(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】クルクミン組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 5/43 20160101AFI20220516BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20220516BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220516BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20220516BHJP
A23L 29/10 20160101ALI20220516BHJP
C09B 61/00 20060101ALI20220516BHJP
C09B 67/46 20060101ALI20220516BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20220516BHJP
C09B 67/04 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
A23L5/43
A61K8/35
A61K8/73
A61K8/04
A23L29/10
C09B61/00 Z
C09B67/46 A
C09B67/20 A
C09B67/04
C09B67/20 L
(21)【出願番号】P 2018540338
(86)(22)【出願日】2017-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2017034574
(87)【国際公開番号】W WO2018056444
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2016186524
(32)【優先日】2016-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 可南子
(72)【発明者】
【氏名】坂田 慎
【審査官】安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-023843(JP,A)
【文献】国際公開第2011/036811(WO,A1)
【文献】特表2006-522202(JP,A)
【文献】特開2010-124817(JP,A)
【文献】特開2011-041512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
C09B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メジアン径が1μm以下である
固体クルクミン、アラビアガム、加工澱粉及び水を含有する
水中固体分散組成物
であり、
前記固体クルクミンの含有量が0.5~20質量%の範囲内である組成物。
【請求項2】
液状である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
クルクミンをウコン色素として含有する請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
アラビアガムが、改質アラビアガムである請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
アラビアガムの含有量がクルクミンの100質量部に対して10~250質量部の範囲内である請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
加工澱粉の含有量がクルクミンの100質量部に対して0.5~100質量部の範囲内である請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
加工澱粉の含有量がアラビアガムの100質量部に対して0.5~300質量部の範囲内である請求項1~
6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
更に多価アルコールを含有する請求項1~
7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
多価アルコールがグリセロールである請求項
8に記載の組成物。
【請求項10】
多価アルコールの含有量がクルクミンの100質量部に対して10~1000質量部の範囲内である請求項
8又は
9に記載の組成物。
【請求項11】
加工澱
粉、アラビアガム、及び水
の存在下で、固体クルクミンを
、固体クルクミンのメジアン径が1μm以下となるように、
湿式粉砕することを含む、
水中固体分散組成物の製造方法
であり、
前記組成物における、固体クルクミンの含有量が0.5~20質量%の範囲内である、製造方法。
【請求項12】
色素製剤である、請求項1~
10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1
2に記載の組成物で着色された食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクルクミン組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
ウコンは、天然食品添加物又は香辛料として昔より汎用されている食品素材であり、これを含有する飲食品が多数市場に現れている。その一方で、近年、抗酸化作用、抗炎症作用、及び抗がん作用が報告され、また、心不全予防、がん、及びアルツハイマーに対する薬効の臨床研究も実施され、機能性天然物質としても注目されてきている。ウコン(Turmeric, Curcuma longaL.)は、黄色主成分として、クルクミンを含有しており、その生理活性も研究が実施されている。
【0003】
クルクミンは、疎水性物質であるので、その水性製剤を調製するためには、分散剤を用いてクルクミンを水中に懸濁する必要がある。
例えば、特許文献1には、水不溶性及び/又は疎水性天然色素の分散体を含有する水分散性色素配合物の製造方法として、「乳化剤の非存在下で水不溶性及び/又は疎水性天然色素を前記色素の量に基づいて少なくとも1重量%の量の親水コロイドを含有する水性相中で微粉砕して10μm以下の平均サイズを有する物体の形の前記色素を含有する分散体を得ることにより、前記水不溶性及び/又は疎水性天然色素の分散体を調製することを含んで成り、前記配合物が10重量%より多くの水を含有する、水分散性色素配合物の調製方法。」が開示され、当該親水コロイドとしてアラビアガムが例示され、及び疎水性天然色素としてクルクミンが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らの検討により、
(1)クルクミンを、水中、且つアラビアガムの存在下で粉砕すると、クルクミンを水中に分散させてクルクミン水性製剤を調製できるが、これを長期間保存すると凝集が生じてしまうこと、及び
(2)特に当該クルクミン水性製剤の調製時に防腐剤として汎用される多価アルコールを添加すると、当該調製時に堅固な凝集が生じてしまい、そもそも製剤の調製ができないこと、
が明らかになった。
従って、本発明は、クルクミン水性製剤の凝集を抑制、又は防止すること、及びクルクミン水性製剤の製造時の凝集を抑制、又は防止することを目的とする。
本発明は、更に、保存時の凝集が抑制、又は防止されたクルクミン含有組成物を提供すること等を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、
クルクミン、アラビアガム、加工澱粉及び水を含有する組成物
によって、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、次の態様を含む。
項1.
メジアン径が1μm以下であるクルクミン、アラビアガム、加工澱粉及び水を含有する組成物。
項2.
液状である項1に記載の組成物。
項3.
クルクミンをウコン色素として含有する項1又は2に記載の組成物。
項4.
クルクミンの含有量が0.5~30質量%の範囲内である項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
項5.
アラビアガムが、改質アラビアガムである項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
項6.
アラビアガムの含有量がクルクミンの100質量部に対して10~250質量部の範囲内である項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
項7.
加工澱粉の含有量がクルクミンの100質量部に対して0.5~100質量部の範囲内である項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
項8.
加工澱粉の含有量がアラビアガムの100質量部に対して0.5~300質量部の範囲内である項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
項9.
更に多価アルコールを含有する項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
項10.
多価アルコールがグリセロールである項9に記載の組成物。
項11.
多価アルコールの含有量がクルクミンの100質量部に対して10~1000質量部の範囲内である項9又は10に記載の組成物。
項12.
加工澱粉の存在下で、クルクミン、アラビアガム、及び水を混合することを含む、項1~11に記載の組成物の製造方法。
項13.
加工澱粉の存在下で、クルクミン、アラビアガム、水、及び多価アルコールを混合することを含む、項12に記載の組成物の製造方法。
項14.
前記混合により得た混合物を粉砕することを含む、項12、又は13に記載の製造方法。
項15.
色素製剤である、項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
項16.
項15に記載の組成物で着色された食品。
項17.
アラビアガム、及び加工澱粉を含有するクルクミン用分散剤。
項18.
クルクミン用凝集抑制剤である項17に記載の分散剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クルクミン水性製剤の凝集を抑制、又は防止すること、及びクルクミン水性製剤の製造時の凝集を抑制、又は防止することができる。
本発明によれば、更に、保存時の凝集が抑制、又は防止されたクルクミン含有組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】未改質アラビアガム(A.senegal種)をGPC-MALLS法で分析した結果を示すクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1]用語
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本明細書の文脈に沿い、本発明が属する技術分野において通常用いられる意味に理解できる。
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
特に限定されない限り、本明細書中に記載されている工程、処理、又は操作は、室温で実施され得る。
本明細書中、室温は、10~40℃の範囲内の温度を意味する。
本明細書中、メジアン径は、体積規準である。
【0011】
[2]クルクミン組成物
本発明の組成物は、クルクミン、アラビアガム、加工澱粉及び水を含有する。
すなわち、本発明の組成物は、クルクミン含有組成物である。
【0012】
本発明の組成物は、好適に液状であることができる。すなわち、本発明の組成物は、好適に水性製剤(又は、水性懸濁製剤)であることができる。
本明細書中、「液状」とは、固体状、又は気体状ではなく、及び流動性を有する性状を意味する。
本明細書中、「液状」は、半固体状を包含する。
【0013】
液状である本発明の組成物(又は、水性懸濁製剤である本発明の組成物)においては、クルクミンが水中に分散している。
【0014】
本発明の組成物は、好ましくは、流動性を有する。
本発明の組成物が流動性を有することは、ゲル化の判断基準として汎用されている試験管倒置法を利用して判断できる。
具体的には、本発明の組成物は、その25gを、内径3cm、及び深さ5.5cmのスクリュー管に入れ、及び50℃に温度調整した後、当該スクリュー管を120℃反転した時に、5秒間以内に、その50質量%以上がスクリュー管外に出ることができる。
【0015】
[3]クルクミン
本発明で用いられるクルクミンは、好ましくは、ウコン色素又はウコンエキスに含まれた状態で用いられる。
【0016】
本発明で用いられるクルクミンは、例えば、ショウガ科ウコン(Curcuma longaLINNE)の根茎から得ることができる。
本発明で用いられるクルクミンは、好ましくは、ウコンの根茎の乾燥品(ウコン粉末)から温時エタノールで、熱時油脂若しくはプロピレングリコールで、又は室温時~熱時ヘキサン若しくはアセトンで抽出して調製されるクルクミンである。
本発明で用いられるクルクミンは、好ましくは固体(結晶、非結晶、或いはそれらの組合せ)、及びより好ましくは結晶である。
かかるクルクミンは、例えば、ウコン粉末をヘキサン及びアセトンによって抽出し、その抽出溶液を濾過後、溶媒を揮発させて乾燥させることによって調製することができる。
或いは、クルクミンとして、合成品を用いることもできる。
【0017】
本発明で用いられるクルクミンは、必ずしも純粋なクルクミンでなくてもよく、例えば、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%、又は97質量%の純度を有するクルクミンであることができる。
【0018】
簡便には、クルクミンとして、商業的に入手できるウコン色素(クルクミンの粉末:結晶状態)を使用することができる。かかるクルクミン粉末は、商業的に入手可能であり、三栄源エフ・エフ・アイ(株)等から購入することができる。
【0019】
当該ウコン色素の好適な例は、クルクミンを80質量%以上含有するウコン色素を包含する。
【0020】
本発明の組成物が含有するクルクミンは、1μm以下、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.7μm以下、及び更に好ましくは0.5μm以下のメジアン径を有する。
本発明で用いられるクルクミンのメジアン径の下限は特に限定されないが、例えば、0.01μm、0.05μm、又は0.1μmであることができる。
【0021】
本発明のウコン色素液状組成物中でのウコン色素のメジアン径、言い換えるとガティガム溶液中のウコン色素のメジアン径は、(湿式)レーザー回折式粒度分布測定装置マイクロトラックMT-3000II(製品名、Microtorac社)を用いて測定することができる(条件;屈折率:1.81、測定範囲:0.021~2000μm、粒度分布:体積基準)。
【0022】
本発明の組成物におけるクルクミンの含有量は、好ましくは0.5~30質量%、より好ましくは1~25質量%、更に好ましくは1.5~20質量%、より更に好ましくは2~18質量%、特に好ましくは2~16質量%、より特に好ましくは2~14質量%、及び殊更に好ましくは3~12質量%の範囲内である。
【0023】
本発明の組成物がクルクミン源としてウコン色素を含有する場合、その含有量は好ましくは0.5~30質量%、より好ましくは1~25質量%、更に好ましくは2~20質量%、より更に好ましくは3~18質量%、及び特に好ましくは3~13質量%の範囲内である。
【0024】
アラビアガム
本発明で用いられるアラビアガムとしては、種々のアラビアガムを使用できる。本明細書中、用語「アラビアガム」は、「天然アラビアガム」又は「未改質アラビアガム」、及び「改質アラビアガム」を包含することができる。
アラビアガムは、マメ科アカシア属に属する植物(アカシア:特にAcacia senegal及びAcacia seyal)の幹又は枝から得られる天然滲出物である。アラビアガムは水に高濃度で溶解し、その水溶液は比較的低濃度で、強い乳化力、乳化安定化力、カプセル化力、粘着性、保護コロイド性、及びフィルム形成性を有することから、従来から広く乳化剤、増粘剤、安定剤、結合剤又は皮膜剤として利用されている。
【0025】
本発明の一態様では、アラビアガムとして、天然アラビアガム(未改質アラビアガム)が用いられる。当該天然アラビアガム(未改質アラビアガム)としては、後記で改質アラビアガムの製造のための原料として記載されている未改質アラビアガムが例示される。
【0026】
本発明の好適な一態様では、アラビアガムとして、改質アラビアガムを用いる。
改質アラビアガムは、国際公開公報WO2004/089991に開示されている公知の物質であり、その記載から理解されるが、以下に説明する。
【0027】
本発明で用いることができる改質アラビアガムは、例えば、Acacia
senegal種又はAcacia
seyal種に属する天然アラビアガムを処理することによって得られるAcacia
senegal種又はAcacia
seyal種に由来することができる。
これらの種に属する天然アラビアガムは、構造上の相違に基づいて、異なる分子量、異なる蛋白質分布、及び異なる分子特性を有している。
例えばA.senegal種に属する天然アラビアガムは左旋性を示し、-30前後の比旋光度を有する。これに対して、A.seyal種に属する天然アラビアガムは右旋性を示し、+50前後の比旋光度を有する。また、A.senegal種に属するアラビアガムと比較して、A.seyal種に属するアラビアガムはタンパク質含量(窒素含量)が低く、水溶液にしたときの粘度が低く、かつ糖組成が異なることが知られている。
【0028】
(1)A. senegal種に由来する改質アラビアガム
(1-1) 本発明で用いることができる改質アラビアガムは、例えば、Acacia
senegal種に属するアラビアガムを加熱することによって得られる、重量平均分子量が9×105(90万)以上、好ましくは15.0×105(1.5百万)以上、更に好ましくは20.0×105(2百万)以上の水溶性の改質アラビアガムであることができる。
【0029】
ここで重量平均分子量は、光散乱(MALLS)検出器、屈折率(RI)検出器及び紫外線(UV)検出器の3つの検出器を備えたゲル濾過クロマトグラフィーを使用することによって求めることができる。なお、本明細書において、当該ゲル濾過クロマトグラフィーの手法を“GPC-MALLS”と称する。GPC-MALLSによれば、分子量はMALLS検出器により、各成分の質量(組成比)はRI検出器により、さらに蛋白質含量はUV検出器により測定することができ、分子量既知の標準のアラビアガムと対比することなく、分析成分の分子量並びに組成を求めることができる。GPC-MALLSの詳細な原理及び特徴は、非特許文献:Idris, O.H.M., Williams, P.A., Phillips, G.O.,;Food Hydrocolloids, 12 (1998) p.375-388に記載されている。
【0030】
本発明で採用されるGPC-MALLSの測定条件は下記の通りである:
カラム :Superose(6HR) 10/30 (ファルマシア・バイオテック、スウェーデン)
流速 :0.5ml/分
溶出溶媒 :0.2M NaCl
試料の調製:分析試料を溶出溶媒(0.2M NaCl)にて希釈
試料濃度 :0.4%(W/V)
試料液注入量:100μl
dn/dc :0.141
温度 :室温
検出器 :1. MALLS(multi angle laser light scattering)検出器、DAWN DSP(フィアットテクノロジー(株)製, 米国)、2.RI検出器、3.UV検出器(214nmでの吸収)。
【0031】
前記条件下で行ったGPC-MALLSで得られたデータをASTRA Version 4.5 (フィアットテクノロジー(株))等のソフトウェアを用いて処理することにより、重量平均分子量、回収率(%Mass)、多分散性値(P)、慣性自乗半径(Rg)のアラビアガムの成分の各種パラメーターを求めることができる。RI検出器によって求められたクロマトグラム上の全てのピークを1ピークとしてデータ処理した場合に、得られる分子量がアラビアガムに関していう「重量平均分子量(Mwt)」である(より詳細には、「1ピークとして処理したMwt」)である。なお、クロマトグラムのベースラインからのRIチャートの立ち上がり部を起点、及び降下してベースラインと交わった部分を終点とした場合に、前記でいうクロマトグラム上の1ピークとは、起点から終点までの領域を意味する。
【0032】
本発明で用いることができる改質アラビアガムの重量平均分子量は、好ましくは、9.0×105(90万)以上、より好ましくは12.0×105(1.2百万)以上、更に好ましくは15.0×105(1.5百万)以上、より更に好ましくは20.0×105(2百万)以上である。重量平均分子量の上限は、改質アラビアガムが水溶性である限りにおいて特に制限されないが、70.0×105(7百万)以下が挙げられ、好ましくは60.0×105(6百万)以下、より好ましくは50.0×105(5百万)以下、更に好ましくは40.0×105(4百万)以下であることが好ましい。
【0033】
さらに本発明で用いることができる改質アラビアガムは、好ましくは、前記重量平均分子量を有し、且つ水溶性である。ここで、「水溶性」とは、過分量の水に完全に、又は実質的に完全に溶解する性質をいう。ここで、水は、純水、イオン交換水、及びイオンを含有する水等、任意の種類の水であることができ、及びその温度もアラビアガムが溶解する温度を適宜選択し得る。すなわち、水の種類又は温度を適宜設定することで、水に溶解させることができる改質アラビアガムであれば、好適に使用できる。
【0034】
なお、一旦ヒドロゲル状になったアラビアガムは、水量を多くしても加温しても水に溶解しない。ゆえに、アラビアガムに関していう「水溶性」とは、本発明で用いることができる改質アラビアガムを水に溶解しないヒドロゲル状のアラビアガムと区別する意味で用いられる。言い換えれば、本発明で用いることができる改質アラビアガムは、ヒドロゲル等のように、水中で溶解しない高分子状態の改質アラビアガムを実質上含有しないものである。
【0035】
さらにまた本発明で用いることができる改質アラビアガムは、前記重量平均分子量を有し、水溶性であって、さらに未改質のアラビアガムと免疫学的反応性において同等もしくは類似していることが好ましい。なお、ここで「未改質アラビアガムと免疫学的反応性において同等もしくは類似する」とは、改質アラビアガムの免疫学的阻害率を、例えばSYCC7などの定量可能な抗体を用いた間接的競合ELISA法によって測定した場合に〔Thurston, M.I, et al., Detection of gum from Acacia seyal and species of combretum in mixtures with A.senegal using monoclonal antibodies, Food & Agric. Immunol., 10 : 237-241(1998)、Thurston, M. I, et al., Effect of heat and pH on carbohydrate epitopes from Acacia senegal by specific monoclonal antibodies, Food & Agric. Immunol., 11 : 145-153(1999)〕、Acacia Senegal種に属するアラビアガムとの免疫学的阻害率の差が±10%以内であることを意味する。
【0036】
なお本発明で用いることができる改質アラビアガムは、その形状が特に制限されるものではなく、塊状物、玉状物、粗粉砕物、顆粒状、粒状、及び粉末状のいずれの形状をも有することができる。
【0037】
本発明で用いることができる改質アラビアガムは、原料として用いるAcacia
senegal種に属するアラビアガムをオーブンなどの恒温器又は加熱器を用いて110℃で10時間以上加熱することによって調製することができる。
【0038】
ここで原料として用いる未改質アラビアガム(A.senegal種)は、マメ科植物であるアカシア属に属するアカシア・セネガル(Acacia
senegal)、又はこれらの同属植物の幹又は枝から得られる天然滲出物である。又は、これをさらに精製処理、脱塩処理又は粉砕もしくはドライスプレー等の加工処理を施したものであってもよい。
【0039】
未改質アラビアガム(A.senegal種)は、通常、エチオピアからセネガルにかけての北アフリカ及び西アフリカの各国(エチオピア、スーダン、セネガル、ナイジェリア、ニジェール、ガーナ)、ケニア及びウガンダなど東アフリカの国々、アフリカのサハラ地帯、並びにナイル川支流の盆地地帯でも産出されるが、本発明においてはその由来を問うことなく、いずれの産地由来のものであってもよい。
【0040】
また、未改質アラビアガム(A.senegal種)は、その水分含量を特に制限するものではない。通常商業的に入手可能な未改質のアラビアガム(A.senegal種)は、105℃で6時間加温乾燥することによって減少する水分量(乾燥減量)が40質量%以下、好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。本発明においてもかかる水分含量(乾燥減量)を有する未改質アラビアガム(A.senegal種)を特に制限されることなく用いることができる。
【0041】
また、通常、未改質アラビアガム(A.senegal種)は、塊状物、玉状物、粗粉砕物、顆粒状、粒状、又は粉末状(スプレードライ粉末を包含する)の形態で入手することができるが、本発明ではこれらの形状を問わず、いずれの形態のものをも処理対象のアラビアガム原料として使用することができる。例えば、メジアン径が数十~数百μm程度のスプレードライ粉末状物であってもよい。メジアン径の上限は特に制限されないが、改質効率の点から100mm以下であることが望ましい。好ましくはメジアン径が1~100mm、より好ましくは2~50mmの範囲である。
【0042】
かかる未改質アラビアガム(A.senegal種)の加熱方法としては、前記するように具体的にはオーブン(恒温器)を用いて110℃で10時間以上加熱する方法を例示することができる。好ましくは110℃で15時間以上の加熱処理、24時間以上の加熱処理、48時間以上の加熱処理である。処理する未改質アラビアガム(A.senegal種)にもよるが、110℃で加熱する場合、時間の上限としては72時間程度を挙げることができる。なお、本発明で規定する特定の分子量を有する水溶性の改質アラビアガムが取得できる方法であれば、加熱温度、加熱時間、加熱手段並びに加熱環境条件(例:相対湿度及び閉鎖系の有無)は任意に選択使用することができ、前記加熱条件に特に制限されるものではない。例えば、前記条件での加熱処理によって得られる本発明の効果は、110℃よりも低温で10時間よりも長時間加熱処理する方法、又は110℃よりも高温で短時間(例:10時間以下)加熱処理する方法等によっても同様に得ることができる。具体的には、前者の例として80℃で3日~1週間以上かけて加熱する方法を挙げることができる。なお、前記オーブンによる加熱手段に代えてマイクロ波照射によれば、より短時間に同様な効果を得ることができる。その他、窒素置換条件下など、酸素のない条件下での加熱処理は、生成されるアラビアガムの着色を抑制することができるので、好ましい処理方法である。
【0043】
(1-2) 本発明で用いることができる改質アラビアガムは、また例えば、Acacia
senegal種に属するアラビアガムを加熱することによって得られる、アラビノガラクタン蛋白質を17質量%以上の割合で含有する水溶性の改質アラビアガムであることができる。
【0044】
アラビノガラクタン蛋白質(以下、単に「AGP」ともいう)は、その他アラビノガラクタン(AG)及びグリコプロテイン(GP)と併せてアラビアガムに含まれる3つの主要な構成成分の一つである。未改質アラビアガム(A.senegal種)には、AGPが通常5~15質量%の割合で含まれている。
【0045】
アラビアガム(未改質アラビアガム、改質アラビアガム)中に含まれるAGPの割合もまた、前記GPC-MALLS法を利用して求めることができる。具体的には、RI検出器によって求められたクロマトグラム上のRIチャートを、初めに溶出する部分を示すピーク1(高分子溶出画分)とそれ以降に溶出する部分を示すピーク2(低分子溶出画分)の2つに分けて、ASTRA Version 4.5 (フィアット・テクノロジー)ソフトウェアにてデータ処理した場合、ピーク1の回収率(% Mass)は、GPC-MALLSに供したアラビアガム中に含まれるAGP含有割合(質量%)に相当する。より具体的に、未改質アラビアガム(
A.
senegal種)をGPC-MALLS法で分析した結果を示すクロマトグラム(
図1)に基づいて説明すると、RIチャートのベースラインを基線として、RIチャートの立ち上がり部を「起点」、RIチャートが降下して基線と交わった部分を「終点」とした場合に、当該起点から終点までの間でRI強度が極小となった点を境とすると、当該境と「起点」の間の領域がピーク1であり、境と「終点」の間の領域がピーク2である。
【0046】
本発明で用いることができる改質アラビアガムに含まれるAGPの割合は17質量%以上であればよく、特に制限されないが、より好ましくは20質量%以上を挙げることができる。その上限は改質アラビアガムが水溶性であることを限度として特に制限されないが、通常30質量%程度を挙げることができる。
【0047】
さらに本発明で用いることができる改質アラビアガムは、前記の割合でAGPを含有し、しかも水溶性であることを特徴とする。さらにまた本発明で用いることができる改質アラビアガムは、前記割合でAGPを含有し、水溶性であって、さらに未改質アラビアガムと免疫学的反応性において同等若しくは類似であることが好ましい。ここで、「水溶性」並びに「未改質アラビアガムと免疫学的反応性において同等若しくは類似である」とは、前記の(1-1)において述べた意味に解釈される。
【0048】
なお本発明で用いることができる改質アラビアガムは、その形状を特に制限するものではなく、塊状物、玉状物、粗粉砕物、顆粒状、粒状、及び粉末状(スプレードライ粉末状のものを包含する)のいずれの形状をも有することができる。
【0049】
本発明で用いることができる改質アラビアガムは、前述するように未改質アラビアガム(A.senegal種)をオーブン等の恒温器又は加熱器を用いて110℃で10時間以上加熱することによって調製することができる。処理する対象の未改質アラビアガム(A.senegal種)としては前述のものを同様に挙げることができ、またその具体的な加熱方法も前述の方法を同様に採用することができる。
【0050】
(1-3)本発明で用いることができる改質アラビアガムは、また例えば、Acacia
senegal種に属する未改質アラビアガムを加熱することによって得られる、重量平均分子量が9.0×105(90万)以上、アラビノガラクタン蛋白質(AGP)を10質量%以上の割合で含有する水溶性の改質アラビアガムであることができる。
【0051】
その重量平均分子量は、好ましくは10.0×105(1百万)以上、より好ましくは12.0×105(1.2百万)以上、さらに好ましくは15.0×105(1.5百万)以上、特に好ましくは20.0×105(2百万)以上である。その上限は、改質アラビアガムが水溶性である限りにおいて特に制限されないが、好ましくは、70.0×105(7百万)以下、より好ましくは60.0×105(6百万)以下、更に好ましくは50.0×105(5百万)以下、より更に好ましくは40.0×105(4百万)程度以下であることが望ましい。
【0052】
また改質アラビアガムに含まれるAGPの割合として好ましくは15質量%以上、より好ましくは17質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。その上限は改質アラビアガムが水溶性である限りにおいて特に制限されないが、30質量%程度以下であることが望ましい。
【0053】
当該本発明で用いることができる改質アラビアガムは、前記の特徴を有するとともに水溶性であることを特徴とする。さらにまた本発明で用いることができる改質アラビアガムは、前記重量平均分子量並びにAGP含有量を有し、水溶性であって、さらに改質前のアラビアガム原料と免疫学的反応性において同等若しくは類似することが好ましい。ここで「水溶性」並びに「未改質アラビアガムと免疫学的反応性において同等若しくは類似する」とは、前記の(1-1)において述べた意味に同様に解釈される。
【0054】
また、本発明で用いることができる改質アラビアガムは、その形状を特に制限するものではなく、塊状物、玉状物、粗粉砕物、顆粒状、粒状、及び粉末状(スプレー乾燥粉末を包含する)のいずれの形状をも有することができる。
【0055】
本発明で用いることができる改質アラビアガムは、前述するように未改質アラビアガム(A.senegal種)をオーブン等の恒温器又は加熱器を用いて110℃で10時間以上加熱することによって調製することができる。処理する対象の未改質アラビアガム(A.senegal種)としては前述のものを同様に挙げることができ、またその具体的な加熱方法も前述の方法を同様に採用することができる。
【0056】
(2)Acacia
seyal種に由来する改質アラビアガム
(2-1) 本発明で用いることができる改質アラビアガムは、また例えば、Acacia
seyal種に属するアラビアガムを加熱することによって得られる、重量平均分子量が25.0×105(2.5百万)以上の水溶性の改質アラビアガムであることができる。
【0057】
本発明で用いることができる改質アラビアガムの重量平均分子量は前記限りにおいて特に制限されないが、より好ましくは26.0×105(2.6百万)以上、さらに好ましくは30.0×105(3百万)以上を有することが望ましい。重量平均分子量の上限は、改質アラビアガムが水溶性である限りにおいて特に制限されないが、好ましくは70.0×105(7百万)以下、より好ましくは60.0×105(6百万)以下、更に好ましくは50.0×105(5百万)以下、より更に好ましくは40.0×105(4百万)程度を挙げることができる。
【0058】
さらに本発明で用いることができる改質アラビアガムは、前記重量平均分子量を有し、しかも水溶性であることを特徴とする。さらにまた本発明で用いることができる改質アラビアガムは、前記重量平均分子量を有し、水溶性であって、さらに未改質のアラビアガムと免疫学的反応性において同等若しくは類似することが好ましい。ここで「水溶性」並びに「未改質のアラビアガムと免疫学的反応性において同等若しくは類似する」とは、前記の(1-1)において前述する意味で同様に用いられる。
【0059】
なお本発明で用いることができる改質アラビアガムは、その形状を特に制限するものではなく、塊状物、玉状物、粗粉砕物、顆粒状、粒状、及び粉末状のいずれの形状をも有することができる。
【0060】
本発明で用いることができる改質アラビアガムは、原料として用いるAcacia
seyal種に属するアラビアガムをオーブンなどの恒温器を用いて110℃で10時間以上加熱することによって調製することができる。
【0061】
ここで原料となる未改質アラビアガム(A.seyal)は、マメ科植物であるアカシア属に属するアカシア・セイアル(Acacia
seyal)、又はこれらの同属植物の幹又は枝から得られる天然滲出物である。又は、これをさらに精製処理、脱塩処理又は粉砕もしくはドライスプレー等の加工処理を施したものであってもよい。
【0062】
未改質アラビアガム(A.seyal)は、通常、エチオピアからセネガルにかけての北アフリカ及び西アフリカの各国(エチオピア、スーダン、セネガル、ナイジェリア、ニジェール、ガーナ)、ケニア及びウガンダなど東アフリカの国々、アフリカのサハラ地帯、並びにナイル川支流の盆地地帯でも産出されるが、本発明においてはその由来を問うことなく、いずれの産地由来のものであってもよい。
【0063】
また、未改質アラビアガム(A.seyal)は、その水分含量を特に制限するものではない。通常商業的に入手可能な未改質アラビアガム(A.seyal)はいずれも任意に用いることができる。
【0064】
また、通常未改質アラビアガム(A.seyal)は、塊状物、玉状物、粗粉砕物、顆粒状、粒状、又は粉末状(スプレードライ粉末状のものを包含する)の形態で入手することができるが、本発明ではこれらの形状を問わず、いずれの形態のものをも加熱処理対象のアラビアガム原料として使用することができる。例えば、メジアン径が数十~数百μm程度のスプレードライ粉末状物であってもよい。メジアン径の上限は特に制限されないが、改質効率の点から100mm以下であることが望ましい。好ましくはメジアン径が1~100mm、より好ましくは2~50mmの範囲である。
【0065】
かかる未改質アラビアガム(A.seyal)の加熱方法としては、前記未改質アラビアガム(A.senegal種)について述べた加熱方法と同様の方法が例示される。
【0066】
(2-2)本発明で用いることができる改質アラビアガムは、また例えばAcacia
seyal種に属するアラビアガムを加熱することによって得られる、蛋白質含有高分子成分を25質量%以上の割合で含有する水溶性の改質アラビアガムであることができる。
【0067】
Acacia
seyal種に属する未改質アラビアガム並びにその改質アラビアガム中に含まれる蛋白質含有高分子成分の割合もまた、前記GPC-MALLS法を利用して同様にして求めることができる。具体的には、RI検出器によって求められたクロマトグラム上のRIチャートを、初めに溶出するピーク1(高分子溶出画分)とそれ以降に溶出するピーク2(低分子溶出画分)の2つに分けて、ASTRA Version 4.5 (Wyatt Technology)ソフトウェアにてデータ処理した場合、ピーク1の回収率(% Mass)が、アラビアガム中に含まれる蛋白質含有高分子成分の割合(質量%)である。より具体的に、未改質アラビアガム(
A.
seyal)をGPC-MALLS法で分析した結果を示すクロマトグラム(
図2)に基づいて説明すると、RIクロマトグラムにおいて、当該クロマトグラムのベースラインからのRIチャートの立ち上がり部を「起点」、RIチャートが降下してベースラインと交わった部分を「終点」とした場合に、当該起点から終点までの間でRI強度が極小となった点を境として、当該境と起点との間の領域が前記でいうピーク1であり、境と終点との間の領域が前記でいうピーク2である。
【0068】
Acacia
senegal種と同様、A.seyal種においても、蛋白質含有高分子成分(ピーク1)は、未改質アラビアガム(A.seyal)の主要構成成分の一つであり、未改質アラビアガム(A.seyal)中に通常10~24質量%の割合で含まれている。
【0069】
本発明で用いることができる改質アラビアガム(A.seyal)における蛋白質含有高分子成分(ピーク1)の含有割合は前記限りにおいて特に制限されないが、より好ましくは26質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。その上限は改質アラビアガムが水溶性であることを限度として特に制限されないが、45質量%程度以下であることが望ましい。
【0070】
さらに本発明で用いることができる改質アラビアガム(A.seyal)は、前記の割合で蛋白質含有高分子成分(ピーク1)を含有し、しかも水溶性であることを特徴とする。さらにまた本発明で用いることができる改質アラビアガムは、前記の割合で蛋白質含有高分子成分を有し、水溶性であって、さらに未改質のアラビアガム(A.seyal)と免疫学的反応性において同等若しくは類似することが好ましい。ここで「水溶性」並びに「未改質のアラビアガム(A.seyal)と免疫学的反応性において同等若しくは類似する」とは、前記の(1-1)において述べた通りである。なお本発明で用いることができる改質アラビアガム(A.seyal)は、その形状を特に制限するものではなく、塊状物、玉状物、粗粉砕物、顆粒状、粒状、及び粉末状(スプレードライ粉末状のものを包含する)のいずれの形状をも有することができる。
【0071】
本発明で用いることができる改質アラビアガムは、前述するように未改質アラビアガム(A.seyal)をオーブン等の恒温器を用いて110℃で10時間以上加熱することによって調製することができる。未改質アラビアガム(A.seyal)としては前述のものを同様に挙げることができ、またその具体的な加熱方法も前述の方法を同様に採用することができる((2-1)参照)。
【0072】
(2-3)本発明で用いることができる改質アラビアガムは、また例えば、Acacia
seyal種に属する未改質アラビアガムを加熱することによって得られる、重量平均分子量が150万以上、蛋白質含有高分子成分を22質量%以上の割合で含有する水溶性の改質アラビアガムであることができる。
【0073】
ここで重量平均分子量は、好ましくは20.0×105(2百万)以上、より好ましくは25.0×105(250万)以上である。その上限は改質アラビアガムが水溶性であることを限度として特に制限されないが、通常40.0×105(4百万)程度以下を例示することができる。また改質アラビアガムに含まれる蛋白質含有高分子成分(ピーク1)の割合として好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上を例示することができる。その上限は改質アラビアガムが水溶性であることを限度として特に制限されないが、通常45質量%程度以下を例示することができる。
【0074】
当該本発明で用いることができる改質アラビアガム(A.seyal)は、前記の特徴を有するとともに水溶性であることを特徴とする。さらにまた本発明で用いることができる改質アラビアガムは、前記の割合で重量平均分子量並びに蛋白質含有高分子成分を有し、水溶性であって、さらに未改質アラビアガム(A.seyal)と免疫学的反応性において同等若しくは類似することが好ましい。ここで「水溶性」並びに「未改質アラビアガム(A.seyal)と免疫学的反応性において同等若しくは類似する」とは、前記の(1-1)において前述する意味で同様に用いられる。
【0075】
また、本発明で用いることができる改質アラビアガム(A.seyal)は、その形状を特に制限するものではなく、塊状物、玉状物、粗粉砕物、顆粒状、粒状、及び粉末状(スプレードライ粉末状のものを含有する)のいずれの形状をも有することができる。
【0076】
本発明で用いることができる改質アラビアガムは、前述するように未改質アラビアガム(A.seyal)をオーブン等の恒温器を用いて110℃で10時間以上加熱することによって調製することができる。ここで未改質アラビアガム(A.seyal)としては前述のものを同様に挙げることができ、またその具体的な加熱方法も前述の方法を同様に採用することができる((2-1)参照)。
【0077】
前記Acacia
senegal種に由来する本発明で用いることができる改質アラビアガム (1-1)~(1-3)はいずれもその優れた乳化力において原料として用いたそれぞれ未改質のアラビアガムと区別することができる。また、前記Acacia
seyal種に由来する本発明で用いることができる改質アラビアガム (2-1)~(2-3)も、改善された乳化力、安定化力、カプセル化力、粘着性、保護コロイド性又はフィルム形成性において、それぞれ未改質のアラビアガムと区別することができる。
【0078】
本発明に用いることができる改質アラビアガム(特にA. senegal種に由来する改質アラビアガム)は、好ましくは、それを用いて、下記の方法で、エマルションを調製し、及びそのメジアン径を測定した場合に、そのエマルションを形成する小滴(分散相)のメジアン径が、1μm以下(より好ましくは0.8μm以下、更に好ましくは0.7μm以下、及びより更に好ましくは0.6μm以下)である。
[エマルション調製方法]
【0079】
アラビアガムを水に溶解して遠心分離により不溶物を取り除き、それぞれ7.5%、10%、15%、及び20%のアラビアガム水溶液を調製する。
この各水溶液800gに、攪拌条件下で、中鎖トリグリセライド(オクタン酸・デカン酸トリグリセライド、O.D.O(商品名、日清製油株式会社製))200gを添加混合して、混合物を得る。
この当該混合物を、ホモジナイザー[APV GAULIN社製]を用いた圧力44Mpa(450kg/cm2)でのホモジナイズを4回実施することにより、乳化してエマルションを調製する
[エマルションのメジアン径の測定方法]
得られたエマルションについて、乳化直後並びにそれを60℃で2日間保存した後のメジアン径を、粒度分布測定装置(SALD-1100 Laser Diffraction Particle Size Analyzer、島津製作所(株)製)を用いて測定する。
【0080】
本発明の特に好適な一態様では、アラビアガムとしての「改質アラビアガム」は、Acacia
senegal種に属するアラビアガムより得られる、重量平均分子量(Mwt)が90万以上であるか、又はアラビノガラクタン蛋白質含量(%Mass)が17質量%以上であり、且つ、アラビノガラクタン蛋白質の慣性自乗半径(Rg)が42.3~138nmである、水溶性改質アラビアガムであることができる。
ここで、「重量平均分子量(Mwt)」は、GPC-MALLSにおいてRI検出器によって求められるクロマトグラムの全てのピークを1ピークとしてデータ処理して得られる分子量を意味し、「アラビノガラクタン蛋白質含量(%Mass)」及び「アラビノガラクタン蛋白質の慣性自乗半径(Rg)」は、GPC-MALLSにおいてRI検出器によって求められるクロマトグラム上のRIチャートを、初めに溶出する高分子溶出画分を示すピーク1とそれ以降に溶出する低分子溶出画分を示すピーク2の2つに分けてデータ処理した場合にピーク1について得られる、アラビノガラクタン蛋白質の含有割合及び慣性自乗半径をそれぞれ意味する。
当該条件を満たす改質アラビアガムとして、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製の「SUPER GUM」が挙げられる。当該製品は、Acacia senegal種に属するアラビアガムより得られる、重量平均分子量(Mwt)が90万以上(例えば、3百万~5百万程度)であり、アラビノガラクタン蛋白質含量(%Mass)が17質量%以上であり、且つ、アラビノガラクタン蛋白質の慣性自乗半径(Rg)が42.3~138nmである、水溶性改質アラビアガムである。当該製品は、Acacia
senegal種に属するアラビアガムを110℃で10時間以上加熱することによって調製された改質アラビアガムである。
【0081】
本発明の組成物におけるアラビアガムの含有量は、クルクミンの100質量部に対して、好ましくは10~250質量部、より好ましくは10~200質量部、更に好ましくは15~180質量部、より更に好ましくは15~160質量部、特に好ましくは20~130質量%、及びより特に好ましくは40~110質量部の範囲内である。
また、本発明の組成物におけるアラビアガムの含有量は、好ましくは0.5~20質量%、より好ましくは1~18質量%、更に好ましくは2~15質量%、より更に好ましくは2.5~13質量%、及び特に好ましくは3~11質量%の範囲内である。
【0082】
[4]加工澱粉
本発明において使用される加工澱粉は、原料澱粉としての、トウモロコシ、馬鈴薯、甘藷、小麦、米、もち米、タピオカ、及びサゴヤシ等由来の澱粉に、分解型処理及び付加型処理に大別される化学処理を施したものである。
これらの澱粉原料は1種単独で用いても、また2種以上を任意に組み合わせて用いることもできる。
澱粉原料として好ましくは、トウモロコシ又はタピオカである。トウモロコシの種類として、デント種(馬歯種)、フリント種(硬粒種)、ソフト種(軟粒種)、スイート種(甘味種)、ポップ種(爆裂種)及びワキシー種(もち種)が知られている。
本発明においても特に制限されず任意の種類のトウモロコシを澱粉原料として用いることができるが、好ましくは澱粉がもち種であるワキシー種のトウモロコシ(本明細書においては、単に「ワキシーコーン」ともいう)である。
【0083】
本発明に使用できる加工澱粉の例として、前記原料澱粉を加工して得られるアセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、カルボキシメチル澱粉、酢酸澱粉、オクテニルコハク酸澱粉、リン酸澱粉、リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉等を挙げることができ、好ましくはヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉及びオクテニルコハク酸澱粉であり、より好ましくはオクテニルコハク酸澱粉である。これらの加工澱粉は、1種単独で、又は2種類以上を混合して用いることができる
【0084】
本発明の組成物における加工澱粉の含有量は、クルクミンの100質量部に対して、
好ましくは0.5~100質量部の範囲内であり、
より好ましくは1~80質量部の範囲内であり、
更に好ましくは1~60質量部の範囲内であり、
より更に好ましくは2~50質量部の範囲内であり、
特に好ましくは3~40質量部の範囲内であり、及び
より特に好ましくは3~35質量部の範囲内、3~30質量部の範囲内、又は3~25質量部の範囲内であり、及び
最も好ましくは4~15質量部の範囲内
である。
また、本発明の組成物における加工澱粉の含有量は、
アラビアガムの100質量部に対して、
好ましくは0.5~300質量部の範囲内、
より好ましくは1~200質量部の範囲内、
更に好ましくは3~100質量部の範囲内、
より更に好ましくは3~60質量部の範囲内、
特に好ましくは3~50質量部の範囲内、
より特に好ましくは4~40質量部の範囲内、5~35質量部の範囲内、又は6~20質量部の範囲内、及び
最も好ましくは、8~15質量部
である。
更に、本発明の組成物における加工澱粉の含有量は、好ましくは0.05~30質量%、より好ましくは0.1~20質量%、更に好ましくは0.2~15質量%、及びより更に好ましくは0.3~11質量%の範囲内である。
【0085】
[5]水
本発明の組成物における水の含有量は、アラビアガムの100質量部に対して、好ましくは50~5000質量部、より好ましくは300~4000質量部、更に好ましくは350~3500質量部、より更に好ましくは400~30000質量部、特に好ましくは500~1500質量部、及びより特に好ましくは500~1000質量部の範囲内である。
【0086】
当業者が容易に理解する通り、本発明の組成物における水は、水性媒体を構成していることができる。すなわち、当該水には、例えば、後記するpH調整剤等が溶解してもよい。また、当該水は、純水、イオン交換水、及び水道水等の、通常、食品等の分野において、水と認識されるものであることができる。
【0087】
[6]多価アルコール
本発明の組成物は、好ましくは更に多価アルコールを含有する。
【0088】
多価アルコールは、防腐剤として機能できる。
本発明において用いられる多価アルコールの例は、プロピレングリコール、及びグリセロール、並びにこれらの組合せを包含する。
【0089】
本発明において用いられる多価アルコールは、好ましくはグリセロール(グリセリン)である。
【0090】
本発明の組成物における多価アルコールの含有量は、クルクミンの100質量部に対して、好ましくは10~1000質量部、より好ましくは100~800質量部、更に好ましくは150~700質量部、より更に好ましくは200~600質量部、特に好ましくは300~550質量部、及びより特に好ましくは300~500質量部の範囲内であることができる。
【0091】
本発明の組成物における多価アルコールの含有量は、アラビアガムの100質量部に対して、好ましくは100~2500質量部、より好ましくは300~2000質量部、更に好ましくは400~1800質量部、より更に好ましくは500~1500質量部、及び特に好ましくは500~1300質量部の範囲内であることができる。
【0092】
本発明の組成物における多価アルコールの含有量は、加工澱粉の100質量部に対して、好ましくは100~20000質量部、より好ましくは500~18000質量部、更に好ましくは1000~15000質量部、より更に好ましくは1500~13000質量部、及び特に好ましくは2000~13000質量部の範囲内であることができる。
【0093】
本発明の組成物における多価アルコールの含有量は、好ましくは10~90質量%、より好ましくは20~80質量%、更に好ましくは30~70質量%、及びより更に好ましくは35~60質量%である。
【0094】
本発明者らの検討によれば、クルクミン、及びアラビアガムが多価アルコールと接触すると、凝集、凝固又は沈澱が生じてしまう傾向がある。特に、アラビアガム及び多価アルコールの存在下でクルクミンを粉砕すると、凝集、凝固又は沈澱が生じてしまう傾向が強い。
しかし、本発明の組成物においては、当該凝集、凝固又は沈澱が抑制されている。
【0095】
[7]その他の成分
なお、本発明の効果が失われない限りにおいて、本発明のクルクミン組成物は、更に、例えば、増粘多糖類、香料、色素、酸化防止剤、日持ち向上剤、保存料[例:安息香酸ナトリウム]、糖類等の添加物を含有してもよい。これらの使用によりクルクミン組成物自体、又はこれを添加する対象の味質、香り、及び/又はテクスチャー等の官能的性質、保存性、取扱いの容易さを包含する種々の性質に変化を与えることができる。
【0096】
本発明の組成物における、このようなその他の成分(すなわち、クルクミン、アラビアガム、加工澱粉及び水、並びに多価アルコール以外の成分)の総量は、例えば0.05~10質量%であることができる。
【0097】
[8]クルクミン組成物の保存性
本発明の組成物は、好ましくは、60℃の温度で、3日間(好ましくは、60℃で7日間)、静置状態で保存しても、品質維持において問題になる粒状物(当該粒状物は、典型的には集塊である。)の発生が、高度に抑制されている。当該保存の開始時は、製造直後であってもよく、製造直後でなくてもよい。
具体的には、顕微鏡観察において、無作為に採取した試料(n=5)中の、長径2μm以上の粒状物の数が、好ましくは平均6個/1視野未満、より好ましくは平均5個/1視野未満、更に好ましくは平均3個/1視野未満、及びより更に好ましくは平均1個/1視野未満である。
ここで、視野(顕微鏡で観察している試料面)の円の直径は、0.3625mmである。顕微鏡としては、対物レンズ40倍、接眼レンズ15倍(視野数:22)のものを使用する。
【0098】
[9]クルクミン組成物の製造方法
本発明の組成物は、加工澱粉の存在下で、クルクミン、アラビアガム、及び水を混合することを含む製造方法によって製造できる。
【0099】
当該混合は、適宜、慣用の方法、条件、及び装置を採用して実施できる。
【0100】
クルクミン、アラビアガム、水、及び所望による多価アルコールの混合方法としては、混合できさえすれば特に限定されるものではなく、例えば、慣用の攪拌機を用いて攪拌する方法を挙げることができる。
【0101】
但し、本発明の組成物が、クルクミン、アラビアガム、水、及び多価アルコールを含有する場合、当該組成物の製造方法は、好ましくは、加工澱粉の存在下で、クルクミン、アラビアガム、水、及び多価アルコールを混合することを含む。
【0102】
これにより、クルクミンの凝集が促進される条件である、クルクミンが多価アルコールと共存している条件においても、クルクミン、又はクルクミン組成物の凝集を抑制できる。
【0103】
具体的には、例えば、容器中に、加工澱粉、クルクミン、アラビアガム、水、及び多価アルコールを添加して、その後プロペラ等を用いて撹拌混合して、これらを含有する水性懸濁液を調製する方法を挙げることができる。撹拌混合の際の温度は、特に限定されないが、例えば、1~100℃の範囲で設定できる。撹拌混合の時間も、製造スケールにより異なるため特に限定されないが、例えば、1~60分の範囲で設定できる。撹拌速度も製造スケールにより異なるため特に限定されないが、例えば1~3000RPMの範囲で設定できる。
【0104】
前記水性懸濁液は、次いで粉砕処理(微粒子化処理)してもよい。粉砕処理(微粒子化処理)の方法としては、物理的粉砕法が好ましい。物理的粉砕法としては、湿式粉砕機を用いた処理を挙げることができる。かかる湿式粉砕機として、具体的には、ウルトラビスコミル[(Ultra visco mill)(製品名)、Aimex社]及びダイノミル[(ダイノ-ミルKDL)(製品名)、ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社]を挙げることができる。また、サンドミル(ビーズを用いて)、スターミル(アシザワ・ファインテック社)、及びコボールミル[(CoBall Mill)(製品名)、FrymaKoruma社]等の湿式粉砕機も用いることができる。
当該混合、及び粉砕処理は、同時に実施してもよい。
当該混合は、粉砕処理を兼ねてよい。
当該混合、及び粉砕処理は、好ましくは、例えば、ダイノミルを使用して同時に実施できる。
【0105】
前記混合、及び粉砕処理は、好ましくは、クルクミンの溶解を抑制するため、pH9未満で実施される。
【0106】
前記水性懸濁液、又はその粉砕処理物を、必要に応じて、その後更に、微粒子化したクルクミン等の成分を均一に混合するために均質化処理を行うこともできる。均質化処理の方法としては、クルクミン等の成分を均質に分散する方法であれば特に制限されず、ナノマイザー、マイクロフルイタイザー、ホモジナイザー等の乳化又は分散装置、超音波分散機を使用して行うことができる。均質化処理をすることにより、クルクミンの凝集がほぐれて水への分散性及び分散安定性がより向上する。
【0107】
本発明のクルクミン組成物を添加する対象製品(例えば、着色する対象の製品(被着色製品))に合わせて、本発明の組成物のpHを適宜調整することもできる。好ましくはpH8以下に調整する。用いるpH調整剤としては、リン酸、硫酸、塩酸等の無機酸類、及びクエン酸、乳酸、リンゴ酸等の有機酸類並びにその塩を例示することができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらは被添加製品の種類及び調整するpHに応じて、適宜使用することができる。
本発明の組成物のpHは、好ましくは2~8の範囲内である。
【0108】
また、必要に応じて、液状の本発明のクルクミン組成物を乾燥粉末化することにより、粉末状のクルクミン組成物(クルクミン粉末組成物)を調製することも可能である。このようなクルクミン粉末組成物は、非常に高い濃度でクルクミンを含有する製品を調製するのに有用であり、また乾燥状態の食品及び錠剤等の製品を乾式方法で製造する際に使用が可能であること、及び防腐剤の必要がなく保存性が高いこと等の利点を有する。乾燥粉末化に用いられる乾燥機については特に制限はなく、スプレードライヤー、スラリードライヤー等の液滴噴霧型乾燥機及び凍結乾燥機等を例示することができる。
【0109】
また、当該クルクミン粉末組成物を更に造粒処理することにより、及び必要に応じて更に打錠処理することにより、クルクミン組成物を顆粒状の形態(クルクミン顆粒組成物)、又は錠剤の形態(クルクミン錠剤組成物)に調製することもできる。かかる顆粒又は錠剤は、必要に応じて当業界に公知の添加剤(賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤等)を配合して、慣用の製剤技術に従って製造することができる。なかでも顆粒状の形態のクルクミン組成物は、飲料又は化粧水等の水性製品に添加する際に溶解性に優れ、速やかに溶解するという利点がある。
【0110】
[10]クルクミン組成物の用途
(1)食品添加物又は添加剤としての使用
本発明のクルクミン組成物は、例えば食品添加物又は添加剤として、より具体的には着色料又は香料として、各種の食品(一般食品(健康食品を含む)のほか、サプリメント等の健康補助食品も含まれる)、及び化粧品に使用することができる。
【0111】
食品は液状、半固形状又は固形状の何れでもよく、その具体例としては以下のものが挙げられる。
【0112】
飲料[例えば、炭酸飲料、果実飲料(果実飲料、果汁入り清涼飲料、果汁入り炭酸飲料、果肉飲料を含む)、野菜飲料、野菜・果実飲料、低アルコール飲料、コーヒー飲料、粉末飲料、スポーツ飲料、サプリメント飲料、紅茶飲料、緑茶、ブレンド茶等];
デザート(例えば、カスタードプリン、ミルクプリン、果汁入りプリン、ゼリー、ババロア等);
冷菓(例えば、アイスクリーム、ミルクアイスクリーム、果汁入りアイスクリーム、ソフトクリーム、アイスキャンディー、シャーベット等);ガム(例えば、チューインガム、風船ガム等);
チョコレート(例えば、マーブルチョコレート等のコーティングチョコレート、イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート、メロンチョコレート等);
キャンディー(例えば、ハードキャンディー(ボンボン、バターボール、マーブル等を含む)、ソフトキャンディー(キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等を含む)、ドロップ、タフィ等);
その他の菓子(例えば、ハードビスケット、クッキー、おかき、煎餅等の焼き菓子等);
スープ(例えば、コンソメスープ、ポタージュスープ、パンプキンスープ等);
漬物(例えば、浅漬け、醤油漬け、塩漬け、味噌漬け、糠漬け、粕漬け、麹漬け、酢漬け、芥子漬け、もろみ漬け、梅漬け、福神漬け、しば漬け、生姜漬け、梅酢漬け等);
ジャム(例えば、ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム等);
乳製品(例えば、乳飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト、チーズ等);油脂(例えば、バター、マーガリン等);
穀物加工食品(例えば、パン類、麺類、パスタ類等);水畜産加工食品(例えば、ハム、ソーセージ、かまぼこ、ちくわ等);
調味料(例えば、みそ、タレ、ソース、卓上レモン、酢、マヨネーズ、サラダドレッシング、カレールー等);
調理品(例えば、卵焼き、オムレツ、カレー、シチュー、ハンバーグ、コロッケ、スープ、お好み焼き、餃子、果物ジャム等)。
【0113】
前記食品は、好ましくは、飲料、ジャム、漬物、ソースに属する液状調味料であり、より好ましくは飲料である。また、サプリメント等の健康補助食品の場合、好ましくはシロップ剤、液剤、ドリンク剤、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、及びカプセル剤を挙げることができる。
【0114】
本発明のクルクミン組成物を食品添加物又は添加剤(着色料又は着香料)として使用する場合、着色又は着香する対象の製品(例えば、飲食品、化粧品)は、当該製品の製造の任意の工程で、本発明のクルクミン組成物を、着色料又は着香料として配合することで製造することができ、この工程以外は、各種製品の慣用の製造方法に従って製造することができる。
【0115】
この場合、各種製品に対する前記クルクミン組成物の添加量は、所望の目的が達成できる量であれば特に制限されない。着色を目的とする場合、具体的には、本発明のクルクミン組成物を最終製品の全質量に対して、0.01質量%を下限値として添加することが挙げられる。
【0116】
ここで従来のクルクミン(従来型クルクミン組成物)としては、既存添加物名簿収載品目リスト(平成8年5月23日衛化第56号厚生省生活衛生局長通知「食品衛生法に基づく添加物の表示等について」別添1)の基原・製法に従って調製されるクルクミンの粉末から、含水エタノールで抽出して得られる液体状の可溶化クルクミン組成物を挙げることができる。
【0117】
(2)機能性成分としての使用
また、クルクミンの生理活性機能を期待する場合、本発明のクルクミン組成物は、それ自体、サプリメント等の健康補助食品として使用することができる。
【0118】
この場合、本発明のクルクミン組成物は「経口クルクミン製剤」として、硬カプセル剤、軟カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、丸剤、トローチ剤、シロップ剤、液剤、ドリンク剤等の経口投与形態に調製することができる。
【0119】
この場合、本発明のクルクミン組成物(経口クルクミン製剤)の投与量は、使用者の年齢、体重、症状、投与形態、処置期間等によって変わるが、WHOのTechnical Reportによると、クルクミンのADI:0~3mg/kg体重/日、NOAEL:250~320mg/kg体重/日とされており(WHO Technical Report Series : 第33頁)、この範囲で1日に1回乃至複数回に分けて投与することができる。
【0120】
[11]色素製剤
前述の本発明の組成物についての説明から理解される通り、本発明の一態様において、本発明の組成物は色素製剤(又は、着色剤)であることができる。
本発明は、当該色素製剤(又は、着色剤)で着色された製品(例、食品、医薬品、化粧品)もまた提供する。
このような製品の好適な例は、本発明の組成物で着色された食品を包含する。
具体的には、例えば、本発明の色素製剤(又は、着色剤)を用いて、糖衣シロップを調製し、及び当該糖衣シロップを用いて、キャンディーをコーティングして、糖衣キャンディーを製造することができる。確認的に述べるに過ぎないが、本明細書から理解される通り、当該糖衣シロップ、及び当該糖衣キャンディーもまた、本発明の組成物の一態様であることができる。
このような製品への本発明の色素製剤(又は、着色剤)の適用方法、及び使用量は、着色する製品、及び着色の目的等に応じて、技術常識に基づき、選択、又は決定できる。
【0121】
[12]凝集抑制剤
本発明は、クルクミン、又はクルクミン組成物の凝集抑制剤もまた、提供する。
当該凝集抑制剤は、アラビアガム、及び加工澱粉を含有する。
加工澱粉は、当該凝集抑制剤の有効成分であることができる。
【0122】
本発明において、凝集の「抑制」は、凝集の「防止」を包含する。
【0123】
[13]分散剤
本発明は、クルクミン用分散剤もまた提供する。
当該分散剤は、アラビアガム、及び加工澱粉を含有する。
当該分散剤は、水中へのクルクミンの分散を促進できる。
【0124】
当該分散剤は、水中へのクルクミンの分散状態の維持を増強できる。
すなわち、前記本発明の分散剤は、クルクミン用凝集抑制剤であることができる。
本発明において、凝集の「抑制」は、凝集の「防止」を包含する。
ここで、水中でのクルクミンの分散状態は、必ずしも、本発明のクルクミン用分散剤を使用されることは要されず、水中でのクルクミンの分散状態の実現後に本発明のクルクミン用凝集抑制剤を使用してもよい。
【0125】
当業者が本明細書の記載から容易に理解する通り、本発明は、クルクミンの分散方法、及びクルクミンの凝集抑制方法等もまた提供する。これらの詳細は、本明細書の記載から容易に理解される。
【実施例】
【0126】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0127】
実施例中の記号及び略号の意味を以下に示す。
【0128】
以下、各表中の組成を示す数値は、特に記載が無い場合、質量部を表すことができる。
【0129】
材料
以下の実施例、及び比較例においては、次の材料を用いた。
ウコン色素:粉末クルクミン NO.3705(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、結晶状、クルクミン含量90%)
改質アラビアガム:SUPER GUM (三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)
加工デンプン(オクテニルコハク酸デンプンナトリウム):ピュリティガムBE(NSC社製)
加工デンプン(ヒドロキシプロピルデンプン):NATIONAL 7(NSC社製)
加工デンプン(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン):NATIONAL FRIGEX(NSC社製)
ショ糖脂肪酸エステル:DK エステル SS(第一工業製薬株式会社製)
レシチン:HABO HHSL(Compass Foods Pte Ltd製)
【0130】
製剤の製造方法
以下の実施例、及び比較例における各製剤は、各成分の混合液を湿式粉砕機[ダイノ-ミルKDL(製品名)、ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社]を用いた粉砕処理を行った後、ホモジナイザー(APV GAULIN社製高圧ホモジナイザー15MR-8TA)にて、室温で、20MPaで処理することにより、製造した。
【0131】
評価
1.粉砕適性
各実施例、及び比較例の製剤の製造時における粉砕適性は、粉砕された製剤の粘度又は流動性と強く関係する。
すなわち、例えば、粉砕により製剤の粘度が著しく高くなった場合、又は流動性が著しく低下した場合、それ以上の粉砕は困難になる。従って、その指標であることができる、次の排出率(%)に基づいて、製剤の粉砕適性を決定した。
<排出率(%)の決定、及び粉砕適性の判断>
粘度又は流動性の指標である排出率(%)は、次の方法で決定した。
スクリュー管NO.6(直径3cm×高さ6.5cm)に25gの試料を入れ、及び50℃に温度調整する。
これを120°傾け、5秒間に排出された試料質量(g)を測定し、及び排出率(%)を算出する。
当該排出率が50%未満のとき、粉砕適性が不良であると判断し、及び
当該排出率が50%以上のとき、粉砕適性が良であると判断する。
当該方法による排出率のバラツキは極めて小さく、n=3での試験結果例(後記比較例1、比較例3、及び実施例3)は表1に示した通りである。
【表1】
【0132】
2.保存安定性
各実施例、及び比較例の製剤の保存安定性は、製造後の製剤を所定の温度で所定の時間静置した時の外観を肉眼で観察することにより、以下の規準に基づいて4段階で評価した。当該保存安定性試験の開始時には、粒状物は観察されなかった。
<製剤の保存安定性の評価基準>
不良(×):5℃で5ヶ月間、又は60℃で3日間(加速試験)の静置後に、顕微鏡観察において、無作為に採取した試料(n=5)中の、最長2μm以上の粒状物の数が平均6個/1視野以上
可(△):顕微鏡観察において、5℃で5ヶ月間、又は60℃で3日間(加速試験)の静置後に、無作為に採取した試料(n=5)中の、最長2μm以上の粒状物の数が平均6個/1視野未満、且つ、平均3個/1視野以上。
良(○):顕微鏡観察において、5℃で5ヶ月間、又は60℃で3日間(加速試験)の静置後に、無作為に採取した試料(n=5)中の、最長2μm以上の粒状物の数が平均3個/1視野未満、且つ、平均1個/1視野以上。
優(◎):顕微鏡観察において、5℃で5ヶ月間、又は60℃で3日間(加速試験)の静置後に、無作為に採取した試料(n=5)中の、最長2μm以上の粒状物の数が平均1個/1視野未満。
【0133】
製造例1(比較例:製剤[アラビアガム含有、加工デンプン非含有])
ダイノミルを用いて、改質アラビアガムを含有し、一方、加工デンプンを含有しない、次表に記載の各組成を有する、各比較例の製剤を製造した。
その粉砕適性、粉砕により得られた粒子のメジアン径、及び製剤保存安定性を表2に示した。
グリセロールを含有する処方(比較例3)では、問題となる粘度上昇により液体組成物の流動性が無くなり、及びダイノミルによる粉砕が困難であった。従って、その製剤保存安定性は試験しなかった。
それぞれ、グリセロールを含有しない処方(比較例4、比較例5)では製剤製造における粉砕時に問題となる粘度の上昇はみられず、粉砕適性は「良」であった。しかし、いずれの製剤も、保存安定性が不良であった。
【0134】
【0135】
ダイノミルを用いて、未改質アラビアガムを含有し、一方、加工デンプンを含有しない、次表に記載の各組成を有する、各比較例の製剤を製造した。
その粉砕適性、粉砕により得られた粒子のメジアン径、及び製剤保存安定性を表3に示した。
粉砕時に、凝集及び、問題となる粘度上昇による液体組成物の流動性が無くなり、及びダイノミルによる粉砕が困難であった。従って、その製剤のメジアン径は測定せず、また、保存安定性は試験しなかった。
【表3】
(備考)クルクミンの結晶を、ダイノミルを用いて粉砕した。
【0136】
製造例2(比較例:製剤[アラビアガム非含有、且つ加工デンプン含有])
ダイノミルを用いて、アラビアガムを含有せず、一方、加工デンプンを含有する、表4に記載の組成を有する、比較例14の製剤を製造した。
その粉砕適性、粉砕により得られた粒子のメジアン径、及び製剤保存安定性を表4に示した。
製剤製造における粉砕時に問題となる粘度の上昇はみられず、粉砕適性は「良」であった。しかし、保存安定性が不良であった。なお、5℃で5ヶ月静置した場合、製剤自身が固化してしまった。また、室温で5ヶ月時間静置した場合、保存容器の底に沈殿が見られた。
【0137】
【0138】
製造例3(実施例:製剤[改質アラビアガム含有、加工デンプン含有])
ダイノミルを用いて、改質アラビアガム、及び加工デンプンを含有する、表5、及び表6に記載の各組成を有する、各実施例の製剤を製造した。
その粉砕適性、粉砕により得られた粒子のメジアン径、及び製剤保存安定性を表5、及び表6に示した。
いずれの製剤においても、製剤製造における粉砕時に問題となる粘度の上昇はみられず、粉砕適性は「良」であった。及び更に、いずれの製剤も、保存安定性が良であった
これらの結果から、改質アラビアガムと加工デンプンの比率として、少なくとも、改質アラビアガム100質量部に対して、加工澱粉6.15~31.78質量部の範囲内の比率において、粉砕適性、及び製剤の保存安定性が共に良いことが確認された。
【0139】
【0140】
製造例4(実施例:製剤[未改質のアラビアガム含有、加工デンプン含有])
ダイノミルを用いて、未改質のアラビアガム、及び加工デンプンを含有する、表7に記載の各組成を有する、各実施例の製剤を製造した。
その粉砕適性、粉砕により得られた粒子のメジアン径、及び製剤保存安定性を表7に示した。これらの実施例の製剤のpHは、いずれも3.3~3.6の範囲内であった。
いずれの製剤においても、製剤製造における粉砕時に問題となる粘度の上昇はみられず、粉砕適性は「良」であった。及び更に、いずれの製剤も、保存安定性が「可」であった。
これらの結果から、少なくとも未改質のアラビアガムの添加量が15質量%以下の場合、問題となる粘度上昇は見られず、すなわち、粉砕適性が良いこと、が確認された。
【0141】
【0142】
製造例5(比較例:製剤[ショ糖脂肪酸エステル含有、且つ加工デンプン含有])
ダイノミルを用いて、ショ糖脂肪酸エステル、及び加工デンプンを含有する、表8に記載の各組成の製剤を製造した。
いずれも、正常に製剤が得られ、粉砕適性は「良」であった。しかし、いずれの製剤も、保存安定性が不良であった。すなわち、アラビアガムの場合とは異なり、加工デンプンと併用した場合でも、保存安定性が不良であった。
【0143】
【0144】
実施例17[糖衣キャンディー]
実施例5で得られたクルクミン分散製剤を用いて表9の処方で糖衣キャンディーシロップを調製した。
【0145】
【0146】
前記処方のシロップの原料を混合し、糖度(Brix)が72度になるまで煮詰めた。
得られた煮詰め液29gに対して、実施例5のクルクミン分散製剤を1g添加し、糖衣キャンディーシロップを調製した。
直径1.5cmの球形ハードキャンディー60gに対して前記シロップを1g掛け、糖衣パンを用いて緩やかに乾燥させて、糖衣キャンディーを調製した。
調製された糖衣キャンディーは、鮮やかな明るい色調の黄色に、1個のキャンディーの表面での観察においても、複数のキャンディー間での観察においても、着色ムラなく均一に着色されていた。
更に、実施例5のクルクミン分散製剤を60℃で1週間保存後、前記と同じように糖衣キャンディーを調製したところ、前記と同様に、鮮やかな明るい黄色で、均一に着色された糖衣キャンディーが得られた。
また、その色調は60℃で1週間保存前のクルクミン分散製剤を用いて調製された糖衣キャンディーと同じであった。
【0147】
製造例6(実施例:製剤[改質アラビアガム含有、各種加工デンプン含有])
製造例3と同様にして、但し、各種加工デンプンを用いて、表10に記載の各組成を有する、各実施例の製剤を製造した。
その粉砕適性、粉砕により得られた粒子のメジアン径、及び製剤保存安定性を表10に示した。
いずれの製剤においても、製剤製造における粉砕時に問題となる粘度の上昇はみられず、粉砕適性は「良」であった。及び更に、いずれの製剤も、保存安定性が「優」又は「可」であった。
【0148】