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特許7073327ポリ(アミド-イミド)コポリマー、薄膜用組成物および薄膜
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  • 特許-ポリ(アミド-イミド)コポリマー、薄膜用組成物および薄膜 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】ポリ(アミド-イミド)コポリマー、薄膜用組成物および薄膜
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/14 20060101AFI20220516BHJP
【FI】
C08G73/14
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019236955
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2020204012
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2020-02-19
(31)【優先権主張番号】108120642
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】508054404
【氏名又は名称】達興材料股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100217135
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 誠
(72)【発明者】
【氏名】陳 冠萍
(72)【発明者】
【氏名】林 典慶
(72)【発明者】
【氏名】高 敏慈
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0022875(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0152226(US,A1)
【文献】特開平09-012884(JP,A)
【文献】特表2019-512559(JP,A)
【文献】国際公開第2016/167296(WO,A1)
【文献】特開2018-123319(JP,A)
【文献】特開2018-066002(JP,A)
【文献】特開昭50-033295(JP,A)
【文献】特開2005-146180(JP,A)
【文献】特開2001-240670(JP,A)
【文献】特開平11-193326(JP,A)
【文献】特表2019-515819(JP,A)
【文献】特表2019-509364(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0225607(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジアミンモノマーと、塩化ジアシルモノマーと、テトラカルボン酸二無水物モノマーと、アルコキシ基を有するシラン化合物との重合、脱水環化、および加水分解縮合によって合成されるポリ(アミド-イミド)コポリマーであって、
重量平均分子量が150,000~500,000であり、
前記アルコキシ基を有する前記シラン化合物がエンドキャッピング剤として使用され、且つ、前記アルコキシ基を有する前記シラン化合物が前記ポリ(アミド-イミド)コポリマーの末端に位置する前記塩化ジアシルモノマー由来の塩化アシル基と反応し、シラン末端の構造を形成し得、
前記芳香族ジアミンモノマーには2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンが含まれ、前記芳香族ジアミンモノマーの使用量100mol%に基づいて、前記2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンの使用量が70mol%以上である、ポリ(アミド-イミド)コポリマー。
【請求項2】
アミド構造単位とイミド構造単位とを含み、
前記アミド構造単位が前記芳香族ジアミンモノマーと前記塩化ジアシルモノマーを反応させることによって形成されており、前記イミド構造単位が前記芳香族ジアミンモノマーと前記テトラカルボン酸二無水物モノマーを反応させることによって形成されている、請求項1に記載のポリ(アミド-イミド)コポリマー。
【請求項3】
前記芳香族ジアミンモノマーに、2,2’-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、および3,3’-ジアミノジフェニルスルホンのうちの少なくとも1つがさらに含まれる、請求項1に記載のポリ(アミド-イミド)コポリマー。
【請求項4】
前記テトラカルボン酸二無水物モノマーに、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、および1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物のうちの少なくとも1つが含まれる、請求項1に記載のポリ(アミド-イミド)コポリマー。
【請求項5】
前記アルコキシ基を有する前記シラン化合物に、アルコキシ基とアミン基とを有するシラン化合物およびアルコキシ基とイソシアネート基とを有するシラン化合物のうちの少なくとも1つが含まれる、請求項1に記載のポリ(アミド-イミド)コポリマー。
【請求項6】
前記アルコキシ基と前記アミン基とを有する前記シラン化合物に、(3-アミノプロピル)トリエトキシシランおよび(3-アミノプロピル)トリメトキシシランのうちの少なくとも1つが含まれる、請求項5に記載のポリ(アミド-イミド)コポリマー。
【請求項7】
前記アルコキシ基と前記イソシアネート基とを有する前記シラン化合物に、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシランが含まれる、請求項5に記載のポリ(アミド-イミド)コポリマー。
【請求項8】
前記塩化ジアシルモノマーに、塩化テレフタロイル、二塩化イソフタロイル、塩化4,4’-ジフェノイル、および塩化2,2’-ジフェノイルのうちの少なくとも1つが含まれる、請求項1に記載のポリ(アミド-イミド)コポリマー。
【請求項9】
前記塩化ジアシルモノマーおよび前記テトラカルボン酸二無水物モノマーの総使用量100モル部に基づいて、前記芳香族ジアミンモノマーの使用量が70モル部~100モル部であり、前記塩化ジアシルモノマーの使用量が30モル部~70モル部であり、前記テトラカルボン酸二無水物モノマーの使用量が30モル部~70モル部であり、前記アルコキシ基を有する前記シラン化合物の使用量が5モル部~20モル部である、請求項1に記載のポリ(アミド-イミド)コポリマー。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載のポリ(アミド-イミド)コポリマーを含む、薄膜用組成物。
【請求項11】
エンドキャッピングイソシアネートをさらに含み、
前記エンドキャッピングイソシアネートが式(4)で表される構造を有し、
【化1】
式(4)において、Zが単結合またはカルボニル基であり、Zが置換もしくは非置換アルキレン基または置換もしくは非置換シクロアルキレン基であり、Y
【化2】
または
であり、式中*が結合位置を表す、請求項10に記載の薄膜用組成物。
【請求項12】
請求項1~のいずれか一項に記載のポリ(アミド-イミド)コポリマーまたは請求項10~11のいずれか一項に記載の薄膜用組成物により形成される、薄膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コポリマー、薄膜用組成物、および薄膜に関し、より詳細には、ポリ(アミド-イミド)コポリマー、薄膜用組成物、および薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド(PI)は、優れた耐熱性、機械的特性、および電気的特性を有するため、成形材料、電子材料、光学材料などとして広く使用されており、さまざまな分野で広く使用されている。しかしながら、ポリイミドで形成された薄膜には、硬度が不十分であるという問題がある。例えば、ポリイミドで形成された薄膜の鉛筆硬度は通常3B未満であり、これにより薄膜の表面に傷や破損などの損傷が生じ、薄膜を使用するデバイスの性能に影響を与える可能性がある。さらに、近年、ポリ(アミド-イミド)コポリマーが薄膜の形成のために開発されてきたが、これらのポリ(アミド-イミド)コポリマーで形成された薄膜は依然として光学特性が乏しいという問題を抱えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、良好な光透過性(光学特性)、耐黄変性、および硬度を有する薄膜を形成し得るポリ(アミド-イミド)コポリマーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のポリ(アミド-イミド)コポリマーは、芳香族ジアミンモノマーと、塩化ジアシルモノマーと、テトラカルボン酸二無水物モノマーと、アルコキシ基を有するシラン化合物との重合、脱水環化、および加水分解縮合によって合成される。アルコキシ基を有するシラン化合物は、エンドキャッピング剤として使用される。芳香族ジアミンモノマーには、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)が含まれる。芳香族ジアミンモノマーの使用量100mol%に基づいて、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンの使用量は70mol%以上である。
【0005】
本発明の一実施形態では、ポリ(アミド-イミド)コポリマーは、アミド構造単位とイミド構造単位とを含む。アミド構造単位は、芳香族ジアミンモノマーと塩化ジアシルモノマーとを反応させることによって形成される。イミド構造単位は、芳香族ジアミンモノマーとテトラカルボン酸二無水物モノマーとを反応させることによって形成される。
【0006】
本発明の一実施形態では、芳香族ジアミンモノマーには、2,2’-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(ビスAPAF)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DDS)、および3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)のうちの少なくとも1つがさらに含まれる。
【0007】
本発明の一実施形態では、ポリ(アミド-イミド)コポリマーの重量平均分子量は、150,000~500,000である。
【0008】
本発明の一実施形態では、テトラカルボン酸二無水物モノマーには、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、および1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)のうちの少なくとも1つが含まれる。
【0009】
本発明の一実施形態では、アルコキシ基を有するシラン化合物には、アルコキシ基とアミン基とを有するシラン化合物、およびアルコキシ基とイソシアネート基とを有するシラン化合物のうちの少なくとも1つが含まれる。
【0010】
本発明の一実施形態では、アルコキシ基とアミン基とを有するシラン化合物には、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)、および(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)のうちの少なくとも1つが含まれる。
【0011】
本発明の一実施形態では、アルコキシ基とイソシアネート基とを有するシラン化合物には、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシランが含まれる。
【0012】
本発明の一実施形態では、塩化ジアシルモノマーには、塩化テレフタロイル(TPC)、二塩化イソフタロイル(IPC)、塩化4,4’-ジフェノイル、および塩化2,2’-ジフェノイルのうちの少なくとも1つが含まれる。
【0013】
本発明の一実施形態では、塩化ジアシルモノマーおよびテトラカルボン酸二無水物モノマーの総使用量100モル部に基づいて、芳香族ジアミンモノマーの使用量は70モル部~100モル部であり、塩化ジアシルモノマーの使用量は30モル部~70モル部であり、テトラカルボン酸二無水物モノマーの使用量は30モル部~70モル部であり、アルコキシ基を有するシラン化合物の使用量は5モル部~20モル部である。
【0014】
本発明のポリ(アミド-イミド)コポリマーは、式(1)で表される構造単位と、式(2)で表される構造単位と、式(3)で表される構造単位と、ケイ素-酸素-ケイ素結合とを含む。
【化1】

式(1)において、Aは4価有機基であり、Dは2価有機基であり、Zは単結合または-NH-であり、*は結合位置を表す。
【化2】

式(2)において、Aは2価有機基であり、Dは2価有機基であり、Zは単結合または-NH-であり、*は結合位置を表す。
式(1)および式(2)において、DおよびDの少なくとも一方は式(D-1)で表される構造であり、ここでポリ(アミド-イミド)コポリマー中のDおよびDの総量100モル%に基づいて、式(D-1)で表される構造の量は70モル%以上である。
【化3】

式(D-1)において、*は結合位置を表す。
【化4】

式(3)において、Zはアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、またはアリーレン基であり、RおよびRはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、またはフェニル基であり、それぞれ、mは1~3の整数であり、Zは単結合または式(3-a)で表される構造であり、*は結合位置を表す。
【化5】

式(3-a)において、Aは2価有機基であり、*は結合位置を表す。
【0015】
本発明の一実施形態では、A
【化6】

であり、式中*は結合位置を表す。
【0016】
本発明の一実施形態では、AおよびAはそれぞれ
【化7】

であり、式中*は結合位置を表す。
【0017】
本発明の一実施形態では、式(1)および式(2)において、DおよびDが式(D-1)で表される構造ではない場合、DおよびDはそれぞれ
【化8】

であり、式中*は結合位置を表す。
【0018】
本発明の薄膜用組成物は、上記のポリ(アミド-イミド)コポリマーを含む。
【0019】
本発明の一実施形態では、薄膜用組成物は、エンドキャッピングイソシアネートをさらに含む。エンドキャッピングイソシアネートは、式(4)で表される構造を有する。
【化9】

式(4)において、Zは単結合またはカルボニル基であり、Zは置換もしくは非置換アルキレン基または置換もしくは非置換シクロアルキレン基であり、Y
【化10】

であり、式中*は結合位置を表す。
【0020】
本発明の薄膜は、上記のポリ(アミド-イミド)コポリマーまたは上記の薄膜用組成物により形成される。
【発明の効果】
【0021】
上記に基づいて、本発明のポリ(アミド-イミド)コポリマーは、芳香族ジアミンモノマーと、塩化ジアシルモノマーと、テトラカルボン酸二無水物モノマーと、アルコキシ基を有するシラン化合物との重合、脱水環化、および加水分解縮合によって合成され、ここで芳香族ジアミンモノマーの使用量100mol%に基づいて、芳香族ジアミンモノマー中の2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンの使用量は70mol%以上である。したがって、ポリ(アミド-イミド)コポリマーまたはポリ(アミド-イミド)コポリマーを有する薄膜用組成物を円滑に成膜することができ、調製された薄膜は良好な光線透過率、耐黄変性、硬度を有する。
【0022】
本開示の前述の特徴および利点をより分かりやすくするために、図を伴う実施形態を以下で詳細に説明する。
【0023】
添付の図面は、本発明が更に理解できるように含まれるものであって、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本発明の実施形態を示し、説明とともに、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係るポリ(アミド-イミド)コポリマーの反応フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書で使用される用語は、特定の例示的な実施形態を説明することのみを目的とし、本開示の主題を限定することを意図するものではない。用語「含む」および/または「含んでいる」は、本明細書で使用される場合、述べられた特徴、整数、工程、操作、要素、および/または構成要素の存在を明記するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、工程、操作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在もしくは追加を除外しないことがさらに理解されよう。
【0026】
<ポリ(アミド-イミド)コポリマー>
本実施形態のポリ(アミド-イミド)コポリマーは、アミド構造単位とイミド構造単位とを含み、アミド構造単位およびイミド構造単位は、ポリ(アミド-イミド)コポリマー中にランダムに配置されている。アミド構造単位は、芳香族ジアミンモノマー(a1)と塩化ジアシルモノマー(a2)とを反応させることによって形成される。イミド構造単位は、芳香族ジアミンモノマー(a1)とテトラカルボン酸二無水物モノマー(a3)とを反応させることによって形成される。アミド構造単位を形成する芳香族ジアミンモノマー(a1)は、イミド構造単位を形成する芳香族ジアミンモノマー(a1)と同じでも異なっていてもよい。アミド構造単位とイミド構造単位をコポリマーに含めることにより、ポリ(アミド-イミド)コポリマーによって形成された薄膜は良好な光線透過率、耐黄変性、および硬度を有し得る。
【0027】
より具体的には、ポリ(アミド-イミド)コポリマーは、芳香族ジアミンモノマー(a1)と、塩化ジアシルモノマー(a2)と、テトラカルボン酸二無水物モノマー(a3)と、アルコキシ基を有するシラン化合物(a4)との重合、脱水環化、および加水分解縮合によって形成される。アルコキシ基を有するシラン化合物は、エンドキャッピング剤として使用される。次に、種々のモノマーについて詳細に説明する。
【0028】
(芳香族ジアミンモノマー(a1))
芳香族ジアミンモノマー(a1)には、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)が含まれる。芳香族ジアミンモノマー(a1)の使用量100mol%に基づいて、TFMBの使用量は70mol%以上、好ましくは80mol%以上、より好ましくは90mol%以上である。TFMBの使用量が上記範囲内であると、ポリ(アミド-イミド)コポリマーまたはポリ(アミド-イミド)コポリマーを有する薄膜用組成物を円滑に成膜することができ、調製された薄膜は良好な光線透過率、耐黄変性、および硬度を有し、TFMBの使用量が70mol%未満であると、膜が形成されない場合がある。
【0029】
他の実施形態では、芳香族ジアミンモノマー(a1)には、他の芳香族ジアミンモノマーがさらに含まれ得る。他の芳香族ジアミンモノマーには、2,2’-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(ビスAPAF)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DDS)、および3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)のうちの少なくとも1つが含まれる。しかしながら、本発明はそれらに限定されず、他の実施形態では、他の芳香族ジアミンモノマーは、他の適切なジアミンモノマーから選択されてもよい。
【0030】
塩化ジアシルモノマー(a2)およびテトラカルボン酸二無水物モノマー(a3)の総使用量100モル部に基づいて、芳香族ジアミンモノマー(a1)の使用量は70モル部~100モル部であり、好ましくは80モル部~100モル部であり、より好ましくは90モル部~98モル部である。
【0031】
(塩化ジアシルモノマー(a2))
塩化ジアシルモノマー(a2)には、塩化テレフタロイル(TPC)、二塩化イソフタロイル(IPC)、塩化4,4’-ジフェノイル、および塩化2,2’-ジフェノイルのうちの少なくとも1つが含まれる。加えて、他の実施形態では、塩化ジアシルモノマー(a2)には、他の適切な塩化ジアシルモノマーも含まれ得る。
【0032】
塩化ジアシルモノマー(a2)およびテトラカルボン酸二無水物モノマー(a3)の総使用量100モル部に基づいて、塩化ジアシルモノマー(a2)の使用量は30モル部~70モル部であり、好ましくは40モル部~70モル部であり、より好ましくは40モル部~65モル部である。
【0033】
(テトラカルボン酸二無水物モノマー(a3))
テトラカルボン酸二無水物モノマー(a3)には、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、および1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)のうちの少なくとも1つが含まれる。しかしながら、本発明はそれらに限定されず、他の実施形態では、テトラカルボン酸二無水物モノマー(a3)は、他の適切なモノマーから選択されてもよい。
【0034】
塩化ジアシルモノマー(a2)およびテトラカルボン酸二無水物モノマー(a3)の総使用量100モル部に基づいて、テトラカルボン酸二無水物モノマー(a3)の使用量は30モル部~70モル部であり、好ましくは30モル部~60モル部であり、より好ましくは35モル部~60モル部である。
【0035】
(アルコキシ基を有するシラン化合物(a4))
アルコキシ基を有するシラン化合物(a4)は、ポリ(アミド-イミド)コポリマーのエンドキャッピング剤として使用される。アルコキシ基を有するシラン化合物(a4)には、アルコキシ基とアミン基とを有するシラン化合物(a4-1)およびアルコキシ基とイソシアネート基とを有するシラン化合物(a4-2)のうちの少なくとも1つが含まれる。なお、アルコキシ基とアミン基とを有するシラン化合物(a4-1)、およびアルコキシ基とイソシアネート基とを有するシラン化合物(a4-2)が、それぞれ、アミン基およびイソシアネート基を介してポリ(アミド-イミド)コポリマーの末端に位置する塩化ジアシルモノマー(a2)由来の塩化アシル基と反応し、ポリ(アミド-イミド)コポリマーの末端に結合してシラン末端の構造を形成し得る。
【0036】
アルコキシ基とアミン基とを有するシラン化合物(a4-1)には、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)および(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)のうちの少なくとも1つが含まれる。しかしながら、本発明はこれらに限定されず、他の実施形態では、アルコキシ基とアミン基とを有するシラン化合物(a4-1)は、他の適切なモノマーから選択されてもよい。
【0037】
アルコキシ基とイソシアネート基とを有するシラン化合物(a4-2)には、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシランが含まれる。しかしながら、本発明はこれに限定されず、他の実施形態では、アルコキシ基とイソシアネート基とを有するシラン化合物(a4-2)は、他の適切なモノマーから選択されてもよい。
【0038】
ポリ(アミン-イミド)コポリマーの反応において、ポリ(アミド-イミド)コポリマーのエンドキャッピング剤としてアルコキシ基を有するシラン化合物(a4)を添加すると、調製された薄膜は良好な光透過性、耐黄変性、および硬度を有し、エンドキャッピング剤を添加せずに調製された薄膜は、乏しい光透過性および耐黄変性を有する。
【0039】
塩化ジアシルモノマー(a2)およびテトラカルボン酸二無水物モノマー(a3)の総使用量100モル部に基づいて、アルコキシ基を有するシラン化合物(a4)の使用量は5モル部~20モル部であり、好ましくは6.5モル部~13.5モル部であり、より好ましくは7.5モル部~12.5モル部である。
【0040】
<ポリ(アミド-イミド)コポリマーの調製>
芳香族ジアミンモノマー(a1)とテトラカルボン酸二無水物モノマー(a3)を最初に重合させ、ポリアミド酸を形成することができる。次に、アルコキシ基を有するシラン化合物(a4)および塩化ジアシルモノマー(a2)を加え、混合物を加水分解縮合反応に供し、アミド酸構造単位とアミド構造単位とを含み、シラン末端の構造を有するポリ(アミド酸-アミド)コポリマーを形成する。次いで、ポリ(アミド酸-アミド)コポリマー中のアミド酸構造単位をさらに脱水環化反応に供し、アミド構造単位とイミド構造単位とを含み、シラン末端の構造を有するポリ(アミド-イミド)コポリマーを形成する。
【0041】
重合反応、加水分解縮合反応、および脱水環化反応は、溶媒の存在下で実施することができる。溶媒は、例えば、N-メチルピロリドンであるが、本発明はこれに限定されず、必要に応じて他の溶媒を選択してもよい。
【0042】
重合反応の温度は5℃~40℃であり得、その時間は4時間~12時間であり得る。加水分解縮合反応の温度は20℃~85℃であり得、その時間は10時間~14時間であり得る。
【0043】
脱水環化反応は、高温環化法または化学環化法を用いて実施することができる。
【0044】
高温環化法の温度は150℃~180℃であり得、その時間は4時間~8時間であり得る。
【0045】
化学環化法では、反応溶液に脱水剤および触媒を添加することができ、反応を70℃~100℃の温度で2時間~5時間実施することができる。脱水剤は、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、または無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物であるが、本発明はこれらに限定されず、必要に応じて他の脱水剤を選択してもよい。触媒は、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、またはルチジンなどの第3級アミンであるが、本発明はこれらに限定されず、必要に応じて他の触媒を選択してもよい。
【0046】
例えば、化学環化法、および、芳香族ジアミンモノマーとして使用される2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)と、塩化ジアシルモノマーとして使用される塩化テレフタロイル(TPC)と、テトラカルボン酸二無水物モノマーとして使用される1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)と、アルコキシ基を有するシラン化合物として使用される(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)とを反応させることによってポリ(アミド-イミド)コポリマーが形成される反応フローチャートを、図1に示す。
【0047】
図1に示す反応フローチャートでは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)および1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)は、重合によって形成され、複数のアミド酸構造単位を含むポリアミド酸を形成し、ここでアミド酸構造単位の数「n」は、添加するモノマーの量によって異なる。次に、上記のものを(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)および塩化テレフタロイル(TPC)と反応させて、複数のアミド酸構造単位と複数のアミド構造単位とを含むポリ(アミド酸-アミド)コポリマーを形成し、ここでアミド構造単位の数「p」は1以上であり、添加されるモノマーの量によって異なる。最後に、ポリ(アミド酸-アミド)コポリマーは、無水酢酸およびピリジンの存在下で脱水環化反応を受けて、シラン末端を有するポリ(アミド-イミド)コポリマーを形成する。なお、本実施形態では、ポリ(アミド-イミド)コポリマーはn個のイミド構造単位により形成されるブロックとp個のアミド構造単位により形成されるブロックとを含むが、本発明はこれに限定されず、アミド構造単位およびイミド構造単位はポリ(アミド-イミド)コポリマー内にランダムに配置されていてもよい。例えば、ポリ(アミド-イミド)コポリマーは、複数のイミド構造単位群と複数のアミド構造単位群とを含むことができ、ここで複数のイミド構造単位群の各イミド構造単位群は、少なくとも1つのイミド構造単位を含み、複数のアミド構造単位群の各アミド構造単位群は、少なくとも1つのアミド構造単位を含む。一実施形態では、イミド構造単位群とアミド構造単位群が交互になるように、複数のイミド構造単位群の任意のイミド構造単位群は、複数のアミド構造単位群の任意の2つの隣接するアミド構造単位群の間に点在し得る。別の実施形態では、アミド構造単位群とイミド構造単位群が交互になるように、複数のアミド構造単位群の任意のアミド構造単位群も、複数のイミド構造単位群の任意の2つの隣接するイミド構造単位群の間に点在し得る。
【0048】
より具体的には、ポリ(アミド-イミド)コポリマーは、式(1)で表される構造単位と、式(2)で表される構造単位と、式(3)で表される構造単位と、ケイ素-酸素-ケイ素結合とを含む。次に、(1)、式(2)、および式(3)で表される構造、ならびにケイ素-酸素-ケイ素結合について詳細に説明する。
【化11】
式(1)において、Aは4価有機基であり、Dは2価有機基であり、Zは単結合または-NH-である;*は結合位置を表す。
【0049】
さらに、Aで表される4価有機基は、テトラカルボン酸二無水物モノマーに由来し得る。一実施形態では、Aは、好ましくは
【化12】

であり、式中*は結合位置を表す。
【0050】
で表される2価有機基は、芳香族ジアミンモノマーに由来し得る。一実施形態では、Dは、式(D-1)で表される構造であることが好ましい。
【0051】
【化13】

式(D-1)において、*は結合位置を表す。
【0052】
【化14】

式(2)において、Aは2価有機基であり、Dは2価有機基であり、Zは単結合または-NH-であり、*は結合位置を表す。
【0053】
さらに、Aで表される2価有機基は、塩化ジアシルモノマーに由来し得る。一実施形態では、Aは、好ましくは
【化15】

であり、式中*は結合位置を表す。
【0054】
で表される2価有機基は、芳香族ジアミンモノマーに由来し得る。一実施形態では、Dは、式(D-1)で表される構造であることが好ましい。
【0055】
なお、式(1)および式(2)において、DおよびDの少なくとも一方は式(D-1)で表される構造である。DおよびDが式(D-1)で表される構造ではない場合、DおよびDはそれぞれ
【化16】

であり、式中*は結合位置を表す。
【0056】
ポリ(アミド-イミド)コポリマー中のDおよびDの総量100モル%に基づいて、式(D-1)で表される構造の量は70mol%以上であり、好ましくは80mol%以上であり、より好ましくは90mol%以上である。式(D-1)で表される構造の量が上記範囲内であると、ポリ(アミド-イミド)コポリマーまたはポリ(アミド-イミド)コポリマーを有する薄膜用組成物を円滑に成膜することができ、調製された薄膜は良好な光線透過率、耐黄変性、および硬度を有し、式(D-1)で表される構造が70mol%未満であると、膜が形成されない場合がある。
【0057】
【化17】
式(3)において、
はアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、またはアリーレン基であり、好ましくはアルキレン基であり、より好ましくはC1~C11アルキレン基である;
およびRはそれぞれアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、またはフェニル基であり、好ましくはそれぞれC1~C20アルキル基、C2~C20アルケニル基、C2~C20アルキニル基、C3~C20シクロアルキル基、またはフェニル基であり、より好ましくはそれぞれC1~C5アルキル基である;
mは1~3の整数であり、
は単結合または式(3-a)で表される構造であり、
*は結合位置を表す。
【0058】
【化18】
式(3-a)において、Aは2価有機基であり、*は結合位置を表す。
【0059】
で表される2価有機基は、塩化ジアシルモノマーに由来し得る。一実施形態では、Aは、好ましくは
【化19】
であり、式中*は結合位置を表す。
【0060】
式(3-a)のAおよび式(2)のAは、同じまたは異なる2価有機基であってもよい。
【0061】
ポリ(アミド-イミド)コポリマーの末端が式(3)で表される構造単位である場合、ポリ(アミド-イミド)コポリマーにより調製された薄膜は、良好な光線透過率、耐黄変性、および硬度を有し、式(3)で表される構造単位ではない末端を有するポリ(アミド-イミド)コポリマーにより調製された膜は、乏しい光透過性および耐黄変性を有する。
【0062】
さらに、式(1)のZが単結合である場合、式(1)は互いに結合し得る。さらに、式(1)のZが単結合である場合、式(1)は式(1-1)で表される構造単位である。式(1-1)で表される構造単位は、イミド構造単位に含まれる構造単位に相当する。
【0063】
【化20】
式(1-1)において、AおよびDで表される基は、式(1)においてAおよびDで表される基と同じであり、本明細書では繰り返さない。
【0064】
式(1)のZが-NH-である場合、式(1)は、式(2)の一方の末端で「*」を有するカルボニル基に、または塩化ジアシル由来の残基にZを介して結合し得る。さらに、式(1)のZが-NH-である場合、式(1)は式(2)に、または塩化ジアシル由来の残基の間で結合し、式(1-2)で表される構造単位を形成する。式(1-2)で表される構造は、イミド構造単位中のジアミン由来の残基とアミド構造単位中の塩化ジアシル由来の残基または塩化ジアシル由来の残基が結合した後に形成される構造単位に相当する。
【化21】
式(1-2)において、AおよびDで表される基は、式(1)においてAおよびDで表される基と同じであり、Aで表される基は、式(2)においてAで表される基と同じであり、本明細書では繰り返さない。
【0065】
式(2)のZが単結合である場合、式(2)は、式(1)のイミド基の窒素原子にZを介して結合し、式(2-1)で表される構造単位を形成し得る。式(2-1)で表される構造単位は、アミド構造単位中のジアミン由来の残基とイミド構造単位中のテトラカルボン酸二無水物由来の残基が結合した後に形成される構造単位に相当する。
【化22】
式(2-1)において、AおよびDで表される基は、式(1)においてAおよびDで表される基と同じであり、AおよびDで表される基は、式(2)においてAおよびDで表される基と同じであり、本明細書では繰り返さない。
【0066】
式(2)のZが-NH-である場合、式(2)は互いに結合し得る。さらに、式(2)のZが-NH-である場合、式(2)は式(2-2)で表される構造単位である。式(2-2)で表される構造単位は、アミド構造単位に含まれる構造単位に相当する。
【0067】
【化23】
式(2-2)において、AおよびDで表される基は、式(2)においてAおよびDで表される基と同じであり、本明細書では繰り返さない。
【0068】
式(3)のZが単結合である場合、式(3)は、式(2)の一方の末端で「*」を有するカルボニル基にZを介して結合し得る。さらに、式(3)のZが単結合である場合、式(3)は式(3-1)で表される構造単位である。式(3-1)で表される構造単位は、アルコキシ基を有するシラン化合物由来の残基とアミド構造単位中の塩化ジアシル由来の残基が結合した後に形成される構造単位に相当する。
【0069】
【化24】
式(3-1)において、AおよびDで表される基は、式(2)においてAおよびDで表される基と同じであり、Z、R、およびRで表される基は、式(3)においてZ、R、およびRで表される基と同じであり、mの数値範囲は、式(3)におけるmの数値範囲と同じであり、本明細書では繰り返さない。
【0070】
式(3)のZが式(3-a)で表される構造である場合、式(3)は、式(1)のZと、Zが-NH-である場合Zを介して結合し、式(3-2)で表される構造単位を形成し得る。式(3-2)で表される構造単位は、アルコキシ基を有するシラン化合物由来の残基が、イミド構造単位中のジアミン由来の残基に塩化ジアシル由来の残基を介して結合した後に形成される構造単位に相当する。
【0071】
【化25】
式(3-2)において、AおよびDで表される基は、式(2)においてAおよびDで表される基と同じであり、Z、R、およびRで表される基は、Z、R、およびRで表される基と同じであり、mの数値範囲は、式(3)におけるmの数値範囲と同じであり、本明細書では繰り返さない。
【0072】
ケイ素-酸素-ケイ素結合は、アルコキシ基を介したポリ(アミド-イミド)コポリマー間の加水分解縮合反応によって形成される。複数のポリ(アミド-イミド)コポリマーは、ケイ素-酸素-ケイ素結合を介して無機ネットワーク架橋構造を形成する。したがって、ポリ(アミド-イミド)コポリマーは、より優れた機械的特性を有する。
【0073】
ポリ(アミド-イミド)コポリマーをそれぞれ25℃および45℃で1か月間放置すると、粘度の変動は±1%の範囲内になる。すなわち、ポリ(アミド-イミド)コポリマーは良好な安定性を有する。
【0074】
ポリ(アミド-イミド)コポリマーの重量平均分子量は150,000~500,000であり、好ましくは150,000~400,000であり、より好ましくは170,000~300,000である。ポリ(アミド-イミド)コポリマーの重量平均分子量が150,000~500,000である場合、薄膜の耐黄変性はさらに改善され得る。
【0075】
<薄膜用組成物>
薄膜用組成物は、上記の実施形態のいずれかのポリ(アミド-イミド)コポリマーを含む。さらに、薄膜用組成物は溶媒を含んでもよく、任意にエンドキャッピングイソシアネートを含んでもよい。さらに、薄膜用組成物の形成方法は特に限定されず、例えば、薄膜用組成物中の各成分が均一に分散するまで撹拌装置を用いて連続的に撹拌することである。
【0076】
溶媒は、薄膜用組成物を均一に混合することができ、薄膜用組成物中の各成分と反応しないものであれば、特に限定されない。溶媒は、例えば、ジメチルアセトアミド(DMAc)である。ポリ(アミド-イミド)コポリマー100重量部に基づいて、溶媒の使用量は200重量部~900重量部であり、好ましくは400重量部~750重量部であり、より好ましくは500重量部~700重量部である。
【0077】
薄膜用組成物は、好ましくはエンドキャッピングイソシアネートを含む。エンドキャッピングイソシアネートは、式(4)で表される構造を有する。
【化26】
式(4)において、
は単結合またはカルボニル基であり;
は置換もしくは非置換アルキレン基または置換もしくは非置換シクロアルキレン基であり;
【化27】
式中*は結合位置を表す。
【0078】
が単結合である場合、Zは好ましくは非置換アルキレン基であり、より好ましくはヘキシレン基である。Zがカルボニル基である場合、Zは好ましくは置換シクロアルキレン基であり、より好ましくは
【化28】

である。
【0079】
式(4)で表される構造は、式(4-1)で表される構造であることが好ましい。
【化29】
であり、式中*は結合位置を表す。
【0080】
さらに、エンドキャッピングイソシアネートの具体例としては、式(4-1-1)で表される化合物、式(4-1-2)で表される化合物、式(4-1-3)で表される化合物、式(4-1-4)で表される化合物、式(4-1-5)で表される化合物、式(4-2)で表される化合物、またはこれらの組み合わせが含まれ、エンドキャッピングイソシアネートは、好ましくは(4-1-1)で表される化合物である。式(4-1-1)で表される化合物をエンドキャッピングイソシアネートとして使用すると、薄膜の光透過性および耐黄変性がさらに向上し得る。
【化30-1】
【化30-2】
【化30-3】
【0081】
ポリ(アミド-イミド)コポリマー100重量部に基づいて、エンドキャッピングイソシアネートの使用量は5重量部~30重量部であり、好ましくは5重量部~15重量部であり、より好ましくは5重量部~10重量部である。
【0082】
エンドキャッピングイソシアネートが薄膜用組成物に添加されると、良好な光学性能を維持しながら薄膜の耐黄変性はさらに改善され得る。
【0083】
<薄膜>
薄膜は、上記ポリ(アミド-イミド)コポリマーまたは上記薄膜用組成物から形成され得る。
【0084】
薄膜は、例えば、上記ポリ(アミド-イミド)コポリマーまたは薄膜用組成物を基板上にコーティングし、続いて乾燥することにより調製される。
【0085】
基板は特に限定されず、必要に応じて選択することができる。基板は、例えば、無アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、硬質ガラス、または石英ガラスである。
【0086】
コーティング方法は特に限定されず、必要に応じて選択することができる。コーティング法は、例えば、フロー法、ロールコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、エアナイフコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、カーテンコーティング法、または浸漬法である。
【0087】
乾燥方法は特に限定されず、必要に応じて選択することができる。乾燥方法は、例えば、オーブンまたはホットプレートを使用してポリ(アミド-イミド)コポリマーまたは薄膜用組成物でコーティングされた基板を加熱し、溶媒を除去することである。乾燥温度は200~300℃であり得、時間は20分~1時間であり得る。乾燥温度および時間も必要に応じて選択することができ、ベーキングは勾配加熱方式で実施することができる。
【0088】
一実施形態では、米国材料試験協会(ASTM)E313によれば、45~55μmの厚さを有する薄膜は、550nmの波長で89%以上の透過率および3.5以下の黄色度指数を有する。さらに、45~55μmの厚さを有する薄膜は、3Bを超える、好ましくはF~Hの鉛筆硬度を有する。
【0089】
本発明をより具体的に説明するために、例を以下に提供する。以下の実験について説明するが、使用される材料、それらの量および比率、処理の詳細、処理の流れなどは、本発明の範囲から逸脱することなく適宜変更され得る。したがって、本発明は、以下に説明する実験に基づいて限定的に解釈されるべきではない。
【0090】
ポリ(アミド-イミド)コポリマーの合成例1~15を以下に記載する。
【0091】
(合成例1)
撹拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器、および冷却管を備えた1Lの反応器において、窒素ガスを導入しながら、669gのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を反応器に加えた。次に、反応器の温度を25℃に設定した後、53.49g(0.167mol)の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)をNMPに溶解し、得られた溶液を25℃に維持した。次いで、2.59g(0.009mol)の3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、11.72g(0.026mol)の4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、および6.90g(0.035mol)の1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)を加え、成分が溶解し反応するように撹拌を2~4時間実施した。次に、溶液の温度を0~5℃に維持した後、3.89g(0.018mol)の(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)を添加し、混合液を均一に撹拌した。次に、19.63g(0.097mol)の塩化テレフタロイル(TPC)および1.78g(0.009mol)の二塩化イソフタロイル(IPC)を加え、混合液を25℃で12時間反応させて、13wt%の固形分を有するポリ(アミド-イミド)コポリマーの溶液を得た。
【0092】
次に、13.89gのピリジンおよび18.29gの無水酢酸(AcO)を、ポリ(アミド-イミド)コポリマーの溶液に加えた。均一に撹拌した後、混合液を85℃で4時間撹拌した。次に、反応溶液を室温まで冷却し、5Lのエタノールを使用して沈殿させた。沈殿した固体を60℃で12時間乾燥させ、94gの固体形態のポリ(アミド-イミド)コポリマーを得た。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリ(アミド-イミド)コポリマーの重量平均分子量は172,431であった。
【0093】
(合成例2~15)
合成例2~15の調製方法は、各成分の使用量およびそれらの種類を変更したことを除き、合成例1の調製方法と同じであった。各合成例の組成、それらの使用量、およびそれらの重量平均分子量を表1に示す。
【0094】
[表1](単位:モル部)
【0095】
【表1】
【0096】
表1中の略語は次のとおりである:
PAI:ポリ(アミド-イミド)コポリマー
PA:ポリアミド
PI:ポリイミド
TFMB:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
ODA:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル
FDA:9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン
APTES:(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン
APTMS:(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン
Alink25:3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン
CBDA:1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
6FDA:4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
TPC:塩化テレフタロイル
IPC:二塩化イソフタロイル
【0097】
次に、上記ポリ(アミド-イミド)コポリマーまたは薄膜用組成物を用いて薄膜を形成する実施例および比較例について説明する。
【0098】
(実施例1)
94gの固体形態のポリ(アミド-イミド)コポリマーを533gのジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解し、15重量%溶液を得た。次いで、得られた溶液をガラス基板上にコーティングし、湿潤膜厚が350μmになるようにした。次に、120℃で1時間の乾燥を最初に実施し、次いで230℃で20分間の乾燥を実施した後、徐冷した。次に、得られた膜をガラス基板から剥離し、ポリ(アミド-イミド)コポリマーで調製された厚さ50μmの薄膜を得た。
【0099】
(実施例7、9、11、13、15、17、19、21、比較例1、3、5~9)
実施例7、9、11、13、15、17、19、21、および比較例1、3、および5~9の調製方法は、各成分の使用量およびそれらの種類を変更したことを除き、実施例1の調製方法と同じであった。各実施例の組成およびそれらの使用量を表2に示す。さらに、各実施例および比較例で得られた薄膜の物性の評価結果も表2に示す。
【0100】
(実施例3)
94gの固体形態のポリ(アミド-イミド)コポリマーを533gのDMAcに溶解し、次いで9.4gのエンドキャッピングイソシアネートを添加した。30分間撹拌した後、得られた溶液をガラス基板上にコーティングし、湿潤膜厚が350μmになるようにした。次に、120℃で1時間の乾燥を最初に実施し、次いで230℃で20分間の乾燥を実施した後、徐冷した。次に、得られた膜をガラス基板から剥離し、薄膜用組成物から形成された厚さ50μmの薄膜を得た。
【0101】
(実施例2、4~6、8、10、12、14、16、18、20、比較例2および4)
実施例2、4~6、8、10、12、14、16、18、20ならびに比較例2および4の調製方法は、各成分の使用量およびそれらの種類を変更したことを除き、実施例3の調製方法と同じであった。各実施例の組成およびそれらの使用量を表2に示す。表2のエンドキャッピングイソシアネートの使用量は、ポリ(アミド-イミド)コポリマーの使用量100mol%に基づいていた。さらに、各実施例および比較例で得られた薄膜の物性の評価結果も表2に示す。
【0102】
<物性の測定>
1.透過率および黄色度指数
各実施例および比較例によって調製された50μmの薄膜を、米国材料試験協会(ASTM)E313の仕様に従い、550nmの波長での透過率および黄色度指数について測定した。透過率が89%以上であると、薄膜は良好な光線透過率を持つことが示される。黄色度指数が3.5以下であると、薄膜は良好な耐黄変性を持つことが示される。
【0103】
2.鉛筆硬度
各実施例および比較例で得られた50μmの薄膜の鉛筆硬度を、ASTM D3363の仕様により測定した。鉛筆硬度が3Bを超えると、薄膜は良好な硬度を持つことが示される。
【0104】
【表2】
【0105】
表2中の略語は次のとおりである:
LS2078:式(4-1-1)で表される化合物
BL3272:式(4-2)で表される化合物
【0106】
表2によれば、ポリ(アミド-イミド)コポリマー中の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)の使用量が70mol%以上である実施例1~21では、透過率は89%であり、黄色度指数は3.5以下であり、鉛筆硬度はF~Hであった。比較すると、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンの使用量が70mol%未満である比較例6および7では、膜を形成できなかった。したがって、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)の使用量が70mol%以上の場合、ポリ(アミド-イミド)コポリマーまたはポリ(アミド-イミド)コポリマーを有する薄膜用組成物を円滑に成膜することができ、作製した薄膜は良好な光線透過率、耐黄変性、および硬度を有し、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンの使用量が70mol%未満の場合、膜を形成できなかった。
【0107】
さらに、ポリ(アミド-イミド)コポリマー(PAI)で調製された薄膜(実施例1~21)は、89%以上の透過率、3.5以下の黄色度指数、およびF~Hの鉛筆硬度を有した。対照的に、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、またはポリアミドとポリイミドの混合物で調製された薄膜(それぞれ比較例3、4、5、および8)は、89%未満の透過率または3B以下の鉛筆硬度を有した。したがって、ポリ(アミド-イミド)コポリマー(PAI)で調製された薄膜は、良好な光線透過率、耐黄変性、および硬度を有し、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、またはポリアミドとポリイミドの混合物で形成された薄膜は、光透過性、耐黄変性、および硬度の全ての要件を満たさない場合がある。
【0108】
加えて、ポリ(アミド-イミド)コポリマーの反応にエンドキャッピング剤を添加することによって調製された薄膜(実施例1~21)は、89%以上の透過率、3.5以下の黄色度指数、F~Hの鉛筆硬度を有した。対照的に、エンドキャッピング剤の添加なしで調製された薄膜は、89%未満の透過率、3.62の黄色度指数を有した。ポリ(アミド-イミド)コポリマーの反応にエンドキャッピング剤を添加することにより調製された薄膜は、良好な光線透過率、耐黄変性、および硬度を有し、エンドキャッピング剤を添加せずに調製された薄膜は、乏しい光透過性および耐黄変性を有したことがわかるであろう。
【0109】
さらに、ポリ(アミド-イミド)コポリマーの重量平均分子量が150,000~500,000である実施例1(合成例1、重量平均分子量:172,431)では、透過率は89%以上であり、黄色度指数は3.5以下であり、鉛筆硬度はF~Hであった。一方、ポリ(アミド-イミド)コポリマーの重量平均分子量が150,000未満である比較例1および9では、透過率は89%未満であり、黄色度指数はそれぞれ3.62および3.77であった。したがって、重量平均分子量が150,000~500,000のポリ(アミド-イミド)コポリマーを有する薄膜は、良好な光線透過率、耐黄変性、および硬度を有していた。
【0110】
さらに、実施例1~21では、ポリ(アミド-イミド)コポリマーの重量平均分子量が150,000~500,000である実施例1~8、11~14、および17~21は1.73~3.24の黄色度指数を有しており、ポリ(アミド-イミド)コポリマーの重量平均分子量が150,000未満である実施例9~10および15~16の黄色度指数は3.28~3.41であった。ポリ(アミド-イミド)コポリマーの重量平均分子量が150,000~500,000である場合、薄膜の耐黄変性がさらに改善され得ることがわかるであろう。
【0111】
さらに、薄膜用組成物へのエンドキャッピングイソシアネートの添加により調製された薄膜(実施例2~3)は、エンドキャッピングイソシアネートが薄膜用組成物に添加されていない薄膜(実施例1)の黄色度指数(1.87)よりも低い黄色度指数(1.73~1.77)を有していた。したがって、エンドキャッピングイソシアネートを薄膜用組成物に添加すると、良好な光学性能を維持しながら、薄膜の耐黄変性をさらに改善することができる。また、実施例7と8、実施例8と10、実施例11と12、実施例13と14、実施例15と16、実施例17と18、および実施例19と20の6つのグループ間の違いから、エンドキャッピングイソシアネートを薄膜用組成物に添加することにより調製された薄膜は、良好な光学性能を維持しながら、さらに良好な耐黄変性を有し得ることがわかるであろう。
【0112】
さらに、式(4-1-1)で表される化合物をエンドキャッピングイソシアネートとして薄膜用組成物に添加して得られた薄膜(実施例3)は、式(4-2)で表される化合物をエンドキャッピングイソシアネートとして薄膜用組成物に添加して調製された薄膜(実施例4)の透過率(89.58%)および黄色度指数(2.34)よりも、透過率(90.46%)および黄色度指数(1.73)が両方とも良好であった。したがって、式(4-1-1)で表される化合物をエンドキャッピングイソシアネートとして用いると、薄膜の光線透過率および耐黄変性がさらに向上し得る。
【0113】
上記に基づいて、本発明は、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンおよび他のモノマーの重合、脱水環化、および加水分解縮合により得られるポリ(アミド-イミド)コポリマーを提供し、ここで芳香族ジアミンモノマーの使用量100mol%に基づいて、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンの使用量は70mol%以上である。したがって、ポリ(アミド-イミド)コポリマーまたはポリ(アミド-イミド)コポリマーを有する薄膜用組成物を円滑に成膜することができ、調製された薄膜は良好な光線透過率(光学特性)、耐黄変性、および硬度を有する。
【0114】
本発明を上記の実施形態を参照して説明したが、本発明の趣旨から逸脱することなく、説明した実施形態に変更を加えることができることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、上記の詳細な説明ではなく添付の特許請求の範囲によって定義される。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明のポリ(アミド-イミド)コポリマーおよび薄膜用組成物は、成形材料、電子材料および光学材料に適用され得る。本発明の薄膜は、光学装置に適用され得る。
図1