(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用融着型複合分離膜およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/46 20210101AFI20220516BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20220516BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20220516BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20220516BHJP
H01M 50/437 20210101ALI20220516BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20220516BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20220516BHJP
H01M 50/463 20210101ALI20220516BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20220516BHJP
【FI】
H01M50/46
H01M50/403 D
H01M50/42
H01M50/434
H01M50/437
H01M50/443 B
H01M50/443 E
H01M50/443 M
H01M50/457
H01M50/463 A
H01M50/489
(21)【出願番号】P 2017549521
(86)(22)【出願日】2016-04-01
(86)【国際出願番号】 KR2016003428
(87)【国際公開番号】W WO2016159724
(87)【国際公開日】2016-10-06
【審査請求日】2019-04-01
(31)【優先権主張番号】10-2015-0046671
(32)【優先日】2015-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ジョー ドン ジン
(72)【発明者】
【氏名】イ ス ジ
(72)【発明者】
【氏名】チョ キュ ユン
(72)【発明者】
【氏名】キム ユン ボン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジェ ウン
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/151144(WO,A1)
【文献】特開2015-028842(JP,A)
【文献】特開2016-042454(JP,A)
【文献】特開平11-185733(JP,A)
【文献】特表2014-534570(JP,A)
【文献】特表2014-530472(JP,A)
【文献】特表2006-507636(JP,A)
【文献】国際公開第2008/114727(WO,A1)
【文献】特開2001-135295(JP,A)
【文献】国際公開第2012/115252(WO,A1)
【文献】特表2014-509777(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0308565(US,A1)
【文献】特開2016-119222(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033993(WO,A1)
【文献】特開2015-041603(JP,A)
【文献】特開2013-137943(JP,A)
【文献】特開2004-214042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材層と、
バインダー高分子により連結および固定された無機粒子を含み、前記多孔質基材層上に形成された耐熱層と、
ガラス転移温度が30℃以上90℃以下である非晶質高分子粒子を含み、前記耐熱層上に形成された融着層と、を含む、リチウム二次電池用複合分離膜であって、
前記非晶質高分子粒子のガラス転移温度と、前記複合分離膜と電極との融着時の融着温度との差が60℃以下であり、前記複合分離膜と電極との接着強度が
、前記複合分離膜と電極とを70~100℃の温度及び1MPa以上の圧力で
融着したときに、10gf/cm以上であり、表面粗さが0.15~0.3μmである、リチウム二次電池用複合分離膜。
【請求項2】
前記耐熱層と前記融着層との間に形成され、前記無機粒子と前記非晶質高分子粒子が混和された界面層をさらに含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用複合分離膜。
【請求項3】
前記耐熱層は、無機粒子のサイズが0.1~2.0μmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用複合分離膜。
【請求項4】
前記融着層は、非晶質高分子粒子のサイズが0.05~0.8μmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用複合分離膜。
【請求項5】
前記融着層の厚さが2μm以下である、請求項1に記載のリチウム二次電池用複合分離膜。
【請求項6】
前記非晶質高分子は、アクリレート系重合体、メタクリレート系重合体またはこれらの共重合体からなる、請求項1に記載のリチウム二次電池用複合分離膜。
【請求項7】
前記耐熱層は、アルミニウム酸化物、バリウムチタンオキシド、チタン酸化物、マグネシウム酸化物、クレイ、ガラスパウダー、窒化ホウ素、アルミニウム窒化物から選択される一つまたは二つ以上の無機粒子を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用複合分離膜。
【請求項8】
多孔質基材の片面または両面に無機粒子とバインダー高分子とを含む耐熱層コーティング液を塗布するステップと、
前記塗布された耐熱層コーティング液上にガラス転移温度が30℃以上90℃以下である非晶質高分子粒子を含む融着層コーティング液を塗布するステップと、を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用複合分離膜の製造方法であって、
前記非晶質高分子粒子のガラス転移温度と、前記融着層の融着温度との差が60℃以下であり、前記複合分離膜と電極との接着強度が
、前記複合分離膜と電極とを70~100℃の温度及び1MPa以上の圧力で
融着したときに、10gf/cm以上であり、前記複合分離膜の表面粗さが0.15~0.3μmであり、前記耐熱層コーティング液を塗布した後、乾燥せず、融着層コーティング液を塗布して同時コーティングする、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の寿命および安全性を改善したリチウム二次電池用融着型複合分離膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、用途が徐々に拡大するにつれて、大面積化、高容量化に対する要求が強まっている。また、最近、電池の容量が急激に増加している傾向にあり、このために使用される電極板の面積も急激に増加している。かかる高容量の電池の場合、長期間の充放電の際に正極と負極電極板が互いに密着せず、剥離部分が生じたり、電池が膨張または変形する現象が生じて電池の寿命が減少することがある。
【0003】
そのため、リチウム二次電池に使用されている分離膜であるポリエチレンやポリプロピレン材質の多孔質薄膜フィルムに機能性を付与するための様々な方法が試みられている。かかる試みの一つとして、分離膜の両面に融着層をコーティングして電池の正極と負極に融着させることで電池の性能を向上させる方法がある。すなわち、分離膜に融着性(または接着性)を付与、電極と融着させて前記のような電極板の剥離または電池の膨張、変形を防止することで電池の寿命を改善する効果が得られる。
【0004】
一方、ポリオレフィン系微多孔膜は、熱安定性が低下すると電池の異常挙動から発生する温度上昇によって微多孔膜の損傷または変形に伴われる電極間短絡が生じ得る。さらに、電池の過熱または発火、爆発の恐れが存在する。
【0005】
したがって、前記のような融着特性以外に別の特性を分離膜に付与して電池の安全性を改善しようとする試みが行われている。
【0006】
日本登録特許第4127989号には、ポリオレフィン微多孔膜の基材の両面に電解液を膨潤し、これを支持する有機高分子からなる多孔質融着層が配置されている分離膜について記載している。前記技術は、イオン伝導性と融着性の面では利点を有しているものの、耐熱性が足りないという点と融着層の厚さが厚くて分離膜の薄膜化への要求と背馳するという問題がある。
【0007】
韓国登録特許第1156961号には、シラン系化合物を電極と分離膜の上下の外周面に部分的にコーティングすることで、融着力を高めるとともに融着層によるイオン伝導度の低下を防止できると記載している。しかし、大面積の電池では、分離膜の上下の外周面付近のみを融着した場合、電極の中間部が剥離することが防止できないため限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記のような問題を解決するために導き出されたものであり、電極との融着性が良好であり、高強度、耐薬品性、耐電気化学性、耐熱性を向上させることができ、特に、電極との接着性が著しく向上し、常温寿命が向上する新たなリチウム二次電池用融着型複合分離膜およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、多孔質基材層と、
バインダー高分子により連結および固定された無機粒子を含み、前記多孔質基材層上に形成された耐熱層と、
ガラス転移温度が30℃以上90℃以下である非晶質高分子粒子を含み、前記耐熱層上に形成された融着層と、を含むリチウム二次電池用複合分離膜に関する。
【0010】
本発明において、前記非晶質高分子粒子のガラス転移温度と、電極と複合分離膜との融着に必要な融着温度の差は60℃以下であり得る。
【0011】
本発明の複合分離膜は、耐熱層と融着層との間に形成され、前記無機粒子と前記非晶質高分子粒子が混和した界面層をさらに含むことができる。
【0012】
本発明において、前記耐熱層は、全組成物100重量%に対して、無機粒子60~99重量%およびバインダー高分子40~1重量%を含み、無機粒子のサイズが0.1~2.0μmであることが好ましく、アルミナ、ベーマイトなどのアルミニウム酸化物、バリウムチタンオキシド(Barium Titanium Oxide)、チタン酸化物、マグネシウム酸化物、クレイ(Clay)ガラスパウダー(Glass powder)から選択される一つまたは二つ以上の無機粒子を含んでもよく、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0013】
また、本発明において、前記耐熱層のバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレン(PVdF‐HFP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリイミド(polyimide)、ポリエチレンオキシド(PEO)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシルメチルセルロース(CMC)などから選択される一つまたは二つ以上を含んでもよく、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0014】
本発明において、前記融着層は、非晶質高分子粒子を含む層であり、前記高分子粒子は、Tg(ガラス転移温度)が30~90℃であり、前記ガラス転移温度と熱融着温度との差が60℃以内である非晶質(amorphous)高分子粒子を含む二次電池用複合分離膜である。前記において、熱融着温度は、通常、70~100℃の範囲を基準とし、前記ガラス転移温度と熱融着温度との差は、前記熱融着を70~100℃で行う場合を基準とする。
【0015】
前記の条件で透過度の低下が生じず、電池寿命が長くなり、電池の安全性も増加する。
【0016】
本発明において、前記非晶質高分子粒子のサイズは0.05~0.8μmであることが、本発明で目的とする効果の達成に適する。また、本発明の前記融着層の厚さは1.0μm以下であることが好ましい。
【0017】
本発明において、前記融着層に使用する非晶質高分子としては、制限されないが、ガラス転移温度が30~90℃であるアクリレート(Acrylate)系やメタクリレート系の重合体や共重合体である高分子物質を使用することが好ましいが、これは、共重合の単量体の割合を調節することで、非晶質の高分子としてガラス転移温度の調節が便利であるためであり、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0018】
前記粒子形態の非晶質高分子の場合、ガラス転移温度(Glass Transition Temperature)は、30~90℃の範囲が好ましいが、分離膜を電極と融着させる熱融着のほとんどが70~100℃の温度条件で行われることになっても接着強度および常温寿命などの電池の特性や積層体での物理的特性でも良好な特性を示し好ましい。本発明において、前記融着層が、前記の条件を満たす場合、接着強度に著しく優れ、驚いたことに電池の常温寿命が著しく改善する効果を奏する。
【0019】
また、本発明では、前記融着層が耐熱層で使用する無機物粒子をさらに投入する場合、より優れた接着性を付与し、電池の安全性や性能において優れた結果を示すことを確認した。この場合、無機粒子の含有量は、融着層の全粒子の含有量に対して30体積%以下のものが好ましい。
【0020】
また、本発明では、前記複合分離膜を電極と融着するときに、電解液を含む状態での融着も可能であるが、電解液を含んでいない状態で融着させる場合のいずれも可能であり、電解液を含んでおらず電極と融着する場合には、融着力の実現により効果的である。
【0021】
特に、円筒型および角型電池の場合、パウチ型電池とは異なり、構成要素である電極と分離膜が硬いシリンダーまたは缶の中に入ることになるが、この場合、電池の組立後に温度と圧力をかけて融着させることができなくなるため、予め電極と分離膜を融着させた後、シリンダーまたは缶に入れてから電解液を注入する方法で融着を適用する場合に効果的である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る複合分離膜は、主にパウチ型または円筒型のリチウム二次電池の寿命および安全性の改善のために適用され得、熱融着を行って電池を製造した後、電解液を注入するか、または電解液を注入してから熱融着を行うかに関係なく、非常に優れた融着性能を発揮するが、これに限定されるものではない。
【0023】
本発明に係る複合分離膜は、電池の寿命および安全性の改善の特性を有し、且つ、広い面積の二次電池の正極と負極の全面積において均一で強く融着され、各層の均一に分布された気孔を介してイオンの移動がスムーズになるため、特に、電気自動車用の大型の二次電池の性能の改善に有利であり、電池の寿命特性において非常に好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0025】
以下に説明する実施例および図面は、当業者に本発明の思想が十分に伝達されるようにするために例として提供されるものである。また、使用される技術用語および科学用語において他の定義がない限り、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有しており、下記の説明および添付図面で本発明の要旨を不明瞭にし得る公知機能および構成に関する説明は省略する。
【0026】
本発明は、多孔質基材層と、
バインダー高分子により連結および固定された無機粒子を含み、前記多孔質基材層上に形成された耐熱層と、
ガラス転移温度が30℃以上90℃以下である非晶質高分子粒子を含み、前記耐熱層上に形成された融着層と、を含むリチウム二次電池用複合分離膜に関する。
【0027】
本発明において、前記非晶質高分子粒子のガラス転移温度と融着層の融着温度との差は60℃以下であり得る。
【0028】
本発明において、前記耐熱層と前記融着層との間に形成され、前記無機粒子と前記非晶質高分子粒子が混和された界面層をさらに含んでもよく、前記界面層の厚さは前記融着層の厚さの40%以下であり得る。
【0029】
本発明において、前記融着層は、耐熱層に積層されている状態であれば、片面積層または両面積層のいずれでも本発明の範疇に属し得る。
【0030】
また、本発明のさらに他の様態は、複合分離膜の表面粗さが0.3μm以下に維持されることで、電池の寿命をより向上させ、電気的特性に優れた高エネルギーの電池を提供できる複合分離膜を製造することができる。これは、電極との接着がより均一に行われて電池の電気的特性を向上させることができるためである。
【0031】
本発明において、前記多孔質基材層は、ポリオレフィン系微多孔膜であれば制限なく使用可能であり、さらに、不織布、紙およびこれらの微多孔膜の内部気孔または表面に無機粒子を含むなど、気孔を有し電池に適用され得る多孔膜であれば特に制限されない。
【0032】
前記ポリオレフィン系樹脂は、1種以上のポリオレフィン系樹脂単独または混合物であることが好ましく、特に、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびこれらの共重合体から選択される1種または2種以上であることが好ましい。また、前記基材層は、前記ポリオレフィン樹脂単独またはポリオレフィン樹脂を主成分とし、無機粒子または有機粒子をさらに含んで製造されてもよい。また、前記基材層は、ポリオレフィン系樹脂が多層に構成されてもよく、多層に構成された基材層もまたいずれか一つの層またはすべての層がポリオレフィン樹脂内の無機粒子および有機粒子を含むことも排除しない。
【0033】
前記多孔質基材層の厚さは、特に制限されないが、好ましくは5~30μmであってもよい。前記多孔質基材層は、主に延伸により作製された多孔質高分子フィルムである。
【0034】
本発明の一実施例によるポリオレフィン系多孔質基材層を製造する方法は、通常の技術者が製造する方法であれば制限されないが、一実施例にとして、乾式法または湿式法で製造することができる。乾式法は、ポリオレフィンフィルムを作製した後、低温で延伸してポリオレフィンの結晶部分であるラメラ(lamella)の間に微細クラック(micro crack)を誘発させて微細空隙を形成させる方法である。湿式法は、ポリオレフィン系樹脂が溶融される高温でポリオレフィン系樹脂とダイリューエント(diluent)を混練して単一相を形成し、冷却過程でポリオレフィンとダイリューエントを相分離させた後、ダイリューエント部分を抽出させて内部に空隙を形成させる方法である。湿式法は、相分離過程の後に延伸/抽出過程により機械的強度と透過度を付与する方法であり、乾式法に比べてフィルムの厚さが薄く気孔サイズも均一で物性にも優れ、より好ましくなり得る。
【0035】
前記ダイリューエントは、ポリオレフィン系樹脂と単一相をなす有機物質であれば制限なく可能であり、その例としては、ノナン(nonane)、デカン(decane)、デカリン(decalin)、パラフィンオイル(paraffin oil)、パラフィンワックス(paraffin wax)などの脂肪族(aliphatic)またはジブチルフタレート(dibutyl phthalate)、ジオクチルフタレート(dioctyl phthalate)などのフタル酸エステル(phthalic acid ester)とパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの炭素数10~20個の脂肪酸類とパルミチン酸アルコール、ステアリン酸アルコール、オレイン酸アルコールなどの炭素数10~20個の脂肪酸アルコール類とこれらの混合物などを使用することができる。
【0036】
以下、本発明の耐熱層について具体的に説明するが、これに必ず限定されるものではない。
【0037】
本発明において、耐熱層は、無機粒子に少量のバインダーを交ぜて前記基材層と接合され、電池の熱安定性、電気的安全性、および電気特性を高め、また高温で発生する基材層の収縮を抑制する役割をする。
【0038】
前記耐熱層は、無機粒子のサイズはそれほど制限しないが、0.1~2.0μmサイズの無機粒子にバインダー高分子を交ぜて基材層の片面、あるいは両面に1~10μmの厚さにコーティングすることが、本発明で目的とする効果を容易に奏することができ好ましい。
【0039】
前記耐熱層は、全組成物100重量%に対して、無機粒子60~99重量%およびバインダー高分子40~1重量%を含むことができる。前記の含有量で電池の性能を効果的に達成することができ好ましい。
【0040】
耐熱層に含まれる無機粒子は、剛性があることで外部の衝撃および力によって変形が起こらず、高温でも熱変形および副反応が生じないようにするものであり、アルミナ(Alumina)、ベーマイト(Boehmite)、アルミニウムヒドロキシド(Aluminum Hydroxide)、チタンオキシド(Titanium Oxide)、バリウムチタンオキシド(Barium Titanium Oxide)、マグネシウムオキシド(Magnesium Oxide)、マグネシウムヒドロキシド(Magnesium Hydroxide)、シリカ(Silica)、クレイ(Clay)およびガラスパウダー(Glass powder)からなる群から選択される一つまたは二つ以上の無機粒子が好ましいが、これに制限されるものではない。
【0041】
本発明において、耐熱層に含まれるバインダー高分子は、無機粒子同士を連結および安定して固定させるバインダーの役割をするものであり、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、ポリビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレン(PVdF‐HFP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリイミド(polyimide)、ポリエチレンオキシド(PEO)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシルメチルセルロース(CMC)およびポリブチルアクリレート(Polybutylacrylate)からなる群から選択される一つまたは二つ以上のバインダー高分子が好ましいが、これに制限されるものではない。耐熱層は、必要に応じて、接着力を向上させるためにアクリル(Acryl)系またはブタジエン(butadiene)系の高分子をさらに含んでもよい。
【0042】
本発明において、耐熱層を形成するときに溶媒としては、前記バインダーを溶解でき、無機粒子を分散できるものであれば、特に制限されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、2‐プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、N‐メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミドなどから選択される1種または2種以上であってもよい。
【0043】
耐熱層の厚さは、無機粒子にバインダー高分子を交ぜて基材層の片面あるいは両面に1~20μm、好ましくは1~10μmの厚さを有することが、耐熱性の確保が可能であり、相対的にイオン透過性に優れ、電池容量が向上し得る。
【0044】
以下に本発明の融着層について説明する。
【0045】
本発明の一実施例による融着層は、複合分離膜の最外層に形成され、電極板と分離膜を接着させることで、電極板を所定の間隔で均一に密着する層であり、前記融着層は、耐熱層に積層されている状態であれば、片面積層または両面積層のいずれも本発明の範疇に属し得る。具体的には、融着層/耐熱層/多孔質基材層/耐熱層/融着層の積層形態と、融着層/多孔質基材層/耐熱層/融着層の積層形態と多孔質基材層/耐熱層/融着層などの積層形態を有してもよく、これに制限されるものではない。
【0046】
本発明の融着層は、電極板と分離膜を融着させることで、正極と負極電極板の全面積において接着力を増加させて前記正極と負極との密着を強く、また、均一で一定に密着する効果を有し、電池の性能と寿命を著しく増加させる効果を奏することができる。本発明において、融着層は、高分子粒子形態に形成することで非常に優れた電池特性を付与することができる。また、各高分子粒子間の空間を介してイオンの移動性が確保され得る。特に、本発明の特性を有する融着層の高分子粒子を使用すると、融着特性と電池の寿命に優れ局所的な密着不良が発生しない優れた効果を有し、電池の特性が増加し得る。
【0047】
本発明の融着層を構成する高分子粒子のサイズは0.05~0.8μmであることが好ましい。前記の範疇でリチウムイオンの伝達がスムーズになり、抵抗が低く、融着温度でも性能が低下しない。本発明の融着層の厚さは2μm以下に調節することが好ましく、より好ましくは1μm以下にすることが好適である。厚さが厚いと、リチウムイオンが移動すべき距離が増加し、そのため、抵抗が高くなる問題が生じるため、融着層の厚さは2μm以下に構成することが好ましい。
【0048】
また、前記厚さに維持する場合、融着層が形成された後、表面粗さにも非常に優れ、電池性能が向上する。したがって、前記粒子径と厚さを同時に満たす場合、電池性能と電極との接着力が調和して本発明が目的とする著しい効果を奏する。
【0049】
前記分離膜の原材料として使用される無機粒子や高分子物質は、いずれも二次電池内において化学的、電気化学的に安定した物質でなければならない。
【0050】
前記融着層の非晶質高分子物質は、電極と分離膜の融着力を確保できれば特に制限されないが、電池製造の際、温度と圧力を高めた時にのみ融着力が発現する物質を使用することが好ましい。特に、運搬中に周辺温度が高くなる場合、互いに重なった熱融着層同士が融着して分離膜として使用が不可能になる場合が生じ得るため、前記分離膜を二重積層したときに、60℃以下の温度と1MPa以下の圧力では重なった多孔質融着層間の融着力が0.3gf/cm以下であることが好ましい。これは、保管および運送中に温度が高くなる場合であっても融着層と融着層が接着せず、長期保管が可能である効果を付与することができ好ましい。
【0051】
また、前記分離膜と電極との融着力が70~100℃の温度と1MPa以上の圧力で融着力が1.0gf/cm以上になるように高分子物質を選定し、融着層を構成することが最も好ましい。
【0052】
本発明の融着層において有機高分子粒子としてTg(ガラス転移温度)が30~90℃であり、前記ガラス転移温度が熱融着温度(70~100℃基準)と60℃以下の温度差を有する非晶質(amorphous)高分子粒子を含む融着層を形成する場合、前記のように低い圧力と低い温度では低い接着力を示し、高い温度と高い圧力では非常に高い、好ましくは5gf/cm以上、より好ましくは8gf/cm以上、さらに好ましくは10gf/cm以上の接着力を有する効果を奏する。前記融着層の有機高分子粒子が、ガラス転移温度30~90℃の非晶質高分子でないと、前記接着力測定条件で大きい偏差を示すことが難しい。すなわち、低い温度である60℃以下で融着した時に接着力と70~100℃の温度で融着した時の融着力の差を極大化しにくい。
【0053】
本発明において、前記融着層に使用する非晶質高分子としては、制限されないが、ガラス転移温度が30~90℃のアクリレート(Acrylate)系またはメティクリレート系の重合体やその共重合体である高分子物質を使用することが好ましいが、これは、共重合の単量体の割合を調節することで、非晶質の高分子としてガラス転移温度の調節が便利であるためであり、本発明において目的とする効果をよく発揮することができるためであり、しかし、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0054】
本発明において、融着層としては、圧力が加えられた時に気孔を安定して維持するために、前記本発明の効果を十分に発揮できる条件では接着性高分子物質と無機粒子を混合して構成してもよく、その含有量は、全粒子の体積に対して無機粒子30体積%までを含んでもよく、これは、本発明の効果を十分に達成できる範囲内で使用可能である。前記融着層の無機粒子は、それほど制限されないが、例えば、ベーマイトなどのアルミニウム酸化物、バリウムチタンオキシド(Barium Titanium Oxide)、チタン酸化物、マグネシウム酸化物、クレイ(Clay)、ガラスパウダー(Glass powder)、窒化ホウ素、アルミニウム窒化物から選択される一つまたは二つ以上の無機粒子を含んでもよく、これに限定されるものではない。
【0055】
本発明に係る分離膜を形成する方法について説明する。
【0056】
本発明において、分離膜に耐熱層と融着層を形成する方法としては、本分野において採択する通常の方法で製造できるものであれば特に制限されず、一例として、バー(bar)コーティング法、ロッド(rod)コーティング法、ダイ(die)コーティング法、ワイヤ(wire)コーティング法、コンマ(comma)コーティング法、micro gravure/gravure法、ディップ(dip)コーティング法、スプレー(spray)法、インクジェット(ink‐jet)コーティング法またはこれらを混合した方式および変形した方式などが使用され得る。
【0057】
しかし、本発明において常温寿命安全性や熱安定性、寸法安全性および表面粗さなどを著しく向上するためには、耐熱層をコーティングした後、乾燥などを行わず直ぐ融着層をコーティングした後、ともに乾燥して製造する同時コーティング法を採択することが非常に好ましく、本発明のさらに他の特徴である。
【0058】
具体的には、本発明の一実施例による複合分離膜を製造する方法は、以下のステップを含み得る。
【0059】
多孔質基材の片面または両面に無機粒子とバインダー高分子とを含む耐熱層コーティング液を塗布するステップと、
前記塗布された耐熱層コーティング液上にガラス転移温度が30℃以上90℃以下である非晶質高分子粒子を含む融着層コーティング液を塗布するステップと、
乾燥ステップと、を含んで製造され得る。
【0060】
特に、前記製造方法から同時コーティング方法を採択することができ、著しい効果を奏することができる。
【0061】
すなわち、耐熱層コーティング液を塗布した後、乾燥せずに融着層コーティング液を順に塗布した後乾燥して製造する同時コーティング法が好ましい。かかる同時コーティング方法を採択することで、耐熱層コーティング層と融着層のコーティング層が自由移行を行い、二つの層の界面で所定厚さに混和することで結着し、したがって、融着層の表面が非常に均一にコーティングされ、耐熱層と融着層との接着が半永久的に行われ、長期寿命安全性および電池性能がさらに改善する。
【0062】
すなわち、これにより、耐熱層と融着層との間に前記無機粒子と前記非晶質高分子粒子が混和された界面層がさらに含まれる。本発明において、前記界面層の程度は特に限定されるものではないが、実験的に、融着層の厚さの40%まで観察することができるが、これに必ず限定されるものではない。
【0063】
したがって、本発明の複合フィルムの各層別の積層界面で長期使用によっても損傷を受けず電池の長期寿命が著しく増加する効果を有するため好ましい。本発明において耐熱層をコーティングして乾燥し、次いで、融着層をコーティングして乾燥して製造する場合、その界面の接着性の劣化から長期寿命が大きくは10%、ある場合は30%以上低下し、また充放電による電池容量の回数が著しく低下することを確認した。
【0064】
本発明の前記耐熱層または融着層を形成するコーティング液として使用する溶媒は制限されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、2‐プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、N‐メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミドなどから選択される1種以上であってもよく、これに制限されるものではない。
【0065】
本発明の一実施例によるリチウム二次電池は、複合分離膜、正極、負極、および非水電解液を含んで製造することができる。
【0066】
正極および負極は、正極活物質および負極活物質に、溶媒、必要に応じて、バインダー、導電材、分散材などを混合および撹拌して合剤を製造した後、これを金属材料の集電体に塗布して乾燥した後、プレスして製造することができる。
【0067】
正極活物質は、二次電池の正極に通常使用される活物質であれば使用可能である。例えば、Ni、Co、Mn、Na、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Ge、Sr、Ag、Ba、Zr、Nb、Mo、Al、Ga、Bおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される一つまたは二つ以上の金属を含むリチウム金属酸化物粒子を使用することができる。
【0068】
負極活物質は、二次電池の負極に通常使用される活物質であれば使用可能である。リチウム二次電池の負極活物質は、リチウムインターカレーション可能な物質が好ましい。非限定的な一実施例において、負極活物質は、リチウム(金属リチウム)、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素、グラファイト、シリコン、Sn合金、Si合金、Sn酸化物、Si酸化物、Ti酸化物、Ni酸化物、Fe酸化物(FeO)およびリチウム‐チタン酸化物(LiTiO2、Li4Ti5O12)の負極活物質群から選択される一つまたは二つ以上の物質であってもよい。
【0069】
導電材としては、通常の導電性炭素材が、特に制限なく使用され得る。
【0070】
金属材料の集電体は、伝導性が高く、前記正極または負極活物質の合剤が容易に接着することができる金属であり、電池の電圧範囲で反応性のないものであればいずれも使用可能である。正極集電体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの組み合わせによって製造される箔などがあり、負極集電体の非制限的な例としては、銅、金、ニッケルまたは銅合金またはこれらの組み合わせによって製造される箔などがある。
【0071】
正極と負極との間には分離膜が介在されるが、分離膜を電池に適用する方法としては、一般的な方法である巻き取り(winding)以外にも分離膜と電極の積層(lamination、stack)および折り曲げ(folding)などが可能である。
【0072】
非水電解液は、電解質であるリチウム塩と有機溶媒を含み、リチウム塩は、リチウム二次電池用電解液に通常使用されるものなどが制限なく使用され得、Li+X―で表すことができる。
【0073】
リチウム塩のアニオンとしては、特に制限されず、F-、Cl-、Br-、I-、NO3
-、N(CN)2
-、BF4
-、ClO4
-、PF6
-、(CF3)2PF4
-、(CF3)3PF3
-、(CF3)4PF2
-、(CF3)5PF-、(CF3)6P-、CF3SO3‐、CF3CF2SO3
-、(CF3SO2)2N-、(FSO2)2N-、CF3CF2(CF3)2CO-、(CF3SO2)2CH-、(SF5)3C-、(CF3SO2)3C-、CF3(CF2)7SO3
-、CF3CO2
-、CH3CO2
-、SCN-および(CF3CF2SO2)2N-のいずれか一つまたは二つ以上が使用され得る。
【0074】
有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジメチルスルホオキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、スルホラン、ガンマ‐ブティロラックトン、およびテトラヒドロフランからなる群から選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物が使用され得る。
【0075】
非水電解液は、正極、負極および正極と負極との間に介在された分離膜からなる電極構造体に注入することができる。
【0076】
リチウム二次電池の外形は、特に制限されないが、缶を使用した円筒型、角型、パウチ(pouch)型またはコイン(coin)型などになり得る。
【0077】
以下、本発明についてより具体的に説明するために、下記の実施例を挙げて説明するが、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0078】
本発明の実施例および比較例において二次電池用分離膜の特性評価方法は、以下のような方法で行った。
【0079】
1.ガス透過率の測定
分離膜のガス透過率を測定する方法は、JIS P8117規格に順じ、100ccの空気が分離膜の1 inch2の面積を通過するのにかかる時間を秒単位で記録して比較した。
【0080】
2.130℃熱収縮率の測定
分離膜の130℃熱収縮率を測定する方法は、分離膜を1辺が10cmである正方形状に切断して試料を作製した後、実験前の試料の面積をカメラを用いて測定および記録する。試料が真中に位置するように試料の上と下にそれぞれ紙を5枚ずつ配置し、紙の4辺をクリップで固定する。紙で囲まれた試料を130℃の熱風乾燥オーブンに1時間放置した。放置が終了すると、試料を取り出して分離膜の面積をカメラで測定し、下記数式1の収縮率を計算した。
【0081】
[数1]
収縮率(%)=(加熱前の面積-加熱後の面積)×100/加熱前の面積
【0082】
3.接着強度の測定
分離膜と電極との融着力を測定するための試料は、正極および負極の電極板に分離膜を一枚挟み込み電解液に1時間浸漬してから取り出して直ぐ熱プレス装置において100℃、1MPaの熱と圧力を150秒間加えて融着させる。このように作製された試験片をまた電解液に1時間浸漬した後、取り出して電解液が蒸発する前に直ぐ180゜剥離強度を測定した。
【0083】
4.電池寿命の測定
前記組立過程を経て製造した各電池を1Cの放電速度で500回充放電した後、放電容量を測定し、初期容量に対して減少した程度を測定するサイクル(Cycle)評価を行った。
【0084】
5.電池の厚さの測定
電池の充放電時に電極板と分離膜との剥離現象および電池の変形可否を確認するために、500回充放電後、Mitsutoyo社製のThickness Gaugeを使用して電池の厚さを測定した後、充放電前の厚さと比較し、以下の数式2の電池の厚さ増加率を測定した。
【0085】
[数2]
A:充放電前の電池の厚さ(mm)
B:充放電後の電池の厚さ(mm)
電池の厚さ増加率(%)=(B-A)/A×100
【0086】
6.表面粗さ(surface roughness)(Ra)の評価
分離膜を5×5μmサイズに切断して試料を作製し、AFM(Digital Instruments Nanoscope V MMAFM‐8 Multimode)を使用して試料全体サイズで表面粗さ分析(Roughness Analysis)を行い、Ra値を測定した。
【0087】
7.電池安全性の測定
電池の安全性を測定するために、製造した各電池をSOC(充填率)100%に完全に充填させた後、釘刺し(nail penetration)評価を行った。この際、釘の直径は3.0mm、釘の貫通速度はいずれも80mm/minに固定した。L1:変化なし、L2:わずか発熱、L3:漏液、L4:発煙、L5:発火であり、L1~L3はPass、L4~L5はFailと判定する。
【0088】
[実施例1]
正極の製造
LiCoO2(D50、15μm)を94重量%、Polyvinylidene fluorideを2.5重量%、カーボンブラック(D50:15μm)を3.5重量%、NMP(N‐methyl‐2‐pyrrolidone)に添加して撹拌し、均一な正極スラリーを製造した。スラリーを30μm厚さのアルミ箔上にコーティング、乾燥および圧着して、150μm厚さの正極電極板を製造した。
【0089】
負極の製造
黒鉛を95重量%、Tgが-52℃であるアクリルラテックス(Acrylic latex)(固形分20wt%)を3重量%、CMC(Carboxymethyl cellulose)を2重量%の割合で、溶媒の水に添加し撹拌して均一な負極スラリーを製造した。スラリーを20μm厚さの銅箔上にコーティング、乾燥および圧着して、150μm厚さの負極電極板を製造した。
【0090】
複合分離膜の製造
平均粒径1.0μmのアルミナ(Alumina)粒子94重量%、溶融温度が220℃で、ケン化度が99%であるポリビニルアルコールを2重量%、Tgが-52℃であるアクリルラテックス(固形分20wt%)を4重量%、溶媒の水に添加して撹拌し、均一な耐熱層スラリーを製造した。
【0091】
水に分散された15重量%のメチルメタクリレート(Methyl methacrylate)およびブチルアクリレート(Butyl acrylate)の共重合体とし、ガラス転移温度が48℃である0.5μmの球状の粒子を融着層スラリーとして使用した。
【0092】
SKイノベーション製の厚さ7μmのポリオレフィン微多孔膜(気孔度35%)に、多層スロットコーティングダイを2台使用して前記微多孔膜基材の前面/裏面に耐熱層スラリーと融着層スラリー計4層を別の乾燥工程なく連続して同時にコーティングした。同時コーティングされた微多孔膜は、乾燥装置で水を蒸発させた後、ロール状に巻き取り、両面耐熱層の厚さはそれぞれ1.5μmであり、両面融着層の厚さはそれぞれ0.8μmであった。
【0093】
電池の製造
前記で製造した正極、負極および分離膜を使用して、積層(Stacking)方式でパウチ型電池を組み立て、組み立てられた電池に1Mのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)が溶解されたエチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)/ジメチルカーボネート(DMC)=3:5:2(体積比)である電解液を注入し、容量1,500mAhのリチウム二次電池を製造した。以降、正極、負極および分離膜を互いに融着させるために、電池を熱プレス装置に入れて100℃、1MPaの熱と圧力を150秒間加えて熱融着させた。
【0094】
[実施例2]
実施例1で積層したパウチ型電池を組み立て、別の電解液を注入せず、100℃、1MPaの熱と圧力を150秒間加えて熱融着させた後、電解液を注入した以外は、同様に実施した。
【0095】
[実施例3]
下記の耐熱層スラリーおよび融着層スラリーを使用した以外は、実施例1と同様に実施しており、その結果、両面耐熱層の厚さはそれぞれ2.5μmであり、両面融着層の厚さはそれぞれ1.0μmであった。
【0096】
耐熱層を製造するために、平均粒径0.7μmのベーマイト(Boehmite)95重量%、溶融温度が220℃であり、ケン化度が99%であるポリビニルアルコール2重量%、Tgが-52℃であるアクリルラテックス3重量%を使用してスラリーを製造した。融着層を製造するために、スチレン(Styrene)、メチルメタクリレート(Methyl methacrylate)およびブチルアクリレート(Butyl acrylate)、ブチルメタクリレート(Butyl Methacrylate)およびエチルヘキシルアクリレート(2‐EthylHexylAcrylate)を主成分として重合した、ガラス転移温度が85℃である平均粒径0.7μmの球状粒子を水に対して12重量%の割合になるように希釈し、融着層スラリーを製造した。
【0097】
[実施例4]
実施例3で基材層の一面には耐熱層と融着層を形成し、他面には融着層のみを形成した以外は同様に実施した。この際、耐熱層の厚さは3.0μmであり、両面融着層の厚さはそれぞれ1.0μmであった。
【0098】
[実施例5]
実施例4で積層(Stacking)方式でパウチ型電池を組み立てた後、100℃、1MPaの熱と圧力を150秒間加えて熱融着させた後、電解液を注入した以外は同様に実施した。
【0099】
[実施例6]
メチルメタクリレート(Methyl methacrylate)およびブチルアクリレート(Butyl acrylate)およびエチルヘキシルアクリレート(2‐EthylHexylAcrylate)を共重合し、ガラス転移温度が32℃である平均粒径0.7μmの球状を維持する高分子粒子を、水に対して12重量%の割合になるように希釈して融着層スラリーとして使用し、前記耐熱層と融着層をいずれも基材層の両面に順に同時コーティングしてから乾燥してロール状に巻き取り、両面耐熱層の厚さはそれぞれ1.5μmで、両面融着層の厚さがそれぞれ0.3μmの複合分離膜を製造し、これを用いて積層(Stacking)方式でパウチ型電池を組み立てた後、電解液のない状態で電池を熱プレス装置に入れて75℃、1MPaの熱と圧力を150秒間加えて熱融着させた後、1Mのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)が溶解されたエチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)/ジメチルカーボネート(DMC)=3:5:2(体積比)である電解液を注入した以外は、前記実施例5と同様に実施した。
【0100】
[比較例1]
分離膜に融着層がない以外は、前記実施例1と同様に実施した。
【0101】
[比較例2]
電解液なく電池を組み立てた後、1Mのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)が溶解されたエチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)/ジメチルカーボネート(DMC)=3:5:2(体積比)である電解液を注入した以外は、比較例1と同様に実施した。
【0102】
[比較例3]
分離膜に耐熱層がない点以外は、前記実施例1と同様に実施した。
【0103】
[比較例4]
ガラス転移温度が5℃であり、平均粒径0.2μmであるBA(Butyl acrylate)およびEHA(Ethylhexylacrylate)共重合体粒子20重量%を水に分散したスラリーを使用した以外は、実施例1と同様に複合分離膜を製造し、この際、両面耐熱層の厚さはそれぞれ1.5μmであり、両面融着層の厚さはそれぞれ0.8μmであった。前記複合分離膜を用いて電池を製造した後、融着温度を70℃とし、1MPaの熱と圧力を150秒間加えて熱融着させた以外は、実施例1と同様に電池を製造した。
【0104】
[比較例5]
融着層としてガラス転移温度が93℃であり、平均粒径が0.6μmであるメチルメタクリレート(Methyl methacrylate)共重合体粒子を、水に対して15重量%の割合になるように希釈し、融着層スラリーとして使用して複合分離膜を製造した以外は、実施例2のように実施した。耐熱層と融着層の厚さはいずれも1.4μmであった。
【0105】
[比較例6]
融着層としてガラス転移温度が110℃であり、平均粒径が0.8μmであるメチルメタクリレート(Methyl methacrylate)重合体粒子を、水に対して12重量%の割合になるように希釈して融着層スラリーとして使用し、多層スロットコーティングダイを2台使用して基材の前面/裏面に耐熱層スラリーと融着層スラリー計4層を別に乾燥することなく連続して同時にコーティングした。分離膜は、乾燥装置により溶媒である水を蒸発させた後、ロール状に巻き取り、両面耐熱層の厚さはそれぞれ1.5μmであり、両面融着層の厚さはそれぞれ1.4μmであった。
【0106】
前記分離膜を使用して積層(Stacking)方式でパウチ型電池を組み立てた後、電解液のない状態で電池を熱プレス装置に入れて100℃、1MPaの熱と圧力を150秒間加えて熱融着させた後、1Mのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)が溶解されたエチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)/ジメチルカーボネート(DMC)=3:5:2(体積比)である電解液を注入した以外は、実施例2と同様に実施した。
【0107】
【0108】
【0109】
前記結果を参照すると、本発明の実施例は、いずれもガス透過率、接着強度および常温寿命において同時に著しく優れた特性を示しており、本発明の範疇に属していない比較例の場合には、特に比較例4~6から分かるように接着されていないかまたはガス透過率が著しく低下したり、または常温寿命が著しく低くなる効果があることが分かる。すなわち、ガラス転移温度が30~90℃であり、ガラス転移温度と融着温度との差が60℃以下の場合に相当する非晶質高分子粒子から構成された融着層と、無機物とバインダーから構成された耐熱層を同時に有することが、電池寿命および安全性を著しく上昇させることを確認した。
【0110】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、請求の範囲に記載の本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で様々な修正および変形が可能であることは、当技術分野において通常の知識を有する者にとって自明である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明に係る複合分離膜は、電池の寿命および安全性の改善の特性を有し、且つ、広い面積の二次電池の正極と負極の全面積において均一で強く融着され、各層の均一に分布された気孔を介してイオンの移動がスムーズになるため、特に、電気自動車用の大型の二次電池の性能の改善に有利であり、電池の寿命特性において非常に好ましい。