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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】超音波皮下プローブによるスプーフ検出
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20220516BHJP
   G01S 15/10 20060101ALI20220516BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20220516BHJP
   A61B 5/1172 20160101ALN20220516BHJP
【FI】
A61B8/00
G01S15/10
H04R17/00 332A
A61B5/1172
【請求項の数】 33
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019205581
(22)【出願日】2019-11-13
(62)【分割の表示】P 2018514828の分割
【原出願日】2016-09-21
(65)【公開番号】P2020032247
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2019-12-12
(31)【優先権主張番号】14/863,114
(32)【優先日】2015-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507364838
【氏名又は名称】クアルコム,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】ジャック・コンウェイ・キッチンズ・ザ・セカンド
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・キース・シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・マイケル・ゴジェヴィック
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ディキンソン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ジョン・シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】エヴァン・ブレロフ
(72)【発明者】
【氏名】エヴァン・ロバート・ヒルドレス
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0215150(US,A1)
【文献】特開平11-221203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00
G01S 15/10
H04R 17/00
A61B 5/1172
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザを検証する方法であって、
送信層を介して、プラテンに近接した対象物に向かって移動する少なくとも1つの超音波信号を生成するステップであって、前記対象物が外面と複数の内部構造とを有する、ステップと、
超音波受信機を介して、前記対象物から反射された超音波エネルギーを検出するステップと、
指の皮膚紋理を含む前記外面と乳頭を含む前記複数の内部構造とを示す分析結果を提供するために、前記検出された超音波エネルギーを分析するステップであって、
前記複数の内部構造は、複数の距離によって示され、
前記複数の距離の各距離は、前記外面と前記複数の内部構造のうちの1つの内部構造との間で測定される、ステップと、
前記分析結果をテンプレートと比較するステップであって、前記テンプレートは、前記複数の内部構造に対応する複数の距離から構成される、ステップと、
前記分析結果のうちのいくつかが前記テンプレートの前記複数の距離のうちのいくつかに一致することに基づいて、前記分析結果および前記テンプレートが同様であると決定するステップと、
前記ユーザが検証されたことを示すステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記テンプレートが、前記対象物の前記外面から、前記対象物内の前記複数の内部構造のうちの少なくともいくつかの内部構造までの距離を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記テンプレートは、前記対象物の内部部分の間の距離を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の距離の各距離は、前記外面からの超音波エネルギーの反射と、前記複数の内部構造のうちの1つの内部構造からの超音波エネルギーの反射との間の経過時間に少なくとも部分的に基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の内部構造が、組織層、1つまたは複数の乳頭、血管、脂肪、筋肉、および骨を含む構造のグループから選択される少なくとも1つの構造を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記分析結果が、前記少なくとも1つの超音波信号の生成と、前記複数の内部構造のうちの1つの内部構造から反射された超音波エネルギーの検出との間の時間の量に対応する複数の時間をさらに示す、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記分析結果は、反射エネルギー信号比を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
1つまたは複数の内部構造によって反射されたエネルギーの量を決定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
超音波センサシステムであって、
圧電送信層と、
複数の受信機を有する超音波受信機アレイと、
プラテンと、
制御電子回路と
を備え、前記制御電子回路が、
送信層を介して、プラテンに近接した対象物に向かって移動する少なくとも1つの超音波信号を生成することであって、前記対象物が外面と複数の内部構造とを有する、生成することと、
超音波受信機を介して、前記対象物から反射された超音波エネルギーを検出することと、
指の皮膚紋理を含む前記外面と乳頭を含む前記複数の内部構造とを示す分析結果を提供するために、前記検出された超音波エネルギーを分析することであって、
前記複数の内部構造は、複数の距離によって示され、
前記複数の距離の各距離は、前記外面と前記複数の内部構造のうちの1つの内部構造との間で測定される、分析することと、
前記分析結果をテンプレートと比較することであって、前記テンプレートは、前記複数の内部構造に対応する複数の距離から構成される、比較することと、
前記分析結果のうちのいくつかが前記テンプレートの前記複数の距離のうちのいくつかに一致することに基づいて、前記分析結果および前記テンプレートが同様であると決定することと、
ユーザが検証されたことを示すことと
を行うように構成される、超音波センサシステム。
【請求項10】
前記テンプレートが、前記対象物の前記外面から、前記対象物内の前記複数の内部構造のうちの少なくともいくつかの内部構造までの距離を示す、請求項9に記載の超音波センサシステム。
【請求項11】
前記テンプレートは、前記対象物の内部部分の間の距離を示す、請求項9に記載の超音波センサシステム。
【請求項12】
前記複数の距離の各距離は、前記外面からの超音波エネルギーの反射と、前記複数の内部構造のうちの1つの内部構造からの超音波エネルギーの反射との間の経過時間に少なくとも部分的に基づいている、請求項9に記載の超音波センサシステム。
【請求項13】
前記複数の内部構造が、組織層、1つまたは複数の乳頭、血管、脂肪、筋肉、および骨を含む構造のグループから選択される少なくとも1つの構造を含む、請求項9に記載の超音波センサシステム。
【請求項14】
前記分析結果が、前記少なくとも1つの超音波信号の生成と、前記複数の内部構造のうちの1つの内部構造から反射された超音波エネルギーの検出との間の時間の量に対応する複数の時間をさらに示す、請求項9に記載の超音波センサシステム。
【請求項15】
前記分析結果は、反射エネルギー信号比を示す、請求項9に記載の超音波センサシステム。
【請求項16】
前記制御電子回路が、1つまたは複数の内部構造によって反射されたエネルギーの量を決定することを行うようにさらに構成される、請求項9に記載の超音波センサシステム。
【請求項17】
前記制御電子回路が、プロセッサを含む、請求項16に記載の超音波センサシステム。
【請求項18】
コンピュータ可読命令を記憶した1つまたは複数の非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ可読命令が、プロセッサに、
送信層を介して、プラテンに近接した対象物に向かって移動する少なくとも1つの超音波信号を生成することであって、前記対象物が外面と複数の内部構造とを有する、生成することと、
超音波受信機を介して、前記対象物から反射された超音波エネルギーを検出することと、
指の皮膚紋理を含む前記外面と乳頭を含む前記複数の内部構造とを示す分析結果を提供するために、前記検出された超音波エネルギーを分析することであって、
前記複数の内部構造は、複数の距離によって示され、
前記複数の距離の各距離は、前記外面と前記複数の内部構造のうちの1つの内部構造との間で測定される、分析することと、
前記分析結果をテンプレートと比較することであって、前記テンプレートは、前記複数の内部構造に対応する複数の距離から構成される、比較することと、
前記分析結果のうちのいくつかが前記テンプレートの前記複数の距離のうちのいくつかに一致することに基づいて、前記分析結果および前記テンプレートが同様であると決定することと、
ユーザが検証されたことを示すことと
を行わせる、1つまたは複数の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
前記テンプレートが、前記対象物の前記外面から、前記対象物内の前記複数の内部構造のうちの少なくともいくつかの内部構造までの距離を示す、請求項18に記載の1つまたは複数の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
前記テンプレートは、前記対象物の内部部分の間の距離を示す、請求項18に記載の1つまたは複数の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項21】
前記複数の距離の各距離は、前記外面からの超音波エネルギーの反射と、前記複数の内部構造のうちの1つの内部構造からの超音波エネルギーの反射との間の経過時間に少なくとも部分的に基づいている、請求項18に記載の1つまたは複数の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項22】
超音波センサシステムであって、
送信層を介して、プラテンに近接した対象物に向かって移動する少なくとも1つの超音波信号を生成するための手段であって、前記対象物が外面と複数の内部構造とを有する、手段と、
超音波受信機を介して、前記対象物から反射された超音波エネルギーを検出するための手段と、
指の皮膚紋理を含む前記外面と乳頭を含む前記複数の内部構造とを示す分析結果を提供するために、前記検出された超音波エネルギーを分析するための手段であって、
前記複数の内部構造は、複数の距離によって示され、
前記複数の距離の各距離は、前記外面と前記複数の内部構造のうちの1つの内部構造との間で測定される、手段と、
前記分析結果をテンプレートと比較するための手段であって、前記テンプレートは、前記複数の内部構造に対応する複数の距離から構成される、手段と、
前記分析結果のうちのいくつかが前記テンプレートの前記複数の距離のうちのいくつかに一致することに基づいて、前記分析結果および前記テンプレートが同様であると決定するための手段と、
ユーザが検証されたことを示すための手段と
を含む超音波センサシステム。
【請求項23】
前記テンプレートが、前記対象物の前記外面から、前記対象物内の前記複数の内部構造のうちの少なくともいくつかの内部構造までの距離を示す、請求項22に記載の超音波センサシステム。
【請求項24】
前記テンプレートは、前記対象物の内部部分の間の距離を示す、請求項22に記載の超音波センサシステム。
【請求項25】
前記複数の距離の各距離は、前記外面からの超音波エネルギーの反射と、前記複数の内部構造のうちの1つの内部構造からの超音波エネルギーの反射との間の経過時間に少なくとも部分的に基づいている、請求項22に記載の超音波センサシステム。
【請求項26】
超音波センサシステムであって、
実質的に平坦な圧電送信層と、
複数の受信機を有する超音波受信機アレイと、
プラテンと、
制御電子回路と
を備え、前記制御電子回路が、
送信層を介して、プラテンに近接した対象物に向かって移動する超音波平面波を生成することであって、前記対象物が外面と複数の内部構造とを有する、生成することと、
超音波受信機を介して、前記対象物から反射された超音波エネルギーを検出することと、
指の皮膚紋理を含む前記外面と乳頭を含む前記複数の内部構造とを示す分析結果を提供するために、前記検出された超音波エネルギーを分析することであって、
前記複数の内部構造は、複数の距離によって示され、
前記複数の距離の各距離は、前記外面と前記複数の内部構造のうちの1つの内部構造との間で測定される、分析することと、
前記分析結果をテンプレートと比較することであって、前記テンプレートは、前記複数の内部構造に対応する複数の反射された超音波エネルギーに関する情報から構成される、比較することと、
前記分析結果のうちのいくつかが前記テンプレートの前記複数の距離のうちのいくつかに一致することに基づいて、前記対象物が生物の一部か否かを示すこと
を行うように構成される、超音波センサシステム。
【請求項27】
前記分析結果は、前記外面から、前記複数の内部構造のうちの少なくとも1つの内部構造までの距離をさらに示す、請求項26に記載の超音波センサシステム。
【請求項28】
前記分析結果は、前記外面からの超音波エネルギーの反射と、前記複数の内部構造のうちの1つの内部構造からの超音波エネルギーの反射との間の経過時間をさらに示す、請求項26に記載の超音波センサシステム。
【請求項29】
前記複数の内部構造が、組織層、1つまたは複数の乳頭、血管、脂肪、筋肉、および骨を含む構造のグループから選択される少なくとも1つの構造を含む、請求項26に記載の超音波センサシステム。
【請求項30】
前記分析結果が、前記超音波平面波の生成と、前記複数の内部構造のうちの少なくとも1つの内部構造から反射された超音波エネルギーの検出との間の時間の量に対応する複数の時間をさらに示す、請求項26に記載の超音波センサシステム。
【請求項31】
前記分析結果は、反射エネルギー信号比を示す、請求項26に記載の超音波センサシステム。
【請求項32】
前記テンプレートは、乳頭、血管、脂肪、筋肉、骨、またはそれらの組合せを含む少なくとも1つの指の内部構造からの反射された超音波エネルギーに関する情報を含む、請求項26に記載の超音波センサシステム。
【請求項33】
前記制御電子回路が、1つまたは複数の内部構造によって反射されたエネルギーの量を決定することを行うように構成される、請求項26に記載の超音波センサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、その全体がすべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる、2015年9月23日に出願した「SPOOF DETECTION BY ULTRASONIC SUBDERMAL PROBE」という名称の米国特許出願第14/863,114号の優先権を主張するものである。
【0002】
本明細書は、対象物が生きているか否かを決定するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
生体センサは、(a)あるアクティビティに従事することを認可された個人と、(b)そのアクティビティに従事することを認可されていない個人とを区別するために広く使用されている。たとえば、指紋センサは、一般に、個人によって提供される指紋がデータベース内の情報に一致するか否かを決定するために使用され、一致が決定された場合、個人はアクティビティに従事することを許可され得る。たとえば、個人は、ビルもしくは部屋に入ることを許可されるか、または、電子デバイス(セルフォンなど)を使用することを許可され得る。
【0004】
生体センサは、欺かれ(「スプーフィングされる(spoofed)」とも呼ばれる)、それによって、無認可の個人が、認可された個人のために確保されたアクティビティに従事できるようになる可能性がある。指紋センサのスプーフィングは、多数の異なる方法で達成され得る。これらには、偽の指紋の使用、および人の死んだ指の使用が含まれる。スプーフィングを防ぐ1つの方法は、バイオメトリックが生存性(liveness)に関連する特性を示すか否かを決定することを伴う。
【0005】
ユーザの識別および/または検証のためにますます多くのバイオメトリクスが使用されるようになるにつれて、セキュリティおよび精度を保証するために、生存性検出がますます重要になっている。識別システムおよび/または検証システムを欺く多くの方法は、生きていないスプーフを使用するので、生存性検出は重要である。たとえば、ラテックスは、認可されたユーザの指紋に似た隆線および谷線を有するように作られ得る。そのようなラテックスのスプーフが指紋スキャナに提示されると、スキャニングシステムは、ラテックスのスプーフが生物の一部ではないにもかかわらず、ラテックスのスプーフが認可されたユーザの指であると誤って結論付けることがある。したがって、バイオメトリックが生きているか否かを検出することができるシステムは、スプーフの存在を検出するのに有用になる。そのようなシステムでは、バイオメトリックが生きていなかったとの決定が行われる場合、バイオメトリックを提示した個人は、バイオメトリックが識別/検証データベース内の情報に一致する場合でも、要求したアクティビティを拒否されることになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で説明するものは、対象物が生きており、したがって、生きている個人の部分であるか否かを決定する方法である。そのような方法は、外面(たとえば、指の皮膚紋理(friction-ridge)表面)と内部部分(たとえば、組織層、乳頭、血管、脂肪、筋肉、爪、および骨)とを有する対象物を提供するステップと、送信機と、受信機と、コンピュータとを有するシステムを提供するステップとを含み得る。1つのそのようなシステムは、実質的に平坦な圧電送信層(piezoelectric transmit-layer)と、複数の受信機を有する超音波受信機アレイと、プラテンとを有する、超音波センサを有する。送信層は、プラテン上に存在する対象物に向かって移動する超音波平面波を生成することを行うようにされる。超音波受信機を使用して、対象物から反射された超音波エネルギーが検出される。分析結果を提供するために、検出された超音波エネルギーが分析され、分析結果がテンプレートと比較される。分析結果およびテンプレートが同様であるか否かについての決定が行われ、分析結果がテンプレートと同様であると決定される場合、対象物が生きていると宣言される。
【0007】
検出された超音波エネルギーを分析するステップは、対象物の外面から対象物の内部部分のうちの少なくとも1つまでの距離を決定するステップを含み得る。テンプレートは許容範囲を提供し得、決定された距離が許容範囲内である場合、対象物は生きていると宣言され得る。距離は、超音波エネルギーが対象物の外面から対象物の特定の内部部分まで移動するために必要とされる時間に関して表され得る。
【0008】
分析結果は、複数の時間を含み得る。たとえば、各時間は、平面波の生成と、内部部分のうちの1つから反射されたエネルギーの検出との間の時間の量であり得る。または、各時間は、エネルギー波が対象物(またはセンサ)のある部分から対象物(またはセンサ)の別の部分まで移動するために必要とされる時間の量であり得る。同様に、テンプレートは、複数の許容範囲であり得、分析結果およびテンプレートが同様であるか否かについての決定が行われ得る。たとえば、複数の時間の各々(または、所定の数)が、テンプレートの許容範囲のうちの1つ内であると決定される場合、分析結果およびテンプレートは、同様であると宣言され得る。
【0009】
分析結果は、(a)内部部分のうちの1つの表面によって反射されたエネルギー(「ERS」: energy reflected by a surface)の量を決定すること、(b)対象物によって反射されたエネルギー(「ERO」: energy reflected by the object)の総量を決定すること、および(c)ERSをEROによって除算することによって決定された、反射エネルギー信号比(「RESR」: reflected-energy-signal-ratio)であり得る。EROは、たとえば、超音波受信機アレイによって受信されたエネルギーを加算することによって決定され得る。そのような方法では、テンプレートは、対象物が生きていると宣言するか否かを決定するために、RESRと比較される比値を有し得る。テンプレートの比値は、許容値の範囲であり得る。
【0010】
代替的に、EROの代わりに、RESRは、対象物の内部部分によって反射されたエネルギー(「ERI」: energy reflected by the internal parts)の総量を決定すること、および、ERSをERIによって除算することによって決定され得る。ERIは、(a)対象物の内部構造によって反射され、(b)超音波受信機アレイによって受信された、エネルギーを加算することによって決定され得る。
【0011】
また、本明細書で説明するものは、対象物が生きており、したがって、生きている個人の部分であるか否かを決定するためのシステムである。たとえば、そのようなシステムは、送信機と、受信機と、コンピュータとを含み得る。1つのそのようなシステムは、実質的に平坦な圧電送信層と、複数の受信機を有する超音波受信機アレイと、プラテンとを有する、超音波センサ、およびコンピュータを有する。コンピュータは、超音波センサと通信中であり得、
(a)プラテン上に存在する対象物に向かって移動する平面波を生成することを、送信層に行わせること、
(b)分析結果を提供するために、超音波受信機によって検出された、反射された超音波エネルギーを分析すること、
(c)分析結果をテンプレートと比較すること、
(d)分析結果およびテンプレートが同様であるか否かを決定すること、ならびに
(e)分析結果がテンプレートと同様であると決定される場合、対象物が生きていると宣言すること
を行うようにプログラムされ得る。
概して、コンピュータは、本明細書で概説するものを含む、方法のステップを実行するように、非一時的コンピュータ可読記憶媒体を介してプログラムされ得る。
【0012】
より一般的には、対象物が生きているか否かを決定するためのシステムは、
(a)プラテン上に存在する対象物に向かって移動する超音波平面波を生成するための手段であって、対象物が外面と内部部分とを有する、手段と、
(b)対象物から反射された超音波エネルギーを検出するための手段と、
(c)分析結果を提供するために、検出された超音波エネルギーを分析するための手段と、
(d)分析結果をテンプレートと比較するための手段と、
(e)分析結果およびテンプレートが同様であるか否かを決定するための手段と、
(f)分析結果がテンプレートと同様であると決定される場合、対象物が生きていると宣言するための手段と
を備え得る。
【0013】
そのようなシステムの一実施形態では、検出された超音波エネルギーを分析するための手段は、外面から内部部分のうちの少なくとも1つまでの距離を決定するための手段を含み得、テンプレートは許容範囲であり、決定された距離が許容範囲内である場合、対象物が生きていると宣言するための手段は、そのように行う。そのようなシステムの別の実施形態では、検出された超音波エネルギーを分析するための手段は、外面からの平面波の反射と、内部部分のうちの少なくとも1つの反射との間の経過時間を決定するための手段を含み得、テンプレートは許容範囲であり、経過時間が許容範囲内である場合、対象物が生きていると宣言するための手段は、そのように行う。内部部分は、乳頭、1つまたは複数の血管、脂肪、筋肉、および骨からなるグループから選択され得る。
【0014】
また、本明細書で説明するものは、超音波センサと通信している1つまたは複数のプロセッサによって実行するためのコンピュータ可読命令の1つまたは複数のコンピュータプログラムを備える、非一時的コンピュータ可読記憶媒体である。超音波センサは、実質的に平坦な圧電送信層と、複数の受信機を有する超音波受信機アレイと、プラテンとを有し得る。1つまたは複数のコンピュータプログラムの命令は、
(a)プラテン上に存在する対象物に向かって移動する超音波平面波を生成することを、送信層に行わせることであって、対象物が外面と内部部分とを有する、こと、
(b)超音波受信機を使用し、対象物から反射された超音波エネルギーを検出すること、
(c)分析結果を提供するために、検出された超音波エネルギーを分析すること、
(d)分析結果をテンプレートと比較すること、
(e)分析結果およびテンプレートが同様であるか否かを決定すること、ならびに
(f)分析結果がテンプレートと同様であると決定される場合、対象物が生きていると宣言すること
を行うための命令を含み得る。
たとえば、非一時的コンピュータ可読記憶媒体の一実施形態では、検出された超音波エネルギーを分析するための命令は、外面から内部部分のうちの少なくとも1つまでの距離を決定するための命令を含み得、テンプレートは、距離の許容範囲であり、対象物が生きていると宣言するための命令は、決定された距離が許容範囲内である場合、対象物が生きているという宣言が行われることを引き起こす。非一時的コンピュータ可読記憶媒体の別の実施形態では、検出された超音波エネルギーを分析するための命令は、外面からの平面波の反射と、内部部分のうちの少なくとも1つの反射との間の経過時間を決定するための命令を含み得、テンプレートは、時間の許容範囲であり、対象物が生きていると宣言するための命令は、経過時間が許容範囲内である場合、対象物が生きているという宣言が行われることを引き起こす。内部部分は、乳頭、血管、脂肪、筋肉、および骨からなるグループから選択され得る。
【0015】
本発明の性質および目的をより完全に理解するために、添付の図面および後続の説明を参照されたい。手短には、図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】対象物が生きているか否かを決定するためのシステムを示す図である。
図1B図1Aのシステムを示し、送信機から発し、スキャンされている対象物に向かって移動する、エネルギー波を示す図である。
図1C図1Aのシステムを示し、受信機に向かって移動する反射エネルギーを示す図である。
図2図1Aに示すシステムの分解斜視図である。
図3】対象物が生きているか否かを決定するための方法のステップを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1Aは、本発明に従ったシステム10を示す。そのようなシステム10は、外面(たとえば、指の皮膚紋理表面)と内部部分(たとえば、組織層、乳頭、血管、脂肪、筋肉、爪、および骨)とを有する対象物70が、生きている生体対象物(biometric object)に関連付けられた特性を有する(すなわち、生きている個人の部分である)か、そのような特性を有していない(たとえば、スプーフ)かを決定するために使用され得る。図1Aでは、エネルギー送信機20、エネルギー受信機30、プラテン40、およびコンピュータ50が示されている。エネルギー送信機20は、実質的に平坦な圧電送信層を有する超音波センサであり得る。エネルギー受信機30は、複数の受信機を有する超音波受信機アレイであり得る。そのような送信機と受信機とを有するシステム10の一例は、Ultra-Scan Corporationによって設計および製造され、2002年に販売のために発表された、モデルUltratouch 203、または、Ultra-Scan Corporationによって設計および製造され、少なくとも早ければ2000年に販売のために発表された、モデルSeries 500 Fingerprint Scannerである。図1Bは、送信機20から対象物70に向かって移動するエネルギー波80Aとともに、図1Aのシステムを示す。図1Cは、対象物70から受信機30に移動する反射エネルギー80bとともに、図1Aのシステムを示す。
【0018】
図1A図1Cは、本開示の態様による、超音波センサシステム10の一例を示す。図1Aに示すように、超音波センサシステム10は、プラテン40の下に超音波送信機20と超音波受信機30とを含み得る。超音波送信機20は、超音波80a(図1B参照)を発生させることができる圧電送信機であり得る。超音波受信機30は、圧電材料の層と、基板上に配設されたピクセル回路のアレイとを含み得る。動作中、超音波送信機20は、超音波受信機30を通ってプラテン40の露出面44まで移動する1つまたは複数の超音波80aを発生させ得る。プラテン40の露出面44において、超音波エネルギーは、指紋隆線領域72の皮膚など、プラテン40と接触している目標対象物(target object)70によって送信、吸収もしくは散乱されるか、または超音波受信機30に向かって反射して戻されるかのいずれかであり得る。空気がプラテン40の露出面44に接触するロケーション、たとえば、指紋隆線領域72の間の谷線領域74において、超音波エネルギーのほとんどは、検出のために超音波受信機30に向かって反射して戻されることになる(図1C参照)。コンピュータ50の制御電子回路は、超音波送信機20と超音波受信機30とに結合され得、1つまたは複数の超音波80aを発生させて出すことを超音波送信機20に行わせるタイミング信号を供給し得る。次いで、コンピュータ50の制御電子回路は、プラテン40の露出面44から反射され得る1つまたは複数の反射された超音波80bなど、反射された超音波エネルギーを示す、超音波受信機30からの信号を受信し得る。コンピュータ50の制御電子回路は、目標対象物70のデジタル画像を構成するために、超音波受信機30から受信された出力信号を使用し得る。いくつかの実装形態では、コンピュータ50の制御電子回路はまた、目標対象物70の存在および/または動きを検出するために、経時的に、連続的に出力信号をサンプリングし得る。対象物70の外面を分析することが可能であることに加えて、エネルギーは、対象物の中に移動することができ、その場合、エネルギーは、対象物の内部部分によって反射され得る。この反射エネルギーもまた、受信機30によって検出可能であるが、後で到着することになり、実質的に、プラテン表面44と対象物70との間のインターフェースにおいて反射され
るもの未満であり得る。
【0019】
本開示の態様によれば、超音波送信機20は、実質的に平坦な圧電送信機層24を含む平面波発生器であり得る。図2を参照されたい。超音波は、印加される信号に応じて層24を拡張または収縮させるために圧電層24に電圧を印加し、それによって平面波を発生させることによって、発生され得る。電圧は、第1の送信機電極22および第2の送信機電極26を介して、圧電送信機層24にわたって印加され得る。第1および第2の送信機電極22および26は、金属化電極、たとえば圧電送信機層24の対向する両面を被覆する金属層であり得る。このようにして、超音波80aは、圧電効果によって層の厚さを変えることによって作成され得る。超音波80aは、プラテン40を通過して指(または検出されるべき他の対象物)に向かって移動し得る。検出されるべき対象物70によって吸収または送信されない波の一部分は、プラテン40を通過して戻り、超音波受信機30によって受信されるように、反射され得る。
【0020】
超音波受信機30は、基板32上に配設されたピクセル回路36のアレイと、圧電受信機層38とを含み得る。いくつかの実装形態では、各ピクセル回路36は、1つまたは複数のTFT(薄膜トランジスタ)素子と、電気相互接続トレースとを含み得、いくつかの実装形態では、ダイオード、キャパシタなど、1つまたは複数の追加の回路素子を含み得る。各ピクセル回路36は、ピクセル回路36に近接した圧電受信機層38内で発生させられた電荷を電気信号に変換するように構成され得る。
【0021】
図2に示された図示の実装形態では、受信機バイアス電極39は、プラテン40の近傍の圧電受信機層38の一面上に配設され得る。受信機バイアス電極39は、金属化電極であり得、どの信号がピクセル回路36に渡されるかを制御するために接地またはバイアスされ得る。プラテン40の露出面(上面)44から反射される超音波エネルギーは、圧電受信機層38によって局所化された電荷に変換され得る。これらの局所化された電荷は、ピクセル入力電極によって収集され、下にあるピクセル回路に渡され得る。電荷は、ピクセル回路36によって増幅またはバッファされ、出力信号を処理するコンピュータ50の制御電子回路に与えられ得る。簡略図において示された例の多数の変形および変更が利用され得ることは、当業者には諒解されよう。
【0022】
コンピュータ50の制御電子回路は、第1の送信機電極22および第2の送信機電極26、ならびに受信機バイアス電極39、基板32上のピクセル回路36、および、センサシステム10に関連付けられた他の制御ラインおよびデータラインに、電気的に接続され得る。
【0023】
図1A図1Cおよび図2は、超音波センサシステム10における超音波送信機20および受信機30の構成の一例を示し、他の構成が可能である。たとえば、いくつかの実装形態では、超音波送信機20は、超音波受信機30の上、すなわち、検出の対象物70のより近くにあり得る。いくつかの実装形態では、超音波センサは、音響遅延層を含み得る。たとえば、音響遅延層が、超音波送信機20と超音波受信機30との間で超音波センサに組み込まれ得る。音響遅延層は、超音波パルスタイミングを調整すると同時に、超音波受信機30を超音波送信機20から電気的に絶縁するために利用され得る。遅延層は、実質的に均一の厚さを有してよく、遅延層のために使用される材料および/または遅延層の厚さは、反射された超音波エネルギーが超音波受信機30に到達する時間における望ましい遅延を与えるように選択される。そうする際に、(目標対象物70によって反射されたために)目標対象物70についての情報を搬送するエネルギーパルスを超音波受信機30に到着させ得る時間の範囲は、超音波センサシステム10の他の部分から反射されたエネルギーが超音波受信機30に到着している可能性がない時間範囲の間である。いくつかの実装形態では、TFT基板および/またはプラテン40は、音響遅延層として働き得る。
【0024】
超音波受信機30は、本明細書で実装形態に応じてTFT基板、バックプレーン、パネル、サブパネル、または半導体基板と呼ばれることもある、基板32上に配設されたピクセル回路36のアレイと、圧電受信機層38とを含み得る。各ピクセル回路36は、圧電受信機層38をピクセル回路36に電気的に結合するピクセル入力電極37を含み得る。圧電受信機層38は、(被覆または堆積プロセスと同様に)ピクセル入力電極37と直接接触するか、または(圧電層が薄い接着剤層を用いて取り付けられる接合または積層プロセスと同様に)ピクセル入力電極37に容量結合され得る。いくつかの実装形態では、基板32は、ガラスまたはプラスチック基板の薄い基板であり得、その上にセンサピクセル回路36が作製される。いくつかの実装形態では、基板32は、シリコン、単結晶シリコン、または、シリコンウエハもしくはシリコンオンインシュレータウエハなどの他の半導体材料であり得る。ピクセル回路36、および基板32に関係する他の回路は、従来のシリコンデバイスウエハなど、基板において作製されたトランジスタから形成され得る。ピクセル回路36に加えて、基板32は、1つまたは複数の導電性ボンドパッドおよび接続トレースなど、その上に作製された追加の構成要素を有し得る。
【0025】
図示の実装形態では、受信機バイアス電極39は、プラテン40の近傍の圧電受信機層38の一面上に配設され得る。コンピュータ50の制御電子回路は、第1の送信機電極22および第2の送信機電極26、ならびに受信機バイアス電極39、基板32上のピクセル回路36および他の回路に、電気的に接続され得る。
【0026】
プラテン40は、受信機に音響結合され得る任意の適切な材料であり得る。プラテンに好適であり得る材料の例には、プラスチック、セラミック、ガラス、サファイア、ゴリラガラス、アルミニウム、ステンレス鋼、金属合金、ポリカーボネート、ポリマー材料、または金属充填プラスチックが含まれ得る。いくつかの実装形態では、プラテン40は、カバープレート、たとえばディスプレイ用のカバーガラスまたはレンズガラスであってよい。検出および撮像は、必要な場合、たとえば1mm以上の比較的厚いプラテンを通して実行され得る。
【0027】
様々な実装形態によって利用され得る圧電材料の例には、適切な音響特性、たとえば約2.5MRaylsと5MRaylsとの間の音響インピーダンスを有する圧電ポリマーが含まれる。利用され得る圧電材料の具体的な例には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン(PVDF-TrFE)コポリマーなどの強誘電体ポリマーが含まれる。PVDFコポリマーの例には、60:40(モルパーセント)PVDF-TrFE、70:30 PVDF-TrFE、80:20 PVDF-TrFE、および90:10 PVDF-TrFEが含まれる。利用され得る圧電材料の他の例には、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)ホモポリマーおよびコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ホモポリマーおよびコポリマー、ならびに臭化ジイソプロピルアンモニウム(DIPAB)が含まれる。
【0028】
圧電送信機層24および圧電受信機層38の各々の厚さは、超音波を発生させ、受信するのに好適であるように選択され得る。一例では、PVDF圧電送信機層24は約28μm厚であり、PVDF-TrFE受信機層38は約12μm厚である。超音波の例示的な周波数は、5MHz~30MHzの範囲内であり、波長は、1/4ミリメートル以下程度である。
【0029】
コンピュータ50は、送信機20および受信機30と通信中であり得る。コンピュータ50は、プラテン40上に存在する対象物70をスキャンすること、および、受信機30によって検出された反射エネルギーについての情報を受信機30から受信することを、システム10に行わせるようにプログラムされ得る。コンピュータ50のプログラミングは、CD、USBフラッシュデバイス、または読取り専用メモリデバイスなど、非一時的コンピュータ可読記憶媒体60を介したものであり得る。記憶媒体60は、本明細書で説明する方法のうちの1つまたは複数をコンピュータ50に実行させるための命令を有し得る。スキャンは、プラテン40の露出面44上に存在する、指などの対象物70に向かって移動する平面波を生成することを、送信機20に行わせることを含み得る。放出された平面波は、対象物70に移動し、そこで、波エネルギーの一部が反射される。次いで、反射エネルギーは、受信機30に移動し、そこで、反射エネルギーが受信機30によって検出される。コンピュータ50は、受信機30によって検出された反射エネルギーを分析し、次いで、分析結果を提供するようにプログラムされ得る。分析結果は、分析結果およびテンプレートが同様であるか否かを決定するために、コンピュータ50によってテンプレートと比較され得る。分析結果およびテンプレートが同様であると決定される場合、コンピュータ50は、対象物70が生きていると宣言するメッセージを送り得る。そうでない場合、コンピュータ50は、対象物70がスプーフであると宣言するメッセージを送り得る。
【0030】
検出された反射エネルギーの分析は、対象物70の外面(たとえば、皮膚紋理の隆線72および谷線74)から、対象物70の内部部分のうちの少なくとも1つまでの距離を決定することを含み得る。テンプレートは、決定された距離が特定の範囲内であるべきであると規定し得、決定された距離がその特定の範囲内である場合、コンピュータ50は、対象物が生きていると宣言し得る。距離を決定する1つの方法は、対象物70の外面の結果として反射されたエネルギーの受信と、対象物70の内部部分から反射されたエネルギーの受信との間で経過する時間を決定することである。コンピュータ50は、経過時間がテンプレートによって求められた特定の範囲内である場合、対象物70が生きていると宣言するようにプログラムされ得る。
【0031】
対象物70の様々な部分から反射されたエネルギーの受信の間に経過する時間の量を決定するために、コンピュータ50は、複数の移動時間を決定するようにプログラムされ得る。そうするために、コンピュータ50は、送信層が対象物70に向かってエネルギーパルスを送るとき、時計を開始させ得る。時計は、エネルギーパルスが対象物70に移動するときに進み続け、対象物70の表面の各々からの反射エネルギーが受信機30に移動するときに進み続ける。反射エネルギーが受信機30によって検出されるとき、コンピュータ50は、時間を記録し、これは、対象物70の特定の部分に関連付けられた移動時間である。明快のために、対象物70の様々な表面からの反射エネルギーは、プラテン表面44からの各表面の距離に応じて、異なる時間に到着することになる。たとえば、プラテン40上に置かれている生体対象物70の外面は、プラテン表面44に最も近いので、外面に関連付けられた移動時間は、比較的短くなる。外面の近くに存在する対象物70の内部部分(たとえば、乳頭)は、わずかにより長い移動時間を有することになる。そして、プラテン表面44から離れて存在する対象物70の内部部分(たとえば、指の骨または爪)は、最も長い移動時間を有することになる。反射エネルギーは、異なる時間に受信機30に到着することになるので、受信エネルギーは、複数のエネルギーパルスとして到着することになる。各反射エネルギーパルスのための移動時間を記録することによって、コンピュータ50は、実際には、対象物70の様々な部分の間の距離を決定し得る。距離が従来の距離測定値において表されるか、移動時間において表されるかにかかわらず、結果は同じである。そのため、たとえば、移動時間をテンプレートと比較することによって、コンピュータ50は、テンプレートに従って予想された時間に、受信機30が反射エネルギーを受信したか否かを決定し得る。テンプレートが、予想された対象物70(たとえば、指)の部分の間の距離に対応するように作成される場合、スキャニング動作から取得された移動時間をテンプレートの移動時間と照合することで、予想された対象物が提示されたか否かについての指示を与えることになる。たとえば、スプーフは、指の部分(および、場合によっては、スプーフの部分)の間の距離に関して、生きている指とは異なる可能性が
あるので、テンプレートの基準は、生きている指とスプーフとの間で区別するように選択され得る。
【0032】
移動時間の各々が、テンプレートの予想移動時間のうちの1つと一致され得る場合、対象物70は「生きている」と宣言され得る。すべての生きている生体対象物が、テンプレートに等しい移動時間を生じた場合、理想的であり得るが、現実はかなり異なり得る。生きている生体対象物の間の違いに対応するために、各予想移動時間は、時間の範囲であり得る。このようにして、移動時間が予想範囲内に入る場合、テンプレートのその部分のための一致が宣言され得る。
【0033】
いくつかの生体対象物は、特定のテンプレートに適合しないように、一般的な多くの人々とは十分に異なり得る。そのような生体対象物に対応し、それによって、実際にはそのような生体対象物が「スプーフ」ではないときに「スプーフ」であると宣言すること(本明細書では「誤ったスプーフ決定」と呼ばれる)を回避するために、2つ以上のテンプレートが提供され得る。このようにして、対象物に向けられたスキャニング動作から決定された移動時間が、複数のテンプレートのうちの1つに一致する場合、対象物は「生きている」と宣言され得る。
【0034】
誤ったスプーフ決定を回避する別の方法は、予想移動時間のうちのいくつか(たとえば、3つ)が不一致になり、それでも、対象物を「生きている」と宣言することを可能にすることになる。たとえば、テンプレートが、8つの予想移動時間を識別し、特定の対象物についてコンピュータによって決定された移動時間のうちの少なくとも5つが、テンプレートの予想移動時間と一致する場合、対象物は「生きている」と宣言され得る。このようにして、テンプレートの予想移動時間のうちの4つ以上が、対象物に対応する移動時間によって一致されない場合、対象物はスプーフであると宣言される。
【0035】
次に、多数の移動時間(たとえば、距離)が検出され、それ自体が多数の予想移動時間を有するテンプレートと比較され得ることが明らかになる。このようにして、対象物70の多数の部分の間の相対的距離(移動時間において表され得る)が決定され、テンプレートと比較され得る。たとえば、指のためのテンプレートは、(a)皮膚紋理表面と骨との間の距離、(b)皮膚紋理表面と筋層との間の距離、および(c)腺層と脂肪層との間の距離、乳頭と骨との間の距離など、(複数の移動時間として表され得る)複数の距離から構成され得る。これらの距離は、スキャンの結果生じた対象物70について決定された距離と比較され得、スキャンされた対象物70を「生きている」と宣言するか否かについての決定が行われ得る。スキャンされた対象物70について決定された距離の十分なものが、テンプレートに合っている場合、スキャンされた対象物は、「生きている」と宣言され得る。
【0036】
検出された反射エネルギーを分析する他の手段が可能である。移動時間を決定し、移動時間のテンプレートと比較することに加えて、またはその代わりに、分析は、対象物70の各部分によって反射されたエネルギーの量に基づき得る。そのような方法では、反射され、受信機によって受信されたエネルギーの量が、生体対象物の複数の表面について決定される、生体対象物の所定の分析に基づいて、テンプレートが決定され得る。テンプレートを作成した後、対象物70が続いてスキャンされ、受信機30において受信された各反射エネルギーパルスのエネルギーレベルが決定され、テンプレートと比較される。受信機30において受信された反射エネルギーパルスが、テンプレートに一致する場合、対象物は「生きている」と宣言され得る。たとえば、テンプレートは、複数のエネルギー範囲を有し得、受信されたエネルギーパルスが、それらの範囲内である場合、対象物は「生きている」と宣言され得る。
【0037】
反射エネルギーは、エネルギーの比率として表され得る。たとえば、比率は、特定の反射エネルギーパルスに関連付けられたエネルギーを、対象物70によって反射された受信エネルギーの総量によって除算したものであり得る。対象物70の良好に反射する表面を有する部分は、対象物70の良好に反射しない表面を有する部分よりも高い比率を有することになる。反射されたエネルギーの総量を決定するために、コンピュータ50は、受信機30によって受信されたエネルギーを加算するようにプログラムされ得る。
【0038】
代替的に、反射エネルギーは、特定の反射エネルギーパルスに関連付けられた受信エネルギーを、対象物70の内部構造によって反射された受信エネルギーの総量によって除算したものの比率として表され得る。そのようなシステムでは、プラテン40上に存在する対象物の外面の結果として反射されたエネルギーが無視される。計算の目的のために、対象物70の外面の結果として反射されたエネルギーを無視することによって、対象物70の内部の構造に対応する比率の間でよりよく区別することが可能であり得る。対象物70の外面は、受信機から固定距離であるプラテン40上に存在することになるので、プラテン表面44に対応する移動時間が知られることになるので、反射エネルギーパルスのうちのどれが外面に対応するかを知ることが可能である。そのため、検出から、外面に関連付けられたエネルギーパルスを識別し、除外するか、または識別し、次いで、コンピュータ50によって実行される計算からそのエネルギーパルスを除外することは、容易である。
【0039】
テンプレートは、決定されたエネルギー比が特定の範囲内であるべきであると規定し得、決定されたエネルギー比がその特定の範囲内である場合、コンピュータ50は、テンプレートのその部分が一致すると宣言し得る。特定のスキャンについて十分な一致が生じる場合、コンピュータ50は、対象物70が生きていると宣言し得る。
【0040】
各エネルギー比が、テンプレートの予想エネルギー比のうちの1つに一致する場合、対象物70は「生きている」と宣言され得る。たとえば、テンプレートは、スキャンされた対象物を「生きている」と宣言するために、5つのエネルギーパルスが受信されなければならないこと、および、エネルギーパルスのうちの1つがX1のエネルギー比を有していなければならず、エネルギーパルスのうちの別のものがX2のエネルギー比を有していなければならず、エネルギーパルスのうちの2つがX3のエネルギー比を有していなければならないこと、および、エネルギーパルスのうちの別のものがX4のエネルギー比を有していなければならず、ただし、X1、X2、X3、およびX4がエネルギー比のための許容値であることを規定し得る。さらに、テンプレートは、エネルギーパルスが特定の順序で到着することを規定し得る。たとえば、X2のエネルギー比を有するエネルギーパルスの前に、X3のエネルギー比を有するエネルギーパルスが到着することを、テンプレートが必要とする場合、対象物は、X3のエネルギーパルスがエネルギーパルスX2の前に到着しなかった場合、「スプーフ」であると宣言されることになる。
【0041】
すべての生きている生体対象物が、テンプレートに等しいエネルギー比を生じた場合、理想的であり得るが、現実はかなり異なり得る。生きている生体対象物の間の違いに対応するために、各予想エネルギー比は、値の範囲であり得る。このようにして、特定のエネルギー比が予想範囲内に入る場合、テンプレートのその部分のための一致が宣言され得る。明快のために、前の段落における値X1、X2、X3、およびX4は、各々が値の範囲であり得る。
【0042】
いくつかの生体対象物は、特定のテンプレートに適合しないように、一般的な多くの人々とは十分に異なり得る。そのような生体対象物に対応し、それによって、誤ったスプーフ決定を回避するために、2つ以上のテンプレートが提供され得る。このようにして、プラテン上に存在する対象物70に向けられたスキャニング動作から決定されたエネルギー比が、複数のテンプレートのうちの1つに一致する場合、対象物70は「生きている」と宣言され得る。
【0043】
誤ったスプーフ決定を回避する別の方法は、予想エネルギー比のうちのいくつか(たとえば、2つ)が不一致になり、それでも、対象物を「生きている」と宣言することを可能にすることになる。たとえば、テンプレートが、10個の予想エネルギー比を識別し、特定の対象物についてコンピュータ50によって決定されたエネルギー比のうちの少なくとも8つが、テンプレートの予想エネルギー比と一致する場合、対象物70は「生きている」と宣言され得る。このようにして、テンプレートの予想エネルギー比のうちの3つ以上が、対象物70のスキャンに対応するエネルギー比によって不一致にされる場合、対象物70は、スプーフであると宣言されることになる。
【0044】
2つのタイプの分析を組み合わせることも可能である。たとえば、テンプレートは、テンプレートのその部分が一致であると宣言されるために、エネルギーパルスが(a)特定の時間(時間の範囲であり得る)に到着すること、および(b)特定の値(値の範囲であり得る)のエネルギー比を有することの両方を行うことを必要とし得る。前に説明した方法と同様の方法で、対象物が「生きている」と宣言されるために、システム10は、受信エネルギーパルスの各々に関して一致を必要としなくてもよい。代わりに、コンピュータ50は、テンプレート基準のある一部分(たとえば、8つのうちの5つの基準、または10個のうちの8つの基準)が満たされるとき、対象物を「生きている」と宣言するようにプログラムされ得る。
【0045】
対象物が生きている対象物であるか否かを決定するためのシステムの説明を提供したが、我々は次に、対象物が生きている対象物であるか否かを決定するための方法についての説明に移る。この方法について説明する際に、我々はまた、システムについての追加の詳細を提供し、そのうちの一部については上記で説明していることに留意されたい。さらに、上記で提供したシステム説明は、以下で説明する方法の理解において有用であり、それに関連したものであり得る。
【0046】
図3は、そのような方法を示すフロー図である。図3において説明する方法は、200で、センサシステムを提供し、センサシステムは、プラテン上に存在する対象物に向かって超音波エネルギー波を放出することが可能である、超音波センサシステムであり得る。超音波センサは、(a)その上に対象物がスキャニングのために配置され得るプラテンと、(b)超音波エネルギー波を放出することが可能である、実質的に平坦な圧電送信層を含み得る、エネルギー送信機と、(c)反射された超音波エネルギーを検出することが可能である複数の受信機を有する、超音波受信機アレイであり得る、エネルギー受信機とを有し得る。
【0047】
エネルギー送信機は、210で、プラテン上に存在する対象物に向かって移動する平面波を生成することを行うようにされる。対象物は、プラテンと接触している外面(たとえば、指の皮膚紋理)と、また、内部部分(たとえば、組織層、乳頭、血管、脂肪、筋肉、爪、および骨)とを有する。送信機によって放出された平面波によって具現化されたエネルギーの一部は、対象物の外面が存在するプラテン40の露出面44において反射し、そのエネルギーの一部は、対象物の内部部分から反射する。エネルギー受信機を使用して、220で、対象物から反射されたエネルギーが検出される。230で、検出されたエネルギーが、分析結果を提供するために分析され、250で、分析結果およびテンプレートが同様であるか否かを決定するために、240で、分析結果がテンプレートと比較される。250で、分析結果がテンプレートと同様であると決定される場合、260で、対象物は「生きている」と宣言され、そのことは、対象物が生きている個人の部分であることを意味するように解釈され得る。
【0048】
230で、検出されたエネルギーを分析することは、外面から内部部分のうちの少なくとも1つまでの距離を決定することを含み得る。または、230で、検出されたエネルギーを分析することは、対象物の内部部分の間の距離を決定することを含み得る。そのような距離は、エネルギー波がその距離を移動するために要する時間の量に関して表され得る。
【0049】
240で、それに対して分析結果が比較されるテンプレートは、上記で説明したテンプレートに従ったものであり得る。簡潔のために、テンプレートに対応する説明を、ここで繰り返さないが、対象物が「生きている」か否かを決定するための方法に関連するとして解釈されるべきである。250で、分析結果がテンプレートに一致すると決定される場合、たとえば、決定された距離(または時間)のうちの所定の数が、テンプレートによって指定された許容範囲内である場合、260で、対象物が「生きている」と宣言され得る。
【0050】
分析は、230で、検出されたエネルギーを分析して、たとえば、(a)対象物の外面の存在から生じる平面波の反射と、(b)内部部分のうちの1つの反射との間の経過時間を決定し得る。決定された経過時間が、テンプレートによって指定された許容範囲内である場合、テンプレートのその部分は、一致であると宣言され得る。そして、分析結果とテンプレートとの間で十分な一致が生じる場合、260で、対象物が生きていることを示す宣言が行われ得る。分析結果は、複数の時間を含み得、各時間が、平面波の生成と、内部部分のうちの1つから反射されたエネルギーの検出との間の時間の量である。さらに、分析結果がそのような複数の時間から導出されて、たとえば、内部部分の間の距離、あるいは外面と内部部分のうちの1つまたは複数との間の距離に対応する、複数の時間が生成され得る。
【0051】
分析結果は、(a)内部部分のうちの1つの表面によって反射されたエネルギー(「ERS」)、またはプラテンに近接した外面の結果として反射されたエネルギーの量を決定すること、(b)対象物によって反射されたエネルギー(「ERO」)の総量を決定すること、および(c)ERSをEROによって除算することによって決定される、反射エネルギー信号比(「RESR」)であり得る。EROは、対象物によって反射され、受信機によって受信される、エネルギーを加算することによって決定され得る。代替的に、反射エネルギー信号比(「RESR」)は、(a)内部部分のうちの1つの表面によって反射されたエネルギー(「ERS」)の量を決定すること、(b)対象物の内部部分によって反射されたエネルギー(「ERI」)の総量を決定すること、およびERSをERIによって除算することによって決定され得る。ERIは、対象物の内部構造によって反射され、受信機によって受信される、エネルギーを加算することによって決定され得る。
【0052】
本発明について、1つまたは複数の特定の実施形態に関して説明したが、本発明の他の実施形態が、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく行われ得ることは理解されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその妥当な解釈のみによって限定されると見なされる。
【符号の説明】
【0053】
10 システム、超音波センサシステム、センサシステム
20 エネルギー送信機、送信機、超音波送信機
22 第1の送信機電極
24 圧電送信機層、圧電層、層、PVDF圧電送信機層
26 第2の送信機電極
30 エネルギー受信機、受信機、超音波受信機
32 基板
36 ピクセル回路、センサピクセル回路
37 ピクセル入力電極
38 圧電受信機層、PVDF-TrFE受信機層
39 受信機バイアス電極
40 プラテン
44 露出面、プラテン表面
50 コンピュータ
60 非一時的コンピュータ可読記憶媒体、記憶媒体
70 対象物、目標対象物、検出の対象物、生体対象物
72 指紋隆線領域、隆線
74 谷線領域、谷線
80A エネルギー波
80a 超音波
80b 反射エネルギー、反射された超音波
図1A
図1B
図1C
図2
図3