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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】受信装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/38 20060101AFI20220516BHJP
   H04B 10/556 20130101ALI20220516BHJP
【FI】
H04L27/38
H04B10/556
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019179758
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021057785
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】マニカット ラチャタ
(72)【発明者】
【氏名】別府 翔平
(72)【発明者】
【氏名】釣谷 剛宏
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-111771(JP,A)
【文献】特開2000-224250(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0257896(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03306884(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0149239(US,A1)
【文献】Shaohua Hu et al.,MAP Detection of Probabilistically Shaped Constellations in Optical Fiber Transmissions,2019 Optical Fiber Communications Conference and Exhibition (OFC),IEEE,2019年03月07日,https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=8696456
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/38
H04B 10/556
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基準シンボルを定義する直交振幅変調を使用する通信システムの受信装置であって、
受信した複数のシンボルそれぞれの雑音に基づき雑音の分散を判定する雑音判定手段であって、受信したシンボルの雑音は、当該受信したシンボルと、前記複数の基準シンボルの内の当該受信したシンボルとの複素平面における距離が最も短い第1基準シンボルとの距離に基づく値である、前記雑音判定手段と、
受信した前記複数のシンボルの前記複素平面における第1方向の振幅のヒストグラムであって、前記第1方向は実軸方向又は虚軸方向である、前記ヒストグラムを判定するヒストグラム判定手段と、
前記ヒストグラム判定手段が判定したヒストグラムと、前記雑音判定手段が判定した分散とに基づき、前記複数の基準シンボルそれぞれについて、前記受信装置における前記第1方向の振幅の複数の分布を判定する分布判定手段と、
前記複数の分布の交点に基づき、受信するシンボルが前記複数の基準シンボルのいずれに対応するかを判定するための1つ以上の閾値を判定する閾値判定手段と、
を備えていることを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記雑音判定手段は、受信したシンボルと前記第1基準シンボルとの前記第1方向の距離を、当該受信したシンボルの雑音と判定することを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記分布判定手段が判定する前記複数の分布の数は、前記複数の基準シンボルの前記第1方向の振幅の数に等しいことを特徴とする請求項1又は2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記分布判定手段が判定する前記複数の分布の分散は、前記雑音判定手段が判定した分散に等しいことを特徴とする請求項に記載の受信装置。
【請求項5】
前記分布判定手段は、前記ヒストグラムが示す振幅と度数との関係を近似する曲線を求め、前記曲線に基づき前記複数の分布を判定することを特徴とする請求項に記載の受信装置。
【請求項6】
前記閾値判定手段が判定する1つ以上の閾値は、前記実軸方向及び前記虚軸方向の両方において使用されることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項7】
1つ以上のプロセッサを有する装置の前記1つ以上のプロセッサで実行されると、前記装置を請求項1からのいずれか1項に記載の受信装置として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、確率的整形技術を使用する通信システムの受信装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、長距離光通信システムは、その伝送容量の拡大のため、直接検波方式からコヒーレント検波方式に移行している。コヒーレント検波方式においては、多値(M値)の直交振幅変調(M-QAM)が使用される。M-QAMにおいては、複素平面上にM個の基準シンボルの座標(コンスティレーション)が定義される。各基準シンボルは、Mの値に応じて決まる所定数のビット列に対応付けられる。送信装置は、送信ビット列を所定数のビット列に分割し、所定数のビット列の送信順序に応じて、対応する基準シンボルの信号を順に送信する。なお、基準シンボルの信号を送信するとは、基準シンボルの座標に対応する振幅及び位相の信号を送信することを意味する。1つの基準シンボルを送信する期間はシンボル期間と呼ばれ、基準シンボルの切り替え速度は、シンボル速度又は変調速度と呼ばれる。
【0003】
光通信システムにおいて、受信装置は、送信装置が送信した基準シンボル列である変調信号を受信する。但し、光通信システムの非線形な特性や雑音により、受信装置が受信するシンボル(以下、受信シンボル)を複素平面上で示した場合、受信シンボルは、基準シンボルの座標とは異なる座標となる。なお、M-QAMを使用した変調信号の場合、この非線形な特性による影響は基準シンボル毎に異なる。これは、基準シンボルにより誤り確率が異なることを意味する。このため、非特許文献1は、確率的整形(以下、PS:Probabilistic Shaping)技術を用いた光通信システムを開示している。
【0004】
PS技術とは、I軸及びQ軸方向の絶対振幅が小さい基準シンボル程、出現確率が大きくなる様に、送信装置において、所定の規則に従い送信ビット列の変換を行う技術である。これにより平均パワーが大きい基準シンボル程、出現確率が小さくなるため、通常のM-QAMよりも全体的な誤りの発生確率を小さくすることができる。
【0005】
また、非特許文献1は、PS技術を用いた光通信システムの受信装置において最大事後確率(MAP)検出を行うことを開示している。具体的には、非特許文献1は、受信シンボルが、M-QAMで定義されるどの基準シンボルに対応するかを受信装置が判定するための閾値を、各基準シンボルの出現確率に基づき決定することを開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】S.Hu,et al.,"MAP Detection of Probabilistically Shaped Constellations in Optical Fiber Transmissions",2019 Optical Fiber Communications Conference and Exhibition(OFC),San Diego,CA,USA,pp.1-3,2019年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1は、事前に求めた各基準シンボルの出現確率に基づき計算により閾値を求めることを開示するのみであり、受信装置が個々の通信システムにおける実測値に基づき動的に閾値を設定するための構成を開示してはいない。
【0008】
本発明は、受信したシンボルがどの基準シンボルに対応するかを判定するために使用する閾値を受信装置が動的に設定する技術を開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によると、複数の基準シンボルを定義する直交振幅変調を使用する通信システムの受信装置は、受信した複数のシンボルそれぞれの雑音に基づき雑音の分散を判定する雑音判定手段であって、受信したシンボルの雑音は、当該受信したシンボルと、前記複数の基準シンボルの内の当該受信したシンボルとの複素平面における距離が最も短い第1基準シンボルとの距離に基づく値である、前記雑音判定手段と、受信した前記複数のシンボルの前記複素平面における第1方向の振幅のヒストグラムであって、前記第1方向は実軸方向又は虚軸方向である、前記ヒストグラムを判定するヒストグラム判定手段と、前記ヒストグラム判定手段が判定したヒストグラムと、前記雑音判定手段が判定した分散とに基づき、前記複数の基準シンボルそれぞれについて、前記受信装置における前記第1方向の振幅の複数の分布を判定する分布判定手段と、前記複数の分布の交点に基づき、受信するシンボルが前記複数の基準シンボルのいずれに対応するかを判定するための1つ以上の閾値を判定する閾値判定手段と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、受信したシンボルがどの基準シンボルに対応するかを判定するために使用する閾値を受信装置が動的に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態による受信装置の構成図。
図2】一実施形態による基準シンボルと閾値セットとを示す図。
図3】受信シンボル列、判定する閾値セット及び復調に使用する閾値セットの関係の説明図。
図4】一実施形態による閾値判定部の構成図。
図5】一実施形態によるヒストグラムを示す図。
図6】一実施形態による閾値セットの求め方の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうちの二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。さらに、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。
【0013】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態による通信システムの受信装置の構成図である。なお、本実施形態の通信システムは、PS技術を使用するものとする。つまり、送信装置は、送信ビット列を所定の変換規則に基づき変換することで、M-QAMの各基準シンボルの出現確率を異ならせる。なお、以下の説明において、通信システムが使用する変調方式を16QAMとする。
【0014】
受信部2は、光源1からの局所光に基づき、送信装置から受信する変調光をコヒーレント受信して電気信号を出力する。この電気信号は、変調速度に応じて切り替わる受信シンボルを示す信号である。閾値判定部4は、受信シンボルが16QAMのどの基準シンボルに対応するかを判定するための閾値セットを求めて復調部3に通知する。復調部3は、閾値判定部4から通知される閾値セットに基づき受信シンボルが16QAMのどの基準シンボルに対応するかを判定してビット列を出力する。その後、このビット列は、送信装置における変換規則とは反対の変換規則により変換される。これにより、送信装置における送信ビット列が復元される。
【0015】
図2は、閾値判定部4が判定する閾値セットの説明図である。図2の黒丸は、16QAMで定義される16個の基準シンボルを示している。16QAMの場合、実軸(I軸)方向及び虚軸(Q軸)方向それぞれにおいて、シンボルの振幅は4段階であるため、各軸方向それぞれについて、3つの閾値を求める。図2においては、I軸方向の振幅に対する閾値51、52及び53と、Q軸方向の振幅に対する閾値61、62、63を求めている。閾値セットは、この6つの閾値のセットである。なお、一般的には、M-QAMの場合、N=Mとすると、N-1個の閾値を各軸方向に設定することになる。復調部3は、受信シンボルのI軸方向の振幅及びQ軸方向の振幅を、各閾値と比較することで、受信シンボルに対応する16QAMの基準シンボルを判定する。
【0016】
なお、コヒーレント光通信システムにおいて生じる雑音は、光増幅器での増幅自然放出光(ASE)が支配的であり、ASEは、I軸方向とQ軸方向において差が無い。したがって、本実施形態では、閾値51と閾値61を同じ値とし、閾値52と閾値62を同じ値とし、閾値53と閾値62を同じ値とする。つまり、本実施形態において、閾値判定部4は、3つの閾値を含む閾値セットを復調部3に出力する。
【0017】
図3は、閾値判定部4における閾値セットの判定と、復調部3が復調に使用する閾値セットとの関係の説明図である。閾値判定部4は、連続する複数の受信シンボルを含む受信シンボル列#kに基づき、閾値セット#kを判定する。復調部3は、閾値セット#kを使用して、受信シンボル列#kの次の受信シンボル列#k+1の復調を行う。そして、閾値判定部4は、受信シンボル列#k+1に基づき、閾値セット#k+1を判定する。なお、通信開始時において、復調部3が最初の受信シンボル列#1の復調に使用する閾値セット#0は、初期値として予め受信装置の図示しない記憶部に格納しておく。或いは、通信開始時において、ユーザデータを送信する前に、各受信シンボル列の長さに等しいトレーニングシーケンスを送信装置が送信して閾値判定部4に閾値セットを判定させ、復調部4は、続けて送信装置が送信する受信シンボル列#1の復調に、閾値判定部4がトレーニングシーケンスに基づき判定した閾値セットを使用する構成とすることもできる。
【0018】
図4は、閾値判定部4の構成図である。受信シンボル列#kの各受信シンボルは、順に、雑音判定部41とヒストグラム判定部42に入力される。雑音判定部41は、受信シンボルと、当該受信シンボルとの距離が最も近い基準シンボルとの距離を当該受信シンボルの雑音と判定する。言い換えると、受信シンボルと16QAMの各基準シンボルとの距離の内の最小値を、当該受信シンボルの雑音と判定する。なお、受信シンボルと基準シンボルとの距離とは、受信シンボルの振幅及び位相を複素平面上の座標で表した場合における、受信シンボルの座標と、基準シンボルの座標(図2の黒丸の位置)との距離である。雑音判定部41は、受信シンボル列#kの各受信シンボルについて求めた雑音の分散Vを判定して分布判定部43に通知する。
【0019】
ヒストグラム判定部42は、受信シンボルそれぞれについてI軸又はQ軸方向の振幅を求める。なお、I軸方向の振幅とは、受信シンボルに対応する複素平面上の座標のI軸の値であり、Q軸方向の振幅とはQ軸の値である。なお、振幅を求める軸については統一する。本例において、ヒストグラム判定部42は、I軸方向の振幅を求めるものとする。ヒストグラム判定部42は、I軸方向の振幅毎に出現回数を求めて、ヒストグラムデータを生成し、生成したヒストグラムデータを分布判定部43に出力する。
【0020】
図5は、ヒストグラム判定部42が生成するヒストグラムデータが示すヒストグラムを示している。図5において、横軸はI軸方向の振幅であり、縦軸は出現回数(度数)である。16QAMの場合、16個の基準シンボルのI軸方向の振幅は、正規化すると、-3、-1、1、3のいずれかである。したがって、一般的に、ヒストグラムは、図5に示す様に、振幅-3、-1、1、3近辺にピークを持つ形状となる。なお、各シンボルの出現確率が等しい通信システムでは、振幅-3、-1、1、3近辺のピークは同程度の値となる。しかしながら、本実施形態の通信システムは、PS技術を使用しているため、各シンボルの出現確率は一様ではなく、よって、ピークの値(度数)は異なっている。
【0021】
分布判定部43は、ヒストグラムデータ示すヒストグラムを、カーブフィッティングにより曲線で近似する。そして、分布判定部43は、近似した曲線に最も一致する様に、雑音判定部41から通知された分散Vの4つのガウス分布を判定する。なお、4つとするのは、16QAMにおいては、I軸方向の振幅の数が4つであるからである。一般的には、M-QAMの場合、N=Mとすると、N個の分布を求めることになる。なお、4つのガウス分布と確率密度0の直線とで囲まれた領域の面積が1となる様に4つのガウス分布を求める。
【0022】
図6は、分布判定部43が求めた4つのガウス分布を示している。分布判定部43は、求めた4つのガウス分布を示す分布データを交点判定部44に通知する。交点判定部44は、4つのガウス分布の内の2つの隣接するガウス分布の交点を求める。例えば、分布判定部43が求めた4つのガウス分布が図6の通りであると、交点判定部44は、交点71、交点72及び交点73の計3つの交点を求める。交点71は、図2の閾値51及び閾値61に対応し、交点72は、図2の閾値52及び閾値62に対応し、交点73は、図2の閾値53及び閾値63に対応する。交点判定部44は、この様にして求めた3つの閾値を閾値セット#kとして復調部3に通知する。
【0023】
例えば、閾値73は、振幅3の基準シンボルであるか、振幅1の基準シンボルであるかの判定に使用される。ここで、振幅3の基準シンボルであっても、受信シンボルの振幅が閾値73より小さいと、受信装置は振幅1の基準シンボルと誤判定する。つまり、図6の一番右側の分布の内、閾値73以下の面積は、振幅3の基準シンボルを振幅1の基準シンボルと誤判定する確率を示し、その左隣の分布の内、閾値73以上の部分の面積は、振幅1の基準シンボルを振幅3の基準シンボルに誤判定する確率を示している。図6から明らかな様に、隣接する2つの分布の交点を閾値に設定することで、全体的な誤判定の確率を小さくすることができる。
【0024】
以上、受信シンボルが、M-QAMのどの基準シンボルに対応するかを判定するために使用する閾値の決定に、実際の受信シンボルのI軸又はQ軸方向の振幅の分布を使用する。なお、振幅の分布は、実際の受信シンボルの雑音の分散を考慮して決定する。この構成により、PS技術を使用した通信システムにおいて、実測値に基づき動的に閾値を制御することができる。
【0025】
なお、本実施形態では、受信シンボルと、当該受信シンボルに最も近いM-QAMの基準シンボルとの距離を雑音としていた。しかしながら、送信装置により送信された基準シンボルが、受信シンボルに最も近い基準シンボルとは限らず、送信された基準シンボルが、受信シンボルに最も近い基準シンボルではない場合、雑音を小さく評価することになる。しかしながら、実際の通信システムにおいて、送信された基準シンボルが、受信シンボルに最も近い基準シンボルではない確率は十分に小さく、よって、求められる雑音の分散Vに大きな影響を与えない。
【0026】
<その他の実施形態>
上記実施形態において、雑音判定部41は、受信シンボルと、当該受信シンボルとの距離が最も近いM-QAMのシンボルとの距離を当該受信シンボルの雑音と判定していた。しかしながら、I軸方向の振幅に基づきヒストグラムを判定するため、受信シンボルに対応する複素平面上の座標のI軸の値と、当該受信シンボルに最も近い基準シンボルの座標のI軸の値との差を、当該受信シンボルの雑音として分散を求める構成とすることもできる。なお、この場合、Q軸方向の振幅に基づきヒストグラムを判定する場合には、Q軸方向の雑音から分散を求める。
【0027】
また、上記実施形態においては、閾値51及び閾値61を同じ値とし、閾値52及び閾値62を同じ値とし、閾値53及び閾値63を同じ値としていた。しかしながら、I軸方向の閾値51、閾値52及び閾値53と、Q軸方向の閾値61、閾値62及び閾値63とを個別に求める構成とすることもできる。この場合、I軸方向の閾値は、I軸方向の振幅に基づくヒストグラムと、I軸方向の雑音の分散に基づき求め、Q軸方向の閾値は、Q軸方向の振幅に基づくヒストグラムと、Q軸方向の雑音の分散に基づき求める。
【0028】
また、上記実施形態において、分布判定部43は、ヒストグラムデータ示すヒストグラムを、カーブフィッティングにより曲線で近似し、近似した曲線に最も一致する様に、分散Vの複数(N個)のガウス分布を判定していた。しかしながら、ヒストグラムに基づきN個のピーク値の振幅を判定し、平均値をこのピーク値とし、分散を雑音判定部41から通知された分散VとするN個のガウス分布を判定する構成であっても良い。なお、ピーク値を判定する振幅の範囲については、基準シンボルの振幅に基づき制限する構成とすることもできる。また、ヒストグラムに基づきN個のピーク値を求めて、これを平均とするガウス分布を求めるのではなく、基準シンボルのN個の振幅を平均値とし、分散を雑音判定部41から通知された分散VとするN個のガウス分布を求める構成とすることもできる。
【0029】
また、上記実施形態では、図3に示す様に、閾値判定部4は、受信シンボル列毎に連続して閾値セットを求めていたが、間欠的に閾値セットを求める構成であっても良い。この場合、復調部3は、閾値判定部4から閾値セットが通知される度に、復調に使用する閾値セットを更新する。さらに、送信装置が周期的に、受信装置に公知のシンボル列をトレーニングシーケンスとして送信し、閾値判定部4は、送信装置がトレーニングシーケンスを送信する度に、閾値セットを求める構成であっても良い。また、閾値判定部4が、周期的に閾値セットを更新するのではなく、非周期的に閾値セットを更新する構成であっても良い。例えば、通信の開始時や、通信断からの復帰時といった所定のトリガが生じる度に、閾値判定部4が、トレーニングシーケンス又は受信シンボルから閾値セットを判定する構成とすることもできる。
【0030】
なお、本発明による閾値判定部4での処理は、適切なプログラムを1つ以上のプロセッサで実行させることで行うことができる。つまり、本発明は、1つ以上のプロセッサを有する装置の当該1つ以上のプロセッサで実行されると、当該装置を上述した受信装置として動作させるコンピュータプログラムにより実現することができる。これらコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【符号の説明】
【0031】
1:光源、2:受信部、3:復調部、4:閾値判定部、41:雑音判定部、42:ヒストグラム判定部、43:分布判定部、44:交点判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6