジング3側に凹む部位であり、凸部16bは、下部ハウジング2側の突き出る部位である。切替レバー15を180度回転させた場合、これら、凹部16aと凸部16bとの位置が入れ替わることとなり、中圧弁17から伸びる棒状部材17aとの接触関係が変わることとなる。すなわち、
図3に示す例では、ガス入口流路4b側の中圧弁17から伸びる棒状部材17aと凸部16bとが接触しているが、切替レバー15を180度回転させることにより、凸部16bは、ガス入口流路4a側の中圧弁17から伸びる棒状部材17aと接触することとなる。
【0025】
表示部18は、鍔部14bに支持され、支持箇所を中心に回動可能となった部材である。この表示部18は、棒状の軸部18aと、軸部18aの先端に設けられた板部18bとを有し、板部18bには例えば赤色部位と白色部位とが形成されている。白色部位は、赤色部位に対して表示部18の回動方向に隣接して形成されている。このため、表示部18は、回動方向に沿って赤色部位と白色部位とが連続して形成されていることとなる。
【0026】
表示窓19は、透明の樹脂材料により構成され、切替レバー15の一部を切り欠いた切り欠き部に設けられている。作業員等は、表示窓19を介して切替レバー15の外部から、表示部18を視認可能となっている。
【0027】
表示スプリングSは、鍔部14bと表示部18との間において圧縮状態で設けられたコイルバネである。詳細に表示スプリングSは、一端側が鍔部14bに支持され、他端側が表示部18の軸部18aに接触している。このような表示スプリングSは、圧縮状態において表示部18を回動させることなく、表示部18は
図2に示す位置にて留めることとなる。一方、この表示スプリングSの圧縮状態が開放されると、表示部18を
図2に示す矢印方向に回動させることとなる。
【0028】
低圧減圧部20は、低圧減圧室21と、大気圧室22と、低圧スプリング23と、低圧ダイヤフラム受板24と、低圧ダイヤフラム25と、作動棹26と、スプリング受け座金27と、安全弁調整スプリング28と、開閉用レバー29と、ピン30と、低圧弁31と、ノズル部32とを備えている。
【0029】
低圧減圧室21は、中圧減圧部6から導入された中圧ガスを一時的に保持する部位である。大気圧室22は、外部と連通することにより内部が大気圧となる部位である。
【0030】
低圧ダイヤフラム25は、周縁が下部ハウジング2と上部ハウジング3との間に挟持固定されており、低圧減圧室21と大気圧室22とを気密に隔てている。また、低圧ダイヤフラム25は、低圧ダイヤフラム受板24を介して低圧スプリング23により低圧減圧室21側に付勢されている。
【0031】
作動棹26は、低圧ダイヤフラム25の中心を軸方向に貫通して設けられる部材であって、低圧減圧室21側先端には開閉用レバー29が設けられている。開閉用レバー29の先端(作動棹26接続側と反対側の先端)には、ピン30が設けられている。このため、開閉用レバー29は、ピン30を中心に回動可能となっている。
【0032】
また、開閉用レバー29のピン30よりも更に先端には、低圧弁31が設けられている。低圧弁31は、開閉用レバー29の回動に応じて、中圧減圧室7とガス出口流路5との間に設けられたノズル部32を開閉するように動作するようになっている。
【0033】
また、作動棹26の大気圧室22側の先端には、スプリング受け座金27が設けられている。このスプリング受け座金27と低圧ダイヤフラム25との間には、安全弁調整スプリング28が介装されている。安全弁調整スプリング28は、作動棹26の下端に一体に形成された安全弁の弁体26aを、低圧ダイヤフラム25の下部側に配置した弁体受け33に当接する方向に常時付勢している。
【0034】
図4は、上部軸受部材14と、上部ハウジング3との接続状態を示す要部断面図であり、
図5は、
図4の一部拡大図である。
図4及び
図5に示すように圧力調整器1は止め輪(取付部材、リング部材)RRを備えている。止め輪RRは、上部軸受部材14を上部ハウジング3に対して挿入取付するための部材である。
【0035】
図6は、
図4及び
図5に示した止め輪RRを示す平面図である。
図6に示すように、止め輪RRは平面視してC形状となる金属製のリング部材である。この止め輪RRは、例えば330度以上の円弧を有するC形状となっており、C形状の開放部OPが極力小さくなるように構成されている。また、止め輪RRは、C形状の両端部に円形膨出部RR1が形成されている。なお、止め輪RRの厚みは略一定となっている。
【0036】
ここで、止め輪RRは以下のように構成されていてもよい。
図7は、
図4及び
図5に示した止め輪RRの変形例を示す平面図である。
図7に示す止め輪RRは平面視してC形状となる金属製のリング部材であるが、開放部OPが
図6に示すものよりも大きくされている(330度未満の円弧となっている)。また、C形状をなす止め輪RRの両端部には、内側方向に突出する突起状膨出部RR2が形成されている。さらに、C形状をなす止め輪RRの中間部には、平面視状態で肉厚となる肉厚部RR3が形成されている。なお、肉厚部RR3と突起状膨出部RR2との間は、平面視状態で肉厚部RR3よりも略一定の薄肉に形成された肉薄部RR4で接続されている。
【0037】
なお、止め輪RRは、
図6及び
図7に示すものに限らず、円形膨出部RR1や突起状膨出部RR2等を有さず、平面視して一定の肉厚で形成された通常のCリングであってもよい。
【0038】
図4を参照する。上部軸受部材14の筒部14aは、その外周部に周状の溝部14cが形成されている。
図6及び
図7に示した止め輪RRは、
図4に示す周状の溝部14cに収納されるようになっている。
【0039】
さらに、上部ハウジング3は、上部軸受部材14の挿入完了時に溝部14cと対向する位置に段部(引っ掛け部)3aを有している。段部3aは、
図5に示すように、他の部位に対して階段状に凹む凹部となっている。上部軸受部材14は、上部軸受部材14の挿入完了時において止め輪RRが溝部14cのみならず段部3aにも跨って配置されることで、上部ハウジング3に対して抜け止め固定されることとなる。
【0040】
また、
図4に示すように、上部ハウジング3は、上部軸受部材14の筒部14aが挿入される円形開口部(挿入部)3bが挿入方向に向かって先細りとなっており、勾配が形成されている。さらに、上部軸受部材14の筒部14aについても挿入方向に向かって先細りとなる勾配を有した構造となっている。
【0041】
次に、本実施形態に係る圧力調整器1の動作について説明する。まず、消費者側でガスが使用され、中圧減圧室7の圧力が減圧したとする。この場合、中圧スプリング9の付勢力により中圧ダイヤフラム11が下部ハウジング2側に変位する。そして、一方の棒状部材17aが凸部16bによって下部ハウジング2側に押し下げられる。これにより、一方のガス入口流路4a(4b)側の中圧弁17が動作して一方のガス入口流路4aが開き、LPガス容器からの高圧ガスが中圧減圧室7に導入される。なお、他方の棒状部材17aは、凹部16aによって押し下げられず、他方のガス入口流路4b(4a)側の中圧弁17は動作せず他方のガス入口流路4bは開かないこととなる。
【0042】
高圧ガスの流入により中圧減圧室7の圧力が上昇すると、中圧スプリング9の付勢力に抗して中圧ダイヤフラム11が上部ハウジング3側に変位する。これにより、棒状部材17aと共に中圧弁17が上部ハウジング3側に移動して、一方のガス入口流路4aは閉じられることとなる。その後、消費者側でガスが使用されると、中圧減圧室7の圧力が減圧して、上記動作を繰り返すこととなる。
【0043】
また、一方のガス入口流路4a(4b)側に接続されるLPガス容器内のガス量が低下した場合、中圧減圧室7の圧力が上昇しなくなる。この場合、中圧スプリング9の付勢力により中圧ダイヤフラム11が下部ハウジング2側に一層変位することとなる(所定距離以上変位することとなる)。これにより、凹部16aが他方の棒状部材17aに接触して押し下げられることとなり、他方のガス入口流路4b(4a)側に接続されるLPガス容器から高圧ガスが流入するようになる。
【0044】
また、低圧減圧部20においては、消費者側でガスが使用されることにより、低圧減圧室21の圧力が減圧する。これにより、低圧スプリング23の付勢力により低圧ダイヤフラム25が下部ハウジング2側に変位する。そして、開閉用レバー29がピン30を支点として
図2における反時計回り方向に回動する。この回動により、低圧弁31が図中右方向に移動して、ノズル部32を開放する。これにより、中圧減圧室7側のガスが、ガス出口流路5側に流れる。
【0045】
一方、低圧減圧室21の圧力が上昇すると、低圧スプリング23の付勢力に抗して、低圧ダイヤフラム25が上部ハウジング3側へ変位し、低圧弁31が図中左方向へ移動する。これにより、ノズル部32の流路が閉じられ、低圧減圧室21へのガスの流入を制御する。その後、消費者側でガスが使用されると、低圧減圧室21の圧力が減圧して、上記動作を繰り返すこととなる。
【0046】
なお、低圧減圧室21の圧力が所定の圧力を越えて異常に高くなった場合には、低圧ダイヤフラム25のそれ以上の移動が安全弁調整スプリング28によって阻止され、安全弁の弁体26aが開き、低圧減圧室21内のガスを大気圧室22、通気孔を介して外部に逃がすこととなる。
【0047】
また、表示部18は、上記動作に伴って以下のように動作する。まず、一方のガス入口流路4a(4b)側に接続されるLPガス容器内のガス量が充分であり、高圧ガスが中圧減圧室7に流入する状態において表示スプリングSは、圧縮状態を維持している。すなわち、表示部18は回動せず、表示窓19には、例えば表示部18の白色部位が対向する。従って、作業員等には表示窓19から白色部位が視認されることとなり、一方のLPガス容器について交換の必要性がないことを知ることができる。
【0048】
これに対して、一方のガス入口流路4a(4b)側に接続されるLPガス容器内のガス量が充分でなくなると、他方のガス入口流路4b(4a)側に接続されるLPガス容器から高圧ガスが中圧減圧室7に流入する。この場合、凹部16aが棒状部材17aと接触することとなり、中圧ダイヤフラム11はやや下部ハウジング2側に変位した状態(所定距離以上変位した状態)となる。この状態において、表示スプリングSは、圧縮状態が開放されて表示部18を回動させる。これにより、例えば表示部18の赤色部位が表示窓19と対向する。従って、作業員等には表示窓19から赤色部位が視認されることとなり、一方のLPガス容器について交換が必要であることを知ることができる。
【0049】
次に、上部軸受部材14の上部ハウジング3に対する取付方法を説明する。
図8は、上部軸受部材14を上部ハウジング3に取り付ける際の初期状態を示す断面図であり、(a)は上部軸受部材14と上部ハウジング3との全体を示し、(b)は要部を拡大したものを示している。また、
図9及び
図10は、上部軸受部材14を上部ハウジング3に取り付ける際の挿入過程の状態を示す断面図であり、(a)は上部軸受部材14と上部ハウジング3との全体を示し、(b)は要部を拡大したものを示している。
【0050】
まず、作業者は、
図8(a)に示すように、止め輪RRを筒部14aの外周側に形成された溝部14cに嵌め込む。この際、
図6に示すように止め輪RRの開放部OPが小さい場合には、工具等を使用して開放部OPを広げたうえで、止め輪RRを溝部14cに嵌め込む。また、
図7に示すように止め輪RRの開放部OPが大きい場合には、工具を使用することなく開放部OPを溝部14cに押し付けるようにしてスライド嵌め込みすることも可能となる。
【0051】
作業者は、止め輪RRが溝部14cに嵌め込まれた状態で、筒部14aを円形開口部3bに挿入する。ここで、筒部14a及び円形開口部3bは双方が挿入方向に向かって先細りとなる勾配が設けられていることから、挿入初期においては
図8(b)に示すように止め輪RRが円形開口部3bに接触しない。
【0052】
次いで、作業者が、
図9(a)に示すように筒部14aを更に挿入すると、
図9(b)に示すように止め輪RRの円形開口部3bに接触する。これにより、止め輪RRは内側に弾性変形させられることとなる。その後、作業者が、
図10(a)に示すように筒部14aを挿入完了直前まで挿入すると、
図10(b)に示すように、止め輪RRは更に内側に弾性変形させられることとなる。このように、筒部14aと円形開口部3bとの双方に勾配が設けられることから、挿入量に応じて徐々に止め輪RRを弾性変形させることができる。
【0053】
次に、作業者が、筒部14aを挿入完了位置まで挿入すると、
図4及び
図5に示すように、止め輪RRは弾性復帰する。この際、止め輪RRは溝部14cと段部3aとに跨るように配置される。段部3aは上部軸受部材14の上方への抜けを防止するように段を形成していることから、上部軸受部材14は上部ハウジング3に対して抜け止め固定されることとなる。
【0054】
このようにして、本実施形態に係る圧力調整器1によれば、止め輪RRは、上部軸受部材14の上部ハウジング3への挿入過程において内側に弾性変形し、上部軸受部材14の上部ハウジング3への挿入完了時に弾性復帰して溝部14cと段部3aとの双方に跨って配置される。このため、金属製の止め輪RRが溝部14cと段部3aとに跨って上部軸受部材14が上部ハウジング3に対して抜け止め固定される。特に、止め輪RRが周状の溝部14cに対して収納されていれば、上部軸受部材14をどの向きで挿入しても抜け止め固定できる。また、金属製の止め輪RRを用いることから樹脂製品による破損の可能性も低減される。従って、破損によって切替表示部品が外れてしまう可能性を低減させると共に、作業性の向上を図ることができる。
【0055】
また、筒部14a及び円形開口部3bについて挿入方向に向かって先細りとなる勾配が形成されていることから、挿入初期から挿入完了までの間で止め輪RRを徐々に弾性変形させていくことが可能となり、勾配がなく挿入初期から止め輪RRを大きく弾性変形させる必要がある場合と比較すると挿入作業性の向上を図ることができる。さらに、上部ハウジング3や上部軸受部材14を樹脂にて型成形する際には、成型時に金型を抜け易くすることができる。
【0056】
さらに、
図6に示した止め輪RRを用いた場合には、330度以上の円弧を有するリング構造によって溝部14cと段部3aとの双方に跨って配置される距離を長く確保してスラスト荷重を高めて、上部軸受部材14が上部ハウジング3から抜けてしまう可能性をより一層低減させることができる。
【0057】
また、
図7に示した止め輪RRを用いた場合には、比較的大きめの開放部OPによって止め輪RRを溝部14cに対してスライド嵌め込みすることができ、作業性を向上させることができる。
【0058】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、実施形態同士の技術を組み合わせてもよいし、変更を加えてもよいし、可能な範囲で適宜他の技術を組み合わせてもよい。
【0059】
例えば本実施形態に係る圧力調整器1は、中圧減圧部6と低圧減圧部20とを備えた2段階式の圧力調整器であるが、これに限らず、単段式の圧力調整器であってもよい。また、上部ハウジング3は段部3aに代えて筒部14aに形成される溝部14cと同様の溝を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 :圧力調整器
2 :下部ハウジング(ハウジング)
3 :上部ハウジング(ハウジング)
3a :段部(引っ掛け部)
3b :円形開口部(挿入部)
7 :中圧減圧室(減圧室)
8 :大気圧室
11 :中圧ダイヤフラム(ダイヤフラム)
13 :切替軸(軸部材)
14 :上部軸受部材(軸受部材)
14a :筒部
14c :溝部
RR :止め輪(取付部材、リング部材)
RR1 :円形膨出部
RR2 :突起状膨出部
RR3 :肉厚部
RR4 :肉薄部
S :表示スプリング