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特許7073270前立腺がんの内部放射線療法のための前立腺特異的膜抗原を標的とした高親和性薬剤
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  • 特許-前立腺がんの内部放射線療法のための前立腺特異的膜抗原を標的とした高親和性薬剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】前立腺がんの内部放射線療法のための前立腺特異的膜抗原を標的とした高親和性薬剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 257/02 20060101AFI20220516BHJP
   C07D 401/12 20060101ALI20220516BHJP
   C07F 5/00 20060101ALN20220516BHJP
   C07K 7/02 20060101ALN20220516BHJP
   C07K 5/02 20060101ALN20220516BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20220516BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20220516BHJP
   A61P 13/08 20060101ALN20220516BHJP
   A61K 51/04 20060101ALN20220516BHJP
【FI】
C07D257/02 CSP
C07D401/12 ZNA
C07F5/00 D
C07K7/02
C07K5/02
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P13/08
A61K51/04 100
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018549808
(86)(22)【出願日】2017-03-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-11
(86)【国際出願番号】 US2017023508
(87)【国際公開番号】W WO2017165473
(87)【国際公開日】2017-09-28
【審査請求日】2020-03-19
(31)【優先権主張番号】62/311,697
(32)【優先日】2016-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501335771
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100214259
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 睦也
(72)【発明者】
【氏名】サンギータ レイ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ジー ポンパー
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-524419(JP,A)
【文献】国際公開第2017/116994(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/055318(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/171792(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/082338(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/065902(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/030329(WO,A1)
【文献】Eder, Matthias; Schaefer, Martin; Bauder-Wuest, Ulrike; Hull, William-Edmund; Waengler, Carmen; Mier, Walter; Haberkorn, Uwe; Eisenhut, Michael,68Ga-Complex Lipophilicity and the Targeting Property of a Urea-Based PSMA Inhibitor for PET Imaging,Bioconjugate Chemistry,2012年,23(4),,688-697
【文献】Benesova, Martina; Bauder-Wuest, Ulrike; Schaefer, Martin; Klika, Karel D.; Mier, Walter; Haberkorn, Uwe; Kopka, Klaus; Eder, Matthias,Linker Modification Strategies To Control the Prostate-Specific Membrane Antigen (PSMA)-Targeting and Pharmacokinetic Properties of DOTA-Conjugated PSMA Inhibitors,Journal of Medicinal Chemistry,2016年,59(5),,1761-1775
【文献】Shallal, Hassan M.; Minn, Il; Banerjee, Sangeeta R.; Lisok, Ala; Mease, Ronnie C.; Pomper, Martin G.,Heterobivalent Agents Targeting PSMA and Integrin-αvβ3,Bioconjugate Chemistry,2014年,25(2),,393-405
【文献】Banerjee, Sangeeta R.; et al,Synthesis and Evaluation of Technetium-99m- and Rhenium-Labeled Inhibitors of the Prostate-Specific Membrane Antigen (PSMA),Journal of Medicinal Chemistry ,2008年,51(15),,4504-4517
【文献】Cleeren, Frederik; Lecina, Joan; Billaud, Emilie M. F.; Ahamed, Muneer; Verbruggen, Alfons; Bormans, Guy M.,New Chelators for Low Temperature Al18F-Labeling of Biomolecules,Bioconjugate Chemistry,2016年,27(3),,790-798
【文献】Banerjee, Sangeeta Ray; et al,Synthesis and Evaluation of GdIII-Based Magnetic Resonance Contrast Agents for Molecular Imaging of Prostate-Specific Membrane Antigen,Angewandte Chemie, International Edition,2015年,54(37),,10778-10782
【文献】Schaefer, Martin; Bauder-Wuest, Ulrike; Leotta, Karin; Zoller, Frederic; Mier, Walter; Haberkorn, Uwe; Eisenhut, Michael; Eder, Matthias,A dimerized urea-based inhibitor of the prostate-specific membrane antigen for 68Ga-PET imaging of prostate cancer,EJNMMI Research,2012年,2(1),,23
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 257/02
C07K 7/02
C07K 5/02
C07D 401/12
A61P 35/00
A61P 43/00
A61P 13/08
A61K 51/04
C07F 5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
ここで、
Z はテトラゾール又は CO2Q であり;
Q は H 又は保護基であり、ここで、前記保護基は、ベンジル、p-メトキシベンジル、tert-ブチル、メトキシメチル、メトキシエトキシメチル、メチルチオメチル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、ベンジルオキシメチル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、及びトリフェニルメチルから選択される
mは、1, 2, 3, 4 及び 5 からなる群から選択される整数であり;
Rは、-CH2-R1であり;
R1 は、置換アリール、置換ピリジン、及び非置換イソキノリンからなる群から選択され;
Lは、C1-C6アルキレン及び C3-C6 シクロアルキレン並びにアリーレンからなる群から選択されるリンカーであり;
Wは -NR2-(C=O)-, -NR2-(C=S)-, -(C=O)-NR2-, 及び -(C=S)-NR2- からなる群から選択され;ここで、L 及び W の各出現は同じであっても異なっていても良く;
R2 は H 又は C1-C4アルキルであり;
nは、1, 2 及び 3 からなる群から選択される整数であり;
Ch は、金属又は放射性金属を含むことができるキレート剤である;
並びにその薬学的に許容される塩である。
【請求項2】
R1 が、以下:
【化2】
ここで、 X は独立して Br 又は I である、
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記キレート剤が、以下:
【化3】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記金属キレート剤が、以下:Y, Lu, Tc, Zr, In, Sm, Re, Cu, Pb, Ac, Bi, Al, Ga, Re, Ho 及び Sc からなる群から選択される金属を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記金属が放射性金属であり、以下:68Ga, 64Cu, 86Y, 90Y, 89Zr, 111In, 99mTc, 177Lu, 153Sm, 186Re, 188Re, 67Cu, 212Pb, 225Ac, 213Bi, 212Bi, 212Pb, 67Ga, 203Pb, 47Sc 及び 166Ho からなる群から選択される、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
式(I)の化合物が、以下:
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】

【化14】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
1 つ以上の PSMA を発現する腫瘍又は細胞を、有効量の式(I)の化合物に接触させることを含む、1 つ以上の PSMA を発現する腫瘍又は細胞の治療をするための、式(I)の化合物:
ここで、前記式(I)の化合物が、以下:
【化15】
ここで、
Z はテトラゾール又は CO2Q であり;
Q は H 又は保護基であり、ここで、前記保護基は、ベンジル、p-メトキシベンジル、tert-ブチル、メトキシメチル、メトキシエトキシメチル、メチルチオメチル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、ベンジルオキシメチル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、及びトリフェニルメチルから選択される
mは、1, 2, 3, 4 及び 5 からなる群から選択される整数であり;
Rは、-CH2-R1であり;
R1 は、置換アリール、置換ピリジン、及び非置換イソキノリンからなる群から選択され;
Lは、C1-C6アルキレン及び C3-C6 シクロアルキレン並びにアリーレンからなる群から選択されるリンカーであり;
Wは -NR2-(C=O)-, -NR2-(C=S)-, -(C=O)-NR2-, 及び -(C=S)-NR2- からなる群から選択され;ここで、L 及び W の各出現は同じであっても異なっていても良く;
R2 は H 又は C1-C4アルキルであり;
nは、1, 2 及び 3 からなる群から選択される整数であり;
Ch は、放射線療法に適した放射性金属を含むキレート剤である;
並びにその薬学的に許容される塩、
を含む。
【請求項8】
R1 が、以下:
【化16】
ここで、 X は独立して Br 又は I である、
からなる群から選択される、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
前記キレート剤が、以下:
【化17】
からなる群から選択される、請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
前記放射性金属が、以下:90Y, 177Lu, 211At, 111In, 153Sm, 186Re, 188Re, 67Cu, 212Pb, 225Ac, 213Bi, 212Bi, 212Pb 及び 67Ga からなる群から選択される、請求項7に記載の化合物。
【請求項11】
以下:
【化18】
【化19】

【化20】
【化21】


【化22】
【化23】
【化24】


【化25】


【化26】

【化27】
からなる群から選択される、請求項7に記載の化合物。
【請求項12】
前記1つ以上の PSMA を発現する腫瘍又は細胞が、以下:前立腺腫瘍又は細胞、転移した前立腺腫瘍又は細胞、肺腫瘍又は細胞、腎腫瘍又は細胞、膠芽細胞腫、膵臓腫瘍又は細胞、膀胱腫瘍又は細胞、肉腫、メラノーマ、乳房腫瘍又は細胞、結腸腫瘍又は細胞、生殖細胞、褐色細胞腫、食道腫瘍又は細胞、胃腫瘍又は細胞、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項7に記載の化合物。
【請求項13】
前記 1 つ以上の PSMA を発現する腫瘍又は細胞が前立腺腫瘍又は細胞である、請求項7に記載の化合物。
【請求項14】
前記 1 つ以上の PSMA を発現する腫瘍又は細胞が in vitro、in vivo 又は ex vivo にある、請求項7に記載の化合物。
【請求項15】
前記 1 つ以上の PSMA を発現する腫瘍又は細胞が被験体に存在する、請求項7に記載の化合物。
【請求項16】
前記被験体がヒトである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
前記腫瘍の増殖の阻害をもたらす、請求項7に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2016 年 3 月 22 日に出願された米国仮出願第62/311,697 号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府の資金支援を受けた研究又は開発
本発明は、米国国立衛生研究所(NIH)によって供与された K25CA148901-01A1 及び U54CA1346751 に基づく政府の支援によってなされた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
前立腺がんは、米国の人々における主要ながんであり、男性におけるがん死亡の第 2 の原因である。局所進行性疾患の治療については議論あるままであり、ますます多くの異なる選択肢が利用可能となってきている。前立腺がんのための新しい、高親和性、放射線療法の薬剤が、前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的として用いて開発された。PSMAはアンドロゲン非依存性疾患のマーカーであり、これは固形(非前立腺)腫瘍の新生血管系でも発現している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要約
ある態様では、本明細書で開示されている発明は、式(I)の化合物:
【化1】

ここで、Z はテトラゾール又は CO2Q であり;Q は H 又は保護基であり;m は 1, 2, 3, 4 及び 5 からなる群から選択される整数であり;R は独立して、H 又は -CH2-R1であり;R1は置換アリール、置換ピリジン、及び非置換イソキノリンからなる群から選択され;L は C1-C6 アルキレン及び C3-C6シクロアルキレン並びにアリーレンからなる群から選択されるリンカーであり;W は -NR2-(C=O)-, -NR2-(C=S)-, -(C=O)-NR2- 及び -(C=S)-NR2- からなる群から選択され;ここで、L 及び W の各出現は同じであっても異なっていても良く;R2は H 又は C1-C4アルキルであり;n は 1, 2 及び 3 からなる群から選択される整数であり;Ch は金属又は放射性金属を含むことができるキレート剤であり;並びにその薬学的に許容される塩、を提供する。
【0005】
式(I)の化合物の具体的態様において、R1は、以下:
【化2】
ここで、X は独立して Br 又は I である、
からなる群から選択される。
【0006】
式(I)の化合物のさらに具体的態様において、前記キレート剤は、以下:
【化3】
からなる群から選択される。
【0007】
他の態様では、本明細書で開示されている発明は、1 つ以上の PSMA を発現する腫瘍又は細胞を、有効量の式(I)の化合物に接触させることを含む方法であって、前記式(I)の化合物が、以下:
【化4】
ここで、Z はテトラゾール又は CO2Q であり;Q は H 又は保護基であり;m は 1, 2, 3, 4 及び 5 からなる群から選択される整数であり;R は、独立して、H 又は -CH2-R1であり;R1 は置換アリール、置換ピリジン、及び非置換イソキノリンであり;L は C1-C6 アルキレン及び C3-C6 シクロアルキレン並びにアリーレンからなる群から選択されるリンカーであり;W は -NR2-(C=O)-, -NR2-(C=S)-, -(C=O)-NR2- 及び -(C=S)-NR2- からなる群から選択され;ここで、L 及び W の各出現は同じであっても異なっていても良く;R2は H 又は C1-C4 アルキルであり;n は 1, 2 及び 3 からなる群から選択される整数であり;Ch は放射線療法に適した放射性金属を含むキレート剤であり;並びにその薬学的に許容される塩、
を含む、1 つ以上の PSMA を発現する腫瘍又は細胞を治療する方法を提供する。
【0008】
他の態様では、本明細書に開示される発明は、1 つ以上の前立腺特異的膜抗原(PSMA)腫瘍又は細胞をイメージングする方法を提供し、前記方法は、1 つ以上の腫瘍又は細胞を、有効量の式(I)の化合物に接触させること、及びイメージングすることを含む。
【0009】
さらに他の態様において、本明細書で開示されている発明は、式(I)の化合物を含むキットを提供する。
【0010】
本明細書で前述した本明細書で開示されている発明のある態様は、本明細書で開示されている発明によって全体的又は部分的に記載され、他の態様は、以下に最もよく説明されるように、添付の実施例及び図面と関連付けて記載されながら明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本明細書で開示された発明を一般的な用語で説明したので、添付図面を参照するが、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。ここで:
図1】代表的な放射線療法薬剤の化学構造を示す;
図2177Lu-1 並びに既知の薬剤 SR6, PSMA-617 及び PSMA-I&T のクローン原性の有効性に関する比較研究を示す;
図3177Lu-1, 177Lu-2, 177Lu-SR6, 177Lu-PSMA-617 及び 177Lu-PSMA-I&T の腎臓に対する PSMA+ 腫瘍の分布割合を示す;
図4】3 mCi の単回投与を用いた治療についての研究中における 177Lu-1 の SPECT-CT イメージングを示す;
図5】治療についての研究中におけるマウスの相対的な体重を示す;及び、
図6図6A図6Bは、治療についての研究中におけるマウスの相対的な腫瘍体積(図6A)及び治療後 60 日までのカプラン‐マイヤー生存曲線(図6B)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
本明細書で開示されている発明は、添付の図面を参照して、より完全に以下で説明されるが、その中では、本明細書に開示された発明のいくつかの実施形態が示されるが、すべてが示されるわけではない。同様の番号は、全体を通して同様の要素を指す。本明細書で開示されている発明は、多くの異なる形態で具体化されても良く、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない;むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように提供される。実際に、前述の説明及び添付する図面に提示された教示の利益を有し、本明細書で開示されている発明に関する当業者には、本明細書に記載された本明細書に開示された発明の多くの改変及び他の実施形態が思い浮かぶであろう。したがって、本明細書で開示された発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、改変及び他の実施形態も、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることを理解されたい。
【0013】
I.前立腺がんの内部放射線療法のための前立腺特異的膜抗原を標的とした高親和性薬剤
【0014】
A.式(I)の化合物
【0015】
したがって、ある態様では、本明細書で開示されている発明は、式(I)の化合物:
【化5】
ここで、Z はテトラゾール又は CO2Q であり;Q は H 又は保護基であり;m は 1, 2, 3, 4 及び 5 からなる群から選択される整数であり;R は独立して、H 又は -CH2-R1であり;R1は、置換アリール、置換ピリジン、及び非置換イソキノリンからなる群から選択され;L は C1-C6 アルキレン及び C3-C6シクロアルキレン並びにアリーレンからなる群から選択されるリンカーであり;W は -NR2-(C=O)-, -NR2-(C=S)-, -(C=O)-NR2- 及び -(C=S)-NR2- からなる群から選択され;ここで、L 及び W の各出現は同じであっても異なっていても良く;R2は H 又は C1-C4アルキルであり;n は 1, 2 及び 3 からなる群から選択される整数であり;Ch は金属又は放射性金属を含むことができるキレート剤であり;並びにその薬学的に許容される塩、を提供する。
【0016】
「ここで、L 及び W の各出現は同じであっても異なっていても良く(wherein each occurrence of L and W can be the same or different)」という語句は、前記変数「n」が 2 又は 3 である場合、ある「L」基が C1-C6 アルキレンであっても良く、ここで、他方の「L」基又は複数の「L」基は C3-C6シクロアルキレン又はアリーレンであっても良い、又は他の実施形態では、各「L」基は、例えば C1-C6 アルキレンであっても良い。同様に、例えば、「n」が 2 又は 3 である場合、ある「W」基が -(C=O)-NR2- であっても良く及び他方の「W」基又は複数の「W」基は -(C=S)-NR2- であっても良い、又は他の実施形態では、各「W」は、例えば、-(C=O)-NR2- であっても良い。
【0017】
前記式(I)の化合物の具体的実施形態において、R1は、以下:
【化6】
ここで、X は独立して Br 又は I である、
からなる群から選択される。
【0018】
前記式(I)の化合物のさらに具体的態様において、前記キレート剤は、以下:
【化7】
からなる群から選択される。
【0019】
前記式(I)の化合物のさらに具体的な実施形態において、前記キレート剤は、以下:Y, Lu, Tc, Zr, In, Sm, Re, Cu, Pb, Ac, Bi, Al, Ga, Re, Ho 及び Sc からなる群から選択される金属を含む。式(I)の化合物のさらなる具体的な実施形態では、前記金属は放射性金属であり、以下:68Ga, 64Cu, 86Y, 90Y, 89Zr, 111In, 99mTc, 177Lu, 153Sm, 186Re, 188Re, 67Cu,212Pb, 225Ac, 213Bi, 212Bi, 212Pb, 67Ga, 203Pb, 47Sc 及び 166Ho からなる群から選択される。
【0020】
ある具体的な実施形態では、前記式(I)の化合物は、以下:
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
;
からなる群から選択される。
【0021】
B.1 つ以上の PSMA を発現する腫瘍又は細胞を治療するための式(I)の化合物の使用方法
【0022】
ある実施形態では、本明細書で開示されている発明は、1 つ以上の PSMA を発現する腫瘍又は細胞を、有効量の式(I)の化合物に接触させることを含む方法であって、前記式(I)の化合物が、以下:
【化19】
ここで、Z はテトラゾール又は CO2Q であり;Q は H 又は保護基であり;m は 1, 2, 3, 4 及び 5 からなる群から選択される整数であり;R は独立して、H 又は -CH2-R1であり;R1は、置換アリール、置換ピリジン、及び非置換イソキノリンからなる群から選択され;L は C1-C6 アルキレン及び C3-C6シクロアルキレン並びにアリーレンからなる群から選択されるリンカーであり;W は -NR2-(C=O)-, -NR2-(C=S)-, -(C=O)-NR2- 及び -(C=S)-NR2- からなる群から選択され;ここで、L 及び W の各出現は同じであっても異なっていても良く;R2は H 又は C1-C4アルキルであり;n は 1, 2 及び 3 からなる群から選択される整数であり;Ch は放射線療法に適した放射性金属を含むキレート剤であり;並びにその薬学的に許容される塩、
を含む、1 つ以上の PSMA を発現する腫瘍又は細胞を治療するための方法を提供する。
【0023】
「接触させること(contacting)」は、少なくとも 1 つの PSMA を発現する腫瘍又は細胞と物理的に接触する、本明細書に開示される発明の治療剤を含む少なくとも 1 つの化合物を生じる結果となる任意の作用を意味する。接触させることは、少なくとも 1 つの化合物を少なくとも 1 つの細胞又は腫瘍と接触させるのに十分な量で前記化合物に前記細胞又は腫瘍を曝露することを含むことがある。前記方法は、培養ディッシュ又はチューブのようなコントロールされた環境に、前記化合物及び細胞又は腫瘍を置き、好ましくは混合することによって、in vitro 又は ex vivo で実施することができる。前記方法を in vivo で実施することができ、この場合、接触させることは、前記化合物を被験体に任意の適切な経路で投与するなど、被験体の少なくとも 1 つの細胞又は腫瘍を少なくとも 1 つの本明細書で開示されている発明の化合物に曝露することを意味する。
【0024】
本明細書中で使用される場合、用語「治療する(treating)」は、そのような用語が適用される疾患(disease)、障害(disorder)若しくは病気(condtion)、又はそのような疾患、障害若しくは病気の 1 つ以上の症状(symptoms)若しくは兆候(manifestations)の進行を逆転、緩和、阻害し、これらの可能性を予防、若しくは減ずることを含むことがある。予防とは、疾患、障害、病気又はそのような症状若しくは兆候が引き起こされること、又はその重症度が悪化すること、が起きないようにすることを意味する。したがって、本発明の化合物を予防的に投与して、疾患、障害若しくは病気の発生若しくは再発を予防又は軽減することができる。
【0025】
一般に、活性薬剤の「有効量(effective amount)」は、所望の生物学的応答を誘発するのに必要な量を指す。当業者には理解されるように、薬剤又はデバイスの有効量は、所望の生物学的エンドポイント、送達される薬剤、前記医薬組成物の構成、標的組織などの要因に応じて変化することがある。
【0026】
用語「組み合わせ(combination)」は、その最も広い意味で使用され、少なくとも 2 つの薬剤、より具体的には式(I)の化合物及び少なくとも 1 種類の他の活性薬剤が被験体に投与されることを意味する。より具体的には、用語「組み合わせて(in combination)」は、例えば単一の疾患状態の治療のために、2 種類(又はそれ以上)の活性薬剤を同時に投与することを意味する。本明細書中で使用される場合、前記活性薬剤は、単一剤に組み合わせて投与されても良く、別々の剤として同時に投与されても良く、又は同じ日又は別々の日に交互に又は順次に投与される別個の剤として投与されても良い。本明細書に開示されている発明のある実施形態では、前記活性薬剤を単一剤に組み合わせて投与する。別の実施形態においては、前記活性薬剤を別々の剤で投与する(例えば、一方の量を変化させ、他方の量を変化させないことが望ましい)。前記単一剤は、疾患状態を治療するための活性薬剤を追加して含むことがある。
【0027】
具体的な実施形態において、R1は、以下:
【化20】
ここで、X は独立して Br 又は I である、
からなる群から選択される。
【0028】
さらに具体的な実施形態において、前記キレート剤は、以下:
【化21】
からなる群から選択される。
【0029】
さらに具体的な実施形態において、放射線療法に適した前記放射性金属は、以下:90Y, 177Lu, 211At, 111In, 153Sm, 186Re, 188Re, 67Cu, 212Pb, 225Ac, 213Bi, 212Bi, 212Pb 及び 67Ga からなる群から選択される。
【0030】
さらに具体的な実施形態では、前記式(I)の化合物は、以下:
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】

からなる群から選択される。
【0031】
他の実施形態では、1 つ以上の PSMA を発現する腫瘍又は細胞は、以下:前立腺腫瘍又は細胞、転移した前立腺腫瘍又は細胞、肺腫瘍又は細胞、腎腫瘍又は細胞、膠芽細胞腫、膵臓腫瘍又は細胞、膀胱腫瘍又は細胞、肉腫、メラノーマ、乳房腫瘍又は細胞、結腸腫瘍又は細胞、生殖細胞、褐色細胞腫、食道腫瘍又は細胞、胃腫瘍又は細胞、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される。ある他の実施形態において、前記 1 つ以上の PSMA を発現する腫瘍又は細胞は、前立腺腫瘍又は細胞である。
【0032】
他の実施形態では、前記 1 つ以上の PSMA を発現する腫瘍又は細胞は、in vitro、in vitro 又は ex vivo にある。さらに他の実施形態では、前記 1 つ以上の PSMA を発現する腫瘍又は細胞は被験体に存在する。
【0033】
本明細書に記載の方法は、用語「被験体(subject)」に含まれることが意図されるすべての脊椎動物種に対して有効であると理解されるべきであるが、多くの実施形態において、本発明の方法によって治療を受ける被験体は、望ましくはヒト被験体である。したがって、「被験体(subject)」は、既存の病気若しくは疾患を治療する、又は病気若しくは疾患の発症を予防するために予防的治療をするなどの医療目的のためのヒト被験体、又は医療、獣医学目的、若しくは開発目的のための動物(非ヒト)被験体、を含むことがある。適した動物被験体としては、限定されないが、霊長類(例えば、ヒト、サル、類人猿など);ウシ亜科の動物(bovines)(例えば、畜牛、雄ウシなど);ヒツジ(ovines)(例えば、ヒツジ(sheep)など);ヤギ(caprines)(例えば、ヤギ(goats)など);ブタ(porcines)(例えば、ブタ(pigs)、イノシシ(hogs)など);ウマ科(equines)(例えば、ウマ(horses)、ロバ(donkeys)、シマウマ(zebras)など);ネコ科(felines)(野生及びペットのネコ(cats)を含む);イヌ科(canines)(イヌ(dogs)を含む);ウサギ目(lagomorphs)(ウサギ(rabbits)、野ウサギ(hares)などを含む);げっ歯類(rodents)(ネズミ(mice)、ラット(rats)などを含む);などを含む哺乳動物が含まれる。動物は、トランスジェニック動物であっても良い。ある実施形態では、前記被験体は、限定されるものではないが、胎児、新生児、幼児、若年及び成年被験体などを含むヒトである。さらに、「被験体(subject)」は、病気又は疾患に罹患しているか、又は罹患している疑いがある患者を含むことがある。したがって、用語「被験者(subject)」及び「患者(patient)」は、本明細書では交換可能に使用される。
【0034】
さらにある他の実施形態では、前記方法は前記腫瘍の増殖の阻害をもたらす。
【0035】
C.1 つ以上の PSMA を発現する腫瘍又は細胞をイメージングするための式(I)の化合物の使用方法
【0036】
他の実施形態では、本明細書で開示されている発明は、1 つ以上の PSMA を発現する腫瘍又は細胞を、有効量の式(I)の化合物に接触させ、イメージングすることを含む方法であって、前記式(I)の化合物が、以下:
【化32】
ここで、Z はテトラゾール又は CO2Q であり;Q は H 又は保護基であり;m は 1, 2, 3, 4 及び 5 からなる群から選択される整数であり;R は、独立して、H 又は -CH2-R1であり;R1は置換アリール、置換ピリジン、及び非置換イソキノリンからなる群から選択され;L は、C1-C6アルキレン及び C3-C6シクロアルキレン並びにアリーレンからなる群から選択されるリンカーであり;W は -NR2-(C=O)-, -NR2-(C=S)-, -(C=O)-NR2- 及び -(C=S)-NR2- からなる群から選択され;ここで、L 及び W の各出現は同じであっても異なっていても良く;R2は H 又は C1-C4アルキルであり; n は 1, 2 及び 3 からなる群から選択される整数であり;Ch はイメージングに適した放射性金属を含むキレート剤であり;並びにその薬学的に許容される塩、
を含む、1 つ以上の PSMA を発現する腫瘍又は細胞をイメージングする為の方法を提供する。
【0037】
D.キット
【0038】
さらに他の実施形態では、本明細書で開示されている発明は、式(I)の化合物を含むキットを提供する。
【0039】
ある実施形態において、前記キットは、薬学的に許容される担体及び本発明の化合物を含むパッケージされた医薬組成物を提供する。ある実施形態では、前記パッケージされた医薬組成物は、放射性標識前駆体と組み合わせた本発明の化合物を生成するのに必要な反応前駆体を含む。本発明により提供される他のパッケージされた医薬組成物は、以下の内の少なくとも 1 つを含む説明書を更に含む:供給された前駆体から本発明に係る化合物を調製するための説明書、PSMA を発現する細胞又は組織をイメージングするための前記組成物の使用説明書、ストレス関連障害に罹患している患者におけるグルタミン酸作動性神経伝達をイメージングするための前記化合物の使用説明書、又は前立腺がんをイメージングするための前記組成物の使用説明書。
【0040】
E.医薬品組成物及び投与
【0041】
別の態様では、本発明は、式(I)の化合物を単独で、又は薬学的に許容される賦形剤と混合した 1 つ以上のさらなる治療薬剤と組み合わせて含む医薬組成物を提供する。当業者のある者は、前記医薬組成物が上記の化合物の薬学的に許容される塩を含むことを認識するであろう。薬学的に許容される塩は、一般に当業者に周知であり、本明細書に記載の化合物に見られる特定の置換基部分に応じて、比較的非毒性の酸又は塩基で調製される活性化合物の塩を含む。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含む場合、塩基付加塩は、このような化合物の中性形態を、そのまま若しくは適切な不活性溶媒中で、十分な量の所望の塩基に接触させることによって、又はイオン交換(イオン性錯体中の塩基性対イオン(塩基)が別のものに置換される)によって得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩の例には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、又はマグネシウム塩、又は同様の塩が含まれる。
【0042】
本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含む場合、酸付加塩は、このような化合物の中性形態を、そのまま若しくは適切な不活性溶媒中で、十分な量の所望の酸と接触させる、又はイオン交換(イオン性錯体中の酸性対イオン(酸)が別のものに置換される)によって、得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸一水素(monohydrogencarbonic)酸、リン酸、リン酸一水素(monohydrogenphosphoric)酸、リン酸二水素(dihydrogenphosphoric)酸、硫酸、硫酸一水素(monohydrogensulfuric)酸、ヨウ化水素酸、又は亜リン酸など無機酸に由来する塩、並びに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などの比較的非毒性の有機酸に由来する塩、が含まれる。また、アルギン酸塩などのアミノ酸の塩、及びグルクロン酸又はガラクツロン酸などの有機酸の塩も含まれる(例えば、Bergeら、"Pharmaceutical Salts", Journal of Pharmaceutical Science, 1977, 66, 1-19)。本明細書のある具体的な化合物は、前記化合物が塩基付加塩又は酸付加塩のいずれかに変換されることを可能にする塩基性官能基及び酸性官能基の両方を含む。
【0043】
したがって、本明細書に開示される発明と一緒に使用するのに適した薬学的に許容される塩には、限定されるものではない例として、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、酒石酸水素塩、臭化物塩、エデト酸カルシウム、カルンシレート(carnsylate)、炭酸塩、クエン酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシレート、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニレート(glycollylarsanilate)、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、ムチン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、又はテオクル酸塩が含まれる。他の薬学的に許容される塩は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy (20th ed.), Lippincott, Williams&Wilkins (2000) に見ることができる。
【0044】
治療的及び/又は診断的応用において、本発明の化合物を、全身投与、局所(topical)又は限局した(localized)投与を含む、様々な投与様式のために製剤化することができる。技術及び製剤は、一般に、Remington:The Science and Practice of Pharmacy (20th ed.), Lippincott, Williams&Wilkins (2000) に見ることができる。
【0045】
治療を受ける具体的な病気に依存して、このような薬剤を、液体又は固体剤形に製剤化し、全身又は局所投与することができる。前記薬剤を、例えば、当業者に知られているように、徐放又は持続徐放形態でデリバリすることができる。製剤及び投与のための技術は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy (20th ed.), Lippincott, Williams&Wilkins (2000) に見ることができる。適切な経路には、経口、口腔、吸入スプレー、舌下、直腸、経皮、経膣、経粘膜、経鼻若しくは腸内投与;筋肉内、皮下、髄内注射、並びに髄腔内、直接脳室内、静脈内、関節内、胸骨内、滑液嚢内(intra-synovial)、肝臓内、病巣内、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内、若しくは眼内注射などを含む非経口デリバリ又は他のデリバリ様式が含まれることがある。
【0046】
注射のために、本発明の薬剤を、ハンクス溶液、リンゲル溶液又は生理食塩水緩衝液のような生理学的に適合性のある緩衝液中などの水溶液中で製剤化及び希釈化することができる。このような経粘膜投与のためには、浸透すべき障壁に適した浸透剤が製剤化に使用される。そのような浸透剤は、当該分野において一般的に知られている。
【0047】
本発明を実施するために、本明細書に開示された化合物を全身投与に適した剤に製剤化するための薬学的に許容される不活性担体の使用は、本発明の範囲内である。担体及び製造行為を適切に選択して、本発明の組成物、特に溶液として製剤化された組成物を、静脈内注射など非経口的に投与することができる。前記化合物を、当技術分野で周知の薬学的に許容される担体を用いて、経口投与に適した剤に容易に製剤化することができる。そのような担体によって、本発明の化合物を、治療を受ける被験体(例えば、患者)が経口摂取するためのタブレット、ピル、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化することが可能になる。
【0048】
鼻又は吸入デリバリのためには、本発明の薬剤をまた、当業者に公知の方法によって製剤化することができ、そして例えば、限定されるものではないが、生理食塩水のような可溶化、希釈化又は分散化剤の例;ベンジルアルコールのような防腐剤;吸収促進剤;及びフルオロカーボン;を含むことがある。
【0049】
本発明における使用に適した医薬組成物には、有効成分がその意図された目的を達成するのに有効な量で含まれる組成物が含まれる。前記有効量を決定することは、特に本明細書で提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。一般に、本発明に係る化合物は、広い用量範囲にわたって有効である。例えば、成人の治療において、1 日あたり 0.01 から 1000 mg、0.5 から 100 mg、1 から 50 mg、及び 1 日あたり 5 から 40 mgの用量が、使用され得る用量の例である。非限定的な用量は、1 日あたり 10 から 30 mgである。正確な用量は、投与経路、前記化合物が投与される形態、治療を受ける被験体、治療を受ける被験体の体重、前記化合物のバイオアベイラビリティ(bioavailability)、前記化合物の吸収、分布、代謝及び排泄(ADME)、毒性並びに主治医の好み及び経験に依存する。
【0050】
前記活性成分に加えて、これらの医薬組成物は、薬学的に使用することができる製剤に前記活性化合物を加工することを容易にする賦形剤及び助剤を含む、適切な薬学的に許容される担体を含むことがある。経口投与用に製剤化された製剤は、タブレット、糖衣錠、カプセル又は溶液の形態をとることがある。
【0051】
必要に応じて、タブレット又は糖衣錠のコアを得るために、適切な助剤を加えた後、前記活性化合物を固体賦形剤と混合し、得られる混合物を任意選択的に粉砕し、その顆粒混合物を加工することにより、経口使用のための医薬製剤を得ることができる。適切な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールなどを含む糖などの充填剤;例えば、とうもろこしデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ポテト・デンプン、ゼラチン、トラガカント・ゴム、メチル・セルロース、ヒドロキシプロピルメチル‐セルロース、カルボキシメチル‐セルロース・ナトリウム(CMC)、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP:ポビドン)のようなセルロース調製物である。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸若しくはその塩(例えばアルギン酸ナトリウム)などの崩壊剤を添加しても良い。
【0052】
糖衣錠コアには適切なコーティングが施される。この目的のために、アラビア・ゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポール・ゲル、ポリエチレン・グリコール(PEG)、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、並びに適切な有機溶媒若しくは溶媒混合物を任意選択的に含む濃縮糖溶液を使用することができる。色素材料(dye-stuffs)又は色素(pigments)を、活性化合物の用量の異なる組み合わせがわかるように又は特徴付けるために、タブレット又は糖衣錠コーティングに添加しても良い。
【0053】
経口的に使用することができる医薬製剤には、ゼラチン製のプッシュ‐フィット・カプセル、ゼラチン製のソフト密封カプセル、及びグリセロール又はソルビトールなどの可塑剤が含まれる。プッシュ‐フィット・カプセルは、前記活性成分を、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、及び/又はタルク若しくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、並びに任意選択的に安定剤との混合剤として含むことがある。ソフト・カプセルでは、前記活性化合物を、脂肪油、流動パラフィン、又は液体ポリエチレン・グリコール(PEG)のような適切な液体に溶解又は懸濁させることができる。さらに、安定剤を添加しても良い。
【0054】
II.一般的な定義
【0055】
本明細書では具体的な用語を使用しているが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用され、限定するために使用されるものではない。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本明細書で記載される発明が属する技術分野の当業者のある者によって共通に理解されるのと同じ意味を有する。
【0056】
式(I)の化合物に関連する以下の用語は、当業者のある者によって十分に理解されると考えられるが、本明細書で開示されている発明についての説明を容易にするために、以下の定義を記載する。これらの定義は、本発明を検討する際に当業者のある者にとっては明白であろう定義を補足し説明することを意図するものであって、排除するものではない。
【0057】
本明細書中で使用される場合、置換されている(substituted)、及び置換(substituent)という用語は、用語「任意選択的に(optionally)」が先に記載されているかどうかに関わらず、当業者に理解されるように、すべての原子の原子価が維持されるという条件の下で、分子上のある官能基を別の官能基に変えることができることを意味する。任意の所与の構造における 1 つより多い位置が、特定の基から選択される 1 つより多くの置換基で置換され得る場合、前記置換基は、あらゆる位置で同じであっても異なっていても良い。前記置換基は、さらに置換されていても良い(例えば、アリール基の置換基は、1 つ以上の位置でさらに置換された、別のアリール基のような別の置換基に代わっていても良い)。
【0058】
置換基又は連結基が、左から右に書かれたそれらの従来の化学式によって特定される場合、それらは、前記構造を右から左に書くことによって生じるであろう化学的に同一の置換基を等しく包含する(例えば、-CH2O- は -OCH2- と等価である;-C(=O)O- は -OC(=O)- と等価である;-OC(=O)NR- は -NRC(=O)O- と等価であるなど)。
【0059】
用語「独立して選択される(independently selected)」が使用される場合、言及される置換(例えば、基 R1、R2 などの R 基、又は「m」及び「n」などの変数)は同一又は異なることがある。例えば、R1及び R2の両方が置換アルキルであることがあり、又は R1が水素で、R2が置換アルキルというようなこともある。
【0060】
用語「a」、「an」又は「a(n)」は、本明細書中の置換基の群に関して使用される場合、少なくとも 1 つを意味する。例えば、化合物が「an」アルキル又はアリールで置換されている場合、前記化合物は、任意選択的に、少なくとも 1 つのアルキル及び/又は少なくとも 1 つのアリールで置換されている。さらに、部分が R 置換基で置換されている場合、その基を「R‐置換(R-substituted)」と称すことがある。部分が R‐置換されている場合、前記部分は少なくとも 1 つの R 置換基で置換され、各 R 置換基は任意選択的に異なる。
【0061】
名前の付いた「R」又は基は、一般に、本明細書中で特に明記しない限り、その名称を有する基に対応するものとして当該技術分野において認識される構造を有する。説明の目的のために、上記のある代表的な「R」基を以下に定義する。
【0062】
本発明の化合物の記載は、当業者に知られている化学結合の原理によって限定される。したがって、1 つの基が 1 つ以上の置換基で置換されていても良い場合、そのような置換基は化学結合の原理に従うように選択され、本質的に不安定ではなく、及び/又は水性、中性及びいくつかの既知の生理学的条件のような周囲環境の条件下では不安定である可能性があるものとして、当業者のある者であれば認識している。例えば、ヘテロシクロアルキル又はヘテロアリールは、当業者に知られている化学結合の原理に従って、環ヘテロ原子を介して分子の残りに結合し、それによって本質的に不安定な化合物を回避する。
【0063】
他に明示的に定義しない限り、本明細書で使用される「置換基(substituent group)」は、本明細書で定義される以下の部分の 1 つ以上から選択される官能基を含む:
【0064】
用語炭化水素(hydrocarbon)は、本明細書で使用される場合、水素及び炭素を含む任意の化学基を指す。前記炭化水素は置換されていても置換されていなくても良い。当業者であれば知っているように、すべての原子価は、いかなる置換を行う際に満たされなければならない。前記炭化水素は、不飽和、飽和、分枝、非分枝、環式、多環式又は複素環式であっても良い。例示的な炭化水素は、本明細書において以下にさらに定義され、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、アリル、ビニル、n-ブチル、tert-ブチル、エチニル、シクロヘキシルなどを含む。
【0065】
用語「アルキル(alkyl)」は、単独で又は別の置換基の一部として、特に明記しない限り、直鎖(すなわち、「非分枝」)、分枝鎖、非環式若しくは環式の炭化水素基、又はそれらの組合せを意味し、それらは完全に飽和した、一不飽和又は多不飽和のことがあり、二価及び多価の基を含むことがあり、指定した数の炭素原子数を有する(即ち、C1-C10 は 1 から 10 個の炭素を意味し、1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9 及び 10 個の炭素を含む)。具体的な実施形態では、用語「アルキル(alkyl)」は、1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19 及び 20 個の炭素を含むという C1-20 包括的な、線状(すなわち、「直鎖(straight-chain)」)、分枝、若しくは環式、飽和又は 1 から 20 個の炭素原子を含有する炭化水素部分から、1 個の水素原子を除去することにより誘導される少なくとも部分的に、場合によっては完全に不飽和の(即ち、アルケニル及びアルキニル)炭化水素ラジカル、を意味する。
【0066】
限定されるものではないが、代表的な飽和炭化水素基には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、sec-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-デシル、n-ウンデシル、ドデシル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、及びそれらの同族体及び異性体が含まれる。
【0067】
「分枝(Branched)」は、メチル、エチル又はプロピルなどの低級アルキル基が線状アルキル鎖に結合しているアルキル基を指す。「低級アルキル(Lower alkyl)」は、1 から約 8 個の炭素原子、例えば、1, 2, 3, 4, 5, 6, 7 又は 8 個の炭素原子を有するアルキル基(すなわち、C1-8アルキル)を指す。「高級アルキル(Higher alkyl)」は、約 10 から約 20 個の炭素原子、例えば、10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19 又は 20 個の炭素原子を有するアルキル基を指す。ある実施形態において、「アルキル(alkyl)」は、特に、C1-8 直鎖アルキルを指す。他の実施形態では、「アルキル(alkyl)」は、特に、C1-8 分岐鎖アルキルを指す。
【0068】
アルキル基は、任意選択的に 1 以上のアルキル基置換基で置換されていても良く(「置換アルキル(substituted alkyl)」)、置換基は同じであっても異なっていても良い。用語「アルキル基置換基(alkyl group substituent)」は、制限されるものではないが、アルキル、置換アルキル、ハロ、アリールアミノ、アシル、ヒドロキシル、アリールオキシル、アルコキシル、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキルオキシル(aralkyloxyl)、アラルキルチオ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、オキソ及びシクロアルキルを含む。任意選択的に、アルキル鎖に沿って 1 個以上の酸素、硫黄又は置換若しくは非置換の窒素原子が挿入されても良く、ここで、前記窒素置換基は水素、低級アルキル(本明細書では「アルキルアミノアルキル(alkylaminoalkyl)」とも呼ばれる)又はアリールである。
【0069】
したがって、本明細書で使用される場合、用語「置換アルキル(substituted alkyl)」は、アルキル基の 1 つ以上の原子又は官能基が別の原子又は官能基(例えば、アルキル、置換アルキル、ハロゲン、アリール、置換アリール、アルコキシル、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、硫酸、及びメルカプトなどを含む)で置換された、本明細書で定義されるアルキル基を含む。
【0070】
用語「ヘテロアルキル(heteroalkyl)」は、単独で又は別の用語と組み合わせて、特に明記しない限り、安定な直鎖若しくは分枝鎖若しくは環状炭化水素基又はこれらの組合せであって、少なくとも 1 個の炭素原子及び O, N, P, Si 及び S からなる群から選択される少なくとも 1 個のヘテロ原子からなり、ここで、前記窒素原子、リン原子及び硫黄原子は任意選択的に酸化されていても良く、前記窒素ヘテロ原子は任意選択的に四級化されていても良い。前記ヘテロ原子 O, N, P, S 及び Si は、ヘテロアルキル基の任意の内部位置に、又はアルキル基が分子の残りに結合している位置に配置されることがある。限定されるものではないが、例としては、-CH2-CH2-O-CH3, -CH2-CH2-NH-CH3, -CH2-CH2-N(CH3)-CH3, -CH2-S-CH2-CH3, -CH2-CH25-S(O)-CH3, -CH2-CH2-S(O)2-CH3, -CH=CH-O-CH3, -Si(CH3)3, -CH2-CH=N-OCH3, -CH=CH-N(CH3)-CH3, O-CH3, -O-CH2-CH3 及び -CN が含まれる。例えば、-CH2-NH-OCH3及び -CH2-O-Si(CH3)3のように、2 個又は 3 個までのヘテロ原子が連続していても良い。
【0071】
上述のように、本明細書で使用される場合、ヘテロアルキル基は、-C(O)NR’, -NR’R”, -OR’, -SR, -S(O)R 及び/又は -S(O2)R’ のようなヘテロ原子を介して前記分子の残りに結合した基を含む。「ヘテロアルキル(heteroalkyl)」が記載され、続いて -NR'R などのような特定のヘテロアルキル基が列記される場合、用語ヘテロアルキル(heteroalkyl)及び -NR'R” は重複又は相互排他的ではないことが理解される。むしろ、明瞭にするために、その具体的なヘテロアルキル基が列記される。したがって、用語「ヘテロアルキル(heteroalkyl)」は、-NR'R” などのような特定のヘテロアルキル基を排除するものとして本明細書中で解釈されるべきではない。
【0072】
「環式(Cyclic)」及び「シクロアルキル(cycloalkyl)」は、約 3 から約 10 個の炭素原子(例えば3, 4, 5, 6, 7, 8, 9 又は 10 個の炭素原子)の非芳香族単環式又は多環式環系を意味する。前記シクロアルキル基は、任意選択的に部分的に不飽和であっても良い。前記シクロアルキル基はまた、任意選択的に、本明細書で定義されるアルキル基置換基、オキソ及び/又はアルキレンで置換されていても良い。環式アルキル鎖に沿って 1 個以上の酸素、硫黄又は置換若しくは非置換窒素原子が挿入されても良く、ここで、前記窒素置換基は水素、非置換アルキル、置換アルキル、アリール又は置換アリールであり、このようにして複素環基が提供される。代表的な単環式シクロアルキル環には、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルが含まれる。多環式シクロアルキル環には、アダマンチル、オクタヒドロナフチル、デカリン、カンファー、カンファン及びノルアダマンチル、並びに、例えばジヒドロ‐及びテトラヒドロナフタレンなど縮合環系、が含まれる。
【0073】
本明細書で使用する用語「シクロアルキルアルキル(cycloalkylalkyl)」は、上記定義したシクロアルキル基を指し、やはり上記定義したアルキル基を介して親分子部分に結合している。シクロアルキルアルキル基の例としては、シクロプロピルメチル及びシクロペンチルエチルが含まれる。
【0074】
用語「シクロヘテロアルキル(cycloheteroalkyl)」又は「ヘテロシクロアルキル(heterocycloalkyl)」は、非芳香族環系、不飽和又は部分不飽和環系を言う。例えば、3 から 10 員の置換又は非置換シクロアルキル環系で、1 つ以上のヘテロ原子を含み、ヘテロ原子は同じでも異なっていても良く、ヘテロ原子は窒素(N)、酸素(O)、硫黄(S)、リン(P)及びケイ素(Si)からなる群から選択され、任意選択的に 1 つ以上の二重結合を含むことある。
【0075】
シクロヘテロアルキル環は、任意選択的に、他のシクロヘテロアルキル環及び/又は非芳香族炭化水素環に縮合していても良いし、結合していても良い。複素環は、酸素、硫黄及び窒素から独立して選択される 1 から 3 個のヘテロ原子を有する複素環を含み、酸素、硫黄及び窒素の中で、前記窒素及び硫黄ヘテロ原子は任意選択的に酸化されても良く、前記窒素ヘテロ原子は任意選択的に四級化されても良い。ある実施形態では、用語複素環(heterocylic)は、非芳香族 5, 6 若しくは 7 員環、又は少なくとも 1 つの環原子がO, S 及び N から選択されるヘテロ原子(ここで、前記窒素及び硫黄ヘテロ原子は任意選択的に酸化されていても良い)である多環式基を指し、限定されるものではないが、二環式基又は三環式基を含み、酸素、硫黄及び窒素から独立して選択される 1 つから 3 つのヘテロ原子を有する縮合 6 員環を含み、ここで、(i)各 5 員環は 0 から 2 個の二重結合を有し、各 6 員環は 0 から 2 個の二重結合を有し、並びに各 7 員環は 0 から 3 個の二重結合を有し、(ii)前記窒素及び硫黄ヘテロ原子は、任意選択的に酸化されていても良く、(iii)前記窒素ヘテロ原子は、任意選択的に四級化されていても良く、及び(iv)上記複素環のいずれかがアリール環又はヘテロアリール環に縮合していても良い。限定されるものではないが、代表的なシクロヘテロアルキル環系には、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペリジル、ピペラジニル、インドリニル、キヌクリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアジアジナニル(thiadiazinanyl)、テトラヒドロフラニルなどが含まれる。
【0076】
用語「シクロアルキル(cycloalkyl)」及び「ヘテロシクロアルキル(heterocycloalkyl)」は、単独で又は他の用語との組み合わせで、特に明記しない限り、それぞれ「アルキル(alkyl)」及び「ヘテロアルキル(heteroalkyl)」の環式バージョンを表す。さらに、ヘテロシクロアルキルの場合、ヘテロ原子が、前記複素環が前記分子の残りに結合している位置を占めることがある。限定されるものではないが、シクロアルキルの例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが含まれる。限定されるものではないが、ヘテロシクロアルキルの例としては、1-(1,2,5,6- テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニルなどが含まれる。用語「シクロアルキレン(cycloalkylene)」及び「ヘテロシクロアルキレン(heterocycloalkylene)」は、それぞれシクロアルキル及びヘテロシクロアルキルの二価誘導体を指す。
【0077】
不飽和アルキル基は、1 つ以上の二重結合又は三重結合を有するアルキル基である。限定されるものではないが、不飽和アルキル基の例には、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1 - 及び3-プロピニル、3-ブチニル、及び高級同族体及び異性体が含まれる。炭化水素基に限定されるアルキル基は、「ホモアルキル(homoalkyl)」と呼ばれる。
【0078】
より具体的には、本明細書で使用される用語「アルケニル(alkenyl)」は、単一の水素分子の除去による少なくとも 1 つの炭素‐炭素二重結合を有し、C1-20 を包括する直鎖又は分枝炭化水素部分から誘導される一価の基を指す。アルケニル基としては、例えば、エテニル(すなわち、ビニル)、プロペニル、ブテニル、1-メチル-2-ブテン-1-イル、ペンテニル、ヘキセニル、オクテニル、アレニル及びブタジエニルが含まれる。
【0079】
本明細書で使用される用語「シクロアルケニル(cycloalkenyl)」は、少なくとも 1 つの炭素‐炭素二重結合を含む環状炭化水素を指す。シクロアルケニル基の例には、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエン、シクロヘキセニル、1,3-シクロヘキサジエン、シクロヘプテニル、シクロヘプタトリエニル及びシクロオクテニルが含まれる。
【0080】
本明細書で使用される用語「アルキニル(alkynyl)」は、少なくとも 1 つの炭素‐炭素三重結合を含む、意図した数の炭素原子の直鎖又は分枝鎖の C1-20 炭化水素から誘導される一価の基を指す。「アルキニル(alkynyl)」の例としては、エチニル、2-プロピニル(プロパルギル)、1-プロピニル、ペンチニル、ヘキシニル、及びヘプチニル基などが含まれる。
【0081】
用語「アルキレン(alkylene)」は、単独で又は別の置換基の一部は、1 から約 20 個の炭素原子(例えば、1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19 又は 20 個の炭素原子)を有するアルキル基から誘導される直鎖又は分枝鎖の二価の脂肪族炭化水素基を指す。前記アルキレン基は、直鎖、分枝鎖又は環式であることがある。前記アルキレン基はまた、任意選択的に不飽和及び/又は 1 個以上の「アルキル基置換基(alkyl group substituents)」で置換されていても良い。1つ以上の酸素、硫黄又は置換若しくは非置換の窒素原子(本明細書中では「アルキルアミノアルキル(alkylaminoalkyl)」とも呼ばれる)をアルキレン基に沿って任意選択的に挿入することができ、ここで、前記窒素置換基は先に記載したようにアルキルである。例示的なアルキレン基には、メチレン(-CH2-);エチレン(-CH2-CH2-);プロピレン(-(CH2)3-);シクロヘキシレン(-C6H10-);-CH=CH-CH=CH-;-CH=CH-CH2-;-CH2CH2CH2CH2-, -CH2CH=CHCH2-, -CH2CsCCH2-, -CH2CH2CH(CH2CH2CH3)CH2-, -(CH2)q-N(R)-(CH2)r- が含まれ、ここで、q 及び r の各々は、独立して、0 から約 20 の整数(0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19 又は 20)であり、R は水素又は低級アルキル;メチレンジオキシル(-O-CH2-O-);及びエチレンジオキシル(-O-(CH2)2-O-)である。アルキレン基は、約 2 から約 3 個の炭素原子を有することがあり、さらに 6 から 20 個の炭素を有することがある。典型的には、アルキル(又はアルキレン)基は 1 から 24 個の炭素原子を有し、10 個以下の炭素原子を有する基は本発明のいくつかの実施形態である。「低級アルキル(lower alkyl)」又は「低級アルキレン(lower alkylene)」は、一般に 8 個以下の炭素原子を有する、より短い鎖のアルキル又はアルキレン基である。
【0082】
用語「ヘテロアルキレン(heteroalkylene)」は、単独で又は別の置換基の一部として、ヘテロアルキルから誘導される二価基を意味し、例えば、限定されるものではないが、-CH2-CH2-S-CH2-CH2- 及び -CH2-S-CH2-CH2-NH-CH2- が例示される。ヘテロアルキレン基の場合、ヘテロ原子はまた、鎖末端のどちらか又は両方を占有することがある(例えば、アルキレンオキソ、アルキレンジオキソ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。さらに、アルキレン及びヘテロアルキレン連結基の場合、前記連結基の配向は、前記連結基の式が書かれている方向によって示唆されていない。例えば、式 -C(O)OR’- は、-C(O)OR’- 及び -R’OC(O)- の両方を表す。
【0083】
用語「アリール(aryl)」は、特に明記しない限り、一緒に縮合しているか又は共有結合している単環又は多環(例えば 1 から 3 環)のことがある芳香族炭化水素置換基を意味する。用語「ヘテロアリール(heteroaryl)」は、N、O 及び S から選択される 1 から 4 個のヘテロ原子を含有する(複数の環の場合はそれぞれ別個の環にある)アリール基(又は環)を指し、ここで、前記窒素及び硫黄原子は任意選択的に酸化されていて、前記窒素原子は任意選択的に四級化されている。ヘテロアリール基は、炭素又はヘテロ原子を介して前記分子の残りに結合することがある。アリール及びヘテロアリール基の非限定的な例には、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンズイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル及び 6-キノリルが含まれる。上記アリール及びヘテロアリール環系のそれぞれの置換基は、以下に記載される許容される置換基の群から選択される。用語「アリーレン(arylene)」及び「ヘテロアリーレン(heteroarylene)」は、それぞれアリール及びヘテロアリールの二価の形態をいう。
【0084】
簡潔にするために、用語「アリール(aryl)」は、他の用語(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)と組み合わせて使用される場合、上記で定義したアリール環及びヘテロアリール環の両方を含む。したがって、用語「アリールアルキル(arylalkyl)」及び「ヘテロアリールアルキル(heteroarylalkyl)」は、アリール又はヘテロアリール基が、アルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチル、フリルメチルなど)に結合している基を含むことを意味し、炭素原子(例えば、メチレン基)が例えば酸素原子で置換された(例えば、フェノキシメチル、2-ピリジルオキシメチル、3-(1-ナフチルオキシ)プロピルなど)アルキル基を含む。しかしながら、本明細書で使用される用語「ハロアリール(haloaryl)」は、1 つ以上のハロゲンで置換されたアリールのみを包含することを意味する。
【0085】
ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル又はヘテロアリールが特定の数の員(例えば「3 から 7 員(3 to 7 membered)」)を含む場合、用語「員(member)」は炭素又はヘテロ原子を指す。
【0086】
さらに、式:
【化33】
で一般的に表される構造は、本明細書で使用されるように、環構造を意味し、例えば、限定されるものではないが、3-炭素、4-炭素、5-炭素、6-炭素、7-炭素などの脂肪族及び/又は芳香族環式化合物であり、飽和環構造、部分的に飽和した環構造及び不飽和環構造を含み、置換基 R 基を含み、ここで、前記 R 基は存在しても存在しなくても良く、存在している場合は、1 つ以上の R 基は、前記環構造の 1 つ以上の利用可能な炭素原子上でそれぞれ置換されていても良い。R 基の有無及び R 基の数は、変数「n」の値によって決定され、n は一般に 0 から置換可能な環上の炭素原子の数を範囲とする値を有する整数である。各 R 基は、複数存在する場合、別の R 基よりも寧ろ、前記環構造の利用可能な炭素において置換される。例えば、n が 0 から 2 である上記の構造は、限定されるものではないが、以下を含む化合物群を含むであろう:
【化34】
など。
【0087】
環式環構造中の結合を表す破線は、前記結合が前記環内に存在することも存在しないこともあることを示す。すなわち、環式環構造中の結合を表す破線は、前記環構造が飽和環構造、部分飽和環構造及び不飽和環構造からなる群から選択されることを示す。
【0088】
記号
【化35】
は、前記分子の残部への部分の結合点を示す。
【0089】
芳香族環又は複素環式芳香族環の指定原子が「存在しない(absent)」と定義される場合、指定された原子は直接結合によって置換される。
【0090】
上記の各用語(例えば、「アルキル(alkyl)」、「ヘテロアルキル(heteroalkyl)」、「シクロアルキル(cycloalkyl)」及び「ヘテロシクロアルキル(heterocycloalkyl)」、「アリール(aryl)」、「ヘテロアリール(heteroaryl)」、「ホスホネート(phosphonate)」及び「スルホネート(sulfonate)」並びにそれらの二価誘導体)は、示された基の置換型及び非置換型の両方を含むことを意味する。各タイプの基についての任意選択的な置換基を以下に示す。
【0091】
アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル一価及び二価誘導体基(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル及びヘテロシクロアルケニルとしばしば呼ばれる基を含む)の置換基は、限定されるものではないが、以下から選択される 1 つ以上の様々な基であることがある:ゼロから (2m’+l) の範囲にある数の -OR’, =O, =NR’, =N-OR’, -NR’R”, -SR’, -ハロゲン, -SiR’R”R’”, -OC(O)R’, -C(O)R’, -CO2R’, -C(O)NR’R”, -OC(O)NR’R”, -NR”C(O)R’, -NR’-C(O)NR”R’”, -NR”C(O)OR’, -NR-C(NR’R”)=NR’”, -S(O)R’, -S(O)2R’, -S(O)2NR’R”, -NRSO2R’, -CN 及び -NO2 (ここで、m 'はこのような基における炭素原子の総数である)。R’, R”, R’” 及び R”” はそれぞれ独立して水素、置換若しくは非置換ヘテロアルキル、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換アリール(例えば、1 から3個のハロゲンで置換されたアリール)、置換若しくは非置換アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基、又はアリールアルキル基を意味することがある。本明細書で使用する「アルコキシ(alkoxy)」基は、二価の酸素を介して分子の残部に結合したアルキルである。本発明の化合物が 2 つ以上の R 基を含む場合、例えば、R 基の各々は、各 R’, R”, R’” 及び R”” 基が、これらの基の 2 つ以上が存在する場合に、独立して選択されるように、独立して選択される。R' 及び R" が同じ窒素原子に結合している場合、それらは窒素原子と合わさって 4-, 5-, 6-, 又は 7-員環を形成することがある。例えば、-NR'R" は、限定されるものではないが、1-ピロリジニル及び4-モルホリニルを含むことを意味する。置換基の上記考察から、当業者のある者は、用語「アルキル(alkyl)」は、ハロアルキル(例えば、-CF3及び -CH2CF3)並びにアシル(例えば、-C(O)CH3, -C(O)CF3, -C(O)CH2OCH3 など)のような水素基以外の基に結合した炭素原子を含む基を含むことを意味すると理解するであろう。
【0092】
上記のアルキル基について記載した置換基と同様に、アリール基及びヘテロアリール基(並びにそれらの二価誘導体)の例示的な置換基は様々であり、例えば、以下から選択される:ゼロから芳香族環系における空いている価数の総数までの範囲にある数の、ハロゲン, -OR’, -NR’R”, -SR’, -SiR’R”R’”, -OC(O)R’, -C(O)R’, -CO2R’, -C(O)NR’R”, -OC(O)NR’R”, -NR”C(O)R’, -NR’-C(O)NR”R’”, -NR”C(O)OR’, -NR-C(NR’R”R’”)=NR””, -NR-C(NR’R”)=NR’” -S(O)R’, -S(O)2R’, -S(O)2NR’R”, -NRSO2R’, -CN 及び -NO2, -R’, -N3, -CH(Ph)2, フルオロ(C1-C4)アルコキソ, 及び フルオロ(C1-C4)アルキル;ここで、R’, R”, R’” 及び R”” は、独立して、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換ヘテロアルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換ヘテロシクロアルキル、置換又は非置換アリール及び置換又は非置換ヘテロアリールから選択されることがある。本発明の化合物が 2 つ以上の R 基を含む場合、例えば、R 基の各々は、各 R’, R”, R’” 及び R”” 基が、これらの基の 2 つ以上が存在する場合、独立して選択されるように、独立して選択される。
【0093】
アリール又はヘテロアリール環の隣接原子上の 2 つの置換基は、式 -T-C(O)-(CRR’)q-U- の環を任意選択的に形成することがあり、式中、T 及び U は独立して -NR-, -O-, -CRR’- 又は単結合であり、q は 0 から 3 の整数である。あるいは、アリール環又はヘテロアリール環の隣接原子上の 2 つの置換基は、式 -A-(CH2)r-B- の置換基で置換されていても良く、式中、A 及び B は独立して -CRR’-, -O-, -NR-, -S-, -S(O)-, -S(O)2-, -S(O)2NR’- 又は単結合であり、r は 1 から 4 の整数である。
【0094】
このようにして形成された新しい環の単結合の 1 つは、任意選択的に二重結合で置換されていても良い。あるいは、アリール環又はヘテロアリール環の隣接原子上の 2 つの置換基は、式 -(CRR’)s-X’- (C”R’”)d- の置換基で置換されていても良く、ここで、 s 及び d は独立して 0 から 3 の整数であり、X' は、-O-, -NR’-, -S-, -S(O)-, -S(O)2- 又は -S(O)2NR’-である。前記置換基 R, R’, R” 及び R’” は、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換ヘテロシクロアルキル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換ヘテロアリールから独立して選択することができる。
【0095】
本明細書で使用される場合、用語「アシル(acyl)」は有機酸基を意味し、ここで、カルボキシル基の -OH が別の置換基で置換されていて、一般式 RC(=O)-(式中、本明細書で定義されるように、R はアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール 、炭素環式、複素環式、又は芳香族複素環式基である)である。そのようなものとして、用語「アシル(acyl)」には、具体的には、2-(フラン-2-イル)アセチル)- 及び 2-フェニルアセチル基などのアリールアシル基が含まれる。アシル基の具体例には、アセチル及びベンゾイルが含まれる。アシル基にはまた、アミド、-RC(=O)NR’、エステル、-RC(=O)OR’、ケトン、-RC(=O)R’ 及びアルデヒド、-RC(=O)H が含まれることが意図される。
【0096】
用語「アルコキシル(alkoxyl)」又は「アルコキシ(alkoxy)」は、本明細書では互換的に使用され、酸素原子を介して親分子部分に結合した飽和(すなわち、アルキル-O-)又は不飽和(すなわち、アルケニル-O- 及びアルキニル-O-)基を意味する。ここで、用語「アルキル(alkyl)」、「アルケニル(alkenyl)」及び「アルキニル(alkynyl)」は先に記載した通りであり、例えば C1-20 包括的な、直鎖、分岐又は環式の、飽和又は不飽和オキソ炭化水素鎖が含まれることがあり、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシル、イソプロポキシル、n-ブトキシル、sec-ブトキシル、tert-ブトキシル、及び n-ペントキシル、ネオペントキシル、n-ヘキソキシルなどが含まれる。
【0097】
本明細書で使用される用語「アルコキシアルキル(alkoxyalkyl)」は、アルキル-O-アルキルエーテルを意味し、例えばメトキシエチル又はエトキシメチル基である。
【0098】
「アリールオキシル(Aryloxyl)」はアリール-O- 基を意味し、ここで、前記アリール基は先に記載した通りであり、置換アリールを含む。本明細書で使用される用語「アリールオキシル(Aryloxyl)」は、フェニルオキシル若しくはヘキシルオキシル、及びアルキル、置換アルキル、ハロ若しくはアルコキシル置換フェニルオキシル又はヘキシルオキシルを意味することがある。
【0099】
「アラルキル(Aralkyl)」は、アリール‐アルキル基を意味し、ここで、アリール及びアルキルは先に記載した通りであり、置換アリール及び置換アルキルを含む。例示的なアラルキル基には、ベンジル、フェニルエチル及びナフチルメチルが含まれる。
【0100】
「アラルキルオキシル(Aralkyloxyl)」は、アラルキル-O- 基を意味し、ここで、前記アラルキル基は先に記載したとおりである。例示的なアラルキルオキシル基はベンジルオキシル、すなわち C6H5-CH2-O- である。アラルキルオキシル基は、任意選択的に置換されることがある。
【0101】
「アルコキシカルボニル(Alkoxycarbonyl)」は、アルキル-O-C(=O)- 基を意味する。例示的なアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル、及び tert-ブチルオキシカルボニルが含まれる。
【0102】
「アリールオキシカルボニル(Aryloxycarbonyl)」は、アリール-O-C(=O)- 基を意味する。例示的なアリールオキシカルボニル基には、フェノキシ‐及びナフトキシ‐カルボニルが含まれる。
【0103】
「アラルコキシカルボニル(Aralkoxycarbonyl)」は、アラルキル-O-C(=O)- 基を意味する。例示的なアラルコキシカルボニル基は、ベンジルオキシカルボニルである。
【0104】
「カルバモイル(Carbamoyl)」は、式 -C(=O)NH2 のアミド基を意味する。「アルキルカルバモイル(Alkylcarbamoyl)」は、R’RN-C(=O)- 基を意味し、式中、R 及び R' の一方が水素であり、R 及び R' の他方が前記のようなアルキル及び/又は置換アルキルである。「ジアルキルカルバモイル(Dialkylcarbamoyl)」は、R’RN-C(=O)- 基を意味し、式中、R 及び R' の各々は、独立して、先に記載したようなアルキル及び/又は置換アルキルである。
【0105】
本明細書で使用される用語カルボニルジオキシル(carbonyldioxyl)は、式 -O-C(=O)-OR の炭酸塩基を指す。
【0106】
「アシルオキシル(Acyloxyl)」とは、アシル-O- 基を意味し、ここで、アシルは先に記載したとおりである。
【0107】
用語「アミノ(amino)」は、-NH2 基を意味し、1 つ以上の水素ラジカルを有機ラジカルによって置換したアンモニアに由来する当技術分野で知られている窒素含有基をも意味する。例えば、用語「アシルアミノ(acylamino)」及び「アルキルアミノ(alkylamino)」は、それぞれアシル及びアルキル置換基を有する特定の N-置換有機ラジカルを意味する。
【0108】
本明細書で使用する「アミノアルキル(aminoalkyl)」は、アルキレンリンカーに共有結合したアミノ基を意味する。より具体的には、本明細書で使用される用語アルキルアミノ(alkylamino)、ジアルキルアミノ(dialkylamino)及びトリアルキルアミノ(trialkylamino)は、窒素原子を介して親分子部分に結合した、それぞれ 1, 2 又は 3 個の、先に定義したようなアルキル基を意味する。用語アルキルアミノ(alkylamino)は、構造式 -NHR' を有する基を意味し、式中、R' は、前に定義したようなアルキル基である;用語ジアルキルアミノ(dialkylamino)は、構造式 -NR'R" を有する基を意味し、式中、R' 及び R" は、それぞれ独立して、アルキル基からなる群から選択される;用語トリアルキルアミノ(trialkylamino)は、構造式 -NR'R"R"' を有する基を意味し、式中、R', R'' 及び R''' は、それぞれ独立してアルキル基からなる群から選択される。さらに、R', R'' 及び/又は R''' はまとまって、任意選択的に -(CH2)k- であることがあり、ここで、k は 2 から 6 の整数である。限定されるものではないが、例には、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、ジエチルアミノカルボニル、メチルエチルアミノ、イソプロピルアミノ、ピペリジノ、トリメチルアミノ及びプロピルアミノが含まれる。
【0109】
アミノ基は-NR'R" であり、ここで、 R' 及び R" は典型的には、水素、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換ヘテロアルキル、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換アリール、又は置換若しくは非置換ヘテロアリールから選択される。
【0110】
用語アルキルチオエーテル(alkylthioether)及びチオアルコキシル(thioalkoxyl)は、硫黄原子を介して親分子部分に結合した飽和(すなわち、アルキル-S-)又は不飽和(すなわち、アルケニル-S- 及びアルキニル-S-)基を意味する。限定されるものではないが、チオアルコキシル部分の例としては、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、n-ブチルチオなどが含まれる。
【0111】
「アシルアミノ(Acylamino)」とは、アシル-NH- 基を意味し、ここで、アシルは上記のとおりである。「アロイルアミノ(Aroylamino)」は、アロイル-NH- 基を意味し、ここで、アロイルは上記のとおりである。
【0112】
用語「カルボニル(carbonyl)」は -C(=O)- 基を意味し、一般式 R-C(=O)H で表されるアルデヒド基を含むことがある。
【0113】
用語「カルボキシル(carboxyl)」は、-COOH 基を意味する。そのような基は、本明細書では「カルボン酸(carboxylic acid)」部分とも呼ばれる。
【0114】
本明細書で使用する用語「ハロ(halo)」、「ハロゲン化物(halide)」又は「ハロゲン(halogen)」は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード基を意味する。さらに、「ハロアルキル(haloalkyl)」などの用語は、モノハロアルキル及びポリハロアルキルを含むことを意味する。例えば、限定されるものではないが、用語「ハロ(C1-C4)アルキル(halo(C1-C4)alkyl)」は、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピルなどを含むことを意味する。
【0115】
用語「ヒドロキシル(hydroxyl)」は、-OH 基を意味する。
【0116】
用語「ヒドロキシアルキル(hydroxyalkyl)」は、-OH 基で置換されたアルキル基を意味する。
【0117】
用語「メルカプト(mercapto)」は、-SH 基を意味する。
【0118】
本明細書で使用する用語「オキソ(oxo)」は、炭素原子又は他の元素に二重結合している酸素原子を意味する。
【0119】
用語「ニトロ(nitro)」は、-NO2 基を意味する。
【0120】
用語「チオ(thio)」は、本明細書中で前に記載された化合物を意味し、ここで、炭素又は酸素原子が硫黄原子によって置換されている。
【0121】
用語「硫酸(sulfate)」は、-SO4 基を意味する。
【0122】
本明細書で使用される用語チオヒドロキシル(thiohydroxyl)又はチオール(thiol)は、式 -SH の基を意味する。
【0123】
より具体的には、用語「スルフィド(sulfide)」は、式 -SR の基を有する化合物を意味する。
【0124】
用語「スルホン(sulfone)」は、スルホニル基 -S(O2)R を有する化合物を意味する。
【0125】
用語「スルホキシド(sulfoxide)」は、スルフィニル基 -S(O)R を有する化合物を意味する。
【0126】
用語ウレイド(ureido)は、式 -NH-CO-NH2 の尿素基を意味する。
【0127】
式(I)の化合物に関して用語「保護基(protecting group)」は、前記分子中の再生官能基(regenerated functional group)又は他の官能基を攻撃しない、容易に入手可能な試薬によって選択的に除去することができる化学的置換基を指す。適切な保護基は、当技術分野で公知であり、引き続き開発されている。適切な保護基は、例えば、Wutz et al(「Greene's Protective Groups in Organic Synthesis, 第 4 版」Wiley-Interscience, 2007)に見出すことができる。Wutz らによって記載されているように(533-643 頁)、カルボキシル基の保護のための保護基は、ある実施形態において使用される。ある実施形態では、前記保護基は酸処理により除去可能である。限定されるものではないが、保護基の代表的な例には、ベンジル、p-メトキシベンジル(PMB)、tert-ブチル(t-Bu)、メトキシメチル(MOM)、メトキシエトキシメチル(MEM)、メチルチオメチル(MTM)、テトラヒドロピラニル(THP)、テトラヒドロフラニル(THF)、ベンジルオキシメチル(BOM)、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、t-ブチルジメチルシリル(TBDMS)及びトリフェニルメチル(トリチル、Tr)が含まれる。当業者は、保護基を必要とする適切な状況を認識し、特定の状況で使用するために適切な保護基を選択することができるであろう。
【0128】
明細書及び特許請求の範囲全体を通して、所与の化学式又は名称は、すべての互変異性体、同族体及び光学異性体及び立体異性体、並びにそのような異性体及び混合物が存在するラセミ混合物を包含する。
【0129】
本発明のある化合物は、不斉炭素原子(光学的又はキラル中心)又は二重結合を有することがあり;鏡像異性体(enantiomers)、ラセミ体(racemates)、ジアステレオマー(diastereomers)、互変異性体(tautomers)、幾何異性体(geometric isomers)、絶対立体化学的に、(R)- 若しくは (S)- として、又はアミノ酸の D- 若しくは L- として定義されることがある立体異性体(stereoisometric forms)、並びに個々の異性体は本発明の範囲内に包含される。本発明の化合物は、あまりにも不安定で合成及び/又は単離することができないものと当技術分野で知られている化合物を含まない。本発明は、ラセミ体、スカレミック体(scalemic)、及び光学的に純粋な形態にある化合物を含むことを意味する。光学活性な (R)- 及び (S)- 又は D- 及び L- 異性体は、キラルなシントン又はキラル試薬を用いて調製することができ、又は従来の技術を用いて分割することができる。本明細書に記載の化合物がオレフィン結合又は他の幾何学的非対称中心を含む場合、他に特定しない限り、前記化合物は E 及び Z 幾何異性体の両方を含むことが意図される。
【0130】
特に明記しない限り、本明細書に示される構造はまた、前記構造の全ての立体化学的形態(即ち、各不斉中心についての R 及び S 立体配置)を含むことを意味する。したがって、本発明の化合物の単一の立体化学異性体並びに鏡像異性体(enantiomeric)及びジアステレオマーの混合物は、本発明の範囲内である。
【0131】
本発明のある化合物が互変異性体の形態で存在し得ることは、当業者のある者には明らかであり、前記化合物のそのような全ての互変異性体形態は、本発明の範囲内である。本明細書で使用される用語「互変異性体(tautomer)」は、平衡状態で存在し、1 つの異性体形態から別の異性体形態に容易に変換される 2 つ以上の構造異性体のうちの 1 つを意味する。
【0132】
特に明記しない限り、本明細書に示される構造は、1 つ以上の同位体濃縮原子が存在している点においてのみ異なる化合物も含むことを意味する。例えば、重水素若しくはトリチウムによる水素の置換、又は 13C- 若しくは I4C- 富化炭素による炭素の置換を伴う本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。
【0133】
本発明の化合物はまた、そのような化合物を構成する原子の 1 つ以上に、自然にはない割合の原子同位体を含むことがある。例えば、前記化合物は、例えばトリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)又は炭素-14(14C)のような放射性同位元素で放射性標識されても良い。放射性であろうとなかろうと、本発明の化合物の全ての同位体のバリエーションは、本発明の範囲内に包含される。
【0134】
本発明の化合物は、塩として存在しても良い。本発明は、そのような塩を含む。適用可能な塩形態の例には、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、硝酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩(例えば、(+)-酒石酸塩、(-)-酒石酸塩又はラセミ混合物を含むそれらの混合物)、コハク酸塩、安息香酸塩及びグルタミン酸のようなアミノ酸の塩が含まれる。これらの塩は、当業者に公知の方法によって調製することができる。また、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ若しくはマグネシウム塩などの塩基付加塩又は類似の塩も含まれる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含む場合、酸付加塩は、このような化合物の中性形態を、そのまま若しくは適切な不活性溶媒中で、十分な量の所望の酸と接触させる、又はイオン交換によって、得ることができる。許容される酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸一水素(monohydrogencarbonic)、リン酸、リン酸一水素(monohydrogenphosphoric)、リン酸二水素(dihydrogenphosphoric)、硫酸、硫酸一水素(monohydrogensulfuric)、ヨウ化水素酸又は亜リン酸などの無機酸に由来する塩、並びに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などの有機酸に由来する塩が含まれる。また、アルギン酸塩などのアミノ酸の塩、及びグルクロン酸又はガラクツロン酸などの有機酸の塩も含まれる。本発明のある具体的な化合物は、化合物が塩基付加塩又は酸付加塩のいずれかに変換されることを可能にする塩基性官能基及び酸性官能基の両方を含む。
【0135】
前記化合物の中性形態は、前記塩を塩基又は酸と接触させ、親化合物を従来の方法で単離することによって再生することができる。前記化合物の親形態は、極性溶媒への溶解性などのある物理的性質において、様々な塩形態とは異なる。
【0136】
本発明のある化合物は、非溶媒和形態並びに水和形態を含む溶媒和形態で存在することがある。一般に、前記溶媒和形態は、非溶媒和形態と均等であり、本発明の範囲内に包含される。本発明のある化合物は、多結晶又は非晶質形態で存在することがある。一般に、すべての物理的形態は、本発明によって企図される使用と均等であり、本発明の範囲内にあることが意図される。
【0137】
塩形態に加えて、本発明は、プロドラッグ形態である化合物を提供する。本明細書に記載の化合物のプロドラッグは、生理的条件下で容易に化学変化を受けて本発明の化合物を提供する化合物である。さらに、プロドラッグを、生体外環境において化学的又は生化学的方法によって本発明の化合物に変換することができる。例えば、プロドラッグを、適切な酵素又は化学試薬を用いて経皮パッチ・リザーバーに入れた場合に、本発明の化合物にゆっくりと変換するようにしても良い。
【0138】
長年にわたる特許法の慣例に従い、用語「a」、「an」及び「the」は、特許請求の範囲を含む本出願で使用される場合、「1 つ以上(one or more)」を意味する。したがって、例えば、「被験体(a subject)」との記載は、文脈が明らかに反対(例えば、複数の被験体(a plurality of subjects))でない限り、複数の被験体(a plurality of subjects)なども含む。
【0139】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、文脈が排他的であることを求める場合を除いて、用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」は、非排他的な意味で使用される。同様に、用語「含む(include)」及びその文法上の変形は非限定的であることが意図され、リスト内に項目を列挙することは、リストされた項目と置換され得る又はこれに追加され得る他の同様の項目を除外するものではない。
【0140】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的において、他に示さない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される量、大きさ、寸法、割合、形状、剤形、パラメーター、パーセンテージ、量、特徴及び他の数値を表現する全ての数字は、用語「約(about)」がその値、量又は範囲と共に明示的に現れなくても、すべての場合において、「約(about)」という用語によって修飾されると理解されるべきである。したがって、反対のことが示されていない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、正確ではなく及び正確である必要はないが、本明細書に開示される発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて、許容誤差、換算係数、四捨五入、測定誤差など、及び当業者に知られている他の因子を考慮しながら、所望のように近似するものであり及び/又はより大きい若しくはより小さいものである。例えば、値を指す場合、用語「約(about)」は、特定の量から、ある実施形態では± 100 %、ある実施形態では± 50 %、ある実施形態では± 20 %、ある実施形態では± 10 %、ある実施形態では± 5 %、ある実施形態では± 1 %、ある実施形態では± 0.5 %、ある実施形態では± 0.1 %のバリエーションを包含することを意味し、そのようなバリエーションは本発明の方法を実施し、本発明の化合物を使用するのに適切である。
【0141】
さらに、用語「約(about)」は、1 つ以上の数字又は数値範囲と関連して使用される場合、ある範囲内のすべての数値を含むようなすべての数値を意味するものと理解されるべきであり、記載された数値の上及び下の境界を拡張することによってその範囲を変更する。エンドポイントによって数値範囲を記載することは、その範囲内に包含される全ての数、例えば、整数全体、その分数を含み(例えば、1 から 5 を記載することは 1, 2, 3, 4 及び 5 を含み、並びに、それらの分数(例えば 1.5, 2.25, 3.75, 4.1 など)を含む、及びその範囲内の任意の範囲を含む。
【実施例
【0142】
以下に示す実施例は、本明細書で開示されている発明の代表的な実施態様を実施するのに、当業者のある者に指針を提供するために含まれている。本発明及び当業者の一般的なレベルに照らして、当業者であれば、以下の実施例は例示的なものに過ぎず、本明細書で開示されている発明の範囲から逸脱することなく多くの変更、改変、修正を行い得るものとして理解できるであろう。以下の合成の説明及び具体的な実施例は、説明のためにのみ意図されており、他の方法による本発明の化合物の製造方法を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0143】
実施例1
要旨
PSMA を発現する腫瘍のイメージング及び可能な放射線療法のために、キレート化した放射性金属に種々の連結基を介して結合させた PSMA 結合尿素を使用することは、以前にいくつかの特許出願及び刊行物に報告されている(Tykvart ら (2015) Journal of medicinal chemistry 58, 4357-63; Banerjee ら (2015) Journal of nuclear medicine 56, 628-34;Benesova ら (2015) Journal of nuclear medicine 56, 914-20;Weineisen ら (2014) EJNMMI Res 4, 1-15;WO 2009002529 A2;WO 2009070302 A1)。新しいクラスの高親和性結合剤が、p-Br-ベンジル基を有するεアミン位置の尿素リンカーを修飾することによって調製されきている。本発明の化合物の構造を図1に示す。
【0144】
いずれかの特定の理論に拘束されることを望まないが、Lys-Glu 尿素部分のリジンのイプシロンアミノ基を p-Br-ベンジル基で修飾した場合、前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的とする放射性金属をキレート化した Glu- リジン尿素ベースのセラノスティクス(theranostic)薬剤は、PSMA を発現する腫瘍では PSMA に対して高い結合親和性と高い取り込みを示し、前立腺がんの標準的なマウスモデルでは腎臓への低い取り込みを示すものと信じられている。ある実施形態は、即ち 177Lu-1 は、PSMA + PC3 腫瘍を有するマウスについて、約 50 %の寛解という有意な放射線治療効果を示した。
【0145】
実施例2
材料と方法
1 の 化学合成。化合物 1 の合成をスキーム 1 に記載する。ブロモベンズアルデヒド(121.0 mg、0.654 mmol)を、氷冷浴した 5 ml のメタノール中の Boc 保護尿素 4(300.0 mg、0.615 mmol)の撹拌溶液に、ゆっくりと添加し、室温まで温めた。1時間後、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(158.0 mg、2.5 mmol)を加え、反応物を一晩撹拌したままにした。粗反応混合物を蒸発させ、ジクロロメタンに再溶解し、順相シリカ・クロマトグラフィー(95:5、塩化メチレン:メタノール)で精製し、真空中で乾燥して良好な収率で 5 を得た。収率:80 %。ESI-MS:656.56 [M+H]+、実測値:656.5。TSTU(32.6 mg、108 μmol)、Boc-5-アミノ吉草酸(23.5 mg、108 μmol)及び DIPEA(37.7 μL、216 μmol)を 300 μL の DMF に溶解し、室温で攪拌した。1 時間後、化合物 5(71.0 mg、108 μmol)を DMF(各 50 μL)で 3 回リンスをして加えた。前記反応混合物を 4 時間撹拌し、4 ℃で一晩保存した。粗反応混合物を C18 カラムのセミ分取 HPLC により精製した(40 %水(0.1 TFA)/60 % ACN(0.1 TFA)/5 分、60-90 %、20 分以上)。Rt 21 分である。精製画分を合わせ、蒸発させ、高真空下で 10 分間乾燥させた。ESI-MS:572.44 [M+H]+、実測値:572.4。化合物 6 をジクロロメタン(1.5 mL)に溶解し、氷浴で冷却した。平衡化後、TFA(1.5 mL)を添加し、混合物を 3 時間撹拌して、工程中に室温まで温めた。混合物を窒素気流下で乾燥させ 、水に溶解し、凍結乾燥して化合物 7 を 31.8 mg 得た。収率:54 μmol、54 %。40 ℃に平衡化した DMSO(130 μL)中の 6(12.2 mgの TFA 塩)及び DIPEA(15.2 μL、87.0 μmol)の撹拌溶液に、p-SCN-bn-DOTA(12.2 mg、17.7 μmol)を加えた。反応混合物を 40 ℃で 4 時間撹拌し、4 ℃で一晩保存した。反応混合物を逆相 HPLC によって精製した(20 % ACN を 5 分間保持した後、19 分かけて 20-40 %とした)。Rt は約 12 分とした。精製画分を合わせ、回転蒸発させて体積を減少させ、次いで凍結乾燥した。ESI-MS:1138.37 [M+H]+、実測値:1138.5。前記化合物 1 を、勾配法を用いた HPLC によりさらに精製した。前記 HPLC 法は、移動相 88 %水(0.1 % TFA 含有)及び 22 % CH3CN(0.1 % TFA)を 1 から 5 分間、次に 88 %水(0.1 % TFA を含む)及び 12 % CH3CN(0.1 % TFA)を 0 から 5 分間、及び 88 %水から 44 %水及び 12 %アセトニトリルから 56 %アセトニトリルを流速 8 mL/分で 5 から 25 分間を含む勾配法である。
【0146】
2 の 化学合成。この化合物を同じ中間体 7 を用いて合成し、市販の DOTA-NHS エステルとカップリングさせた。ESI-MS:974.86 [M+H]+、実測値:974.5。
【0147】
3 の 化学合成。この化合物を中間体 4 を用いて合成し、市販の Boc-5-アミノ吉草酸及び DOTA-NHS エステルとカップリングさせた。ESI-MS:970.05 [M+H]+、実測値:970.1。
【0148】
177Lu-1 の放射性標識。0.1 N HCl 中の 1.0 μl の 177LuCl3(1 mCi)を、70 μl の NH4OAc 緩衝液(0.2 M、pH 4)に添加し、及び 0.2 M NH4OAc 中で 2 mM の 5 μl になるように添加した。前記混合物の pH は約 4.0 であった。前記混合物を 80 ℃で 1 時間保ち、HPLC で精製した。前記 HPLC 法は、移動相 77 %水(0.1 % TFAを含む)及び 23 % CH3CN(0.1 % TFA)を 1 から 5 分、続いて 5 から 25 分、77 %から 57 %の水及び 23 %から 43 %のアセトニトリル; 25.01 から 30 分、5 %から 5 %の水及び 95 %から 95 %のアセトニトリル、30.01 から 37 分、77 %から 77 %の水及び 23 %から 23 %のアセトニトリルを含む勾配法である。流速:1.0 ml/分;λ:200 nm、及び C8 カラム(25×4.6 mm)、Varian microsob-MV 100-5。放射性標識した 177Lu-1 は 17.1 から 20 分で溶出したが、非標識のキレート剤は 21 から 22 分で溶出した。
【0149】
前記 HPLC 法を、177Lu-2 及び 177Lu-3 を調製するために使用した:前記 HPLC 法は、移動相 88 %水(0.1 % TFA 含有)及び 22 % CH3CN(0.1 % TFA)を 1 から 5 分、続いて 5 から 27 分、88 %から 75 %の水及び 12 %から 25 %のアセトニトリル;27.01 から 32 分、5 %から 5 %の水及び 95 %から 95 %のアセトニトリル、32.01 から 37 分、88 %から 18 %の水及び 12 %から 22 %のアセトニトリルを含む勾配法である。流速:1.0 ml/分;λ:200 nm、C8 カラム(25×4.6 mm)、Varian microsob-MV 100-5。放射性標識 177Lu-2 は 13.1 から 15.0分で溶出され、非標識キレート剤は 16 から 17 分で溶出された.。放射標識 177Lu-3 は 13.1 から 15.0 分で溶出され、非標識キレート剤は 10 から 12 分、18 から 20 分で溶出され、非標識薬剤は 14 から 16 分で溶出した。
【0150】
スキーム1.化合物1の合成
【化36】
a. 4-ブロモベンズアルデヒド、NaBH3CN、MeOH、1 % 酢酸;
b. BocNH(CH2)4CO2H, HATU, DIEA, DMF; c. TFA/CH2Cl2;
d. DOTA-Bn-SCN, DMSO, DIEA
【0151】
実施例3
結果と考察
化学合成及び放射化学合成及び特性評価。文献手順(Tykvart ら (2015) Journal of medicinal Chemistry 58, 4357-63)に従って、Glu-Lys 尿素(2)の p-ブロモベンジル基で修飾されたものを、メタノール中、ナトリウム・シアノボロヒドリドの存在下、p-ブロモベンズアルデヒドで 2 を還元的なアルキル化をすることにより良好な収率で調製し、4 を得た。小さな脂肪族リンカーである Boc-5-アミノ吉草酸を 4 の同じ ε-Lys アミンに結合させ、続いて BOC 基を除去し、市販の DOTA-Bn-SCN と 6 とを結合させ、中程度の収率で 1 を得た。前記化合物 2 は、DOTA-NHS エステルを前記キレート剤として使用し、同じ中間体 6 とカップリングさせることによって合成した。化合物 3 は、p-ブロモベンジル基を全く用いずに対照剤として合成した。3 剤すべてを、80 ℃の酢酸アンモニウム緩衝液中、pH 4 で良好な収率及び純度で 177Lu で放射性標識した。前記新規化合物の結合親和性を表1に示す。p-ブロモ‐ベンジル基で修飾した 1 及び 2 の両方が、3 と比較して高い結合親和性を示した。
【0152】
【表1】
【0153】
細胞結合特性。前記 177Lu 剤を、標準的な同起源細胞株 PSMA+ PC3 PIP 及び PSMA 陰性 PC3 flu 細胞を用いて細胞及び動物でさらに評価した。177Lu-1 及び 177Lu-2 の両方は、177Lu-3 と比較して PSMA+ PC3 細胞においてより高い取り込みを示した。さらに、内部移行について研究をすると、177Lu-1 が 177Lu-3 に比べて 2 倍近く高い内部移行活性を有することが明らかになった。3 種の薬剤はすべて、PSMA 陰性 PC3 flu 細胞で、有意に低い取込みを示した。前記 177Lu-1 を、クローン原性アッセイにおける治療有効性についてさらに評価し、先のリード化合物 SR6(Banerjee ら (2015) Journal of nuclear medicine 56, 628-34)並びに 177Lu-PSMA-617(Benesova ら (2015) Journal of nuclear medicine 56, 914-20)及び 177Lu PSMA-I&T(Weineisen ら (2014) EJNMMI Res 4, 1-15)を含む臨床試験中の薬剤と比較した。177Lu-1 は、PSMA+ PC3 PIP 細胞において、10 μCi 用量を用いて約 100 %の殺細胞効果を生じさせることができたが、PSMA- PC3 flu 細胞に対しては有意な毒性は見られなかった。
【0154】
【表2】
【0155】
生体内分布。177Lu-1 及び 177Lu-2 について in vivo 組織生体内分布の研究を行った。結果を表3及び4に列挙する。PSMA+ PC3 PIP 腫瘍への取込みにおいて、177Lu-1 は、177Lu-2 よりも高い取込み及び保持を示した。有意に 177Lu-2 剤は、177Lu-1 よりも 5 倍低い腎臓取り込みを示し、図3に示すように、本発明の化合物の腫瘍/腎臓を、先のリード 177Lu-SR6, 177Lu-PSMA-617 及び 177Lu-PSMA-I&T のものと比較した。177Lu-2 の PSMA+ PC3 PIP 腫瘍対腎臓の比率は 177Lu-1 より高かった。より高い腫瘍による取込み及び保持を示したので、177Lu-1 について、少数の動物群を用いたパイロット研究において、セラノスティクス(theranostic)な有効性(イメージング及び治療効果)をさらに評価した。
【0156】
【表3】
【0157】
【表4】
【0158】
小動物の SPECT イメージング及び治療効果。図4は、注射後 1 から 8 日にわたる治療についての研究期間における 177Lu-1 の SPECT イメージングを示す。PSMA+ PC3 PIP 腫瘍(サイズ 3-5 mm)を有するマウス(n = 10)に 3 mCi の単回用量を尾静脈注射により投与した。対照として生理食塩水をもう一つ別の群のマウス(n = 10)に投与した。週2回、体重腫瘍サイズを測定してマウスをモニターした。対照群のマウスは、腫瘍の大きさが > 12 mm と超えたため、4 から 8 週間後に安楽死させた。治療群では、50 %のマウスで腫瘍が完全に根絶した。これらのマウスは、2 週間後に、元の体重に回復し、最初にこれを超えた。結果を図5に示す。図6A図6Bは、生理食塩水を用いた対照群と比較した、177Lu-1 の治療有効性(腫瘍体積の減少)を示した。5 匹のマウスに疾患の完全寛解が認められ、5 ヵ月超生存している。
【0159】
要約すると、Lys-Glu-尿素部分のリジンのイプシロン・アミノ基上を p-Br-ベンジル基で修飾した場合、前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的とする放射性金属をキレート化した Glu-リジン尿素ベースのセラノスティック薬剤(theranostic agents)は、PSMA を発現する腫瘍では PSMA に対して高い結合親和性と高い取り込みを示し、前立腺がんの標準的なマウスモデルでは腎臓への低い取り込みを示した。1 つの代表的な化合物 177Lu-1 は、PSMA+ PC3 腫瘍を有するマウスで約 50 %の寛解という有意な放射線治療効果を示した。
【0160】
参考文献
本明細書において言及された全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、本明細書に開示される発明に関係する当業者のレベルを示すものである。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献(例えば、ウェブサイト、データベースなど)は、個々の刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献が、具体的かつ個々に、参照により取込まれることが示されているかのような程度において、その全体が本明細書に参照により取込まれる。多数の特許出願、特許及び他の参考文献が本明細書で参照されているが、そのような参照が、これらの文献のどれもが当該技術分野において共通する一般知識の一部をなすことを認めるものではないことと理解される。本明細書と何れの組込まれた参考文献との間に矛盾がある場合、本明細書(組込まれた参考文献に基づくかもしれない、そのいかなる修正を含む)が優先するものとする。本明細書では、特に明記しない限り、標準的な技術的に受け入れられた用語の意味が用いられる。本明細書では、様々な用語の標準的な略語を使用する。
【0161】
1.International PCT Patent Application Publication No. PCT/US2008/007947 to Pomper, M.G., Ray, S., Mease, R.C., Foss, C. for Labeled inhibitors of prostate specific membrane antigen (PSMA), biological evaluation, and use as imaging agents, published 2008/12/31 (WO 2009/002529 A2);
2.International PCT Patent Application Publication No. PCT/US2008/013158 to Chandran S.S., Ray S., Denmeade S.R., Pomper M.G., Mease R.C. for Prostate specific membrane antigen targeted nanoparticles for therapy of prostate cancer, published 2009/06/04 (WO 2009070302 A1);
3.International PCT Patent Application Publication No. PCT/US2010/028020 to Pomper M.G., Mease R.C.; Ray S., Chen Y. for PSMA-targeting compounds and uses thereof, published 2010/09/23 (WO 2010108125 A2);
4.Banerjee, S. R., Foss, C. A., Pullambhatla, M., Wang, Y., Srinivasan, S., Hobbs, R. F., Baidoo, K. E., Brechbiel, M. W., Nimmagadda, S., Mease, R. C., Sgouros, G., and Pomper, M. G. (2015) Preclinical evaluation of 86Y-labeled inhibitors of prostate-specific membrane antigen for dosimetry estimates. Journal of nuclear medicine 56, 628-34;
5.Benesova, M., Schafer, M., Bauder-Wust, U., Afshar-Oromieh, A., Kratochwil, C., Mier, W., Haberkorn, U., Kopka, K., and Eder, M. (2015) Preclinical Evaluation of a Tailor-Made DOTA-Conjugated PSMA Inhibitor with Optimized Linker Moiety for Imaging and Endoradiotherapy of Prostate Cancer. Journal of nuclear medicine 56, 914-20;
6.Tykvart, J., Schimer, J., Jancarik, A., Barinkova, J., Navratil, V., Starkova, J., Sramkova, K., Konvalinka, J., Majer, P., and Sacha, P. (2015) Design of Highly Potent Urea-Based, Exosite-Binding Inhibitors Selective for Glutamate Carboxypeptidase II. Journal of medicinal chemistry 58, 4357-63;
7.Weineisen, M., Simecek, J., Schottelius, M., Schwaiger, M., and Wester, H.-J. (2014) Synthesis and preclinical evaluation of DOTAGA-conjugated PSMA ligands for functional imaging and endoradiotherapy of prostate cancer. EJNMMI Res 4, 1-15.
【0162】
前述の発明は、理解を明確にするための説明及び実施例によってある程度詳細に記載されているが、当業者には、添付の特許請求の範囲内で、変更及び修正が実施され得ることが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6