(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】駐車場システム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/32 20060101AFI20220516BHJP
G07B 15/00 20110101ALI20220516BHJP
B41M 5/40 20060101ALI20220516BHJP
B41J 3/60 20060101ALI20220516BHJP
G08G 1/14 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
B41J2/32 Z
G07B15/00 Z
B41M5/40 212
B41M5/40 220
B41J3/60
G08G1/14 A
B41J2/32 E
(21)【出願番号】P 2018133169
(22)【出願日】2018-07-13
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 大輔
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-186554(JP,A)
【文献】特開平08-175014(JP,A)
【文献】特開2001-232942(JP,A)
【文献】米国特許第06165937(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/32
G07B 15/00
B41M 5/40
B41J 3/60
G08G 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視画像が形成される可視感熱層と不可視画像が形成される不可視感熱層を有する駐車券を加熱して駐車に関する情報を表す画像を形成し、光学センサで前記駐車券から前記情報を読み取る
システムであって、前記可視感熱層及び前記不可視感熱層は画像形成に必要な温度が異なっている駐車場システム。
【請求項2】
暗号化された情報を表す画像は前記不可視画像としてのみ形成する
請求項1に記載の駐車場システム。
【請求項3】
前記可視感熱層及び前記不可視感熱層は前記温度の高い方を表面側にして積層されている
請求項
1又は2に記載の駐車場システム。
【請求項4】
前記可視感熱層が表面側に積層されている
請求項
3に記載の駐車場システム。
【請求項5】
前記駐車券は基材を有し、当該基材の一方の面側に前記可視感熱層を有し、当該基材の他方の面側に前記不可視感熱層を有する
請求項1に記載の駐車場システム。
【請求項6】
前記可視感熱層に、前記不可視画像が表す情報と合わせることで所定の処理に利用可能になる情報を示す画像を前記可視画像として形成する
請求項1から
5のいずれか1項に記載の駐車場システム。
【請求項7】
前記可視感熱層に、前記不可視画像が表す情報と所定の位置関係になっている場合に当該不可視画像が表す情報と合わせることで前記処理に利用可能になる情報を示す画像を前記可視画像として形成する
請求項
6に記載の駐車場システム。
【請求項8】
可視画像が形成される可視感熱層と不可視画像が形成される不可視感熱層を有する駐車券を加熱して駐車に関する情報を表す画像を形成し、光学センサで前記駐車券から前記情報を読み取るシステムであって、
前記駐車券は基材を有し、当該基材の一方の面側に前記可視感熱層を有し、当該基材の他方の面側に前記不可視感熱層を有する駐車場システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車券から情報を読み取る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
駐車券から情報を読み取る技術として、特許文献1には、感熱層の上に印刷層を重ねて印刷層越しに加熱して赤外線で読取可能な画像を形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、印刷された画像及び赤外線で読取可能な画像という読取方法が異なる2通りの情報を表す駐車券が形成されるが、そのためにトナー等により画像を形成する画像形成手段と、感熱層を加熱して発色させる加熱手段という2つの手段が必要になる。
本発明は、上記の背景に鑑み、読取方法が異なる2通りの情報を表す駐車券を加熱手段のみで形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、可視画像が形成される可視感熱層と不可視画像が形成される不可視感熱層を有する駐車券を加熱して駐車に関する情報を表す画像を形成し、光学センサで前記駐車券から前記情報を読み取るシステムであって、前記可視感熱層及び前記不可視感熱層は画像形成に必要な温度が異なっている駐車場システムを第1の態様として提供する。
【0006】
第1の態様の駐車場システムによれば、読取方法が異なる2通りの情報を表す駐車券を加熱手段のみで形成することができる。また、第1の態様の駐車場システムによれば、感熱層の画像形成に必要な温度が同じ場合に比べて、一方の層だけの画像形成をより確実に行うことができる。
【0007】
上記の第1の態様の駐車場システムにおいて、暗号化された情報を表す画像は前記不可視画像としてのみ形成する、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0008】
第2の態様の駐車場システムによれば、暗号化された情報を表す画像を可視画像で形成する場合に比べて、可視画像を有効に利用することができる。
【0011】
上記の第1又は第2の態様の駐車場システムにおいて、前記可視感熱層及び前記不可視感熱層は前記温度の高い方を表面側にして積層されている、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0012】
第3の態様の駐車場システムによれば、感熱層の画像形成に必要な温度の低い方を表面側にする場合に比べて、加熱手段の出力を小さくすることができる。
【0013】
上記の第3の態様の駐車場システムにおいて、前記可視感熱層が表面側に積層されている、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0014】
第4の態様の駐車場システムによれば、不可視感熱層が表面側に積層される場合に比べて、可視画像を見易くすることができる。
【0015】
上記の第1の態様の駐車場システムにおいて、前記駐車券は基材を有し、当該基材の一方の面側に前記可視感熱層を有し、当該基材の他方の面側に前記不可視感熱層を有する、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0016】
第5の態様の駐車場システムによれば、加熱手段を両面側にそれぞれ設けることで、可視画像及び不可視画像を同時に形成することができる。
【0017】
上記の第1から第5のいずれか1の態様の駐車場システムにおいて、前記可視感熱層に、前記不可視画像が表す情報と合わせることで所定の処理に利用可能になる情報を示す画像を前記可視画像として形成する、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0018】
第6の態様の駐車場システムによれば、可視画像だけを偽造しても駐車券として利用で
きないようにすることができる。
【0019】
上記の第6の態様の駐車場システムにおいて、前記可視感熱層に、前記不可視画像が表す情報と所定の位置関係になっている場合に当該不可視画像が表す情報と合わせることで前記処理に利用可能になる情報を示す画像を前記可視画像として形成する、という構成が第7の態様として採用されてもよい。
【0020】
第7の態様の駐車場システムによれば、可視画像が示す情報及び不可視画像が示す情報だけが漏洩しても駐車券として利用できないようにすることができる。
また、上述した課題を解決するために、本発明は、可視画像が形成される可視感熱層と不可視画像が形成される不可視感熱層を有する駐車券を加熱して駐車に関する情報を表す画像を形成し、光学センサで前記駐車券から前記情報を読み取るシステムであって、前記駐車券は基材を有し、当該基材の一方の面側に前記可視感熱層を有し、当該基材の他方の面側に前記不可視感熱層を有する駐車場システムを第8の態様として提供する。
第8の態様の駐車場システムによれば、可視画像だけを偽造しても駐車券として利用で
きないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図9】変形例で形成される駐車関連画像の一例を表す図
【
図10】変形例で形成される駐車関連画像の一例を表す図
【
図11】変形例で形成される駐車関連画像の例を表す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
[1]実施例
図1は実施例に係る駐車場システム1の構成を表す。駐車場システム1は、駐車場の利用及び管理を支援するシステムである。駐車場システム1は、ネットワーク2と、駐車券発行装置10と、駐車場精算機20とを備える。
【0023】
ネットワーク2は、移動体通信網及びインターネット等を含む通信システムであり、自システムにアクセスする装置等(装置、端末及びシステム)同士のデータのやり取りを中継する。ネットワーク2には、駐車場システム1が備える各装置がそれぞれ有線通信でアクセスしている。なお、ネットワーク2とのアクセスは有線通信及び無線通信のどちらでもよい。
【0024】
駐車券発行装置10は、感熱紙を加熱して文字等を形成することで駐車券を生成して発行する発行機能を有する。駐車場精算機20は、駐車券に表されている情報を読み取る読取機能と、駐車場の精算を行う精算機能とを有する。駐車券発行装置10及び駐車場精算機20は、例えばいずれも駐車場に設置される。駐車場の利用者は、車を駐車すると駐車券発行装置10から発行される駐車券を受け取り、駐車を終えて駐車場を出るときに駐車場精算機20に駐車券を読み取らせて駐車料金の精算を行う。
【0025】
図2は駐車券発行装置10のハードウェア構成を表す。駐車券発行装置10は、CPU(Central Processing Unit)11と、RAM(Random Access Memory)12と、ROM(Read Only Memory)13と、通信部14と、HDD(Hard Disk Drive)15と、UI部16と、搬送部17と、加熱部18という各装置を備えるコンピュータである。
【0026】
CPU11は、RAM12をワークエリアとして用いてROM13やHDD15に記憶されているプログラムを実行することで各部の動作を制御する。通信部14は、アンテナ及び通信回路等を有し、ネットワーク2を介した通信を行う。HDD15は、CPU11が制御に用いるデータやプログラムを記憶している。UI部16は、表示手段であるディスプレイと、ディスプレイの表面に設けられたタッチパネルとを有するタッチスクリーンを備え、画像を表示すると共に、利用者からの操作を受け付ける。なお、UI部16は、物理的な操作を受け付けるボタン等の操作子を備えていてもよい。
【0027】
搬送部17は、駐車券の元になる感熱紙を搬送する。加熱部18は、サーマルヘッド(サーマルプリントヘッドとも呼ばれる)を有し、搬送部17により搬送されてくる感熱紙をサーマルヘッドにより加熱して駐車場への入場時刻等の駐車に関する情報を表す画像(駐車関連画像)を形成する。駐車関連画像が形成された感熱紙、すなわち駐車券は、搬送部17による再び搬送されて自装置から排出される。これにより利用者に駐車券が発券される。
【0028】
図3は駐車場精算機20のハードウェア構成を表す。駐車場精算機20は、CPU21と、RAM22と、ROM23と、通信部24と、HDD25と、UI部26と、読取部27と、金銭処理部28という各装置を備えるコンピュータである。これらの装置は、
図6に表す同名の装置と性能又は仕様等の違いはあるが同種の装置である。読取部27は、駐車券に表されている駐車関連画像を読み取る。読取部27は、光学センサ271と、可視光照射部272と、不可視光照射部273とを備える。
【0029】
光学センサ271は、入射する光の強弱を検出するセンサである。可視光照射部272は、可視光(人が見える光のことで、例えば波長が400nm以上で760nm以下の光)を照射する光源である。不可視光照射部273は、不可視光(可視光ではない光のことで、例えば波長が760nm以上で1mm以下の赤外線)を照射する光源である。なお、ここで示した可視光及び不可視光の波長の範囲は一例であり、これに限らない。
【0030】
例えば可視光の波長の範囲をもう少し広げたり狭くしたりしてもよい。また、赤外線ではなく紫外線を不可視光として用いてもよい。読取部27は、可視光照射部272が照射する可視光の反射又は吸収により表される画像と、不可視光照射部273が照射する不可視光(本実施例では赤外線)の反射又は吸収により表される画像とを読み取る。
【0031】
金銭処理部28は、読取部27により読み取られた駐車関連画像が示す情報(入場時刻等)に基づいて駐車料金の精算を行う装置である。金銭処理部28は、利用者が投入する金銭(硬貨及び紙幣)を受け取り、駐車料金を精算して生じたお釣りを排出する。駐車場システム1が備える各装置には本システムで提供されるプログラムが記憶されており、各装置のCPUがプログラムを実行して各部を制御することで以下に述べる機能群が実現される。
【0032】
図4は駐車場システム1が実現する機能構成を表す。駐車券発行装置10は、駐車場情報記憶部101と、駐車関連画像生成部102と、第1加熱制御部103と、第2加熱制御部104と、発券制御部105とを備える。駐車場精算機20は、駐車券第1読取部201と、駐車券第2読取部202と、情報解読部203と、精算処理部204とを備える。
【0033】
駐車券発行装置10の駐車場情報記憶部101は、自装置が設置されている駐車場に関する情報を記憶する。駐車場情報記憶部101は、例えば、駐車場の名称、駐車場に割り当てられた駐車場コード及び駐車料金に適用される割引を示す割引コード等を記憶する。駐車関連画像生成部102は、駐車場情報記憶部101に記憶されている情報を参照し、上述した駐車関連画像(駐車券に表される情報を示す画像)を生成する。
【0034】
図5は駐車関連画像の一例を表す。
図5(a)では、「〇〇駐車場駐車券 連絡先xxxx-xx-xxxx」という駐車場名及び連絡先を表す文字列画像G1が表されている。
図5(b)、(c)では、いずれもQRコードG2、G3(Quick Responseコード:登録商標)が表されている。QRコードG2は、駐車券番号及び入場時刻を示し、QRコードG3は、駐車場コード及び割引コードを所定の方式で暗号化した情報(暗号化コード)を示しているものとする。この暗号化は、QRコードG3を解析しただけでは駐車場コード及び割引コードが判明しないようにするための処置である。暗号化の詳細は後述する。
【0035】
駐車関連画像生成部102は、生成した駐車関連画像のうち文字列画像G1及びQRコードG2を第1加熱制御部103に供給し、QRコードG3を第2加熱制御部104に供給する。第1加熱制御部103は、加熱部18を制御して、感熱紙が有する可視感熱層を加熱して可視画像を形成する。第2加熱制御部104は、加熱部18を制御して、感熱紙が有する不可視感熱層を加熱して不可視画像を形成する。この感熱紙について
図6を参照して説明する。
【0036】
図6は本実施例で用いられる感熱紙30を表す。感熱紙30は、
図6(a)に表すように、基材31と、不可視感熱層32と、可視感熱層33とを備える。基材31は、紙又はフィルム等であり、感熱層を支える土台となる部材である。不可視感熱層32は、基材31の表面31Sに形成された感熱層であり、不可視画像が形成される。不可視画像とは、可視光以外の光を吸収又は反射することで形を表す画像のことである。不可視感熱層32は、本実施例では、赤外線を吸収する。
【0037】
可視感熱層33は、不可視感熱層32の表面32Sに形成された感熱層であり、可視画像が形成される。このように、感熱紙30においては、可視感熱層33が表面側に積層されている。可視画像とは、可視光を吸収又は反射することで形を表す画像のことである。可視感熱層33は、可視光は反射又は吸収するが、不可視光は、その大半を透過する性質を有している。そのため、感熱紙30に赤外線が照射されると、可視感熱層33を透過して不可視感熱層32に到達し、形成された不可視画像が表されることになる。
【0038】
不可視感熱層32及び可視感熱層33は、それぞれ所定の温度に達すると発色する。この温度を以下では「発色温度」という。発色温度は、画像形成に必要な温度である。可視感熱層33の発色温度T1は、不可視感熱層32の発色温度T2よりも高い温度である。つまり、不可視感熱層32及び可視感熱層33は、画像形成に必要な温度(発色温度)が異なっており、その温度の高い方(可視感熱層33)を表面側にして積層されている。
【0039】
第2加熱制御部104は、加熱部18のサーマルヘッドを感熱紙30の表面30S(すなわち可視感熱層33の表面33S)に接触させ、可視感熱層33を介して不可視感熱層32を加熱する。第2加熱制御部104は、発色温度T2又はそれよりも高いが少なくとも発色温度T1よりも低い温度としたサーマルヘッドで駐車関連画像を表す箇所を加熱させる。
【0040】
これにより、可視感熱層33も加熱されるが発色温度T1まで温度が上昇することはないので、可視感熱層33は発色しない。また、第2加熱制御部104は、可視感熱層33を介して伝導した熱が不可視感熱層32の温度を発色温度T2まで上昇させるのに要する時間よりも長い時間だけ加熱する。この加熱時間は、サーマルヘッドの温度が高いほど短くなる。
【0041】
このサーマルヘッドの温度と不可視感熱層32を発色させるのに要する加熱時間との関係は駐車券発行装置10の提供事業者等が予め実験で調べているものとする。第2加熱制御部104による加熱時間は、この関係から決定される。第2加熱制御部104は、このように加熱を制御することで可視感熱層33を発色させることなく不可視感熱層32を発色させ、供給された駐車関連画像であるQRコードG3を
図6(b)に表すように不可視感熱層32に形成する。
【0042】
第2加熱制御部104は、駐車関連画像の画像形成を完了すると、その旨を第1加熱制御部103に通知する。第1加熱制御部103は、この通知を受け取ると、供給された駐車関連画像である文字列画像G1及びQRコードG2の形成を開始する。第1加熱制御部103は、発色温度T1又はそれよりも高い温度としたサーマルヘッドで駐車関連画像を表す箇所を加熱させる。
【0043】
第1加熱制御部103は、可視感熱層33を介して伝導した熱が不可視感熱層32の温度を発色温度T2まで上昇させるのに要する時間よりも短い時間だけ加熱する。この場合の加熱時間も、前述したサーマルヘッドの温度と不可視感熱層32を発色させるのに要する加熱時間との関係から決定される。第1加熱制御部103は、このように加熱を制御することで不可視感熱層32を発色させることなく可視感熱層33を発色させ、供給された駐車関連画像である文字列画像G1及びQRコードG2を
図6(c)に表すように可視感熱層33に形成する。
【0044】
文字列画像G1及びQRコードG2は、暗号化されていない情報である。一方、QRコードG3は、暗号化された駐車場コード及び割引コードを示す情報である。このように、駐車券発行装置10は、暗号化された情報を表す画像を不可視画像としてのみ形成する。第1加熱制御部103は、駐車関連画像の画像形成を完了すると、その旨を発券制御部105に通知する。
【0045】
発券制御部105は、搬送部17を制御して、駐車関連画像が形成された感熱紙(すなわち駐車券)を自装置に設けられた発券口まで搬送(発券)する。こうして発券された駐車券を利用者は受け取る。駐車場精算機20には、駐車券を差し込む差込口が設けられている。利用者は、駐車場から車を退場させる際にその差込口に駐車券を差し込む。駐車場精算機20の駐車券第1読取部201は、自装置に差し込まれた駐車券から可視画像である駐車関連画像を読み取る。
【0046】
駐車券第1読取部201は、上述した読取部27を制御して可視光を駐車券に向けて照射させ、その可視光の反射又は吸収の度合いが他よりも大きい個所によって表される駐車関連画像(可視画像である文字列画像G1及びQRコードG2)を読み取る。この駐車関連画像は、表面側に積層されている可視感熱層33に形成された画像であり、人間の目でも見ることができる画像である。駐車券第1読取部201は、可視画像を読み取ると、可視光の照射を終了させ、読み取った可視画像を示す可視画像データを駐車券第2読取部202に供給する。
【0047】
駐車券第2読取部202は、自装置に差し込まれた駐車券から駐車関連画像を読み取る。駐車券第2読取部202は、可視画像データが供給されると、読取部27を制御して不可視光を駐車券に向けて照射させ、その不可視光の反射又は吸収の度合いが他よりも大きい個所によって表される駐車関連画像を読み取る。この駐車関連画像は、可視感熱層33により覆われた不可視感熱層32に形成された画像である。
【0048】
上述したように、照射された不可視光は可視感熱層33を透過して不可視感熱層32に到達し、不可視感熱層32に形成された駐車関連画像によって反射又は吸収される。駐車券第2読取部202は、その不可視光の反射又は吸収の度合いが他よりも大きい個所によって表される駐車関連画像(不可視画像であるQRコードG3)を読み取る。駐車券第2読取部202は、不可視画像を読み取ると、不可視光の照射を終了させ、読み取った不可視画像を示す不可視画像データを、供給された可視画像データと共に情報解読部203に供給する。
【0049】
情報解読部203は、読み取られた駐車関連画像が示す情報を解読する。情報解読部203は、例えば、供給された可視画像データが示すQRコードG2から駐車券番号及び入場時刻を解読する。また、情報解読部203は、所定の方式で公開鍵及び秘密鍵を生成し、そのうちの公開鍵を駐車券発行装置10に送信する。駐車券発行装置10の駐車関連画像生成部102は、受信した公開鍵を用いて駐車場コード及び割引コードを暗号化したものをQRコードで示したQRコードG3を生成する。
【0050】
情報解読部203は、まずQRコードG3が示す情報(暗号化された情報)を解読し、その情報を秘密鍵で復号化することで、駐車場コード及び割引コードを解読する。なお、公開鍵及び秘密鍵の生成は、駐車場精算機20で行われなくてもよい。例えば駐車券発行装置10又は図示せぬ外部装置で行われ、秘密鍵が駐車場精算機20に供給されてもよい。情報解読部203は、解読結果(駐車券番号、入場時刻、駐車場コード及び割引コード)を精算処理部204に供給する。
【0051】
精算処理部204は、情報解読部203による解読結果に応じた精算処理を行う。精算処理部204は、例えば、入場時刻から現在時刻までの経過時間から正規の駐車料金を算出し、割引コードに対応付けられた割引率をそれに乗じた金額を精算する処理を行う。以上のとおり、駐車場システム1は、可視感熱層33と不可視感熱層32を有する駐車券を加熱して駐車関連画像を形成し、光学センサ271でその駐車券から駐車関連画像を読み取ることで、駐車場の利用実績に応じた駐車料金を請求する。
【0052】
駐車場システム1が備える各装置は、上記の構成に基づいて、駐車料金を精算する精算処理を行う。
図7は精算処理における動作手順の一例を表す。
図7に表す動作手順は、駐車場精算機20に公開鍵及び秘密鍵の生成操作が行われることを契機に開始される。まず、駐車場精算機20(情報解読部203)は、公開鍵及び秘密鍵を生成し(ステップS11)、生成した公開鍵を駐車券発行装置10に送信する(ステップS12)。
【0053】
駐車券発行装置10(駐車関連画像生成部102)は、駐車場を利用する利用者による駐車券の発行操作を受け付けると(ステップS21)、まず、自装置が記憶している駐車場コード及び割引コードを暗号化する(ステップS22)。次に、駐車券発行装置10(駐車関連画像生成部102)は、駐車場名、連絡先、駐車券番号及び入場時刻を示す駐車関連画像と、ステップS22で暗号化した暗号化コードを示す駐車関連画像とを生成する(ステップS23)。
【0054】
続いて、駐車券発行装置10(第2加熱制御部104)は、生成された暗号化コードを示す駐車関連画像を不可視画像として不可視感熱層32に形成する(ステップS24)。次に、駐車券発行装置10(第2加熱制御部104)は、入場時刻等を示す駐車関連画像を可視画像として可視感熱層33に形成する(ステップS25)。そして、駐車券発行装置10(発券制御部105)は、駐車関連画像が形成された駐車券を発券する(ステップS26)。
【0055】
ステップS26で発見された駐車券を利用者が駐車場精算機20に差し込むと、駐車場精算機20は差し込まれた駐車券を受け入れる(ステップS31)。次に、駐車場精算機20(駐車券第1読取部201)は、差し込まれた駐車券から可視画像である駐車関連画像を読み取る(ステップS32)。続いて、駐車場精算機20(駐車券第2読取部202)は、差し込まれた駐車券から不可視画像である駐車関連画像を読み取る(ステップS33)。
【0056】
次に、駐車場精算機20(情報解読部203)は、読み取られた駐車関連画像が示す情報を解読する(ステップS34)。この解読には、QRコードの解析と、ステップS22で暗号化された情報の復号化が含まれる。そして、駐車場精算機20(精算処理部204)は、ステップS34における解読結果に応じた精算処理(駐車料金の算出及び割引の適用等)を行う(ステップS35)。
【0057】
本実施例では、上記のとおり可視画像及び不可視画像という読取方法が異なる2通りの情報を表す駐車券が発券される。単に読取方法が異なる2通りの情報を表すだけなら、例えば感熱紙を加熱して画像を形成した後にトナー等で画像を形成することでも可能である。しかし、本実施例によれば、そのような2つの画像形成手段を用いることなく、それら2通りの情報を表す駐車券を駐車券発行装置10の加熱部18という加熱手段(1つの画像形成手段)のみで形成することができる。また、それにより、2つの画像形成手段を用いる場合に比べて、駐車券に画像を形成する装置(本実施例では駐車券発行装置10)を小型化することができる。
【0058】
また、本実施例では、暗号化された情報を表す画像が不可視画像としてのみ形成されている。仮に暗号化された情報を表す画像を可視画像で形成したとすると、その可視画像をユーザが見ても読み取ることができないから、可視にしたことが無駄になってしまう。それに比べると、本実施例では、可視画像が表す内容を全てユーザが読み取ることができる(可視画像で表したQRコードG2も、スマートフォン等を利用して情報を読み取ることが一般的に行われている)。よって、本実施例によれば、暗号化された情報を表す画像を可視画像で形成する場合に比べて、可視画像を有効に利用することができる。
【0059】
[2]変形例
上述した実施例は本発明の実施の一例に過ぎず、以下のように変形させてもよい。また、実施例及び各変形例は必要に応じてそれぞれ組み合わせてもよい。
【0060】
[2-1]発色温度
実施例では、可視感熱層及び不可視感熱層の発色温度が異なっていたが、同じであってもよい。その場合、下側の層(不可視感熱層)を加熱する際には、基材側にもサーマルヘッドを設けて基材側から加熱することで、不可視感熱層を発色温度にしつつ可視感熱層を発色温度にしないようにすることができる。
【0061】
また、可視感熱層よりも不可視感熱層の発色温度の方が高くてもよい。その場合、両面側にサーマルヘッドを設けてもよいし、基材側にだけサーマルヘッドを設けて基材側から実施例と同様に加熱温度及び加熱時間を制御することで、2層に個別に画像形成することができる(ただしその場合、基材も加熱するため、実施例に比べてより高い出力が必要になる)。なお、加熱位置の精度が十分に高ければ、例えば高周波誘導加熱により不可視感熱層だけを加熱してもよい。
【0062】
実施例のように2層の発色温度を設定すると、サーマルヘッドを基材側にも設けたり、基材側により出力の高い加熱手段を設けたりする必要がない。また、2層の発色温度を同じにすると、一方を発色温度まで加熱した場合に他方の層も発色温度になり発色する可能性が高まる。それに比べて、2層の発色温度を異ならせれば、一方の層だけの画像形成をより確実に行うことができる。
【0063】
また、実施例のように上層(表面側の層)の可視感熱層の方の発色温度を高くすることで、上層側にだけ加熱手段を設けて基材側から加熱する必要がなくなる。これにより、基材を加熱する必要がなくなるので、発色温度の低い方を表面側にする場合に比べて、加熱手段の出力を小さくすることができる。
【0064】
[2-2]感熱層の構成
感熱層の構成は実施例で述べたものに限らない。
図8は本変形例の感熱紙の例を表す。
図8(a)では、不可視感熱層32aが可視感熱層33aよりも表面側に積層された(基材31a、可視感熱層33a、不可視感熱層32aの順に積層された)感熱紙30aが表されている。
【0065】
この場合でも、不可視感熱層32aの発色温度T2aが可視感熱層33aの発色温度T1aよりも高い温度となっていれば、実施例と同様に可視画像及び不可視画像が形成可能である。また、不可視感熱層32aが透明度の高い層であれば、形成された可視画像を不可視感熱層32a越しに見ることができる。ただし、実施例のように可視感熱層を表面側に積層した方が、不可視感熱層を表面側に積層する場合に比べて、可視画像を見やすくすることができる。
【0066】
図8(b)では、基材31bを有し、その基材31bの一方の面側に可視感熱層33bを有し、基材31bの他方の面側に不可視感熱層32bを有する(可視感熱層33b、基材31b、不可視感熱層32bの順に積層された)感熱紙30bが表されている。この場合、加熱手段である加熱部18のサーマルヘッドを両面側(可視感熱層33b側及び不可視感熱層32b側)にそれぞれ設けることで、可視画像及び不可視画像を同時に形成することができる。
【0067】
また、サーマルヘッドが1つでも、搬送部17が感熱紙30bを反転させて両面がサーマルヘッドに接触するように搬送すれば、可視画像及び不可視画像を形成することができる。また、いずれの場合も、不可視感熱層32bの発色温度T2b及び可視感熱層33bの発色温度T1bが異なっていても同じであってもよい。
【0068】
[2-3]2層の情報の関連性
実施例では、可視画像及び不可視画像がそれぞれ個別の情報を示したが、これらの情報に関連性を持たせてもよい。例えば、第1加熱制御部103は、可視感熱層に、不可視画像が表す情報と合わせることで所定の処理(例えば精算処理)に利用可能になる情報を示す画像を可視画像として形成する。
【0069】
図9は本変形例で形成される駐車関連画像の一例を表す。
図9の例では、
図9(a)に表すように感熱紙30cの不可視感熱層32cに、「入場時刻:xx時」という文字列を示す駐車関連画像G4が形成されている。また、感熱紙30cの可視感熱層33cには、「入場時刻:yy分」という文字列を示す駐車関連画像G5が形成されている。これらの「入場時刻:xx時」及び「入場時刻:yy分」という情報は、いずれも単独では入場時刻を完全には表さない。
【0070】
駐車場精算機20の精算処理部204は、これらの「入場時刻:xx時」及び「入場時刻:yy分」という情報を合わせた「xx時yy分」が入場時刻であったと判断し、その入場時刻を用いて精算処理を行う。また、これ以外にも、例えば第1加熱制御部103が可視感熱層にQRコードの半分を形成し、第2加熱制御部104が不可視感熱層にQRコードの残りの半分を形成してもよい。
【0071】
図10は本変形例で形成される駐車関連画像の一例を表す。
図10(a)ではQRコードの左半分を示す駐車関連画像G6が表され、
図10(b)ではQRコードの右半分を示す駐車関連画像G7が表されている。この場合、情報解読部203が、
図10(c)に表すようにこれらを合わせた1つのQRコードG8から駐車券番号、入場時刻、駐車場コード及び割引コードを解読し、解読された情報を用いて精算処理部204が精算処理を行う。
このように可視画像及び不可視画像が形成されることで、可視画像だけを偽造しても駐車券として利用できないようにすることができる。
【0072】
[2-4]2層の情報の位置関係
上記変形例における可視画像及び不可視画像の関連性に、両情報の位置関係を利用してもよい。例えば、第1加熱制御部103は、可視感熱層に、不可視画像が表す情報と所定の位置関係になっている場合にその不可視画像が表す情報と合わせることで所定の処理に利用可能になる情報を示す画像を可視画像として形成する。
【0073】
図11は本変形例で形成される駐車関連画像の例を表す。
図11の例では、感熱紙30dの不可視感熱層32dに、「入場時刻:vv時」という文字列を示す駐車関連画像G11と、「入場時刻:ww時」という文字列を示す駐車関連画像G12と、「入場時刻:xx時」という文字列を示す駐車関連画像G13とが上下に(G11が一番上でG13が一番下に)並べて形成されている。
【0074】
また、感熱紙30dの可視感熱層33dには、「入場時刻:yy分」という文字列を示す駐車関連画像G21が形成されている。
図11(b)では、この駐車関連画像G21が、可視感熱層33dに形成された文字の上下方向における上側に形成されている。この場合、精算処理部204は、
図11(c)に表すように、駐車関連画像G11、G12、G13のうち同じく上側に形成されているG11と合わせた「vv時yy分」を入場時刻と判断する。
【0075】
また、
図11(d)では、この駐車関連画像G21が、可視感熱層33dに形成された文字の上下方向における下側に形成されている。この場合、精算処理部204は、
図11(e)に表すように、駐車関連画像G11、G12、G13のうち同じく下側に形成されているG13と合わせた「xx時yy分」を入場時刻と判断して、精算処理を行う。
【0076】
このように、本変形例では、可視画像が示す情報(「入場時刻:yy分」)と不可視画像が示す情報(「入場時刻:vv時」、「入場時刻:ww時」、「入場時刻:xx時」)だけが分かっても、入場時刻を確定させることができない。入場時刻を確定するためには、それらの情報に加えて、可視画像及び不可視画像の位置関係が必要である。そのため、本変形例によれば、可視画像が示す情報及び不可視画像が示す情報だけが漏洩しても駐車券として利用できないようにすることができる(両画像の位置を示す情報も必要になる)。
【0077】
なお、本変形例の駐車関連画像はこれに限らない。例えば第1加熱制御部103が
図10に表す駐車関連画像G6を形成し、第2加熱制御部104が、QRコードの右半分を示す駐車関連画像を不可視画像として複数形成する。情報解読部203は、駐車関連画像G6の位置と所定の関係(例えば駐車関連画像G6の右隣の位置等)にある不可視画像を合わせた1つのQRコードが示す情報を解読し、精算処理部204は、その解読結果に基づく精算処理を行う。この場合も、可視画像が示す情報及び不可視画像が示す情報だけが漏洩しても駐車券として利用できないようにすることができる。
【0078】
所定の位置関係としては、例えば可視画像が示す情報及び不可視画像が示す情報の両方が見えている場合に自然と1つの情報として読み取られる位置関係(同じ行で隣接する位置関係又は1つのQRコードが表される位置関係等)が用いられる。ただし、それに限らず、多少離れていたり、人の目では無関係なように見えたりしても、予め決められた位置関係であれば、所定の位置関係として用いることができる。その場合、情報解読部203及び精算処理部204は、見た目の自然さとは関係なく、所定の位置関係であるか否かを判断すればよい。
【0079】
[2-5]感熱紙
上記の各例では、基材の全面に可視感熱層及び不可視感熱層が積層されていたが、これに限らず、基材の一部に可視感熱層及び不可視感熱層が積層されていてもよい。その場合でも、両層が積層された領域に可視画像及び不可視画像を形成することで、実施例と同様に、読取方法が異なる2通りの情報を表す駐車券を加熱手段のみで形成することができる。
【0080】
[2-6]駐車関連画像
駐車関連画像は、実施例で述べた情報(駐車場名、連絡先、駐車券番号、入場時刻、駐車場コード及び割引コード)を示すものに限らない。例えば、管理者名、営業時間及び使用上の注意事項等が示されてもよい。要するに、駐車に関して利用者が知りたい情報及び駐車料金の精算処理に用いられる情報等であれば、どのような情報が示されていてもよい。そして、そのうちの精算処理に用いられる情報であるが利用者には知られない方がよい情報(知っていても意味がない情報又は悪用される恐れがある情報)は、不可視画像で示されることが望ましい。
【0081】
[2-7]各部を実現する装置
図4に表す各機能を実現する装置は、図中に表された装置に限らない。例えば駐車券発行装置10が備える1以上の機能(駐車場情報記憶部101及び駐車関連画像生成部102等)を他の装置が実現してもよい。また、駐車場精算機20が備える1以上の機能(情報解読部203及び精算処理部204等)を他の装置が実現してもよい。
【0082】
これらの場合、1台の装置が備える各機能を2台以上の装置がそれぞれ分担して実現してもよいし、1つの機能が複数の装置により分散して実現されてもよい。また、複数の駐車券発行装置10及び複数の駐車場精算機20がそれぞれ
図4に表す各機能を実現してもよい。要するに、駐車場システム全体としてこれらの機能が実現されていれば、駐車場システムが何台の装置を備えていてもよいし、どのような形態で実現されてもよい。
【0083】
[2-8]発明のカテゴリ
本発明は、駐車券発行装置10及び駐車場精算機20等の各情報処理装置の他、それらの装置を備える駐車場システム1のような情報処理システムとしても捉えられる。また、本発明は、各装置が実施する処理を実現するための情報処理方法としても捉えられるし、各装置を制御するコンピュータを機能させるためのプログラムとしても捉えられる。このプログラムは、それを記憶させた光ディスク等の記録媒体の形態で提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してコンピュータにダウンロードさせ、それをインストールして利用可能にするなどの形態で提供されてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…駐車場システム、10…駐車券発行装置、20…駐車場精算機、30…感熱紙、31…基材、32…不可視感熱層、33…可視感熱層、101…駐車場情報記憶部、102…駐車関連画像生成部、103…第1加熱制御部、104…第2加熱制御部、105…発券制御部、201…駐車券第1読取部、202…駐車券第2読取部、203…情報解読部、204…精算処理部、271…光学センサ、272…可視光照射部、273…不可視光照射部。