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  • 特許-凍結還元脱脂濃縮乳およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】凍結還元脱脂濃縮乳およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23C 1/00 20060101AFI20220516BHJP
   A23C 13/14 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
A23C1/00
A23C13/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018078108
(22)【出願日】2018-04-16
(65)【公開番号】P2019180348
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591152584
【氏名又は名称】高梨乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 和幸
(72)【発明者】
【氏名】水畑 謙二
(72)【発明者】
【氏名】何 方
(72)【発明者】
【氏名】平松 優
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-221161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 1/00-23/00
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱脂濃縮乳について、以下の工程(a)~(c)
(a)脱脂濃縮乳を緩慢凍結して、カゼインミセルが凝集した凍結物を得る工程
(b)凍結物を解凍して解凍物を得る工程
(c)解凍物を、カゼインミセルの粒度分布が二つのピークとなるように均質化をする工程
を順次行うことを特徴とする凍結還元脱脂濃縮乳の製造方法。
【請求項2】
工程(a)の緩慢凍結を1か月以上行うものである請求項1記載の凍結還元脱脂濃縮乳の製造方法。
【請求項3】
工程(c)の均質化を、1段目を1.5~2.5MPa、2段目を0MPaにした2段式ホモジナイザーで行うものである請求項1記載の凍結還元脱脂濃縮乳の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載の製造方法で得られる凍結還元脱脂濃縮乳。
【請求項5】
請求項4記載の凍結還元脱脂濃縮乳を含有することを特徴とする飲食品。
【請求項6】
飲食品が、ホイップクリーム、エスプーマまたはカフェラテ用の泡立ちミルクである請求項5記載の飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結還元脱脂濃縮乳およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脱脂濃縮乳は原乳から乳脂肪分をセパレーターで分離し、得られた脱脂乳を減圧濃縮して製造される液状のチルド乳製品である。
【0003】
脱脂濃縮乳は一般的に緩慢凍結されるが、この凍結保管の期間が短ければ解凍して使用することもできるが、凍結期間が長い場合、カゼインミセルが凝集しているため、解凍した際にゲル状となってしまう。
【0004】
このゲル状のものは、加温や均質化を十分にしなければ脱脂濃縮乳として使用できないため、通常は廃棄されている。
【0005】
ところで、乳中のカゼインミセルのサイズが起泡性や泡沫安定性に影響することは知られているが(非特許文献1)、凝集しているカゼインミセルについてはどのような影響を及ぼすかについては一切知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】M. Chen, G. Sala, M.B.J. Meinders, H.J.F. van Valenberg, E. van der Linden, L.M.C. Sagis, Interfacial properties, thin film stability and foam stability of casein micelle dispersions, Colloids and Surfaces B: Biointerfaces, 149 (2017) 56-63
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の課題は、上記のように緩慢凍結の期間が長く、カゼインミセルが凝集しているため、解凍した際にゲル状となった脱脂濃縮乳を有効に利用できるような新しい技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、脱脂濃縮乳を緩慢凍結した凍結物を解凍した際に、ゲル状となった脱脂濃縮乳に含まれる凝集したカゼインミセルを全て小さいサイズまで均質化するのではなく、大きいサイズのカゼインミセルも残るよう均質化することにより、凍結前の脱脂濃縮乳よりも起泡性や泡沫安定性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、脱脂濃縮乳について、以下の工程(a)~(c)
(a)脱脂濃縮乳を緩慢凍結して、カゼインミセルが凝集した凍結物を得る工程
(b)凍結物を解凍して解凍物を得る工程
(c)解凍物を、カゼインミセルの粒度分布が二つのピークとなるように均質化をする工程
を順次行うことを特徴とする凍結還元脱脂濃縮乳の製造方法である。
【0010】
また、本発明は、上記製造方法で得られる凍結還元脱脂濃縮乳およびこれを含有することを特徴とする飲食品である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の凍結還元脱脂濃縮乳は、緩慢凍結前の脱脂濃縮乳よりも起泡性や泡沫安定性に優れるものである。
【0012】
また、本発明の凍結還元脱脂濃縮乳の製造方法は特殊な機械を使用しないため、簡便な方法である。
【0013】
従って、本発明の凍結還元脱脂濃縮乳を飲食品、特にホイップクリーム、エスプーマ等の空気を含有させる飲食品に添加することで、ホイップ後(泡立ち後)の保形性、安定性や離水防止に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1において、脱脂濃縮乳のカゼインミセルサイズを測定した結果を示す(図中、●緩慢凍結前の脱脂濃縮乳を(5/10)MPaで均質化したものであり、▲は緩慢凍結後の脱脂濃縮乳を(5/10)MPaで均質化したものであり、△は緩慢凍結後の脱脂濃縮乳を(0/2)MPaで均質化したものである)。
図2】実施例3において、凍結還元脱脂濃縮乳を含有させたエスプーマをトレーに出した時の外観を示す。
図3】実施例3において、従来の脱脂濃縮乳を含有させたエスプーマをトレーに出した時の外観を示す。
図4】実施例4において、脱脂濃縮乳を1か月緩慢凍結させて得られた凍結物を25℃で解凍した後の外観を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の凍結還元脱脂濃縮乳は、脱脂濃縮乳について、以下の工程(a)~(c)
(a)脱脂濃縮乳を緩慢凍結して、カゼインミセルが凝集した凍結物を得る工程
(b)凍結物を解凍して解凍物を得る工程
(c)解凍物を、カゼインミセルの粒度分布が二つのピークとなるように均質化をする工程
を順次行うことにより製造することができる。
【0016】
本発明の凍結還元脱脂濃縮乳の原料となる脱脂濃縮乳は、公知の方法に従って、原料乳からクリームセパレーター等により脂肪分を除去し、更に、減圧濃縮することにより得られる。また、脱脂濃縮乳としてはタカナシ北海道脱脂濃縮乳(タカナシ乳業製)等の市販品を利用してもよい。また、脱脂濃縮乳としては、上記脱脂濃縮乳を脱水して得られる脱脂粉乳に、水を再度添加したものであってもよい。この脱脂濃縮乳の無脂乳固形分は特に限定されないが、例えば、32質量%(以下、単に「%」という)以上、好ましくは32.5%以上である。また、この脱脂濃縮乳の原料乳は特に限定されず、例えば、牛乳、ヤギ乳等の獣乳が挙げられるが、好ましくは牛乳である。
【0017】
上記工程(a)において、脱脂濃縮乳を緩慢凍結させて凍結物を得る条件は、凍結物中のカゼインミセルが凝集する条件であれば、特に限定されないが、1か月以上、好ましくは2~6か月緩慢凍結させればよい。緩慢凍結の温度は特に限定されないが、例えば、-18℃以下、好ましくは-20℃以下である。なお、カゼインミセルが凝集しているかどうかは、解凍した際に脱脂濃縮乳の性状で判断することができる。凍結物を常温、例えば、25℃で解凍した際に、型崩れしなければカゼインミセルが凝集していると判断でき、型崩れしていればカゼインミセルが凝集していないと判断できる。
【0018】
脱脂濃縮乳を緩慢凍結した場合、一部の水分は不凍の状態であり、局所的にリン酸塩等の無機塩類濃度が高まることによって、カゼインミセルどうしの凝集が起こる。凍結状態では流動性が低いため、この凝集は短期間で起こるものではなく、少なくとも1か月という長い時間が必要となる。一方、-60℃等で急速に凍結させた場合には、局所的にリン酸塩等の無機塩類濃度が高まることはないため、カゼインミセル同士の凝集は起こらない。
【0019】
上記工程(b)において、工程(a)で得られた凍結物を解凍して解凍物を得る条件は、特に限定されず、例えば、凍結物を冷蔵で解凍すればよい。
【0020】
上記工程(c)において、解凍物をカゼインミセルの粒度分布が二つのピークとなるように均質化をするには、例えば、均質化を通常の均質化に用いる圧力よりもかなり低い圧力で行う。このような低い圧力としては、例えば、2段式ホモジナイザーを用いる場合であれば、1段目を1.5~2.5MPa、好ましくは2MPa、2段目を0MPaにする条件等が挙げられる。この圧力で適宜均質化を行えばよい。
【0021】
なお、均質化に、2段式ホモジナイザー以外の均質機を用いる場合には、均質機の種類、脱脂濃縮乳の処理流量やホモバルブの形状、均質化温度等にあわせて適宜設定すればよい。
【0022】
また、上記均質化の際には、解凍物に加水をしてもよい。加水の量は特に限定されず、本発明の凍結還元脱脂濃縮乳の最終的な無脂乳固形分の濃度にあわせて適宜選択すればよい。
【0023】
更に、上記均質化の際には、解凍物を加温することが好ましい。加温する条件は特に限定されないが、例えば、60℃以上、好ましくは60~65℃である。
【0024】
上記のようにして均質化を行うことにより、カゼインミセルの粒度分布が、二つのピークとなる。二つのピークはカゼインミセルの粒子径が1.0μm~1.3μm程度のところで小さい粒子と大きい粒子とに別れる。具体的には、カゼインミセルの粒子径が1.16μm未満のところに一つのピークができ、1.16μm以上のところにもう一つのピークができる。小さい粒子の全カゼインミセルに占める割合は75~85%、好ましくは79.4%、大きい粒子は15~25%、好ましくは20.6%となる。このような粒度分布、ピーク位置、大きい粒子と小さい粒子の割合は公知の測定装置、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置等で測定・算出することができる。
【0025】
上記工程(a)~(c)を行った後は、更に、冷却、殺菌、濃度調整等の処理を行ってもよい。
【0026】
これらの工程を順次行うことにより、本発明の凍結還元脱脂濃縮乳を製造することができる。本発明の凍結還元脱脂濃縮乳は、従来の脱脂濃縮乳が使用されていた飲食品に利用可能である。この場合、飲食品に含有される従来の脱脂濃縮乳の一部または全部を本発明の凍結還元脱脂濃縮乳に代えればよい。
【0027】
このような飲食品は、特に限定されないが、例えば、ホイップクリーム、エスプーマ、カフェラテ用泡立ちミルク、フィリング、ムース、アイスクリーム、ソフトクリーム、シャーベット等が挙げられる。これらの中でもホイップクリーム、エスプーマまたはカフェラテ用の泡立ちミルクが好ましい。
【0028】
これら飲食品の中でも、特に、ホイップクリーム、エスプーマ、カフェラテ用の泡立ちミルク等の空気を含有させる飲食品が好ましい。なお、通常、脱脂濃縮乳をホイップクリーム、エスプーマ、カフェラテ用の泡立ちミルク等の空気を含有させる飲食品に含有させた場合、固形分が少なく、起泡性や泡沫安定性が低いため、必要により増粘剤等を添加する必要があるが、本発明の凍結還元脱脂濃縮乳を用いれば起泡性や泡沫安定性が高いため、その必要はない。
【0029】
本発明の凍結還元脱脂濃縮乳を含有するホイップクリームの好ましい態様としては以下のものが挙げられる。以下のものを適宜ホイップすれば起泡性や泡沫安定性の高いホイップクリームが得られる。
【0030】
生クリーム 90~95%
凍結還元脱脂濃縮乳 5~10%
【0031】
本発明の凍結還元脱脂濃縮乳を含有するエスプーマの好ましい態様としては以下のものが挙げられる。以下のものをエスプーママシンに入れ、亜酸化窒素、二酸化炭素等のガスと混合すれば起泡性や泡沫安定性の高いエスプーマが得られる。なお、植物性油脂を含まないソフトクリーム用ミックスは、通常、エスプーマとしても造花性が全くない。
【0032】
ソフトクリーム用ミックス(植物性油脂を含まないもの)
66~70%、好ましくは68%
牛乳 15~17%、好ましくは16%
凍結還元脱脂濃縮乳 15~17%、好ましくは16%
【0033】
本発明の凍結還元脱脂濃縮乳を含有するカフェラテ用の泡立ちミルクの好ましい態様としては、本発明の凍結還元脱脂濃縮乳を適宜希釈した後、ホイップすれば起泡性や泡沫安定性の高いカフェラテ用の泡立ちミルクが得られる。
【実施例
【0034】
以下、本発明を実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
実 施 例 1
凍結還元脱脂濃縮乳の製造:
(1)脱脂濃縮乳の製造
公知の方法に従って、牛乳から脂肪分を除去し、更に、減圧濃縮して脱脂濃縮乳を得た(無脂乳固形分32%)。
【0036】
(2)凍結還元脱脂濃縮乳の製造
上記(1)で得た脱脂濃縮乳を-18℃以下で6カ月間、緩慢凍結させた。凍結後、冷蔵庫で解凍した。これを最終的な無脂乳固形分濃度が27%となるように加水し、60~65℃で20分間加温した後、0/2MPaの圧力(1段目2MPa、2段目0MPa)で2段式ホモジナイザー((株)イズミフードマシナリ製)を用いて均質化した。これを冷却し、容器に充填して凍結還元脱脂濃縮乳を得た。なお、緩慢凍結後はカゼインミセルが凝集し、ゲル化しているため、これに加水して加温すると、水に不溶の白いカゼインがもやもやと存在していた。
【0037】
上記で得られた凍結還元脱脂濃縮乳のカゼインミセルの大きさ(粒径)をレーザー回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所製)で測定した。その結果を図1に示した。
【0038】
また、上記(2)において均質化の圧力を5/10MPa(1段目10MPa、2段目5MPa)とする以外は同様にして比較凍結還元脱脂濃縮乳を得た。更に、脱脂濃縮乳を無脂乳固形分濃度が27%となるように加水した後、5/10MPaとの圧力でホモジナイザー((株)イズミフードマシナリ製)で均質化し、冷却し、容器に充填して均質化脱脂濃縮乳を得た。これらのカゼインミセルの大きさも上記同様に測定した。それらの結果も図1に示した。
【0039】
凍結還元脱脂濃縮乳におけるカゼインミセルのピークは400nm付近と2μm付近にあった。凍結還元脱脂濃縮乳は、通常の均質化脱脂濃縮乳や比較凍結還元脱脂濃縮乳には存在しない通常の400nm付近の平均粒径を持ったカゼインミセルと、1~5μmの極めて大きい平均粒径を持ったカゼインミセルが共存する脱脂濃縮乳であった。一方、均質化脱脂濃縮乳におけるカゼインミセルのメジアン径は300nm付近であり、また、比較凍結還元脱脂濃縮乳におけるカゼインミセルのメジアン径は400nm付近であり、どちらもピークは一つであった。
【0040】
なお、追加で、均質化の圧力を0/3MPa(1段目3MPa、2段目0MPa)とする以外は同様にして比較凍結還元脱脂濃縮乳を得たところ、ピークは一つであった。
【0041】
実 施 例 2
ホイップクリーム:
実施例1で調製した凍結還元脱脂濃縮乳(無脂乳固形分27%)50gと、フレッシュクリーム(北の王国:タカナシ乳業製)1000ml、グラニュー糖70gをボールに入れ、8分立てホイップクリームを作製した。このホイップクリームについて、オーバーラン、硬度は公知の方法で測定し、24時間後の離水率は以下の方法で測定した。その結果を表1に示した。また、比較として、凍結還元脱脂濃縮乳に代えて従来の脱脂濃縮乳(無脂乳固形分27%:タカナシ北海道脱脂濃縮乳:タカナシ乳業製)を用いる以外は上記と同様にして8分立てホイップクリームを作製し、これについても上記と同様に測定をした。この結果も表1に示した。
【0042】
<離水率算出方法>
45~50gのホイップクリームをコップの上にのせた茶漉しに入れ、5℃で24時間保存後に茶漉しに残ったホイップクリームと、コップの中のホイップクリームの重量を測定し、24時間後の離水率を算出した。
【0043】
【表1】
【0044】
凍結還元脱脂濃縮乳は、従来の脱脂濃縮乳に比べて、オーバーラン、硬度、24時間後の離水率の全てにおいて優れていた。
【0045】
実 施 例 3
エスプーマ:
実施例1で調製した凍結還元脱脂濃縮乳(無脂乳固形分27%)を16.7%、ソフトクリーム用ミックス(タカナシベーシックミックス:タカナシ乳業製)を66.6%、牛乳を16.7%となるように混合した。これをエスプーママシン(アドバンスディスペンサーM:相互産業(株)製)に入れ、トレーに出した。トレーに出した後の外観を図2に示した。また、比較として、凍結還元脱脂濃縮乳に代えて従来の脱脂濃縮乳(無脂乳固形分27%:タカナシ北海道脱脂濃縮乳:タカナシ乳業製)を用いる以外は上記と同様にしてエスプーママシンに入れ、トレーに出した。トレーに出した後の外観を図3に示した。更に、これらのオーバーランを公知の方法で測定した。
【0046】
ソフトクリーム用ミックスはアイスクリームやジェラート用の原料で、冷凍で使用されるものであり、冷蔵で使用されることを想定していないため、これを従来の脱脂濃縮乳と混合してエスプーマに使用しても造花性は認められず、オーバーランも58%であった(図2)。しかしながら、凍結還元脱脂濃縮乳とアイスクリーム用ミックスと混合してエスプーマに使用した場合、造花性が認められ、オーバーランは197%となった(図3)。
【0047】
実 施 例 4
凍結還元脱脂濃縮乳の製造:
緩慢凍結の期間を1か月とする以外は、実施例1と同様にして、凍結物を得た。この凍結物を25℃で解凍したものは、型崩れしなかった(図3)。そのため、この凍結物においても、カゼインミセルの凝集が認められた。また、この凍結物から実施例1と同様にして凍結還元脱脂濃縮乳を製造したところ、実施例1で得られた凍結還元脱脂濃縮乳と同様の性質であった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の凍結還元脱脂濃縮乳は、従来の脱脂濃縮乳が使用されていた飲食品に利用可能であり、特に、ホイップクリーム、エスプーマ等の空気を含有させる飲食品に利用可能である。

以 上
図1
図2
図3
図4