(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/021 20120101AFI20220516BHJP
【FI】
F16H57/021
(21)【出願番号】P 2021568469
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2020045433
(87)【国際公開番号】W WO2021137291
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2019240058
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠介
(72)【発明者】
【氏名】漆畑 隆義
(72)【発明者】
【氏名】安井 健二郎
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-53479(JP,A)
【文献】特開2012-117602(JP,A)
【文献】特開2000-104827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/021
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと軸方向にオーバラップする差動機構と、
前記差動機構を収容するケースと、
前記ケースに支持されたピニオンギアと、
前記ピニオンギアと噛合するリングギアと、をボックス内に有し、
前記ボックスは、前記リングギアの外周において前記リングギアと係合する係合部を有し、
前記係合部から前記モータに向かって前記軸方向に突出する肉盛部に、パークロック機構のマニュアルシャフトが挿入支持されている、動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記肉盛部は、非環状で局所的に設けられている、動力伝達装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記ボックスは、前記ケースの回転中心を通る水平線よりも上方に棚部を有し、
前記肉盛部は、前記棚部の角部に配置されている、動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、傘歯車式の差動機構と、遊星歯車機構を有する電気自動車用の動力伝達装置が開示されている。
この遊星歯車機構は、ラージピニオンギアとスモールピニオンギアとを有するステップドピニオンギアを、備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動力伝達装置を車両に搭載するにあたり、パークロック機構と車両部品との干渉を防止することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様における動力伝達装置は、
モータと軸方向にオーバラップする差動機構と、
前記差動機構を収容するケースと、
前記ケースに支持されたピニオンギアと、
前記ピニオンギアと噛合するリングギアと、をボックス内に有し、
前記ボックスは、前記リングギアの外周において前記リングギアと係合する係合部を有し、
前記係合部から前記モータに向かって前記軸方向に突出する肉盛部に、パークロック機構のマニュアルシャフトが挿入支持されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明のある態様によれば、パークロック機構と車両部品との干渉を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】動力伝達装置の遊星減速ギア周りの拡大図である。
【
図4】動力伝達装置の差動機構周りの拡大図である。
【
図6】動力伝達装置の差動機構の分解斜視図である。
【
図15】第4ボックスをモータ側から見た図である。
【
図16】第4ボックスをモータ側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態にかかる動力伝達装置1を説明するスケルトン図である。
図2は、本実施形態にかかる動力伝達装置1を説明する断面の模式図である。
図3は、動力伝達装置1の遊星減速ギア4周りの拡大図である。
図4は、動力伝達装置1の差動機構5周りの拡大図である。
【0009】
図1に示すように、動力伝達装置1は、モータ2と、モータ2の出力回転を減速して差動機構5に入力する遊星減速ギア4(減速機構)と、を有する。動力伝達装置1は、また、駆動軸としてのドライブシャフト9(9A、9B)と、パークロック機構3と、を有する。
動力伝達装置1では、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、パークロック機構3と、遊星減速ギア4と、差動機構5と、ドライブシャフト9(9A、9B)と、が設けられている。
【0010】
動力伝達装置1では、モータ2の出力回転が、遊星減速ギア4で減速されて差動機構5に入力された後、ドライブシャフト9(9A、9B)を介して、動力伝達装置1が搭載された車両の左右の駆動輪W、Wに伝達される。
ここで、遊星減速ギア4は、モータ2の下流に接続されている。差動機構5は、遊星減速ギア4の下流に接続されている。ドライブシャフト9(9A、9B)は、差動機構5の下流に接続されている。
【0011】
図2に示すように、動力伝達装置1の本体ボックス10は、モータ2を収容する第1ボックス11と、第1ボックス11に外挿される第2ボックス12と、を有する。本体ボックス10は、第1ボックス11に組み付けられる第3ボックス13と、第2ボックス12に組み付けられる第4ボックス14と、を有する。
【0012】
第1ボックス11は、円筒状の支持壁部111と、支持壁部111の一端111aに設けられたフランジ状の接合部112と、を有している。
第1ボックス11は、支持壁部111をモータ2の回転軸Xに沿わせた向きで設けられている。支持壁部111の内側には、モータ2が収容される。
【0013】
接合部112は、回転軸Xに直交する向きで設けられている。接合部112は、支持壁部111よりも大きい外径で形成されている。
【0014】
第2ボックス12は、円筒状の周壁部121と、周壁部121の一端121aに設けられたフランジ状の接合部122と、周壁部121の他端121bに設けられたフランジ状の接合部123と、を有している。
周壁部121は、第1ボックス11の支持壁部111に外挿可能な内径で形成されている。
第1ボックス11と第2ボックス12は、第1ボックス11の支持壁部111に、第2ボックス12の周壁部121を外挿して互いに組み付けられている。
【0015】
周壁部121の一端121a側の接合部122は、回転軸X方向から、第1ボックス11の接合部112に当接している。これら接合部122、112は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。
第1ボックス11では、支持壁部111の外周に複数の凹溝111bが設けられている。複数の凹溝111bは、回転軸X方向に間隔をあけて設けられている。凹溝111bの各々は、回転軸X周りの周方向の全周に亘って設けられている。
第1ボックス11の支持壁部111に、第2ボックス12の周壁部121が外挿される。凹溝111bの開口が周壁部121で閉じられている。支持壁部111と周壁部121との間に、冷却水が通流する複数の冷却路CPが形成される。
【0016】
第1ボックス11の支持壁部111の外周では、凹溝111bが設けられた領域の両側に、リング溝111c、111cが形成されている。リング溝111c、111cには、シールリング113、113が外嵌して取り付けられている。
これらシールリング113は、支持壁部111に外挿された周壁部121の内周に圧接して、支持壁部111の外周と、周壁部121の内周との間の隙間を封止する。
【0017】
第2ボックス12の他端121bには、内径側に延びる壁部120が設けられている。壁部120は、回転軸Xに直交する向きで設けられている。壁部120の回転軸Xと交差する領域に、ドライブシャフト9Aが挿通する開口120aが設けられている。
壁部120では、モータ2側(図中、右側)の面に、開口120aを囲む筒状のモータ支持部125が設けられている。
モータ支持部125は、後記するコイルエンド253bの内側に挿入されている。モータ支持部125は、ロータコア21の端部21bに回転軸X方向の隙間をあけて対向している。
【0018】
第2ボックス12の周壁部121は、動力伝達装置1の車両への搭載状態を基準とした鉛直線方向において、下側の領域の径方向の厚みが、上側の領域よりも厚くなっている。
この径方向の厚みが厚い領域には、回転軸X方向に貫通してオイル溜り部128が設けられている。
オイル溜り部128は、連通孔112aを介して、第3ボックス13の接合部132に設けた軸方向油路138に連絡している。連通孔112aは、第1ボックス11の接合部112に設けられている。
【0019】
第3ボックス13は、回転軸Xに直交する壁部130を有している。壁部130の外周部には、回転軸X方向から見てリング状を成す接合部132が設けられている。
第1ボックス11から見て第3ボックス13は、差動機構5とは反対側(図中、右側)に位置している。第3ボックス13の接合部132は、第1ボックス11の接合部112に回転軸X方向から接合されている。第3ボックス13と第1ボックス11は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。この状態において第1ボックス11は、支持壁部111の接合部122側(図中、右側)の開口が、第3ボックス13で塞がれている。
【0020】
第3ボックス13では、壁部130の中央部に、ドライブシャフト9Aの挿通孔130aが設けられている。
挿通孔130aの内周には、リップシールRSが設けられている。リップシールRSは、図示しないリップ部をドライブシャフト9Aの外周に弾発的に接触させている。挿通孔130aの内周と、ドライブシャフト9Aの外周との隙間が、リップシールRSにより封止されている。
壁部130における第1ボックス11側(図中、左側)の面には、挿通孔130aを囲む周壁部131が設けられている。周壁部131の内周には、ドライブシャフト9AがベアリングB4を介して支持されている。
【0021】
周壁部131から見てモータ2側(図中、左側)には、モータ支持部135が設けられている。モータ支持部135は、回転軸Xの外周を間隔を空けて囲む筒状を成している。
モータ支持部135の外周には、円筒状の接続壁136が接続されている。接続壁136は、壁部130側(図中、右側)の周壁部131よりも大きい外径で形成されている。接続壁136は、回転軸Xに沿う向きで設けられており、モータ2から離れる方向に延びている。接続壁136は、モータ支持部135と第3ボックス13の壁部130とを接続している。
【0022】
モータ支持部135は、接続壁136を介して第3ボックス13で支持されている。モータ支持部135の内側を、モータシャフト20の一端20a側が、モータ2側から周壁部131側に貫通している。
モータ支持部135の内周には、ベアリングB1が支持されている。モータシャフト20の外周が、ベアリングB1を介してモータ支持部135で支持されている。
ベアリングB1と隣り合う位置には、リップシールRSが設けられている。
【0023】
第3ボックス13では、接続壁136の内周に、後記する油孔136aが開口している。接続壁136で囲まれた空間(内部空間Sc)に、油孔136aからオイルOLが流入するようになっている。リップシールRSは、接続壁136内のオイルOLのモータ2側への流入を阻止するために設けられている。
【0024】
第4ボックス14は、遊星減速ギア4と差動機構5の外周を囲む周壁部141と、周壁部141における第2ボックス12側の端部に設けられたフランジ状の接合部142と、を有している。
第4ボックス14は、第2ボックス12から見て差動機構5側(図中、左側)に位置している。第4ボックス14の接合部142は、第2ボックス12の接合部123に回転軸X方向から接合されている。第4ボックス14と第2ボックス12は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。
【0025】
動力伝達装置1の本体ボックス10の内部には、モータ2を収容するモータ室Saと、遊星減速ギア4と差動機構5を収容するギア室Sbとが形成されている。
モータ室Saは、第1ボックス11の内側で、第2ボックス12の壁部120と、第3ボックス13の壁部130との間に形成されている。
ギア室Sbは、第4ボックス14の内径側で、第2ボックス12の壁部120と、第4ボックス14の周壁部141との間に形成されている。
【0026】
ギア室Sbの内部には、プレート部材8が設けられている。
プレート部材8は、第4ボックス14にボルトBで固定されている。
プレート部材8は、ギア室Sbを、遊星減速ギア4と差動機構5を収容する第1ギア室Sb1と、パークロック機構3を収容する第2ギア室Sb2とに区画している。
回転軸X方向において第2ギア室Sb2は、第1ギア室Sb1と、モータ室Saとの間に位置している。
【0027】
モータ2は、円筒状のモータシャフト20と、モータシャフト20に外挿された円筒状のロータコア21と、ロータコア21の外周を間隔をあけて囲むステータコア25とを、有する。
【0028】
モータシャフト20では、ロータコア21の両側に、ベアリングB1、B1が外挿されて固定されている。
ロータコア21から見てモータシャフト20の一端20a側(図中、右側)に位置するベアリングB1は、第3ボックス13のモータ支持部135の内周に支持されている。他端20b側に位置するベアリングB1は、第2ボックス12の円筒状のモータ支持部125の内周に支持されている。
【0029】
モータ支持部135、125は、後記するコイルエンド253a、253bの内径側で、ロータコア21の一方の端部21aと他方の端部21bに、回転軸X方向の隙間をあけて対向して配置されている。
【0030】
ロータコア21は、複数の珪素鋼板を積層して形成したものである。珪素鋼板の各々は、モータシャフト20との相対回転が規制された状態で、モータシャフト20に外挿されている。
モータシャフト20の回転軸X方向から見て、珪素鋼板はリング状を成している。珪素鋼板の外周側では、図示しないN極とS極の磁石が、回転軸X周りの周方向に交互に設けられている。
【0031】
ロータコア21の外周を囲むステータコア25は、複数の電磁鋼板を積層して形成したものである。ステータコア25は、第1ボックス11の円筒状の支持壁部111の内周に固定されている。
電磁鋼板の各々は、支持壁部111の内周に固定されたリング状のヨーク部251と、ヨーク部251の内周からロータコア21側に突出するティース部252と、を有している。
【0032】
本実施形態では、巻線253を、複数のティース部252に跨がって分布巻きした構成のステータコア25を採用している。ステータコア25は、回転軸X方向に突出するコイルエンド253a、253bの分だけ、ロータコア21よりも回転軸X方向の長さが長くなっている。
【0033】
なお、ロータコア21側に突出する複数のティース部252の各々に、巻線を集中巻きした構成のステータコアを採用しても良い。
【0034】
第2ボックス12の壁部120(モータ支持部125)には、開口120aが設けられている。モータシャフト20の他端20b側は、開口120aを差動機構5側(図中、左側)に貫通して、第4ボックス14内に位置している。
モータシャフト20の他端20bは、第4ボックス14の内側で、後記するサイドギア54Aに、回転軸X方向の隙間をあけて対向している。
【0035】
図3に示すように、モータシャフト20では、第4ボックス14内に位置する領域に、段部201が設けられている。段部201は、モータ支持部125の近傍に位置している。段部201とベアリングB1との間の領域の外周には、モータ支持部125の内周に支持されたリップシールRSが当接している。
リップシールRSは、モータ2を収容するモータ室Saと、第4ボックス14内のギア室Sbとを区画している。
【0036】
第4ボックス14の内径側には、遊星減速ギア4と差動機構5を潤滑するためのオイルOLが封入されている(
図2参照)。
リップシールRSは、モータ室SaへのオイルOLの流入を阻止するために設けられている。
【0037】
図3に示すように、モータシャフト20では、段部201から他端20bの近傍までの領域が、外周にスプラインが設けられた嵌合部202となっている。
嵌合部202の外周には、パークギア30とサンギア41がスプライン嵌合している。
【0038】
パークギア30は、回転軸X方向におけるパークギア30の一方の側面が、段部201に当接している(図中、右側)。パークギア30の他方の側面に、サンギア41の円筒状の基部410の一端410aが当接している(図中、左側)。
基部410の他端410bには、モータシャフト20の他端20bに螺合したナットNが、回転軸X方向から圧接している。
サンギア41とパークギア30は、ナットNと段部201との間に挟み込まれた状態で、モータシャフト20に対して相対回転不能に設けられている。
【0039】
サンギア41は、モータシャフト20の他端20b側の外周に、歯部411を有している。歯部411の外周には、段付きピニオンギア43の大径歯車部431が噛合している。
【0040】
段付きピニオンギア43は、サンギア41に噛合する大径歯車部431と、大径歯車部431よりも小径の小径歯車部432とを有している。
段付きピニオンギア43は、大径歯車部431と小径歯車部432が、回転軸Xに平行な軸線X1方向で並んで、一体に設けられたギア部品である。
大径歯車部431は、小径歯車部432の外径R2よりも大きい外径R1で形成されている。
段付きピニオンギア43は、軸線X1に沿う向きで設けられている。この状態において大径歯車部431をモータ2側(図中、右側)に位置させている。
【0041】
小径歯車部432の外周は、リングギア42の内周に噛合している。リングギア42は、回転軸Xを間隔をあけて囲むリング状を成している。リングギア42の外周には、径方向外側に突出する複数の係合歯421が設けられている。複数の係合歯421は、回転軸X周りの周方向に間隔をあけて設けられている。
リングギア42は、外周に設けた係合歯421を、第4ボックス14の支持壁部146に設けた歯部146aにスプライン嵌合している。リングギア42は、回転軸X回りの回転が規制されている。すなわち、第4ボックス14の支持壁部146は、リングギア42と係合する係合部として機能する。
【0042】
段付きピニオンギア43は、大径歯車部431と小径歯車部432の内径側を軸線X1方向に貫通した貫通孔430を有している。
段付きピニオンギア43は、貫通孔430を貫通したピニオン軸44の外周で、ニードルベアリングNB、NBを介して回転可能に支持されている。
【0043】
ピニオン軸44の外周では、大径歯車部431の内周を支持するニードルベアリングNBと、小径歯車部432の内周を支持するニードルベアリングNBとの間には、中間スペーサMSが介在している。
【0044】
図4に示すように、ピニオン軸44の内部には、軸内油路440が設けられている。軸内油路440は、軸線X1に沿ってピニオン軸44の一端44aから、他端44bまで貫通している。
ピニオン軸44には、軸内油路440とピニオン軸44の外周とを連通させる油孔442、443が設けられている。
【0045】
油孔443は、大径歯車部431の内周を支持するニードルベアリングNBが設けられた領域に開口している。
油孔442は、小径歯車部432の内周を支持するニードルベアリングNBが設けられた領域に開口している。
ピニオン軸44において油孔443、442は、段付きピニオンギア43が外挿された領域内に開口している。
【0046】
さらに、ピニオン軸44には、オイルOLを軸内油路440に導入するための導入路441が設けられている。
ピニオン軸44の外周において導入路441は、後記する第2ケース部7の支持孔71a内に位置する領域に開口している。導入路441は、軸内油路440とピニオン軸44の外周とを連通させている。
【0047】
支持孔71aの内周には、ケース内油路781が開口している。ケース内油路781は、第2ケース部7の基部71から突出するガイド部78の外周と、支持孔71aとを連通させている。
軸線X1に沿う断面視においてケース内油路781は、軸線X1に対して傾斜している。ケース内油路781は、回転軸X側に向かうにつれて、基部71に設けたスリット710に近づく向きで傾斜している。
【0048】
ケース内油路781には、後記するデフケース50が掻き上げたオイルOLが流入する。ケース内油路781には、デフケース50の回転による遠心力で外径側に移動するオイルOLが流入する。
ケース内油路781から導入路441に流入したオイルOLは、ピニオン軸44の軸内油路440に流入する。軸内油路440に流入したオイルOLは、油孔442、443から径方向外側に排出される。油孔442、443から排出されたオイルOLは、ピニオン軸44に外挿されたニードルベアリングNBを潤滑する。
【0049】
ピニオン軸44では、導入路441が設けられた領域よりも他端44b側に、貫通孔444が設けられている。貫通孔444は、ピニオン軸44を直径線方向に貫通している。
ピニオン軸44は、貫通孔444と、後記する第2ケース部7側の挿入穴782との軸線X1回りの位相を合わせて設けられている。挿入穴782に挿入された位置決めピンPが、ピニオン軸44の貫通孔444を貫通する。これによって、ピニオン軸44は、軸線X1回りの回転が規制された状態で、第2ケース部7側で支持される。
【0050】
図4に示すように、ピニオン軸44の長手方向の一端44a側では、段付きピニオンギア43から突出した領域が第1軸部445となっている。第1軸部445は、デフケース50の第1ケース部6に設けた支持孔61aで支持されている。
ピニオン軸44の長手方向の他端44b側では、段付きピニオンギア43から突出した領域が第2軸部446となっている。第2軸部446は、デフケース50の第2ケース部7に設けた支持孔71aで支持されている。
【0051】
ここで、第1軸部445は、ピニオン軸44における段付きピニオンギア43が外挿されていない一端44a側の領域を意味する。第2軸部446は、ピニオン軸44における段付きピニオンギア43が外挿されていない他端44b側の領域を意味する。
ピニオン軸44では、第1軸部445よりも第2軸部446のほうが、軸線X1方向の長さが長くなっている。
【0052】
以下、差動機構5の主要構成を説明する。
図5は、差動機構5のデフケース50周りの斜視図である。
図6は、差動機構5のデフケース50周りの分解斜視図である。
図4から
図6に示すように、ケースとしてのデフケース50は、差動機構5を収容する。デフケース50は、第1ケース部6と第2ケース部7を回転軸X方向で組み付けて形成される。本実施形態のデフケース50は、第1ケース部6と第2ケース部7が、遊星減速ギア4のピニオン軸44を支持するキャリアとしての機能を有している。
【0053】
図6に示すように、デフケース50の、第1ケース部6と第2ケース部7との間には、3つのピニオンメートギア52と、3つのピニオンメートシャフト51と、が設けられている。ピニオンメートシャフト51は、回転軸X周りの周方向に等間隔で設けられている(
図6参照)。
ピニオンメートシャフト51各々の内径側の端部は、共通の連結部510に連結されている。
【0054】
ピニオンメートギア52は、ピニオンメートシャフト51の各々に1つずつ外挿されている。ピニオンメートギア52の各々は、回転軸Xの径方向外側から、連結部510に接触している。
この状態においてピニオンメートギア52の各々は、ピニオンメートシャフト51で回転可能に支持されている。
【0055】
図4に示すように、ピニオンメートシャフト51には、球面状ワッシャ53が外挿されている。球面状ワッシャ53は、ピニオンメートギア52の球面状の外周に接触している。
【0056】
デフケース50では、回転軸X方向における連結部510の一方側にサイドギア54Aが位置し、他方側にサイドギア54Bが位置する。サイドギア54Aは第1ケース部6で回転可能に支持される。サイドギア54Bは、第2ケース部7で回転可能に支持される。
サイドギア54Aは、回転軸X方向における一方側から、3つのピニオンメートギア52に噛合している。サイドギア54Bは、回転軸X方向における他方側から、3つのピニオンメートギア52に噛合している。
【0057】
図6に示すように、第1ケース部6は、リング状の基部61を有している。基部61は、回転軸X方向に厚みW61を有する板状部材である。
図4に示すように、基部61の中央部には、開口60が設けられている。基部61における第2ケース部7とは反対側(図中、右側)の面には、開口60を囲む筒壁部611が設けられている。筒壁部611の外周は、ベアリングB3を介して、プレート部材8で支持されている。
【0058】
図6に示すように、基部61における第2ケース部7側の面には、第2ケース部7側に延びる3つの連結梁62が設けられている。
連結梁62は、回転軸X周りの周方向に、等間隔で設けられている。連結梁62は、基部61に対して直交する基部63と、基部63よりも幅広の連結部64と、を有している。
【0059】
図4に示すように、連結部64の先端面には、ピニオンメートシャフト51を支持するための支持溝65が設けられている。
連結部64の内径側(回転軸X側)には、ピニオンメートギア52の外周に沿う形状で円弧部641が形成されている。
円弧部641では、ピニオンメートギア52の外周が、球面状ワッシャ53を介して支持される。
【0060】
連結梁62では、基部63と連結部64との境界部にギア支持部66が接続されている。ギア支持部66は、回転軸Xに直交する向きで設けられている。ギア支持部66は、中央部に貫通孔660を有している。
【0061】
ギア支持部66では、基部61とは反対側(図中、左側)の面に、貫通孔660を囲む凹部661が設けられている。凹部661には、サイドギア54Aの裏面を支持するリング状のワッシャ55が収容される。
サイドギア54Aの裏面には、円筒状の筒壁部541が設けられている。ワッシャ55は筒壁部541に外挿されている。
【0062】
図6に示すように、基部61には、ピニオン軸44の支持孔61aが開口している。支持孔61aは、回転軸X周りの周方向で間隔をあけて配置された連結梁62、62の間の領域に開口している。
図3に示すように、基部61には、支持孔61aを囲むボス部616が設けられている。ボス部616には、ピニオン軸44に外挿されたワッシャWcが、回転軸X方向から接触する。
【0063】
図6に示すように、基部61では、中央の開口60からボス部616までの範囲に、油溝617が設けられている。油溝617は、ボス部616に近づくにつれて、回転軸X周りの周方向の幅が狭くなる先細り形状で形成されている。油溝617は、ボス部616に設けた油溝618に連絡している。
【0064】
連結部64では、支持溝65の両側に、ボルト穴67、67が設けられている。
第1ケース部6の連結部64には、第2ケース部7側の連結部74が回転軸X方向から接合される。第1ケース部6と第2ケース部7は、第2ケース部7側の連結部を貫通したボルトBが、ボルト穴67、67に螺入されて、互いに接合される。
【0065】
図6に示すように、第2ケース部7は、リング状の基部71を有している。
図4に示すように、基部71は、回転軸X方向に厚みW71を有する板状部材である。
基部71の中央部には、基部71を厚み方向に貫通する貫通孔70が設けられている。
基部71における第1ケース部6とは反対側(図中、左側)の面には、貫通孔70を囲む筒壁部72と、筒壁部72を間隔をあけて囲む周壁部73が設けられている。
周壁部73の先端には、回転軸X側に突出する突起部73aが設けられている。突起部73aは、回転軸X周りの周方向の全周に亘って設けられている。
【0066】
周壁部73の外径側には、ピニオン軸44の3つの支持孔71aが開口している。支持孔71aは、回転軸X周りの周方向に間隔をあけて設けられている。
周壁部73の内径側には、基部71を厚み方向に貫通する3つのスリット710が設けられている。
回転軸X方向から見てスリット710は、周壁部73の内周に沿う弧状を成している。スリット710は、回転軸X周りの周方向に所定の角度範囲で形成されている。
【0067】
図6に示すように、第2ケース部7においてスリット710は、回転軸X周りの周方向に間隔をあけて設けられている。スリット710の各々は、支持孔71aの内径側を、回転軸X周りの周方向に横切って設けられている。
【0068】
回転軸X周りの周方向で隣り合うスリット710、710の間には、紙面手前側に突出した3つの突出壁711が設けられている。突出壁711は、回転軸Xの径方向に直線状に延びている。突出壁711は、外径側の周壁部73と内径側の筒壁部72とに跨がって設けられている。
【0069】
3つの突出壁711は、回転軸X周りの周方向に間隔をあけて設けられている。突出壁711は、スリット710に対して、回転軸X周りの周方向に大凡45度位相をずらして設けられている。
【0070】
周壁部73の外径側では、回転軸X周りの周方向で隣り合う支持孔71a、71aの間に、紙面奥側に窪んだボルト収容部76、76が設けられている。
ボルト収容部76の内側には、ボルトの挿通孔77が開口している。挿通孔77は、基部71を厚み方向(回転軸X方向)に貫通している。
【0071】
基部71における第1ケース部6側(図中、右側)の面には、第1ケース部6側に突出する3つの連結部74が設けられている。
連結部74は、第1ケース部6側の連結梁62と同数設けられている。
【0072】
図4に示すように、連結部74の先端面には、ピニオンメートシャフト51を支持するための支持溝75が設けられている。
【0073】
連結部74の内径側(回転軸X側)には、ピニオンメートギア52の外周に沿う円弧部741が設けられている。
円弧部741では、ピニオンメートギア52の外周が、球面状ワッシャ53を介して支持される。
第2ケース部7では、基部71の表面71bに、サイドギア54Bの裏面を支持するリング状のワッシャ55が載置される。サイドギア54Bの裏面には、円筒状の筒壁部540が設けられている。ワッシャ55は筒壁部540に外挿されている。
【0074】
第2ケース部7の基部71には、第1ケース部6側(図中右側)に突出して、ガイド部78が設けられている。ガイド部78は、第1ケース部6のボス部616と同数設けられている。
【0075】
図4に示すように、軸線X1に沿う断面視において、ガイド部78の支持孔71aには、第1ケース部6側からピニオン軸44が挿入される。ピニオン軸44は、位置決めピンPにより、軸線X1回りの回転が規制された状態で位置決めされている。
この状態において、ピニオン軸44に外挿された段付きピニオンギア43の小径歯車部432が、ワッシャWcを間に挟んで、軸線X1方向からガイド部78に当接している。
【0076】
デフケース50では、第2ケース部7の筒壁部72に、ベアリングB2が外挿されている。筒壁部72に外挿されたベアリングB2は、第4ボックス14の支持部145で保持されている。デフケース50の筒壁部72は、ベアリングB2を介して、第4ボックス14で回転可能に支持されている。
【0077】
支持部145には、第4ボックス14の開口部145aを貫通したドライブシャフト9Bが、回転軸X方向から挿入されている。ドライブシャフト9Bは、支持部145で回転可能に支持されている。
開口部145aの内周には、リップシールRSが固定されている。リップシールRSの図示しないリップ部が、ドライブシャフト9Bに外挿されたサイドギア54Bの筒壁部540の外周に弾発的に接触している。
これにより、サイドギア54Bの筒壁部540の外周と開口部145aの内周との隙間が封止されている。
【0078】
デフケース50の第1ケース部6は、筒壁部611に外挿されたベアリングB3を介して、プレート部材8で支持されている。
図2に示すように、第1ケース部6の内部には、第3ボックス13の挿通孔130aを貫通したドライブシャフト9Aが、回転軸方向から挿入されている。
ドライブシャフト9Aは、モータ2のモータシャフト20と、遊星減速ギア4のサンギア41の内径側を回転軸X方向に横切って設けられている。
【0079】
図4に示すように、デフケース50の内部では、ドライブシャフト9(9A、9B)の先端部の外周に、サイドギア54A、54Bがスプライン嵌合している。サイドギア54A、54Bとドライブシャフト9(9A、9B)とが、回転軸X周りに一体回転可能に連結されている。
【0080】
この状態においてサイドギア54A、54Bは、回転軸X方向で間隔をあけて、対向配置されており、サイドギア54A、54Bの間に、ピニオンメートシャフト51の連結部510が位置している。
本実施形態では、合計3つのピニオンメートシャフト51が、連結部510から径方向外側に延びている。ピニオンメートシャフト51の各々に、ピニオンメートギア52が支持されている。ピニオンメートギア52は、回転軸X方向の一方側に位置するサイドギア54Aおよび他方側に位置するサイドギア54Bに、互いの歯部を噛合させた状態で組み付けられている。
【0081】
図2に示すように、第4ボックス14の内部には、潤滑用のオイルOLが貯留されている。デフケース50の下部側は、貯留されたオイルOL内に位置している。
本実施形態では、連結梁62が最も下部に位置した際に、連結梁62がオイルOL内に位置する高さまで、オイルOLが貯留されている。
貯留されたオイルOLは、モータ2の出力回転の伝達時に、回転軸X回りに回転するデフケース50により掻き上げられる。
【0082】
図7から
図12は、オイルキャッチ部15を説明する図である。
図7は、第4ボックス14を第3ボックス13側から見た平面図である。
図8は、
図7に示したオイルキャッチ部15を斜め上方から見た斜視図である。
図9は、第4ボックス14を第3ボックス13側から見た平面図である。
図9は、デフケース50を配置した状態を示している。
図10は、
図9に示したオイルキャッチ部15を斜め上方から見た斜視図である。
図11は、
図9におけるA-A断面の模式図である。
図12は、動力伝達装置1を上方から見た場合におけるオイルキャッチ部15と、デフケース50(第1ケース部6、第2ケース部7)との位置関係を説明する模式図である。
なお、
図7および
図9では、第4ボックス14の接合部142と、支持壁部146の位置を明確にするために、ハッチングを付して示している。
図12では、マニュアルプレート35の位置を仮想線で示している。
【0083】
図7に示すように、回転軸X方向から見て第4ボックス14には、中央の開口部145aを間隔をあけて囲む支持壁部146が設けられている。支持壁部146の内側(回転軸X)が、デフケース50(
図9参照)の収容部140となっている。
第4ボックス14内の上部には、オイルキャッチ部15の空間と、ブリーザ室16の空間が形成されている。
【0084】
第4ボックス14の支持壁部146では、鉛直線VLと交差する領域に、オイルキャッチ部15と、デフケース50の収容部140とを連通させる連通口147が設けられている。
【0085】
図7に示すように、オイルキャッチ部15とブリーザ室16は、回転軸Xと直交する鉛直線VLを挟んだ一方側(図中、左側)と他方側(図中、右側)に、それぞれ位置している。
オイルキャッチ部15は、デフケース50の回転中心(回転軸X)を通る鉛直線VLからオフセットした位置に配置されている。
図12に示すように、上方からオイルキャッチ部15を見ると、オイルキャッチ部15は、デフケース50の真上からオフセットした位置に配置されている。
ここで、鉛直線VLは、動力伝達装置1の車両での設置状態を基準とした鉛直線VLである。回転軸X方向から見て鉛直線VLは、回転軸Xと直交している。
なお、以下の説明において水平線HLは、動力伝達装置1の車両での設置状態を基準とした水平線HLである。回転軸X方向から見て水平線HLは、回転軸Xと直交している。
【0086】
図8に示すように、オイルキャッチ部15は、支持壁部146よりも紙面奥側まで及んで形成されている。オイルキャッチ部15の下縁には、紙面手前側に突出して支持台部151が設けられている。支持台部151は、第4ボックス14内の上部にオイルキャッチ部15の空間を形成するための棚部として機能する。支持台部151は、支持壁部146よりも紙面手前側であって、第4ボックス14の接合部142よりも紙面奥側までの範囲に設けられている。
【0087】
図7に示すように、回転軸X方向から見て、オイルキャッチ部15の鉛直線VL側(図中、右側)には、オイルキャッチ部15と、デフケース50の収容部140とを連通させる連通口147が形成されている。連通口147は、支持壁部146の一部を切り欠いて形成されている。
回転軸X方向から見て連通口147は、鉛直線VLをブリーザ室16側(図中、右側)から、オイルキャッチ部15側(図中、左側)に横切る範囲に設けられている。
【0088】
図9に示すように、本実施形態では、動力伝達装置1を搭載した車両の前進走行時に、第3ボックス13側から見てデフケース50は、回転軸X周りの反時計回り方向CCWに回転する。
そのため、オイルキャッチ部15は、デフケース50の回転方向における下流側に位置している。そして、連通口147の周方向の幅は、鉛直線VLを挟んだ左側のほうが、右側よりも広くなっている。鉛直線VLを挟んだ左側は、デフケース50の回転方向における下流側であり、右側は上流側である。これにより、回転軸X回りに回転するデフケース50で掻き上げられたオイルOLの多くが、オイルキャッチ部15内に流入できる。
【0089】
さらに、
図12に示すように、前記したピニオン軸44の第2軸部446の回転軌道の外周位置と、大径歯車部431の回転軌道の外周位置は、回転軸Xの径方向でオフセットしている。第2軸部446の回転軌道の外周位置のほうが、大径歯車部431の回転軌道の外周位置よりも内径側に位置している。そのため、第2軸部446の外径側に空間的な余裕がある。この空間を利用して、オイルキャッチ部15を設けることで、本体ボックス10内の空間スペースの有効利用が可能となっている。
【0090】
なお、本実施形態では、この空間を利用して、後記するパークロック機構3のマニュアルプレート35と、ディテントスプリング36と、パークバイワイヤのアクチュエータACTにより回転駆動されるマニュアルシャフト37を配置している(
図17参照)。
【0091】
図12に示すように、第2軸部446は、モータ2から見て小径歯車部432の奥側に突出している。第2軸部446の周辺部材(例えば、第2軸部446を支持するデフケース50のガイド部78)が、オイルキャッチ部15に近接した位置になる。
よって、当該周辺部材からオイルキャッチ部15へのオイルOL(潤滑油)の供給をスムーズに行うことができる。
【0092】
図8に示すように、支持台部151の奥側には、油孔151aの外径側の端部が開口している。油孔151aは、第4ボックス14内を内径側に延びている。油孔151aの内径側の端部は、支持部145の内周に開口している。
図2に示すように、支持部145において油孔151aの内径側の端部は、リップシールRSとベアリングB2との間に開口している。
【0093】
さらに、支持台部151の手前側(モータ2側)には、後記するマニュアルシャフト37の支持孔151bが設けられている。
支持孔151bは、支持台部151の角に設けた肉盛部156に、開口を上方に向けて設けられている。
【0094】
図10および
図12に示すように、支持台部151には、オイルガイド152が載置されている。
オイルガイド152は、キャッチ部153と、キャッチ部153から第1ボックス11側(
図10における紙面手前側)に延びるガイド部154とを有している。
【0095】
図12に示すように、上方から見て支持台部151は、回転軸Xの径方向外側で、デフケース50(第1ケース部6、第2ケース部7)の一部に重なる位置に、段付きピニオンギア43(大径歯車部431)との干渉を避けて設けられている。
回転軸Xの径方向から見て、キャッチ部153は、ピニオン軸44の第2軸部446と重なる位置に設けられている。さらにガイド部154は、ピニオン軸44の第1軸部445と大径歯車部431と重なる位置に設けられている。
【0096】
そのため、デフケース50が回転軸X回りに回転する際に、デフケース50で掻き上げられたオイルOLが、キャッチ部153とガイド部154側に向けて移動する。
【0097】
図10に示すように、キャッチ部153の外周縁には、支持台部151から離れる方向(上方向)に延びる壁部153aが設けられている。回転軸X回りに回転するデフケース50で掻き上げられたオイルOLの一部は、オイルガイド152に貯留される。
【0098】
キャッチ部153の奥側(
図10における紙面奥側)では、壁部153aに切欠部155が設けられている。
図12に示すように、切欠部155は、油孔151aに対向する領域に設けられている。キャッチ部153に貯留されたオイルOLの一部は、切欠部155の部分から油孔151aに向けて排出される。
【0099】
図11に示すように、ガイド部154は、キャッチ部153から離れつれて下方に傾斜している。
図10に示すように、ガイド部154の幅方向の両側には、壁部154a、154aが設けられている。壁部154a、154aは、ガイド部154の長手方向の全長に亘って設けられている。壁部154a、154aは、キャッチ部153の外周を囲む壁部153aに接続されている。
キャッチ部153に貯留されたオイルOLの一部が、ガイド部154側にも排出される。
【0100】
図11に示すように、ガイド部154は、デフケース50との干渉を避けた位置を、第2ボックス12側に延びている。ガイド部154の先端154bは、第2ボックス12の壁部120に設けた油孔126aに、回転軸X方向の隙間を空けて対向している。
壁部120の外周には、油孔126aを囲むボス部126が設けられている。ボス部126には、回転軸X方向から配管127の一端が嵌入している。
【0101】
配管127は、第2ボックス12の外側を通って第3ボックス13まで及んでいる。配管127の他端は、第3ボックスの円筒状の接続壁136に設けた油孔136a(
図2参照)に連通している。
【0102】
図9に示すように、回転軸X回りに回転するデフケース50で掻き上げられたオイルOLの一部は、オイルキャッチ部15に到達する。
図11に示すように、オイルOLは、ガイド部154と配管127を通って、接続壁136の内部空間Sc(
図2参照)に供給される。
【0103】
図2に示すように、第3ボックス13には、内部空間Scに連通する径方向油路137が設けられている。
径方向油路137は、内部空間Scから径方向下側に延びている。径方向油路137は、接合部132内に設けた軸方向油路138に連通している。
【0104】
軸方向油路138は、第1ボックス11の接合部112に設けた連通孔112aを介して、第2ボックス12の下部に設けたオイル溜り部128に連絡している。
オイル溜り部128は、周壁部121内を回転軸X方向に貫通している。オイル溜り部128は、第4ボックス14に設けたギア室Sbに連絡している。
【0105】
ギア室Sbでは、円板状のプレート部材8が、回転軸Xに直交する向きで設けられている。前記したようにプレート部材8は、第4ボックス14内のギア室Sbを、デフケース50側の第1ギア室Sb1と、モータ2側の第2ギア室Sb2に区画している。
【0106】
図13および
図14は、プレート部材8を説明する図である。
図13は、プレート部材8をモータ2側から見た平面図である。
図14は、
図13におけるA-A断面の模式図である。
図13に示すように、モータ2側から見てプレート部材8は、リング状の基部80を有している。基部80の中央部には、貫通孔800を囲むリング状の支持部801が設けられている。
【0107】
図13に示すように、基部80の外周縁80cには、接続片81、82、83、84が設けられている。
接続片81、82、83、84の各々は、基部80の外周縁80cから径方向外側に延出している。接続片81、82、83、84には、それぞれボルト孔81a、82a、83a、84aが設けられている。
【0108】
接続片81は、プレート部材8の上部において鉛直線VLと交差する位置に設けられている。接続片81は、鉛直線VLに沿って基部80から離れる方向に延びている。
鉛直線VLの一方側(
図13における左側)では、水平線HLを挟んだ上側と、下側に、それぞれ1つずつ接続片82、83が設けられている。これら接続片82、83もまた、基部80から離れる方向に延びている。
【0109】
鉛直線VLの他方側(
図13における右側)では、水平線HLよりも下側に接続片84が設けられている。この接続片84は、水平線HLの下側で、前記した接続片83の下縁を通る。接続片84は、水平線HLに対して平行な直線HLaと交差する位置から下方に突出している。
【0110】
鉛直線VLの他方側(
図13における右側)では、水平線HLよりも上側に接続片85が設けられている。接続片85は、回転軸X回りの周方向に所定の幅を有している。接続片85における鉛直線VL寄りの位置には、ボルト孔85aが設けられている。水平線HL寄りの位置には、支持ピン85bが設けられている。支持ピン85bは、紙面手前側に突出している。
【0111】
プレート部材8におけるモータ2側の面80a(
図14参照)には、後記するストッパピン861の支持ボス86が設けられている。
支持ボス86は、鉛直線VL上に位置する接続片81の下側に位置している。支持ボス86は、接続片81に隣接している。
【0112】
図13に示すように、支持ボス86の下側には、取付ボス87が設けられている。取付ボス87は、支持ピン85bを通り、前記した水平線HLに平行な直線HLbと交差する位置に設けられている。取付ボス87は、支持ボス86よりも紙面手前側まで突出している(
図14参照)。
さらに、鉛直線VL方向における支持ピン85bの下側には、取付ボス87と対になる取付ボス88が設けられている。
【0113】
取付ボス87から見て、支持ピン85bとは反対側(図中、左側)には、後記するサポート33の取付部89が設けられている。
取付部89では、水平線HL方向で隣り合う2つのボルト孔89a、89aが設けられている。
【0114】
図15は、第4ボックス14をモータ2側から見た図である。
図15では、プレート部材8の外周縁を支持する段部148d、149d、17dの配置を示している。
なお、
図15では、周壁部148、149、弧状壁部17の位置と、段部148d、149d、17dの位置と、接合部142の位置を明確にするために、これらにハッチングを付して示している。
図16は、第4ボックス14をモータ2側から見た図である。
図16では、プレート部材8が取り付けられた状態を示している。
【0115】
図15に示すように、回転軸X方向から見て第4ボックス14には、周壁部148、149が設けられている。これら周壁部148、149は、支持壁部146における歯部146aが設けられた領域の外径側に位置している。
周壁部148、149は、回転軸Xを中心とした円弧状に形成されている。
【0116】
周壁部148は、鉛直線VL方向において、前記したオイルキャッチ部15の下側に位置している。
回転軸X方向から見て周壁部148は、回転軸Xを通る水平線HLを、上側から下側に横切る範囲に設けられている。
周壁部148の上側の端部148aは、支持台部151の近傍に位置している。周壁部148の下側の端部148bは、直線HLaの近傍に位置している。
【0117】
図15に示すように、回転軸X方向から見て周壁部148の内周148cは、前記したプレート部材8(基部80)の外周に沿う円弧状を成している。周壁部148の内周148cの回転軸Xを基準とした内径は、プレート部材8の回転軸Xを基準とした外径よりもわずかに大きくなっている。
周壁部148の内側には、紙面奥側に窪んだ段部148dが設けられている。
プレート部材8を第4ボックス14に取り付けると、段部148dには、プレート部材8(基部80)の外周縁が当接する。プレート部材8(基部80)は、回転軸X方向から段部148dに当接する。
【0118】
周壁部148の外側には、ボルト孔18aを有するボス部18が2つ設けられている。ボス部18、18は、周壁部148と一体に形成されている。ボス部18、18は、周壁部148の上側の端部148a側と、下側の端部148bの近傍にそれぞれ設けられている。ボス部18、18は、周壁部148よりも紙面手前側まで突出している。
【0119】
周壁部149は、前記したブリーザ室16の下側に位置している。周壁部149は、ブリーザ室16を区画形成する壁部160よりも紙面奥側に位置している。
回転軸X方向から見て周壁部149の上側の端部149aは、鉛直線VL上で、ボス部18に接続している。ボス部18には、オイルキャッチ部15側に延びる側壁部159がさらに接続されている。周壁部149の下側の端部149bは、ブリーザ室16の下側で第4ボックス14の周壁部141に接続されている。
【0120】
図15に示すように、回転軸X方向から見て周壁部149の内周149cは、前記したプレート部材8(基部80)の外周に沿う円弧状を成している。周壁部149の内周149cの回転軸Xを基準とした内径は、プレート部材8の回転軸Xを基準とした外径よりもわずかに大きくなっている。
周壁部149の内側には、紙面奥側に窪んだ段部149dが設けられている。
プレート部材8を第4ボックス14に取り付けると、段部149dには、プレート部材8(基部80)の外周縁が当接する。プレート部材8(基部80)は、回転軸X方向から段部149dに当接する。
【0121】
周壁部149の外側には、ボルト孔18aを有するボス部18が2つ設けられている。ボス部18、18は、周壁部149と一体に形成されている。ボス部18、18は、回転軸X回りの周方向に間隔をあけて設けられている。ボス部18、18は、周壁部149の上側の端部148aの外周と、ブリーザ室16の下側に位置する領域の外周にそれぞれ設けられている。
ボス部18、18は、周壁部149よりも紙面手前側まで突出している。
【0122】
第4ボックス14では、ブリーザ室16の下側であって水平線HLよりも下側の領域に、弧状壁部17が設けられている。弧状壁部17は、回転軸X周りの周方向において、周壁部148に対して大凡180°位相をずらした位置関係で設けられている。
図15に示すように、回転軸X方向から見て弧状壁部17の内周17cは、前記したプレート部材8(基部80)の外周に沿う円弧状を成している。弧状壁部17の内周17cの回転軸Xを基準とした内径は、プレート部材8の回転軸Xを基準とした外径よりもわずかに大きくなっている。
弧状壁部17では、前記した直線HLaと交差する位置に、ボルト孔18aを有するボス部18が形成されている。ボス部18は、弧状壁部17よりも紙面手前側に突出している。
【0123】
ボス部18の内周には、回転軸X方向に段部17dが突出している。
プレート部材8を第4ボックス14に取り付けると、段部17dには、プレート部材8(基部80)の外周縁が当接する。プレート部材8(基部80)は、回転軸X方向から段部17dに当接する。
【0124】
ここで、プレート部材8の第4ボックス14への取り付けは、はじめに、プレート部材8(基部80)の外周縁を、周壁部148、149の段部148d、149dと、弧状壁部17の段部17dに、回転軸X方向から当接させる。続いて、接続片81~85のボルト孔81a~85aを貫通したボルトBを、対応するボス部18のボルト孔18aに螺入することで、プレート部材8が第4ボックス14に固定される(
図16参照)。
【0125】
図17および
図18は、パークロック機構3を説明する図である。
図17は、パークロック機構3が設けられた第4ボックス14を斜め上方から見た斜視図である。
図18は、パークロック機構3が設けられた第4ボックス14をモータ2側から見た平面図である。
図19から
図21は、パークロック機構3を説明する図である。
図19は、パークロック機構3を上方から見た図である。
図20は、
図19におけるA-A断面の模式図である。
図21は、
図20におけるC-C断面の模式図である。
【0126】
図17に示すように、パークロック機構3は、パークギア30と、パークポール31と、パークロッド32と、サポート33と、ホルダ34と、マニュアルプレート35と、ディテントスプリング36と、マニュアルシャフト37と、を有している。
パークロック機構3は、動力伝達装置1を搭載した車両の走行モード/駐車モードの切り替えがセンサにより検出されると、アクチュエータACTにより、マニュアルシャフト37を回転軸Y(
図19参照)回りに回動させるパークバイワイヤ式のパークロック機構である。
【0127】
本実施形態では、プレート部材8のモータ2側に、パークギア30と、パークポール31と、パークロッド32と、サポート33と、ホルダ34が位置しており、反対側に、マニュアルプレート35と、ディテントスプリング36と、マニュアルシャフト37が位置している。
【0128】
ホルダ34は、回転軸X方向から見て略矩形形状を成す板状部材である。ホルダ34は、パークポール31を支持するための突起部341を備えている。ホルダ34では、長手方向の両側にボルト孔34a、34aが設けられている。
ホルダ34は、ボルトB、Bで、プレート部材8の取付ボス87、88に取り付けられている。
図17および
図18に示すように、回転軸X方向から見てホルダ34は、パークギア30の上方から、ブリーザ室16の下方までの範囲に設けられている。
【0129】
図16に示すように、回転軸X方向から見てホルダ34は、ブリーザ室16側(図中、右側)に向かうにつれて、鉛直線VL方向の下側に傾斜している。ホルダ34の下縁342は、ブリーザ室16側(図中、右側)に向かうにつれて、鉛直線VL方向の下側に位置する向きで傾斜している。
【0130】
図17および
図18に示すように、パークポール31は、ホルダ34を介してプレート部材8で支持されている。
パークポール31は、挿通孔310dを有する第1板状部310と、爪部311cを有する第2板状部311と、を有する一体部品である。
【0131】
パークポール31の挿通孔310dには、ホルダ34側の突起部341が挿入されている。パークポール31は、突起部341で回動可能に支持されており、回転軸Xに平行な軸線X2回りに回動可能である。
図18に示すように、回転軸X方向から見て第1板状部310は、軸線X2に直交する直線Lx1に沿って、突起部341で支持された領域から上方側に延びている。
第1板状部310は、プレート部材8の支持ボス86と略同じ高さ位置まで延びたのち、ブリーザ室16から離れる方向(図中、左方向)に屈曲している。
第1板状部310では、屈曲部310eよりも先の領域が、直線Lx2に沿って延びており、この領域の先端側が、パークロッド32のカム320により操作される被操作部310cとなっている。
被操作部310cは、サポート33で支持されたカム320に載置されている。
【0132】
図18に示すように、回転軸X方向から見て第2板状部311の下部には、パークギア30との係合部である爪部311cが設けられている。
爪部311cは、第2板状部311の下部から回転軸X側に膨出して形成されている。
【0133】
パークポール31の第1板状部310では、挿通孔310dの側方に係止孔310fが設けられている。係止孔310fには、スプリングSpの一端が係合している(
図18参照)。スプリングSpの他端は、プレート部材8の外周縁80cに圧接している。スプリングSpは、プレート部材8の支持ピン85bに外挿されている。この状態においてスプリングSpは、パークポール31に付勢力を作用させている。パークポール31は、スプリングSpから作用する付勢力で、爪部311cを、パークギア30から離間させる方向(
図18では反時計回り方向:矢印参照)に常時付勢されている。
【0134】
前記したようにパークポール31は、回転軸Xに平行な軸線X2回りに回動可能である。
図3に示すようにパークポール31の第1板状部310は、回転軸X方向において、ホルダ34とプレート部材8との間に配置されている。第2板状部311は、第1板状部310よりもモータ2側(図中、右側)に位置しており、ホルダ34の内径側を下方に延びている。
【0135】
図18に示すように、回転軸X方向から見てパークロッド32は、水平線HLよりも上側を通る直線Lx3に沿う向きで設けられている。パークロッド32は、回転軸Xに直交する。
パークロッド32は、カム320が外挿された先端側を、パークポール31側(ブリーザ室16側)に向けて設けられている。カム320は、サポート33と、パークポール31の被操作部310cとの間に挿入されている。
【0136】
図20に示すように、断面視においてサポート33は、弧状の底壁部331と、底壁部331の両側から上方に延びる側壁部332、333と、底壁部331から下方に延びる接続片334と、を有する。
サポート33は、接続片334を貫通したボルトBにより、プレート部材8の取付部89に固定されている。
【0137】
図20に示すように、動力伝達装置1の内部においてサポート33は、一方の側壁部333を、第2ボックス12の壁部120に接触させた状態で、プレート部材8に固定されている。また、サポート33は、他方の側壁部332は、プレート部材8との間に隙間を空けて設けられている。
【0138】
サポート33において、底壁部331と、当該底壁部331の両側の側壁部332、333から構成される部分は、断面視において略U字形状を成している。サポート33は、略U字形状の部分の開口を上方に向けて設けられている。
【0139】
図21に示すように、サポート33では、ブリーザ室16側(図中、右側)の内周に、カム部335が設けられている。カム部335の上面335aは、底壁部331の上面331aよりも上方に位置している。
パークロッド32では、先端32a側にカム320が外挿されている。
カム320は、図示しないスプリングの付勢力で、先端32a側に付勢されている。
【0140】
パークロッド32が、サポート33とパークポール31の被操作部310cとの間にカム320を押し込む方向(
図21における右方向)に変位すると、カム部335に乗り上げられたカム320が、被操作部310cを押し上げる。
これにより、パークポール31は、
図18における時計回り方向に回動して、爪部311cをパークギア30の外周に係合させた位置(係合位置:
図17参照)に配置される。
【0141】
パークロッド32が、サポート33とパークポール31の被操作部310cとの間から引き抜かれる方向(
図21における左方向)に変位すると、パークロッド32のカム320が、カム部335を降りて底壁部331の上面331aに到達する(
図21における仮想線参照)。
これにより、パークポール31は、スプリングSpの付勢力により、
図18における反時計回り方向に回動して、爪部311cをパークギア30の外周から離脱させた位置(離脱位置:
図18参照)に配置される。
【0142】
図19に示すように、パークロッド32の他端32bは、マニュアルプレート35の連結部355で支持されている。この状態においてパークロッド32は、連結部355からの脱落が阻止された状態で、軸方向に変位可能に設けられている。
【0143】
マニュアルプレート35は、マニュアルシャフト37に外挿される基部351と、基部351の外周から、マニュアルシャフト37の回転軸Yの径方向に延びる腕部353および係合部352を有している。
【0144】
基部351は、マニュアルシャフト37との相対回転が規制された状態で、マニュアルシャフト37に固定されている。
腕部353は、基部351の外周からモータ2に近づく方向に延びている。回転軸Xの径方向から見て、腕部353は、プレート部材8の外径側をモータ2側に横切っている。
【0145】
図17に示すように、腕部の353の先端側は、下側(回転軸)側に折り曲げられたのち、連結部355が上面に固定された支持部354に接続している。
【0146】
また、
図19に示すように、基部351から延びる係合部352の先端側は、回転軸Yの周方向に所定の範囲を持って幅広に形成されている。この幅広に形成された領域の外周には、周方向に連続する複数の凹部が設けられている。これら複数の凹部のうちの1つに、ディテントスプリング36のローラ365が弾発的に係合している。
【0147】
ディテントスプリング36は、長手方向の基端部361が、ボルトBで、第4ボックス14に固定されている。ローラ365が設けられた先端側は、マニュアルプレート35の基部351の径方向に弾性変位可能である。また、ローラ365が設けられた先端側は、マニュアルプレート35の基部351の外周(凹部)に圧接している。
【0148】
本実施形態では、動力伝達装置1を搭載した車両の走行モード/駐車モードの切り替えに連動して、マニュアルシャフト37が回転軸Y回りに回動する。
マニュアルシャフト37が回動すると、マニュアルシャフト37に固定されたマニュアルプレート35もまた回転軸Y回りに回動する。そうすると、マニュアルプレート35の基部351から延びる腕部353と、腕部353の先端の支持部354に固定された連結部355が、回転軸Y周りの周方向に変位する。連結部355に連結されたパークロッド32もまた、当該パークロッド32の長手方向に変位する。
【0149】
図22および
図23は、第4ボックス14におけるマニュアルシャフト37の支持を説明する図である。
図22は、支持台部151に設けた肉盛部156を斜め下方から見た斜視図である。
図23は、支持台部151をモータ2側から見た図である。
図23では、支持台部151の一部と肉盛部156の部分を切り欠いて断面で示している。なお、説明の便宜上、マニュアルプレート35とディテントスプリング36の図示は省略している。
【0150】
図8に示すように、支持台部151における回転軸X側の角には、肉盛部156が局所的に設けられている。肉盛部156は、第4ボックス14の構成素材を用いて形成される。
この肉盛部156の部分には、マニュアルシャフト37の下端を回転可能に支持するための支持孔151bが、開口を上方に向けて設けられている。
【0151】
図22に示すように、肉盛部156は、支持台部151から周壁部148側の下方に向けて膨出している。肉盛部156は、支持壁部146に設けた複数の歯部146aのうち、連通口147に隣接する位置の歯部146aの根元に接続されている。
【0152】
肉盛部156は、歯部146aと支持台部151とに跨がって設けられている。肉盛部156は、支持壁部146のモータ2側の面からモータ2側に膨出している。
図23に示すように、マニュアルシャフト37の回転軸Y方向における肉盛部156の厚みW156は、支持台部151の厚みW151よりも厚くなっている。さらに、肉盛部156の回転軸Yの径方向の厚みW156'は、マニュアルシャフト37の直径D37よりも厚くなっている。
【0153】
前記したように、肉盛部156の支持孔151bでは、マニュアルシャフト37の下端側が回動可能に支持されている。マニュアルシャフト37は、第4ボックス14の周壁部141を外部に貫通している。マニュアルシャフト37の上端側は、第4ボックス14の外周に付設されたアクチュエータACTに連結されている。
【0154】
マニュアルシャフト37における周壁部141と支持台部151との間の領域には、前記したパークロック機構3のマニュアルプレート35が相対回転不能に連結されている。
マニュアルプレート35の外周には、ディテントスプリング36のローラ365が弾発的に係合している。ローラ365から作用する付勢力は、マニュアルシャフト37の回転を規制している(
図17参照)。
【0155】
マニュアルシャフト37は、動力伝達装置1を搭載した車両の走行モード/駐車モードの切り替えに連動して、アクチュエータACTの駆動力で回転軸Y回りに回動する。
この際に、マニュアルシャフト37は、ローラ365から作用する規制力に抗して回転軸Y回りに回転する。
そのため、マニュアルシャフト37の下端を支持する肉盛部156には、捩り応力が作用する。ここで、肉盛部156は、支持台部151よりも厚肉で形成されていると共に、支持台部151と支持壁部146(一部の歯部146a)とに跨がって、これらと一体に形成されている。
そのため、肉盛部156は、作用する捩り応力に耐え得る十分な剛性を持っているので、マニュアルシャフト37の支持安定性が確保されるようになっている。
【0156】
かかる構成の動力伝達装置1の作用を説明する。
図1に示すように、動力伝達装置1では、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、遊星減速ギア4と、差動機構5と、ドライブシャフト9(9A、9B)と、が設けられている。
そして、動力伝達経路におけるモータ2と遊星減速ギア4との間に、パークロック機構3のパークギア30が設けられている。
【0157】
動力伝達装置1を搭載した車両が駐車モードであるときには、パークポール31は、爪部311cをパークギア30に係合させた位置に配置されている(係合位置:
図17参照)。そのため、パークギア30が取り付けられたモータシャフト20は、回転軸X回りの回転が規制された状態となる。
この状態では、駆動輪W、Wの回転が規制されており、動力伝達装置1を搭載した車両は駐車状態となる。
【0158】
動力伝達装置1を搭載した車両のモードが、駐車モードから走行モードに切り替えられると、マニュアルシャフト37は、アクチュエータACTの駆動力により、回転軸Y回りに回動する。
これにより、マニュアルシャフト37は、ディテントスプリング36のローラ365を、マニュアルプレート35の凹部352a(
図19参照)に係合させた角度位置から、凹部352bに係合させた角度位置まで変位する。
【0159】
そうすると、マニュアルプレート35の回転軸Y回りの回転により、パークロッド32が、サポート33とパークポール31の被操作部310cとの間からカム320を引き抜く方向(
図19における左方向)に変位する。
そうすると、カム320が、サポート33とパークポール31の被操作部310cとの間から引き抜かれた時点で、パークポール31がスプリングSpの付勢力により、軸線X1回りに回動して、爪部311cがパークギア30の外周から離脱する。
【0160】
そうすると、パークギア30が取り付けられたモータシャフト20は、回転軸X回りの回転が許容された状態となる。
この状態では、駆動輪W、Wの回転が許容されており、動力伝達装置1を搭載した車両は走行可能な状態となる。
【0161】
図2に示すように、この状態において、モータ2が駆動されて、ロータコア21が回転軸X回りに回転すると、ロータコア21と一体に回転するモータシャフト20を介して、遊星減速ギア4のサンギア41に回転が入力される。
【0162】
図2に示すように、遊星減速ギア4では、サンギア41が、モータ2の出力回転の入力部となっている。段付きピニオンギア43を支持するデフケース50が、入力された回転の出力部となっている。
【0163】
サンギア41が入力された回転で回転軸X回りに回転すると、段付きピニオンギア43(大径歯車部431、小径歯車部432)が、サンギア41側から入力される回転で、軸線X1回りに回転する(
図3参照)。
ここで、段付きピニオンギア43の小径歯車部432は、第4ボックス14の内周に固定されたリングギア42に噛合している。そのため、段付きピニオンギア43は、軸線X1回りに自転しながら、回転軸X周りに公転する。
【0164】
ここで、段付きピニオンギア43の小径歯車部432の外径R2は、大径歯車部431の外径R1よりも小さくなっている(
図3参照)。
これにより、段付きピニオンギア43を支持するデフケース50(第1ケース部6、第2ケース部7)が、モータ2側から入力された回転よりも低い回転速度で回転軸X回りに回転する。
そのため、遊星減速ギア4のサンギア41に入力された回転は、段付きピニオンギア43により、大きく減速される。減速された回転はデフケース50(差動機構5)に出力される。
【0165】
そして、デフケース50が、入力された回転で回転軸X回りに回転することにより、デフケース50内で、ピニオンメートギア52と噛合するドライブシャフト9(9A、9B)が回転軸X回りに回転する(
図2参照)。これにより動力伝達装置1が搭載された車両の左右の駆動輪W、W(
図1参照)が、伝達された回転駆動力で回転する。
【0166】
図2に示すように、第4ボックス14の内部には、潤滑用のオイルOLが貯留されている。そのため、貯留されたオイルOLは、モータ2の出力回転の伝達時に、回転軸X回りに回転するデフケース50により掻き上げられる。
掻き上げられたオイルOLにより、サンギア41と大径歯車部431との噛合部と、小径歯車部432とリングギア42との噛合部と、ピニオンメートギア52とサイドギア54A、54Bとの噛合部とが潤滑される。
【0167】
図9に示すように、第3ボックス13側から見てデフケース50は、回転軸X周りの反時計回り方向CCWに回転する。
第4ボックス14の上部には、オイルキャッチ部15が設けられている。オイルキャッチ部15は、デフケース50の回転方向における下流側に位置している。デフケース50で掻き上げられたオイルOLの多くが、オイルキャッチ部15内に流入する。
【0168】
図12に示すように、オイルキャッチ部15内には、マニュアルシャフト37で支持されたマニュアルプレート35が配置されている。
マニュアルシャフト37の下端を支持する支持孔151bは、オイルキャッチ部15内でモータ2側に位置している。支持孔151bは、回転軸X方向でリングギア42と重なる位置に設けられている。
前記したようにリングギア42の外周の係合歯421は、第4ボックス14の支持壁部146の歯部146aと噛合している。リングギア42は、回転軸X周りの回転が規制されている。
【0169】
そのため、デフケース50が回転軸X周りに回転する際に、リングギア42の外径側に位置する領域には、掻き上げられたオイルOLが到達しない。本実施形態では、リングギア42の外径側に支持孔151bが設けられているので、支持孔151bで下端が支持されたマニュアルシャフト37もまた、掻き上げられたオイルOLが直接干渉しない位置に配置される。
【0170】
そのため、掻き上げられてオイルキャッチ部15内に流入するオイルOLの流れが、マニュアルシャフト37で大きく阻害されない。よって、掻き上げられたオイルOLの多くが、オイルキャッチ部15内で支持台部151に載置されたオイルガイド152に供給される。
【0171】
以上の通り、本実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(1)動力伝達装置1は、
モータ2と回転軸X方向(軸方向)にオーバラップする差動機構5と、
差動機構5を収容するデフケース50(ケース)と、
デフケース50に支持された段付きピニオンギア43(ピニオンギア)と、
段付きピニオンギア43と噛合するリングギア42と、を本体ボックス10(ボックス)内に有する。
本体ボックス10の第4ボックス14は、リングギア42の外周においてリングギア42と係合する歯部146aを備える支持壁部146(係合部)を有している。
支持壁部146からモータ2に向かって回転軸X方向に突出する肉盛部156に、パークロック機構3のマニュアルシャフト37が挿入支持されている。
【0172】
このように構成して、肉盛部156を設けることで、モータ2と反対側(
図18における紙面奥側)に位置する車両部品とパークロック機構3のアクチュエータが干渉しないように、アクチュエータをモータ2側に寄せることができる。
リングギア42を支持する支持壁部146(係合部)の隣接位置に、本体ボックス10の一部を用いて肉盛部156を形成するので、本体ボックス10と別部材の専用の支持部を設ける必要が無い。よって、マニュアルシャフト37の支持のために部品点数が増加することを好適に防止できる。
【0173】
動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(2)肉盛部156は、非環状で局所的に設けられている。
【0174】
回転軸X方向から見て環状の支持壁部146の全体を突出させて、マニュアルシャフト37の支持部となる肉盛部を環状に形成しても良い。しかしながら、上記のように構成して、非環状で局所的な肉盛部156とすることで、本体ボックス10の重量増加を抑えることができると共に、第4ボックス14のギア室Sb内のスペース減少を抑制できる。これにより、オイルキャッチ部15の空間が狭められることがないので、この空間を利用して、オイルガイド152やマニュアルプレート35などを配置できる。
よって、本体ボックス10内の限られた空間を有効に活用できる。
【0175】
動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(3)本体ボックス10の第4ボックス14は、デフケース50の回転中心を通る水平線HLよりも上方に支持台部151(棚部)を有する。
肉盛部156は、支持台部151の角部に配置されている。
【0176】
支持台部151には、掻き上げられたオイルOLが導入される。支持台部151の角にマニュアルシャフト37が挿入されて支持されることで、マニュアルシャフト37が支持台部151の上部に配置されていたとしても、支持台部151へのオイルOLの導入をスムーズに行うことができる。
【0177】
前記した実施形態では、パークバイワイヤのアクチュエータとマニュアルシャフトが接続しているが、メカリンク式のパーク機構におけるマニュアルシャフトにも適用可能である。
【0178】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0179】
1 動力伝達装置
10 本体ボックス(ボックス)
146 支持壁部(係合部)
151 支持台部(棚部)
156 肉盛部
2 モータ
3 パークロック機構
37 マニュアルシャフト
42 リングギア
43 段付きピニオンギア(ピニオンギア)
5 差動機構
50 デフケース(ケース)
HL 水平線
X 回転軸