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特許7073174透過性を有するオプティカル・カプラのアクティブ・マトリクス・アレイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】透過性を有するオプティカル・カプラのアクティブ・マトリクス・アレイ
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/144 20060101AFI20220516BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20220516BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
H01L27/144 Z
H01L31/02 D
H01L31/10 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018072211
(22)【出願日】2018-04-04
(65)【公開番号】P2018190961
(43)【公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】15/582,296
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ジェンピン・ルー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ワイ・マエダ
(72)【発明者】
【氏名】ソーロブ・レイチャウデユーリ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・ケイ・ビーゲルセン
(72)【発明者】
【氏名】ユージン・エム・チャウ
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-225612(JP,A)
【文献】特開昭60-193384(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0212510(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/10
H01L 31/0232
H01L 27/144
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の面を有するバックプレーンであって、
バックプレーンの出力面上に配列される出力端子のアレイと、
それぞれが前記出力端子のうちの1つに対応する、ソリッドステートの光スイッチのアレイであって、前記ソリッドステートの光スイッチが制御波長の光に反応し、前記制御波長は前記光スイッチを作動させ、検知波長の光に対して透過性を有し、前記検知波長は画像を形成し、前記制御波長とは異なる、ソリッドステートの光スイッチのアレイと、
を含み、
前記バックプレーンは前記検知波長の光に対して透過性を有する領域を少なくとも有する材料から成る、
バックプレーン。
【請求項2】
前記光スイッチのうちの選択される光スイッチが、前記制御波長の光により作動すると、入力電圧が前記出力端子に連結するように、前記ソリッドステートの光スイッチのアレイに接続する前記入力電圧をさらに含む、請求項1に記載のバックプレーン。
【請求項3】
前記制御波長および前記検知波長が直交波長の光を含む、請求項1に記載のバックプレーン。
【請求項4】
前記制御波長がグリーン光を含み、前記検知波長が近赤外線光を含む、請求項3に記載のバックプレーン。
【請求項5】
前記バックプレーンの前記複数の面のうちの少なくとも1が、前記検知波長および前記制御波長での制御光反射率の誘電層で被覆される、請求項1に記載のバックプレーン。
【請求項6】
光学システムであって、
オプティカル・カプラのアレイを有するバックプレーンと、
前記オプティカル・カプラが反応する制御波長の光を生成するプロジェクタと、
前記制御波長の光を、並べられる画像状のようにバックプレーン上の前記オプティカル・カプラの前記アレイに誘導し、前記オプティカル・カプラを作動させるための光学系と、
検知波長の光に反応する画像形成システムと、
を含み
前記バックプレーンが、前記検知波長に対して透過性を有する領域を少なくとも有し、前記画像形成システムが、前記検知波長の光から画像を形成する、
光学システム。
【請求項7】
前記制御波長の光と前記検知波長の光を組み合わせる、または分離するために、前記プロジェクタからの前記光の経路内の少なくとも1つのダイクロイックミラーをさらに含む、請求項6に記載の光学システム。
【請求項8】
前記画像形成システムが、ビデオカメラを有する視覚システムを含む、請求項6に記載の光学システム。
【請求項9】
前記ダイクロイックミラーから反射される光を受け取るようビデオカメラが配列される、請求項7に記載の光学システム。
【請求項10】
前記オプティカル・カプラが、前記検知波長の光に反応しない、請求項6に記載の光学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オプティカル・カプラのアレイに関する、より具体的には、アクティブ・スイッチング・マトリクスを用いるオプティカル・カプラのアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、アクティブ・マトリクス・アレイは、トランジスタのアレイから成り、数多くの電子素子へのアクセスを提供する。これらのアレイは、通常、液晶ディスプレイ(LCD)や有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイなどの高密度発光素子をアドレス指定する。これらの光素子にアクセスするために用いるアクティブ・マトリクス・アレイは、平面パネルディスプレイを容易にするために薄くつくられている。アクティブ・マトリクスのアドレス指定は、高電圧で作動する電子素子も制御することができる。高電圧のアプリケーションには、通常、制御回路と出力回路の間に数種類の電気絶縁体が含まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
米国特許公報第2016/0351584号明細書に記載される従来のアプローチでは、システムがバックプレーンを一方の面からアドレス指定し、作動させ、作動の結果の検知は他方の面から行う。バックプレーンは、前方と後方で光のパターンが違う。しかし、状況によっては、アドレス指定する面から作動および検知を行う方が都合のいい場合もある。一実施形態は、バックプレーンの出力面上に配列された出力端子のアレイを有するバックプレーン、およびソリッドステートの光スイッチのアレイであって、各光スイッチは出力端子のうちの1つに対応し、ソリッドステートの光スイッチは制御波長の光に反応する、ソリッドステートの光スイッチのアレイから成り、バックプレーンは、制御波長とは異なる検知波長の光に対して透過性を有する材料から成る。
【0004】
光学システムから成る別の実施形態は、オプティカル・カプラのアレイを有するバックプレーン、オプティカル・カプラが反応する制御波長の光を生成するプロジェクタ、制御光をバックプレーン上のオプティカル・カプラのアレイに誘導する光学系、検知波長の光に反応する画像形成システムを含み、バックプレーンは検知波長に対して少なくとも部分的に透過性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、チップレット・ソーティング・システム内のオプティカル・カプラの実施形態を示す図である。
図2図2は、バックプレーン内の感光性素子の実施形態を示す図である。
図3図3は、バックプレーン内の感光性素子の別の実施形態を示す図である。
図4図4は、OptoCAM装置を通して撮影された写真のグラフである。
図5図5は、OptoCAM装置を通して撮影された写真のグラフである。
図6図6は、あるフォトトランジスタに関する電流-電圧曲線のグラフである。
図7図7は、2つの異なる光の波長を用いる光学アクティブ・マトリクス・バックプレーンを用いる光学システムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
米国特許公報第2016/0351584(‘584)号明細書には、薄膜のオプティカル・カプラを有するアクティブ・マトリクスのバックプレーンが開示される。オプティカル・カプラ、すなわちフォトトランジスタにより、高電圧の入力を低い電圧の制御システムから絶縁させることができる。高電圧の出力により、マイクロ機械システム(MEMS)装置および液晶ディスプレイのような駆動タイプのディスプレイなどの様々なアプリケーションの使用が可能となる。
【0007】
本明細書で用いられる用語オプティカル・カプラすなわちフォトトランジスタとは、光に当てられるとスイッチを作動させる電圧を生成する感光性材料の領域を有する光スイッチのことをいう。ディスプレイなどのピクセル化された光源が、その光源の個々の光を作動させると、バックプレーン上の対応するスイッチを作動させて、スイッチに高電圧入力を出力させる。これにより、ピクセル化された光源の反対側の面の反対側のバックプレーンの面上にパターンを形成する能力が提供される。
【0008】
図1には、そのようなアプリケーションの一例が示されている。オプト・カプラ・アクティブ・マトリクス12すなわちOptoCAMは、光源を有しその面上にパターンを生成し、チップレット13などのランダムに並んだチップレットを取り出し、それらが基板16に付着する前に順番に並べる。フィードバックを提供するために用いるある技術ではビデオカメラなどの視覚システムを用いる。このカメラは、位置18、位置20、および位置22で示されるいくつかの位置のうちのいくつかの位置を撮影することができる。
【0009】
通常透明ではない転写機構14の真下のチップレットは位置18からは見えない。位置20からはチップレットの良好な被写域が有効であるが、若干角度が斜めなので、画質が良くない。OptoCAMバックプレーンが視野をブロックしなければ、位置22により最も正確な画像を撮影するための、最高の位置が提供される。
【0010】
‘584出願では、OptoCAMバックプレーンは透明でよいことが議論されている。しかし、それは論理的に不可能となる。例えば、図1に示されるアプリケーションでは、画像形成システムに照明を提供するために用いる光が、バックプレーン内の光スイッチを作動させ、そのパターンを変える。この問題は、図1の画像形成システムなど、何らかの目的で光を使うどのシステムにも発生する。
【0011】
本明細書の実施形態では、スイッチを作動させるために用いる制御光と画像形成光または検知光(画像形成と検知の両方、またはどちらか一方、あるいはその他と共に検知光と本明細書では呼ばれる)を分離する。本明細書のアプローチでは、波長によりこれを行う。スイッチ内の材料は検知光の波長では透過性を有する材料で構成される。検知光の波長と輝度により、フォトトランジスタ内に特定の最小フォト電流が誘導されないものとする。大抵の場合、半導体は禁制帯を有し(結晶性半導体などの、または非結晶半導体などの状態エネルギー範囲の低密度(これも禁制帯と見なされる))。この禁制帯より高いエネルギーを有する入射光は強く吸収され、禁制帯より低いエネルギーを有する光は弱く吸収され、著しい密度の自由担体を生成する。したがって、制御照明は一般に禁制帯エネルギーより高いエネルギーを有し、検知照明は一般に禁制帯エネルギーより低いエネルギーを有する。
【0012】
図2および図3には、光スイッチの実施形態が示されている。どちらの場合でも、電極、接地面、および高電圧は、通常の金属の代わりにインジウム錫酸化物(ITO)から成る。図2には、ソース32およびドレイン34を有する素子30が示されている。感光性材料36は制御光の波長の光に反応するが、検知光波長の光には反応しない。この実施形態では、ソース、ドレインの材料、および層38はITOから成り、層40、および感光性材料36とドレイン34の間の小さな領域42は、酸化物の誘電体または窒化物誘電体から成る。一実施形態では、感光性材料は非結晶のシリコンから成る。
【0013】
図3では、フォトトランジスタは6層しか使っていない。感光性コンポーネント56は2000オングストロームの厚い層から成る(可能性としては、アモルファスシリコン)。層58および59はインジウム錫酸化物から成る。一実施形態では、層58は、厚さ1000オングストロームを有し得、層59は500オングストロームの厚さを有し得る。ソース52はITOの500オングストロームの厚さを有し得、ドレイン54は層58の底面の層である。
【0014】
図2および図3の実施形態に関して、ITOの例では、検知光は近赤外線(NIR)範囲である、約780ナノメートルの波長を有する。この波長では、OptoCAMが、効果的に透過性を有する。図4および図5には、OptoCAM装置で撮影された異なる画像が示される。図4には、中心の感光性領域を示す、可視光の写真が示される。図5には、NIR波長でOptoCAM装置を介してグラフにされた、1枚の紙の写真の上に引かれた線が示されている。
【0015】
図6には、あるフォトトランジスタの暗い状況とIR光であふれている場合(IR光はNIRを含む)の比較を示す、電流-電圧(IV)曲線が示されている。装置がIR光であふれている場合でも、100より大きなオン/オフ割合が実現した。これらの曲線は、赤外線70、赤外線72、ホワイト光曲線74および76と重なるIRプラスホワイト曲線(ホワイト光およびIRプラスホワイト光を示す)、ダークを示す曲線78および80ダークとなる。これらの曲線を生成するために用いられる制御光は、通常のLCDパネルにより提供される可視ホワイト光であり、検知光はIRである。この実施形態では、「ON」とは制御光がONであることを意味し、「OFF」とは、ダーク(光が当たっていない)、またはIRであることを意味する。880ナノメートル光などのより長いNIR波長を用いて、オン/オフ割合(同じ電圧での電流割合)をより高い値に改善する。
【0016】
一実施形態では、OptoCAMは検知光を連続して受け取る。この場合、検知光はNIR範囲内であり、制御光はホワイトまたはグリーンでよい。別の実施形態では、OptoCAMは、光検知光の複数の波長および/または制御光の複数の波長に対して透過性を有し得る。
【0017】
図7には光学システム90が示されている。このシステムは、突起光学系94を有するプロジェクタ92含む。このプロジェクタは、LCDセル、LEDなどのアレイなどの発光素子のアレイから成り得る。LCDセルのアレイはディスプレイパネルでよい。制御経路には、ダイクロイックミラー96およびその他の光学構成部品98が含まれる。制御光93、並べられたフォトトランジスタのアレイに誘導される、画像状のものでOptoCAM100のフォトトランジスタのオン/オフを制御する。この検知光103はチップで反射し、次いで、ダイクロイックフィルタに反射してビデオカメラ102のレンズに入射する。これらの光学構成部品には、ビデオカメラ経路に漏れた制御光を全てブロックするロング・パス・エッジ・フィルタも含まれる。そのビデオカメラ経路は経路104で示されている。一実施形態では、ダイクロイックミラー96で検知光を取り込み、次いで、組立て対象物に反射させ、ビデオカメラに集めることも可能である。
【0018】
様々な修正形態が存在し得る。例えば、本実施形態では、制御し光をアドレス指定するために短い波長を用い、検知光として長い波長を用いることを前提としている。しかし、制御光が半導体に吸収され、検知光が吸収されない限り、いかなるセットの直交波長使用可能である。「直交波長」は重ならないため、制御するための波長と検知するための波長は重ならない。制御光内の全ての波長に関して、検知するための振幅はゼロである。例えば、制御光はレッドまたはブルーの範囲の波長を有し得、検知光はグリーンまたはNIRの範囲の波長を有する。明確な通過帯域を有するミラーおよびフィルタは円熟した技術であり、設計者は異なる要求事項を満たすようシステムを構成することができる。
【0019】
さらに、使用される材料を修正することができる。例えば、有機半導体InGaZnOなどの無機酸化物ベースの半導体、またはGaP(ガリウムりん)のような結晶性半導体とフォトトランジスタ半導体を交換することができる。ITO層を酸化亜鉛(ZnO)、炭素ナノチューブ(CNT)ネットワークなどと交換することができる。
【0020】
さらに、材料を選択することができ、これらのアレイの異なる領域、異なる領域内の異なる材料から製造可能である、あるいは、使用される材料が異なる透明フィルム特性を有し、OptoCAMのバックプレーンに関する透明フィルムの範囲を実現する。例えば、ディバイス領域の50%未満、バックプレーンまたはディバイス領域の30%未満、あるいはディバイス領域の10%を占める検知光に対して不透明な材料を用いてOptoCAMを構築することができる。OptoCAMに検知光に対して不透明でない材料を使用すると、効果的かつ完全に検知光に対して透過性を有する装置となる。一実施形態では、1つ以上のバックプレーン面が、検知波長および制御波長での制御光反射率の誘電層で被覆される。
【0021】
このようにOptoCAMバックプレーンの柔軟性により、検知光から制御光を分離する能力が高くなる。配置するためにより多くのオプションを有する視覚システム、およびその他の照明や画像形成アプリケーションを試用することができる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7