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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】壁紙用裏打ち紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 27/20 20060101AFI20220516BHJP
   D06N 7/00 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
D21H27/20 A
D06N7/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017203339
(22)【出願日】2017-10-20
(65)【公開番号】P2019077957
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】吉田 義雄
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-196216(JP,A)
【文献】特開2010-150718(JP,A)
【文献】特開2016-151066(JP,A)
【文献】特開平10-310999(JP,A)
【文献】特開2012-206384(JP,A)
【文献】特開2013-079454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 27/20
D06N 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともパルプ及び填料を含む基紙と、該基紙の少なくとも一方の表面に存在する水溶性高分子とを有する壁紙用裏打ち紙において、
前記填料は前記基紙中に8質量%~15質量%の範囲で含有され、
前記水溶性高分子は前記基紙に片面あたり0.05g/m~0.2g/mの範囲で存在することを特徴とする壁紙用裏打ち紙。
【請求項2】
前記水溶性高分子は、ポリビニルアルコール及び/又は澱粉であることを特徴とする請求項1に記載の壁紙用裏打ち紙。
【請求項3】
接着剤面を有するエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(エバール(登録商標)HF-ME、厚み12μm)の接着剤面と壁紙用裏打ち紙とを接触させ、下記(1)~(5)の条件で加熱接着し、室温まで冷却後、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムと前記壁紙用裏打ち紙を、剥離速度300mm/分、剥離方向180°の条件で剥離した場合に、8mm×25mmの測定面積を画像解析して得られる前記エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム表面に付着の繊維及び填料の面積率が35%~80%の範囲にある請求項1または請求項2に記載の壁紙用裏打ち紙。
(1)加熱温度:115℃
(2)シールバー幅:10mm
(3)押し付け圧:2.5kg/cm
(4)押し付け時間:30秒
(5)フィルム幅:25mm
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン壁紙等のカレンダー法により製造される壁紙に好適に使用される壁紙用裏打ち紙に関する。
【背景技術】
【0002】
壁紙は、一般住宅、ホテル、病院等における室内のインテリアのために、長期間壁に貼付して使用される。壁紙は、化粧層と、該化粧層を保持するための裏打ち紙により構成され、化粧層の材質の違いで、塩化ビニル壁紙、オレフィン壁紙、織物壁紙、紙壁紙、無機質壁紙等がある。
【0003】
塩化ビニル壁紙は、ビニルペーストを裏打ち紙の表面に塗工し、塗工物がゲル化した後、印刷、発泡、エンボス等の加工を行って製品化される。塩化ビニル壁紙は、織物壁紙等に比較して安価であるため広く用いられているが、塩化ビニル樹脂層表面に裏打ち紙のパルプ繊維の毛羽立ちが原因となる突起ができ、この部分に印刷不良(白抜け)が発生するという問題がある。特に、近年、ビニルペースト加工工程の高速化により、裏打ち紙表面に対して、これまでより大きなせん断力が加わるようになり、パルプの繊維を起こす力が大きくなるために、上記の問題が従来以上に発生しやすくなってきている。このような問題を解決するために、裏打ち紙表面に塗布する水溶性高分子の塗布量を多くして、裏打ち紙の強度を改善することが行われている。また、塩化ビニルは、可塑剤を含むため、住宅資材としての適性や、廃棄、焼却に際しての環境保護の観点から、近年では、塩化ビニルを使用しない壁紙の要望が増大しており、発泡させたポリオレフィンを用いたオレフィン壁紙が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-179161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の塩化ビニル壁紙に用いる裏打ち紙を、オレフィン壁紙に用いた場合、オレフィン樹脂等を含む未発泡樹脂を塗布した樹脂フィルムを、裏打ち紙に貼り合わせる、いわゆるカレンダー法による壁紙の製造方法において、裏打ち紙と樹脂フィルムとの密着性が大きく劣り、裏打ち紙と樹脂フィルムとが剥離しやすいという問題があった。
【0006】
本発明の課題は、未発泡樹脂を塗布した樹脂フィルムや未発泡樹脂層に対する密着性に優れ、特にオレフィン壁紙等のカレンダー法により製造される壁紙に使用された状態で安定して良好な密着性を発現する壁紙用裏打ち紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくともパルプ及び填料を含む基紙と、該基紙の少なくとも一方の表面に存在する水溶性高分子とを有する壁紙用裏打ち紙であって、前記填料は前記基紙中に8質量%~15質量%の範囲で含有され、前記水溶性高分子は前記基紙に片面あたり0.05g/m~0.2g/mの範囲で存在することを特徴とする壁紙用裏打ち紙である。
【0008】
前記水溶性高分子は、ポリビニルアルコール及び/又は澱粉であることが好ましい。また、接着剤面を有するエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(エバール(登録商標)HF-ME、厚み12μm)の接着剤面と壁紙用裏打ち紙とを接触させ、下記(1)~(5)の条件で加熱接着し、室温まで冷却後、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムと前記壁紙用裏打ち紙を、剥離速度300mm/分、剥離方向180°の条件で剥離した場合に、8mm×25mmの測定面積を画像解析して得られる前記エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム表面に付着の繊維及び填料の面積率が35%~80%の範囲にあることが好ましい。
(1)加熱温度:115℃
(2)シールバー幅:10mm
(3)押し付け圧:2.5kg/cm
(4)押し付け時間:30秒
(5)フィルム幅:25mm
【発明の効果】
【0009】
本発明の壁紙用裏打ち紙は、未発泡樹脂を塗布した樹脂フィルムや未発泡樹脂層に対する密着性に優れ、特に、樹脂フィルムを介して発泡樹脂層が積層された、カレンダー法により製造されるオレフィン壁紙等に使用された状態で安定して良好な密着性を発現すると共に、壁面から壁紙を剥離する際のピール適性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例1における剥離後のエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムの表面写真を示す図である。
図2】本発明の比較例1における剥離後のエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムの表面写真を示す図である。
図3】本発明の比較例2における剥離後のエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムの表面写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の壁紙用裏打ち紙は、少なくともパルプ及び填料を含む基紙と、該基紙の少なくとも一方の表面に存在する水溶性高分子とを有する壁紙用裏打ち紙であって、填料は基紙中に8質量%~15質量%の範囲で含有され、水溶性高分子は基紙に片面あたり0.05g/m~0.2g/mの範囲で存在する。このような本発明の壁紙用裏打ち紙は、樹脂フィルムを介して発泡樹脂層が積層された状態で壁紙とすることができ、あるいは、発泡樹脂層が積層された状態で壁紙とすることができる。
【0012】
<パルプ>
本発明の壁紙用裏打ち紙を構成する基紙は、針葉樹の晒しクラフトパルプ(NBKP)、広葉樹の晒しクラフトパルプ(LBKP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の木材繊維由来の各種パルプを主体に単独または任意の配合率で混合したパルプスラリーを用いて抄紙したものである。寸法安定性が低下しない程度であれば、ケナフ、竹、麻などから得られた非木材繊維由来の各種パルプや脱墨パルプ(DIP)を用いることも可能である。
また、上記木材繊維由来のパルプ以外に、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂繊維、ナイロン等のポリアミド系樹脂繊維、ポリ塩化ビニル等の含ハロゲン系樹脂繊維等の合成繊維由来のパルプを配合してもよい。
【0013】
本発明においては、使用するパルプのカナダ標準濾水度(CSF)を450ml~550mlに調整することが好ましい。パルプのCSFは、上記のパルプの少なくとも1種を叩解して調整することができる。また、2種以上のパルプを使用する場合には、別々に叩解したパルプを混合して、CSFが上記の範囲となるように調整してもよく、2種以上のパルプを混合して叩解し、CSFが上記の範囲となるように調整してもよい。パルプのCSFが450mlより小さいと、壁紙の原紙面側に水性の糊を用いて施工する際に、壁紙の伸びが大きくなるだけでなく乾燥時の収縮も大きくなり、隣同士に貼った壁紙の目開き(隙間)が大きくなる傾向が見られる。更に、繊維間結合が強化されるため、層内強度が高くなり、壁面から壁紙を剥離する際のピール適性が低下する可能性がある。一方、パルプのCSFが550mlより大きいと、紙力が不十分になるため、ビニルペースト等の塗工時に断紙が発生し易くなると共に、基紙に毛羽立ちが発生し易くなる傾向が見られる。
【0014】
<填料>
本発明の壁紙用裏打ち紙を構成する基紙に含有される填料としては、一般の抄紙において使用される填料の中から適宜選択した、少なくとも1種を使用することができる。
このような填料としては、例えば、カオリン、焼成カオリン、デラミネーティッドカオリン、クレー、焼成クレー、デラミネーティッドクレー、イライト、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム-シリカ複合物、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の無機填料、及び尿素-ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂等の有機填料等が挙げられる。
【0015】
このような填料は、上述のパルプスラリーに混合して抄紙することができ、基紙における填料の含有量は、固形分で8質量%~15質量%、好ましくは8質量%~12質量%の範囲である。基紙に含有される填料が8質量%未満であると、本発明の壁紙用裏打ち紙と発泡樹脂層を有する樹脂フィルムとの密着性が不十分となる。一方、15質量%を超えると、本発明の壁紙用裏打ち紙と発泡樹脂層を有する樹脂フィルムとの密着性が強くなりすぎ、壁面から壁紙を剥離する際のピール適性が劣るため好ましくない。
【0016】
<水溶性高分子>
本発明の壁紙用裏打ち紙を構成する基紙の少なくとも一方の表面に存在する水溶性高分子は、壁紙用裏打ち紙の表面強度を高めるものである。
このような水溶性高分子は、水溶性高分子を含有する塗工液を、未発泡樹脂を塗布した樹脂フィルムを貼り合わせる面や未発泡樹脂層を形成する面に少なくとも塗工又は含浸することにより付与することができる。
【0017】
水溶性高分子の塗工量は、片面あたり固形分で0.05g/m~0.2g/mの範囲、好ましくは0.05g/m~0.1g/mの範囲である。塗工量が片面あたり0.05g/m未満であると、壁紙用裏打ち紙と発泡樹脂層を有する樹脂フィルムとの密着性が強くなりすぎ、壁面から壁紙を剥離する際のピール適性が劣る。また、壁紙用裏打ち紙の表面強度が不十分となり、未発泡樹脂の塗工時に基紙表面の繊維が毛羽立ち、塗工液のゲル化後に該毛羽立ち部が壁紙表面で突起状となり、印刷不良の原因となる。一方、塗工量が片面あたり0.2g/mを超えると、未発泡樹脂を塗布した樹脂フィルムとの密着性、特に、ポリオレフィン樹脂フィルムとの密着性が不十分であり好ましくない。
【0018】
水溶性高分子としては、例えば、酸化澱粉、酵素変性澱粉、カチオン化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉等の各種澱粉、ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール等の各種ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン等を単独または2種以上で使用することができる。
水溶性高分子の中で、特にポリビニルアルコール及び澱粉は、壁紙用裏打ち紙の表面の繊維の毛羽立ちを抑制する効果が大きく好適である。
【0019】
さらに、ポリビニルアルコールのケン化度は、高い方が泡立ち等の操業性の観点から好ましい。このため、本発明においてはケン化度90以上のポリビニルアルコールを用いることが好ましい。また、ポリビニルアルコールの重合度は、低いと毛羽立ちを抑制する効果が小さく、高いと塗工液の粘度が高くなり塗工性が低下する傾向にある。このため、本発明においては、ポリビニルアルコールの重合度は1000~2000であることが好ましい。
【0020】
<サイズ剤>
本発明の壁紙用裏打ち紙には、通常の紙と同様に、サイズ剤が内添及び/又は外添されていてもよい。サイズ剤としては、酸性抄きの場合、ロジン系サイズ剤、ロジンエマルジョン系サイズ剤、α-カルボキシルメチル飽和脂肪酸等を内添することができる。また、中性抄きの場合には、中性抄紙用ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)、カチオンポリマー系サイズ剤等を内添することができる。また、サイズプレス等を用いて塗工又は含浸させる外添においても、上記した各種のサイズ剤を使用することが可能である。
【0021】
サイズ剤の添加量は特に限定されるものではないが、壁紙用裏打ち紙のステキヒトサイズ度が10秒以上となるように使用することが好ましい。
【0022】
<他の内添・外添成分>
また、本発明の壁紙用裏打ち紙には、品質に影響のない範囲で、定着剤、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、硫酸バンド、歩留り向上剤、染料等を内添薬品として使用することができる。更に、サイズプレス等を用いて塗工又は含浸させる外添薬品として、染料、顔料(クレー、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、シリカ等)等を使用することができる。
【0023】
本発明の壁紙用裏打ち紙は、公知の抄紙機によって適宜製造することができ、その抄紙条件は特に限定されるものではない。抄紙機としては、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機等を使用することができる。また、本発明の壁紙用裏打ち紙は、1層であってもよく、2層以上の多層で構成されていてもよい。
【0024】
本発明の壁紙用裏打ち紙の坪量は、40g/m以上、120g/m以下であることが好ましい。坪量が40g/m未満であると、強度が低く、加工時に断紙が発生し易くなる。また、坪量が120g/mを超えると、壁紙に加工した時に硬くなりすぎ、施工が困難になることがある。
【0025】
本発明の壁紙用裏打ち紙の層内強度は、30~40N/mの範囲に調整することが好ましい。一般的な印刷用紙や板紙等の用紙においては、層内強度が高いことが要求されるが、本発明の壁紙用裏打ち紙においては、リフォーム時に壁紙を剥がす際に裏打ち紙の層内で容易に剥がれるように層内強度を一定範囲に調整することが好ましい。裏打ち紙の層内強度が40N/mを超えると、リフォーム時に壁紙を剥がす際に強い力を要するばかりでなく、剥がした際に裏打ち紙の一部は壁紙側に、一部は壁側に残り、壁面に凹凸が生じるため、次に貼合する壁紙を綺麗に貼ることが困難となり、ピール適性が低下するといった不具合等が発生する場合がある。また、裏打ち紙の層内強度が30N/m未満であると、剥がす際に層内以外の箇所がちぎれ、やはり壁面に凹凸が生じる問題が発生することがある。
【0026】
このような本発明の壁紙用裏打ち紙は、接着剤面を有するエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムの接着剤面と接触させ、シールバーの長手方向がフィルムの長手方向と直交するように下記の条件で加熱接着し、室温まで冷却後、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムと壁紙用裏打ち紙を下記の条件で剥離し、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム表面に付着した裏打ち紙由来の成分(主にパルプ繊維)を下記の条件で画像解析して面積率を測定した場合に、面積率は35%~80%の範囲を示すことが好ましく、45%~80%の範囲を示すことがより好ましい。上記の面積率が35%未満であると、カレンダー法によりオレフィン壁紙を作製する際に、裏打ち紙と樹脂フィルムが剥離しやすくなる傾向が見られ、特に、面積率が15%未満であると、裏打ち紙と樹脂フィルムの密着性が不十分となることがある。また、面積率が80%を超えると、壁面から壁紙を剥離する際のピール適性が低下することがある。なお、接着剤面を有するエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムとしては、(株)クラレ製 エバール(登録商標)HF-MEを使用することができる。
【0027】
(加熱接着条件)
・加熱接着装置 : テスター産業(株)製 TP-701S
・加熱温度 : 115℃
・シールバー幅 : 10mm
・押し付け圧 : 2.5kg/cm
・押し付け時間 : 30秒
・フィルム幅 : 25mm
【0028】
(剥離条件)
・測定装置 : ORIENTEC社製 テンシロン万能試験機
(RTC-1210A)
・剥離速度 : 300mm/分
・剥離方向 : 180°
【0029】
(画像解析条件)
・解析装置 : (株)ニレコ製 画像解析装置(LUZEX SE)
・測定面積 : 8mm×25mm
【0030】
本発明の壁紙用裏打ち紙とエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムとの密着性は、カレンダー法により壁紙を製造する際の、本発明の壁紙用裏打ち紙とポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等を樹脂成分として含有する未発泡樹脂が塗布されたエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムとの密着性の指標となる。すなわち、本発明の壁紙用裏打ち紙は、上記の面積率が35%~80%の範囲を示すことにより、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムに対して優れた密着性を発現し、このことは、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等を樹脂成分として含有する未発泡樹脂が塗布されたエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムとの密着性が優れることを意味する。
【0031】
なお、本発明の壁紙用裏打ち紙にポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等を樹脂成分として含有する未発泡樹脂が塗工されて未発泡樹脂層が形成された場合は、樹脂とパルプ繊維の絡みつき度合いが高くなるので、良好な密着性が得られる。
【0032】
このような本発明の壁紙用裏打ち紙は、水溶性高分子が存在する側の基紙の表面に、未発泡樹脂を塗布した樹脂フィルムを貼り合わせ、あるいは、未発泡樹脂を塗布して未発泡樹脂層を設け、その後、加熱等の発泡処理を施すことにより未発泡樹脂を発泡させて発泡樹脂層を形成し、また、必要に応じて印刷したり、エンボス処理を行って壁紙とすることができる。
【0033】
未発泡樹脂が含有する樹脂成分としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン-メチルメタクリレート(EMMA)、エチレン-エチルアクリレート(EEA)、エチレン-メチルアクリレート(EMA)等のエチレン共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂等を挙げることができる。本発明では、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン-メチルメタクリレート(EMMA)、エチレン-エチルアクリレート(EEA)、エチレン-メチルアクリレート(EMA)等のエチレン共重合体樹脂が好ましく、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂がより好ましい。
【0034】
未発泡樹脂としては、上記した各種樹脂成分の1種、または、2種以上と、熱分解型発泡剤、無機充填剤、発泡助剤(亜鉛化合物等)及びセル調整剤を含む樹脂組成物を好適に使用できる。更に、安定剤、滑剤等を添加剤として用いることができる。
【0035】
未発泡樹脂を塗布した樹脂フィルムを壁紙用裏打ち紙に貼り合わせる場合、または、壁紙用裏打ち紙の上に樹脂フィルムを形成し、この樹脂フィルム上に未発泡樹脂を塗布する場合、樹脂フィルムを形成する樹脂は、上記した各種樹脂成分から適宜選択することが好ましい。
【0036】
例えば、上記した各種樹脂成分を用いて予め樹脂フィルムを形成し、未発泡樹脂をこの樹脂フィルム上に塗布すると共に、この樹脂フィルムを壁紙用裏打ち紙に貼り合わせることができる。また、壁紙用裏打ち紙上に上記した各種樹脂成分を塗布、積層して樹脂フィルムを形成し、この樹脂フィルム上に未発泡樹脂を塗布してもよい。
【0037】
さらに、発泡樹脂層上に、上記した各種樹脂成分を塗布、積層して樹脂フィルムを形成すると、発泡樹脂層の保護層として機能する。この場合、壁紙用裏打ち紙の上に未発泡樹脂を塗布して未発泡樹脂層を形成し、この未発泡樹脂層上に樹脂フィルムを形成してもよく、未発泡樹脂を塗布した樹脂フィルムを壁紙用裏打ち紙に貼り合わせて未発泡樹脂層を形成し、この未発泡樹脂層上に樹脂フィルムを形成してもよい。なお、未発泡樹脂層に加熱等の発泡処理を施して発泡樹脂層として、その上に保護層として機能する樹脂フィルムを形成してもよく、未発泡樹脂層上に保護層として機能する樹脂フィルムを形成した後、加熱等の発泡処理を施すことにより発泡樹脂層としてもよいが、未発泡樹脂層に加熱等の発泡処理を施して発泡樹脂層として、その上に保護層として機能する樹脂フィルムを形成する方が好ましい。
【0038】
本発明の壁紙用裏打ち紙は、未発泡樹脂を塗布した樹脂フィルムや未発泡樹脂の塗工層に対して優れた密着性を発現する。したがって、発泡樹脂層が積層され、あるいは、樹脂フィルムを介して発泡樹脂層が積層されオレフィン壁紙等とされた状態で安定して良好な密着性を発現し、更には壁面から壁紙を剥離する際のピール適性に優れる。本発明の壁紙用裏打ち紙は、オレフィン壁紙等のカレンダー法により製造される壁紙の裏打ち紙として好適に使用することができるが、それ以外の壁紙の裏打ち紙としても使用することができる。
【実施例
【0039】
以下に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0040】
[実施例1]
針葉樹晒クラフトパルプ(カナダ標準濾水度(CSF):500ml)を35質量部、広葉樹晒クラフトパルプ(カナダ標準濾水度(CSF):500ml)を65質量部配合したパルプスラリー中に、抄紙pHが4.5になるように硫酸バンドを添加した。次に、填料として、焼成クレー及びカオリン(配合質量比1:1)を灰分12.0質量%となるように添加して抄紙し、基紙を得た。
【0041】
次いで、ポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名:PVA117、ケン化度:98~99mol%、重合度:1700)を0.3質量%、スチレン-アクリル系サイズ剤(星光PMC(株)製、商品名:SE2018)を0.1質量%含有するサイズプレス塗工液を調製し、この塗工液をサイズプレスコーターを用いて、ポリビニルアルコールの塗工量が片面あたり0.05g/mとなるように基紙の両面に含浸させて、坪量67.0g/mの壁紙用裏打ち紙を製造した。
【0042】
[実施例2]
実施例1のサイズプレス塗工液中のポリビニルアルコールを0.5質量%に替え、ポリビニルアルコールの塗工量が片面あたり0.13g/mとなるように基紙の両面に含浸させた他は、実施例1と同様にして、坪量67.5g/mの壁紙用裏打ち紙を製造した。
【0043】
[実施例3]
実施例1のサイズプレス塗工液中のポリビニルアルコールを0.8質量%に替え、ポリビニルアルコールの塗工量が片面あたり0.2g/mとなるように基紙の両面に含浸させた他は、実施例1と同様にして、坪量67.5g/mの壁紙用裏打ち紙を製造した。
【0044】
[実施例4]
填料である焼成クレー及びカオリンを灰分8.0質量%となるように添加して抄紙した他は、実施例1と同様にして、坪量67.1g/mの壁紙用裏打ち紙を製造した。
【0045】
[実施例5]
填料である焼成クレー及びカオリンを灰分15.0質量%となるように添加して抄紙した他は、実施例1と同様にして、坪量67.2g/mの壁紙用裏打ち紙を製造した。
【0046】
[実施例6]
実施例4のサイズプレス塗工液中のポリビニルアルコールを0.8質量%に替え、ポリビニルアルコールの塗工量が片面あたり0.2g/mとなるように基紙の両面に含浸させた他は、実施例4と同様にして、坪量67.5g/mの壁紙用裏打ち紙を製造した。
【0047】
[比較例1]
填料である焼成クレー及びカオリンを灰分12.6質量%となるように添加し、サイズプレス塗工液中のポリビニルアルコールを1.0質量%に替え、ポリビニルアルコールの塗工量が片面あたり0.25g/mとなるように基紙の両面に含浸させた他は、実施例1と同様にして、坪量67.5g/mの壁紙用裏打ち紙を製造した。
【0048】
[比較例2]
填料である焼成クレー及びカオリンを灰分7.8質量%となるように添加し、サイズプレス塗工液中のポリビニルアルコールを0.3質量%に替え、ポリビニルアルコールの塗工量が片面あたり0.05g/mとなるように基紙の両面に含浸させた他は、実施例1と同様にして、坪量67.0g/mの壁紙用裏打ち紙を製造した。
【0049】
[比較例3]
サイズプレス塗工液中のポリビニルアルコールを2.2質量%に替え、ポリビニルアルコールの塗工量が片面あたり0.55g/mとなるように基紙の両面に含浸させた他は、実施例1と同様にして、坪量67.8g/mの壁紙用裏打ち紙を製造した。
【0050】
[比較例4]
サイズプレス塗工液中のポリビニルアルコールを0.15質量%に替え、ポリビニルアルコールの塗工量が片面あたり0.025g/mとなるように基紙の両面に含浸させた他は、実施例1と同様にして、坪量67.0g/mの壁紙用裏打ち紙を製造した。
【0051】
[比較例5]
填料である焼成クレー及びカオリンを灰分18.0質量%となるように添加して抄紙した他は、実施例1と同様にして、坪量67.0g/mの壁紙用裏打ち紙を製造した。
【0052】
[評 価]
上記のように製造した壁紙用裏打ち紙(実施例1~6、比較例1~5)について、接着剤面を有するエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム((株)クラレ製 エバール(登録商標)HF-ME、厚み12μm)を用いて、樹脂密着性を評価した。
【0053】
すなわち、壁紙用裏打ち紙と接着剤面を有するエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムの接着剤面とを接触させ、シールバーの長手方向がフィルムの長手方向と直交するように、下記の条件で加熱接着した。
(加熱接着条件)
・加熱接着装置 : テスター産業(株)製 TP-701S
・加熱温度 : 115℃
・シールバー幅 : 10mm
・押し付け圧 : 2.5kg/cm
・押し付け時間 : 30秒
・フィルム幅 : 25mm
【0054】
その後、室温まで冷却し、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムと壁紙用裏打ち紙を下記の条件で剥離した。
(剥離条件)
・測定装置 : ORIENTEC社製 テンシロン万能試験機
(RTC-1210A)
・剥離速度 : 300mm/分
・剥離方向 : 180°
【0055】
剥離後のエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム表面に付着した裏打ち紙由来の成分(主にパルプ繊維)を下記の条件で画像解析して面積率を測定した。
(画像解析条件)
・解析装置 : (株)ニレコ製 画像解析装置(LUZEX SE)
・測定面積 : 8mm×25mm
【0056】
測定した面積率を、下記の表1に示した。また、樹脂密着性を下記の基準で評価し、結果を下記の表1に示した。また、実施例1、比較例1~2における剥離後のエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムの表面写真を図1図3に示した。
(樹脂密着性の評価基準)
◎ : 面積率が45%以上、80%以下の範囲にある。
○ : 面積率が35%以上、45%未満の範囲にある。
△ : 面積率が15%以上、35%未満の範囲にある、または、
80%を超える範囲にある。
× : 面積率が15%未満の範囲にある。
【0057】
【表1】
【0058】
本発明の壁紙用裏打ち紙である実施例1~6の壁紙用裏打ち紙上に、カレンダー法によりポリオレフィン樹脂を用いた樹脂フィルム、未発泡樹脂をこの順に積層し、その後、加熱による発泡処理を施してオレフィン壁紙を作製したところ、裏打ち紙と樹脂フィルムとの密着性が良好であり、更には壁面から壁紙を剥離する際のピール適性に優れることを確認した。
【0059】
特に、面積率が35%~80%の範囲にある実施例1~5の壁紙用裏打ち紙は、裏打ち紙と樹脂フィルムとの密着性とピール適性のバランスが良好であり、オレフィン壁紙等のカレンダー法により製造される壁紙に好適に使用可能であった。
【0060】
これに対して、比較例1~5の壁紙用裏打ち紙上に、カレンダー法によりポリオレフィン樹脂を用いた樹脂フィルム、未発泡樹脂をこの順に積層し、その後、加熱による発泡処理を施してオレフィン壁紙を作製したところ、比較例1~3は裏打ち紙と樹脂フィルムの密着性が不十分で剥離しやすく、比較例4~5は裏打ち紙と樹脂フィルムとの密着性が強すぎ、壁面から壁紙を剥離する際のピール適性が劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の壁紙用裏打ち紙は、未発泡樹脂を塗布した樹脂フィルムや未発泡樹脂層に対する密着性に優れ、特に、樹脂フィルムを介して発泡樹脂層が積層された、カレンダー法により製造されるオレフィン壁紙等に使用された状態で安定して良好な密着性を発現すると共に、壁面から壁紙を剥離する際のピール適性に優れるもので、種々の壁紙製造等に利用可能である。
図1
図2
図3