(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20220516BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20220516BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
B65D1/02 100
C08L23/10
C08L23/04
(21)【出願番号】P 2018064673
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000149435
【氏名又は名称】株式会社大塚製薬工場
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】志波 英治
(72)【発明者】
【氏名】小松 邦彦
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/152387(WO,A1)
【文献】特開2000-230088(JP,A)
【文献】特表2009-531486(JP,A)
【文献】特開平10-67896(JP,A)
【文献】特開2004-99906(JP,A)
【文献】特開2007-186665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00 - 1/48
C08L 23/00 - 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(a1)~(a4)を満たすプロピレン系樹脂(A)57~75質量%と、
下記要件(b1)~(b3)を満たすエチレン系樹脂(B)10~25質量%と、
50モル%以上のプロピレン由来の構成単位と、炭素数2、4~20のα-オレフィン由来の構成単位(ただし、プロピレン由来の構成単位とα-オレフィン由来の構成単位の合計を100モル%とする)とを含み、下記要件(c1)~(c4)を満たすプロピレン系エラストマー樹脂(C)10~18質量%と、
を含む(ただし、(A)~(C)の合計を100質量%とする)樹脂組成物からなる層を含む容器。
(a1)230℃、2.16kg荷重下のMFRが0.3~5.0g/10分
(a2)エチレン含有量が3.0~8.0質量%
(a3)DSCにより測定される融点が135~150℃
(a4)ロックウェル硬さ(JIS K7202)が65~90
(b1)190℃、2.16kg荷重下のMFRが0.3~3.0g/10分
(b2)密度が890~915kg/m
3
(b3)GPCで測定して求められる分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下
(c1)ショアーA硬度(ASTM D2240)が65~90
(c2)融点が130~170℃
(c3)密度(ASTM D1505)が860~875kg/m
3
(c4)DSC測定によるガラス転移温度が-25~-35℃
【請求項2】
121℃で15分間、高温滅菌処理をした後、第十七改正日本薬局方の透明性試験第1法に基づく、紫外可視吸光度測定法による波長450nmの光の透過率が70%以上である、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記容器の胴部の平均厚みが0.01~1.0mmである、請求項1または2に記載の容器。
【請求項4】
前記容器の胴部が単層である、請求項1~3のいずれか1項に記載の容器。
【請求項5】
医療用または食品用である、請求項1~4のいずれか1項に記載の容器。
【請求項6】
輸液用である、請求項1~5のいずれか1項に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容器に関し、具体的には、121℃以上の高温滅菌に耐え得る耐熱性と、良好な透明性、耐ブロッキング性、耐衝撃性とを併せ持つ滅菌容器に関する。
【背景技術】
【0002】
薬液などを輸液する等のために、薬液を収容するための容器が使用されており、近年、該容器としては、柔軟なプラスチックからなる容器が主流である。この種の容器は、取扱いやすく、廃棄が容易であるという利点を有している。
前記容器としては、薬液などと直接接触するため、安全性が確立されているポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンからなる容器が汎用されている。
【0003】
このような容器として、例えば、特許文献1には、ポリエチレン系容器が記載され、特許文献2および特許文献3には、ポリプロピレン系容器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-186499号公報
【文献】特開2014-208772号公報
【文献】特表2016-508078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の容器は、透明性、耐熱性、耐衝撃性および耐ブロッキング性の全てを満足できていないのが実情である。特に121℃以上の温度で加熱滅菌を行なっても変形、ブロッキングおよび大きなシワ等の発生が無く、しかも透明性が損なわれず、衛生的でかつ内容物の確認が容易な容器の提供には大いなる要望がある。
【0006】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、121℃以上の高温滅菌に耐え得る耐熱性、良好な透明性、耐衝撃性および耐ブロッキング性を併せ持つ容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構成例によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成例は以下の通りである。
【0008】
[1] 下記要件(a1)~(a4)を満たすプロピレン系樹脂(A)57~75質量%と、
下記要件(b1)~(b3)を満たすエチレン系樹脂(B)10~25質量%と、
50モル%以上のプロピレン由来の構成単位と炭素数2、4~20のα-オレフィン由来の構成単位(ただし、プロピレン由来の構成単位とα-オレフィン由来の構成単位の合計を100モル%とする)とを含み、下記要件(c1)~(c4)を満たすプロピレン系エラストマー樹脂(C)10~18質量%と、
を含む(ただし、(A)~(C)の合計を100質量%とする)樹脂組成物からなる層を含む容器。
(a1)230℃、2.16kg荷重下のMFRが0.3~5.0g/10分
(a2)エチレン含有量が3.0~8.0質量%
(a3)DSCにより測定される融点が135~150℃
(a4)ロックウェル硬さ(JIS K7202)が65~90
(b1)190℃、2.16kg荷重下のMFRが0.3~3.0g/10分
(b2)密度が890~915kg/m3
(b3)GPCで測定して求められる分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下
(c1)ショアーA硬度(ASTM D2240)が65~90
(c2)融点が130~170℃
(c3)密度(ASTM D1505)が860~875kg/m3
(c4)DSC測定によるガラス転移温度が-25~-35℃
【0009】
[2] 121℃で15分間、高温滅菌処理をした後、第十七改正日本薬局方の透明性試験第1法に基づく、紫外可視吸光度測定法による波長450nmの光の透過率が70%以上である、[1]に記載の容器。
【0010】
[3] 前記容器の胴部の平均厚みが0.01~1.0mmである、[1]または[2]に記載の容器。
[4] 前記容器の胴部が単層である、[1]~[3]のいずれかに記載の容器。
【0011】
[5] 医療用または食品用である、[1]~[4]のいずれかに記載の容器。
[6] 輸液用である、[1]~[5]のいずれかに記載の容器。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、121℃以上の高温条件下での滅菌を行ってもブロッキング、シワおよび変形が起こらない、121℃以上の高温滅菌に耐え得る耐熱性、良好な透明性、耐衝撃性および耐ブロッキング性を併せ持つ容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明に係る容器の一実施形態である輸液ボトルの概略模式図である。(a1)は輸液ボトルの正面図、(a2)はボトル胴部のA-A断面図、
【
図2】
図2は、本発明に係る容器の一実施形態である輸液バッグの概略模式図である。(b1)は輸液バッグの正面図、(b2)はバッグ胴部のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
≪容器≫
本発明に係る容器(以下「本容器」ともいう。)は、前記樹脂組成物からなる層を含む。
本容器はこのような層を含むため、前記効果を奏する容器となる。
【0015】
<樹脂組成物>
前記樹脂組成物は、
下記要件(a1)~(a4)のすべてを満たすプロピレン系樹脂(A)57~75質量%と、
下記要件(b1)~(b3)のすべてを満たすエチレン系樹脂(B)10~25質量%と、
50モル%以上のプロピレン由来の構成単位と炭素数2、4~20のα-オレフィン由来の構成単位(ただし、プロピレン由来の構成単位とα-オレフィン由来の構成単位の合計を100モル%とする)とを含み、下記要件(c1)~(c4)のすべてを満たすプロピレン系エラストマー樹脂(C)10~18質量%と、
を含む(ただし、(A)~(C)の合計を100質量%とする)。
該組成物は、各種容器の材料として好適に用いることができる。
(a1)230℃、2.16kg荷重下のMFRが0.3~5.0g/10分
(a2)エチレン含有量が3.0~8.0質量%
(a3)DSCにより測定される融点が135~150℃
(a4)ロックウェル硬さ(JIS K7202)が65~90
(b1)190℃、2.16kg荷重下のMFRが0.3~3.0g/10分
(b2)密度が890~915kg/m3
(b3)GPCで測定して求められる分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下
(c1)ショアーA硬度(ASTM D2240)が65~90
(c2)融点が130~170℃
(c3)密度(ASTM D1505)が860~875kg/m3
(c4)DSC測定によるガラス転移温度が-25~-35℃
【0016】
〈プロピレン系樹脂(A)〉
プロピレン系樹脂(A)は、前記要件(a1)~(a4)のすべてを満たせば特に制限されない。
前記樹脂組成物は、2種以上のプロピレン系樹脂(A)を含んでもよい。
【0017】
プロピレン系樹脂(A)の230℃、2.16kg荷重下のメルトフローレート(MFR)は、0.3~5.0g/10分であり、好ましくは0.5g/10分以上であり、好ましくは3.0g/10分以下である。
MFRが前記範囲にあると、成形性に優れる樹脂組成物を容易に得ることができる。
MFRが0.3g/10分未満であると、前記樹脂組成物の押出成形性が悪く、5.0g/10分を超えるとブロー成形時にドローダウンが起こりやすくなる。
前記MFRは、JIS K7210に基づく方法で測定できる。
【0018】
プロピレン系樹脂(A)は、少なくともエチレン由来の構成単位を含み、その含有量(エチレン含有量)は3.0~8.0質量%であり、好ましくは4.0~7.0質量%、より好ましくは4.0~6.0質量%である。
エチレン含有量が前記範囲にあるプロピレン系樹脂(A)を用いることで、121℃以上の高温滅菌に耐え得る耐熱性、透明性、耐衝撃性および耐ブロッキング性にバランスよく優れ、特に透明性および柔軟性に優れる容器を容易に得ることができる。
なお、ここでいう「エチレン含量」は、エチレンの仕込み量から算出してもよいし、後述する実施例に示すとおり、13C-NMRにより測定した値であってもよい。
【0019】
プロピレン系樹脂(A)は、プロピレン由来の構成単位およびエチレン由来の構成単位の他に、他の構成単位、好ましくは炭素数4~20のα-オレフィン由来の構成単位を含んでいてもよい。プロピレン系樹脂(A)に含まれ得る前記他の構成単位は、1種でもよく、2種以上でもよい。
プロピレン系樹脂(A)に含まれ得る前記他の構成単位は、好ましくは0~4質量%である。
【0020】
プロピレン系樹脂(A)のDSCにより測定される融点は、135~150℃であり、好ましくは136~145℃である。
融点が前記範囲にあるプロピレン系樹脂(A)を用いることで、121℃以上の高温滅菌に耐え得る耐熱性、透明性、耐衝撃性および耐ブロッキング性にバランスよく優れ、特に耐熱性および透明性に優れ、高温滅菌後にも変形が起こりにくい容器を容易に得ることができる。
前記融点が135℃未満であると、得られる容器の耐熱性および耐ブロッキング性が低下し、121℃以上での滅菌処理後に、容器の変形が起こりやすくなる。前記融点が150℃を超えると、得られる容器の耐衝撃性が低下し、121℃以上での滅菌処理後に、透明性が低下しやすくなる。
前記融点は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定できる。
【0021】
プロピレン系樹脂(A)のJIS K7202に基づいて測定されるロックウェル硬さは、65~90であり、好ましくは70~90、より好ましくは70~85である。
ロックウェル硬さが前記範囲にあるプロピレン系樹脂(A)を用いることで、121℃以上の高温滅菌に耐え得る耐熱性、透明性、耐衝撃性および耐ブロッキング性にバランスよく優れる容器を容易に得ることができる。
【0022】
プロピレン系樹脂(A)の製造方法としては、前記要件(a1)~(a4)を満たす樹脂を得ることができる限り特に限定されないが、触媒存在下に連鎖移動剤となる水素ガスを用いる重合方法が好ましい。
前記触媒としては、メタロセン化合物を含有する触媒またはチーグラーナッタ触媒等を使用できるが、立体規則性に優れるプロピレン単独重合成分を含むプロピレン系樹脂(A)を容易に得ることができる等の点から、チーグラーナッタ触媒を使用することが好ましい。
前記チーグラーナッタ触媒としては、公知の種々の触媒を使用することができ、具体的には、例えば、(a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含有する固体状チタン触媒成分と、(b)有機金属化合物触媒成分と、(c)有機ケイ素化合物触媒成分とを含む触媒を用いることができる。
【0023】
前記樹脂組成物は、プロピレン系樹脂(A)とエチレン系樹脂(B)とプロピレン系エラストマー樹脂(C)との合計100質量%に対し、前記プロピレン系樹脂(A)を57~75質量%、好ましくは62~75質量%含む。
プロピレン系樹脂(A)の含有量が前記範囲にあると、121℃以上の高温滅菌に耐え得る耐熱性、透明性、耐衝撃性および耐ブロッキング性にバランスよく優れ、特に耐ブロッキング性および柔軟性に優れ、高温滅菌後にも変形が起こりにくい容器を容易に得ることができる。
プロピレン系樹脂(A)の含有量が57質量%未満の場合、得られる容器は、耐ブロッキング性が悪くなり、高温滅菌後に変形が起こりやすくなる。プロピレン系樹脂(A)の含有量が75質量%を超えると、得られる容器は柔軟性に劣るため、該容器を用いた場合、薬液等の収容物の投与開始時と終了付近の投与速度に変化が生じる場合がある。
【0024】
〈エチレン系樹脂(B)〉
エチレン系樹脂(B)は、前記要件(b1)~(b3)のすべてを満たせば特に制限されない。
前記樹脂組成物は、2種以上のエチレン系樹脂(B)を含んでもよい。
【0025】
エチレン系樹脂(B)の190℃、2.16kg荷重下のMFRは、0.3~3.0g/10分であり、好ましくは0.5g/10分以上であり、好ましくは2.5g/10分以下である。
MFRが前記範囲にあると、成形性に優れる樹脂組成物を容易に得ることができる。
MFRが0.3g/10分未満であると、前記樹脂組成物の押出成形性が悪化する場合があり、3.0g/10分を超えるとブロー成形時にドローダウンが起こりやすくなる。
前記MFRは、JIS K7210に基づく方法で測定できる。
【0026】
エチレン系樹脂(B)の密度は、890~915kg/m3であり、好ましくは895~915kg/m3、より好ましくは895~910kg/m3である。
密度が前記範囲にあるエチレン系樹脂(B)を用いることで、121℃以上の高温滅菌に耐え得る耐熱性、透明性、耐衝撃性および耐ブロッキング性にバランスよく優れ、特に透明性、耐ブロッキング性および耐衝撃性に優れる容器を容易に得ることができる。
エチレン系樹脂(B)の密度が前記範囲を下回ると、得られる容器の透明性および耐ブロッキング性が悪化する場合があり、前記範囲を上回ると、得られる容器の透明性および耐衝撃性が悪化する場合がある。
前記融点は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定できる。
【0027】
エチレン系樹脂(B)のGPCで測定して求められる分子量分布(Mw/Mn)は3.5以下であり、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは1.5~3.0である。
分子量分布が前記範囲にあるエチレン系樹脂(B)を用いることで、121℃以上の高温滅菌に耐え得る耐熱性、透明性、耐衝撃性および耐ブロッキング性にバランスよく優れる容器を容易に得ることができる。
前記分子量分布は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定、算出できる。
【0028】
エチレン系樹脂(B)は、前記要件(b1)~(b3)のすべてを満たせば特に制限されないが、エチレンと、特に、炭素数4以上のα-オレフィンとのエチレン・α-オレフィン共重合体であることが好ましい。
該α-オレフィンとしては、炭素数4~20のα-オレフィンがより好ましく、炭素数4~10のα-オレフィンがさらに好ましく、1-ヘキセンが特に好ましい。
前記エチレン・α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィン由来の構成単位の含有量は、好ましくは6~20質量%である。
【0029】
エチレン系樹脂(B)としては、前記要件(b1)~(b3)を満たす樹脂であれば特に制限されず、従来公知の方法で合成して得てもよく、市販のエチレン系ポリマーを使用してもよい。
なお、エチレン系樹脂(B)は、2種以上のエチレン系重合体を組み合わせて、前記(b1)~(b3)の要件を同時に満たすようにしてもよい。
【0030】
前記樹脂組成物は、プロピレン系樹脂(A)とエチレン系樹脂(B)とプロピレン系エラストマー樹脂(C)との合計100質量%に対し、前記エチレン系樹脂(B)を10~25質量%、好ましくは15~25質量%含む。
エチレン系樹脂(B)の含有量が前記範囲にあると、121℃以上の高温滅菌に耐え得る耐熱性、透明性、耐衝撃性および耐ブロッキング性にバランスよく優れ、特に耐衝撃性および柔軟性に優れ、高温滅菌後にも変形が起こりにくい容器を容易に得ることができる。
エチレン系樹脂(B)の含有量が10質量%未満の場合、得られる容器の耐衝撃性、柔軟性が悪くなる。エチレン系樹脂(B)の含有量が25質量%を超えると、得られる容器は、高温滅菌後に変形が起こりやすくなる。
【0031】
〈プロピレン系エラストマー樹脂(C)〉
プロピレン系エラストマー樹脂(C)は、50モル%以上のプロピレン由来の構成単位と炭素数2、4~20のα-オレフィン由来の構成単位(ただし、プロピレン由来の構成単位とα-オレフィン由来の構成単位の合計を100モル%とする)とを含み、前記要件(c1)~(c4)のすべてを満たせば特に制限されない。
なお、炭素数2、4~20のα-オレフィンは、プロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィンと同義である。
前記樹脂組成物は、2種以上のプロピレン系エラストマー樹脂(C)を含んでもよい。
【0032】
プロピレン系エラストマー樹脂(C)の原料となる炭素数2、4~20のα-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。前記α-オレフィンは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
前記α-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテンが好ましい。
【0033】
プロピレン系エラストマー樹脂(C)は、プロピレン由来の構成単位と、エチレン由来の構成単位と、炭素数4~10のα-オレフィン由来の構成単位とを含む共重合体であることが好ましく、これらの3つの構成単位のみからなる共重合体であることがより好ましい。
【0034】
プロピレン系エラストマー樹脂(C)における、プロピレン由来の構成単位量は、プロピレン由来の構成単位と炭素数2、4~20のα-オレフィン由来の構成単位との合計100モル%に対し、50モル%以上であり、好ましくは50~99モル%、より好ましくは60~99モル%である。
プロピレン系エラストマー樹脂(C)中の各構成単位の含量は13C-NMRを用いて測定できる。
【0035】
プロピレン系エラストマー樹脂(C)の、ASTM D2240に基づいて測定したショアーA硬度は、65~90であり、好ましくは68以上であり、好ましくは85以下である。
ショアーA硬度が前記範囲にあるプロピレン系エラストマー樹脂(C)を用いることで、121℃以上の高温滅菌に耐え得る耐熱性、透明性、耐衝撃性および耐ブロッキング性にバランスよく優れ、特に柔軟性および耐ブロッキング性に優れる容器を容易に得ることができる。
ショアーA硬度が65未満であると、前記樹脂組成物からなる層を含む容器の高温滅菌処理をした後の耐ブロッキング性が悪化する場合があり、90を超えると柔軟性が悪化する場合がある。
【0036】
前記ショアーA硬度は、プロピレン系エラストマー樹脂(C)を、下記プレス成形条件で成形することで、2mm厚のプレスシートを得、得られたプレスシートを23℃で72時間静置した後、該静置後のプレスシート2枚を重ね、そこに、ゴム硬度計(ショアA型)の押針を接触させた直後の目盛りの値(ASTM D2240に準拠)である。
プレス成形条件:温度;190℃、加熱・加圧時間;7分間、冷却;15℃チラー
【0037】
プロピレン系エラストマー樹脂(C)の融点は130~170℃であり、好ましくは135~165℃である。
融点が前記範囲にあるプロピレン系エラストマー樹脂(C)を用いることで、121℃以上の高温滅菌に耐え得る耐熱性、耐衝撃性および耐ブロッキング性にバランスよく優れ、特に耐熱性に優れ、高温滅菌後にも変形が起こりにくい容器を容易に得ることができる。
【0038】
前記融点は、プロピレン系エラストマー樹脂(C)10mg程度をアルミパンに詰め、(i)100℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、(ii)10℃/分で-150℃まで降温し、次いで(iii)10℃/分で200℃まで昇温した時の(iii)で観察される吸熱ピークの温度である。
吸熱ピークが複数ある場合はピークの高さが最大となる吸熱ピークの温度が融点である。
【0039】
プロピレン系エラストマー樹脂(C)の密度は、860~875kg/m3であり、好ましくは860~872kg/m3である。
密度が前記範囲にあるプロピレン系エラストマー樹脂(C)を用いることで、121℃以上の高温滅菌に耐え得る耐熱性、透明性、耐衝撃性および耐ブロッキング性にバランスよく優れ、特に透明性、柔軟性および耐衝撃性に優れる容器を容易に得ることができる。
【0040】
プロピレン系エラストマー樹脂(C)の密度は、前記ショアーA硬度を測定する際と同様にして得られたプレスシートを、23℃で72時間静置した後、ASTM D1505に準拠する方法で測定した値である。
【0041】
プロピレン系エラストマー樹脂(C)のDSCで測定したガラス転移温度(Tg)は、-25~-35℃であり、好ましくは-26~-33℃である。
Tgが前記範囲にあるプロピレン系エラストマー樹脂(C)を用いることで、柔軟性および耐衝撃性に優れる容器を容易に得ることができる。
【0042】
前記Tgは、プロピレン系エラストマー樹脂(C)10mg程度を専用のアルミパンに詰め、(i)30℃から200℃まで200℃/minで昇温し、200℃で5分間保持した後、(ii)200℃から-100℃まで10℃/minで降温し、-100℃で5分間保持した後、次いで(iii)10℃/minで昇温した時の、(iii)の際に得られるDSC曲線より求めた値である。
なお、実施例ではセイコーインスツル(株)製のDSCRDC220を用いた。
【0043】
プロピレン系エラストマー樹脂(C)は、前記(c1)~(c4)を満たすとともに、下記要件(c5)および(c6)の一方を満たすことが好ましく、下記要件(c5)および(c6)の両方を満たすことがより好ましい。
【0044】
(c5):ヘイズ(内部ヘイズ)が15%未満である。
前記ヘイズは、好ましくは10%未満である。
ヘイズが前記範囲にあるプロピレン系エラストマー樹脂(C)を用いることで、特に透明性に優れる容器を容易に得ることができる。
【0045】
前記へイズ(内部ヘイズ)は、前記ショアーA硬度を測定する際と同様にして得られたプレスシートを、23℃で72時間静置した後、日本電色工業(株)製のデジタル濁度計(NDH-2000)を用いて、シクロヘキサノール溶液中で、C光源による拡散透過光量およびC光源による全透過光量を測定し、下記式により算出した値である。
ヘイズ(%)=100×(拡散透過光量)/(全透過光量)
【0046】
(c6):MFR(ASTM D1238に準拠して230℃、荷重2.16kgで測定)が、3~15g/10分である。
前記MFRは、好ましくは5~10g/10分である。
MFRが前記範囲にあると、成形性に優れる樹脂組成物を容易に得ることができる。
【0047】
プロピレン系エラストマー樹脂(C)としては、前記要件(c1)~(c4)を満たす樹脂であれば特に制限されず、従来公知の方法で合成して得てもよく、市販のエラストマーを使用してもよい。該市販のエラストマーとしては、例えば、三井化学(株)製「タフマー PN」等が挙げられる。
【0048】
前記樹脂組成物は、プロピレン系樹脂(A)とエチレン系樹脂(B)とプロピレン系エラストマー樹脂(C)との合計100質量%に対し、前記プロピレン系エラストマー樹脂(C)を10~18質量%、好ましくは10~15質量%含む。
プロピレン系エラストマー樹脂(C)の含有量が前記範囲にあると、121℃以上の高温滅菌に耐え得る耐熱性、透明性、耐衝撃性および耐ブロッキング性にバランスよく優れ、特に耐ブロッキング性および柔軟性に優れる容器を容易に得ることができる。
プロピレン系エラストマー樹脂(C)の含有量が10質量%未満の場合、得られる容器の柔軟性が悪くなる。プロピレン系エラストマー樹脂(C)の含有量が18質量%を超えると、得られる容器の耐ブロッキング性が悪くなる。
【0049】
〈各種添加剤〉
前記樹脂組成物には、さらに必要に応じて、スチレン系樹脂を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもよい。また、前記樹脂組成物は、前記樹脂(A)~(C)の合成の際に用いられる、酸化防止剤、造核剤、滑剤、アンチブロッキング剤、種々の合成樹脂等の各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で含んでいてもよく、さらに必要に応じて、これら各種添加剤を前記樹脂組成物に本発明の目的を損なわない範囲で配合してもよい。
【0050】
〈樹脂組成物の調製方法〉
前記樹脂組成物は、種々公知の製造方法により調製することができる。例えば、予め得られたプロピレン系樹脂(A)とエチレン系樹脂(B)とプロピレン系エラストマー樹脂(C)とを前記の量で、必要に応じて各種添加剤を配合して、例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、バンバリーミキサーなどの種々公知の装置を用いてドライブレンドする方法、同様に各成分を配合した後、単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダーまたはロール等の種々公知の混練機を使用して、170~300℃、好ましくは190~250℃で溶融混練する方法が挙げられる。
【0051】
<容器>
本容器は、前記樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有すれば特に制限されない。
本容器は、医療用および食品用、特に医療用に好適に使用され、特に輸液用に好適に使用される。具体的には、レトルトパウチに代表される食品包装用容器、輸液バッグや輸液ボトルなどの医療用容器、121℃以上の高温条件下での滅菌が必要な内容物を収容する容器として好適に使用される。
【0052】
本容器は、前記樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有すればよく、該層単層からなる容器(下記キャップや筒部材等を除く部分が該層単層の容器)、該層を2層以上有する容器、該層と他の層との多層からなる容器のいずれでもよいが、成形の際の簡便化等の点から、胴部(収容物に接する部分)が前記樹脂組成物からなる層単層である容器、さらには、下記キャップや筒部材等を除く部分が前記樹脂組成物からなる層単層である容器が好ましい。
本容器は、このように単層で形成されたものであっても、121℃以上の滅菌処理後に変形やブロッキング、シワが起こりにくいため、従来の容器よりも種々の点で優れている。
【0053】
本容器の形状は該容器の用途によって任意に選べばよく、特に限定されないが、一般的にボトル形状やバッグ形状等が挙げられる。また、該容器の成形方法もその形状の容器が得られる限り特に制限されないが、好ましくはブロー成形、水冷インフレーション成形、空冷インフレーション成形、Tダイキャスト成形等が挙げられる。
【0054】
本容器は、滅菌が必要な内容物を収容する容器に好適に使用される。該滅菌の方法は特に制限されず、所望の容器の用途に応じて要求される滅菌方法を採用すればよい。本容器は、高温で滅菌しても、ブロッキング、シワおよび変形等が起こらず、耐熱性、透明性、耐衝撃性および耐ブロッキング性に優れるため、前記滅菌方法として、様々な方法を採用することができる。
前記滅菌方法としては、例えば、薬液などの輸液を収容する容器(薬液ボトルまたは薬液バッグ)の場合、通常、容器に輸液を収容し、密封した状態で、高圧蒸気滅菌、熱水シャワー滅菌などの公知の加熱滅菌処理を行う方法が挙げられる。この際には、収容物の種類、用法、使用環境などに合わせて、滅菌処理温度を105~121℃に設定することもできる。
【0055】
本容器は、121℃で15分間、高温滅菌処理をした後、第十七改正日本薬局方に記載の「7.02 プラスチック製医薬品容器試験法」における透明性試験第1法に基づく、紫外可視吸光度測定法による波長450nmの光の透過率が、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上である。
なお、121℃で15分間の高温滅菌処理をした後の透過率が55%以上を満たす場合は、116℃で26分間、高温滅菌処理をした場合に、前記透過率が55%以上になるとみなすことができる。
【0056】
本容器の前記滅菌処理後のヘイズは、好ましくは50%以下、より好ましくは45%以下である。
該へイズは、JIS K7136の方法に従い、測定、算出することができる。
【0057】
本容器の一態様としては、輸液ボトルが好ましく、具体的には、
図1に示すような輸液ボトル10等が挙げられる。
図1に示す輸液ボトル10は、胴部11、肩部12、首部13、キャップ14および輸液スタンド等につり下げるための穴を設けた吊部15を備える。
【0058】
輸液ボトル10では、キャップ14を除く部分が、前記樹脂組成物からなる層を含むことが好ましく、該層単層からなることがより好ましい。
前記吊部15は、キャップ部を上にして置く際に折りたたみ可能な構成であることが好ましい。また、吊部を有さない容器を形成した後、別途作成した吊部を取り付けてもよい。
【0059】
本容器がボトル形状である場合、その容器の胴部の厚みは、好ましくは0.01~1.00mm、より好ましくは0.10~0.80mmである。
該胴部の厚みとは、平均厚みを意味し、その測定は、
図1(a2)に示す8点の厚みを測定し、その平均値をとったものである。
【0060】
本容器がボトル形状である場合、その容器の首部の厚みは、好ましくは0.01~5.00mm、より好ましくは1.00~3.00mmである。
該首部の厚みとは、容器のキャップの付け根から肩部Dにかけての中央部Cの厚みを測定したものである。
【0061】
本容器がボトル形状である場合、その容器の肩部の厚みは、好ましくは0.01~2.00mm、より好ましくは0.10~1.00mmである。
該肩部の厚みとは、容器の肩部Dの厚みを測定したものである。
【0062】
本容器の他の一態様としては、輸液バッグが好ましく、具体的には、
図2に示すような輸液バッグ20等が挙げられる。
図2に示す輸液バッグ20は、胴部である液収納部21を囲むシール部22が設けられ、液収納部21に薬液などを流出入させるための筒部材23が係合されている。シール部22の筒部材23の反対側には輸液スタンド等につり下げるための穴24が設けられている。
【0063】
輸液バッグ20では、胴部である液収容部21を構成するフィルムが、前記樹脂組成物からなる層を含むことが好ましい。
【0064】
本容器がバッグ形状である場合、その容器の胴部(液収納部)の厚みは、好ましくは0.01~1.00mm、より好ましくは0.10~0.50mm、さらに好ましくは0.15~0.30mmである。
該胴部の厚みとは、例えば
図2(b1)に示す25の領域について任意の10点の厚みを測定し、その平均値をとったものである。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は係る実施例に限定されない。
【0066】
<プロピレン系樹脂(A)>
プロピレン系樹脂(A)として、以下のPP1およびPP2を用いた。
「PP1」:下記製造例1により製造したプロピレン系樹脂
「PP2」:「プライムポリプロ E111G」(株)プライムポリマー製
【0067】
[製造例1]PP1の製造
(1)固体状チタン触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442mlおよび2-エチルヘキシルアルコール390.6gを130℃で2時間反応させて均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに130℃で1時間攪拌混合を行い、無水フタル酸を溶解させた。
このようにして得られた均一溶液の75mlを室温まで冷却した後、-20℃に保持した四塩化チタン200ml中に、1時間かけて滴下装入した。装入終了後、得られた混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)5.22gを添加し、さらに2時間同温度にて攪拌保持した。
2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を275mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間加熱した。加熱終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンを用いて、液体中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄することで、固体状チタン触媒成分を調製した。
このように調製された固体状チタン触媒成分はヘキサンスラリーとして保存したが、このうち一部を乾燥して触媒組成を調べた。結果、固体状チタン触媒成分は、チタンを2.3質量%、塩素を61質量%、マグネシウムを19質量%およびDIBPを12.5質量%の量で含有していた。
【0068】
(2)前重合触媒
前記(1)で調製した固体状チタン触媒成分87.5g、トリエチルアルミニウム19.5mLおよびヘプタン10Lを内容量20Lの攪拌機付きオートクレーブに装入し、内温を15~20℃に保ち、そこにプロピレンを263g装入し、攪拌しながら100分間反応させた。反応終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行うことで、前重合触媒を得た。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体状チタン触媒成分の濃度が0.7g/Lとなるよう、ヘプタンを用いて調整することで前重合触媒スラリーを得た。
【0069】
(3)本重合
内容積500Lの攪拌機付き重合槽に、液化プロピレンを300L装入し、この液位を保ちながら、液化プロピレン130kg/h、前重合触媒スラリーを固体状チタン触媒成分として0.9g/h、トリエチルアルミニウム4.9ml/h、および、ジシクロペンチルジメトキシシラン8.3ml/hを連続的に供給し、70℃で重合した。また、重合槽内の気相部の水素濃度が0.4mol%、エチレン濃度が2.0mol%となるように、水素およびエチレンを連続的に供給した。
得られたスラリーを失活後、液体プロピレンによる洗浄槽に送液し、共重合体を洗浄した後、プロピレンを蒸発させることで、パウダー状のプロピレン・エチレン共重合体(PP1)を得た。
【0070】
プロピレン系樹脂「PP1」~「PP2」の物性を表1に示す。各物性の測定方法は以下の通りである。
【0071】
・メルトフローレート(MFR:g/10分)
JIS K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重(kgf)の条件下で測定した。
【0072】
・エチレン含有量(質量%:mass%と記す)
エチレンに由来する構成単位の含有量(エチレン含有量)を測定するために、サンプル20~30mgを1,2,4-トリクロロベンゼン/重ベンゼン(2:1)溶液0.6mlに溶解し、得られた溶液を用いて炭素核磁気共鳴分析(13C-NMR)を行った。プロピレン、エチレン、α-オレフィンの定量はダイアッド連鎖分布より求めた。例えば、プロピレン-エチレン共重合体の場合、PP=Sαα、EP=Sαγ+Sαβ、EE=1/2(Sβδ+Sδδ)+1/4Sγδを用い、以下の計算式(Eq-1)および(Eq-2)により求めた。なお、本実施例におけるエチレン含有量の単位は、質量%に換算して表記した。
プロピレンに由来する構成単位の含有量(mol%)=(PP+1/2EP)×100/[(PP+1/2EP)+(1/2EP+EE)]・・・(Eq-1)
エチレンに由来する構成単位の含有量(mol%)=(1/2EP+EE)×100/[(PP+1/2EP)+(1/2EP+EE)]・・・(Eq-2)
【0073】
なお、前記Sααなどは、ピーク強度であり、J.C.Randall(Review Macromolecular Chemistry Physics,C29,201(1989))に記載された方法に従って解析された値である。
【0074】
・融点
結晶融点は、JIS K7121に従って、示差走査熱量計(DSC、パーキンエルマー社製「Diamond DSC」)を用いて、下記測定条件にて測定を行うことにより求めた。なお、下記測定条件で測定を行った際の、第3ステップにおける吸熱ピークの頂点を融点とした。吸熱ピークが複数ある場合はピークの高さが最大となる吸熱ピーク頂点を融点とした。
(測定条件)
測定環境:窒素ガス雰囲気
サンプル量:5mg
サンプル形状:プレスフィルム(230℃で成形、厚み400μm)
サンプルパン:底が平面のアルミ製サンプルパン
第1ステップ:30℃より10℃/minで200℃まで昇温し、10分間保持する
第2ステップ:10℃/minで30℃まで降温する
第3ステップ:10℃/minで200℃まで昇温する
【0075】
・ロックウェル硬さ
ロックウェル硬さは、JIS K7202に従って、Rスケールにて測定した。
【0076】
【0077】
<エチレン系樹脂(B)>
エチレン系樹脂(B)として以下のPE1~PE3を用いた。
「PE1」:エボリュー SP0511、(株)プライムポリマー製
「PE2」:エボリュー SP1022、(株)プライムポリマー製
「PE3」:タフマー A-0585X、Mitsui Elastomers Singapore社製
【0078】
使用するエチレン系樹脂「PE1」~「PE3」の物性を表2に示す。各物性の測定方法は以下の通りである。
【0079】
・メルトフローレート(MFR:g/10分)
JIS K7210に準拠し、190℃、2.16kg荷重(kgf)の条件下で測定した。
【0080】
・密度[kg/m3]
JIS K7112に準拠し、MFR測定時に得られるストランドを100℃で1時間熱処理し、さらに室温で1時間放置した後に密度勾配管法で測定した。
【0081】
・Mw/Mn
ウォーターズ社製のGPC-150C Plusを用い、以下のようにして、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、これらの値から分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
分離カラムは、TSKgel GMH6-HTおよびTSKgel GMH6-HTL(カラムサイズはそれぞれ、内径:7.5mm、長さ:600mm)を用い、カラム温度を140℃とし、移動相には、0.025質量%のジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤、和光純薬工業(株)製)を含むo-ジクロロベンゼン(和光純薬工業(株)製)を用い、流速を1.0ml/分とし、試料濃度を0.1質量%とし、試料注入量を500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。
標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×106の場合には東ソー(株)製を用い、1000≦Mw≦4×106の場合にはプレッシャーケミカル社製を用いた。
【0082】
【0083】
<プロピレン系エラストマー樹脂(C)>
プロピレン系エラストマー樹脂(C)として、三井化学(株)製のタフマー PN3050を使用した。このプロピレン系エラストマー樹脂はプロピレン由来の構成単位の含有量が72モル%であり、プロピレン由来の構成単位以外の構成単位としてエチレン由来の構成単位および1-ブテン由来の構成単位を含有する。
【0084】
また、その物性は、ショアーA硬度(ASTM D2240)が70、融点が160℃、密度(ASTM D1505)が866kg/m3、DSC測定によるガラス転移温度(Tg)が-29℃、ヘイズが6%、MFR(ASTM D1238)が6g/10分である。
これらの物性は、前述のとおり測定した値である。
【0085】
[実施例1]500mLボトルの製造
表3に示すプロピレン系樹脂(A)、エチレン系樹脂(B)およびプロピレン系エラストマー樹脂(C)を表3に示す比で配合し、これら樹脂の合計100質量部に対して、酸化防止剤(イルガノックス 1010、BASF社製)500ppm、および、ハイドロタルサイトDHT-4A(協和化学工業(株)製)400ppmを添加し、これらを二軸混練機((株)神戸製鋼所製、スクリュー径30mm)で混練することで樹脂組成物を得た。
【0086】
得られた樹脂組成物を、(株)タハラ製ブロー成形機を用いて、シリンダー温度200℃、ダイス温度200℃、金型温度15℃の条件で、胴部の平均厚みが約0.5mm、首部の平均厚みが約2.0mm、肩部の平均厚みが約0.7mmとなるように中空成形(ボトル)した。当該ボトルは、胴部の形状、具体的には
図1(a1)のA-A断面の形状がL84×W61×H147の楕円形状であり、首部の形状、具体的には
図1(a1)のC部分の断面の形状がΦ21×H19の真円形状であった。
【0087】
前記胴部の平均厚みは、滅菌処理後のボトルの胴部のうち
図1(a2)に示す8点の厚みを、オリンパス(株)製、Magna-Mike8500を用いて測定した平均値である。
前記首部の平均厚みは、滅菌処理後のボトルのキャップの付け根から肩
部Dまでの中央部C(
図1(a1))の厚みを、オリンパス(株)製、Magna-Mike8500を用いて測定した平均値である。
前記肩部の平均厚みは、滅菌処理後のボトルの肩部D(
図1(a1))の厚みを、オリンパス(株)製、Magna-Mike8500を用いて測定した平均値である。
【0088】
[実施例2~6および比較例1~4]500mLボトルの製造
表3に示すプロピレン系樹脂(A)、エチレン系樹脂(B)およびプロピレン系エラストマー樹脂(C)を表3に示す比で配合し、これら樹脂の合計100質量部に対して、酸化防止剤(イルガノックス 1010、BASF社製)500ppm、核剤(アデカスタブNA-11、(株)ADEKA)50ppm、および、ハイドロタルサイトDHT-4A(協和化学工業(株)製)400ppmを添加し、これらを二軸混練機((株)神戸製鋼所製、スクリュー径30mm)で混練することで樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にしてボトルを製造した。
【0089】
<引張弾性率>
前記実施例1~6および比較例1~4で作製した樹脂組成物からISO295に従い試験片を作製し、JIS K7161に従い測定した。
【0090】
<シャルピー衝撃強度>
前記実施例1~6および比較例1~4で作製した樹脂組成物からISO295に従い試験片を作製し、JIS K7111に従い、0℃の条件にて測定した。
【0091】
<滅菌処理>
得られたボトルに500mLの蒸留水を充填し、栓をした後、(株)日阪製作所製の熱水スプレー式滅菌装置を用いて、滅菌温度121℃で15分間滅菌処理を行い、その後室温まで冷却した。
【0092】
<外観評価>
前記滅菌処理後のボトルの外観を、下記の項目に従って目視で評価した。
○:首部・肩部および胴部のいずれも、滅菌後の変形、シワ共に滅菌前から変化無し
×:首部・肩部および胴部のいずれかに、滅菌後に変形またはシワが認められた
【0093】
<ブロッキング>
前記滅菌処理後のボトルの胴部のべた付きの感触を下記の基準で評価した。
○:べた付きが感じられない
×:べた付きが感じられる
【0094】
<ヘイズ>
前記滅菌処理後のボトルの胴部からJIS K7136に従い試験片を作製し、該試験片を用いてJIS K7136の方法に従い、測定、算出した。なお、前記測定した平均厚みに基づいて、ヘイズを換算し、評価した。
【0095】
<波長450nmの透過率>
前記滅菌処理前後のボトルを用い、第十七改正日本薬局方に記載の透明性試験第1法に基づいて、紫外可視吸光度測定法により、波長450nmの光の透過率を測定した。
具体的には、前記滅菌処理前後のボトルそれぞれの胴部中央付近(
図1(a1)の16)から縦5cm×横5cmの試験片を切り取り、該切り取った試験片を水中に沈め、(株)島津製作所製のUV-1800を用いて、当該試験片の左右両端の縦5cm×横0.9cmおよび中央の縦5cm×横0.9cmの領域における波長450nmの光の透過率を測定し、その平均値を算出した。なお、前記測定した平均厚みに基づいて、透過率を換算し、評価した。
【0096】
【符号の説明】
【0097】
10:輸液ボトル
11:胴部
12:肩部
13:首部
14:キャップ
15:吊部
16:水中光線透過率測定箇所
20:輸液バッグ
21:胴部(液収納部)
22:シール部
23:筒部材
24:穴