(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】外用貼付剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/70 20060101AFI20220516BHJP
B32B 37/15 20060101ALI20220516BHJP
B32B 38/18 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
A61K9/70 401
B32B37/15
B32B38/18 C
(21)【出願番号】P 2019097292
(22)【出願日】2019-05-24
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】302060568
【氏名又は名称】株式会社カナエテクノス
(74)【代理人】
【識別番号】100127764
【氏名又は名称】小川 泰州
(74)【代理人】
【識別番号】100084630
【氏名又は名称】澤 喜代治
(72)【発明者】
【氏名】石本 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 進吾
【審査官】一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-203663(JP,A)
【文献】特開昭55-049315(JP,A)
【文献】特開2012-051847(JP,A)
【文献】特開2001-213766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 9/72
A61Q 1/00-90/00
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二枚の支持体を重ね合わせた合わせ面間、又は、一枚の支持体を折ることによって重ね合わせた合わせ面間に基剤が挟み込まれてなり、重なり合う支持体を剥離したり展開したりして基剤を露出させた後、皮膚表面に貼付する使用形態となされた外用貼付剤の製造方法であって、
帯状の支持体を送り出しながら基剤を塗工する塗工工程と、
支持体を長さ方向に沿う折り目で折ることによって支持体を重ね合わせる積層工程と、
を実行することによって合わせ面間に基剤が挟み込まれてなる帯状の積層体を作成した後、
前記積層体を所定の形状に切断する切断工程を実行し、
前記積層工程の実行時、予め支持体に
端部から内方に向かうスリットを設けることを特徴とする外用貼付剤の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の外用貼付剤の製造方法において、
前記塗工工程の実行時、支持体における前記切断工程において切り抜かれる箇所に部分的に基剤を塗工する外用貼付剤の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の外用貼付剤の製造方法において、
前記塗工工程の実行時、孔版印刷によって基剤を塗工する外用貼付剤の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の外用貼付剤の製造方法において、
前記積層工程の実行時、支持体を長さ方向に沿う二条の折り目で両側を内方に向かって折る外用貼付剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ね合わせた支持体の合わせ面間に基剤が挟み込まれてなる外用貼付剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外用貼付剤は、皮膚表面に貼付されることによって、皮膚表面に冷感や温感を与えたり、基剤層中に含まれる有効成分を経皮吸収的に投与したりするものである。
【0003】
前記外用貼付剤としては、シート状の支持体の片側面に基剤を担持させて貼付面を形成し、更に、貼付面上にプラスチックフィルムからなる剥離フィルムを積層することによって貼付面を保護した状態で流通・保存に供し、使用時に剥離フィルムを除去することによって貼付面を露出させるように構成されているものが一般的である。
【0004】
最近では、二枚の支持体を重ね合わせた合わせ面間、又は、一枚の支持体を折ることによって重ね合わせた合わせ面間に基剤が挟み込まれてなり、重なり合う支持体を剥離したり展開したりして基剤を露出させた後、皮膚表面に貼付する使用形態となされた外用貼付剤も開発されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1では二枚の支持体の合わせ面間に基剤が挟み込まれてなる外用貼付剤を製造するにあたり、一の支持体の片側面全面に基剤を塗工し、次いで、一の支持体に塗工された基剤を覆うようにして他の支持体を重ね合わせることが製造工程上の観点から好ましいとされている。又、一枚の支持体を折ることによって重ね合わせた合わせ面間に基剤が挟み込まれてなる外用貼付剤を製造するにあたっては、支持体の合わせ面となる部分の一方に基剤を塗工し、次いで、塗工された基剤を内包するようにして支持体を折り畳むことが製造工程上の観点から好ましいとされている。
【0007】
しかしながら、基剤が塗工された一の支持体に他の支持体をぴったりと重ね合わせたり、基剤が塗工された支持体を正確に折り合わせたりすることは困難であった。
【0008】
本発明は前記技術的課題に鑑みて開発されたものであり、支持体を重ね合わせた合わせ面間に基剤が挟み込まれてなる外用貼付剤の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記技術的課題を解決するための本発明の外用貼付剤の製造方法は、二枚の支持体を重ね合わせた合わせ面間、又は、一枚の支持体を折ることによって重ね合わせた合わせ面間に基剤が挟み込まれてなり、重なり合う支持体を剥離したり展開したりして基剤を露出させた後、皮膚表面に貼付する使用形態となされた外用貼付剤の製造方法であって、帯状の支持体を送り出しながら基剤を塗工する塗工工程と、一の支持体に他の支持体を積層又は支持体を長さ方向に沿う折り目で折ることによって支持体を重ね合わせる積層工程と、を実行することによって合わせ面間に基剤が挟み込まれてなる帯状の積層体を作成した後、前記積層体を所定の形状に切断する切断工程を実行することを特徴とする(以下、「本発明製造方法」と称する。)。
【0010】
前記本発明製造方法においては、前記塗工工程の実行時、支持体の片側面に部分的に基剤を塗工することが好ましい態様となる。
【0011】
前記本発明製造方法においては、前記塗工工程の実行時、孔版印刷によって、支持体の片側面に部分的に基剤を塗工することが好ましい態様となる。
【0012】
前記本発明製造方法においては、前記積層工程の実行時、支持体を長さ方向に沿う二条の折り目で両側を内方に向かって折ることが好ましい態様となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明製造方法によれば、重ね合わせた支持体の合わせ面間に基剤が挟み込まれてなる外用貼付剤を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る本発明製造方法を実行するための製造装置を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、前記本発明製造方法における塗工工程の実行によって基剤が積層された支持体を示す断面図(a)と、積層工程の実行によって作成された積層体を示す断面図(b)と、切断工程の実行によって作成された外用貼付剤を示す斜視図(c)である。
【
図3】
図3は、塗工工程と積層工程とを同時に行う本発明製造方法を実行するための製造装置を概略的に示す側面図である。
【
図4】
図4は、実施形態2に係る本発明製造方法を実行するための製造装置を概略的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、前記本発明製造方法における塗工工程の実行によって基剤が積層された支持体を示す断面図(a)と、積層工程の実行により作成された積層体を示す断面図(b)と、作成された外用貼付剤を示す斜視図(c)である。
【
図6】
図6は、塗工工程の実行時に支持体に部分的に基剤を塗工し、更に、積層工程の実行時に支持体を長さ方向に沿う二条の折り目で両側を内方に向かって折る本発明製造方法を実行するための製造装置を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0016】
[実施形態1]
<本発明製造方法>
図1に、実施形態1に係る本発明製造方法を実行するための製造装置1を示す。本実施形態に係る前記本発明製造方法では、「塗工工程」と、「積層工程」と、「切断工程」と、を実行することによって、二枚の支持体2(21、22)を重ね合わせた合わせ面間に基剤3が挟み込まれてなる外用貼付剤10を製造する。
【0017】
‐塗工工程‐
前記塗工工程では、帯状の支持体2(21)を連続的又は間欠的に送り出しながら基剤3を塗工する。本実施形態においては、ロール状となされた不織布からなる支持体2(21)を連続的(又は間欠的)に引き出し、コーター5を通過させながらその片側面に順次基剤3を塗工することによって前記塗工工程を実行した。この塗工工程の実行により、
図2(a)に示すような、片側面に基剤3が積層された支持体2(21)が作成される。
【0018】
‐積層工程‐
前記積層工程では、一の支持体2(21)に他の支持体2(22)を積層することによって支持体2(21、22)を重ね合わせる。本実施形態においては、ロール状となされた不織布からなる支持体2(22)を連続的に引き出しながら、ピンチローラ6にて前記塗工工程の実行後の支持体2(21)における基剤3の塗工面に重ね合わせることによって前記積層工程を実行した。この積層工程の実行により、
図2(b)に示すような、支持体2(21、22)同士の合わせ面間に基剤3が挟み込まれてなる帯状の積層体4が作成される。
【0019】
‐切断工程‐
前記切断工程では、前記積層体4を所定の形状に切断する。本実施形態においては、前記積層体4をダイカットロール7に挟み込んで順次送り出しながら、前記ダイカットロール7の表面に設けられた所定形状の打ち抜き刃で打ち抜くことによって、前記切断工程を実行した。この切断工程の実行により、
図2(c)に示すような二枚の支持体2(21、22)を重ね合わせた合わせ面間に基剤3が挟み込まれてなる外用貼付剤10が製造される。本実施形態においては、前記外用貼付剤10を目の周りに貼付するための形状に加工しており、前記外用貼付剤10は、重なり合う支持体2(21、22)を剥離して基剤3を露出させた後、各支持体2(21、22)における基剤3の塗工面を目の周りに貼付する使用形態となされている。
【0020】
前記本発明製造方法の各工程を経て製造される外用貼付剤10は、前記塗工工程と、積層工程と、を実行することによって帯状の積層体4を作成した後、前記積層体4を所定の形状に切断する切断工程を実行するため、前記積層工程の実行時に一の支持体2(21)に他の支持体2(22)を積層するにあたり多少のずれが生じていても、製造される外用貼付剤10に対して一定の品質を担保することができる。又、製造される外用貼付剤10の形状を複雑なものに設定することも容易となる。
【0021】
なお、本実施形態においては、前記塗工工程の実行後に前記積層工程を実行することによって前記積層体4を作成しているが、
図3に示すように、前記塗工工程と前記積層工程とを同時に実行しても良い。
【0022】
又、本実施形態においては、前記支持体2(21、22)として不織布を用いているが、前記支持体2(21、22)としては特に限定されるものではなく、不織布以外の織布や高分子フィルム、或いはこれらの積層シート等を適宜選択して用いることができる。
【0023】
更に、基剤3としても特に限定されるものではなく、溶液状、クリーム状、ゲル状、或いは軟膏状の油性基剤や親水性基剤を適宜選択して使用することができる。又、前記基剤3は前記支持体2(21、22)の片側面に塗工された状態で留まる剤型のみに限られず、塗工後に前記支持体2(21、22)に浸透するものや、塗工面の裏側まで達する剤型のものも用いることができる。
【0024】
[実施形態2]
図4に、実施形態2に係る本発明製造方法を実行するための製造装置1を示す。本実施形態に係る前記本発明製造方法では、「塗工工程」と、「積層工程」と、「切断工程」と、を実行することによって、一枚の支持体2を折ることによって重ね合わせた合わせ面間に基剤3が挟み込まれてなる外用貼付剤10を製造する。
【0025】
‐塗工工程‐
前記塗工工程では、帯状の支持体2を連続的(又は間欠的)に送り出しながら基剤3を塗工する。本実施形態においては、前記実施形態1と同様、ロール状となされた不織布からなる支持体2を連続的に引き出し、コーター5を通過させながらその片側面に順次基剤3を塗工することによって前記塗工工程を実行した。この塗工工程の実行により、
図5(a)に示すような、片側面に基剤3が積層された支持体2が作成される。
【0026】
‐積層工程‐
前記積層工程では、支持体2を長さ方向に沿う折り目で折ることによって支持体2を重ね合わせる。本実施形態においては、前記塗工工程の実行後の支持体2における基剤3の塗工面が内側になるように折った後、ピンチローラ6にて挟み込むことによって、前記積層工程を実行した。この積層工程の実行により、
図5(b)に示すような、支持体2の合わせ面間に基剤3が挟み込まれてなる帯状の積層体4が作成される。
【0027】
‐切断工程‐
前記切断工程では、前記積層体4を所定の形状に切断する。本実施形態においては、前記積層体4をダイカットロール7に挟み込んで順次送り出しながら、前記ダイカットロール7の表面に設けられた所定形状の打ち抜き刃で打ち抜くことによって、前記切断工程を実行した。この切断工程の実行により、
図5(c)に示すような支持体2を折り重ね合わせた合わせ面間に基剤3が挟み込まれてなる外用貼付剤10が製造される。本実施形態においては、前記切断工程において、前記外用貼付剤10を顔全体に貼付するための二種の形状(10A、10B)に同時に加工しており、前記外用貼付剤10は、重なり合う支持体2を展開して基剤3を露出させた後、支持体2における基剤3の塗工面を顔に貼付する使用形態となされている。
【0028】
ところで、(前記実施形態1を含めて)本実施形態においては、前記塗工工程の実行にあたり、支持体2の片側面全体に基剤3を塗工しているが、本発明製造方法では、前記切断工程の実行によって外用貼付剤10となる部分以外は原則的に廃棄処分されることになるため、廃棄される部分に塗工された基剤3が無駄になる。
【0029】
この点につき、
図6に示す製造装置1のように、塗工工程における支持体2への基剤3の塗工を部分的なものとすれば、基剤3の無駄が少なくなり、製造コストを減じることができる。前記塗工工程において支持体2に部分的に基剤3を塗工する手段としては、例えば、スクリーン印刷等の孔版印刷や、可動式の定量吐出ノズルによる部分塗工等を挙げることができる。
【0030】
又、本実施形態においては、前記積層工程の実行にあたり、帯状の支持体2を長さ方向に沿う一条の折り目で折る(二つ折りする)ことによって支持体を重ね合わせているが、本発明製造方法では、
図6に示す製造装置1のように、前記積層工程の実行時に、支持体2を長さ方向に沿う二条の折り目で両側を内方に向かって折る(観音折りする)ことが好ましい態様となる。
【0031】
このように、前記積層工程の実行時に支持体2の両側を内方に向かって折れば、一の製造ラインにおいて二倍の効率で外用貼付剤10を製造することができるようになり、製造コストを減じることができる。
【0032】
なお、前記積層工程の実行時においては、
図6に示すように、予め支持体2に内包に向かうスリット8を設ければ、前記スリット8が折り代となり、前記積層工程の実行がより容易且つ正確になる利点が生じる。
【0033】
その余は、前記実施形態1と同様であり、繰り返しの説明を避けるべく、ここでは説明を省略する。
【0034】
なお、本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、重ね合わせた支持体の合わせ面間に基剤が挟み込まれてなる外用貼付剤の製造方法として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0036】
1 製造装置
2 支持体
3 基剤
4 積層体
5 コーター
6 ピンチローラ
7 ダイカットロール
8 スリット
10 外用貼付剤