(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】形状記憶要素を有するアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F03G 7/06 20060101AFI20220516BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20220516BHJP
G02B 7/08 20210101ALI20220516BHJP
【FI】
F03G7/06 D
G02B7/04 E
G02B7/08 B
(21)【出願番号】P 2019516701
(86)(22)【出願日】2017-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2017074460
(87)【国際公開番号】W WO2018060229
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-09-04
(31)【優先権主張番号】102016219054.7
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506151659
【氏名又は名称】カール ツァイス マイクロスコピー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CARL ZEISS MICROSCOPY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン、ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ、ミヒャエル
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-313833(JP,A)
【文献】特開平09-294892(JP,A)
【文献】特開2006-091410(JP,A)
【文献】特開2010-046424(JP,A)
【文献】特表2016-504517(JP,A)
【文献】特表2016-514265(JP,A)
【文献】国際公開第2016/048546(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0130492(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 7/06
G02B 7/04
G02B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学装置(3)であって、
移動対象要素(6)を移動経路に沿って調整するアクチュエータ(1)であって、
前記移動対象要素(6)と、
キャリア(5)
として機能する筐体(18)と、
少なくとも1つの形状記憶要素(7、7.1~7.4)と、を備え、
前記少なくとも1つの形状記憶要素(7、7.1~7.4)は、
前記移動対象要素(6)に結合され、
前記形状記憶要素(7、7.1~7.4)の範囲が変化すると前記
筐体(18)に対して前記移動対象要素(6)が所定の方向への力(F)
を受けるように前記
筐体(18)に
よって支持されるように構成される、
前記アクチュエータ(1)
と、
その面の少なくとも1つにおいて前記移動対象要素(6)の前記移動経路を画定する壁(13、13.1)と、
磁性伝導材料で製作された導体(12)と、を備え、
前記導体(12)は、その長さの少なくとも一部にわたって前記壁(13、13.1)の中に延び、前記導体(12)は、前記導体(12)内に案内される磁力線(MFL)が形状記憶要素(7K、7.1~7.4)と相互作用するように複数の形状記憶要素(7K、7.1~7.4)の少なくとも1つに結合される、光学装置(3)。
【請求項2】
複数の形状記憶要素(7、7K、7.1~7.4)の少なくとも1つは、磁性形状記憶材料からなることを特徴とする請求項
1に記載の
光学装置(3)。
【請求項3】
少なくとも1つのコイル(16.1、16.2)は、磁界を生成する目的で、前記磁界の磁力線(MFL)が、磁性形状記憶材料で製作される前記少なくとも1つの形状記憶要素(7K、7.1~7.4)から発生した前記
所定の方向への力(F)に対して
垂直な方向に延びるように配置されることを特徴とする請求項
2に記載の
光学装置(3)。
【請求項4】
対物レンズ(19)の形態の請求項
1に記載の光学装置(3)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの形状記憶要素(7K、7.1~7.4)の現在の空間座標を評価するための評価ユニット(9)と、
評価された前記現在の空間座標に応じて制御コマンドを生成するための制御ユニット(10)と、を備える
請求項1~4の何れか1項に記載の光学装置(3)。
【請求項6】
前記評価ユニット(9)及び前記制御ユニット(10)のうちの少なくとも一方は、
入力された動作パラメータの測定値に応じた計算法、及び前記装置(3)の選択可能な動作モードに応じた計算法のうちの少なくとも一方に基づいて前記制御コマンドを生成するように構成されることを特徴とする請求項
5に記載の
光学装置(3)。
【請求項7】
前記評価ユニット(9)及び前記制御ユニット(10)のうちの少なくとも一方は、
データリンクを介して少なくとも1つの別の部品に接続され、
前記制御ユニット(10)は、
前記少なくとも1つの別の部品から受信したデータに応じて前記制御コマンドを生成するように構成されることを特徴とする請求項
5又は
6に記載の
光学装置(3)。
【請求項8】
キャリア(5)と移動対象要素(6)との間の誘導センサとして構成される少なくとも1つのセンサ(11)と、
前記少なくとも1つのセンサ(11)により取得される測定値をデジタル化するためのインダクタンス-デジタル変換器(24)と、を備える請求項
5~
7の何れか1項に記載の
光学装置(3)。
【請求項9】
対物レンズ(19)の部品を所定の位置に移動させるたるための、請求項1~
3の何れか1項に記載
の光学装置(3)の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶要素を有するアクチュエータと、移動対象要素を移動経路に沿って調整するための装置に関する。さらに、本発明は、アクチュエータを備える構成と装置、及びアクチュエータの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特に光学構成において移動対象要素を調整するために、モータやピエゾドライブを使用することが知られている。これらはまた、顕微鏡等の(一部)自動化された光学構成内で移動を行うためにも使用されてよい。それゆえ、例えば焦点を変更でき、又はフィルタを交換できる。
【0003】
特定の合金(形状記憶合金、SMA)が加熱された後にその当初の形態に復元する能力は以前から知られている。このプロセス中に発生する力は、可動要素を目標を定めた方法で位置決めするのに適している。
【0004】
第一のアプローチは特許文献1にすでに記載されており、カメラ付き携帯電話において移動を生成するために行われている。特許文献1は、特にSMA作動装置のための制御システムを開示している。SMA作動装置はSMAアクチュエータを有し、これは熱の効果により収縮すると、可動部品の移動を生じさせる。制御システムは電流源を含む。SMAアクチュエータは、SMAアクチュエータに流れる電流によって加熱される。さらに、SMAアクチュエータの電気抵抗を検出するための検出回路と、電流源を制御するためのコントローラが存在する。SMAアクチュエータはコントローラにより加熱され、その一方で、SMAアクチュエータの電気抵抗がモニタされる。可動部品の位置が捕捉され、その位置に応じて、SMAアクチュエータは更に加熱されるか冷却されて、可動部品の位置を設定する。アクチュエータの正確な位置決めは、形状記憶金属で製作された複数のワイヤの対向する配置により可能である。同時に、現在位置は使用されるワイヤの抵抗測定により推定できる。
【0005】
特許文献2には、形状記憶合金(SMA)に基づくアクチュエータが記載されている。このアクチュエータは、キャリアと、移動対象要素と、キャリアと移動対象要素との間の複数の弾性接続要素を備える保持装置と、を含む。移動対象要素は、保持要素の効果の結果として軸に沿って案内される。ワイヤの形態の少なくとも1つのSMA要素は、その長さが変わると、移動対象要素に力を加える。
【0006】
特許文献3は、ワイヤの形態の4つのSMA要素と、キャリアと、移動対象要素と、を含むアクチュエータを開示している。各SMA要素について、一方の端はキャリアに接続され、もう一方の端は移動対象要素に接続される。SMA要素により生成される複数の力効果は、相互に対抗するように存在する。移動対象要素は、SMA要素の長さを目標を定めて変更することにより、XY平面内で位置決めすることができる。
【0007】
特許文献4は、カメラレンズを移動させるためのアクチュエータに関する。アクチュエータはキャリアと、カメラレンズと、カメラレンズの移動をその光軸に沿って案内する保持装置と、少なくとも1対のSMA要素と、を含む。これは、カメラレンズとキャリアとの間に引張応力を受けた状態で配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許第2140138号明細書
【文献】米国特許第8441749号明細書
【文献】国際公開第2013/121225号パンフレット
【文献】国際公開第2007/113478号パンフレット
【発明の概要】
【0009】
本発明は、先行技術を改良した別のアクチュエータを提供するという目的に基づいている。さらに、本発明は、アクチュエータを利用する新たな装置及び使用方法を明示するという目的に基づく。
【0010】
アクチュエータに関して、目的は特許請求の範囲の独立請求項1の主旨により達成される。装置に関して、目的は請求項6、7、及び9の主旨により達成される。使用方法に関しては、目的は請求項13~15の主旨により達成される。アクチュエータを含む構成は請求項6に明示されている。
【0011】
有利な発展形態は、従属項の主旨である。
目的は、移動経路に沿って移動対象要素を調整するように構成されたアクチュエータにより達成される。アクチュエータは、移動対象要素と、キャリアと、少なくとも1つの形状記憶要素を含み、形状記憶要素は、移動対象要素に接続され、キャリアの上に、形状記憶要素の範囲が変化すると移動対象要素とキャリアとの間に有向の力効果が生成されるように支持されるべく実装される。
【0012】
本説明中、形状記憶要素は、以下においてSM要素とも略されるが、実質的に形状記憶材料からなる要素と理解される。形状記憶材料は、形状記憶合金(スマート金属合金、例えば形状記憶アクチュエータに利用可能)、形状記憶ポリマ(SMP)、磁性形状記憶材料(MSM、磁性形状記憶合金;例えば磁性形状記憶アクチュエータに利用可能;磁性形状記憶アクチュエータ)、誘電エラストマ(誘電エラストマアクチュエータ、すなわちDEAに利用可能)、及びそれらの組合せとすることができる。さらに、形状記憶材料は、米国特許第7,591,834号明細書に記載されている材料とすることができる。
【0013】
磁性記憶合金は、形状記憶合金のサブグループと考えることができる。これらの材料において、形状記憶効果は主として、相応に配向された強い磁界の効果により生じる。ここで、それぞれの形状記憶材料に応じて、磁性形状記憶材料の寸法の少なくとも1つ、例えばその長さにおいて、最大10%の変化を起こすことができる。磁性形状記憶材料に基づくSM要素は、大きい自己保持効果を有する。自己保持効果により、追加のクランプ要素を用いなくても、例えば光学要素をその位置に保持することが可能となる。自己保持効果により、SM要素又は前記SM要素との動作関係を有する要素若しくは部品の少なくとも幾つかは、外力が作用するはずであっても、その位置に留まる。
【0014】
特に、不変的に高い画像品質を確保するために、光学システムの調整に対する要求は非常に高い。同時に、例えば必要な誤差をそれほど小さく選択しなくてよい技術的解決策を使用することにより、製造コストも削減すべきである。
【0015】
過去において、移動対象要素の調整は、調整リング又は手動型要素(例えば、止めねじ)を利用して実現されていた。そうする中で、調整すべきシステムは、調整リングによる調整の範囲内で、組み立て、測定し、その後再び分解しなければならなかった。この手順は時間を要し、組み立てなおした場合に、システムの特性が変化するリスクをはらむ。さらに、現在の調整状態をリアルタイムで評価することは不可能である。
【0016】
調整が手動型要素により行われる場合、調整の感度は、例えばねじ山により限定される。さらに、個々の作動要素へのアクセスが必要となる、その結果、構造的な実施形態の選択肢は大きく制限される。とりわけ、調整要素のための追加の据付けスペースが必要となる。
【0017】
SM要素及びSM要素を含むアクチュエータの使用により、それを例えば光学装置の中に省スペース、高いコスト効率で組み込みやすくなる。実現可能な位置決め精度は1マイクロメートル以内であり、したがって、調整は高い感度で行うことができる。さらに、調整は、目で見て、例えばリアルタイムで(ライブオブザベーション)伴われることが可能である。
【0018】
さらに有利なことは、守るべき製造公差を大きくできることである(例えば、すきま嵌め)。製造公差は、本発明によるアクチュエータによって効率的に補償可能である。
追加的に、例えば100~500μmの移動がSM要素により実現可能である。より大きい移動により、隣接するメカニズムの製造精度を低くすることができ、それが製造コストの削減に貢献する。SM要素又はアクチュエータが任意選択により自己分析又は自己検出のために実装されている場合、再調整のための追加の測定システムは不要である。
【0019】
到達した調整位置を比較的長期間、例えば数時間、数日、数週間、又は数カ月間保持すべきである場合、形状記憶材料の自己保持効果を利用できる。さらによい点として、ブレーキ又はクランプユニット及び/又はクランプ要素が追加的に提供され、その効果により移動対象要素は現在の調整位置に固定可能となり、又は固定される。
【0020】
到達された調整位置を、例えば移動対象要素とキャリアとの間に発生する摩擦力の効果により固定することも可能である。そのために、移動対象要素はキャリアにばね及び/又は磁石で接続でき、磁石を用いる実施形態では、据付けスペースがより小さく、また低コストとなる。例えば、複数の磁石が移動対象要素に取り付けられ、移動対象要素は例えば、アルミニウム、プラスチック、ガラス、又は適当な複合材料等の非磁性材料からなっていてもよい。キャリアは、磁性(強磁性)材料からなり、又はこのような磁性(強磁性)材料で製作された領域を含む。
【0021】
複数の磁石とキャリアとの間に作用する磁力は移動対象要素をキャリア上に保持する。ここで、複数の磁石が、これら磁石とキャリアとの間にエアギャップが保たれるような配置及び寸法とされると有利である。このような実施形態では、高精度となり、移動対象要素に加えて磁石もキャリアと直接接触する場合よりエラーが少なくなる。移動対象要素とキャリアとの間で生じる摩擦力は、これらの部品間の自己保持効果につながる。摩擦力は、SM要素又はそこにある要素によって発生されるか、又は発生可能な作動力より低いべきである。後述のブレーキ又はクランプユニットと比較して、この自己保持効果は低いが、通常、例えば若干の振動による加速等の小さいかく乱力を補償するには十分である。
【0022】
別の実施形態において、キャリアと移動対象要素の両方が磁石を有することができる。相互に対向する磁石は、相互に引き付け合うように反対の極性で配置される。
移動対象要素がアクチュエータによって、特にSM要素によって所望の位置に移動される位置決めシステムを構成することが可能である。移動対象要素は、磁力により生じる摩擦力の結果として所望の位置に固定される。適当なセンサは、この位置が保持されているか否かをモニタできる。移動対象要素の現在の位置(実際の位置)の所望の位置からの容認不能な差が特定された場合、移動対象要素はSM要素が相応に作動されることによって所望の位置に戻される。
【0023】
このようなシステムの利点は、追加のブレーキ又はクランプユニットが不要であることと、移動対象要素が所望の位置(所期の位置)になくなった場合、SM要素だけを作動させ、例えば電源を投入すればよいだけであることである。
【0024】
別の実施形態の選択肢において、例えば誘導コイルの形態の1つ又は複数のセンサをキャリア上に配置できる。例えば各々が他の2つから120°の角度だけずれている3つの誘導コイルがある。移動対象要素は、導電材料からなるか、導電材料を含まなければならない。移動対象要素の現在位置は、誘導コイルにより捕捉でき、例えば誘導コイルの測定値から計算できる。誘導コイルの少なくとも1つの測定値、例えばインダクタンス及び/又はインピーダンスは、移動対象要素と前記誘導コイルとの間の距離が変化すると変化する。現在の距離、及びしたがって距離におけるそれぞれの変化は、適当な変換器、例えばテキサスインスツルメンツ(登録商標)によるLDC1000インダクタンス-デジタル変換器等のインダクタンス-デジタル変換器により確定できる。他の実施形態では、センサも移動対象要素上に配置されてよい。
【0025】
センサ、キャリア、及び移動対象要素のシステムがいったん較正されると、キャリアと移動対象要素の現在の位置及びその距離は精密に測定できる。容認可能な差がある場合、SM要素は、キャリアと移動対象要素の所望の位置に再び到達するように作動させることができる。ここで有利な点は、移動対象要素を直接検出でき、追加の磁石やその他の部品が不要であることである。小さい据付けスペース要求と低コストで、高集積の解決策を実現できる。それゆえ、例えば約5×5mm2の誘導コイルを使用することができ、その精度及び再現性は数μmの範囲内にある。別の考えうる実施形態において、ブレーキ又はクランプユニットは少なくとも1つのばね要素、例えばスプリットワッシャを有し、その効果は、移動対象要素又は移動対象要素により保持される要素、例えばレンズ、絞り、又はフィルタを隣接部に押し付ける。少なくとも1つのSM要素によって、移動対象要素はブレーキ又はクランプユニットの力効果に対して横方向に移動されるか、ブレーキ又はクランプユニットの力効果に対して横方向に移動可能である。
【0026】
SM要素と移動対象要素との間の接続は、圧力嵌め及び/又はインターロッキング接続により実現できる。このような接続はまた、SM要素が移動対象要素の上に、その範囲の少なくとも一部にわたって載る、及び/又はSM要素が移動対象要素の中に案内され、移動対象要素と機械的に相互作用する実施形態を意味すると理解される。
【0027】
SM要素は、拘束されていない端を有する、又はキャリアと圧力嵌め若しくは粘着接着されていない部分を有する状態でキャリア上に支持できる。別の実施形態において、SM要素はキャリアに取り外し可能にも、取り外し不能にも接続できる。
【0028】
例えば、接続は、ねじ接続、クランプ接続、又はプラグイン接続等、取り外し可能な接続、特に圧力嵌め及び/又はインターロッキング接続である。別の実施形態において、接続は、接着剤による結合接続、溶接接続、鋳造接続、又はプレスフィット接続等、取り外し不能な圧力嵌め、インターロッキング、及び/又は粘着接続とすることができる。
【0029】
アクチュエータの別の実施形態において、SM要素により駆動される、又は駆動可能な少なくとも1つのクランプ要素があり、前記クランプ要素の力効果は移動対象要素に向けられ、移動対象要素は前記クランプ要素の前記力効果の結果として隣接部に固定され、それによって、固定された移動対象要素はクランプ位置に保持される。力効果は、駆動された状態で生じる。クランプ要素が駆動されないと、力効果は移動対象要素に向けられ、移動対象要素はクランプ位置に固定可能である。
【0030】
別の考えうる実施形態において、クランプ要素は、SM要素が冷却され、及び/又は電流ゼロの状態にあるときに駆動できる。移動対象要素を所定の位置に移動させるべきである場合、SM要素が加熱され、及び/又は電流がその中に流れる。クランプ要素の力効果が弱められ、又は取り除かれ、移動対象要素を所定の位置に移動できるようになる。移動対象要素をその指定された位置に固定するためには、クランプ要素のSM要素は再び冷却され、及び/又は電流ゼロの状態に切り換えられ、すると、クランプ要素の力効果は再び有効となり、移動対象要素はその位置に保持される。対応する記述は、SM要素への磁界の効果又はその無効化にも当てはまる。
【0031】
例えば、このような実施形態は、移動対象要素が、例えば顧客に納品される前に調整されるか、アクチュエータを含む製品のその場での組立中に調整される場合、及び前記要素をクランプ位置に比較的長期間にわたり保持すべきである場合(いわゆるset-and-forget(一度設置すれば後は忘れてもよい)用途)に有利である。
【0032】
別の実施形態において、クランプ要素をSM要素が加熱され、及び/又は電流通過状態であるときに駆動されるようにすることが可能である。移動対象要素を所定の位置に移動させるべきである場合、SM要素が冷却され、及び/又は電流ゼロの状態とされる。クランプ要素の力効果が弱められ、又は取り除かれ、移動対象要素を所定の位置に移動できるようになる。移動対象要素をその指定された位置に固定するためには、クランプ要素のSM要素は再び加熱され、及び/又は電流がその中に流される。対応する記述は、SM要素への磁界の効果又はその無効化にも当てはまる。
【0033】
クランプ要素は、駆動SM要素により直接形成でき、すると、このクランプ要素は移動対象要素と直接接続される。この実施形態は、非常に省スペースで、多くの材料を節約できる。
【0034】
別の考えうる実施形態において、SM要素の少なくとも1つは実質的に磁性形状記憶材料から形成される。有利な点として、このようなSM要素は1つ又は複数の磁界の効果により作動させることができる。例えば、SM要素に電気コネクタは不要である。
【0035】
別の実施形態において、アクチュエータには、それが適当な磁界により作動される場合、電気及び/又は電子部品をなくすことができる。
この場合、磁性形状記憶材料からなるSM要素は、移動対象要素に接続されたSM要素の1つ及び/又は少なくとも1つのSM要素とすることができる。
【0036】
アクチュエータの別の実施形態において、SM要素が反対方向に動作すると、少なくとも1つのSM要素の力効果は少なくとも1つの別のSM要素の力効果によって部分的に補償でき、その結果、所望の位置を越えて駆動されることをほとんど回避できる。
【0037】
反対方向に動作するSM要素の代わりに、又はそのSM要素に加えて、少なくとも1つのばね要素を利用でき、このばね要素は少なくとも1つのSM要素に拮抗力として作用する。
【0038】
別の実施形態において、アクチュエータは少なくとも2つのSM要素を有することができ、これらSM要素は、それぞれの有向の力効果が少なくとも部分的に相互に対して向けられるように配置される。対向するSM要素は反対方向に動作できる。例えば、SM要素の一方において収縮が起こると、補償として反対のSM要素が伸長する。
【0039】
別の実施形態の選択肢において、複数のSM要素は、その力効果が相互に正確に対抗する方向に向けられないように整列される。このような実施形態により、両方のSM要素に接続された移動対象要素は、すべての空間方向に部分的に移動可能であり、少なくとも1つの回転軸の周囲で傾斜可能である。
【0040】
磁性形状記憶材料からなるSM要素を作動させ、SM要素の形状変化をもたらすために、アクチュエータの別の実施形態において、磁界を生成するための少なくとも1つのコイルが、磁界の磁力線が磁性形状記憶材料で製作された少なくとも1つのSM要素から生じる有向の力効果に対して横方向に延びるように配置される。
【0041】
有利な点として、SM要素の非接触式の作動が磁界により可能となる。
アクチュエータは、構成、例えば機械構成又は光学構成の構成部分とすることができる。ここで、構成は、その面の少なくとも1つにおいて移動経路を画定する壁、例えば筐体又は管の壁を有する。さらに、磁性伝導材料で製作される導体が存在し、導体は、その長さの少なくとも一部にわたり、壁の中に延び、導体はSM要素の少なくとも1つに、導体内に案内される磁力線がSM要素と相互作用するように接続される。相互作用が十分に強力であれば、その結果として力効果が発生する。
【0042】
このような実施形態の利点は、必要な空間が小さくて済むことと、アクチュエータを堅牢に実現できることである。例えば、このような実施形態は、例えば光学装置の光軸に沿って光学レンズを移動させるために利用可能である。
【0043】
光学装置は、特に対物レンズである。別の実施形態において、光学装置はまた、光学台、光学器具の、例えば顕微鏡の、又は光学測定器具のビーム経路の一部とすることもできる。光学装置はまた、シネマレンズ、カメラレンズ、眼鏡照準具、携帯用双眼鏡又は携帯用単眼鏡として具体化されてもよい。
【0044】
アクチュエータは、光学層の中に、光学要素、例えば光学レンズをその中で移動させるために配置できる。
先行技術によれば、光学装置の内部における、例えば対物レンズ又はその他の光学若しくは光学機械アセンブリにおける移動はこれまで、光学アセンブリから外部に移動され、例えば電気モータにより動作するドライブによりもたらされていた。
【0045】
アクチュエータが組み込まれた実施形態により、有利な点として、例えば多くのスペースを必要とする利用可能な光学又は光学機械アセンブリの実施形態が避けられる。さらに、本発明によるアクチュエータによって生成可能な作動力は、例えば小型のピエゾドライブにより達成されるものより大きい。
【0046】
移動対象要素は、その中に調整されるべき部品、例えば1つ又は複数の光学レンズ、絞り、ミラー、フィルタ、センサ、又は格子が保持される、又は保持されることが可能なホルダ又はマウントとすることができる。
【0047】
移動対象要素はまた、モノリシックの実施形態を有し、それ自体を調整されるべき部品とすることができる。例えば、移動対象要素は開口を有するプレートとすることができる。移動対象要素はまた、1つ又は複数のレンズ、絞り、及び/又はプリズムシステム、特に正立系とすることもできる。
【0048】
また、少なくとも2つの移動対象要素が存在することもでき、前記要素は光学フリーフォーム要素として具体化される。例えば、それぞれの場合にアルバレスプレート(Alvarez plate)が実装され、前記アルバレスプレートは相互に関して移動されることが意図される。アルバレスプレートの移動には特に、厳しく制限された据付けスペース内で非常に精密な移動が必要となる。
【0049】
さらに、目的は、移動対象要素の、及び/又はSM要素の空間内の座標と相対的な空間内の向きを含む現在の空間座標を評価するための評価ユニットを含む調整装置により達成される。さらに、評価された現在の空間座標に応じて制御コマンドを生成するための制御ユニットも存在する。例えば、空間座標は、例えば移動対象要素の、及び光学構成、例えば顕微鏡、測定器具、手術若しくは治療方法に使用される機器、照明装置、又は露光装置の現在のビーム経路のプロファイルの二次元座標及び/又は空間内の座標及び/又は相対的な空間内の向きとすることができる。
【0050】
装置の発展型実施形態において、評価ユニット及び/又は制御ユニットは、まとめて制御ユニットと呼ぶことができ、動作パラメータの入力された測定値に応じた、及び/又は装置の選択可能な動作モードに応じた計算法に基づいて制御コマンドを生成するように構成される。
【0051】
例えば、計算法は、制御ユニットがアクセス可能な記憶されたルックアップテーブル又は機械的機能であり、これは測定値と生成されるべき制御コマンドとの間の関係をあらかじめ決定する。
【0052】
例えば、動作モードは、例えばサンプルについて測定を実行するための異なる波長又は波長範囲の使用である。
別の実施形態において、装置は、制御ユニットがデータリンクを介して少なくとも1つの別の構成要素に接続されるように実施でき、制御ユニットはこの少なくとも1つの別の構成要素から受信したデータに応じて制御コマンドを生成するように構成される。
【0053】
アクチュエータ、構成、及び装置は、例えばあらゆる種類の顕微鏡システム、例えばレーザ走査型顕微鏡、電子顕微鏡、又は広視野顕微鏡等の光学システムにおいて使用できる。
【0054】
構成は、同じ実施形態又は異なる実施形態の本発明による複数のアクチュエータを有することができる。
構成の別の実施形態において、存在するアクチュエータは、相互に異なる方向X、Y、及び/又はZに調整可能である。さらに、本発明によるアクチュエータは、静止するように据え付けられた部品、例えば光学レンズ、絞り、及び/又はフィルタと組み合わせることができる。
【0055】
調整装置により、アクチュエータが例えば移動対象要素(複数の場合もある)の補正のための調整を行う可能性が明示される。必要な調整は、半径方向と軸方向の両方に実行できる。
【0056】
光学部品に、例えば培養構造の結果としてアクセスできない場合、先行技術による調整は外部からモータにより駆動しなければならないが、本発明による調整装置では、光学部品の内部での駆動が可能となる。有利な点として、アクチュエータを光学部品の外に移動させることが回避されている。
【0057】
アクチュエータは、対物レンズの部品を所定の位置に移動させるために使用できる。このアクチュエータはまた、ピンホール、絞り、又は補正ミラーを含む移動対象要素を調整するためにも使用できる。アクチュエータのその他の考えられる用途は、少なくとも2つの光学要素を相互に関して調整することにある。光学要素は、光学フリーフォーム要素、例えばアルバレスプレート、光学レンズ、及び/又はセンサとすることができる。
【0058】
アクチュエータ及び/又は調整装置は、センサを調整するために使用できる。
移動対象要素及びそれと共に把持又は保持される調整すべき要素(まとめて簡単に移動対象要素と呼ばれる)は、アクチュエータによって制御された方法で移動される。そのために、センサの実際の測定値を捕捉し、例えば実際の測定値を所期の測定値と比較することによって評価できる。制御コマンドは、比較の結果に応じて生成される。
【0059】
例えば、測定値はSMA要素の抵抗測定によって捕捉可能である。別の実施形態において、測定値は代替的又は追加的に画像評価方法を利用して確定される。
制御コマンドの生成は、実際の測定値の初期の測定値との差が容認可能な誤差限度内にとどまっている場合は省くことができる。
【0060】
提案されている解決策、特にアクチュエータ、その使用方法、及び調整方法は、有利な点として、1つ又は複数の移動対象要素を短い距離にわたり高い精度と非常に良好な再現性で調整することが可能となる。記載されている解決策により、利用可能な据付けスペースがほとんどない場合に、わずかな支出で、構造的に難しい状況でのアクチュエータの使用が容易となる。
【0061】
有利な点として、ツールへのアクセスが不要である。ライブでの調整、すなわち時間的に近い観察の下での調整が可能である。装置は、完全に組み立てられた状態で調整できるため、分解しなおし及び/又は後処理が不要である。
【0062】
別の利点は、顧客がその場での調整を実行する選択肢にあり、これは例えば、サービスマンがじかにいなくても、ネットワークを通じて実行することもできる。当然のことながら、調整は、サービスマンがその場で実行することも可能である。
【0063】
装置、特に制御ユニットは、例えば装置を輸送した後又は特定の使用期間後に必要となるかもしれない事後調整が行われるように構成できる。そのために、装置の出荷時状態を制御ユニットのメモリに、又はそれに接続されたメモリに保存でき、前記出荷時状態は、事後調整中にチェックされ、又は再確定される。
【0064】
さらに、制御ユニットはまた、装置、すなわち解像度又は移動対象要素を所望の初期の位置まで移動させる際の精度等のその性能指標の最適化が、外的影響に応じて行われるように構成できる。
【0065】
それゆえ、現在の室温の測定値を捕捉できる。温度変化、例えば装置の部品の、及び/又はアクチュエータの長さの変化の影響の可能性を補償するために、記憶された計算法を使って、制御コマンドが生成される。
【0066】
配置又は装置は同様に、他のシステム部品と一緒に使用できる。計算法は、他の実際に存在するシステム部品に応じて選択し、及び/又は変更できる。
以下に、例示的な実施形態と図面に基づいて本明細書をより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1a】記憶合金で製作された形状記憶要素の略図と、変形及び加熱時のその挙動を示す。
【
図1b】磁性形状記憶材料で製作される形状記憶要素の略図と、異なる磁界の影響下でのその挙動を示す。
【
図1c】形状記憶材料として誘電エラストマで製作された形状記憶要素の略図と、磁界内のその挙動を示す。
【
図2a】本発明によるアクチュエータの第一の例示的実施形態の略図を側面図で示す。
【
図2b】本発明によるアクチュエータの第一の例示的実施形態の略図を側面図で示す。
【
図3】クランプ要素として形状記憶要素を備える本発明によるアクチュエータの第一の例示的実施形態の略図の第二の例示的実施形態と、移動対象要素を調整する他の装置の第一の例示的実施形態の略図を示す。
【
図4】複数のアクチュエータを備えると同時に、移動対象要素を調整するための本発明による装置の第二の例示的実施形態として実施された、本発明による光学装置の例示的実施形態の横断面の略図を示す。
【
図5a】本発明によるアクチュエータの第三の例示的実施形態と本発明による装置の第三の例示的実施形態の略図を平面図で示す。
【
図5b】本発明によるアクチュエータの第三の例示的実施形態と本発明による装置の第三の例示的実施形態の略図を縦断面図で示す。
【
図6a】本発明によるアクチュエータの第四の例示的実施形態と本発明による装置の第四の例示的実施形態の略図を平面図で示す。
【
図6b】本発明によるアクチュエータの第四の例示的実施形態と本発明による装置の第四の例示的実施形態の略図を縦断面図で示す。
【
図7】本発明によるアクチュエータの第五の例示的実施形態と本発明による装置の第五の例示的実施形態の略図を示す。
【
図8】本発明によるアクチュエータの第六の例示的実施形態と本発明による装置の第六の例示的実施形態の略図、及び本発明による配置の例示的実施形態を示す。
【
図9】本発明によるアクチュエータの第七の例示的実施形態と本発明による装置の第七の例示的実施形態の略図を示す。
【
図10】第七の例示的実施形態によるアクチュエータを備える本発明による装置の第八の例示的実施形態の略図を示す。
【
図11】第八の例示的実施形態によるアクチュエータを備える本発明による装置の第九の例示的実施形態の略図を示す。
【
図12】第九の例示的実施形態によるアクチュエータを備える本発明による装置の第十の例示的実施形態の略図を示す。
【
図13】第七の例示的実施形態によるアクチュエータを備える本発明による装置の第十一の例示的実施形態の略図を示す。
【
図14】第十の例示的実施形態によるアクチュエータを備える本発明による装置の第十二の例示的実施形態の略図を示す。
【
図15a】第十の例示的実施形態によるアクチュエータを備える本発明による装置の第十二の例示的実施形態の略図を平面図で示す。
【
図15b】第十の例示的実施形態によるアクチュエータを備える本発明による装置の第十二の例示的実施形態の略図を側面図で示す。
【
図16】キャリアと移動対象要素を接続するための磁石を備える本発明による装置の第十三の例示的実施形態の略図を断面図としての側面図で示す。
【
図17】本発明による装置の第十三の例示的実施形態の略図を、半径方向に有効なSM要素と共に平面図で示す。
【
図18】インダクタンスにより位置を測定するためのセンサを備える本発明による装置の第十四の例示的実施形態の略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
例示的実施形態の略図において、他の明確なことわりがないかぎり、同じ技術的要素は同じ参照符号により表示されている。図は正しい縮尺によらない。
図1a~1cは、ウェブサイトhttp://www.smarthoch3.de/ueber-smart3/smart-materials(2016年5月30日現在のもの)から引用し、図番と参照符号を補足した。
図12~15bは、断面図又は部分的断面図として示されている。
【0069】
温度応答性形状記憶合金で製作された形状記憶要素(shape-memory element)7(以下、SM要素7)の特性は、
図1aの部分図(1)~(4)に示されている。SM要素7は、初期形態において特定の格子構造を有する(部分図(1))。SM要素7が、例えば機械的な力効果により変形した形態にされると(部分図(2))、その格子構造は少なくとも部分的に変化する。図の例では熱である刺激が、変形したSM要素7に作用すると(部分図(3))、このSM要素7はその初期形態に戻る(部分図(4))。SM要素7が再び冷めると、当初の格子構造が再確立される。
【0070】
磁性形状記憶材料(
図1b)もまた、前述のような挙動を示す。SM要素7の形状の変化は、関係する磁力線MFLにより示されるように(
図5~7参照)、SM要素7に作用する磁界の方向と強度に応じてもたらさる。
【0071】
いわゆる誘電エラストマアクチュエータは実質的に、誘電エラストマからなる。このアクチュエータが磁界にさらされると、DEAの形状及び/又は寸法が変化する(
図1c)。
【0072】
基本的部品として、アクチュエータ1は、移動対象要素6と、キャリア(carrier)5と、少なくとも1つのSM要素7と、を含み、SM要素7は移動対象要素6に接続され、キャリア5上に支持されるように実装される(
図2a)。
【0073】
本発明によるアクチュエータ1の第一の例示的実施形態においては、第一のSM要素7.1と第二のSM要素7.2がある。移動対象要素6は、光学レンズ20のマウントとして具体化される。移動対象要素6の周囲の、移動対象要素6とキャリア5との間にクリアランス15があり、このクリアランス15はここではチューブ18により、又は、別の考えうる実施形態からは、より一般的に筐体18により形成される。SM要素7.1、7.2は、クリアランス15内に配置される。
【0074】
SM要素7.1及び/又は7.2のその寸法の少なくとも1つにおける範囲の変化の結果として、有向の力効果Fが移動対象要素6に加えられ(両矢印により記号化されている)、有向の力効果により、移動対象要素6はXY平面XY内で移動可能となり、光学レンズ20は、図ではそれ以上詳しく示されていない光学構成2のZ軸Zの方向に延びる光軸4に関して調整可能となる。
【0075】
アクチュエータ1の別の例示的実施形態の選択肢において、SM要素7.1及び7.2は、力効果FがZ軸Zの方向に生成されるように配置、実施され、移動対象要素6は光学レンズ2と共に光軸4に沿って調整可能である。
【0076】
別の実施形態において、移動対象要素6の移動は、SM要素7.1、7.2により、XY平面XY内とZ軸Zの方向の両方に実現されてよい。
図3は、移動対象要素6を光軸4に沿って調整するためのSM要素7.1と、SM要素7Kにより駆動されるクランプ要素8を備える本発明によるアクチュエータ1の第二の例示的実施形態を示す。
図3による例示的実施形態において、クランプ要素8はSM要素7K自体により形成され、このクランプ要素8は移動対象要素6に直接接続される。
【0077】
移動対象要素6は第一のSM要素7.1により、再び光軸4と一致するZ軸Zに沿って移動可能である。SM要素7Kの力効果Fは、移動対象要素6に対して、第一のSM要素7.1の力効果Fの方向に直交するように向けられ、又は向けることができる。第一のSM要素7.1は、筐体18上に形成されるキャリア5上に支持される。
【0078】
図の例示的実施形態において、SM要素7Kは磁性形状記憶材料で製作されたMSM-SM要素である。SM要素7.1は実質的に形状記憶合金からなり、熱により作動可能である。
【0079】
別の実施形態において、SM要素7.1とSM要素7Kは各々、熱により制御可能な形状記憶材料、磁気により制御可能な形状記憶材料、又は形状記憶材料としての誘電エラストマからなるようにすることができる。
【0080】
SM要素7の、又はクランプ要素8のSM要素7Kの形状記憶材料の対応する互換性は、特に別段の明記がないかぎり、記載されている本発明のすべての実施形態に当てはまる。
【0081】
SM要素7.1及び7Kの移動と力効果Fを制御するために評価ユニット9と制御ユニッ10がある。制御ユニット10により、SM要素7.1及び7Kは相互に独立して作動させることができる。ここで、作動は、例えばSM要素7.1、7Kの各々を流れる特定の振幅と特定の電圧の電流により実行される。SM要素7.1、7Kの少なくとも1つの寸法の変化は、それぞれのSM要素7.1、7Kのオーム抵抗とプロセス中に生成される熱の結果としてもたらされる。
【0082】
SM要素7.1、7Kの各々の現在の長さ及び現在のオーム抵抗は、当業者に知られている適当な測定回路11によって、又はセンサ11によって取得可能である。プロセス中に得られた測定値は、評価ユニット9に送信され、評価ユニット9は、データの送信に適した方法で制御ユニット10に接続され、その構成部品又はサブユニットとして実装されてよい。評価ユニット9は、例えばSM要素7.1、7Kの現在の空間座標及びその現在の伸長状態、光学構成2のビーム経路の現在の空間位置、及び/又は現在のビーム経路に関する移動対象要素6の現在の相対的な向きを評価するように構成される。
【0083】
アクチュエータ1、評価ユニット9、及び制御ユニット10は、移動対象要素6を調整するための装置3の基本的要素であり、その第一の例示的実施形態は
図3に示されている。
【0084】
制御ユニット10は、評価ユニット9により送信された測定値に、及び/又は評価ユニット9の評価結果に応じて、及び任意選択により例えば気温等のその他の測定値を利用して、SM要素7.1、7Kを作動させるための制御信号を生成し、出力する。光学構成2の光軸4は、現在のビーム経路又はその現在のプロファイルにより明示される。
【0085】
制御コマンドは、ここでは図示されていない装置において実行され、その制御コマンドに対応してSM要素7.1、7Kの電流の流れ及び/又は温度の変化がもたらされる。
移動対象要素6は、光軸4に沿って調整可能である。移動対象要素6が第一のSM要素7.1によりZ軸Zに沿って調整され、現在の調整位置にある場合、SM要素7Kのための制御コマンドが生成されて実行され、それにより移動対象要素6は、SM要素7Kの力効果Fによりキャリア5に押し付けられ、現在の調整位置における固定位置で保持される。
【0086】
複数のアクチュエータ1を備える本発明による光学装置3の第二の例示的実施形態が
図4に示されている。それとともに、対物レンズ19の形態の光学装置3は、移動対象要素6を調整するための本発明による装置3として具体化されている。
【0087】
フロントレンズとして具体化される光学レンズ20のマウント17と管状のキャリア5が筐体18の中に配置されている。キャリア5には、光学レンズ20のマウントの形態の4つの移動対象要素6.1~6.4があり、これら移動対象要素6.1~6.4は光学構成2の光軸4に沿ってつなげられている。SM要素7.1と7.2、及びSM要素7.3と7.4はそれぞれ、移動対象要素、6.1と6.2との間、及び6.2と6.3との間に位置付けられている。移動対象要素6.1~6.3は、それぞれのSM要素7.1~7.4により、配置2の光軸4の方向のZ軸Zの方向に調整可能である。
【0088】
移動対象要素6.4は、SM要素7.5及び7.6に直接接続され、XY平面XY内で調整可能である。
別の実施形態において、第一から第三の移動対象要素6.1~6.3の幾つか又は全部にクランプ要素8を提供できる(
図3参照)。別の実施形態において、第一から第三の移動対象要素6.1~6.3のクランプ要素の代わりに、又はクランプ要素に加えて、例えば
図5bに示されるように、クランプ要素8を備える第四の移動対象要素6.4を提供することもできる。
【0089】
図5aは、本発明によるアクチュエータ1の第三の例示的実施形態と本発明による装置3の第三の例示的実施形態の、光軸4に沿った平面図を示す。
移動対象要素6は、4つのSM要素7.1~7.4を介して、キャリア5として機能する筐体18に直接接続される。
【0090】
明瞭にするために
図5aでは省略されている別の要素は、アクチュエータ1の第三の例示的実施形態及び装置3の縦断図の中に見ることができる。
移動対象要素6、したがって光学レンズ20は、XY平面XY内で調整可能である。現在の調整位置に到達すると、移動対象要素6は、SM要素7Kにより駆動されるクランプ要素8によって、絞り14として機能する筐体18の一部に対し、軸方向に、すなわちZ軸Zの方向に押し付けられ、前記要素は現在の調整位置(クランプ位置)に保持される。
【0091】
SM要素7.1~7.4は、磁気により制御可能な形状記憶材料からなる(MSM-SM要素)。
磁界を生成するための第一のコイル16.1及び第二のコイル16.2は、筐体18を半径方向に取り囲むように配置される。コイル16.1、16.2の向きとその中を流れる電流は、磁力線MFLがSM要素7.1~7.4から生じる有向の力効果に対して横方向に延びるように選択される。
【0092】
SM要素7.1~7.4は、磁界の効果により、特にその強さと方向により、非接触式に作動させられる。ここで、作動は筐体18を通じて実行されるため、筐体18の壁13の開口部は不要である。
【0093】
ここで、当業者であれば、磁界の磁力線MFLは湾曲した軌道をたどることに気付く。当業者であれば、提供されている簡略化された説明を理解し、コイル16.1、16.2及びその配置を、上述の効果がSM要素7.1~7.4に対して、技術的観点から適正に使用できる程度に生じるように選択する。
【0094】
本発明によるアクチュエータ1及び本発明による装置3の別の実施形態において、SM要素7.1~7.3(
図6a及び6b)は、その力効果Fが光軸4に関して同軸に、Z軸Zの方向に発生するように配置される。SM要素7.1~7.3は、磁気により制御可能な形状記憶材料からなる(MSM-SM要素)。
【0095】
2つのコイル16.1及び16.2は各々、光軸4に平行な平面内に配置される。コイル16.1、16.2により生成され、又は生成可能な磁界の磁力線MFLは再びSM要素7.1~7.3の力効果Fに対して横方向に延びるが、ただしここではY軸Yの方向、したがって光軸4に対して横方向に延びる。
【0096】
磁界によりSM要素71.1~7.3にもたらされる、又はもたらされることのできる寸法の変化、特にSM要素7.1~7.3の長さの変化は、移動対象要素6をZ軸Zに沿って調整するために使用できる。追加的又は代替的に、移動対象要素6の傾斜移動をX軸Xの周囲で、及び/又はY軸Yの周囲で生成でき、傾斜角度はそれぞれφX及びφYである。
【0097】
図7は、アクチュエータ1及び装置3の別の実施形態を示しており、
図6bに関して説明した実施形態の改良を表す。
各々が光学レンズ20を保持する2つの移動対象要素6は、筐体18内で光軸4に沿って配置されている。2つのSM要素7.1、7.2は、その力効果Fが光軸4に平行に向けられており、2つの移動対象要素6間に配置されている。SM要素7.1、7.2は、マウントとして具体化される移動対象要素6間に配置され、移動対象要素6の一方の上に支持され、同時に、SM要素7.1、7.2はそれぞれもう一方の移動対象要素6の中に担持されている。
【0098】
コイル16.1及び16.2は、コイル16.1、16.2により生成される磁界の磁力線MFLが光軸4及びSM要素7.1、7.2の力効果Fに対して横方向に延びるように配置される。
【0099】
2つの移動対象要素6は、アクチュエータ1により、光軸4に沿って相互に関して調整可能である。コイル16.1、16.2の磁界(複数の場合もある)の効果は、筐体18の壁13を通して印加可能である。
【0100】
移動対象要素6の一方は筐体18に固定的に接続され、他方の移動対象要素6は光軸4に沿って移動可能である。SM要素7.1、7.2は、筐体18に固定的に接続された移動対象要素6を介して、キャリア5として機能する筐体18に間接的に接続される。
【0101】
本発明によるアクチュエータ1の第六の例示的実施形態と本発明による装置の第六の例示的実施形態が、
図8に概略的に示されている。
図の構成2はアクチュエータ1を含み、このアクチュエータ1は、筐体18の第一の壁13.1の中へと突出するSM要素7を備える。
【0102】
光軸4に対して横方向の移動経路は、光軸4に平行なその面において、筐体18及びその壁13.1、13.2(これらの2つの壁だけが図示されている)により画定される。
磁性伝導材料で製作された導体12が第一の壁13.1の中にU字型に組み込まれており、導体12は第一の壁13.1の中に、その長さの少なくとも一部にわたって延び、導体12はSM要素7.1に接続されている。磁力線MFLで符号を付されている磁束は、導体12の中で案内されるか、又は案内可能であり、SM要素7.1と相互作用し、力効果Fを生じさせる。
【0103】
例えば、導体12はコイル16.1のコアの一部であり、この導体12は良好な磁性伝導性を有する材料からなる。例えば、導体12は鉄のコア又は鉄シート製のコアにより形成される。
【0104】
図8に関して示される構成2及び装置3の別の実施形態において、移動対象要素6は複数のSM要素7.1~7.nに接続される。これらSM要素7.1~7.nは追加的又は代替的に、光軸4の方向への調整を容易にする。さらに、クランプ要素8及びこのクランプ要素8に関連するSM要素7Kを利用できる。
【0105】
本発明によるアクチュエータ1の、及び本発明による装置3の別の考えうる例示的実施形態が
図9に示されている。第一及び第二のSM要素7.1、7.2が、移動対象要素6の横方向の移動及び調整用として実装される。代替的実施形態において、クランプ要素8として具体化されるSM要素7Kは、ばね要素21に置き換えることができる。別の実施形態には、SM要素7Kとばね要素21がある。例えば、ばね要素21は第一のSM要素7.1に対して横方向にクランプ要素8に作用し、SM要素7Kは第二のSM要素7.1に対して横方向に作用する。その生成に少なくとも1つのばね要素21が係るか、又は実施形態の違いに応じて係ることのできる力、特に固定力は以下、Fcoilとも呼ばれる。それぞれの場合のキャリア5はSM要素7.1又は7.2の一方、それぞれSM要素7Kの部品の1つ、及び/又はばね要素21を取り囲む。
【0106】
このような実施形態の利点は、能動的SM要素の数を減らせることにある。調整不良を、発生する摩擦力と共に防止するのに十分に大きい移動対象要素6のばね力Fcoilは、ばね要素21又は複数のばね要素21により移動対象要素6へと向けられる。SM要素7.1、7.2は、これらがばね力Fcoilに打ち勝ち、移動対象要素6の精密で制御可能な調整を容易にできる力効果Fを生じさせることができるように構成される。
【0107】
クランプ要素8がSM要素7Kにより実現される場合、生成された、又は生成可能な力効果Fcoilは第一及び第二のSM要素7.1、7.2の生成可能な力効果Fより大きくすることができる。
【0108】
光学システム、例えば充填用漏斗(filling funnel)の形態の装置3の別の実施形態が
図10に示されており、
図9に関して説明した例示的実施形態の4つのアクチュエータ1が筐体18の光軸4に沿って上へ上へと積み重ねられることによって実現される。それぞれの光学レンズ20間にクリアランス15が存在する。このようなスタック式に配置されたアクチュエータ1は、光軸4に対して横方向に移動可能かつ調整可能である。異なる数、例えば2つ、3つ、又は5つのアクチュエータ1が存在していてもよい。
【0109】
装置3の別の実施形態において、存在するアクチュエータ1は相互に異なる方向X、Y、及び/又はZに調整可能である。
さらに、本発明によるアクチュエータ1は、静止状態に取り付けられた部品、例えば光学レンズ、絞り、及び/又はフィルタと組み合わせることができる。
【0110】
図11に示される装置3の改良型において、
図9に関して説明された例示的実施形態の4つのアクチュエータ1が光軸4に沿って上へ上へと積み重ねられている。光軸4に対して横方向に、それと反対向きに、キャリア5の各々は延長壁領域5.1(能動的整列スタックマウント)を有する。延長壁領域5.1に隣接して配置されたアクチュエータ1は相互に当接し、ここで概略的に示されているそれぞれ1つの固定手段によって、好ましくは取り外し可能に相互に接続される。それによって実現される装置は、複数の能動的整列スタックマウントで製作される光学システムを表す。
【0111】
図12は、アクチュエータ1及び装置3の別の考えうる実施形態を示し、第一及び第二のSM要素7.1、7.2は移動対象要素6に、相互に反対に配置される。効果の方向、すなわち第一及び第二のSM要素7.1、7.2の力効果Fが発生する方向は、光軸4に平行に延びる。SM要素7Kは光軸4に対して横方向に配置され、その固定効果(関係する固定力はFcoilで示される)は、光軸4と直交するように向けられる。発生した、十分に大きい固定力Fcoilの結果として、移動対象要素6はSM要素7.1、7.2、及び7Kの反対にあるキャリアの一部に押し付けられる。
【0112】
図12に関して説明したアクチュエータ1の使用が
図13において、光学システム、例えば対物レンズ19として具体化されている配置2を含む装置3の形態で示されている。共通のベースとして機能する、例えば筐体18の壁13に、
図9に関して説明したアクチュエータ1と
図12に関して説明したアクチュエータ1が、光軸4に沿ってそれぞれ交互に配置される。アクチュエータ1の実施形態に応じて、個別のアクチュエータ1の光学レンズ20は、光軸4に対して横方向に、又はその方向に調整可能である。
【0113】
図14による装置3及びアクチュエータ1の例示的実施形態は、その基本構成の点で、
図9に関して説明した例示的な選択肢に対応し、クランプ要素8はばね要素21により形成される。SM要素7.1及び7.2は、磁気により制御可能な形状記憶材料からなる(MSM-SM要素)。磁界を生成するための第一のコイル16.1及び第二のコイル16.2は、筐体18を半径方向に取り囲むように配置される。コイル16.1、16.2の向き及びそこに流れる電流は、磁力線MFLがSM要素7.1~7.4の生成する有効な力効果Fに対して横方向に延びるように選択される。
【0114】
SM要素7.1~7.4は、磁界の効果により、特にその強さと方向により非接触式に作動させられる。ここで、作動は、筐体18を通して実行されるため、筐体18の壁13の開口部は不要である。
【0115】
図15a及び15bは、5次元調整のための装置3の例示的実施形態を概略的に示している。横方向に、すなわち光軸4に対して横方向に作用するSM要素7.1~7.3に加えて、
図15aの平面図には、光軸4に平行に作用する別の3つのSM要素7.4~7.6がある。
【0116】
図15bの概略側面図からわかるように、横方向に作用するSM要素7.1~7.3(断面図であるため、SM要素7.1だけが見える)は、光軸4と直交する力効果Fを生じさせる。別のSM要素7.4~7.6により、光学レンズ20を備える移動対象要素6は光軸4に沿って移動可能であり、それに加えて、X軸Xの周囲で傾斜角度φXだけ、及び/又はY軸Yの周囲で傾斜角度φYだけ傾斜させることができる。
【0117】
図16は、移動対象要素6が、そのキャリア5に面する側に磁石22を有する位置決めシステムを示している。キャリア5は磁性材料からなり、したがって移動対象要素6とキャリア5は、磁石22とキャリア5との間の磁力Fmagにより相互に接続される。移動対象要素6とキャリア5は接触面23に沿って接触し、他方で磁石22はキャリア5と直接接触しない。移動対象要素6の現在の位置はセンサ11により捕捉でき、その測定値は評価ユニット9によって評価され、制御ユニット10に送信される。評価ユニット9により提供されるデータに応じて、制御ユニット10は、SM要素7を作動させる役割を果たす制御コマンドを生成し、発行する。SM要素7、7.1、7.2はキャリア5と移動対象要素6との間に配置できる。
【0118】
別の実施形態において、SM要素7はまた、ワイヤ又はストリップとしても具体化され、移動対象要素6に半径方向から、すなわち光軸4に対して実質的に横方向に作用することができる(
図17)。ここで、ストリップとして具体化されるSM要素7.1、7.2はキャリア5に蝶着され、制御ユニット10によって調整可能である。SM要素7.1、7.2は、移動対象要素6にその対応する突出部6.1を介して作用する。それぞれのSM要素7.1、7.2の長さの変化に応じて、移動対象要素6及び光学レンズ20は実質的に光軸4と直交する平面内で移動される(両矢印で記号化されている)。
【0119】
装置の別の実施形態において、移動対象要素6のXY平面内における作動のための移動を容易にする別のSM要素7がある。ある選択肢は、
図17に示されるもののような別の配置が光軸4に沿って存在することからなるが、前記別の構成は第一の構成に対してある角度だけ、例えば90°たけ回転させて配置される。このようにして、移動対象要素6及び光学レンズ20は、配置の1つにより実質的にX軸Xに沿って、及び別の構成によって実質的にY軸Yに沿って調整できる。相互に関して回転された少なくとも2つのこのような構成の相互作用により、移動対象要素6をそれぞれの実現可能な移動範囲内でXY平面内において自由に位置決めすることが容易となる。
【0120】
3つ、4つ、又はそれ以上のSM要素7を同一平面内に配置することもでき、移動対象要素6はそれらの相互作用によってXY平面において調整可能である。
さらに、SM要素7を、光軸4に沿った異なる平面内の配置で(Z軸Zの方向に)配置することもできる。
【0121】
位置決めは、センサ11(図示せず)、評価ユニット9、及び制御ユニット10により上述のように実行される。
図18は、位置決めシステムとして具体化された本発明の例示的実施形態を概略的に示す。複数の誘導コイルがキャリア5上にセンサ11として、それぞれについて相互に関して120°の角度で配置されている。移動対象要素6の材料の少なくとも一部は導電材料からなるため、移動対象要素6の現在の位置(実際の位置)はセンサ11により確定可能である。この現在の位置は、各センサ11と移動対象要素6との間のそれぞれの距離Dにより説明できる。距離Dは、両矢印により記号的に示されている。
【0122】
距離Dの少なくとも1つが変化すると、それぞれのセンサ11におけるインダクタンス及び/又は捕捉されたインピーダンスも変化する。これらの変化はインダクタンス-デジタル変換器24に送信され、それによって変換されてから、変換後のデータが評価ユニット9に送信される。評価ユニットにより送信されるデータに応じたSM要素7、7.1、7.2、7.3の作動は、制御ユニット10により可能となる。移動対象要素6の現在の位置の所望の位置(所期の位置)との特定された差は、SM要素7、7.1、7.2、7.3の適当な作動により補償できる。
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]
移動対象要素(6)を移動経路に沿って調整するアクチュエータ(1)であって、
前記移動対象要素(6)と、
キャリア(5)と、
少なくとも1つの形状記憶要素(7、7.1~7.4)と、を備え、
前記少なくとも1つの形状記憶要素(7、7.1~7.4)は、
前記移動対象要素(6)に結合され、
前記形状記憶要素(7、7.1~7.4)の範囲が変化すると前記移動対象要素(6)と前記キャリア(5)との間に有向の力効果(F)が生成されるように前記キャリア(5)の上に支持されるように構成される、アクチュエータ(1)。
[付記2]
形状記憶要素(7K)により駆動されるか、又は駆動可能な少なくとも1つのクランプ要素(8)が設けられ、前記クランプ要素の力効果(F)は、前記移動対象要素(6)に配向され、前記移動対象要素(6)は、前記クランプ要素の力効果(F)の結果として隣接部に固定され、固定された前記移動対象要素(6)は、クランプ位置に保持されることを特徴とする付記1に記載のアクチュエータ(1)。
[付記3]
複数の形状記憶要素(7、7K、7.1~7.4)の少なくとも1つは、磁性形状記憶材料からなることを特徴とする付記1又は2に記載のアクチュエータ(1)。
[付記4]
少なくとも1つのコイル(16.1、16.2)は、磁界を生成する目的で、前記磁界の磁力線(MFL)が、磁性形状記憶材料で製作される前記少なくとも1つの形状記憶要素(7K、7.1~7.4)から発生した前記有向の力効果(F)に対して横方向に延びるように配置されることを特徴とする付記3に記載のアクチュエータ(1)。
[付記5]
前記移動対象要素(6)及び前記キャリア(5)のうちの少なくとも一方は、少なくとも1つの磁石(22)を有し、前記磁石(22)の反対側にある前記移動対象要素(6)又は前記キャリア(5)は、少なくとも部分的に磁性材料又は対向する磁石(22)からなり、それによって磁力が前記移動対象要素(6)と前記キャリア(5)との間に作用し、前記移動対象要素(6)及び前記キャリア(5)が相互に引き付け合うことを特徴とする付記1~4の何れか1項に記載のアクチュエータ(1)。
[付記6]
その面の少なくとも1つにおいて移動経路を画定する壁(13、13.1)と、磁性伝導材料で製作された導体(12)と、を含む、付記1~5の何れか1項に記載のアクチュエータ(1)を備える構成(2)であって、
前記導体(12)は、その長さの少なくとも一部にわたって前記壁(13、13.1)の中に延び、前記導体(12)は、前記導体(12)内に案内される磁力線(MFL)が形状記憶要素(7K、7.1~7.4)と相互作用するように複数の形状記憶要素(7K、7.1~7.4)の少なくとも1つに結合される、構成(2)。
[付記7]
付記1~5の何れか1項に記載のアクチュエータ(1)又は付記6に記載の配置(2)を含む光学装置(3)。
[付記8]
対物レンズ(19)の形態の付記7記載の光学装置(3)。
[付記9]
移動対象要素(6)を調整するための装置(3)であって、
付記1~5の何れか1項に記載の少なくとも1つのアクチュエータ(1)と、
現在の空間座標を評価するための評価ユニット(9)と、
評価された前記現在の空間座標に応じて制御コマンドを生成するための制御ユニット(10)と、を備える装置(3)。
[付記10]
前記評価ユニット(9)及び前記制御ユニット(10)のうちの少なくとも一方は、
入力された動作パラメータの測定値に応じた計算法、及び前記装置(3)の選択可能な動作モードに応じた計算法のうちの少なくとも一方に基づいて前記制御コマンドを生成するように構成されることを特徴とする付記9に記載の装置(3)。
[付記11]
前記評価ユニット(9)及び前記制御ユニット(10)のうちの少なくとも一方は、
データリンクを介して少なくとも1つの別の部品に接続され、
前記制御ユニット(10)は、
前記少なくとも1つの別の部品から受信したデータに応じて前記制御コマンドを生成するように構成されることを特徴とする付記9又は10に記載の装置。
[付記12]
キャリア(5)と移動対象要素(6)との間の誘導センサとして構成される少なくとも1つのセンサ(11)と、
前記少なくとも1つのセンサ(11)により取得される測定値をデジタル化するためのインダクタンス-デジタル変換器(24)と、を備える付記9~11の何れか1項に記載の装置。
[付記13]
対物レンズ(19)の部品を所定の位置に移動させるたるための、付記1~5の何れか1項に記載のアクチュエータ(1)の、又は付記6に記載の構成(2)の使用方法。
[付記14]
絞り、反射要素、及びセンサ(11)のうちの少なくとも一方を光学装置(3)のビーム経路内で調整するための、付記1~5の何れか1項に記載のアクチュエータ(1)の、又は付記6に記載の構成の使用方法。
[付記15]
少なくとも2つの光学要素を相互に関して調整するための、付記1~5の何れか1項に記載のアクチュエータ(1)の、又は付記6に記載の構成(2)の使用方法。
【符号の説明】
【0123】
参照符号
1 アクチュエータ
2 光学構成
3 装置
4 光軸
5 キャリア
5.1 (キャリア5の)延長壁領域
6 移動対象要素
6.1 突出部
7 SM要素
7.1 第一のSM要素
7.2 第二のSM要素
7.3 第三のSM要素
7.4 第四のSM要素
7K (クランプ要素8の)SM要素
8 クランプ要素
9 評価ユニット
10 制御ユニット
11 測定回路/センサ
12 導体
13 壁
13.1 壁
13.2 壁
14 絞り
15 クリアランス
16.1 第一のコイル
16.2 第二のコイル
17 マウント
18 筐体/管
19 対物レンズ
20 光学レンズ
21 ばね要素
22 磁石
23 接触面
24 インダクタンス-デジタル変換器
MFL 磁力線
D 距離
F 力効果
Fcoil (ばね要素の)力効果
Fmag 磁力
X X軸
Y Y軸
Z Z軸
XY XY平面
XZ CZ平面
YZ YZ平面
φX (X軸Xの周囲での)傾斜角度
φY (Y軸Yの周囲での)傾斜角度