(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】高電圧GaN高電子移動度トランジスタ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20220516BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20220516BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20220516BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20220516BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20220516BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20220516BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/06 301F
H01L29/78 301B
H01L29/78 301W
H01L21/20
(21)【出願番号】P 2018553950
(86)(22)【出願日】2017-04-14
(86)【国際出願番号】 US2017027780
(87)【国際公開番号】W WO2017181121
(87)【国際公開日】2017-10-19
【審査請求日】2020-04-13
(32)【優先日】2016-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】310009199
【氏名又は名称】メイコム テクノロジー ソリューションズ ホールディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100207837
【氏名又は名称】小松原 寿美
(74)【代理人】
【識別番号】100214640
【氏名又は名称】立山 千晶
(72)【発明者】
【氏名】ボールズ、ティモシー イー.
(72)【発明者】
【氏名】カールソン、ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】カレタ、アンソニー
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/050740(WO,A1)
【文献】特表2009-503815(JP,A)
【文献】特開2008-244002(JP,A)
【文献】特開2010-118556(JP,A)
【文献】国際公開第2016/014439(WO,A2)
【文献】特表2009-531859(JP,A)
【文献】特開2008-131031(JP,A)
【文献】国際公開第2014/057906(WO,A1)
【文献】特表2013-503483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/338
H01L 29/41
H01L 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電子移動度トランジスタ(HEMT)であって、
バッファ層と、
前記バッファ層上に形成された窒化ガリウム伝導層と、
前記窒化ガリウム伝導層上に形成されたバリア層と、
前記バリア層上に形成されたゲートと、
前記ゲートと前記バリア層との間に形成された酸化ガリウム層と、
ソース及びドレインであって、前記バリア層を通って延びるとともに前記窒化ガリウム伝導層と接触しているソース及びドレインと、
前記ゲートと前記ドレインとの間、及び前記ゲートと前記ソースとの間の領域に形成された第1の絶縁層と、
前記ゲートに電気的に接続され、前記第1の絶縁層上で前記ドレイン及び前記ソースに向かって前記ゲートの縁を越えて延びる第1のゲート接続フィールドプレートと、を含み、
前記バッファ層と前記窒化ガリウム伝導層との合計厚さ
は4.5μmよりも厚く、前記ゲートの側壁
は5度
~60度の間だけ外側に傾斜している、高電子移動度トランジスタ(HEMT)。
【請求項2】
請求項1に記載のHEMTであって、前記ゲートの長さL
gは0.15μm~2μmの間であり、前記HEMTは900ボルト
~1200ボルトの間の逆バイアス電圧に耐えることができる、HEMT。
【請求項3】
前記酸化ガリウム層は
、1nm~5nmの厚さである、請求項1又は2に記載のHEMT。
【請求項4】
前記バリア層上に配置されたGaNから形成されたキャップ層を更に含み、前記酸化ガリウム層は前記キャップ層に形成された酸化物層領域を含み、前記ゲートは前記酸化ガリウム層上に形成される、請求項1~3のいずれか一項に記載のHEMT。
【請求項5】
前記キャップ層の厚さ
は1nm
~30nmの間である、請求項4に記載のHEMT。
【請求項6】
請求項5に記載のHEMTであって、前記ゲートの長さL
gは0.15μm~2μmの間であり、前記HEMTは900ボルト
~1200ボルトの間の逆バイアス電圧に耐えることができる、HEMT。
【請求項7】
前記ドレインに向かう前記第1のゲート接続フィールドプレートの第1の延長部は、前記ソースに向かう前記第1のゲート接続フィールドプレートの第2の延長部よりも長い、請求項1に記載のHEMT。
【請求項8】
前記第2の延長部は、前記第1の延長部の長さ
の10%
~75%の間である、請求項7に記載のHEMT。
【請求項9】
前記第1の延長部は、前記ドレインに向かっ
て0.3μm
~0.8μmの間だけ前記ゲートの第1の縁を越えており、前記第2の延長部は、前記ソースに向かっ
て0.1μm
~0.4μmの間だけ前記ゲートの第2の縁を越えている、請求項7又は8に記載のHEMT。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか一項に記載のHEMTであって、前記ゲートの長さL
gは0.15μm~2μmの間であり、前記HEMTは900ボルト
~1200ボルトの間の逆バイアス電圧に耐えることができる、HEMT。
【請求項11】
前記バリア層は、Alのモル分率
が24%
~29%の間であるAlGaNを含む、請求項1~5又は7~9のいずれか一項に記載のHEMT。
【請求項12】
前記バリア層
は10nm
~50nmの間の厚さを有する、請求項1~5、7~9、又は11のいずれか一項に記載のHEMT。
【請求項13】
前記第1の絶縁層は窒化ケイ素を含み
、20nm
~100nmの間の厚さを有する、請求項1~5、7~9、11、又は12のいずれか一項に記載のHEMT。
【請求項14】
請求項13に記載のHEMTであって、前記ゲートの長さL
gは0.15μm~2μmの間であり、前記HEMTは900ボルト
~1200ボルトの間の逆バイアス電圧に耐えることができる、HEMT。
【請求項15】
前記ゲートは、前記バリア層には物理的に接触するが前記
窒化ガリウム伝導層には物理的に接触しない第1の導電性材料を含む、請求項1~5、7~9、又は11~13のいずれか一項に記載のHEMT。
【請求項16】
前記第1の導電性材料は、以下の群:Ni/Pd/Au/Ti、Ni/Pt/Au/Ti、Ni/Ti/Al/W、Ni/W/Al/W、Ni/Ta/Al/Ta、Ni/Ta/Al/W、Ni/NiO/Al/W、Ni/NiO/Ta/Al/Ta、Ni/NiO/Ta/Al/W、W/Al/W、Ni/WN/Al/W、Ni/NiO/W/Al/W、Ni/NiO/WN/Al/W、WN/Al/W、及びPt/Au/Ti、から選択される多層構造体を含む、請求項15に記載のHEMT。
【請求項17】
前記ソース及び前記ドレインは、前記
窒化ガリウム伝導層に電気的に接触する第2の導電性材料を含む、請求項1~5、7~9、11~13、15、又は16のいずれか一項に記載のHEMT。
【請求項18】
前記第2の導電性材料は、以下の群:Ti/Al/Ni/Au、Ti/Al/W、及びTa/Al/Ta、から選択される多層構造体を含む、請求項17に記載のHEMT。
【請求項19】
前記第1のゲート接続フィールドプレートは、以下の群:Ti/Pt/Au、Al/Cu、及びTiN/Cu、から選択される多層構造体を含む、請求項1~5、7~9、11~13、又は15~18のいずれか一項に記載のHEMT。
【請求項20】
ゲート-ドレイン間距離
は10μm
~20μmの間であり、前記ゲートは前記ドレインよりも前記ソースのより近くに配置される、請求項1~5、7~9、11~13、又は15~19のいずれか一項に記載のHEMT。
【請求項21】
請求項20に記載のHEMTであって、前記ゲートの長さL
gは0.15μm~2μmの間であり、前記HEMTは900ボルト
~1200ボルトの間の逆バイアス電圧に耐えることができる、HEMT。
【請求項22】
前記ゲートに電気的に接続され、かつ第2の絶縁層上で前記ドレイン及び前記ソースに向かって前記第1のゲート接続フィールドプレートの縁を越えて延びる第2のゲート接続フィールドプレートを更に含む、請求項1~5、7~9、11~13、又は15~21のいずれか一項に記載のHEMT。
【請求項23】
前記ゲートと接続されて共通のゲートコンタクトに至る1つ又は複数の追加のゲートと、前記ソースと接続されて共通のソースコンタクトに至る1つ又は複数の追加のソースと、前記ドレインと接続されて共通のドレインコンタクトに至る1つ又は複数の追加のドレインと、を更に含む、請求項1~5、7~9、11~13、又は15~22のいずれか一項に記載のHEMT。
【請求項24】
請求項23に記載のHEMT
は1μm
±20%のゲート長を備え、最高
で1GHz
±20%までの周波数範囲で周辺ゲート長1mm当たり最大
で1アンペア
±20%まで駆動するように構成されているHEMT。
【請求項25】
請求項23に記載のHEMT
は0.5μm
±20%のゲート長を備え、最高
で10GHz
±20%までの周波数範囲で周辺ゲート長1mm当たり最大
で1アンペア
±20%まで駆動するように構成されているHEMT。
【請求項26】
請求項23に記載のHEMT
は0.15μm
±20%のゲート長を備え、最高
で30GHz
±20%までの周波数範囲で周辺ゲート長1mm当たり最大
で1アンペア
±20%まで駆動するように構成されているHEMT。
【請求項27】
導体であって、前記ソースに電気的に接続され、かつ前記ゲート上に延びる導体を含むソース接続フィールドプレートと、
前記ソース接続フィールドプレートと前記ゲートとを分離する第2の絶縁層と、を更に含む、請求項1~5、7~9、11~13、又は15~26のいずれか一項に記載のHEMT。
【請求項28】
前記ソース接続フィールドプレートは、前記第1のゲート接続フィールドプレートを越えて延びる、請求項27に記載のHEMT。
【請求項29】
前記ソース接続フィールドプレートは
、1.5μm
~3.5μmの間の距離だけ前記第1のゲート接続フィールドプレートを越えて延びる、請求項27に記載のHEMT。
【請求項30】
前記ドレインの近傍の前記ソース接続フィールドプレートの縁は、前記ドレインの縁か
ら4μm
~10μmの間にあり得る、請求項28又は29に記載のHEMT。
【請求項31】
前記第2の絶縁層の厚さは
、300nm
~600nmの間である、請求項27~30のいずれか一項に記載のHEMT。
【請求項32】
前記第1の絶縁層の厚さ
は20nm
~100nmの間である、請求項31に記載のHEMT。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、窒化ガリウム材料から形成される高電圧高電子移動度トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム半導体材料は、その望ましい電子特性及び電気光学特性のおかげで、近年、多いに注目を浴びている。窒化ガリウム(GaN)は、可視スペクトルの青色波長領域に対応する約3.4eVの広い直接バンドギャップを有する。GaN及びその合金に基づく発光ダイオード(LED)及びレーザダイオード(LD)が開発されており、市販されている。これらのデバイスは、可視スペクトルの紫色領域から赤色領域までの範囲に渡る可視光を放射することができる。
【0003】
その広いバンドギャップ故に、シリコン及びヒ化ガリウムなどのより一般的な半導体材料と比較すると、窒化ガリウムはアバランシェ降伏に対してより耐性があり、より高い固有の電界強度を有する。更に、窒化ガリウムはワイドバンドギャップ半導体であり、シリコン又はヒ化ガリウムなどの他の半導体と比較すると、より高い温度でその電気的性能を維持することができる。またGaNは、シリコンと比較すると、より高いキャリア飽和速度を有する。更に、GaNはウルツ鉱型結晶構造を有し、硬質材料であり、高い熱伝導性を有し、シリコン、ゲルマニウム、及びヒ化ガリウムなどの他の従来の半導体よりもはるかに高い融点を有する。従って、GaNは高速、高電圧、及び高出力の用途に有用である。例えば、窒化ガリウム材料は、無線周波数(RF)通信、レーダ、及びマイクロ波用途用の半導体増幅器における能動回路部品に有用である。
【0004】
高電子移動度トランジスタ(HEMT:High-electron mobility transistor)は、キャリア輸送のために2次元電子ガス(2DEG:two-dimensional electron gas)を利用する一種の半導体トランジスタである。2DEGは、異なるバンドギャップを有する2つの異なる半導体材料間のヘテロ接合において形成される。ヘテロ接合は、アンドープの半導体内の高密度電子層の形成をもたらす。(不純物として作用する)ドーパントが不足している故に、自由電子は、著しく散乱が低減した状態でアンドープの半導体を通過することができる。従って、HEMTは、非常に高い周波数、例えばテラヘルツ周波数範囲で動作することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
窒化ガリウム材料で高電圧HEMTを形成するための構造及び方法について、説明する。実施態様によっては、HEMTは、異なる材料(例えば、シリコン又は炭化ケイ素)の基板上に堆積された1つ又は複数の窒化ガリウム材料層から形成されてもよい。HEMTは、横方向のソース-ゲート-ドレイン構成に配置されてもよく、実施態様によっては、2000ボルトよりも大きな逆バイアス電圧に耐えることができ、かつ、小さな逆バイアス漏れ電流(例えば、ゲート幅1mm当たり40μA程度)を有し得る。高電圧HEMTは、他の用途の中でもレーダ及びRF通信用途を含む、高周波電力エレクトロニクス及びマイクロ波用途に有用であり得る。
【0006】
幾つかの実施形態は、バッファ層と、バッファ層上に形成された窒化ガリウム伝導層と、窒化ガリウム伝導層上に形成されたバリア層と、伝導層上に形成されたゲート、ソース、及びドレインと、ゲートとドレインとの間及びゲートとソースとの間の領域に形成された絶縁層と、ゲートに電気的に接続され、かつ、絶縁層上でゲートの縁を越えてドレイン及びソースに向かって延びるゲート接続フィールドプレートと、を含む高電子移動度トランジスタ(HEMT)に関し、バッファ層と窒化ガリウム層との合計厚さは約4.5μmよりも厚く、ゲートの側壁は約5度~約60度の間で外側に傾斜している。
【0007】
態様によっては、ゲートの長さLgは長くても2μmであり、HEMTは900ボルト~約1200ボルトの間の逆バイアス電圧に耐えることができる。実施態様によっては、ゲートの長さLgは0.15μm~2μmの間であり、HEMTは900ボルト~約1200ボルトの間の逆バイアス電圧に耐えることができる。
【0008】
幾つかの態様によれば、HEMTは、ゲートとバリア層との間に形成された約10-9m(10オングストローム)~約5×10-9m(50オングストローム)の間の厚さの表面酸化層を更に含んでいてもよい。幾つかの態様によれば、HEMTは、バリア層上に配置されたGaNから形成されたキャップ層を更に含んでいてもよい。キャップ層の厚さは、約1nm~約30nmの間であり得る。ゲートの長さLgは長くても2μmであり得、HEMTは900ボルト~約1200ボルトの間の逆バイアス電圧に耐えることができる。
【0009】
態様によっては、ドレインに向かうゲート接続フィールドプレートの第1の延長部は、ソースに向かうゲート接続フィールドプレートの第2の延長部よりも長い。第1の延長部は、ドレインに向かって約0.3μm~約0.8μmの間であってもよく、第2の延長部は、ソースに向かって約0.1μm~約0.4μmの間である。実施態様によっては、ゲートの長さLgは長くても2μmであり得、HEMTは900ボルト~約1200ボルトの間の逆バイアス電圧に耐えることができる。
【0010】
幾つかの実施態様によれば、バリア層はAlのモル分率が約24%~約29%の間であるAlGaNを含む。バリア層は、厚さが約10nm~約50nmの間であり得る。実施態様によっては、絶縁層は窒化ケイ素を含み、約20nm~約100nmの間の厚さを有する。ゲートの長さLgは長くても1μmであり得、HEMTは900ボルト~約1200ボルトの間の逆バイアス電圧に耐えることができる。
【0011】
実施態様によっては、ゲートは、バリア層には物理的に接触するが伝導層には物理的に接触しない第1の導電性材料を含む。態様によっては、第1の導電性材料は、以下の群:Ni/Pd/Au/Ti、Ni/Pt/Au/Ti、Ni/Ti/Al/W、Ni/W/Al/W、Ni/Ta/Al/Ta、Ni/Ta/Al/W、Ni/NiO/Al/W、Ni/NiO/Ta/Al/Ta、Ni/NiO/Ta/Al/W、W/Al/W、Ni/WN/Al/W、Ni/NiO/W/Al/W、Ni/NiO/WN/Al/W、WN/Al/W、又はPt/Au/Ti、から選択される多層構造体(composition)を含む。
【0012】
幾つかの実施態様によれば、ソース及びドレインは、伝導層に電気的に接触する第2の導電性材料を含む。第2の導電性材料は、以下の群:Ti/Al/Ni/Au、Ti/Al/W、及びTa/Al/Ta、から選択される多層構造体を含んでいてもよい。ゲート接続フィールドプレートは、以下の群:Ti/Pt/Au、Al/Cu、及びTiN/Cu、から選択される多層構造体を含んでいてもよい。ゲートからドレインまでの距離は20μm以下であってもよく、ゲートはドレインに対してよりもソースに対してより近くに配置され得る。ゲートの長さLgは長くても2μmであり得、HEMTは900ボルト~約1200ボルトの間の逆バイアス電圧に耐えることができる。
【0013】
実施態様によっては、HEMTは、ゲートと接続されて共通のゲートコンタクトに至る1つ又は複数の追加のゲートと、ソースと接続されて共通のソースコンタクトに至る1つ又は複数の追加のソースと、ドレインと接続されて共通のドレインコンタクトに至る1つ又は複数の追加のドレインと、を更に含んでいてもよい。そのような実施態様では、HEMTは、最高で約1GHzまでの変調率で最大約1アンペアまで駆動するように構成されてもよい。場合によっては、HEMTは、最高で約10GHzまでの変調率で最大約1アンペアまで駆動するように構成されてもよい。場合によっては、HEMTは、最高で約30GHzまでの変調率で最大約1アンペアまで駆動するように構成されてもよい。
【0014】
幾つかの実施形態は、窒化ガリウム伝導層と、窒化ガリウム伝導層上に形成されたバリア層と、バリア層上に形成されたゲート、ソース、及びドレインと、を含む高電子移動度トランジスタ(HEMT)に関する。HEMTは、ゲートとドレインとの間及びゲートとソースとの間の領域に形成された第1の絶縁層と、バリア層とゲートとの間に形成された酸化ガリウム層と、ゲートに電気的に接続され、かつ、第1の絶縁層上でドレイン及びソースに向かってゲートの縁を越えて延びるゲート接続フィールドプレートと、を更に含み得る。
【0015】
態様によっては、酸化ガリウム層は約1nm~約5nmの間の厚さを有する。態様によっては、HEMTは、バリア層と酸化ガリウム層との間に形成された窒化ガリウムキャップ層を更に含む。窒化ガリウムキャップ層の厚さは、約1nm~約10nmの間であってもよい。
【0016】
実施態様によっては、HEMTは、導体であって、ソースに電気的に接続され、ゲート上に延びる導体を含むソース接続フィールドプレートと、ソース接続フィールドプレートとゲートとを分離する第2の絶縁層とを更に含んでいてもよい。態様によっては、ソース接続フィールドプレートは、ゲート接続フィールドプレートを越えてドレインに向かって約1ミクロン(1μm)~約4ミクロン(4μm)の間の距離だけ延びている。ソース接続フィールドプレートの縁は、ドレインの縁から約4ミクロン(4μm)~約10ミクロン(10μm)の間であり得る。第1の絶縁層の厚さは、約25nm~約200nmの間であり得る。第2の絶縁層の厚さは、約300nm~約600nmの間であり得る。幾つかの態様によれば、前述の実施形態によるHEMTは、約2000ボルトの逆バイアス電圧に耐えるように構成されていてもよい。更に、HEMTは、2000ボルトの逆バイアスで、ゲート幅1ミリメートル当たり40マイクロアンペア以下の逆方向漏れ電流を示すことがある。態様によっては、HEMTは、ゲート幅1ミリメートル当たり1アンペアの順方向電流を扱うように構成される。
【0017】
幾つかの態様によれば、HEMTはソース及びドレインに隣接して形成された電気的分離領域を更に含んでいてもよく、電気的分離領域は、以下の注入イオン種:窒素、リン、ホウ素、及びアルゴン、のうちの1つ又は複数を含む損傷した(damaged)結晶性半導体を含む。
【0018】
実施態様によっては、HEMT内のゲートの長さは、約0.1ミクロン(1μm)~約1.5ミクロン(1.5μm)の間である。態様によっては、ゲートの縁は、約5度~約60度の間、垂直から外側に傾斜している。幾つかの実施態様によれば、ゲート接続フィールドプレートは、約0.3μm~約0.8μmの間だけドレインに向かってゲートの第1の縁を越えて延びており、約0.1μm~約0.4μmの間だけソースに向かってゲートの第2の縁を越えて延びている。態様によっては、ゲートの縁とドレインの縁との間の間隔は、約5ミクロン(5μm)~約20ミクロン(20μm)の間である。場合によっては、ゲート長は約0.15ミクロン(0.15μm)であり、HEMTは、30GHzもの変調率で最大で1アンペア/mmまでの電流を駆動するように構成される。
【0019】
幾つかの実施形態は、窒化ガリウム伝導層と、窒化ガリウム伝導層上に形成されたバリア層と、バリア層上に形成されたゲート、ソース、及びドレインと、を含む高電子移動度トランジスタ(HEMT)に関する。HEMTは、ゲートとドレインとの間及びゲートとソースとの間の領域に形成された第1の絶縁層と、バリア層とゲートとの間に形成された約1nm~約5nmの間の厚さを有するゲート絶縁層と、ゲートに電気的に接続され、かつ、第1の絶縁層上でドレイン及びソースに向かってゲートの縁を越えて延びるゲート接続フィールドプレートと、を更に含んでいてもよい。
【0020】
態様によっては、HEMTは、導体であって、ソースに電気的に接続され、ゲート上に延びる導体を含むソース接続フィールドプレートと、ソース接続フィールドプレートとゲートとを分離する第2の絶縁層とを更に含んでいてもよい。ソース接続フィールドプレートは、ゲート接続フィールドプレートを越えてドレインに向かって約1ミクロン(1μm)~約4ミクロン(4μm)の間の距離だけ延びていてもよい。場合によっては、ソース接続フィールドプレートの縁は、ドレインの縁から約4ミクロン(4μm)~約10ミクロン(10μm)の間である。態様によっては、第1の絶縁層の厚さは、約25nm~約200nmの間である。場合によっては、第2の絶縁層の厚さは、約300nm~約600nmの間である。前述の実施形態によるHEMTは、約2000ボルトの逆バイアス電圧に耐えるように構成され得る。態様によっては、2000ボルトの逆バイアスでの逆方向漏れ電流は、ゲート幅1ミリメートル当たり40マイクロアンペア以下である。幾つかの実施態様によれば、HEMTは、ゲート幅1ミリメートル当たり1アンペアの順方向電流を扱うように構成される。態様によっては、ゲート絶縁層は酸化ガリウムを含む。
【0021】
幾つかの実施形態は、高電子移動度トランジスタ(HEMT)を作製するための方法に関する。方法は、基板上に窒化ガリウム伝導層を形成する動作と、窒化ガリウム伝導層に隣接してバリア層を形成する動作と、伝導層と電気的に接触した、離間した第1のソース及びドレインを形成する動作と、ソースとドレインとの間にバリア層に隣接してゲートを形成する動作と、ゲートとバリア層との間に酸化ガリウム層を形成する動作と、を含んでいてもよい。
【0022】
実施態様によっては、酸化ガリウム層を形成する動作は、ゲートを形成する前に、ゲートの位置において窒化ガリウム層の領域を露出させるようにビアを開けることと、露出された領域をある期間の間、酸素プラズマに曝すことと、を含む。この期間は、約10秒間~約120秒間の間であり得る。HEMTを作製するための方法は、露出された領域を酸素プラズマに曝しながら、約67Pa(0.5Torr)~約400Pa(3Torr)の間の圧力を維持することを更に含んでいてもよい。
【0023】
幾つかの態様によれば、HEMTを作製するための方法は、バリア層とソース及びドレインとの間に窒化ガリウムキャップ層を形成することを更に含んでいてもよく、酸化ガリウム層は、窒化ガリウムキャップ層から形成される。実施態様によっては、方法は、ソースとゲートとの間及びゲートとドレインとの間に延びる第1の絶縁層を形成する動作と、ソース及びドレインに向かってゲートの外側の縁を越えて延びる、ゲートと電気的に接触したゲート接続フィールドプレートを形成する動作と、を更に含んでいてもよい。幾つかの態様によれば、HEMTを作製するための方法は、ゲート及びゲート接続フィールドプレート上に延びる第2の絶縁層を形成することと、ドレインに向かってゲートを越えて延びる、ソースと電気的に接触したソース接続フィールドプレートを形成することと、を更に含んでいてもよい。HEMTを作製するための方法は、伝導層にイオンを注入して伝導層に損傷を与え、ソース及びドレインに隣接して電気的分離領域を形成することを更に含んでいてもよい。
【0024】
前述の装置及び方法の実施形態は、上述した又は以下で更に詳細に説明する態様、特徴、及び動作の任意の適切な組み合わせで実施されてもよい。本教示のこれらの及び他の態様、実施形態、及び特徴は、添付の図面とあわせて以下の説明から、より完全に理解することができる。
【0025】
当業者であれば、本明細書に記載する図は、例示目的のみのためのものであることを理解するであろう。場合によっては、実施形態の様々な態様は、それらの実施形態の理解を容易にするために、誇張して又は拡大して示されていてもよいことを理解されたい。図面は必ずしも一定の縮尺であるとは限らず、それよりも、本教示の原理を示すことに重点が置かれている。図面では、様々な図全体を通じて、同様の参照符号は一般的に、同様の特徴、機能的に類似のかつ/又は構造的に類似の要素を指す。図面が微細加工された複数の回路に関する場合、図面を簡略化するために1つのデバイス及び/又は回路のみが示されてもよい。実際には、多数のデバイス又は回路が、基板の広い領域に渡って、又は基板全体に渡って、並列に製造されてもよい。更に、図示されたデバイス又は回路は、より大きな回路の内部に一体化されてもよい。
【0026】
以降の詳細な説明において図面を参照する場合、「上部(top)」「底部(bottom)」、「上側(upper)」「下側(lower)」「垂直(vertical)」「水平(horizontal)」、「上に(above)」「下に(below)」等の空間的な参照が使用されてもよい。そのような参照は、教示の目的のために使用されるものであり、具現化されたデバイスの絶対的な参照であることを意図したものではない。具現化されたデバイスは、図面で示された向きとは異なることがある向きに任意の適切な態様で空間的に向けられてもよい。図面は、本教示の範囲を制限することを決して意図してはいない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1A】幾つかの実施形態による、窒化ガリウム材料を含みかつゲート接続フィールドプレートを有する高電圧高電子移動度トランジスタ(HEMT)の構造を示す立面図である。
【
図1B】幾つかの実施形態による、GaN HEMTの平面図を示す。
【
図1C】幾つかの実施形態による、高電圧GaN HEMTのための複数のソース、ゲート、及びドレインコンタクトの平面図を示す。
【
図2】幾つかの実施形態による、数値シミュレーションに使用されたゲート接続フィールドプレートを有するデバイスの構造を示す立面図である。
【
図3】幾つかの実施形態による、2つの逆バイアス電位でのGaN伝導層に沿った(
図2で破線の矢印によっておおよそ示された位置及び方向の)計算された電界プロファイルを示す。
【
図4】幾つかの実施形態による、500ボルトの逆バイアス電位での、(ドレインに向かって延びている)2つのゲート接続フィールドプレート長L
1に対する、
図2で示した構造のGaN伝導層に沿った計算された電界プロファイルを示す。
【
図5A】4つの異なるゲート接続フィールドプレート長L
1に対する窒化ケイ素の厚さの関数としてのGaN伝導層内のゲートの縁近傍の第1の電界ピークE
1の値を示す。
【
図5B】4つの異なるフィールドプレート長L
1に対する窒化ケイ素の厚さの関数としてのGaN伝導層内のゲート接続フィールドプレートの縁の下の第2の電界ピークE
2の値を示す。
【
図6】幾つかの実施形態による、傾斜したゲートを有する高電圧HEMTの構造の立面図を示す。
【
図7】HEMTに関連した半導体デバイス構造及び漏れ電流経路を示す。
【
図8A】幾つかの実施形態による、表面状態のパッシベーションを示す。
【
図8B】幾つかの実施形態による、イオン注入による分離領域の形成を示す。
【
図9】幾つかの実施形態による、ゲート堆積前の窒化ガリウム層のO
2処理を含む高電圧HEMTの構造の立面図を示す。
【
図10】幾つかの実施形態による、ゲート形成前の窒化ガリウム表面の酸素プラズマ処理に起因するゲート漏れ電流の減少を示す。
【
図11】幾つかの実施形態による、ソース接続フィールドプレートを含む高電圧HEMTの構造の立面図を示す。
【
図12】幾つかの実施形態による、2つの逆バイアス電位での、ゲート上に2つのフィールドプレートを有するHEMT類似構造に対する、GaN伝導層に沿った計算された電界プロファイルを示す。
【
図13】2つのゲート-ドレイン離隔距離についての、(
図12の模擬された構造の)2つのフィールドプレートの縁の間の距離を変化させたときのブレークダウン電圧への影響を示す。
【
図14】ドレインへの第2のフィールドプレートの侵出がHEMT類似デバイスのブレークダウン電圧の値を低減することを示す。
【
図15】幾つかの実施形態による、幾つかの高電圧HEMTの逆方向ブレークダウン特性を示す。
【
図16A】上に高電圧HEMTを形成することができる多層基板を示す。
【
図16B】幾つかの実施形態による、ソース、ドレイン、ゲート、及びゲート接続フィールドプレートを形成するための動作に関連した構造を示す。
【
図16C】幾つかの実施形態による、ソース、ドレイン、ゲート、及びゲート接続フィールドプレートを形成するための動作に関連した構造を示す。
【
図16D】幾つかの実施形態による、ソース、ドレイン、ゲート、及びゲート接続フィールドプレートを形成するための動作に関連した構造を示す。
【
図16E】幾つかの実施形態による、ソース接続フィールドプレート及び追加のソース及びドレイン金属被覆を形成するための動作に関連した構造を示す。
【
図16F】幾つかの実施形態による、ソース接続フィールドプレート及び追加のソース及びドレイン金属被覆を形成するための動作に関連した構造を示す。
【
図16G】幾つかの実施形態による、ソース接続フィールドプレート及び追加のソース及びドレイン金属被覆を形成するための動作に関連した構造を示す。
【
図17A】幾つかの実施形態による、絶縁誘電層内にゲート、ソース、及びドレインのビアを形成するための動作に関連した構造を示す。
【
図17B】幾つかの実施形態による、絶縁誘電層内にゲート、ソース、及びドレインのビアを形成するための動作に関連した構造を示す。
【
図17C】幾つかの実施形態による、絶縁誘電層内にゲート、ソース、及びドレインのビアを形成するための動作に関連した構造を示す。
【
図17D】幾つかの実施形態による、ゲート、ソース、ドレイン、及びゲート接続フィールドプレートを形成するための動作に関連した構造を示す。
【
図17E】幾つかの実施形態による、ゲート、ソース、ドレイン、及びゲート接続フィールドプレートを形成するための動作に関連した構造を示す。
【
図17F】幾つかの実施形態による、ゲート、ソース、ドレイン、及びゲート接続フィールドプレートを形成するための動作に関連した構造を示す。
【
図17G】第2の絶縁層の堆積に関連した構造を示す。
【
図17H】幾つかの実施形態による、ソース接続フィールドプレートを形成するために第2の絶縁層内にビアを開けるための動作に関連した構造を示す。
【
図17I】幾つかの実施形態による、ソース接続フィールドプレートを形成するために第2の絶縁層内にビアを開けるための動作に関連した構造を示す。
【
図17J】幾つかの実施形態による、ソース接続フィールドプレートの堆積を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図示した実施形態の特徴及び利点は、図面とあわせて以下に記載する詳細な説明から、より明らかになるであろう。
マイクロ波及び無線周波数(RF)システムは、信号の周波数をより高い又はより低い周波数値に変換するように構成された回路を含むことが多い。周波数変換は、信号の無線送受信を含む用途において発生し得る。例えば、データを符号化するために第1のレートで変調された信号は、高周波数搬送波に混合されてデータ送信されることがあり、その後、データを復号するために受信機においてダウンコンバートされてもよい。幾つかの用途は、例えば、無線通信及びレーダ用途向けの、数百メガヘルツからギガヘルツ領域に及ぶ周波数でのRF又はマイクロ波信号の増幅を含んでいてもよい。その高速性のおかげで、高電子移動度トランジスタ(HEMT)は、そのような用途に有用である。これらの用途では大きな電流及び電圧が存在する可能性があるので、HEMTは高い逆バイアス電位に耐えることが望ましい。また、HEMTは、デバイスの性能及び効率を低下させる可能性のある漏れ電流が低いことが望ましい。
【0029】
HEMTは、幾つかの性能指数によって特徴付けることができる。1つの性能指数は、デバイスが扱うことができる電流の量と、順方向にバイアスされたときのオン抵抗(on-state resistance)であり得る。別の性能指数は、HEMTが逆バイアスされたときにトランジスタを通って漏れる逆バイアス電流の量であり得る。別の性能指数は、トランジスタの逆バイアスブレークダウン電圧であり得る。ブレークダウン電圧は、HEMTに損傷を与え得るアバランシェ降伏及び高電流伝導が起きる前の、トランジスタがソースとドレインとの間で耐えることができる逆バイアス電圧の最大量であり得る。別の性能指数は、デバイスが動作することができる高速度又は高周波数である。
【0030】
本発明者らは、RF及びマイクロ波通信システム、レーダ、並びにRF電力切換に関連する用途が、ブレークダウン電圧が非常に高く漏れ電流が低いHEMTから恩恵を受けてもよいことを、認識し理解している。本発明者らは、2000ボルトを超えてもよい逆方向ブレークダウン電圧、ゲート幅1mm当たり40マイクロアンペア程度の逆バイアス漏れ電流、及び1アンペア/mmを超える順方向電流処理能力を有するHEMTを形成するための構造及び方法を考案し開発した。そのようなトランジスタは、現在利用可能なGaN HEMTデバイスよりも高いブレークダウン電圧を有する。これらのトランジスタは、100MHzを超える周波数及び最大で30GHz以上の周波数で使用することができ、かつ高電圧過渡現象に耐えることができ、同高電圧過渡現象はそうしないとデバイスに損傷を与え得る。
【0031】
幾つかの実施形態による、高電圧HEMT構造の一例が
図1Aに示されている。高電圧HEMT100は、横型デバイスとして形成されてもよく、ソース130、ドレイン132、及びドレインとソースとの間の電流の流れを制御する長さL
gのゲート140を含んでいてもよい。幾つかの実施形態によれば、ゲート長L
gは、約0.1ミクロン(0.1μm)~約3.0ミクロン(3.0μm)の間であってもよい。ゲート、ソース、及びドレインは、基板105の同じ側上(例えば、基板の処理面上)に形成され得る。横型HEMT構造は、デバイスのソース又はドレインに接続するための基板貫通ビアを必要としないという利点があり、これにより、デバイスの裏側全体を熱除去のために利用可能にすることができる。片側電気接続により、高電圧HEMTの集積回路(IC)への集積をより容易にすることもできる。
【0032】
高電圧HEMT100は、基板105、バッファ層112、伝導層114、バリア層116、及び少なくとも1つの電気的絶縁誘電層120を含む多層構造を使用して形成されてもよい。幾つかの実施形態は、伝導層114と同じ材料で形成されてもよい半導体キャップ層118を含むことも、含まないこともある。HEMTは、ソースコンタクト160及びドレインコンタクト162を更に含んでいてもよい。
図1Aでは1つのデバイスが示されているが、多数のHEMTデバイスが基板上に形成されてもよい。
【0033】
高電圧HEMT100は、ゲート140に電気的に接続され、かつゲートの縁を越えて延びる少なくとも1つのゲート接続フィールドプレート145を更に含んでいてもよい。幾つかの実施形態によれば、ゲート140はドレイン132よりもソース130の近くに配置されていてもよいが、他の実施形態では、ゲートは中央に位置するか、又はドレインのより近くに配置されていてもよい。ゲート接続フィールドプレート145の第1の延長部147は、ドレイン132に向かってゲート140の縁を越えて第1の距離L1だけ延びていてもよい。ゲート接続フィールドプレート145の第2の延長部143は、ソース130に向かってゲート140の縁を越えて第2の距離L2だけ延びていてもよい。場合によっては、L1>L2である。実施態様によっては、L2はL1の約25%~約75%の間である。実施形態によっては、L2はL1の約10%~約40%の間である。実施形態によっては、第1の延長部の長さL1は、約1ミクロン(1μm)~約3ミクロン(3μm)の間であり得る。ゲート140の縁とドレイン132の最も近い縁とは、ゲート-ドレイン間距離LGDだけ離れていてもよい。幾つかの実施形態によれば、LGDは、約2ミクロン(2μm)~約20ミクロン(20μm)の間である。実施態様によっては、絶縁パッシベーション層(図示せず)が、ゲート接続フィールドプレート145並びにソース及びドレインコンタクト160、162の上に形成されていてもよい。
【0034】
平面図において、
図1B又は
図1Cに示すように、高電圧HEMT100は配置され得る。幾つかの実施形態によれば、ソース、ゲート、及びドレインは、一方向に延びる長さを有し、互いに平行であってもよい。実施形態によっては、高電圧HEMTは、ゲート又はゲート接続フィールドプレート145とゲートコンタクトパッド185との間、ソースコンタクト160とソースコンタクトパッド180との間、及びドレインコンタクト162とドレインコンタクトパッド182との間に延びる導電性リード170(例えば、メタライゼーションレベル(metallization level)期間中にパターン形成された相互接続部)を含んでいてもよい。これらのコンタクトパッドは、図面に描かれているよりもはるかに大きいことがあり、ゲート、ソース、及びドレインコンタクトよりもはるかに大きいことがある。実施形態によっては、ゲート接続フィールドプレート145、導電性リード170、ソースコンタクト160、ドレインコンタクト162、及びコンタクトパッド180、182、185が同じメタライゼーションレベルから形成されてもよい。他の実施形態では、これらの導電要素のうちの少なくとも幾つかは、異なる材料及び堆積物を用いて形成されてもよい。
図1B又は
図1Cにおいて示した構造が、基板全体に渡って幾度も繰り返されてもよい。
図1Cでは、この構造が基板全体に渡って幾度も繰り返される場合、ドレインコンタクト162は、2つの隣接するトランジスタ間で共有されてもよく、ソースコンタクト160は2つの隣接するトランジスタ間で共有されてもよい。
【0035】
更に詳細には、高電圧HEMTは、任意の適切な結晶基板105上に形成されてもよい。例示的な基板としては、シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、及びサファイアが挙げられるがこれらに限定はされない。幾つかの実施形態によれば、基板105はバルク単結晶シリコンを含んでいてもよい。場合によっては、基板は、半導体が前述した半導体基板材料のうちのいずれかである、半導体オンインシュレータ(SOI)基板を含んでいてもよい。基板105は、ウェハ(例えば、Si半導体ウェハ)の形態であってもよく、約50mm~約450mmの間の直径を有し得る。様々な実施形態では、基板の表面は単結晶であり、その結果、III族窒化物(例えば、GaN、AlN、AlGaN、InGaN)又は任意の他の適切な結晶材料、例えば、III-V族、II-VI族、三元化合物(tertiary semiconductor material)、又は四元化合物(quarternary semiconductor material)の半導体材料などを、基板の表面からエピタキシャル成長させてもよい。
【0036】
基板105と伝導層114との間に格子不整合が存在してもよいので、1つ又は複数の遷移層をバッファ層112として基板上に形成して、格子不整合から発生する応力を緩和してもよい。幾つかの実施形態によれば、遷移層はエピタキシャル成長によって形成されてもよい。例えば、複数の遷移層のうちのいずれかが、化学気相成長(CVD:chemical vapor deposition)プロセス又は原子層堆積(ALD:atomic layer deposition)プロセスを使用して形成されてもよい。CVDプロセスは、有機金属化学気相成長法(MOCVD:metal-organic chemical vapor deposition)プロセスを含んでいてもよいが、これに限定はされない。他の堆積プロセスとしては、ハイドライド気相成長法(HVPE:hydride vapor phase epitaxy)又は分子線エピタキシー法(MBE:molecular beam epitaxy)が挙げられ得る。遷移層は、基板105上に直接的に堆積される少なくとも第1の遷移層(例えば、AlN)と、この第1の遷移層上に堆積される1つ又は複数の窒化ガリウム材料層とを含んでいてもよい。遷移層112の例が、例えば、米国特許第7,135,720号明細書及び米国特許第9,064,775号明細書に記載されており、これらの特許は両方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれる。これらの遷移層のうちの幾つかは、組成的に傾斜していてもよい。バッファ層112の総厚さは、約0.5ミクロン(0.5μm)~約4ミクロン(4μm)の間であり得る。
【0037】
本明細書で使用する場合、「窒化ガリウム材料」という用語は、窒化ガリウム(GaN)及びその合金の任意のもの、例えば、特に、窒化アルミニウムガリウム(AlxGa(1-x)N)、窒化インジウムガリウム(InyGa(1-y)N)、窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlxInyGa(1-x-y)N)、ガリウムヒ素リン窒化物(GaAsxPyN(1-x-y))、アルミニウムインジウムガリウムヒ素リン窒化物(AlxInyGa(1-x-y)AsaPbN(1-a-b))などを指す。通常は、ヒ素及び/又はリンは、存在する場合は低濃度(即ち、5重量%未満)である。特定の好ましい実施形態では、窒化ガリウム材料は高濃度のガリウムを有し、アルミニウム及び/又はインジウムは殆ど又は全く含まない。高ガリウム濃度の実施形態では、(x+y)の合計は、幾つかの実施態様では0.4未満であり、幾つかの実施態様では0.2未満であり、幾つかの実施態様では0.1未満であり、他の実施態様では更に小さいことがある。場合によっては、少なくとも1つの窒化ガリウム材料層が、GaNという組成(即ち、x=y=a=b=0)を有することが好ましい。例えば、電流伝導の大部分が発生する活性層は、GaNという組成を有し得る。多層積層体内の窒化ガリウム材料は、n型又はp型にドープされてもよく、又はアンドープであってもよい。適切な窒化ガリウム材料が、米国特許第6,649,287号明細書に記載されており、この明細書はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
幾つかの実施態様は、
図1Aに図示された多層構造の内部に追加の層(図示せず)を含んでいてもよい。例えば、基板105と伝導層114との間に1つ又は複数の追加の層が存在していてもよい。これらの層は、以下の層:アモルファス誘電体(例えば、窒化ケイ素、酸化ケイ素)層、組成傾斜層、及び歪緩和層、の任意の組み合わせを含んでいてもよい。そのような層は、異質材料の堆積から生じる応力を緩和し、かつ/又はデバイスの電気的性能を改善する(例えば、寄生容量又は漏れ電流を低減する)ために、含められてもよい。
【0039】
幾つかの実施形態によれば、伝導層114は窒化ガリウム(GaN)又は任意の適切な窒化ガリウム材料を含んでいてもよい。伝導層114は、エピタキシャル成長によって(例えば、MOCVDプロセス、又は結晶性の窒化ガリウム材料を形成するための任意の適切なプロセスによって)形成されてもよく、バッファ層112の上又は上方に直接的に堆積してもよい。伝導層の厚さは、約0.5ミクロン(0.5μm)~約4ミクロン(4μm)の間であり得る。幾つかの実施形態では、伝導層はアンドープであってもよいが、他の実施形態では(n又はp型の伝導性のいずれかに)低濃度にドープされていてもよい。伝導層114のバンドギャップは、隣接するバリア層116のバンドギャップよりも小さくてもよい。
【0040】
本発明者らは、実施形態によっては、バッファ層112と伝導層114との合計厚さを少なくとも4.5ミクロン(4.5μm)にすることが望ましいことを発見した。これにより、垂直エピタキシャルプロファイルに起因してデバイスの逆バイアスブレークダウン電圧が制限されるのを回避することができる。場合によっては、バッファ層と伝導層との合計厚さは、垂直エピタキシャルプロファイルに起因してデバイスのブレークダウン電圧を制限するのを回避するために、少なくとも4.0ミクロン(4.0μm)である。バッファ層112と伝導層114との合計厚さがこれらの値よりも小さい場合、より大きな垂直漏れ電流及び欠陥が、より低い電圧でのデバイスブレークダウンの一因となる可能性がある。
【0041】
バリア層116は、任意の適切なエピタキシャル成長プロセスを使用して形成されてもよく、実施形態によっては、伝導層114の上又は上方に直接的に堆積されてもよい。バリア層116の厚さは、約10ナノメートル~約50ナノメートルの間であってもよいが、場合によっては他の厚さを用いてもよい。幾つかの実施形態によれば、バリア層116は、任意の適切な窒化ガリウム材料を含んでいてもよく、異なる窒化ガリウム材料の1つ又は複数の層(例えば、AlGaN及びAlN層)を含んでいてもよい。バリア層は、n又はp型伝導性のいずれかのためにドープされてもよく、又はアンドープであってもよい。
【0042】
バリア層116及び伝導層114はヘテロ接合を形成していてもよく、それによって、伝導層とバリア層との間の界面に隣接して伝導層114内に2次元電子ガス(2DEG)150を生成してもよい。2DEG150は、ソース130とドレイン132との間を流れる電流のための高伝導性の経路を提供することができる。幾つかの実施形態によれば、伝導層114はアンドープの窒化ガリウム(GaN)を含み、バリア層は、約20%~約40%の間のAl率(モル分率で)を有するアンドープの窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)を含む。場合によっては、バリア層はAlのモル分率が約24%~約29%の間であるAlGaNを含む。
【0043】
層又は構造の位置を説明するために「上に(on)」「隣接して(adjacent)」又は「上方に(over)」という用語を使用する場合、説明された層と、その層が上に、隣接して、又は上方にあるとして説明される下にある層との間に、1つ又は複数の材料の層が存在してもよく、又は存在しなくてもよい。ある層が、別の層の上に、隣接して、又は上方に「直接的に(directly)」又は「すぐ接して(immediately)」いるとして説明される場合、介在する層は存在しない。ある層が別の層又は基板の「上に(on)」又は「上方に(over)」あるとして説明される場合、層若しくは基板の全体、又は層若しくは基板の一部を覆うことがある。「上に(on)」及び「上方に(over)」という用語は、図に関する説明を容易にするために使用されるものであり、絶対的な方向を参照するものとして意図されるものではない。デバイスは、図面で示した向きとは異なる向きで(例えば、水平軸の周りに90度超だけ回転して)製造及び/又は実装されてもよい。
【0044】
幾つかの実施形態は、バリア層116の上に形成された半導体キャップ層118を含み得る。半導体キャップ層は、伝導層114と同じタイプの半導体材料を含んでいてもよい。キャップ層118は、ドープされていても、されていなくてもよい。実施態様によっては、キャップ層は、アンドープの又はドープされたGaNの層を含んでいてもよい。キャップ層118は、厚さが約1nm~約10nmの間であり得る。キャップ層は、任意の適切なエピタキシャル堆積プロセスによって(例えば、ALD又はCVDプロセスによって)形成されてもよい。幾つかの実施態様は、キャップ層118を含まないことがある。
【0045】
伝導層114、バリア層116、及びキャップ層118は、集積回路級の半導体材料に対しては典型的である、低欠陥密度を有し得る。例えば、各層の欠陥密度は、幾つかの実施態様では、約109cm-2程の高さであるがこれを超えないことがあり、幾つかの実施形態では、約108cm-2程の高さであるがこれを超えないことがある。欠陥密度は、バッファ層112において、又はバッファ層の一部において、より高くてもよい。
【0046】
図1Aでは1つのゲート接続フィールドプレートが示されているが、他の実施形態では2つ以上のゲート接続フィールドプレートが用いられてもよい。ゲートに接続することができる追加のフィールドプレートの例が、「接合部の漏れを低減した高電圧横型GaNオンシリコンショットキーダイオード(High-Voltage Lateral GaN-on-Silicon Schottky Diode with Reduced Junction Leakage)」と題された2016年4月15日に出願された米国仮特許出願第62/323,569号において、アノード接続フィールドプレートとして記載されている。この出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
任意の適切な電気的絶縁層120を使用して、バリア層116又はキャップ層118から1つ又は複数のゲート接続フィールドプレートを分離することができる。例示的な絶縁体材料としては、窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化ランタン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ガリウム、酸化スカンジウム、窒化アルミニウム、及び窒化ハフニウムが挙げられるが、これらに限定はされない。絶縁層は、任意の適切な堆積プロセス、例えば、化学気相成長法、プラズマ化学気相成長法、原子層堆積法、スパッタリング、又は電子ビーム蒸着などによって、形成されてもよい。他の実施形態では、他の堆積プロセスが用いられてもよい。
【0048】
幾つかの実施形態によれば、ゲート140、ソース130、ドレイン132、ゲート接続フィールドプレート145、並びにソース及びドレインコンタクト160、162は、金属、金属シリサイド、金属合金、複数の金属層、又は高濃度にドープされたアモルファス半導体から形成されてもよい。実施態様によっては、ゲート、ソース、ドレイン、ゲート接続フィールドプレート、及びコンタクトのうちのいずれかが、以下の金属及び/又は任意の適切な組み合わせの金属合金:チタン、ニッケル、クロム、プラチナ、パラジウム、オスミウム、アルミニウム、金、タングステン、レニウム、タンタル、及びチタンとタングステンの合金、の1つ又は複数の層を含んでいてもよい。場合によっては、以下のシリサイド(ケイ素化合物):プラチナシリサイド、タングステンシリサイド、ニッケルシリサイド、コバルトシリサイド、チタンシリサイド、モリブデンシリサイド、及びタンタルシリサイド、のうちの1つ又は複数が用いられてもよい。ゲート、ソース、ドレイン、及びフィールドプレート素子のいずれかが、物理的堆積プロセス(例えば、電子ビーム堆積、スパッタリング、又はめっきプロセス)によって形成されてもよい。ゲート、ソース、及び/又はドレインの厚さは、約20ナノメートル~約200ナノメートルの間であってもよいが、場合によっては他の厚さを用いることもできる。ゲート接続フィールドプレート145の厚さは、約100nm~約1.5ミクロン(1.5μm)の間であってもよい。ソース及び/又はドレインコンタクト160、162の厚さは、約200nm~約2ミクロン(2μm)の間であってもよい。
【0049】
実施形態によっては、ゲート140、ソース130、ドレイン132、及びゲート接続フィールドプレート材料145は、異なる材料組成から形成されてもよい。例えば、ソース130及びドレイン132は、Ti/Al/Ni/Au、Ti/Al/W、又はTa/Al/Taなどの多層構造を含んでいてもよいが、これらに限定はされない。ゲート140は、Ni/Pd/Au/Ti、Ni/Pt/Au/Ti、Ni/Ti/Al/W、Ni/W/Al/W、Ni/Ta/Al/Ta、Ni/Ta/Al/W、Ni/NiO/Al/W、Ni/NiO/Ta/Al/Ta、Ni/NiO/Ta/Al/W、W/Al/W、Ni/WN/Al/W、Ni/NiO/W/Al/W、Ni/NiO/WN/Al/W、WN/Al/W、又はPt/Au/Ti組成物などの多層構造を含んでいてもよいが、これらに限定はされない。ゲート接続フィールドプレート145は、Ti/Pt/Au、Al/Cu、又はTiN/Cu組成物を含んでいてもよいが、これらに限定はされない。
【0050】
実施態様によっては、1つ又は複数のHEMTの周辺に分離領域115を形成して、HEMTへの又はHEMTから隣接する回路素子への漏れ電流の流入又は流出を防止し得る。分離領域は、幾つかの場合では、浅いトレンチ分離構造(例えば、酸化物又は他の絶縁体で充填されたトレンチ)を含んでいてもよく、又は他の実施形態では、損傷した結晶性半導体の領域を含んでいてもよい。本発明者らは、イオン注入(例えば、窒素、アルゴン、ホウ素、又はリンの注入)を用いて結晶格子構造に損傷を与えることにより、窒化ガリウム材料内に効果的な分離領域を形成することができることを、認識し理解している。実施形態によっては、複数の異なるエネルギーで周辺領域に窒素を注入することにより、1つ又は複数のHEMTの周辺に分離領域を形成してもよい。異なる注入エネルギーは、HEMTの周囲の損傷領域を、バリア層116(又は、存在する場合にはキャップ層)の上部から少なくとも100nmの深さまで延ばすために使用される。イオン注入によって分離領域115を形成することは、HEMTの周囲にフィールド酸化物を形成することに関連した処理工程よりも簡単であり得る。
【0051】
高電圧HEMTに関連した幾つかの追加の寸法があり得る。実施形態によっては、ゲート幅W
g(
図1Bを参照)は、約10ミクロン(10μm)~約1000ミクロン(1000μm)の間であってもよく、デバイスによってはより広い幅が用いられてもよい。ソース及びドレインの長さL
cは、約1ミクロン(1μm)~約10ミクロン(10μm)の間であってもよい。ゲート140とソース130との間の距離は、約0.5ミクロン(0.5μm)~約5ミクロン(5μm)の間であってもよい。
【0052】
1つ又は少数のHEMT構造のみが図面に示されているが、基板105上には多数のHEMT構造が平行に製造されていてもよい。例えば、基板105は半導体ウェハを含んでいてもよく、数百、数千、又は数百万の説明したHEMT構造が半導体ウェハ上に製造されてもよい。単一のHEMTチップによってより大きな電流を扱うことができるように、幾つかのHEMTが、共通のゲートコンタクトパッド(並びにソース及びドレインコンタクトパッド)にダイ上で一緒に接続されていてもよく、例えば
図1Cに示すように、別個のHEMTデバイスの複数のゲート、ソース、及びドレインを含んでいてもよい。
【0053】
本発明者らは、ゲート140、ゲート接続フィールドプレート145、絶縁層120、ゲート-ドレイン間隔L
GD、及びドレインに向かうフィールドプレートの縁の延長部L
1に関係する構造が、高電圧HEMTのための逆バイアスブレークダウン電圧を決定的に決定することができることを、認識し理解している。本発明者らは、異なるHEMT類似構造における電界の大きさを計算するために実行された幾つかの数値シミュレーションを考慮して、かつ、製造され試験された異なるデバイスを考慮して、デバイスのブレークダウン特性へのこれらの特徴の影響を認識している。シミュレーションで使用された例示的な構造及びシミュレーションの結果について、
図2~
図5Bに関連して以下で説明する。
【0054】
図2は、様々なバイアス条件の下でのデバイス内部の電界を評価するための数値シミュレーションの第1の組のために使用された、単一のゲート接続フィールドプレート145を有するHEMT類似構造200を示す。シミュレーションで使用された構造200は、ショットキーダイオードを含んでおり、この中では、アノードはHEMTのゲートに類似しており、アノードの両側に間隔を空けて配置された2つのカソードは、ソース及びドレインに類似していた。このデバイスは、HEMTに構造的に類似しており、デバイス内部の電界のおおよその理解をもたらした。模擬構造200は、GaN伝導層114、AlGaNバリア層116、ゲート140、ソース130、ドレイン132、及びゲート接続フィールドプレート145を含んでいた。電界の初期評価のためのシミュレーションを簡略化するために、デバイスは、ソース130とドレイン132(カソード)との間の中間にゲート(アノード)を配し、ソース及びドレインに向かって等しいゲート接続フィールドプレート延長部L
1を有して、対称的に構成された。
【0055】
電気的絶縁層120(窒化ケイ素)がAlGaNバリア層の上に含められ、パッシベーション層190(窒化ケイ素)がデバイスの上に含められた。シミュレーションのために、AlGaNバリア層116とGaN伝導層との界面における表面状態ドナー密度は、約5×1012/cm2であった。この表面状態密度は、デバイス内でトランジスタの挙動をもたらすのに十分な高さであることが分かった。より低い密度(5×1012/cm2)では、トランジスタの挙動は観察されなかった。
【0056】
シミュレーションの第1の組のために、ゲート長L
gは約1ミクロン(1μm)に固定され、ゲート-ドレイン間距離L
GDは10ミクロン(10μm)に固定された。これらのシミュレーションのために、ゲート接続フィールドプレートの延長部L
1は、約5ミクロン(5μm)であった。第1の場合では、ドレインとゲートとの間に100Vの逆バイアスが印加された。第2の場合では、ドレインとゲートとの間に500Vの逆バイアスが印加された。逆バイアスは、ドレインとゲートとの間の大きな電位降下を実質的に生成し、逆バイアスされたHEMTの状態を模擬した。それぞれの場合についての電界のプロットを、
図3に示す。
【0057】
図3のプロットは、
図2で破線の矢印によって示される、伝導層114内の導電2DEGの領域に沿って決定された電界の合計値を示す。電界値は、対称構造の片側についてプロットされる。各プロットは、
図2で伝導層114内の領域210として示される、ゲート140のドレイン側の縁の下に現れる、電界における第1のピークE
1を示している。第2のピークE
2が、領域220として示される、ゲート接続フィールドプレート145の縁の下の電界中に現れる。他の逆バイアス電位もシミュレートされた。第1の電界ピークE
1は、逆バイアスが増加すると2×10
6V/cm未満の値に飽和する傾向があることが観察された。第2の電界ピークE
2は、逆バイスが増加するにつれて、3×10
6V/cmを超えて値が増加する。伝導層は約5×10
6V/cmの固有の電界強度(field)を有するGaNを含んでいるので、この実施形態によれば、HEMTに印加される逆バイアス電位は、ブレークダウンが観察される前に更に(少なくとも800Vまで)増加され得る。
【0058】
本発明者らは、ゲート接続フィールドプレート145が伝導層内で電界を広げ、ゲート140の縁に形成される第1の電界ピークE1を抑制するのに役立つことができることを、認識し理解している。ゲート接続フィールドプレート145無しでは、第1の電界ピークE1は、逆バイアスが800Vになるかなり前に、ブレークダウン値まで上昇するであろう。
【0059】
延長部の長さL
1を変更することの影響を評価するために、追加のシミュレーションを実行した。これらのシミュレーションの結果を
図4に示す。これらのシミュレーションのために、ドレインとソースとの間に500Vの逆バイアスが印加された。これらのシミュレーションでは、ゲート接続フィールドプレートの延長部の長さL
1は、1μmから7.5μmまで変えられた。
図4で破線として示した第1のシミュレーションでは、ドレイン132に向かって延びるゲート接続フィールドプレートの外側の縁は、ゲート140の外側の縁を約1μm越えて位置していた。この場合には、電界の第1のピークE
1は、3×10
6V/cmのわずかに下であり、第2のピークE
2は、3×10
6V/cmを超えていた。シミュレートされた他の延長部の長さL
1は、2.5μm、5μm、及び7.5μmを含んでいた。L
1が増加すると第1の電界ピークE
1が低下することが観察されたものの、ゲート接続フィールドプレートの延長部の長さを増加させても、第2の電界ピークE
2の大きさには殆ど影響がないことが分かった。例えば、実線で示す4番目の試行では、フィールドプレート延長部の長さは7.5μmであり、第1の電界ピークの値は減少したが、第2の電界ピークE
2は、3×10
6V/cmのわずかに上という、ほぼ同じ値のままであった。
【0060】
絶縁層120の厚さt
1の変化に起因した、電界ピークE
1及びE
2の大きさの変化を評価するために、
図2で示した構造について、更なるシミュレーションを実行した。これらのシミュレーションにおいては、フィールドプレート延長部の長さL
1も変化させた。これらのシミュレーションでは、長さL
gは1μmであり、ゲートからドレインまでの距離L
GDは10μmであった。また、各場合について、ドレインとソースとの間に500Vの逆バイアスが印加された。絶縁層120は、窒化ケイ素を含んでいた。
図5A及び
図5Bに、観察された電界ピークの変化をプロットしている。
【0061】
図5Aでは、4つの異なるフィールドプレート延長部長さL
1について、(ゲートの縁における)第1の電界ピークE
1の値を、絶縁層厚さt
1の関数としてプロットしている。0.5μmのフィールドプレート延長部長さについては、第1の線510が観察された。第2の線520は、1μmのフィールドプレート延長部長さに対応する。第3の線530及び第4の線540は、それぞれ2.5μm及び7.5μmのフィールドプレート延長部長さに対応する。これらのプロットから分かるように、第1の電界ピークE
1の大きさは、絶縁層120の厚さが減少するにつれて減少する。更に、第1の電界ピークE
1の大きさは、フィールドプレートの延長部の長さL
1が増加するにつれて減少する。
【0062】
図5Bは、
図5Aのグラフについて試行されたのと同じフィールドプレートの延長部長さについて、絶縁層厚さt
1の関数として、(フィールドプレートの縁における)第2の電界ピークE
2のプロットを示す。第2のピークE
2に関しては、
図4に示したシミュレーション結果について観察されたように、フィールドプレートの延長部の長さL
1は、第2の電界ピークの値に殆ど影響を与えていない。しかしながら、第2の電界ピークE
2の値は、絶縁層120の厚さt
1が増加するにつれて減少する。これは、
図5Aにおいて観察された傾向とは反対の傾向である。これらの結果は、単一のゲート接続フィールドプレートの設計に対しては、絶縁層の厚さは約100nm~約300nmの間の範囲内にあることが好ましいことを示唆している。これらの結果はまた、ゲート接続フィールドプレート145を少なくとも1ミクロンだけ外側のゲート縁を越えて延在させることが有益であるが、約3ミクロン(3μm)を超える延長部には殆ど付加的な利益がないことを示している。これらのシミュレーションはショットキーダイオードについて実行されたので、上記で観察された好ましい距離は、HEMTに対してはわずかに異なることがあり得る。
【0063】
ここで
図6を参照すると、本発明者らは、ゲートの縁141及び/又はゲート接続フィールドプレートの縁146を傾斜させることにより、逆バイアスブレークダウンに対するHEMTの抵抗を更に増加させることができることを、更に認識し理解している。傾斜したプロファイルは、ゲート及び/又はゲート接続フィールドプレートのより低い角部における電界の集中を低減することができる。ゲートの縁に関しては、傾斜により、ゲートの縁の近傍ではより薄い誘電体厚さt
1(
図5Aで、E
1を低減するのに有益であるとして示された)を、フィールドプレートの縁の下ではより厚い誘電体(
図5Bで、E
2を低減するのに有益であるとして示された)を、提供することができる。実施形態によっては、ゲート及び/又はゲート接続フィールドプレートの縁の外側への傾斜は、図面に示されるように(例えば、ゲートの上部がゲートの底部よりも広くなっている)、垂直から約5度~約60度の間であり得る。
【0064】
フロートゾーンシリコンウェハ上に異なる設計の多数のHEMTデバイスを作製した。幾つかのデバイスはゲート接続フィールドプレート145を含んでおり、比較のために、幾つかのデバイスはフィールドプレート145を含んでいなかった。全てのデバイスにおいて、ゲート長Lgは約1ミクロン(1μm)であった。ゲート-ドレイン間隔LGDは、デバイスに渡って、約5ミクロン(5μm)から20ミクロン(20μm)まで変化した。ゲート接続フィールドプレートを有するデバイスについては、ドレイン側延長部長さL1は、デバイスの第1の組については約1.5ミクロン(1.5μm)であり、デバイスの第2の組については約3.0ミクロン(3.0μm)であった。バッファ層214の厚さは、約2.6ミクロン(2.6μm)であった。バリア層の厚さは約18nmであり、(モル分率で)27%のAl組成を有していた。
【0065】
ゲートのみを有しゲート接続フィールドプレートを有さずに作製されたデバイスについては、逆バイアスブレークダウン電圧VBは、ウェハに渡る複数のデバイス間で、変化することが分かった。これらのデバイスについては、LGDは約20ミクロン(20μm)であった。逆ブレークダウン電圧値VBは、100ボルトから1100ボルトの高さにまで及んだ。
【0066】
ゲート接続フィールドプレートを含んだHEMTについては、ブレークダウン電圧のばらつきは、デバイス間で大幅に低減した。L1≒1.5ミクロン(1.5μm)であるデバイスの第1の組については、VBは約900ボルトから少なくとも1200ボルトまでに及んだ。なお1200ボルトは、テスターの限界であった。L1≒3.0ミクロン(3.0μm)であるデバイスの第2の組については、全ての測定されたデバイスに対するVBは、少なくとも1200ボルトであった。
【0067】
上述したように、HEMTの性能指数は、動作時にHEMT内を流れる漏れ電流の量である。理想的には、デバイスが「オフ」状態にバイアスされているときに、HEMTがソース又はゲートへの電流の流れを完全に阻止することが望ましい。オフ状態にバイアスされると、ゲート140は負の電位(例えば、-5V~-10Vの間)になり、ドレインは正の電位になることがある。そのようなバイアス構成は、ドレインとゲートとの間に効果的に「逆バイアス」を印加する。動作中の幾つかの場合では、逆バイアスは数百ボルト、又は更には数千ボルトにまでのぼることがある。そのような高いバイアスは、デバイスにおける又はHEMTを内部で使用している機器における電力損失又は他の悪影響の一因となり得る漏れ電流につながることがある。
【0068】
半導体HEMT内の漏れ電流は、幾つかの異なる原因に起因していることがある。これらの原因のうちの幾つかを
図7に示す。場合によっては、表面状態720及び/又はトラップ725が、漏れ電流の経路を提供し得る。トラップは、異なる半導体層の間の境界に形成される界面欠陥から生じることがある。場合によっては、漏れ電流は、2DEG150か、又は異なる半導体層間の境界に形成されてもよい寄生チャネルを介して、オーミックコンタクト130aと130bとの間に(例えば、ソース130とドレイン132との間に)流れることがある。デバイスによっては、漏れ電流が、(例えば、
図7に示す経路710に沿って)オーミックコンタクトの間を垂直方向に及び横方向に流れることがある。例えば、漏れ電流は、一方のオーミックコンタクト130bから1つ又は複数の窒化ガリウム層及びバッファ層112を通って基板105まで垂直に流れ、基板に沿って横方向に流れ、次いで、第2のオーミックコンタクト130aまで垂直に流れることがある。場合によっては、オーミックコンタクト130a及び130bは、ダイ上で互いに隣接している異なるデバイスのオーミックコンタクトであり得る。
【0069】
漏れ電流を低減するための異なるアプローチが試された。デバイスによっては、オーミックコンタクトの分離を助けるためにメサが形成された。例えば、表面状態及び/又はトラッピング状態を介した、及びオーミックコンタクト間(例えば、隣接するデバイス同士のコンタクト又は他のデバイスのコンタクトの間)の2DEGを介した望ましくない電流を低減するために、非活性領域内でオーミックコンタクトの周りに又はオーミックコンタクトに隣接してトレンチをエッチングした。本発明者らは、メサの形成は、漏れ電流を有意に減少はさせず、場合によっては、期せずして漏れ電流を増加させたことを発見した。漏れ電流の増加は、メサを形成するために使用されたエッチング処理による、より多くの欠陥状態及び表面状態の発生に起因するものと考えられた。
【0070】
デバイスによっては、
図8Aに示すように、オーミックコンタクト130a、130b(ソース及びドレインコンタクトなど)の周囲の領域に窒化ケイ素パッシベーション層810が形成されてもよい。パッシベーション層は、表面状態720を不動態化し、表面状態電流に起因する漏れ電流の成分を大幅に低減することができる。本発明者らは、表面状態を不動態化し漏れ電流を低減する上で、窒化ケイ素は酸化物材料よりも有効であることを発見した。
【0071】
デバイスによっては、パッシベーション層810の代わりに、又はパッシベーション層810に加えて、デバイスの非活性領域においてイオン注入を使用することができる。
図8Bに示すように、イオン注入は半導体層の内部に電気的分離領域115を形成することができる。イオン注入は、結晶構造に損傷を与え、それによって漏れ電流への抵抗を高めることができる。
【0072】
分離領域115として異なるHEMTデバイスに幾つかの異なるイオン種(ホウ素、窒素、及びリン)を注入して、漏れ電流を低減する効果を評価した。本発明者らは、異なるイオン種の中でも、窒素の注入が、漏れ電流の最も大幅な低減をもたらすことを発見した。更に、損傷を伝導層114にまで延ばすように、複数の異なるエネルギーで窒素を注入すると、漏れ電流のより大きな低下を得ることができる。幾つかの実施形態によれば、キャップ層118の上部表面の下に、又はキャップ層が用いられていない場合にはバリア層116の上部表面の下に約100nmの深さまで窒素を注入するように、2つ以上の異なるエネルギーで窒素が注入されてもよい。場合によっては、注入の深さは、例えば幾つかの実施形態では最大で200nmまで、また幾つかの実施形態では最大で500nmまでと、より深くてもよい。
【0073】
表面のパッシベーション及びイオン注入は逆バイアス漏れ電流の有用な減少をもたらしたものの、本発明者らは意外にも、漏れ電流の最も大幅な減少は、ゲート140の堆積の前に前処理プロセスを使用する場合に得られることを発見した。従来のゲートパターニングでは、絶縁層120(例えば、
図9を参照)をエッチングして、下にあるバリア層116又はキャップ層118をゲート構造のために露出させることがある。次いで、露出したAlGaN又は窒化ガリウムキャップ層と電気的に接してゲートを堆積させることがある。本発明者らは、ゲートを堆積させる前に、露出した層(バリア層又はキャップ層のいずれか)を酸素プラズマに曝すことにより、窒化ガリウムHEMTにおいてゲートへの逆バイアス漏れ電流を大幅に低減することができることを発見した。実施形態によっては、露出したキャップ層又はバリア層は、約67Pa(0.5Torr)~約400Pa(3Torr)の間の圧力、及び約0.3kW~約2kWの間の印加電力を有するO
2プラズマに曝される。幾つかの実施形態によれば、処理時間は約10秒間~約2分間の間であり得る。実施形態によっては、圧力は約30秒間の持続時間の間に約1.0kWの電力を用いて約200Pa(1.5Torr)である。
図9のHEMT900を参照すると、O
2プラズマ処理は、後で堆積されるゲート140の下に薄い酸化ガリウム層910を形成するものと考えられる。酸化ガリウム層は、厚さが約10
-9m(10オングストローム)~約5×10
-9m(50オングストローム)の間であり得る。この薄い酸化物層は、逆バイアス漏れ電流を大幅に低減する。
【0074】
場合によっては、他のガスをO2プラズマ処理に含めて、露出した表面の不動態化を助けることがある。他のガスとしては、窒素、水素、アルゴン、及びフォーミング・ガス(forming gas)(約5%の水素を有する水素と窒素の混合ガス)が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0075】
図9に示したデバイスは、O
2プラズマ前処理を利用していないデバイスよりも、高電圧ブレークダウンに対してより高い抵抗を示すことがある。幾つかの実施形態によれば、HEMTは、ゲート140とキャップ層118又はバリア層116との間に形成された薄い酸化ガリウム層910を含んでいてもよい。ゲート140は、オフセットされ、ドレイン132よりもソース130のより近くに配置されてもよい。更に、ソースに向かうフィールドプレートの延長部は、ドレインに向かうフィールドプレートの延長部よりも短くてもよい。例えば、L
2は約0.1L
1~0.7L
1の間であり得る。
【0076】
O
2プラズマ前処理に起因する逆バイアス漏れ電流の減少の測定結果を
図10に示す。60個超のHEMTマルチゲートデバイスが試験され、これらのデバイスでは、窒化物層120を開き、ゲート140を形成するために従来の技術が使用された。ゲート幅W
g(周辺ゲート長とも呼ばれる)は、約250ミクロン(250μm)であった。幾つかの異なるゲート長が試験された。ゲート-ドレイン長L
GDは、試験されたデバイスについては約4.4ミクロン(4.4μm)であった。これらのデバイスについての例示的な漏れ電流曲線が、グラフの上側の線1010としてプロットされている。また、60個超の類似のデバイスも試験されたが、これらのデバイスの作製においては、ゲートを堆積させる前に、下になる窒化ガリウム表面を前処理するためにO
2プラズマを使用した。これらのデバイスについての対応する例示的な漏れ電流曲線が、グラフの下側の線1020としてプロットされている。全ての測定について、HEMTデバイスは「オフ」状態でバイアスされ、逆バイアス電圧(水平軸で示す)がドレインとソースとの間に印加された。ゲートを通って戻る漏れ電流が測定された。
【0077】
ゲートを形成するために従来の処理が用いられたデバイスの第1のグループでは、ゲート漏れ電流は、約20ボルトを超える逆バイアス値で、1mA程度の値に達する。ゲートの堆積の前にO2プラズマ処理が使用されたデバイスの第2のグループでは、ゲート漏れ電流は、約20ボルトを超える逆バイアス値で、10μA程度の値に達する。この値は、周辺ゲート長1mm当たり約40μAの漏れ電流に相当する。O2前処理に起因する漏れ電流の減少は、約100倍であった。漏れ電流の大幅な減少は、容易に実行可能な単一の追加の処理工程に対して得られる。
【0078】
薄い酸化ガリウムは単一の処理工程で容易に形成することができるが、他の実施形態では、他の処理を使用して、他の薄い酸化物層又は窒化物層を形成してもよい。例えば、原子層堆積プロセスを使用して、ゲートの位置に薄い窒化物層又は酸化物層(例えば、厚さは1nm~5nmの間)を形成することができる。絶縁層120に関連して説明した上述の絶縁層材料のうちのいずれかを、この薄い窒化物層又は酸化物層のために使用することができる。
【0079】
本発明者らは、HEMT内でバイアス電界を広げるのを助け、高電圧ブレークダウンに対するデイバスの抵抗を高めるための、追加の構造を考案した。
図11を参照すると、HEMT内にソース接続フィールドプレート1140を形成してデバイスのソース130に電気的に接続させ、ドレイン132に向かってゲート140の上方でゲート140を越えて延在させることができる。ソース接続フィールドプレート1140は、ゲート接続フィールドプレートがデバイスに含まれる場合には、ゲート接続フィールドプレート145の上方でゲート接続フィールドプレート145を越えて延びることもある。ソース接続フィールドプレートは、ゲート接続フィールドプレートの縁を距離L
3だけ越えてデバイスのドレインに向かって延びていてもよい。ソース接続フィールドプレートは、ゲート又はゲート接続フィールドプレートを形成するために使用される上述した導電性材料のうちのいずれかから形成されてもよい。ソース接続フィールドプレート1140を下にあるゲート及び/又はゲート接続フィールドプレートから分離させるために、電気的絶縁層1120(例えば、窒化物層又は酸化物層)を堆積させてもよい。
【0080】
ゲート140上に形成された2つのフィールドプレートを有するHEMT類似構造の窒化ガリウム伝導層における電界の値を評価するために、シミュレーションを実行した。シミュレーションは、ショットキーダイオードと関係しており、2つのフィールドプレートがダイオードのアノード(HEMTにおけるゲート構造に類似している)に電気的に接続された。シミュレーションは、
図11に示したHEMT構造について定性的な理解をもたらした。
【0081】
シミュレーションでは、長さL
gは10μmに固定され、ゲートの縁からドレインの縁までの距離L
GDも、10μmに固定された。パッシベーション層(
図11には図示せず)がデバイスの上に含められ、第1の絶縁層120の厚さは50nmに固定された。ゲート接続フィールドプレート145の延長部長さL
1は、2.5μmに固定された。
【0082】
2つの異なる逆バイアス電位について、2DEG150の近傍で窒化ガリウム伝導層114に沿って計算された電界値の例を
図12に示す。第1のシミュレーションでは逆バイアスは100Vであり、窒化ガリウム伝導層114に沿った電界値が破線1210として示されている。第2のシミュレーションでは、逆バイアスは500Vであり、電界値は実線1220として示される。いずれの場合でも、ゲートとドレインとの間の窒化ガリウム伝導層において、電界の3つのピークが観察された。第1のピークE
1は、模擬された構造において約5μmの地点に位置するゲートの外側の縁(
図11では領域210として示される)に対応する。第2のピークE
2は、(領域220として示される)第1のゲート接続フィールドプレート145の外側の縁の下に現れる。第3のピークE
3は、(領域230として示される)第2のフィールドプレートの外側の縁の下に現れる。単一のフィールドプレート設計の場合と同様に、第1の電界ピークE
1の値は、逆バイアス電位が増加するにつれて飽和する。この模擬構造については、第1の電界ピークE
1の値は約1.4×10
6V/cmに達する。しかしながら、第2及び第3の電界ピークの値は、逆バイアス電圧が増加するにつれて増加する。この模擬構造の場合、第2及び第3の電界ピークの値は、約500Vの逆バイアスで約2.2×10
6V/cmに達する。第2のフィールドプレートを追加することにより、
図12のプロットと
図3のプロットを比較すると分かるように、伝導層に沿った及びゲートの近傍でのピーク電界の値を低減することができる。
【0083】
追加のシミュレーションでは、第2のフィールドプレートの延長部長さL
3を、以下の値:0.5、1.0、2.5、及び5.0μmの間で変化させた。これらのシミュレーションの結果は、第2のフィールドプレートの縁の下に位置する追加の電界ピークE
3を伴っている点を除き、
図4に示したものと似通っていた。
【0084】
第2の絶縁層1120の厚さt2を変化させることによって引き起こされるピーク電界E1、E2、及びE3の変化を観察するために、更なるシミュレーションを実行した。第2の絶縁層1120の厚さt2の変化(約50nm~約450nmの間)及び第2のフィールドプレートの延長部長さL3の変化(約0.5μm~約5μmの間)は、第1の電界ピークE1の大きさには殆ど影響を与えないことが見出された。一方、絶縁体厚さt2及び延長部長さL3の同じ変化は、第2の電界ピークE2及び第3の電界ピークE3の値にはかなりの影響を与えていた。第2のフィールドプレートの延長部長さL3を増加させると、第2の絶縁層1120の厚さを減少させるのと同様に、第2の電界ピークE2の値が減少した。第2のフィールドプレート延長部長さL3を増加させても、第3の電界ピークE3の値はそれほど変わらなかった。しかしながら、第2の絶縁層1120の厚さを減少させると、第3の電界ピークE3の値が増加し、E2に対する影響とは反対の影響が見られた。
【0085】
ショットキーダイオードでの2つのフィールドプレートに対するシミュレーションの結果は、窒化ガリウム伝導層内の第2及び第3の電界ピーク値をブレークダウン電界強度(breakdown field strength)未満に維持するために、HEMT内の第2の絶縁層についてはより厚い絶縁層を使用することが好ましいことを示唆している。例えば、幾つかの実施形態によれば、第2の絶縁層1120は、厚さt2が約300nm~約600nmの間であり得、一方、第1の絶縁層120の厚さは約25nm~約200nmの間であり得る。
【0086】
シミュレーションを評価するために、複数の異なるショットキーダイオード構造を作製して、フィールドプレート延長部長さの変化がブレークダウン電圧へ与える影響を評価した。作製されたデバイスでは、アノード接続フィールドプレートの延長部長さL1は、約2.5μmに固定された。アノードの縁からカソードの縁までの距離(図面ではLGDとラベル付けされている)は、デバイスの第1のグループについては約10μmであり、デバイスの第2のグループについては約15μmであった。デバイスがブレークダウンを示すまで、デバイスに逆バイアス電位を印加した。デバイス上の第2のアノード接続フィールドプレートの延長部長さL3は、デバイスの各グループ内で変化させた。
【0087】
ブレークダウン試験の結果を
図13にプロットしている。第2のフィールドプレートの延長部長さL
3の関数として、それらのデバイスについて観察されたブレークダウン電圧V
bをプロットしている。この結果は、延長部長さL
3が約0.5μmから約1.5μmまで増加したときにブレークダウン電圧の著しい改善が達成されることを示している。約1.5μmでは、幾つかのデバイスについては、1000V超のブレークダウン電圧が観察された。延長部長さL
3を更に増加させると、逆バイアスブレークダウン電圧の低下につながった。最も高いブレークダウン電圧(例えば、試験された構造については900ボルトを超過する電圧)のためには、第2のフィールドプレートに対するフィールドプレート延長部長さL
3の限界範囲が存在する。この場合には、その範囲は約1.25μm~約2.5μmの間である。この限界範囲は、2つの異なるL
GD値に対して同様の結果が観察されていることから、ショットキーダイオード内のアノード-カソード間隔からはあまり影響を受けないと言え、HEMT内のゲート-ドレイン間隔からも同様に影響を受けないものと予想された。これらの結果は、HEMT内のソース接続フィールドプレート1140については好ましい延長部長さL
3の範囲が存在し、その範囲は約2ミクロン(μm)の値周辺であり得ることを示唆している。
【0088】
図13を再び参照すると、用途によっては、第2のフィールドプレートの延長部長さL
3の範囲は、より低いブレークダウン電圧に対しては増加し得る。例えば、L
3は、約700ボルト~約1200ボルトの間のブレークダウン電圧値に対して、場合によっては約1μm~約3μmの間であり、また場合によっては約1μm~約4μmの間であり得る。
【0089】
本発明者らは、シミュレーション結果及び試験的デバイスから、第2のフィールドプレートの縁(例えば、ソース接続フィールドプレート1140の縁)とドレイン132との間の距離が、デバイスのブレークダウン電圧値に大きな影響を及ぼすことがあると判断した。幾つかの作製されたデバイスについての、この距離(L
GD-L
FP2と示される)へのブレークダウン電圧V
Bの依存性を
図14に示す。このプロットでは、デバイスの第1のグループ1410は、約0.5μmの第2のフィールドプレート延長部長さL
3を有していた。第2のフィールドプレートの縁がドレインに近づく(L
GD-L
FP2の値が減少する)につれて、ブレークダウン電圧の値が減少する。L
3が少なくとも1.5μmである、より高いブレークダウン電圧を有するデバイスの第2のグループ1420に対しても、同じ傾向が観察される。
【0090】
上記のシミュレーション及び作製したデバイスからの結果に基づいて、
図11で示したのと同様の構造を有するように、フロートゾーンシリコンウェハ上に幾つかの高電圧HEMTを作製した。HEMTは、ゲート接続フィールドプレート及びソース接続フィールドプレートを含んでいた。デバイスのゲート-ドレイン間隔L
GDは、約20μmに固定された。バッファ層112の厚さは約2.6μmであった。バリア層116は(モル分率で)27%のAlであり、約18nmの厚さであった。HEMTの第1のグループについては、ゲート接続フィールドプレート延長部L
1は約1μmであり、ソース接続フィールドプレート延長部L
3は約3μmであった。HEMTの第2のグループについては、ゲート接続フィールドプレート延長部L
1は約3μmであり、ソース接続フィールドプレート延長部L
3は約5μmであった。ソース接続フィールドプレートを追加すると、全てのHEMTについて、ブレークダウン電圧はテスターの限界である1200Vを超えて上昇した。
【0091】
ゲート接続及びソース接続フィールドプレートを有する作製されたHEMTについての逆バイアス特性の例を
図15に示す。これらの測定は、1200Vよりも高い電圧にアクセスすることができるシステムを使用して行われた。これらのHEMTについては、ゲート接続フィールドプレート延長部L
1は約0.5μmであり、ソース接続フィールドプレート延長部L
3は約2.5μmであった。ソース130に向かうゲート接続フィールドプレート延長部L
2は約0.2μmであった。全ての試験されたデバイスは、逆方向ブレークダウン電圧が1500Vを超えていた。これらのデバイスのうちの3つは、逆方向ブレークダウン電圧が2000Vを超えていた。更に、ブレークダウン付近の急増の前の平均逆バイアス漏れ電流は、約1μA~約10μAの間であり、周辺ゲート長1mm当たり約4μA~約40μAの間に相当した。これらの結果は、ブレークダウン電圧及び逆バイアス漏れ電流の両方において、従来のGaN HEMTデバイスよりも著しく優れている。
【0092】
幾つかの実施形態によれば、HEMTは、ゲート接続フィールドプレートの上方に形成されたソース接続フィールドプレートを含んでいてもよい。薄い酸化ガリウム層(約1nm~約5nmの間の厚さ)が、ゲートと、下にある窒化ガリウムキャップ層との間に配置されてもよい。ゲート長Lgは約0.1μm~約1.5μmの間であり、ゲートの縁は、垂直から5度~60度の間で外側に傾斜していてもよい。場合によっては、ゲート長はせいぜい2.0μmであり得る。ゲート接続フィールドプレートは、ドレインに向かって約0.3μm~約0.8μmの間だけゲートの縁を越えて延び、ソースに向かって約0.1μm~約0.4μmの間だけゲートの縁を越えて延びていてもよい。ソース接続フィールドプレートは、ゲート接続フィールドプレートの縁を越えてドレインに向かって約1.5μm~約3.5μmの間だけ延びていてもよい。ドレインの近傍のソース接続フィールドプレートの縁は、ドレインの縁から約4μm~約10μmの間にあってもよい。下にある窒化ガリウム層とゲート接続フィールドプレート延長部147との間の第1の絶縁層120の厚さは、約20nm~約100nmの間であり得る。ゲート接続フィールドプレート145とソース接続フィールドプレート1140との間の第2の絶縁層1120の厚さは、約300nm~約600nmの間であり得る。
【0093】
上述したようなHEMTの実施形態は、高い変調率で大きな電流を運ぶことができる。例えば、約1μmの個々のゲート長を有するマルチゲートHEMT(例えば、
図1Cのような、複数のゲートを共通のゲートコンタクトに接続させ、複数のソースを共通のソースコンタクトに接続させ、複数のドレインを共通のドレインコンタクトに接続させた複数のデバイス)は、最大で1GHzまでの変調率で、最大で1アンペア/mm(
図1Cに示されるような周辺ゲート長W
gに関して)の電流を扱うことができる。場合によっては、ゲート周辺長は100ミクロン(100μm)~2mmの間であってもよいが、場合によっては、より短い又はより長い周辺長が用いられてもよい。マルチゲートHEMTデバイス内には並列に接続された2個~50個の間のHEMTがあってもよい。幾つかの実施形態によれば、マルチゲートHEMTデバイスは、トランスインピーダンス増幅器として構成されていてもよく、その利得は増幅器の周波数下限(増幅器の周波数上限の1/6程の低さ)からほぼ均一なままであり、その後周波数上限(1GHz~30GHzの間の値であり得る)で約3dBまで降下し、一方、デバイスは、この周波数範囲に渡って最大で20アンペアのRMS電流を変調することができ、
図10及び
図15に関連して上述した値と同じ程度の逆バイアス漏れ電流を依然として有する。例えば、幾つかの実施形態によれば、約0.5μmの個々のゲート長を有するマルチゲートHEMTは、最大で10GHz(3dBポイント)の変調率で最大で1アンペア/mm(RMS電流値)まで電流を駆動し、約4μA/mm~約40μA/mmの間の逆バイアス漏れ電流を有してもよい。実施態様によっては、約0.15μmのゲート長を有するマルチゲートHEMTは、最大で30GHz(3dBポイント)の変調率で最大で1アンペア/mm(RMS電流値)まで電流を駆動し、約4μA/mm~約40μA/mmの間の逆バイアス漏れ電流を有していてもよい。単一ゲートデバイスは、同様の又はより高い変調率で、より低い電流を扱うことがある。増幅器として構成されるマルチゲートHEMTの利得の値は、動作帯域幅に渡って約20dBであり得る。
【0094】
実施形態によっては、約0.5μmの個々のゲート長を有するマルチゲートHEMTは、最大で10GHz(3dBポイント)の変調率で約0.5アンペア/mm~約1アンペア/mm(RMS電流値)の間の電流を駆動し、約4μA/mm~約40μA/mmの間の逆バイアス漏れ電流を有し得る。実施形態によっては、約0.15μmの個々のゲート長を有するマルチゲートHEMTは、最大で30GHz(3dBポイント)の変調率で約0.5アンペア/mm~約1アンペア/mmの間の電流を駆動し、約4μA/mm~約40μA/mmの間の逆バイアス漏れ電流を有し得る。マルチゲートHEMTの利得の値は、動作帯域幅に渡って約20dBであってもよく、マルチゲートHEMTは、場合によっては1500Vもの高さの、実施形態によっては2000Vもの高さの逆バイアス電圧に耐えることができる。そのようなHEMTは、任意の適切な設計の高速増幅器、例えば、クラスA、クラスB、クラスAB、ドハーティなどで使用され得る。
【0095】
ここで、高電圧HEMTを形成するために使用されてもよい製造技術の例について説明する。
図16A~
図16Gは、ゲートをパターン形成する前にソース及びドレインコンタクトが形成された高電圧HEMTの1つの製造方法に関連した構造を示す。
図17A~
図17Jは、ソース及びドレインコンタクト、ゲート、並びにゲート接続フィールドプレートが同時に堆積される、高電圧HEMTを製造する別の方法に関連した構造を示す。
図17A~
図17Jの図は、
図16A~
図16Gに図示するプロセスで使用することができる、レジストパターニング及びリフトオフ工程の更なる詳細を提供する。高電圧HEMTを製造する方法は、図示し説明する構造及び工程だけに限定はされない。
【0096】
図16Aを参照すると、高電圧HEMT用の多層積層体を含むウェハが調製され得るか又は取得され得る。例えば、ウェハは、結晶性又は半導体の基板105、バッファ層112、窒化ガリウム伝導層114、及びバリア層116を含んでいてもよい。バッファ層112、窒化ガリウム伝導層114、及びバリア層116は、基板上でエピタキシャル成長させるか、又は任意の適切なプロセスによって堆積させてもよい。実施形態によっては、ウェハは、エピタキシーによって成長させてもよい半導体キャップ層118を含んでいてもよい。幾つかの実施態様によれば、任意の適切な堆積プロセスを使用して、多層積層体上に第1の絶縁層120(例えば、酸化物層又は窒化ケイ素層)を堆積させてもよい。
図1Aに関連して上述した、堆積プロセスのうちのいずれか1つ又は組み合わせ、及び材料のいずれかを使用して、
図16Aに示したウェハ又は基板を形成してもよい。
【0097】
幾つかの実施形態によれば、
図16Bに示すように、絶縁層120の上にフォトレジスト1605を塗布しパターン形成して、フォトレジスト中にソース及びドレインコンタクト用のビアを選択的にエッチングしてもよい。ソース及びドレインコンタクト130、132を堆積させ、リフトオフプロセスの間にレジスト1605を除去し、
図16Cに示す構造を生成することができる。実施態様によっては、ソースコンタクト及びドレインコンタクトは、ウェハを高温(例えば、約500℃~950℃の間)に曝すことによって、伝導層及び/又はバリア層と合金化されてもよい。第1の絶縁層120は、ウェハから取り除かれることも、又は取り除かれないこともある。
【0098】
第1の絶縁層が除去される場合、第2の絶縁層1610(
図16Dに示す)がウェハ上に堆積される、例えば、化学気相成長プロセスなどのコンフォーマルな堆積プロセスを使用して堆積されてもよい。他の実施形態では、他の堆積プロセスが用いられてもよい(例えば、スパッタリング又は蒸発)。第2の絶縁層は、窒化ケイ素層か、又は
図1Aに関連して説明した任意の適切なゲート絶縁体であり得る。第2の絶縁層内にゲートビアを開けるために、第2の絶縁層1610上にフォトレジストが塗布されパターン形成されてもよい。単一のリフトオフ工程で、ゲート140及びゲート接続フィールドプレート145を形成することができるが、場合によっては、ゲート及びゲート接続フィールドプレートに対して、別々の堆積を使用することもある。ゲート、ゲート接続フィールドプレート、並びにソース及びドレインコンタクトは、
図1Aに関連して説明した任意の金属組成物であり得る。
【0099】
代替のプロセスでは、ゲートの堆積の前に、短時間のO2プラズマ処理を基板に施してもよい。O2プラズマ処理は、例えば、ゲート140とキャップ層118との間に、薄い酸化物、例えば酸化ガリウムを形成し得る。
【0100】
図16Eに示すように、ゲート及びゲート接続フィールドプレート上に第3の絶縁層1620を堆積させてもよい。第3の絶縁層1620は、窒化ケイ素層又は任意の他の適切な絶縁体であり得、任意の適切なプロセスによって堆積されてもよい。ソース及びドレインビア1622、1624が、第3の絶縁層1620を通ってソースコンタクト及びドレインコンタクト130、132まで開けられるように、第3の絶縁層1620上にレジスト(図示せず)を塗布しパターン形成してもよい。ソースビア及びドレインビアは、第3の絶縁層1620をエッチングするが、レジストはごく僅かにしかエッチングしない選択的なエッチングプロセスを使用して、開けることができる。ソース及びドレインビアを開けた後で、レジストはウェハから取り除かれてもよい。
【0101】
その後、レジスト(図示せず)が塗布されパターン形成されて、ソースコンタクト130に電気的に接続しゲート接続フィールドプレート145の上方に延びるソース接続フィールドプレート用に、レジスト内にある領域が開けられてもよい。ソース接続フィールドプレート1640は、リフトオフ工程を使用して形成されてもよく、
図16Fに示すように現れる。ソース接続フィールドプレートは、
図1Aに関連して説明した任意の金属組成物であり得る。幾つかの実施形態によれば、ソース及びドレイン金属被覆160、162が、追加のリフトオフ工程を使用して形成されてもよい。
【0102】
高電圧HEMTを形成するために代替の製造方法を使用することができ、その一例を
図17A~
図17Jに示す。幾つかの実施形態によれば、
図17Aに示すように、絶縁層120上にフォトレジスト1710を塗布しパターン形成してもよい。フォトレジストは、任意の適切なフォトリソグラフィ方法、例えば投影フォトリソグラフィなどによって、ゲートビア1720を開けるように、パターン形成されてもよい。その後、絶縁層を(例えば反応性イオンエッチングを使用して)異方性エッチングして、後に続くゲートの堆積のために、バリア層116(又は、存在する場合にはキャップ層118)の一部を露出させてもよい。
【0103】
幾つかの実施形態によれば、ゲートビア1720を形成する際に絶縁層120をエッチングするために、等方性エッチングを使用してもよい。等方性エッチングは、絶縁層を貫通してエッチングする際に、外側に傾斜した側壁を生成し得る。次いで、これらの傾斜した側壁は、ゲートが絶縁層上に堆積される際に、外側に傾斜したゲート壁をもたらすことがある。
【0104】
図17Bに示すように、第1のレジスト層1710が基板から取り除かれてもよく、ソース及びドレインビア1722を露出させるように第2のレジスト層1712が塗布されパターン形成されてもよい。次いで、
図17Cに示すように、絶縁層120を異方性エッチングして、少なくともバリア層116を露出させてもよい。実施形態によっては、エッチングはバリア層で、又はバリア層の途中で停止してもよい。実施態様によっては、エッチングは、図示するように伝導層114の中へと続くことがある。次いで、第2のレジスト層1720が基板から取り除かれてもよい。
【0105】
実施形態によっては、
図17Dに示すように、基板上に第3のレジスト層1714をパターン形成して、ソース及びドレインビア1726並びにゲートビア1724を開けてもよい。ゲートビア1724は、これ以前のゲートビアパターニング工程により絶縁層120内に開けられた面積よりも大きいことがある。
図17Eに示すように、リフトオフプロセスを実行して、ゲート、ゲート接続フィールドプレート、ソース、及びドレイン導体を単一のステップで堆積させることができる。幾つかの実施形態によれば、この堆積により、ゲート140を越えて絶縁層120の上に延びるゲート接続フィールドプレート145も形成される。
【0106】
幾つかの実施形態によれば、残りのレジスト1714は、溶剤槽内で溶解されて、上にある材料1730を取り外すことがある。結果として得られる構造は、
図17Fに示すように現れ得る。実施形態によっては、レジスト1714の溶解は、超音波撹拌、スプレー、又は他の撹拌を含んで、レジスト及び上にある材料を除去するのを支援し得る。
【0107】
その後、
図17Gに示すように、第2の絶縁層1120を基板上に形成させてもよい。第2の絶縁層は、任意の適切な堆積プロセスによって堆積させることができる。
図17Hに示すように、第2の絶縁層を、第4のフォトレジスト層1716で覆いパターン形成して、ソース130上にビア1727を開けてもよい。レジストは、第2の絶縁層1120をエッチングしてソース導体130までビアを開けるように、エッチングマスクとして作用し得る。その後、第4のフォトレジスト層1716は、基板から取り除かれてもよい。
【0108】
図17Iに示すように、第5のフォトレジスト層1718を堆積させパターン形成して、ソース接続フィールドプレートビア1728を開けてもよい。
図17Jに示すように、堆積プロセスを使用して、ソース接続フィールドプレート1140用の導電材料を堆積させてもよい。その後、
図17Fに関連して上述したように、残りのレジスト1718及び上にある材料1732を除去するために、リフトオフ工程を実行してもよい。
【0109】
幾つかの実施形態によれば、ゲート接続及びソース接続フィールドプレートを形成するための製造技術は、ゲート接続フィールドプレート、絶縁層、及び後に続くソース接続フィールドプレートの堆積の後で基板を平坦化することなく、行うことができる。平坦化工程を回避することにより、デバイス製造にかかる時間及びコストを低減することができる。場合によっては、ゲート接続フィールドプレート、絶縁層、及びソース接続フィールドプレートの幾つか又は全部の堆積の後で、平坦化工程(例えば、化学機械研磨)を用いてもよい。
【0110】
結論
「約(approximately)」及び「約(about)」という用語は、実施形態によっては目標値の±20%以内、実施形態によっては目標値の±10%以内、実施形態によっては目標値の±5%以内、実施形態によっては目標値の更に±2%以内を意味するものとして使用されてもよい。「約(approximately)」及び「約(about)」という用語は、目標値を含んでいてもよい。
【0111】
本明細書で説明する技術は、少なくとも幾つかの動作を説明した方法として具現化することができる。方法の一部として行われる動作は、任意の適切な方法で順序付けられてもよい。従って、例示的な実施形態では順次的動作として説明されたとしても、幾つかの動作を同時に行うことを含んでいてもよい、説明した順序とは異なる順序で動作が行われる実施形態を、構築することができる。更に、方法は、幾つかの実施形態では説明した動作よりも多い動作を、また他の実施形態では説明した動作よりも少ない動作を含んでいてもよい。
【0112】
本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態をこのように説明してきたが、当業者であれば、様々な変更例、修正例、及び改善例を容易に思い付くであろう。そのような変更例、修正例、及び改善例は、本発明の趣旨及び範囲内であることが意図されている。従って、前述の説明は単なる例示に過ぎず、限定することを意図してはいない。本発明は、以下の特許請求の範囲及びその均等物で規定される通りにのみ限定される。