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特許7073138遊技機用検査装置、遊技機用検査方法及び遊技機製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】遊技機用検査装置、遊技機用検査方法及び遊技機製造方法
(51)【国際特許分類】
   A63F 7/02 20060101AFI20220516BHJP
【FI】
A63F7/02 312C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018031274
(22)【出願日】2018-02-23
(65)【公開番号】P2019141529
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000144153
【氏名又は名称】株式会社三共
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100134599
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100166442
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋雅
(72)【発明者】
【氏名】小倉 敏男
(72)【発明者】
【氏名】庄子 博
(72)【発明者】
【氏名】原田 峻介
【審査官】廣瀬 貴理
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-272931(JP,A)
【文献】特開平04-144580(JP,A)
【文献】特開2013-022385(JP,A)
【文献】特開2017-192515(JP,A)
【文献】特開2018-23484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技盤面に設けられた釘の状態を検査する遊技機用検査装置であって、
前記遊技盤面を読み取り、読み取った前記遊技盤面を表す読取情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記読取情報に基づいて前記釘の位置を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した前記釘の位置と当該釘の基準位置との比較により釘の状態を検査する検査手段と、を備え、
前記検査手段は、
前記遊技盤面のすべての釘のそれぞれについての前記釘の前記基準位置に対する偏りを特定し、前記すべての釘の偏りの平均値に基づいて前記すべての釘それぞれの位置を補正し、
その後、前記遊技盤面に割り当てられた複数の特定の領域毎に、該特定の領域内の複数の釘のそれぞれについての前記釘の前記基準位置に対する偏りを特定し、特定の領域内の偏りの平均値に基づいて該特定の領域内の複数の釘それぞれの位置と前記基準位置それぞれとの位置関係を補正する、
遊技機用検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機用検査装置、遊技機用検査方法及び遊技機製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ遊技機等の遊技機では、遊技盤面における遊技領域に多数の障害釘が打設されている。このような障害釘として、例えば真鍮製の釘等が使用され、遊技盤の製造時において釘打ち機等により遊技盤面に打設される。
【0003】
遊技盤面に設けられた釘の状態を検査するために、ライン状に照明光を照射して撮像し、各釘の撮像頭部位置データに含まれる変位成分や距離成分を用いて、釘の状態の良否を判別することが提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-11606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、画像処理により釘の状態を検査するが、遊技盤面の歪み等が考慮されておらず、釘の状態の検査の精度が良くない場合がある。
【0006】
この発明は、釘の状態の検査の精度が良い遊技機用検査装置、遊技機用検査方法及び遊技機製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る遊技機用検査装置は、
遊技盤面(例えば、遊技盤面2a)に設けられた釘(例えば、障害釘200)の状態を検査する遊技機用検査装置(例えば、管理コンピュータ500及び出荷前釘検査用装置21)であって、
前記遊技盤面(例えば、障害釘200が設けられた遊技盤面2a)を読み取り、読み取った前記遊技盤面を表す読取情報を取得する取得手段(例えば、ステップS102を実行する管理コンピュータ500)と、
前記取得手段により取得された前記読取情報に基づいて前記釘の位置(例えば、障害釘200の頭部200bの位置)を検出する検出手段(例えば、ステップS103を実行する管理コンピュータ500)と、
前記検出手段が検出した前記釘の位置と当該釘の基準位置(例えば、頭部200bの設定位置)との比較により釘の状態を検査する検査手段(例えば、ステップS109を実行する管理コンピュータ500)と、を備え、
前記検査手段は、
前記遊技盤面のすべての釘のそれぞれについての前記釘の前記基準位置に対する偏りを特定し、前記すべての釘の偏りの平均値に基づいて前記すべての釘それぞれの位置を補正し、
その後、前記遊技盤面に割り当てられた複数の特定の領域(例えば、エリアA~D)毎に、該特定の領域内の複数の釘のそれぞれについての前記釘の前記基準位置に対する偏り(例えば、ずれ量)を特定し、特定の領域内の偏りの平均値に基づいて該特定の領域内の複数の釘それぞれの位置と前記基準位置それぞれとの位置関係を補正する(例えば、ステップS106~S107)。
【0008】
上記構成によれば、釘の状態の検査の精度が向上する。
【0009】
(2)本発明に係る遊技機用検査方法は、
遊技盤面(例えば、遊技盤面2a)に設けられた釘(例えば、障害釘200)の状態を検査する遊技機用検査方法であって、
前記遊技盤面(例えば、障害釘200が設けられた遊技盤面2a)を読み取り、読み取った前記遊技盤面を表す読取情報を取得する取得ステップ(例えば、ステップS102)と、
前記取得ステップにより取得された前記読取情報に基づいて前記釘の位置(例えば、障害釘200の頭部200bの位置)を検出する検出ステップ(例えば、ステップS103)と、
前記検出ステップが検出した前記釘の位置と当該釘の基準位置(例えば、頭部200bの設定位置)との比較により釘の状態を検査する検査ステップ(例えば、ステップS109)と、を備え、
前記検査ステップでは、前記遊技盤面に割り当てられた複数の領域のうちの特定の領域(例えば、エリアA~D)内の複数の釘のそれぞれについての前記釘の位置の前記基準位置に対する偏り(例えば、ずれ量)を特定し、前記特定の領域内の偏りの平均値に基づいて前記複数の釘それぞれの位置と前記基準位置それぞれとの位置関係を補正する(例えば、ステップS106~S107)。
【0010】
上記構成によれば、釘の状態の検査の精度が向上する。
【0011】
(3)本発明に係る遊技機製造方法は、
遊技盤面(例えば、遊技盤面2a)に設けられた釘(例えば、障害釘200)の状態を検査する工程を有する遊技機製造方法であって、
前記工程は、
前記遊技盤面(例えば、障害釘200が設けられた遊技盤面2a)を読み取り、読み取った前記遊技盤面を表す読取情報を取得する取得ステップ(例えば、ステップS102)と、
前記取得ステップにより取得された前記読取情報に基づいて前記釘の位置(例えば、障害釘200の頭部200bの位置)を検出する検出ステップ(例えば、ステップS103)と、
前記検出ステップが検出した前記釘の位置と当該釘の基準位置(例えば、頭部200bの設定位置)との比較により釘の状態を検査する検査ステップ(例えば、ステップS109)と、を備え、
前記検査ステップでは、前記遊技盤面に割り当てられた複数の領域のうちの特定の領域(例えば、エリアA~D)内の複数の釘のそれぞれについての前記釘の位置の前記基準位置に対する偏り(例えば、ずれ量)を特定し、前記特定の領域内の偏りの平均値に基づいて前記複数の釘それぞれの位置と前記基準位置それぞれとの位置関係を補正する(例えば、ステップS106~S107)。
【0012】
上記構成によれば、釘の状態の検査の精度が向上する。
【0013】
(4)前記読取情報は、前記遊技盤面に対して所定距離離れた撮像部(例えば、撮像部213)により撮像された画像である、
ようにしてもよい。
【0014】
上記構成によれば、好適に読取情報を得ることができ、さらに、前記補正が効果的となる。
【0015】
(5)前記検査手段は(又は検査ステップでは)、前記位置関係の補正を複数回実行する(例えば、変形例)、
ようにしてもよい。
【0016】
上記構成によれば、釘の状態の検査の精度が向上する。
【0017】
(6)前記検査手段は(又は検査ステップでは)、前記遊技盤面のすべての釘のそれぞれについての前記釘の位置の前記基準位置に対する偏りを特定し、前記すべての釘の偏りの平均値に基づいて前記すべての釘それぞれの位置を補正する(例えば、ステップS105~S106)、
ようにしてもよい。
【0018】
上記構成によれば、釘の状態の検査の精度が向上する。
【0019】
(7)複数の方向から釘の頭部に対して光を照射可能に配置された光源(例えば、複数の発光部材LS1~LS4)をさらに備え、
前記検査手段(又は検査ステップ)は、各方向から照射される光による反射光の組合せを含む読取情報(例えば、図18(C)、(E)参照)を用いて釘の状態を検査する、
ようにしてもよい。
【0020】
上記構成によれば、釘の状態の検査の精度が向上する。
【0021】
(8)前記検査手段(又は検査ステップ)は、前記遊技盤面のうち、釘位置情報(例えば、設計データ)に基づいて予め設定された対象範囲内にてパターンマッチングを実行することで釘を検出し(例えば、ステップS103)、
前記パターンマッチングで使用されるテンプレート画像を、予め用意されたマスター(例えば、マスター盤のパチンコ遊技機1)の遊技盤面を読み取った読取情報から取得する取得手段(又は取得ステップ)(例えば、マスターデータ登録処理)をさらに備える、
ようにしてもよい。
【0022】
上記構成によれば、釘の状態の検査の精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】パチンコ遊技機の正面図である。
図2】遊技盤の正面図である。
図3】障害釘の傾斜等を説明するための遊技盤の一部断面図(障害釘は断面でない)である。
図4】障害釘の傾斜方向を説明するための図である。
図5】管理コンピュータのブロック図である。
図6】遊技機の製造工程の大まかな流れを示すフローチャートである。
図7】出荷前釘検査用装置の構成例を示す右側面図である。
図8】後面基準と前面基準の場合におけるクランプの設置例を示す正面図である。
図9】スキャナー部の構成例を示す右側面図である。
図10】マッチング領域設定処理の一例を示すフローチャートである。
図11】マッチング領域データベースの構成例を示す図である。
図12】マッチング領域の例を示す図である。
図13】マスターデータ登録処理の一例を示すフローチャートである。
図14】マスターデータ登録処理における画像処理の様子を示す図である。
図15】マスターデータ登録処理にて表示される表示画面の一例の図である。
図16】マスターデータ登録処理にて切り出されたテンプレート画像の図である。
図17】マスターデータの構成例を示す図である。
図18】光源と撮影機材に応じた撮影画像とエッジ検出結果の比較例、蛍光灯2本の場合における特徴画像エリアを示す図である。
図19】出荷前釘測定処理の一例を示すフローチャートである。
図20】遊技盤に設定されたエリアを示す図である。
図21】エリア設定データの構成例を示す図である。
図22】遊技盤面の歪み等により障害釘の位置が変わったときの障害釘の頭部の撮像画像への写り方を説明するための図である。
図23】(A)は、面積平均化を行わないときの、障害釘の頭部の設定位置に対するズレ量の分布を示すグラフである。(B)は、面積平均化を行ったときの、障害釘の頭部の設定位置に対するズレ量の分布を示すグラフである。
図24】比較結果の構成例を示す図である。
図25】遊技盤に設定されるエリアの他の例を示す図である。
図26】スキャン方向の変形例を示す図である。
図27】遊技盤固有情報を付加する変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を実施するための形態を実施例にもとづいて以下に説明する。
【0025】
(パチンコ遊技機1の構成)
はじめに、遊技機の一例であるパチンコ遊技機1の全体の構成について説明する。図1は、パチンコ遊技機1を正面から見た正面図である。図2は、遊技盤を正面から見た正面図である。尚、以下において、図1の手前側をパチンコ遊技機1の前方(前面、正面)側、奥側を後方(背面)側とし、パチンコ遊技機1を前面側から見たときの上下左右方向を基準として説明する。尚、本実施例におけるパチンコ遊技機1の前面とは、該パチンコ遊技機1にて遊技を行う遊技者と対向する対向面である。
【0026】
図1は、本実施例におけるパチンコ遊技機の正面図であり、主要部材の配置レイアウトを示す。パチンコ遊技機(以下、遊技機と略記する場合がある)1は、大別して、遊技盤面を構成する遊技盤2(ゲージ盤ともいう)と、遊技盤2を支持固定する遊技機用枠(台枠)3とから構成されている。遊技盤2には、ガイドレール2bによって囲まれた正面視略円形状の遊技領域10が形成されている。この遊技領域10には、遊技媒体としての遊技球が打球発射装置(図示略)から発射されて打ち込まれる。また、遊技機用枠3には、ガラス窓50aを有するガラス扉枠50が左側辺を中心として回動可能に設けられ、該ガラス扉枠50により遊技領域10を開閉できるようになっており、ガラス扉枠50を閉鎖したときにガラス窓50aを通して遊技領域10を透視できるようになっている。
【0027】
図1及び図2に示すように、遊技盤2は、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂等の透明な合成樹脂板にて正面視略四角形状に形成され、前面である遊技盤面2aに障害釘200等が植設される盤面板2Aと、該盤面板2Aの背面側に一体的に取付けられるスペーサ部材2Bと、から構成されている。尚、本実施例では、遊技盤2は合成樹脂板から成る盤面板2Aにて構成されていたが、ベニヤ板等の非透光性部材にて構成され、前面である遊技盤面2aに複数の障害釘200やガイドレール2b等が設けられた盤面板にて構成されていてもよい。
【0028】
図1に示すように、遊技盤2の所定位置(図1に示す例では、遊技領域10の右側下部位置)には、第1特別図柄表示器4Aと、第2特別図柄表示器4Bとが設けられている。第1特別図柄表示器4Aと第2特別図柄表示器4Bはそれぞれ、変動表示ゲームの一例となる特図ゲームにおいて、各々を識別可能な複数種類の識別情報(特別識別情報)である特別図柄(「特図」ともいう)が、変動可能に表示(変動表示または可変表示ともいう)される。以下では、第1特別図柄表示器4Aにおいて変動表示される特別図柄を「第1特図」ともいい、第2特別図柄表示器4Bにおいて変動表示される特別図柄を「第2特図」ともいう。
【0029】
遊技盤2における遊技領域10の中央付近には、演出表示装置5が設けられている。演出表示装置5は、例えばLCD(液晶表示装置)等から構成され、各種の演出画像を表示する表示領域を形成している。演出表示装置5の表示領域では、特図ゲームにおける第1特別図柄表示器4Aによる第1特図の変動表示や第2特別図柄表示器4Bによる第2特図の変動表示のそれぞれに対応して、例えば3つといった複数の変動表示部となる演出図柄表示エリア5L,5C,5Rにて、各々を識別可能な複数種類の識別情報(装飾識別情報)である演出図柄が変動表示される。この演出図柄の変動表示も、変動表示ゲームに含まれる。
【0030】
このように、演出表示装置5の表示領域では、第1特別図柄表示器4Aにおける第1特図を用いた特図ゲーム、または、第2特別図柄表示器4Bにおける第2特図を用いた特図ゲームと同期して、各々が識別可能な複数種類の演出図柄の変動表示を行い、変動表示結果となる確定演出図柄(最終停止図柄)を導出表示する。
【0031】
演出表示装置5は、遊技盤2よりも背面側に配設され、該遊技盤2に形成された開口2Cを通して視認できるようになっている。尚、遊技盤2における開口2Cには枠状のセンター飾り枠51が設けられている。
【0032】
演出表示装置5の表示領域の下部の左右2箇所には、第1保留記憶表示エリア5D、第2保留記憶表示エリア5Uが設定されている。第1保留記憶表示エリア5D、第2保留記憶表示エリア5Uでは、特図ゲームに対応した変動表示の保留記憶数(特図保留記憶数)を特定可能に表示する保留記憶表示が行われる。
【0033】
ここで、特図ゲームに対応した変動表示の保留は、普通入賞球装置6Aが形成する第1始動入賞口や、普通可変入賞球装置6Bが形成する第2始動入賞口を、遊技球が通過(進入)することによる始動入賞にもとづいて発生する。すなわち、特図ゲームや演出図柄の変動表示といった変動表示ゲームを実行するための始動条件(「実行条件」ともいう)は成立したが、先に成立した開始条件にもとづく変動表示ゲームが実行中であることやパチンコ遊技機1が大当り遊技状態に制御されていることなどにより、変動表示ゲームの開始を許容する開始条件が成立していないときに、成立した始動条件に対応する変動表示の保留が行われる。
【0034】
第1特別図柄表示器4A及び第2特別図柄表示器4Bの右方位置には、特図保留記憶数を特定可能に表示するための第1保留表示器25Aと第2保留表示器25Bとが設けられている。第1保留表示器25Aは、第1特図保留記憶数を特定可能に表示し、第2保留表示器25Bは、第2特図保留記憶数を特定可能に表示する。
【0035】
演出表示装置5の下方には、普通入賞球装置6Aと普通可変入賞球装置6Bとが設けられているとともに、下方及び右側方には一般入賞口60が設けられている。普通入賞球装置6Aは、例えば所定の球受部材によって常に一定の開放状態に保たれる始動領域(第1始動領域)としての第1始動入賞口を形成する。普通可変入賞球装置6Bは、ソレノイド(図示略)によって、垂直位置となる通常開放状態と傾動位置となる拡大開放状態とに変化する一対の可動翼片を有する電動チューリップ型役物(普通電動役物)を備え、始動領域(第2始動領域)としての第2始動入賞口を形成する。
【0036】
第1始動入賞口を通過(進入)した遊技球が第1始動口スイッチ(図示略)によって遊技球が検出されたことにもとづき、所定個数(例えば3個)の遊技球が賞球として払い出され、第1特図保留記憶数が所定の上限値(例えば「4」)以下であれば、第1始動条件が成立する。また、第2始動入賞口を通過(進入)した遊技球が第2始動口スイッチ(図示略)によって遊技球が検出されたことにもとづき、所定個数(例えば3個)の遊技球が賞球として払い出され、第2特図保留記憶数が所定の上限値(例えば「4」)以下であれば、第2始動条件が成立する。
【0037】
普通入賞球装置6Aと普通可変入賞球装置6Bの下方位置には、特別可変入賞球装置7が設けられている。特別可変入賞球装置7は、ソレノイド(図示略)によって開閉駆動される大入賞口扉によって開放状態と閉鎖状態とに変化する特定領域としての大入賞口を形成する。このように、特定領域としての大入賞口は、遊技球が通過(進入)しやすく遊技者にとって有利な開放状態と、遊技球が通過(進入)できない(または通過(進入)しにくい)遊技者にとって不利な閉鎖状態とに変化する。
【0038】
大入賞口を通過(進入)した遊技球がカウントスイッチ(図示略)によって検出されたことにもとづき、所定個数(例えば15個)の遊技球が賞球として払い出される。従って、特別可変入賞球装置7において大入賞口が開放状態となれば、その大入賞口に遊技球が進入可能となり、遊技者にとって有利な第1状態となる。その一方で、特別可変入賞球装置7において大入賞口が閉鎖状態となれば、大入賞口に遊技球を通過(進入)させて賞球を得ることが不可能または困難になり、遊技者にとって不利な第2状態となる。
【0039】
第2保留表示器25Bの右方位置には、普通図柄表示器20が設けられている。普通図柄表示器20の右方には、普図保留表示器25Cが設けられている。普図保留表示器25Cは、例えば4個のLEDを含んで構成され、通過ゲート41を通過した有効通過球数としての普図保留記憶数を表示する。
【0040】
遊技盤2の遊技盤面2aにおける遊技領域10には、遊技球の流下方向や速度を変化させる多数の障害釘200や風車61やセンター飾り枠51等の装飾物が設けられている。例えば、図2に示すように、普通入賞球装置6Aの左右側方には、複数の障害釘200が互いに近接して並設されてなる誘導釘201L,201Rがそれぞれ設けられている。
【0041】
誘導釘201L,201Rは、左右側方から中央の普通入賞球装置6Aに向けてそれぞれ下方に傾斜するように並設され、普通入賞球装置6Aの第1始動入賞口に向けて遊技球を誘導する。尚、これら誘導釘201L,201Rのそれぞれの所定箇所には、遊技球が落下可能な渡り203が設けられているが、渡り203は設けられなくてもよい。
【0042】
また、遊技領域10に設けられた複数の障害釘のうち、普通入賞球装置6Aの第1始動入賞口の近傍上方位置に設けられる障害釘200は、第1始動入賞口に向けて遊技球を誘導する指定釘204を構成している。各一般入賞口60の近傍上方位置に設けられる障害釘200は、各一般入賞口60に向けて遊技球を誘導する指定釘205を構成している。通過ゲート41の上方近傍位置に設けられる障害釘200は、通過ゲート41に向けて遊技球を誘導する指定釘206を構成している。風車61の上方近傍位置に設けられる障害釘200は、風車61に向けて遊技球を誘導する指定釘207を構成している。ワープ通路62(図1)の上方近傍位置に設けられる障害釘200は、ワープ通路62に向けて遊技球を誘導する指定釘208を構成している。これら指定釘204~208それぞれは、遊技盤面2aに設けられる複数の障害釘200のうちから予め指定される障害釘であり、これら指定釘以外の障害釘200とは内容が異なる整備が必要な障害釘とされている。指定釘204~208それぞれは、複数本ずつ設けられ、特に、指定釘204等の2本の指定釘204等は、ペア釘とも呼ばれる。
【0043】
障害釘200は、例えば、真鍮材からなり、図3に示すように、円柱状の胴部200a(本体部あるいはシャフトともいう)と、該胴部200aの一端側に形成された球面状の頭部200b(釘笠ともいう)と、から構成される。本実施例では、胴部200aの直径が1.85mmであり、頭部200bの傘外径が4.2mm(Sφ2=4.2mm)である。障害釘200は、遊技盤面2aに予め形成される孔部2dに釘打ち機により打設されることにより遊技盤面2aに立設される。障害釘200が立設された状態において、遊技盤面2a(孔部2dの開口H)から頭部200bの末端(胴部200aと頭部200bとの境界部分)までの長さL1は、16.8mm(L1=16.8mm)であり、頭部200bの末端(胴部200aとの境界部分)から先端(頭部200bにおける釘傘の頂上部分)までの長さLHは、1.0mm(LH=1.0mm)である。あわせた長さが17.8mmとされている。また、胴部200aの後端側にはネジ溝200cが形成されている。このネジ溝200cによって、孔部2d内に挿入された胴部200aと孔部2dの内周面との間に生じる摩擦力により障害釘200が遊技盤2から抜け落ちることが防止されている。
【0044】
また、障害釘200を打設するための孔部2dは、図3に示すように、遊技盤面2aと直交するZ軸(垂線)に対し上方に向けて所定角度θ1(θ1=4度)傾斜して形成される。よって、障害釘200もZ軸(垂線)に対して頭部200b側が上方に向けて4度傾斜して立設され、障害釘200に衝突した遊技球が遊技盤2側に極力跳ね返るようにしている。このように、障害釘200の中心軸は、一般的な設計通りであれば、基準面となる遊技盤面2aの垂線に対し、上方に4度の角度を有して植設される。なお、指定釘204~208は、上方に4度傾斜した状態の障害釘200をさらに他の方向に曲げて形成される。つまり、指定釘204~208(詳細には、遊技盤面2aから突出した部分)は、他の障害釘200(以下、一般釘ともいう。)とは異なる方向に傾斜している。
【0045】
障害釘200の傾斜方向(傾きの方向)は、図4に示すように、アナログ時計の時間により表される。12時が上、3時が右、6時が下、9時が左を示す。障害釘200のうち、一般釘(指定釘204~208以外の障害釘200)は、12時方向に4度傾斜している。また、一般釘以外の障害釘200である指定釘204~208は、一般釘の傾斜方向とは異なる方向に傾斜している。例えば、ペア釘となる2本の指定釘204、206は、左右方向に並んだ2本の障害釘200であるが、そのうち、左側の障害釘200は11時方向に4度、右側の障害釘200は1時方向に4度、傾斜している。なお、指定釘を含む障害釘200の傾斜方向は、任意であり、適宜の傾きが採用される。
【0046】
図1に戻って、遊技領域10の最下方には、いずれの入賞口にも進入しなかった遊技球が取り込まれるアウト口11が設けられている。遊技機用枠3の左右上部位置には、効果音等を再生出力するためのスピーカ8L,8Rが設けられており、さらに遊技領域10の周辺部には、演出用LED9が設けられている。遊技機用枠3の右下部位置には、遊技媒体としての遊技球を遊技領域10に向けて発射するために遊技者等によって操作される打球操作ハンドル(操作ノブ)が設けられている。
【0047】
遊技領域10の下方における遊技機用枠3の所定位置には、賞球として払い出された遊技球や所定の球貸機により貸し出された遊技球を、発射装置(図示略)へと供給可能に保持(貯留)する上皿90(打球供給皿)が設けられている。遊技機用枠3の下部には、上皿90から溢れた余剰球などを、パチンコ遊技機1の外部へと排出可能に保持(貯留)する下皿91が設けられている。下皿91を形成する部材に取付けられたスティックコントローラ31Aの傾倒操作はコントローラセンサユニット(図示略)にて検出され、上皿90を形成する部材に設けられたプッシュボタン31Bに対してなされた押下動作はプッシュセンサ(図示略)にて検出される。
【0048】
パチンコ遊技機1は、図示しない主基板、演出制御基板等も備える。主基板は、メイン側の制御基板であり、パチンコ遊技機1における遊技の進行(特図ゲームの実行、大当り遊技状態の制御、確変状態や時短状態の制御など)を制御する。演出制御基板は、主基板から伝送されてくる演出制御コマンド(遊技の進行に応じて伝送されるコマンド)に基づき、演出表示装置5、スピーカ8L,8R、演出用LED9などを制御して各種演出を実行する。
【0049】
(パチンコ遊技機1の製造)
以下、パチンコ遊技機1の製造について説明する。なお、当該製造については、例えば、特開2017-18519に開示された技術を利用できる。
【0050】
(管理コンピュータ500)
パチンコ遊技機1の製造は、管理コンピュータ500により制御される。管理コンピュータ500は、図5に示すように、データバス501と、制御プログラムにもとづいて各種の処理を行うCPU(中央演算処理回路)502と、RAM503と、時間情報等を出力可能なリアルタイムクロック(RTC)504と、前記制御プログラムや、パチンコ遊技機1の製造に使用されるデータが記憶される記憶装置505と、キーボードやマウス等の入力装置506と、ディスプレイ等の表示装置507と、各種印刷物を出力可能なプリンタ508と、後述の出荷前釘検査用装置等のパチンコ遊技機1の製造ラインで使用される各種装置とのデータ通信を行うための通信部509と、を備える。CPU502等は、データバス501に接続されている。
【0051】
(パチンコ遊技機1における遊技盤2の製造工程)
図6は、パチンコ遊技機1の製造工程における遊技盤2の製造工程の大まかな流れを示すフローチャートである。なお、下記で使用される装置は、適宜、管理コンピュータ500により制御される。
【0052】
まず、遊技盤2を構成する所定の大きさの合成樹脂板(例えば、アクリル板等)やベニヤ板に、リュータ加工装置などにより切削や穴あけ加工を施して所定の形状とした後、遊技盤面2aにセルシートを貼付する。次いで、釘や風車などの打ち込み作業時の位置ずれを減らすために、遊技盤2の設計データ(釘穴位置を含むデータ。詳細は後述)に応じて成形された金属製のゲージ板(図示略)により、遊技盤面2aに下穴を加工する作業を行う(ステップS1)。
【0053】
その後、遊技盤面2aに下穴が形成された遊技盤2に、当該遊技盤2に関する情報をコード化した二次元コード15aを含む各種コードを印刷したシール15を貼付する(ステップS2)。遊技機2に関する情報には、遊技盤2の設計データ等を特定可能なゲージ番号、遊技盤2の材質を示す材質コード、遊技盤2の機種を示す機種コード、同一機種のバリエーション等の機種補助情報を示すサブコード、遊技盤2の製造番号(固有のID)を示すシリアル番号などが含まれる。当該シール15の二次元コード15aは、遊技盤2の製造ライン等の適宜のタイミングで読み取られ、これにより、遊技盤2の製造が管理される。
【0054】
その後、釘打ち機にて複数の障害釘200を上記で加工された各下穴に打ち込む作業を行う(ステップS3)。その後、遊技盤面2aに打ち込まれた各障害釘200が12時方向に4度傾斜しているか否かを画像により検査する(ステップS4)。例えば、所定の検査装置(例えば、後述の出荷前釘検査用装置とは別の装置により行われるが、出荷前釘検査用装置を利用してもよい。)により、遊技盤面2aを撮影した画像に基づいて頭部200bの位置を特定し、特定した位置と、設計データに基づいて特定される頭部200bの設定位置との位置ずれが許容範囲内(傾斜が4度の許容範囲内)にあるかを判定する(許容範囲内にあれば、12時方向に4度傾斜していると判定する)。ステップS4の検査の結果、12時方向に4度傾斜していない障害釘200がない場合には、後述のステップS5~S6+は、スキップする。
【0055】
その後、ステップS3で打ち込んだ障害釘200のうち、12時方向に4度傾斜していないとステップS4で判定された障害釘200を対象として、該障害釘200を12時方向に4度傾斜させるための第1整備を実行する(ステップS5)。第1整備は、公知の障害釘整備装置で行う。第1整備後、整備後の各障害釘200が、12時方向に4度傾斜しているか否かを検査する第1検査を行う(ステップS6)。第1検査は、検査用工具を用いて第1整備を行った障害釘整備装置(他の装置でもよい)にて行われる。その後、第1検査により検査した障害釘200に、12時方向に4度傾斜していない障害釘(以下、このような釘をNG釘という。)が含まれるかを判定し(ステップS6+)、NG釘が含まれる場合(検査NG:ステップS6+;Y)には、そのNG釘を対象に第1整備及び第1検査を再度行う。
【0056】
第1整備の内容は、ステップS6+でNG釘があると判定される回数に応じて異なる。検査NG回数が1回目の場合には、原則として、検査NGと判定された障害釘200の整備量(変形量等)を、その前の第1整備と異ならせる。検査NG回数が2回目の場合には、原則として、その前の第1整備に使用した工具とは異なる工具により第1整備を行う。検査NG回数が3回目の場合には、原則として、障害釘整備装置を変更する。検査NG回数が4回目の場合、当該遊技盤2は製造ラインから排出される。
【0057】
NG釘が無い場合(ステップS6+のN)、指定釘204~208を対象として、該指定釘204~208の傾斜(上記Z軸に対する)を予め設定された傾斜(例えば、指定釘204、206については、1時方向に4度又は11時方向に4度)に設定するための第2整備を実行する(ステップS7)。第2整備では、指定釘204~208それぞれについて、指定釘同士の間隔が所望の寸法(遊技球が通過可能な寸法等)となるように基部側から頭部200b側に向けて漸次広げる。第2整備は、第1整備等で使用された障害釘整備装置とは異なる障害釘整備装置で行われてもよいし、同じ障害釘整備装置が使用されてもよい。
【0058】
そして、これら指定釘204~208を対象とした第2整備を行った後に、第2整備を行った障害釘整備装置(他の装置でもよい)により、検査用工具を用いて、指定釘204~208の傾斜が予め設定されている傾斜となっているかを検査する第2検査を行う(ステップS8)。その後、第2検査により検査した障害釘200に、予め設定されている傾斜になっていない障害釘(以下、このような釘をNG釘という。)が含まれるかを判定し(ステップS8+)、NG釘が含まれる場合(検査NG:ステップS8+;Y)には、そのNG釘を対象に第2整備及び第2検査を再度行う。
【0059】
第2整備の内容は、ステップS8+でNG釘があると判定される回数に応じて異なる。検査NG回数が1回目の場合には、原則として、検査NGと判定された障害釘200の整備量(変形量等)を、その前の第2整備と異ならせる。検査NG回数が2回目の場合には、原則として、その前の第2整備に使用した工具とは異なる工具により第2整備を行う。検査NG回数が3回目の場合には、原則として、障害釘整備装置を変更する。検査NG回数が4回目の場合、当該遊技盤2は製造ラインから排出される。
【0060】
第2検査においてNG釘が無い場合(ステップS8+でN)、当該第2検査が行われた遊技盤2について、全ての障害釘200を対象として、釘最終検査(傾斜が正常であるか等に検査を含む)を行う(ステップS9)。
【0061】
釘最終検査において異常がなければ、ガイドレール2bや風車61を遊技盤面2aに形成された下穴を利用して遊技盤2に取付ける作業を行う(ステップS10)。そして、センター飾り枠51、各種入賞装置など他の遊技用部材も取付けられる(ステップS11)。この組み付けにより、遊技盤2が完成する。その後、出荷前釘検査用装置21(図7等)にて、完成した遊技盤2の遊技盤面2aに設けられた障害釘200をスキャナー部210により読み取り、読取情報として生成された画像データ(撮像画像)を用いて、各障害釘200の状態を検査する出荷前釘検査を行う(ステップS12、詳細は後述)。最後に、完成した遊技盤2は梱包され、別工程で製造され梱包された遊技機用枠3とともに出荷される(ステップS13)。
【0062】
(出荷前釘検査用装置)
次に、本実施例の出荷前釘検査(ステップS12)で使用される出荷前釘検査用装置21について、図7図9にもとづいて説明する。図7は、出荷前釘検査用装置21の構成例を示す右側面図である。図8は、出荷前釘検査用装置21における各種クランプの設置例を示す正面図である。図9は、出荷前釘検査用装置21が備えるスキャナー部210の構成例を示す右側面図である。
【0063】
図7に示すように、本実施例における出荷前釘検査用装置21は、検査対象の遊技盤2の遊技盤面2a(障害釘200や、ガイドレール2b、風車61、センター飾り枠51、各種入賞装置等の他の遊技部材等が設けられている遊技盤面2a。盤面に障害釘200等が設けられている場合、特に、遊技盤面2aの読み取り(撮像)、撮像画像に対する画像処理等について、当該障害釘等を含めた全体を遊技盤面2aということがある。)に光(照射光)を照射して反射光を含む読取情報となる画像データを生成可能なスキャナー部210と、検査対象の遊技盤2を水平に載置するテーブル220と、から主に構成されている。検査対象の遊技盤2は、ロボットアーム等によりテーブル220に載置可能としてもよいし、作業員によりテーブル220に載置可能としてもよい。また、出荷前釘検査用装置21は、スキャナー部210とは別個に、二次元コード15aを読み取るための読取部(読取用カメラ)を備えてもよい。
【0064】
テーブル220の上面には、遊技盤2を位置決めするためのガイドピン(図視せず)などが設けられている。また、テーブル220の上部両側縁部には、図8(A)に示すような1対の昇降クランプ250が設けられてもよい。図8(A)に示す昇降クランプ250は、回動可能に構成されたアーム部250Aと、該アーム部250Aが軸着されて回動支点になるとともに昇降可能に構成されたベース部250Bとを有し、テーブル220の上面において、障害釘200が上方を向くように遊技盤2を上向きにした状態で、上方から遊技盤2を押さえることによりテーブル220との間に挟持し、テーブル220に遊技盤2を保持して固定できればよい。
【0065】
尚、昇降クランプ250により上方から遊技盤2を押さえることによりテーブル220との間に挟持する場合には、遊技盤2の後面が基準(後面基準)となる。この場合には、位置が固定されたテーブル220の上面と遊技盤2の下面との間に隙間が生じることや、遊技盤2の寸法誤差が生じることで、遊技盤面2a(特に、障害釘200)とスキャナー部210との距離が不均一になりやすい。そこで、例えば図8(B)に示すような1対の上止めクランプ260が設けられてもよい。この場合、上止めクランプ260は、回動可能に構成されたアーム部260Aと、該アーム部260Aが軸着されて回動支点になるとともに昇降不可として出荷前釘検査用装置21の本体などに固着されたベース部260Bとを有していればよい。加えて、出荷前釘検査用装置21には、シリンダなどを用いた昇降機構270を設け、該昇降機構270によりテーブル220と該テーブル220に載置された遊技盤2とを下方から上止めクランプ260の保持面に押し当てる。このとき、上止めクランプ260の保持面は上下動しないので、遊技盤2の前面が基準(前面基準)となり、テーブル220に載置された遊技盤2を保持して固定できる。このように前面基準とすることで、遊技盤面2a(特に、障害釘200)とスキャナー部210との距離が均一になりやすく、スキャナー部210の焦点位置(詳細は後述)を設定しやすくすることで、障害釘200の頭部200bを撮像するときの誤差を低減して、鮮明な画像データを生成することができる。出荷前釘検査用装置21では、各障害釘200に対する出荷前釘測定に適した位置に昇降クランプ250または上止めクランプ260などが配置され、予め用意されたクランプ制御パターンにより遊技盤2を保持して固定する制御(保持制御)が行われるようにすればよい。
【0066】
図9に示すように、スキャナー部210は、光源となる4つの発光部材LS1~LS4と、発光部材LS1~LS4からの光であって、遊技盤面2a(特に障害釘200)により反射された反射光などを導くミラー部211と、ミラー部211から導かれた反射光などを集光するレンズ部212と、レンズ部212により集光された反射光などを受光することで、遊技盤面2aを撮像する撮像部213と、を主に有する。スキャナー部210は、テーブル220との間に所定の間隔をおいて平行に固定配置されるガイドレールに取り付けられ、モータの駆動力などにより、往復移動が可能であればよい。ミラー部211やレンズ部212及び撮像部213から構成される読取光学系は、遊技盤面2aに設けられた障害釘200(ここでは、一般釘)の頭部200bが形成する釘傘の外径が最大となる箇所の中心位置を通るスキャナー基準面210aが焦点位置となるように調整されている。撮像部213が撮像して得られる撮像画像では、被写界深度により、各障害釘200の頭部200b全体に、ピントがあっているように写る。なお、頭部200bにピントが合えば、焦点位置は他の位置としてもよい。
【0067】
複数の発光部材LS1~LS4は、被写体となる障害釘200などが設けられた遊技盤面2aに走査光(照射光)となる光を照射する複数の直管状光源であればよい。図9に示す構成例においては、複数の発光部材LS1~LS4のうちで、第1発光ユニットを構成する発光部材LS1、LS2が反射光の光路を挟んだ一方側(図9における紙面上の左側)に配置され、第2発光ユニットを構成する発光部材LS3、LS4が反射光の光路を挟んだ他方側(図9における紙面上の右側)に配置されている。このような配置により、複数の発光部材LS1~LS4は、複数の方向から障害釘200の頭部200bに対して走査光(照射光)となる光を照射することができる。
【0068】
撮像部213は、例えばCCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を用いたラインカメラ(ラインセンサカメラ、ラインスキャナ等とも呼ばれる)を用いて構成されていればよい。尚、撮像部213は、CIS(Contact Image Sensor)を用いた密着イメージセンサを用いて構成されてもよい。前記の密着イメージセンサの場合には、前記のラインカメラの場合と比べて、内部構造を簡素化でき、消費電力を低減することもできる。その一方で、前記の密着イメージセンサの場合には、前記のラインカメラの場合と比べて、焦点深度が浅く、画像データの精度が低下しやすくなり、また、製造コストが増大するおそれもある。これに対し、前記のラインカメラの場合には、焦点調整が容易になり、画像データの精度を向上させやすくなり、また、製造コストを抑制することもできる。ここでは、撮像部213として、CCDを用いたラインカメラを採用している。
【0069】
上記のほか、スキャナー部210における読取光学系は、複数の光源となる発光部材から障害釘200の頭部200b等に照射された光の反射光を受光可能な任意の構成を有していればよい。例えばスキャナー部210の配置や形状にあわせて、複数のミラー部211を有する構成としてもよい。遊技盤面2aに対して直交する方向となる光路から反射光を導く構成に限定されず、遊技盤面2aに対して、複数の光源となる発光部材からの照射光路とは異なる所定角度を有する斜め方向となる光路から反射光を導いて撮像可能な構成であってもよい。
【0070】
スキャナー部210は、図7に実線矢印で示すスキャン方向に搬送され、これに伴い発光部材LS1~LS4から、障害釘200が設けられた遊技盤面2aに照射した光の反射光を撮像部213で受光する。撮像部213は、前記反射光を受光することで遊技盤面2a(特に、障害釘200)を撮像する(画像データを生成する)。なお、スキャナー部210は、ラインカメラにより撮像を行うので、遊技盤面2aを線状の領域に区切って複数回撮像する。出荷前釘検査用装置21では、遊技盤2を保持して固定した状態で、スキャナー部210をスキャン方向に移動させる搬送制御が行われるようにすればよい。スキャナー部210を図7に示すスキャン方向に移動させながら撮像動作を行わせることで、スキャナー部210は、遊技盤面2aの全体を撮像する。このときには、遊技盤2を固定する保持制御が行われることにより、各障害釘200の頭部200bの状態を精度良く検査できる(遊技盤2の位置ずれにより撮像画像が歪んでしまうことなどを防止できるため)。出荷前釘検査用装置21は、複数のカメラを設ける必要がないので、装置構成を簡素化して、製造コストを抑制することができ、また、画像データの補正処理などによる処理負担を軽減することもできる。
【0071】
尚、スキャナー部210を固定する保持制御を行い、遊技盤2を所定方向に移動させる搬送制御を行うようにしてもよい。ただし、搬送装置13などにより遊技盤2を搬送させながら撮影を行う場合には、搬送中の振動などにより位置決めが困難になるおそれがある。これに対し、スキャナー部210をスキャン方向に移動させる搬送制御を行い、図8(A)に示すような昇降クランプ250、または図8(B)に示すような上止めクランプ260などを用いて、遊技盤2を固定する保持制御を行うことで、出荷前釘検査用装置21は、各障害釘200を精度良く検査できる(遊技盤2の位置ずれにより撮像画像が歪んでしまうことなどを防止できるため)。出荷前釘検査用装置21の設置位置を、搬送される遊技盤2が通過する位置に設定し、この設置位置に遊技盤2が搬送されると、遊技盤2の搬送を停止し、昇降クランプ250または上止めクランプ260などを用いて遊技盤2を固定し、スキャナー部210の搬送制御(出荷前釘検査)を行うようにしてもよい。
【0072】
(出荷前釘検査の概略)
図6の出荷前釘検査(ステップS12)では、管理コンピュータ500(CPU502)が予め用意されたプログラム(記憶装置505に記憶されている。)を実行することにより、出荷前釘検査用装置21を制御する。出荷前釘検査用装置21は、管理コンピュータ500の制御のもとで動作する。具体的に、スキャナー部210は、図7に示すスキャン方向に移動しながら撮像動作(発光部材LS1~LS4から、障害釘200が設けられた遊技盤面2aに照射した光の反射光の受光)を順次行い、これにより、遊技盤面2aを線状の領域ごとに撮像した撮像画像の画像データを順次生成して管理コンピュータ500に供給する(このような動作を、遊技盤面2a(障害釘200等を含む)を「スキャンする」ともいう。)。管理コンピュータ500は、順次供給される画像データを組み合わせ、遊技盤面2a全体の画像データを生成する。管理コンピュータ500は、当該画像データに基づいて、画像処理により各障害釘200の状態を検査する。当該検査では、各障害釘200の頭部200bをパターンマッチングにより検出し、当該検出した各頭部200bの位置と、予め用意された各障害釘200の頭部200bの設定位置と、の比較により、各障害釘200の傾斜が適切かを判定する。前記のパターンマッチングのため、障害釘200の頭部200bそれぞれについて、パターンマッチングに使用されるテンプレート画像(図21等)が登録され、また、各障害釘200の頭部200bそれぞれについて、パターンマッチングを行うマッチング領域(図12等)が設定されている。そこで、出荷前釘検査の詳細を説明する前に、マッチング領域を設定するための処理(マッチング領域設定処理)と、テンプレート画像を登録するための処理(マスターデータ登録処理)とを説明する。これら処理は、適宜のタイミングで実行される。
【0073】
(マッチング領域設定処理)
管理コンピュータ500(CPU502)は、予め用意されたプログラム(記憶装置505に記憶されている。)を実行することにより、例えば、図10に示すマッチング領域設定処理を実行する。
【0074】
なお、管理コンピュータ500は、記憶装置505に、遊技盤2の設計データを記憶している。当該設計データは、遊技盤2の遊技盤面2aに下穴を加工する作業を行うときなどに使用されるデータであり、障害釘200を設ける釘穴位置(遊技盤面2aに設けられる孔部2dの設計位置であって、当該孔部2dの開口H(図3参照)の中心位置)をXY座標により特定するデータである。当該設計データは、例えば公知のフォーマットのデータであればよく、ZAXデータ等と呼ばれるデータを採用することができる。前記のXY座標は、遊技盤面2a(盤面)に沿った方向、つまり、上下左右方向に設定された座標系であって、左下を原点(中心座標(0,0))とし、上方向を+Y方向、右方向を+X方向とする座標系とする。さらに、X座標の値、Y座標の値は、実際のスケールの長さ(単位はmm)と同じであるものとする(例えば、(1,1)の座標は、原点から+X方向(右方向)に1mm、+Y方向(上方向)に1mmずれた位置とする)。なお、左上を原点とし、下方向を+Y方向、右方向を+X方向としてもよい。X座標の値、Y座標の値は、実際のスケールの長さ(単位はmm)と同じでなくてもよく、その場合は、以下の処理において、実際のスケールの長さを座標の値に適宜変換する(その逆変換も適宜行う)。
【0075】
マッチング領域設定処理において、管理コンピュータ500は、前記設計データから、当該設計データが特定する、障害釘200それぞれの釘穴位置(XY座標)を抽出する(ステップS21)。
【0076】
その後、管理コンピュータ500は、前記で抽出した各障害釘200の釘穴位置と各障害釘200の傾斜とに基づいて、各障害釘200の頭部200bの設定位置を特定する(ステップS22)。設定位置は、障害釘200の傾斜が適切のときの頭部200bの位置として設定される位置であり、XY座標により表される。設定位置は、頭部200bが形成する釘傘の外径が最大となる箇所の中心位置(胴部200aの先端の中心位置)である。設定位置は、障害釘200が傾斜しているため、障害釘200の釘穴位置に対してずれる。当該ずれは、障害釘200の傾斜に依存する。例えば、X座標は、長さL1×sinθ1×sinθ2(式1)で求まる値Mだけずれる。また、Y座標は、長さL1×sinθ1×cosθ2で求まる値Nだけずれる。ここで、L1は、遊技盤面2aの孔部2dの開口Hから頭部200bの末端(胴部200aと頭部200bとの境界部分)までの長さである(図3参照)。θ1は、その障害釘200の、遊技盤面2aの垂線であるZ軸に対する傾斜角(4度等)である(図3参照)。θ2は、その障害釘200の傾斜方向の角度であり、12時を0度、3時を90度、6時を180度、9時を270度とした角度(1時間は30度)である(図3参照)。各障害釘200の傾斜(方向及び角度)は、設計データ又は他のデータにより指定されている。
【0077】
ステップS22において、管理コンピュータ500は、障害釘200それぞれについて、上記式1及び式2それぞれから値M及び値Nを計算し、釘穴位置のX座標に値Mを加算し、釘穴位置のY座標に値Nを加算し、頭部200bのXY座標を計算する(これにより、頭部200bの設定位置が特定される)。なお、値M及び値Nは、前記の設計データにおいて指定されてもよい。また、障害釘200の頭部200bのXY座標(設定位置)自体が、前記の設計データにおいて特定されていてもよい。この場合、ステップS21は不要である。
【0078】
その後、管理コンピュータ500は、各障害釘200について、上記で特定した頭部200bの設定位置を中心とする所定の大きさの領域(例えば、一辺が、頭部200bが形成する釘傘の最大外径の2倍の長さを有する正方形領域)をマッチング領域として特定し、当該マッチング領域を、釘穴位置、頭部200bの設定位置とともに、障害釘200ごとに記憶装置505に用意されたマッチング領域データベースに登録する(ステップS23)。
【0079】
図11にマッチング領域データベースの内容例を示す。マッチング領域データベースには、障害釘200それぞれに付した釘番号に対応付けられて、釘穴位置、頭部の設定位置、マッチング領域、傾斜(方向及び角度)の各情報が格納されている。釘番号は、頭部の設定位置に基づき、所定のアルゴリズムで自動で付されてもよいし(例えば、XY座標において左上から右下に向けて順次番号を振っていくなど)、作業者により入力装置506を介して手入力されてもよい。また、前記の設計データが釘番号も特定している場合には、その釘番号を使用してもよい。図11中、釘番号1~3の障害釘200は、一般釘であり、12時方向に4度傾斜しているため、頭部の設定位置は、釘穴位置からY方向(上下方向)にずれ、X方向にはずれない。釘番号S1~S2の障害釘200は、指定釘204又は206であり、1時又は11時方向に4度傾斜しているため、頭部の設定位置は、釘穴位置からY方向及びX方向にずれる。マッチング領域は、X座標の値の範囲及びY座標の値の範囲により規定されている。
【0080】
図12に示すように、マッチング領域Pは、一般釘の頭部200bを中心として配置され、マッチング領域Pの中心は、開口Hの中心からずれている。マッチング領域Pは、図12に示すように、一つの頭部200b(検出対象の頭部200b)を含むが、他の頭部200b(特に、隣の障害釘200の頭部200b)全てが入らない大きさに設定されているとよい。
【0081】
(マスターデータ登録処理)
図13にマスターデータ登録処理のフローを示す。管理コンピュータ500(CPU502)は、予め用意されたプログラム(記憶装置505に記憶されている。)を実行することにより、下記の動作を行う。また、出荷前釘検査用装置21は、管理コンピュータ500による制御又は出荷前釘検査用装置21への操作に基づいて下記の動作を行う。
【0082】
出荷前釘検査用装置21は、マスター盤となる遊技盤2の遊技盤面2a(障害釘等が設けられた遊技盤面2a)をスキャン(スキャナー部210によるスキャン)する(ステップS41)。マスター盤は、各障害釘200が、遊技盤面2aにおいて、すべて正しく傾斜している遊技盤2であり、パチンコ遊技機1の製造に関わる作業員等により選定される。管理コンピュータ500は、前記のスキャン(読み取り)により出荷前釘検査用装置21のスキャナー部210から順次供給される画像データ(障害釘200が設けられた遊技盤面2aを線状領域に分けて撮像した撮像画像の画像データ)を組み合わせ、障害釘200が設けられた遊技盤面2a全体が写った全体画像の画像データを生成する(ステップS42)。なお、画像データ(全体画像)には、上記マッチング領域データベース、設計データ等におけるXY座標と同スケールのXY座標が設定されているものとする(同スケールとするため、例えば、マッチング領域設定処理の前段階から設計データの座標を補正したり、全体画像の一部(遊技盤面2aが写っていない領域)を削除、画像を拡大、又は縮小したりしてもよい。)。
【0083】
その後、画像処理範囲を設定する(ステップS43)。具体的には、マッチング領域データベースに格納されている各マッチング領域(X座標の値の範囲及びY座標の値の範囲)を読み出し、ステップS42で生成した画像データが表す全体画像(以下、原画像ともいう。)における各マッチング領域の範囲を画像処理範囲として設定する。画像処理範囲は、障害釘200毎に設定される。以下の画像処理は、当該画像処理範囲のみを対象として行われる(これにより、原画像全体を対象にして画像処理を行うよりも、処理負担が軽減される)。この一例として、原画像から各画像処理範囲を切り出し(但し、座標情報は保持したままとする。)、以下の画像処理を行うようにしてもよい。
【0084】
管理コンピュータ500(CPU502)は、ステップS43で設定した各画像処理範囲内の画像を、モノクロ画像に変換する(ステップS44)。尚、前記画像データがモノクロ画像を示す場合には、さらにモノクロ画像に変換する必要はない。原画像又はモノクロ画像において、障害釘200の頭部200bに対応するエッジ部分が不明確である場合には、エッジ強調やコントラスト強調等の画像処理が行われてもよい。当該画像処理も、各画像処理範囲内にて行うとよい。
【0085】
その後、各画像処理範囲内にてエッジ検出による円探索を行う(ステップS47)。エッジ検出では、例えばソーベルフィルタ、プレヴィットフィルタ、ラプラシアンフィルタのいずれかなど、任意のエッジ検出フィルタを用いて、エッジパターン画像が生成されるようにすればよい。このようなエッジパターン画像において、障害釘200の頭部200bにおける輪郭(形状)との類似度が所定範囲内となるエッジ部分を抽出することにより、図14(A)に示すような円形部分SC1を特定すればよい(図14の各画像は、画像が分かりやすいよう、グレースケールの画像となっている。図14(B)~(D)については、後述する。)。尚、エッジ検出における閾値や輪郭判定における閾値といった、画像判定処理により円形部分SC1を特定するために用いられる閾値の一部または全部は、画像処理範囲に応じて、異なる値が設定されてもよい。障害釘200が設けられた遊技盤面2aは、場所に応じた色変化があり、盤面全体で単一の閾値を用いた場合には、画像処理範囲の位置によりエッジ検出や輪郭判定が困難になり、円形部分SC1の特定が不可能になることがある。そこで、複数の画像処理範囲に対して、障害釘200が設けられた遊技盤面2aの盤面上における各画像処理範囲の位置すなわち障害釘200の設置位置などに応じて、異なる閾値を設定可能とすることで、円形部分SC1が特定されやすくしてもよい。障害釘200の頭部200bに対応する画像ヒストグラムと、画像処理範囲に応じた画像ヒストグラムとを用いて、異なる閾値を設定可能としてもよい。このような閾値の設定により、円形部分SC1の有無や位置を、より正確に特定して、障害釘200の検査精度を向上させることができる。
【0086】
その後、管理コンピュータ500は、原画像を表示装置507に表示するとともに、当該原画像に、ステップS47での円探索にて特定された各円形部分SC1の輪郭を示す輪郭円C1を重畳表示し(ステップS48)、当該輪郭円C1の位置の補正操作を受け付ける(ステップS49)。その表示画面を図15に示す。図15では、原画像が拡大表示され、輪郭円C1が重畳表示されている。また、「表示箇所移動」の欄にボタン画像SB1(上下左右を選択するボタンの画像)が表示され、その下に「拡大」のボタン画像SB2、「縮小」のボタン画像SB3、「登録」のボタン画像SB4、ポインタPT等が表示されている。入力装置506のマウス等により、ポインタPTを動かし、ボタン画像SB1の上下左右のボタンのいずれかを選択(クリック等)すると、選択されたボタンに応じた方向に原画像の表示位置をスクロール等により移動させる(原画像とともに輪郭円C1も移動する)。また、ボタン画像SB2を選択すると、原画像及び輪郭円C1が拡大表示される。ボタン画像SB3を選択すると、原画像及び輪郭円C1が縮小表示される。作業者は、前記の操作を行いながら、目視により、輪郭円C1が障害釘200の頭部200bの輪郭と重なる位置に配置されているかを、各障害釘について確認し、輪郭円C1が正しい位置(頭部200bの輪郭と重なる位置)からずれている場合、輪郭円C1をマウスによりドラッグして正しい位置に移動させる。すべての障害釘200に関する輪郭円C1が正しい位置にある場合、作業者は、入力装置506のマウス等により、ポインタPTを動かしてボタン画像SB4を選択する。なお、作業者の操作により、輪郭円C1の大きさを変更可能なようにしてもよい。
【0087】
ボタン画像SB4(登録)が選択された場合、各輪郭円C1(正しい位置に配置されている)の上端、下端、左端、右端それぞれを通る接線により囲まれた四角領域をパターンマッチングのテンプレート画像として原画像から切り出す(ステップS50)。切り出された画像のうちの1つを図16に示す。なお、当該画像の左上部分、右上部分、左下部分、右下部分(輪郭円C1の外側部分)を透明化してもよい(パターンマッチングの際の処理負担軽減のため)。また、ステップS51では、原画像における各テンプレート画像の位置(輪郭円C1の中心位置(XY座標))も求めておく。当該位置は、輪郭円C1のうちで、互いに最も離れた2点を抽出する2点抽出を行い、抽出した2点の中点を、原画像におけるテンプレート画像の位置(輪郭円C1の中心位置)として取得する。尚、2点抽出に限定されず、3点抽出あるいはハフ変換などの任意の方法により、前記位置を取得してもよい。
【0088】
その後、切り出したテンプレート画像を検査条件(マッチング領域、頭部200bの設定位置、許容距離)などとともに、マスターデータとして、記憶装置505に格納する(ステップS51)。
【0089】
図17にマスターデータの内容例を示す。マスターデータには、障害釘200それぞれに付した釘番号に対応付けられて、テンプレート画像、検査条件、傾斜(方向及び角度)の各情報が格納されている。釘番号は、同じ位置の障害釘200についてマッチング領域データベースの釘番号と同じ番号が振られるよう、各テンプレート画像の位置(頭部200bの設定位置に対応)に基づきマッチング領域データベースと同様のアルゴリズムで自動で付されてもよいし(例えば、原画像において左上から右下に向けて順次番号を振っていくなど)、作業者により入力装置506を介して手入力されてもよい。また、上記画像処理範囲を設定する場合には、釘番号ごとに画像処理範囲を設定して、当該釘番号ごとにテンプレート画像等を格納していってもよい。検査条件は、マッチング領域、頭部200bの設定位置、許容距離を含む。このうち、マッチング領域、頭部200bの設定位置は、マッチング領域データベースの、同じ釘番号に対応するマッチング領域、頭部200bの設定位置が割り当てられる。また、許容距離は、出荷前釘検査において検出した、検査対象の障害釘200の頭部200bの位置と、頭部200bの設定位置との間の距離(正常な位置に対するズレ)として許容できる範囲の距離である。許容距離は、予め設定されているか、作業者により手入力される。なお、頭部200bの設定位置は、原画像におけるテンプレート画像の位置に置き換えてもよい。傾斜(傾斜方向及び傾斜角度)は、設計データ等から取得される。
【0090】
なお、ステップS48等では、輪郭円C1を個々に切り替え表示していき、各輪郭円C1を正しい位置に移動させることができるようにしてもよい。また、ステップS43~S48を省略し、原画像を表示装置507に表示し、すべての障害釘200について手作業で輪郭円C1を設定してもよい。
【0091】
なお、ステップS43を実行せずに、ステップS44を実行してもよい。この場合、ステップS44では、原画像全体に対して画像処理を行い、モノクロ画像への変換を行う。その後、テンプレート画像(参照テンプレート)を用いたパターンマッチングにより、障害釘200の頭部200bにおける反射光による明度の高い領域、ここでは、図14(B)の画像における唇形状の白色部分R1を、特徴画像として抽出する。特徴画像を抽出するために用いられる参照テンプレートは、障害釘200の頭部200bにおける適切な反射光の領域を示す基準画像として、予め用意されていればよい。特徴画像は、基本的には、すべての障害釘200について抽出される。前記のパターンマッチングは、マッチング領域データベースで登録されたマッチング領域内にて行われてもよい。これにより、画像全体に対してパターンマッチングするよりも処理負担を軽減できる。
【0092】
次に、特徴画像として抽出した白色部分R1の中心を特定する。例えば図14(C)に示すように、白色部分R1と高さ及び幅が等しい長方形区画S1を設定し、縦方向(上下方向)と横方向(左右方向)でそれぞれ半分に分割(2分割)することで、白色部分R1における中心点を特定すればよい。尚、長方形区画S1を縦方向と横方向でそれぞれ半分に分割(2分割)することで中心点を特定するものに限定されず、例えば長方形区画S1における対角線の交点を中心点として特定するものであってもよい。
【0093】
その後、ステップS47のエッジ検出による円探索を行う円探索範囲を設定する(以下、ステップS47以降の処理を行う)。例えば図14(D)に示すように、図14(C)に示した長方形区画S1を縦方向(上下方向)と横方向(左右方向)でそれぞれ2倍拡大した長方形区画S2(中心は、前記で特定した白色部分R1の中心)を指定し、該長方形区画S2を円探索範囲として設定すればよい。尚、円探索範囲は、長方形区画S1を縦方向と横方向にそれぞれ2倍拡大した長方形区画S2に限定されず、例えば前記で特定された抽出領域の中心に対し、障害釘200の頭部200bを縦方向(上下方向)と横方向(左右方向)にそれぞれ2つずつ並べた長さ(Sφ2×2=8.4mm)を一辺とする正方形区画を、円探索範囲として設定してもよい。その他、前記で特定された抽出領域の中心に対し、所定距離の範囲内を円探索範囲に設定するものであればよい。
【0094】
(光源について)
図18(A)~(D)は、光源と撮影機材に応じた撮影画像とエッジ検出結果の比較例を示している。図18(A)は、通常の室内照明を光源とし、一眼カメラを撮影機材とした場合であり、図18(B)は、蛍光灯1本を光源とし、スキャナー(ラインセンサカメラ)を撮影機材とした場合であり、図18(C)は、蛍光灯2本を光源とし、スキャナーを撮影機材とした場合であり、図18(D)は、LED照明を光源とし、スキャナーを撮影機材とした場合である。図18(C)に示すように、蛍光灯2本の場合には、他の場合と比較して、障害釘200の頭部200bの明領域(図14(C)に示す、白色部分R1。以下、特徴画像という。)の縦方向(上下方向)と横方向(左右方向)の対称性が高くなっており、均一な明領域を含む撮影画像が得られる。また、障害釘200の頭部200bにおけるエッジ付近が明確になり、遊技盤面2aの色彩や模様との同化が生じにくくなる。これにより、円探索を行うときに、障害釘200の頭部200bに対応する円の検出率や検出精度を向上させることができる。尚、LED照明として、拡散板などを用いた蛍光灯型の照明を使用することで、図18(C)に示すような蛍光灯2本を光源とした場合と同様の撮影画像が得られるものとしてもよい。また、導光板などを用いた面発光型のLED照明を使用することで、図18(D)に示した場合とは異なる均一な反射光領域を含む撮影画像が得られるものとしてもよい。LED照明を用いた場合には、蛍光灯を用いた場合に比べて、装置の初期製造コストが増大するのに対し、寿命による輝度低下を抑制でき安定した測定が可能になる。また寿命が長いこともあり照明の交換頻度を低減する事が出来る。さらに、LED照明の場合には、消費電力を抑制したりすることができる。装置の製造コストや撮影画像の品質などを勘案して、どのような光源を採用するかの選定が行われるようにすればよい。
【0095】
図18(E)は、図18(C)に示すような蛍光灯2本の場合の特徴画像を示している。図18(E)に示す場合の特徴画像は、2本の蛍光灯のうちで、第1蛍光灯の方向から照射される光による反射光を撮像することで得られる第1特徴画像エリアRA1と、第2蛍光灯の方向から照射される光による反射光を撮像することで得られる第2特徴画像エリアRA2と、を含んでいる。このように、蛍光灯2本の場合における特徴画像は、第1蛍光灯による第1特徴画像エリアRA1及び第2蛍光灯による第2特徴画像エリアRA2といった、反射光の組合せを含む画像を構成する。スキャナー部210が備える複数の発光部材LS1~LS4のうちで、発光部材LS1、LS2は、図18(E)に示す第1特徴画像エリアRA1に対応する第1蛍光灯と等価の第1発光ユニットを構成し、発光部材LS3、LS4は、図18(E)に示す第2特徴画像エリアRA2に対応する第2蛍光灯と等価の第2発光ユニットを構成すればよい。これにより、複数の発光部材LS1~LS4から照射される光による反射光を受光することで得られる特徴画像は、第1発光ユニットによる第1特徴画像エリアRA1及び第2発光ユニットによる第2特徴画像エリアRA2といった、反射光の組合せを含む画像を構成する。
【0096】
(出荷前釘検査)
図19に出荷前釘検査のフローを示す。管理コンピュータ500(CPU502)は、予め用意されたプログラム(記憶装置505に記憶されている。)を実行することにより、下記の動作を行う。また、出荷前釘検査用装置21は、管理コンピュータ500による制御又は出荷前釘検査用装置21への操作に基づいて下記の動作を行う。
【0097】
出荷前釘検査用装置21は、検査対象となる遊技盤2の遊技盤面2a(障害釘200が設けられた遊技盤面2a)をスキャン(スキャナー部210によるスキャン)する(ステップS101)。管理コンピュータ500は、前記のスキャン(読み取り)により出荷前釘検査用装置21のスキャナー部210から順次供給される画像データ(障害釘200が設けられた遊技盤面2aを線状領域に分けて撮像した撮像画像の画像データ)を組み合わせ、障害釘200が設けられた遊技盤面2aが写った全体画像の画像データを生成する(ステップS102)。なお、画像データ(全体画像)には、上記マッチング領域データベース、マスターデータ、設計データ等におけるXY座標と同スケールのXY座標が設定されているものとする(同スケールとするため、例えば、マッチング領域設定処理の前段階から設計データの座標を補正したり、全体画像の一部(遊技盤面2aが写っていない領域)を削除、画像を拡大、又は縮小したりしてもよい。)。
【0098】
管理コンピュータ500(CPU502)は、マスターデータから、釘番号「1」に対応するテンプレート画像P1及びマッチング領域(X(X11~X12)、Y(Y11~Y12))を読み出し、ステップS102で生成した画像データが表す全体画像における前記マッチング領域内で、前記テンプレート画像に基づくパターンマッチングを行い、釘番号「1」の障害釘200の頭部200bの位置(XY座標)を特定する。例えば、正規化相互相関によるパターンマッチングを行い、相関が最も高くなるテンプレート画像の位置(中心位置)を頭部200bの位置(頭部200bが形成する釘傘の外径が最大となる箇所の中心位置(胴部200aの先端の中心位置))として特定する(位置の特定により、頭部200bが検出されたことにもなる)。管理コンピュータ500(CPU502)は、他の釘番号についても、マスターデータに含まれるテンプレート画像及びマッチング領域を用いてパターンマッチングを行い、頭部200bの位置を特定する。このようにして、各釘番号(各障害釘200)について、マスターデータに含まれるテンプレート画像及びマッチング領域を用いてパターンマッチングをすることで、各障害釘200の頭部200bの位置を検出する(ステップS103)。なお、パターンマッチングでは、テンプレート画像及び全体画像をモノクロ化してもよい。全体画像については、上記マッチング領域それぞれのみ、モノクロ化してもよい(処理時間を低減できる)(例えば、マスターデータの登録時と同様に、マッチング領域を全体画像から切り出して(座標は維持する)、モノクロ化、パターンマッチングを行ってもよい)。また、テンプレート画像については、マスターデータ登録時に、モノクロ化してもよい(マスターデータのデータ量を削減できる)。また、1つ以上のマッチング領域で、頭部200bが検出されない場合(相関の最大値が所定の閾値を超えない場合など)、管理コンピュータ500は、表示装置507にエラーの旨を表示するなどのエラー報知を行うようにしてもよい。
【0099】
その後、前記で検出した頭部200bの位置と、マスターデータに含まれる頭部200bの設定位置とのずれ量を、釘番号ごとに、X座標、Y座標別々に計算する(ステップS104)。X座標のずれ量は、設定位置のX座標値から頭部の位置のX座標値を減じて算出される。Y座標のずれ量は、設定位置のY座標値から頭部の位置のY座標値を減じて算出される。
【0100】
前記で検出した頭部200bの各位置は、遊技盤2の位置ずれや回転により、各設定位置に対して全体的に所定方向にずれる場合(所定方向に偏る場合)がある。従って、各頭部200bのずれ量は、頭部200bの位置の偏りを含む場合がある。この実施例では、ずれ量を全体で平均化し、平均値により、前記で検出した頭部200bの各位置のXY座標を補正する(ステップS105)。具体的に、X座標について、ずれ量を合算し、合算した値を障害釘200の総数で割り、得られた値(ずれ量の平均値)を、頭部200bの各位置のX座標値から減じる補正を行う。Y座標についても、ずれ量を合算し、合算した値を障害釘200の数で割り、得られた値(ずれ量の平均値)を、頭部200bの各位置のY座標値から減じる補正を行う。このような補正により、各頭部200bの位置の全体的な偏りを無効化でき、障害釘200の検査の精度を向上させることができる。
【0101】
その後、前記で補正した頭部200bの位置と、マスターデータに含まれる頭部200bの設定位置とのずれ量を、釘番号ごとに、X座標、Y座標別々に計算する(ステップS106)(詳細は、ステップS104と同様)。
【0102】
その後、ずれ量を、遊技盤2のエリアごとに平均化し、当該エリアごとの平均値により、前記で補正した頭部200bの各位置のXY座標を補正(面積平均化)する(ステップS107)。この実施例では、前記のエリアとして、図20に示すようなエリアAからDが設定されている。また、記憶部505には、図21に示すようなエリア設定データが用意されている。エリア設定データは、各釘番号にエリアAからDのいずれかが割り当てられている。エリア設定データは、作業者等により予め登録される。エリア設定データはマスターデータに含まれてもよい。前記の補正は、ステップS106と同様にX座標及びY座標ごとに行う。X座標について、管理コンピュータ500は、エリア設定データを参照し、同じエリアが割り当てられた各釘番号に対応するずれ量を合算し、合算した値を当該エリアが割り当てられた障害釘200の数で割り、得られた値(ずれ量の平均値)を、頭部200bの各位置のX座標値から減じる補正を行う。Y座標についても同様に、管理コンピュータ500は、エリア設定データを参照し、同じエリアが割り当てられた各釘番号に対応するずれ量(Y座標)を合算し、合算した値を当該エリアが割り当てられた障害釘200の数で割り、得られた値(ずれ量の平均値)を、頭部200bの各位置のY座標値から減じる補正を行う。
【0103】
遊技盤2は、1枚のベニヤ合板または、アクリル板等から形成されるが、役物等の設置、演出表示装置5のための開口2Cが広くなり障害釘200を設ける部分が細くなってしまうなどの理由により遊技盤面2aが歪み(組み付け反り、設置反り、たわみ)、障害釘200のZ軸方向における位置(スキャナー部210までの距離)が、遊技盤2の場所によって異なってしまうことがある(個々の遊技盤2同士でも異なることがある)。障害釘200(特に、ラインセンサの画角の外寄りに位置する障害釘200)のZ軸方向における位置(撮像部213までの距離)が変化すると、全体画像における頭部200bの位置も変化してしまう場合がある。例えば、図22に示すように、障害釘200が本来の位置(設計上の位置)よりも下方に長さhだけ下がってしまっている場合、当該障害釘200が遊技盤面2aに対して設計通りに傾斜していたとしても、全体画像において、頭部200bが本来写るべき位置よりも長さpだけ内側に写ってしまう(p=tanθ×h)。遊技盤面2aの歪みによる障害釘200の位置(スキャナー部210までの距離)の変化は、遊技盤面2aの一部の領域ごとに発生することが考えられる。従って、一部の領域内の各障害釘200の各頭部200bの位置は、各頭部200bの設定位置に対して全体的に所定方向にずれる場合がある(所定方向に偏る場合がある)。この実施例では、このような点に鑑みて、上記のように、エリアごとにずれ量(前記偏りを含む場合がある)を平均化し、平均化した平均値により、エリアごとに頭部200bの位置を補正するので、前記の歪みより頭部200bの設定位置に対する偏りを無効化でき、釘の検査の精度を向上させることができる。例えば、通常、あるエリアの障害釘200の頭部200bのずれ量は、正常な障害釘200が多いため、0付近に集中するはずである。しかし、あるエリアの障害釘200のZ軸方向における位置(撮像部213までの距離)が、遊技盤面2aの歪み等により、本来(歪み無しの設計データ)とは異なってしまっている場合、図23(A)のように、ずれ量が全体的に多めになってしまう。上記補正(面積平均化)により、前記歪等による位置ずれ(頭部200dの位置の偏り)を無効化できるので、図23(B)に示すように、ずれ量を全体的に減少させることができる。このため、釘の状態の検査の精度がよくなる。本実施例のような完成後の遊技盤2は、上記のように所定の部品が取り付けられたことなどによって歪み等が生じやすい。このような場合について、前記の面積平均化を実行することで、釘の状態の検査の精度がよくなる。
【0104】
ステップS107で補正した後の頭部200bの位置と、マスターデータに含まれ頭部200bの設定位置との距離を、釘番号(障害釘200)ごとに計算する(ステップS108)。その後、各釘番号ごとに、計算した距離と、マスターデータに含まれる許容距離と、を比較し、比較結果を釘番号ごとに記憶部505に格納する(ステップS109)。計算した距離が、許容距離以下であれば、その障害釘200の傾斜は許容範囲内である、つまり正常であるので、当該障害釘200の釘番号に対応付けて比較結果「OK」を記憶部505に格納する。計算した距離が、許容距離よりも長ければで、その障害釘200の傾斜は許容できない、つまり異常であるので、当該障害釘200の釘番号に対応付けて比較結果「NG」を記憶部505に格納する。こうして格納された比較結果の例を図24に示す。なお、比較結果をマスターデータに含ませてもよい。
【0105】
その後、比較結果に「NG」が含まれるかを判定し(ステップS110)、「NG」が含まれない場合(ステップS110;No)、その遊技盤2は、正常なので、管理コンピュータ500は、その遊技盤2について、出荷用設定(ステップS111)を行う(例えば、出荷していい旨を表示する、障害釘200の傾斜が正常なので釘間測定書を出力する等)。「NG」が含まれる場合(ステップS110;Yes)、管理コンピュータ500は、その遊技盤2について、再整備用設定(ステップS112)を行う(例えば、再整備が必要な旨を表示する、NGの釘(傾斜(傾斜方向及び又は傾斜角度)が許容範囲内にない釘)に対して第1整備(NGの釘が一般釘の場合)や第2整備(NGの釘が指定釘の場合)を行うよう指示する等)。このとき、管理コンピュータ500は、NGの釘番号ないし釘穴位置等を表示するようにしてもよい。
【0106】
(本実施例による主な効果等)
本実施例では、障害釘200の頭部200bを検出する際にパターンマッチングを用いるが、1つの頭部200bに対して当該パターンマッチング(障害釘200の検査)を行う領域をマッチング領域に限定しているため、各頭部200bの検出速度が速く、処理負担が軽減されている。従って、各障害釘200の検査時間が短い。マッチング領域を、頭部200bが形成する釘傘の最大外径の2倍の長さを有する正方形領域程度の大きさにすることで、マッチング領域の合計面積を、出荷前釘検査で得られる全体画像の面積よりも格段に小さくすることができ、その結果、全体画像の全体に対してパターンマッチングを行うよりも、頭部200bの検出時間や障害釘200の検査時間を飛躍的に短くできる(結果的にパチンコ遊技機1の製造時間も短くなる)。例えば、全体画像(遊技盤2が写っていない余白領域を含む)のサイズを、490×570mmとし、画像解像度を400DPIとし、1Pixel=0.0635mmとすると、全体画像のサイズ(画素数)は、7716×8976=約69258816Pixelとなる。また、マッチング領域のサイズとして、一辺が概ね8.4mm(頭部200bの直径4.2mmの2倍)となる129×129Pixelを採用し、検査対象の障害釘200を400本と仮定すると、マッチング領域の合計サイズ(画素数)は、129×129×400=約6656400Pixelとなる。そうすると、全体画像のサイズ(画素数)に対する、マッチング領域の合計サイズが占める割合は、6656400÷69258816×100=約9.6%となり、パターンマッチングを行う対象の画素数は、全体画像全体に対して行う場合に比べ飛躍的に減る。上記全体画像のサイズ及びマッチング領域のサイズについて、本発明者が実際に試行してみたところ、全体画像の全体に対してパターンマッチングを行い、各障害釘200の頭部200bの検出を行わせた場合、処理時間に1時間以上要したが、マッチング領域の使用により、処理時間は1秒以内に短縮した。このように、処理時間が劇的に減った。
【0107】
また、上記パターンマッチング以外においても、全体画像の全体ではなく一部の領域に対して画像処理を行うこと(ステップS43で設定した画像処理範囲に対してステップS44やS47の処理を行うこと、ステップS103で全体画像をモノクロ化する代わりにマッチング領域のみをモノクロ化する処理を行うこと)によっても、各処理の処理時間の削減が実現されている。
【0108】
パターンマッチングの対象を全体画像の全体ではなく、マッチング領域等に限定することにより、例えば、意図しない領域において釘頭200bを検出してしまうなどの、釘頭200bの誤検出等も防止することができる。当該誤検出としては、例えば、遊技盤2に用いられているビス等の固定部材や、遊技盤面2aに施されている意匠等を釘頭200bとして検出してしまうことが挙げられる。
【0109】
以上のように、パターンマッチング、及び、その他の画像処理の対象を、全体画像の一部の領域に限定することにより、出荷前検査工程における検査時間(さらには、マスターデータの登録処理に掛かる時間)を大幅に短縮でき、かつ、検査精度も高めることができ、遊技機の生産性を向上させることができる。
【0110】
マッチング領域は、遊技盤2の設計データという、公知のデータから設定されるので、マッチング領域の設定が容易となっている。
【0111】
マッチング領域は、1つの障害釘200の頭部200a全部を含むが、他の障害釘200の頭部200a全部を含まない範囲である(例えば、図12参照)、ようにすることで、他の障害釘200の頭部200aを誤検出することもなく、障害釘200を精度よく検査できる。
【0112】
また、ステップS103のパターンマッチングで頭部200bを検出できない場合、そのパチンコ遊技機1は、必要な障害釘200が足りないか、障害釘200が大きく曲がっている可能性がある。この実施例では、頭部200bを検出できない場合に、エラー報知を行うので、適切に異常を報知できる。
【0113】
ここで、各障害釘200の頭部200bそれぞれを撮像しようとすると、各障害釘200は傾いており、また、場所も異なるので、微妙に異なる写り方で撮像される(この実施例では、完成したパチンコ遊技機1を撮影して釘検査を行うので、障害釘200の周囲も、前記の写り方に影響する)。このため、従来のように、共通のテンプレート画像によるパターンマッチングで各頭部200bを検出しようとすると、誤検出が発生しやすい。本実施例では、パターンマッチングに使用するテンプレート画像を各障害釘200すべてについて用意し、かつ、テンプレート画像を、マスター盤(不良品ではない良品のパチンコ遊技機1)を釘検査時と同条件で撮像して得た画像としている。これにより、障害釘200の頭部200bの検出の精度(障害釘の検査精度)が向上している。
【0114】
本実施例によれば、出荷前釘検査用装置21のスキャナー部210の光源となる複数の発光部材LS1~LS4により、複数の方向から障害釘200の頭部200bに対して光を照射することで、均一で明確な反射光領域を有する特徴画像の抽出等が実現され、好適な照明が実現されている。
【0115】
本実施例によれば、各頭部200bの設定位置に対するずれ量をエリアごとに平均し、平均値で各頭部200bの位置を補正しているので(面積平均化)、遊技盤面2aの歪み等のよる頭部200bの位置の偏りを無効化でき、釘の状態の検査(傾斜が適当であるかの検査)の精度がよくなっている。このような補正は、上記のように、撮像部213が、離れた位置から遊技盤面2aを撮像する場合に有効である(このような場合に、遊技盤面2aの歪み等により、頭部200dの位置ずれが生じるため)。なお、エリアごとの補正を、複数回繰り返してもよい。この場合、1回目の補正と2回目の補正とでエリアを同じにしてもよいし、異なるエリアとしてもよい。異なるエリアとする場合、遊技盤面2aの歪み等による頭部200bの位置の偏りをより無効化できる。
【0116】
上記面積平均化は、遊技盤2(盤面板2A)が合成樹脂製の場合に特に有効である。このような場合、温度変化により、遊技盤2(盤面板2A)が膨張又は収縮することがある。例えば、遊技盤2のサイズが横460mm×縦500mmとした場合、温度変化により、全体で最大で1mm程度のズレが生じる。例えば、各頭部200bのうち左端の障害釘200の位置を上記マスターデータにおける当該障害釘の位置に合わせても、検査時の温度によっては、右端の障害釘200の位置が上記マスターデータにおける当該障害釘の位置と最大1mm程度ズレる場合がある。このようなズレの補正についても、上記面積平均化が有効である。
【0117】
なお、面積平均化するエリアについて、全体画像に写った遊技盤面2aにおける横方向における全領域を含むエリア(図25(A)のように、遊技盤2aを横断するエリアE1~E5)を設定したり、当該遊技盤面2aにおける縦方向における全領域を含むエリア(図25(B)のように、遊技盤2aを縦断するエリアE11~E15)を設定したりしてもよいが、これらよりも、図20に示すように、全体画像に写った遊技盤面2aの縦方向(Y方向)における一部かつ横方向(X方向)における一部からなるエリア(エリアA~D)を設定することが望ましい(例えば、上記温度変化による遊技盤2(盤面板2A)の膨張又は収縮が、所定方向に沿って生じる場合があるためである)。当該エリアは、ある程度小さい方が好ましく、全体画像に写った遊技盤面2aの縦方向の同じ位置において複数のエリア(例えば、横方向に複数のエリアを並べるなど)を設定し、かつ、当該遊技盤面2aの横方向の同じ位置において複数のエリア(例えば、縦方向に複数のエリアを並べるなど)を設定するとよい。
【0118】
本実施例によれば、各頭部200bの設定位置に対するずれ量を全体的に平均し、平均値で各頭部200bの位置を補正しているので、パチンコ遊技機1の位置ずれ等による頭部200bの位置の偏りを無効化でき、釘の状態の検査(傾斜が適当であるかの検査)の精度がよくなっている。
【0119】
本実施例のように、マッチング領域のみ等の画像の一部の領域でパターンマッチングを行ったり、面積平均化による補正等を行ったりすることは、特に、完成後の遊技盤(工場出荷直前の遊技盤、工場から出荷できる状態の遊技盤、工場出荷後の遊技盤など)、完成前の、ガイドレール2b、風車61、センター飾り枠51、各種入賞装置、役物等の他の遊技部材(完成後の遊技盤を構成する部材の少なくとも一部)が組み付けられた状態の遊技盤などについて釘検査を行う場合に特に有効である。マッチング領域を用いることで、上記のようにビスや他の遊技部材、装飾意匠等を障害釘200(特に、頭部200b)として誤検出してしまうことを回避できる。さらに、面積平均化による補正は、遊技盤2(遊技盤面2a)の歪み(盤面(ベニヤ板、アクリル板)そのものの歪みや、前記の遊技部材の組み付けによって生じる歪みなど)等による釘検査への悪影響(特に、障害釘200(頭部200b)の位置を誤って検出してしまうなど)を軽減でき、釘検査の精度を上げることができる。
【0120】
(変形例)
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。特に、前記実施例として示した全ての技術的特徴を備えるものでなくてもよく、上記実施例として示した技術的特徴の一部はどのようなものであっても削除できる。具体的に、上記課題を解決するための構成も削除できる。この場合、当該構成の削除により別発明が成立しうる。下記の変形例の少なくとも一部同士を組み合わせてもよい。
【0121】
(変形例1)
上記出荷前釘検査における障害釘200の検査の手法を、ステップS4、S5、S7、S9の検査に適用してもよい。なお、遊技盤面2aの歪みは、役物等の取り付け後に発生することが多いので、上記エリアごとの補正(ステップS107)は、出荷前釘検査等(役物等の他の部品を遊技盤2に取り付けたあと)において特に有効となる。
【0122】
(変形例2)
前記の実施例では、新規に製造される遊技盤2を対象にしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、中古(未使用のものを含む)のパチンコ遊技機1や遊技盤2を対象としてもよい(特に、出荷前釘検査と同様の方法で釘を検査できる)。また、例えば、中古で同型のパチンコ遊技機1が複数台ある場合、そのうちの良好なもの(1台又は複数台のパチンコ遊技機1)をマスターとして、マスターデータの登録等を行ってもよい(頭部200bの設定位置は、マスターデータ登録時のテンプレート画像の位置を採用し、マッチング領域は、当該テンプレート画像の位置を中心に設定する)。また、スキャナー部210によるスキャンを実行し、障害釘200の釘の頭部200bの位置を検出して(画像処理により検出してもよいし、手動で検出してもよい)、上記設計データと同フォーマットの障害釘20に関するデータを生成し、マッチング領域等を設定してもよい(このとき、複数台をスキャンして、頭部200bの位置は、その平均としてもよい)。
【0123】
(変形例3)
ステップS105、S107で、ずれ量の平均値をとる場合、加算対象のずれ量のうち、最大値、第1閾値よりも大きな値、最小値、第2閾値よりも小さな値等を加算対象から除外してもよい。最大値や第1閾値よりも大きな値は、補正を行っても、傾斜が異常の障害釘である可能性が高いので、頭部200bの位置を補正する必要がない。また、最小値、第2閾値よりも小さな値は、補正を行わなくても、傾斜は正常である可能性が高いので、頭部200bの位置を補正する必要がない。また、エリアAからDのうちの少なくとも2つのエリア同士の一部は重複してもよい。当該重複した領域に位置する障害釘200は、各エリアに関する補正の対象としてもよいし、補正量(ずれ量の平均値)の大きい方による補正の対象としてもよい(当該障害釘200のずれ量は、各エリアのずれ量の平均値の計算に使用してよい)。
【0124】
(変形例4)
マッチング領域の大きさは、障害釘の場所、障害釘の種類(一般釘であるか、指定釘であるかなど)等に応じて異ならせてもよい(これにより、頭部200bの位置を検出するための適切な大きさのマッチング領域を設定できる)。また、マッチング領域の大きさも、頭部200bが形成する釘傘の最大外径の3倍等でもよい。ただし、他の障害釘200の頭部200bがすべて入ってしまうような大きさにマッチング領域を設定すると、頭部200bの誤検出(位置の誤検出を含む)が生じるおそれがある。マッチング領域は、障害釘の傾斜として想定される最大の傾斜で傾斜したときの障害釘の頭部200bを含む範囲としてもよい(これによっても処理時間等を削減できる)。
【0125】
(変形例5)
マスターデータに含まれる許容距離は、障害釘200の種類(指定釘であるか一般釘であるかなど)や位置によらず、一定であってもよいし、障害釘200の種類や位置などに応じて異ならせてもよい。特に、第1始動入賞口に向けて遊技球を誘導する指定釘204等の各種入賞口に対応付けて設けられ、遊技の進行(各種入賞)を含む遊技機の性能に大きく影響する指定釘(ペア釘を含む)については、その傾斜(傾斜角度及び傾斜方向)及び/又は釘間距離(指定釘同士の距離。ペア釘の場合は、当該ペア釘を構成する指定釘間の距離)が特に重要である。このため、指定釘についての上記許容距離は、他の釘(一般釘等)よりも短くするとよい。許容距離を複数段階設け、ステップS108で計算した距離と、許容距離との比較(ステップS109)において、計算した距離が第1の許容距離以下であれば、比較結果(検査結果)をOKとし、計算した距離が第1の許容距離よりも長く第2の許容距離以下であれば、当該障害釘200の再整備とし、計算した距離が第2の許容距離よりも長ければ、当該パチンコ遊技機1を不良品としてもよい。
【0126】
(変形例6)
ペア釘の間の距離を計算してもよい。例えば、釘番号により、ペア釘を特定可能としておき(マスターデータの「傾斜」からも特定できる)、ステップS108などにおいて、ペア釘の各位置(例えば、ステップS107で補正された後の頭部200bの位置)の座標から当該ペア釘を構成する2つの障害釘200間の釘間距離を計算してもよい。なお、釘間距離は、例えば、頭部200bが形成する釘傘の外径が最大となる箇所の中心位置(胴部200aの先端の中心位置)間の距離である。さらに、一般的に、パチンコ遊技機1において遊技盤面2aから障害釘200の先端部(頭部200bの頂点)までの距離は約17.8mmであり、釘の形状は規格化されて予め定められた形状の釘が遊技盤面2aに用いられる(つまり、釘の形状等から、頭部200bの位置(胴部200aの先端側の中心位置)等、釘の特定箇所の位置は決まってくる)。これにより、画像における座標から三角関数を用いて、ペア釘を構成する各指定釘の傘下位置(例えば、盤面から14.3mm)における釘間距離(例えば、胴部200aの中心軸間の距離、又は、胴部200aの直径等を考慮して計算される胴部200a間の距離(中心軸間ではなく、外周面間の距離)等、距離について同じ)、ゲージ棒位置(盤面から5.5mm(遊技球の半径に相当する位置))における釘間距離、又は、盤面からの任意の高さ位置における釘間距離を算出して特定することができる。この特定した釘間距離(間隔寸法)を後述の変形例8の遊技盤固有情報に対応付けて登録することができる。また、ステップS108にて計算した距離に基づいて、三角関数等を使用することにより、障害釘200の傾斜(傾斜角度及び傾斜方向)を計算してもよい。前記のようにして、釘間距離や傾斜を求めることは、検出(測定)した障害釘200の位置(頭部200bの位置)に基づいて行われるものであり、釘間距離や傾斜(傾斜角度及び傾斜方向)の測定に当たる。つまり、出荷前釘検査用装置21及び管理コンピュータ500(管理コンピュータ500の処理を実行可能な出荷前釘検査用装置21としてもよい)は、管理コンピュータ500の処理を行う出荷前釘検査用装置21は、釘間距離や傾斜の測定装置として機能してもよい。
【0127】
(変形7)
上記距離の計算等の、計算(又は算出)の代わりに、テーブル等を参照して、前記距離や傾斜を取得してもよい。当該テーブル等の参照も、計算(又は算出)という(テーブル作成時に値を計算していたり、テーブルの参照時に所定の計算が行われていたりするため)。なお、計算、算出、テーブルの参照等を総称して、「取得」と捉えてもよい。
【0128】
(変形例8)
図27は、原画像(全体画像)を示す画像データに遊技盤固有情報を付加する変形例を示している。図27(A)に示す原画像GG1を示す画像データが生成された場合に、管理コンピュータ500は、原画像GG1に対応する遊技盤2のシリアル番号や出荷前釘測定の日付等の情報(データ)を、図27(B)に示す遊技盤固有情報BD1として取得する(例えば、遊技盤2に貼付されたシール15の二次元コード15aを読み取って取得する)。遊技盤固有情報BD1は、二次元コードやテキストデータを画像データとして生成あるいは変換したものであればよい。原画像GG1を示す画像データに、遊技盤固有情報BD1を付加することにより、図27(C)に示すような保存用画像GG2を示す画像データが作成される。保存用画像GG2では、原画像GG1の右下における余白部分(遊技盤面2aの範囲外)に、遊技盤固有情報BD1が付加されている。このように、原画像GG1を示す画像データそのものに、原画像GG1とは異なる画像データとして作成された遊技盤固有情報BD1を付加することにより、保存用画像GG2を示す画像データを生成し、管理コンピュータ500の記憶装置505、あるいは記憶装置505とは異なるデータベースに、格納することで保存されてもよい。これにより、大量の画像データが生成された場合でも、容易に管理可能として、遊技盤2に対応する画像データを取得しやすくなる。なお、保存用画像GG2を示す画像データに対応付けて、出荷前釘検査の検査結果、変形例6のペア釘間の距離や障害釘200の傾き等の情報を付加してもよい。保存用画像GG2やこれら情報は、釘間測定書の情報に含ませてもよい。保存用画像GG2を保存しておくことで、遊技盤2を出荷したあとに、当該遊技盤2の出荷時の釘の状態を事後的に確認できる(釘に対する不正があった場合に、その不正が出荷後に行われたのか、そうでないのかが分かる)。
【0129】
尚、遊技盤固有情報BD1を付加することに代えて、あるいは遊技盤固有情報BD1を付加することに加えて、原画像GG1の余白部分における画像データを用いて、遊技盤固有情報BD1と同様の情報を埋め込むようにしてもよい。例えば、遊技盤面2aのサイズが一辺を550mmとする正方形であり、1画素が31μmの距離に相当する場合、遊技盤面2aの全体を撮影した画像データにおける横1列に対応するピクセルサイズは、550000μm/31μm=17741ドットとなる。1画素を構成する赤、緑、青の画像データのうちで赤色の色データを用いて、画像データにおける余白部分の横1列に遊技盤固有情報BD1と同様の情報を埋め込む場合には、アスキーコードで17741文字を埋め込むことができる。
【0130】
(変形例9)
ステップS106~S107に関連し、複数のエリアのうち、一部のエリアのみ、頭部200bの位置を補正し(ステップS106~S107)、他のエリアについては補正を行わなくてもよい。
【0131】
(変形例10)
上記実施例では、パチンコ遊技機1の1個体ごとに、エリアごとのずれ量の平均値を計算しているが、パチンコ遊技機1の機種ごとに、エリアごとのずれ量の平均値を計算してもよい。この場合、例えば、1番目のパチンコ遊技機1の出荷前釘検査のステップS107で計算した、ずれ量の平均値を記憶しておき、2番目以降のパチンコ遊技機1の出荷前釘検査のステップS107では、前記で記憶した平均値により頭部200bの位置を補正するとよい。
【0132】
(変形例11)
管理コンピュータ500が行う処理の少なくとも一部を出荷前釘検査用装置21が実行するようにしてもよい。特に、出荷前釘検査に係る処理を出荷前釘検査用装置21がすべて行うようにしてもよい(この場合、出荷前釘検査用装置21は、釘検査装置になる)。
【0133】
(変形例12)
また、前記実施例では、遊技機の一例としてパチンコ遊技機1を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、予め定められた球数の遊技球が遊技機内部に循環可能に内封され、遊技者による貸出要求に応じて貸し出された貸出球や、入賞に応じて付与された賞球数が加算される一方、遊技に使用された遊技球数が減算されて記憶される、所謂、封入式遊技機にも本発明を適用可能である。
【0134】
(変形例13)
また、前記実施例では、遊技媒体の一例として、球状の遊技球(パチンコ球)が適用されていたが、球状の遊技媒体に限定されるものではなく、例えば、メダル等の非球状の遊技媒体であってもよい。
【0135】
(変形例14)
図26は、遊技盤面2aが垂直になる状態で、遊技盤2を保持して固定した場合に、スキャン方向を垂直方向とした変形例を示している。この変形例において、搬送装置13Hは、遊技盤面2aが垂直になる状態で、矢印B11で示される方向に搬送する。出荷前釘検査用装置21は、搬送装置13Hにより遊技盤2が通過する搬送経路の所定位置に設置され、この位置に遊技盤2が搬送されると、搬送装置13Hを停止させ、昇降クランプ250または上止めクランプ260の設置位置を変更した構成において、パチンコ遊技機1を押さえることにより、遊技盤2を保持して固定できればよい。当該出荷前釘検査用装置21では、スキャナー部210を矢印A11で示されるスキャン方向に移動させる搬送制御が行われるようにすればよい。このように、スキャナー部210を垂直方向に移動させる搬送制御を行い、パチンコ遊技機1の通常設置時における上側から下側へと向かう方向に、遊技盤面2aの撮影が行われるようにすればよい。尚、パチンコ遊技機1の通常設置時における下側から上側へと向かう方向に、遊技盤面2aの撮影が行われるようにしてもよい。搬送装置13Hの所定位置には、判定用ランプ21Aが設けられてもよい。判定用ランプ21Aは、出荷前釘検査用装置21により障害釘200の傾きを測定した結果にもとづいて、出荷前釘検査処理の釘の検査結果(ステップS109の比較結果)を、認識可能に報知するものであればよい。
【0136】
(変形例15)
また、上記実施例では、複数の発光部材LS1~LS4を複数の直管状光源であるものとしていたが、本発明はこれに限定されず、例えば、平面光源、ライン型光源であってもよい。
【0137】
(変形例16)
上記で説明した遊技機又は遊技盤の製造方法は、図6の釘打ち(ステップS3)等の遊技機を形成するための行程(ステップS1、S10、S11等を含んでもよい。)及び出荷前釘検査(ステップS12)があればよく、第1整備(ステップS5)、第1検査(ステップS6)、第2整備(ステップS7)、第2検査(ステップS8)等の行程は、適宜省略してもよい。
【0138】
(本明細書が開示する構成)
上記実施例や変形例から把握できる構成を以下に列挙する。
【0139】
(構成その1)
特開2009-11606号公報には、遊技盤面に設けられた釘の状態を検査するために、ライン状に照明光を照射して撮像し、各釘の撮像頭部位置データに含まれる変位成分や距離成分を用いて、釘の状態の良否を判別することが提案されている。当該技術では、画像処理により釘の状態を検査するが、画像処理の対象が遊技盤面全面となっているため、釘の状態の検査時間が長いという問題がある。
【0140】
(1)前記問題を解決するため、遊技機用検査装置は、
遊技盤面(例えば、遊技盤面2a)に設けられた釘(例えば、障害釘200)の状態を検査する遊技機用検査装置(例えば、管理コンピュータ500及び出荷前釘検査用装置21)であって、
前記遊技盤面(例えば、障害釘200が設けられた遊技盤面2a)を読み取り、読み取った前記遊技盤面を表す読取情報(例えば、画像データ)を取得する取得手段(例えば、ステップS102を実行する管理コンピュータ500)と、
前記取得手段により取得された前記読取情報が表す前記遊技盤面のうち、釘位置情報(例えば、設計データ)に基づいて予め設定された対象範囲(例えば、マッチング領域)内にて釘の状態を検査する検査手段(例えば、ステップS103~S109を実行する管理コンピュータ500)と、
を備える。
【0141】
上記構成によれば、検査時間を短くすることができる。
【0142】
(2)遊技機用検査方法は、
遊技盤面(例えば、遊技盤面2a)に設けられた釘(例えば、障害釘200)の状態を検査する遊技機用検査方法であって、
前記遊技盤面(例えば、障害釘200が設けられた遊技盤面2a)を読み取り、読み取った前記遊技盤面を表す読取情報(例えば、画像データ)を取得する取得ステップ(例えば、ステップS102)と、
前記取得ステップにより取得された前記読取情報が表す前記遊技盤面のうち、釘位置情報(例えば、設計データ)に基づいて予め設定された対象範囲(例えば、マッチング領域)内にて釘の状態を検査する検査ステップ(例えば、ステップS103~S109)と、
を備える。
【0143】
上記構成によれば、検査時間を短くすることができる。
【0144】
(3)遊技機製造方法は、
遊技盤面(例えば、遊技盤面2a)に設けられた釘(例えば、障害釘200)の状態を検査する工程を有する遊技機製造方法であって、
前記工程は、
前記遊技盤面(例えば、障害釘200が設けられた遊技盤面2a)を読み取り、読み取った前記遊技盤面を表す読取情報を取得する取得ステップ(例えば、ステップS102)と、
前記取得ステップにより取得された前記読取情報が表す前記遊技盤面のうち、釘位置情報(例えば、設計データ)に基づいて予め設定された対象範囲(例えば、マッチング領域)内にて釘の状態を検査する検査ステップ(例えば、ステップS103~S109)と、
を備える。
【0145】
上記構成によれば、検査時間及び遊技機の製造時間を短くすることができる。
【0146】
(4)前記釘位置情報は、釘を前記遊技盤面に打設するときの釘穴位置を特定可能な釘穴位置情報(例えば、設計データ)であり、
前記釘穴位置情報により特定される釘穴位置に基づいて前記対象範囲を設定する設定手段(又は設定ステップ)(例えば、図10の処理を行う管理コンピュータ500)をさらに備える
ようにしてもよい。
【0147】
上記構成によれば、従来から用いられているデータを用いて容易に対象範囲を設定できる。
【0148】
(5)前記遊技盤面は、複数の釘を有し、
前記対象範囲は、1つの釘の頭全部を含むが、他の釘の頭全部を含まない範囲である(例えば、図12参照)、
ようにしてもよい。
【0149】
上記構成によれば、適切な対象範囲を設定できる。
【0150】
(6)複数の方向から釘の頭部に対して光を照射可能に配置された光源(例えば、複数の発光部材LS1~LS4)をさらに備え、
前記検査手段(又は検査ステップ)は、各方向から照射される光による反射光の組合せを含む読取情報(例えば、図18(C)、(E)参照)を用いて釘の状態を検査する、
ようにしてもよい。
【0151】
上記構成によれば、釘の状態の検査の精度が向上する。
【0152】
(7)前記検査手段(又は検査ステップ)は、前記対象範囲内にて釘を検出し(例えば、ステップS103)、検出した釘の位置に基づいて当該釘の状態を検査し、
前記検査手段(又は検査ステップ)が前記対象範囲内にて釘を検出できなかったときに異常を報知する報知手段(又は報知ステップ)をさらに備える(例えば、ステップS103でのエラー報知)、
ようにしてもよい。
【0153】
上記構成によれば、異常を適切に報知できる。
【0154】
(8)前記検査手段(又は検査ステップ)は、前記対象範囲内にてパターンマッチングを実行することで釘を検出し(例えば、ステップS103)、
前記パターンマッチングで使用されるテンプレート画像を、予め用意されたマスター(例えば、マスター盤のパチンコ遊技機1)の遊技盤面を読み取った読取情報から取得する取得手段(又は取得ステップ)(例えば、マスターデータ登録処理)をさらに備える、
ようにしてもよい。
【0155】
上記構成によれば、釘の状態の検査の精度が向上する。
【0156】
(構成その2)
特開2009-11606号公報には、遊技盤面に設けられた釘の状態を検査するために、ライン状に照明光を照射して撮像し、各釘の撮像頭部位置データに含まれる変位成分や距離成分を用いて、釘の状態の良否を判別することが提案されている。当該技術では、画像処理により釘の状態を検査するが、遊技盤面の歪み等が考慮されておらず、釘の状態の検査の精度が良くない場合がある。
【0157】
(1)前記問題を解決するため、遊技機用検査装置は、
遊技盤面(例えば、遊技盤面2a)に設けられた釘(例えば、障害釘200)の状態を検査する遊技機用検査装置(例えば、管理コンピュータ500及び出荷前釘検査用装置21)であって、
前記遊技盤面(例えば、障害釘200が設けられた遊技盤面2a)を読み取り、読み取った前記遊技盤面を表す読取情報を取得する取得手段(例えば、ステップS102を実行する管理コンピュータ500)と、
前記取得手段により取得された前記読取情報に基づいて前記釘の位置(例えば、障害釘200の頭部200bの位置)を検出する検出手段(例えば、ステップS103を実行する管理コンピュータ500)と、
前記検出手段が検出した前記釘の位置と当該釘の基準位置(例えば、頭部200bの設定位置)との比較により釘の状態を検査する検査手段(例えば、ステップS109を実行する管理コンピュータ500)と、を備え、
前記検査手段は、前記遊技盤面に割り当てられた複数の領域(例えば、エリアA~D)のうちの特定の領域内の複数の釘のそれぞれについての前記釘の位置の前記基準位置に対する偏り(例えば、ずれ量)を特定し、前記特定の領域内の偏りの平均値に基づいて前記複数の釘それぞれの位置と前記基準位置それぞれとの位置関係を補正する(例えば、ステップS106~S107)。
【0158】
上記構成によれば、釘の状態の検査の精度が向上する。
【0159】
(2)遊技機用検査方法は、
遊技盤面(例えば、遊技盤面2a)に設けられた釘(例えば、障害釘200)の状態を検査する遊技機用検査方法であって、
前記遊技盤面(例えば、障害釘200が設けられた遊技盤面2a)を読み取り、読み取った前記遊技盤面を表す読取情報を取得する取得ステップ(例えば、ステップS102)と、
前記取得ステップにより取得された前記読取情報に基づいて前記釘の位置(例えば、障害釘200の頭部200bの位置)を検出する検出ステップ(例えば、ステップS103)と、
前記検出ステップが検出した前記釘の位置と当該釘の基準位置(例えば、頭部200bの設定位置)との比較により釘の状態を検査する検査ステップ(例えば、ステップS109)と、を備え、
前記検査ステップでは、前記遊技盤面に割り当てられた複数の領域のうちの特定の領域(例えば、エリアA~D)内の複数の釘のそれぞれについての前記釘の位置の前記基準位置に対する偏り(例えば、ずれ量)を特定し、前記特定の領域内の偏りの平均値に基づいて前記複数の釘それぞれの位置と前記基準位置それぞれとの位置関係を補正する(例えば、ステップS106~S107)。
【0160】
上記構成によれば、釘の状態の検査の精度が向上する。
【0161】
(3)遊技機製造方法は、
遊技盤面(例えば、遊技盤面2a)に設けられた釘(例えば、障害釘200)の状態を検査する工程を有する遊技機製造方法であって、
前記工程は、
前記遊技盤面(例えば、障害釘200が設けられた遊技盤面2a)を読み取り、読み取った前記遊技盤面を表す読取情報を取得する取得ステップ(例えば、ステップS102)と、
前記取得ステップにより取得された前記読取情報に基づいて前記釘の位置(例えば、障害釘200の頭部200bの位置)を検出する検出ステップ(例えば、ステップS103)と、
前記検出ステップが検出した前記釘の位置と当該釘の基準位置(例えば、頭部200bの設定位置)との比較により釘の状態を検査する検査ステップ(例えば、ステップS109)と、を備え、
前記検査ステップでは、前記遊技盤面に割り当てられた複数の領域のうちの特定の領域(例えば、エリアA~D)内の複数の釘のそれぞれについての前記釘の位置の前記基準位置に対する偏り(例えば、ずれ量)を特定し、前記特定の領域内の偏りの平均値に基づいて前記複数の釘それぞれの位置と前記基準位置それぞれとの位置関係を補正する(例えば、ステップS106~S107)。
【0162】
上記構成によれば、釘の状態の検査の精度が向上する。
【0163】
(4)前記読取情報は、前記遊技盤面に対して所定距離離れた撮像部(例えば、撮像部213)により撮像された画像である、
ようにしてもよい。
【0164】
上記構成によれば、好適に読取情報を得ることができ、さらに、前記補正が効果的となる。
【0165】
(5)前記検査手段は(又は検査ステップでは)、前記位置関係の補正を複数回実行する(例えば、変形例)、
ようにしてもよい。
【0166】
上記構成によれば、釘の状態の検査の精度が向上する。
【0167】
(6)前記検査手段は(又は検査ステップでは)、前記遊技盤面のすべての釘のそれぞれについての前記釘の位置の前記基準位置に対する偏りを特定し、前記すべての釘の偏りの平均値に基づいて前記すべての釘それぞれの位置を補正する(例えば、ステップS105~S106)、
ようにしてもよい。
【0168】
上記構成によれば、釘の状態の検査の精度が向上する。
【0169】
(7)複数の方向から釘の頭部に対して光を照射可能に配置された光源(例えば、複数の発光部材LS1~LS4)をさらに備え、
前記検査手段(又は検査ステップ)は、各方向から照射される光による反射光の組合せを含む読取情報(例えば、図18(C)、(E)参照)を用いて釘の状態を検査する、
ようにしてもよい。
【0170】
上記構成によれば、釘の状態の検査の精度が向上する。
【0171】
(8)前記検査手段(又は検査ステップ)は、前記遊技盤面のうち、釘位置情報(例えば、設計データ)に基づいて予め設定された対象範囲内にてパターンマッチングを実行することで釘を検出し(例えば、ステップS103)、
前記パターンマッチングで使用されるテンプレート画像を、予め用意されたマスター(例えば、マスター盤のパチンコ遊技機1)の遊技盤面を読み取った読取情報から取得する取得手段(又は取得ステップ)(例えば、マスターデータ登録処理)をさらに備える、
ようにしてもよい。
【0172】
上記構成によれば、釘の状態の検査の精度が向上する。
【符号の説明】
【0173】
2 遊技盤
2a 遊技盤面
21 出荷前釘検査用装置
200 障害釘
200a 胴部
200b 頭部
210 スキャナー部
500 管理コンピュータ
502 CPU
505 記憶装置
LS1~LS4 発光部材
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