IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -動物捕獲用罠 図1
  • -動物捕獲用罠 図2
  • -動物捕獲用罠 図3
  • -動物捕獲用罠 図4
  • -動物捕獲用罠 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】動物捕獲用罠
(51)【国際特許分類】
   A01M 23/34 20060101AFI20220516BHJP
【FI】
A01M23/34
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019081405
(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公開番号】P2020174636
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-05-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507277136
【氏名又は名称】松尾 要一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】松尾 要一郎
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-057289(JP,A)
【文献】登録実用新案第3178974(JP,U)
【文献】特開2016-214116(JP,A)
【文献】特開2007-097456(JP,A)
【文献】登録実用新案第3215325(JP,U)
【文献】登録実用新案第3219738(JP,U)
【文献】登録実用新案第3207491(JP,U)
【文献】特開2017-070245(JP,A)
【文献】特開2015-039330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 23/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の脚に紐状体を括るための動物用罠であって、
少なくとも上方に開口部を有し、輪形状に形成され、外周に輪形状にされた前記紐状体が巻き回される枠体と、
前記枠体の内部に、揺動可能に配置された板状体と、を備え、
前記枠体は、複数の枠部材からなり、高さ方向における下側に欠き込みが形成され、前記開口部と略平行な方向に延びる回転軸を中心に、一方の前記枠部材に対して、他方の前記枠部材が回動可能であり、
前記板状体は、上面が前記開口部に面し、下面に軸部材が固定されており、
前記軸部材は、前記下面と略平行な方向であって、一方の前記枠部材から他方の前記枠部材に向かって延び、
複数の前記枠部材には、それぞれの内面側であって、前記欠き込みの上方に、内側に突出し、前記軸部材の端部の上部と係合する係合部が設けられており、
前記係合部は、前記枠部材の内側から視て、中央部から端部に向かって下り傾斜しており、
前記枠体が回動していない初期状態において、
前記枠体には、輪の内径が小さくなる方向に付勢された前記紐状体が巻き回され、
前記軸部材の両端部は、複数の前記枠部材の前記係合部に、それぞれ上部が係合され、前記板状体の上面が動物に踏まれた場合に、前記係合部の下方に設けられた前記欠き込みに向かって移動可能であり、
前記板状体の上面が動物に踏まれると、前記軸部材の端部が前記欠き込みの位置にくることで、前記係合部と前記軸部材の端部との係合が解除され、一方の前記枠部材に対して、他方の前記枠部材が回動し、前記紐状体が前記枠体から外れ輪の内径が小さくなり、動物の脚を括ることを特徴とする動物用罠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物捕獲用罠に関し、詳しくは、動物の脚に紐状体を括るための動物用罠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動物を捕獲するために、動物の脚に紐状体を括るための動物用罠が用いられている。
このような動物用罠として、地表に設置され獣類の脚部を括るワイヤが装着されるトリガー装置において、互いに連結される半環状の第一の帯体及び第二の帯体で構成され、これらの連結部で回動可能なワイヤ装着体と、第一の帯体及び第二の帯体の内周に嵌め合わされる支持棒と、支持棒に載置される踏板を設け、さらに第一の帯体及び第二の帯体の長手方向中央に切欠凹部を設け、当該切欠凹部の上部に支持棒を配置することが提案されている(特許文献1)。
このようなトリガー装置によれば、獣類が踏板を踏んだ際に、踏板により支持棒が押圧され、切欠凹部から外れることにより作動して、ワイヤにより獣類の脚部を括ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-57289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のトリガー装置は、第一の帯体及び第二の帯体の内周に嵌め合わされている支持棒に、作動の契機となる踏板が載置されているだけなので、踏板が適正な位置からズレたりした場合、獣類が踏板を踏んでも、支持棒を押圧して切欠凹部から外す力が逃げてしまい、適切に動作しないおそれがある。
【0005】
本発明は、動物に踏まれた際の動作の確実性を向上可能な動物捕獲用罠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1 動物の脚に紐状体を括るための動物用罠であって、
少なくとも上方に開口部を有し、輪形状に形成され、外周に輪形状にされた前記紐状体が巻き回される枠体と、
前記枠体の内部に、揺動可能に配置された板状体と、を備え、
前記枠体は、複数の枠部材からなり、高さ方向における下側に欠き込みが形成され、前記開口部と略平行な方向に延びる回転軸を中心に、一方の前記枠部材に対して、他方の前記枠部材が回動可能であり、
前記板状体は、上面が前記開口部に面し、下面に軸部材が固定されており、
前記軸部材は、前記下面と略平行な方向であって、一方の前記枠部材から他方の前記枠部材に向かって延び、
複数の前記枠部材には、それぞれの内面側であって、前記欠き込みの上方に、内側に突出し、前記軸部材の端部の上部と係合する係合部が設けられており、
前記係合部は、前記枠部材の内側から視て、中央部から端部に向かって下り傾斜しており、
前記枠体が回動していない初期状態において、
前記枠体には、輪の内径が小さくなる方向に付勢された前記紐状体が巻き回され、
前記軸部材の両端部は、複数の前記枠部材の前記係合部に、それぞれ上部が係合され、前記板状体の上面が動物に踏まれた場合に、前記係合部の下方に設けられた前記欠き込みに向かって移動可能であり、
前記板状体の上面が動物に踏まれると、前記軸部材の端部が前記欠き込みの位置にくることで、前記係合部と前記軸部材の端部との係合が解除され、一方の前記枠部材に対して、他方の前記枠部材が回動し、前記紐状体が前記枠体から外れ輪の内径が小さくなり、動物の脚を括ることを特徴とする動物用罠。
【0007】
(1)の構成によれば、動物捕獲用罠は、動物の脚に紐状体を巻き回し、枠体と、板状体と、を備える。
枠体は、少なくとも上方に開口部を有し、輪形状に形成され、外周に輪形状にされた紐状体が巻き回される。
板状体は、枠体の内部に、揺動可能に配置されている。
また、枠体は、複数の枠部材からなり、開口部と略平行な方向に延びる回転軸を中心に、一方の枠部材に対して、他方の枠部材が回動可能である。
板状体は、上面が開口部に面し、下面に軸部材が固定されている。
軸部材は、下面と略平行な方向であって、一方の枠部材から他方の枠部材に向かって延びている。
複数の枠部材には、それぞれ、軸部材の端部の上部と係合する係合部が設けられている。
そして、動物捕獲用罠は、枠体が回動していない初期状態において、枠体には、輪の内径が小さくなる方向に付勢された紐状体が巻き回されている。
また、軸部材の両端部は、複数の枠部材の係合部に、それぞれ係合されており、板状体の上面が動物に踏まれると、係合部と軸部材の端部との係合が解除され、一方の枠部材に対して、他方の枠部材が回動し、紐状体が枠体から外れ輪の内径が小さくなり、動物の脚を括る。
【0008】
これにより、動物捕獲用罠が、初期状態から動作する契機となる板状体に、複数の枠部材を初期状態に維持するための軸部材を固定したので、板状体と軸部材とがズレることがなく、板状体が動物に踏まれた場合、この踏まれたことによる力を適切に軸部材に伝達することができる。さらに、複数の枠部材に軸部材の端部の上部と係合する係合部を設けたので、初期状態において、軸部材が上方に抜けることがなく、より適切な状態で、初期状態を維持できるので、動作の確実性が向上する。
したがって、動物に踏まれた際の動作の確実性を向上可能な動物捕獲用罠を提供できる。
【0009】
また、軸部材が、枠体の内側で係合部と係合しており、特許文献1のトリガー装置と異なり、軸部材と枠体とのネジ止めが不用であり、取り扱いの際に危険性も少ない。さらに、動物捕獲用罠をセットする際も、軸部材の端部を係合部に係合させて(乗せて)、動物捕獲用罠全体を反転させるだけであり、作業が容易となる。
【0011】
(2)の構成によれば、複数の枠部材に軸部材の端部の上部と係合する係合部を、中央部から端部に向かって下り傾斜させたので、初期状態において、軸部材が横方向に抜けることがなく、板状体が動物に踏まれた場合に、軸部材の端部が、係合部にガイドされて、係合が解除されるので、より適切な状態で、動作させることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、動物に踏まれた際の動作の確実性を向上可能な動物捕獲用罠を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る動物捕獲用罠の斜め上方から視た斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る動物捕獲用罠の枠体及び板状体を斜め下方から視た斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る動物捕獲用罠の内側から係合部が設けられている部分を視た図である。
図4】本発明の一実施形態に係る動物捕獲用罠1の動作について説明する図である。
図5】本発明の一実施形態に係る動物捕獲用罠1の動作について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る動物捕獲用罠1の構成を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る動物捕獲用罠の斜め上方から視た斜視図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る動物捕獲用罠の枠体及び板状体を斜め下方から視た斜視図である。
【0015】
動物捕獲用罠1は、動物の脚に紐状体5(例えば、ワイヤー、綱等)を括るための罠であり、紐状体5と、枠体10と、板状体20と、付勢具30と、を備える。
【0016】
枠体10は、少なくとも上方(図1に示す例では上下方向)に開口部10aを有し、板状体が面方向に曲げられて輪形状に形成されており、外周に輪形状にされた紐状体5が巻き回される。
枠体10は、本実施形態では、図1に示す初期状態では、上方から視て、全体として楕円形状に形成され、外周の内径が下方から上方に向かって小さくなるように形成されている(側面方向から視て略ハの字形状に形成されている)。これにより、動物捕獲用罠1を設置した場合の安定性が向上する。
【0017】
枠体10は、上方から視て、楕円形状を半分にした形状で形成された第1枠部材11及び第2枠部材12を備える。
第1枠部材11及び第2枠部材12は、それぞれの端部が回動自在に連結され、開口部10aと略平行な方向に延びる回転軸10bを中心に、一方の枠部材(例えば、第1枠部材11)に対して、他方の枠部材(例えば、第2枠部材12)が回動可能である。詳細には、第1枠部材11及び第2枠部材12は、両端部近傍に、開口部10aと略平行な方向に延びる貫通孔がそれぞれ形成され、これらの貫通孔にそれぞれボルトが挿通され、ボルトにナットを螺合させることで、一方に対して他方が回動可能に接続されている。
【0018】
第1枠部材11には、略中央の高さ方向における略下半分に欠き込み11aが形成されている。また、第2枠部材12には、略中央の高さ方向における略下半分に欠き込み12aが形成されている。すなわち、枠体10は、第1枠部材11に対して第2枠部材12が回動する回転軸10bと略直交する対角線上において、高さ方向における略下半分に欠き込み11a及び欠き込み12aが形成されている。
【0019】
第1枠部材11及び第2枠部材12は、それぞれの内面側であって、欠き込み11a及び欠き込み12aの上方に、内側に突出する係合部15が設けられている。
図3は、本発明の一実施形態に係る動物捕獲用罠の内側から係合部が設けられている部分を視た図である。
係合部15は、第2枠部材12の内側側面から視て上方に膨出する円弧形状に形成され、後述する軸部材21の端部の上部と係合する。すなわち、係合部15は、中央部から端部に向かって下り傾斜している。なお、係合部15は、円弧形状に限らず、中央部から端部に向かって下り傾斜していれば、中央部を頂点として、端部に向かって直線的に傾斜する山型の形状であってもよい。第1枠部材11に設けられた係合部15は、第2枠部材12に設けられた係合部15と同様の構成である。
【0020】
図1及び図2に戻って、板状体20は、枠体10の内部に、揺動可能に配置されている。板状体20は、上面が開口部10aに面し、上方から視て、初期状態(図1に示す、第1枠部材11に対して第2枠部材12が回動していない状態)における枠体10の上方側開口部10aの内径より小さい外径の楕円形状の板材で形成されている。板状体20は、枠体10の回転軸10bの近傍において、枠体10と紐22を介して2箇所接続されている。
【0021】
板状体20は、下面に軸部材21が固定されている。軸部材21は、例えば、溶接により板状体20に固着されている。
【0022】
軸部材21は、板状体20の下面と略平行な方向であって、回転軸10bと略直交する対角線に沿って、第1枠部材11から第2枠部材12に向かって延びている。
軸部材21の両端部は、初期状態において、第1枠部材11に設けられた係合部15と、第2枠部材12に設けられた係合部15とに、それぞれ係合されている。
【0023】
付勢具30は、紐状体5で形成した輪の内径が小さくなる方向に付勢する。具体的には、付勢具30は、弾性変形可能な針金等をコイル形状に形成し、両端が互いに近接した状態から互いに離間した状態に付勢するものであり、両端が輪形状に形成されている。
【0024】
初期状態において、紐状体5は、一端が付勢具30の一方の端部に接続され、枠体10の外周に巻き回され、一方の端部の輪形状の部分に挿通され、付勢具30の他方の端部の輪形状の部分に挿通され、付勢具30の他方の端部の輪形状の部分の内径より大きい外径で形成された止め具51が装着され、他端が固定されている物(例えば、木等)に固定される。また、初期状態において、付勢具30は、止め具51により、両端が互いに近接した状態で維持され、弾性力が蓄えられた状態である。
【0025】
次に、動物捕獲用罠1の動作について説明する。
図4及び図5は、本発明の一実施形態に係る動物捕獲用罠1の動作について説明する図である。
動物捕獲用罠1は、図1に示す初期状態において、板状体20の上面が動物の脚Fで踏まれると、係合部15と軸部材21の端部との係合が解除され、軸部材21の端部が第2枠部材12の欠き込み12aの位置にきて、図4に示す状態となる。すると、動物捕獲用罠1は、第1枠部材11に対して、第2枠部材12が回動し、紐状体5が枠体10から外れ、付勢具30の蓄えられた弾性力が開放され、紐状体5輪の内径が小さくなり、動物の脚Fを括り、図5に示す状態となる。
【0026】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0027】
1,1A 動物捕獲用罠
1 動物捕獲用罠
5 紐状体
10 枠体
10a 開口部
10b 回転軸
11 第1枠部材
11a 欠き込み
12 第2枠部材
12a 欠き込み
15 係合部
20 板状体
21 軸部材
22 紐
30 付勢具
51 止め具
F 動物の脚
図1
図2
図3
図4
図5