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特許7073355心臓弁を置換するためのアセンブリまたは冠動脈形成アセンブリ
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  • 特許-心臓弁を置換するためのアセンブリまたは冠動脈形成アセンブリ 図1
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  • 特許-心臓弁を置換するためのアセンブリまたは冠動脈形成アセンブリ 図10
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】心臓弁を置換するためのアセンブリまたは冠動脈形成アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/962 20130101AFI20220516BHJP
   A61M 25/09 20060101ALI20220516BHJP
   A61M 25/06 20060101ALI20220516BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
A61F2/962
A61M25/09
A61M25/06 550
A61N1/05
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019518552
(86)(22)【出願日】2017-10-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2017075362
(87)【国際公開番号】W WO2018065523
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-07-08
(31)【優先権主張番号】1659669
(32)【優先日】2016-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1659671
(32)【優先日】2016-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1659673
(32)【優先日】2016-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517352315
【氏名又は名称】エレクトロデューサー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】バンジャマン・フォリー
【審査官】伊藤 孝佑
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-526912(JP,A)
【文献】特表2011-524788(JP,A)
【文献】米国特許第9345877(US,B2)
【文献】米国特許第05733323(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/962
A61F 2/24
A61N 1/05
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮ルートを経由して心臓弁を置換するためのアセンブリであって、
ヒトの身体(C)の動脈内に導入されるようにおよび送達カテーテルなどの外科的介入デバイスを通過することを可能にするように意図された少なくとも1つのチューブ状導入シース(13)を備える誘導ゾンデ(1)を形成するデバイスと、
前記誘導ゾンデの前記チューブ状導入シースの周囲に取り付けられるように構成されたスリーブ(6)であって、前記スリーブは、前記スリーブが前記チューブ状導入シースの周囲に取り付けられた状態において前記チューブ状導入シースがヒトの身体の動脈内に導入される場合に、前記スリーブの導電性外縁部が前記身体の皮下組織または前記動脈と接触状態になるように、その外縁部の少なくとも一部において導電性材料から作製され、前記スリーブは、前記身体の外部の心臓刺激装置の一方の電極に対する電気接続部(7、8)をさらに備える、スリーブ(6)と、
前記心臓弁を置換するように意図された人工弁を前進させるために前記誘導ゾンデの前記チューブ状導入シース(13)内に導入されるように意図された少なくとも1つのガイドワイヤ(20)であって、体外心臓刺激装置の他方の電極に対する接続部としても機能する金属パーツを備える、少なくとも1つのガイドワイヤ(20)と
を備える、アセンブリ。
【請求項2】
経皮ルートを経由して心臓弁を置換するためのアセンブリであって、
ヒトの身体の動脈内に導入されるように意図された少なくとも1つのチューブ状導入シース(13)を備える弁送達カテーテル(1')を形成するデバイスと、
前記弁送達カテーテルの前記チューブ状導入シースの周囲に取り付けられるように構成されたスリーブ(6)であって、前記スリーブは、前記スリーブが前記チューブ状導入シースの周囲に取り付けられた状態において前記チューブ状導入シースがヒトの身体の動脈内に導入される場合に、前記スリーブの導電性外縁部が前記身体の皮下組織または前記動脈と接触状態になるように、その外縁部の少なくとも一部において導電性材料から作製され、前記スリーブは、前記身体の外部の心臓刺激装置の一方の電極に対する電気接続部(7、8)をさらに備える、スリーブ(6)と、
前記心臓弁を置換するように意図された人工弁を前進させるために送達カテーテルの前記チューブ状導入シース(13)内に導入されるように意図された少なくとも1つのガイドワイヤ(20)であって、体外心臓刺激装置の他方の電極に対する接続部としても機能する少なくとも1つの金属パーツを備える、少なくとも1つのガイドワイヤ(20)と
を備える、アセンブリ。
【請求項3】
誘導ゾンデ(1)または送達カテーテルの前記チューブ状導入シースの周囲に取り付けられた導電性スリーブ(6)に対して接続された前記心臓刺激装置の前記電極は、アノードであり、前記ガイドワイヤ(20)の前記金属パーツに対して接続される前記電極は、カソードである、請求項1または2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
導電性の前記スリーブは、炭素などの導電性材料から作製された単体パーツにより形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記スリーブは、前記外縁部において炭素コーティングなどの導電性コーティング(4)を備えるシースにより形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記スリーブは、1.67~8mmの間の外径を有する、種々の直径を有する誘導ゾンデまたは送達カテーテルのシースに対して取り付けられ得るように弾性である、請求項4または5に記載のアセンブリ。
【請求項7】
経皮ルートを経由して心臓弁を置換するためのアセンブリであって、
ヒトの身体(C)の動脈内に導入されるようにおよび送達カテーテルなどの外科的介入デバイスを通過することを可能にするように意図された少なくとも1つのチューブ状導入シース(13)を備える誘導ゾンデ(1)を形成するデバイスと、
前記チューブ状導入シースが導入される前記ヒトの身体の皮膚に対して固着されるように意図された接着パーツ(60')と、前記接着パーツが前記皮膚に対して固着されると導電性パーツが電流を経皮的に送達し得るように導電性材料から作製されたパーツ(61)と、を備える経皮電極(6')であって、前記導電性パーツは、前記身体の外部の心臓刺激装置の一方の電極に対する電気接続部(7、8)をさらに備える、経皮電極(6')と、
前記心臓弁を置換するように意図された人工弁を前進させるために前記誘導ゾンデの前記チューブ状導入シース(13)内に導入されるように意図された少なくとも1つのガイドワイヤ(20)であって、体外心臓刺激装置の他方の電極に対する接続部としても機能する金属パーツを備える、少なくとも1つのガイドワイヤ(20)と
を備える、アセンブリ。
【請求項8】
経皮ルートを経由して心臓弁を置換するためのアセンブリであって、
ヒトの身体の動脈内に導入されるように意図された少なくとも1つのチューブ状導入シース(13)を備える弁送達カテーテル(1')を形成するデバイスと、
前記チューブ状導入シースが導入される前記ヒトの身体の皮膚に対して固着されるように意図された接着パーツ(60')と、前記接着パーツが前記皮膚に対して固着されると導電性パーツが電流を経皮的に送達し得るように導電性材料から作製されたパーツ(61)と、を備える経皮電極(6')であって、前記導電性パーツは、前記身体の外部の心臓刺激装置の一方の電極に対する電気接続部(7、8)をさらに備える、経皮電極(6')と、
前記心臓弁を置換するように意図された人工弁を前進させるために送達カテーテルの前記チューブ状導入シース(13)内に導入されるように意図された少なくとも1つのガイドワイヤ(20)であって、体外心臓刺激装置の他方の電極に対する接続部としても機能する少なくとも1つの金属パーツを備える、少なくとも1つのガイドワイヤ(20)と
を備える、アセンブリ。
【請求項9】
前記経皮電極(6')に対して接続された前記心臓刺激装置の前記電極は、アノードであり、前記ガイドワイヤ(20)の前記金属パーツに対して接続される前記電極は、カソードである、請求項7または8に記載のアセンブリ。
【請求項10】
経皮ルートを経由して心臓弁を置換するためのアセンブリであって、
ヒトの身体(C)の動脈内に導入されるようにおよび送達カテーテルなどの外科的介入デバイスを通過することを可能にするように意図された少なくとも1つのチューブ状導入シース(13)を備える誘導ゾンデ(1)を形成するデバイスと、
前記心臓弁を置換するように意図された人工弁を前進させるために前記チューブ状導入シース(13)内に導入されるように意図された、両極式ガイドワイヤと呼ばれる少なくとも1つのガイドワイヤ(6'')であって、前記ガイドワイヤ(6'')は、前記ガイドワイヤの近位端部(6P)と遠位端部(6D)との間の中央部分において電気絶縁シース(61'')で被覆された金属コア(60'')を備え、前記金属コアは、前記ガイドワイヤの長さの残りの部分において非電気的に隔離され、前記電気絶縁シースは、導電性要素(7'')を組み込み、前記導電性要素(7'')の遠位部分(70'')は、前記身体の皮下組織または前記動脈と接触状態になるように、前記電気絶縁シースの外縁部の少なくとも一部において露出状態にあり、前記導電性要素(7'')の近位部分(71'')は、前記ガイドワイヤが前記チューブ状導入シース(13)に導入される場合に前記身体(C)の外部からアクセス可能になるように前記電気絶縁シースの前記外縁部の少なくとも一部において露出状態にあり、前記近位部分(71'')は、前記身体の外部の心臓刺激装置の一方の電極に対する接続部として機能し、前記両極式ガイドワイヤの前記金属コア(60'')は、体外心臓刺激装置の他方の電極に対する接続部として機能する、少なくとも1つのガイドワイヤ(6'')と
を備える、アセンブリ。
【請求項11】
経皮ルートを経由して心臓弁を置換するためのアセンブリであって、
ヒトの身体の動脈内に導入されるように意図された少なくとも1つのチューブ状導入シース(13)を備える弁送達カテーテル(1')を形成するデバイスと、
前記心臓弁を置換するように意図された人工弁を前進させるために誘導ゾンデの前記チューブ状導入シース(13)内に導入されるように意図された、両極式ガイドワイヤと呼ばれる少なくとも1つのガイドワイヤ(6'')であって、前記ガイドワイヤ(6'')は、前記ガイドワイヤの近位端部(6P'')と遠位端部(6D'')との間の中央部分において電気絶縁シース(61)で被覆された金属コア(60'')を備え、前記金属コアは、前記ガイドワイヤの長さの残りの部分において非電気的に隔離され、前記電気絶縁シースは、導電性要素(7'')を組み込み、前記導電性要素(7'')の遠位部分(70'')は、前記身体の皮下組織または前記動脈と接触状態になるように、前記電気絶縁シースの外縁部の少なくとも一部において露出状態にあり、前記導電性要素(7'')の近位部分(71'')は、前記ガイドワイヤが前記チューブ状導入シース(13)に導入される場合に前記身体(C)の外部からアクセス可能になるように前記電気絶縁シースの前記外縁部の少なくとも一部において露出状態にあり、前記近位部分(71'')は、前記身体の外部の心臓刺激装置の一方の電極に対する接続部として機能し、前記両極式ガイドワイヤの前記金属コア(60'')は、体外心臓刺激装置の他方の電極に対する接続部として機能する、少なくとも1つのガイドワイヤ(6'')と
を備える、アセンブリ。
【請求項12】
前記ガイドワイヤ(6'')の前記チューブ状導入シースに組み込まれた前記導電性要素(7'')に対して接続された前記心臓刺激装置の前記電極は、アノードであり、前記ガイドワイヤ(6'')の前記金属コア(60'')に対して接続される前記電極は、カソードである、請求項10または11に記載のアセンブリ。
【請求項13】
記導電性要素(7'')は、その露出状態の遠位部分(70'')および近位部分(71'')を除いては前記電気絶縁シース(61'')に埋め込まれた金属層である、請求項10から12のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項14】
患者の心臓の左心室の壁部と接触状態になるように意図された前記ガイドワイヤ(の前記金属コア(60'')の前記非電気的に隔離された遠位端部(6D'')は、前記ガイドワイヤの残りの部分よりも高い可撓性を有する部分である、請求項10から13のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項15】
前記より高い可撓性を有する部分(6D'')は、患者の心臓の左心室の壁部と接触状態になる場合に巻くように構成される、請求項14に記載のアセンブリ。
【請求項16】
前記導電性要素の前記遠位部分(70'')は、身体の外部の心臓刺激装置の一方の電極に対して接続されるように意図された電気接続部に対して接続される、請求項10から15のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮ルートを経由して心臓弁を置換するためのアセンブリ、または弁送達カテーテルと、該当する場合には一般的に「誘導ゾンデ(introducer)」と呼ばれる誘導デバイスとを備える冠動脈形成アセンブリに関する。
【0002】
さらに詳細には、本発明は、心臓刺激装置による心筋気絶を介した置換支援の改善に関する。
【0003】
大動脈弁の置換を参照として説明するが、本発明によるアセンブリは、特に緊急事態においてまたはさらには複雑な侵襲手技において、一般的に「ステント」と呼ばれるプロテーゼの据付けを必要とし得るまたはしなくてもよい冠動脈形成アセンブリとして使用することが可能である。
【0004】
また、大動脈弁の置換を参照として説明するが、本発明によるアセンブリは、三尖弁または僧房弁などの心臓の別の弁の置換のために適用することも同様に可能である。
【0005】
一般的に、本発明によるアセンブリの誘導ゾンデおよび/または送達カテーテルは、経皮ルートを経由して、およびさらに具体的には経大腿ルートを経由して、経大動脈ルートを経由して、経頸動脈ルートを経由して、または経鎖骨下動脈ルートを経由して、患者内部に挿入され得る。
【背景技術】
【0006】
広く知られている心疾患は、石灰化による三尖弁または大動脈心臓弁の狭窄に関連するものである。ここで、前記大動脈心臓弁とは、大動脈から心腔すなわち左心室を分離する弁であり、開位置においてヒトの心臓から他の器官への血流を可能にする。
【0007】
狭いまたは非常に狭い狭窄は、大動脈弁が正常に開くのを妨げ、したがって、石灰化大動脈弁狭窄症とも呼ばれる疾患を生じさせる。
【0008】
この疾患の治療は、欠陥を有する大動脈心臓弁の置換を伴う。
【0009】
欠陥を有する大動脈心臓弁の置換は、最も多くの場合においては、天然弁を除去し人工弁またはプロテーゼで置換するために胸郭を開き、患者を体外循環下におき、一時性心停止を行い、開心することによって実施される。
【0010】
手術のこれらの一連のステップの大きな欠点は、患者の比較的長期にわたる入院を伴うことと、複雑かつ高額となることと、罹患患者の一部のみに対して適用され得ることである。なぜならば、多くの場合において、医師および/または外科医は、患者の一般的な健康状態を所与とした場合に、具体的には心臓の停止の必要性および関連する体外循環によってリスクが高すぎるために「開心術」と呼ばれる外科的介入を実施できないと考えるからである。
【0011】
この欠点を解消するために、低侵襲性であるが依然として体外循環下におくこととなるルートを経由して心臓弁を置換することが予期される。この場合には、既知の低侵襲技術およびこれらの技術を実施するための器具を開示する国際特許出願WO93/01768およびWO97/28807、ならびに米国特許第5814097号、米国特許第5370685号、または米国特許第5545214号を引用することができる。
【0012】
しかし、既存の技術は、完全に十分なものとはみなされておらず、改良の余地があるものと考えられている。
【0013】
具体的には、これらの技術の主な欠点は以下の通りである。
いかなる場合においても患者を体外循環下におくことを必要とすること。これは実施が困難である。
人工弁の後の較正のために天然弁が切断される直径を正確に制御することが不可能であること。
しばしば石灰化している天然弁の小片の器官内への拡散リスクをもたらすこと。これは、塞栓症を結果的にもたらす恐れがある。
大動脈または心臓壁を穿刺するリスクを伴うこと。
天然弁のアブレーション中に急性血液逆流のリスクを伴うこと。
【0014】
これらの技術の不足に対応するための1つのアプローチは、経皮的と呼ばれる人工大動脈弁の取付けであった。これは、大動脈などの血管内部にカテーテルを導入することを伴う血管内治療技術にインスパイアされたものである。
【0015】
したがって、石灰化による欠陥を有する天然大動脈心臓弁は、前述の通常の大掛りな心臓外科介入を回避しつつ、人工弁により置換される。
【0016】
現行では、人工弁の取付けは、様々な経皮ルートを経由して、すなわち経大腿ルートを経由してすなわち大腿動脈から心臓への導入により、または経心尖ルートを経由して、または経大動脈ルートを経由して、経頸動脈ルートを経由して、またはさらには経鎖骨下動脈ルートを経由してすなわち胸郭を開くことによる開心手術も体外循環も必要としない任意ルートを経由して実施される。
【0017】
この手術は、石灰化した(罹患した)天然大動脈弁のレベルに、正常な天然大動脈弁の一般的形状を複製した人工弁(プロテーゼ)を配設することを伴い、前記石灰化した天然大動脈弁は、定位置に残置され、プロテーゼにより破砕される。
【0018】
これを目的として、ブタ由来またはウシ由来の、心臓の周囲の微細膜である心膜として形成された人工弁が、「ステント」と呼ばれる径方向に拡張可能なチューブ状金属メッシュの内部に事前に固定され、例えばニッケルチタン合金もしくはコバルトクロム合金、または冠動脈ステント用の316Lステンレス鋼などから作製された形状記憶材料から作製されたワイヤを組み立てることにより形成される。
【0019】
この場合に、弁-ステントアセンブリは、送達カテーテルと呼ばれるチューブ状シースの外部に圧迫され、このチューブ状シースが、動脈内に直接的にまたは誘導ゾンデの内部にのいずれかにおいて導入されて、止血を維持しつつ動脈へのアクセスを与え得る。
【0020】
次いで、介入する医師は弁-ステントアセンブリが、罹患した大動脈弁に到達するまで、誘導ゾンデ内にまたは送達カテーテル内へと直接的に弁-ステントアセンブリを摺動させる。その後、この弁-ステントアセンブリは、取付け前にバルーンを拡張させることにより罹患した弁の近傍に配設される。
【0021】
また、バルーンを有さない弁-ステントアセンブリを備える弁送達カテーテルが存在し、この場合には、弁が自己拡張性であり、それにより弁の配設が可能となり、この弁は周囲のシースの単純な引抜きによってしたがってバルーンを事前に拡張する必要性を伴わずに径方向に拡張する。
【0022】
さらに参考として、米国特許第7018406号、米国特許第7892281号、米国特許第8652202号、および米国特許第8747459号を参照されたい。
【0023】
実際の取付けの最中に、心臓は、弁を通過するすなわち小弁同士の間の流量を最小限に抑え、塞栓の可能性を防止および少なくとも軽減するために、高頻度心室刺激により短期間にわたり一時的に停止される必要がある。
【0024】
したがって、一般的に「心筋気絶」とも呼ばれるこの一時性心停止は、有効な収縮が起きないように毎分150~200の心拍数で心臓を随意拍動させることを伴い、これにより血圧は低下し、頻拍または心室細動をおよびしたがって心臓の安定化を刺激する。
【0025】
心臓のこの安定化により、バルーンの安定化が可能となり、したがってわずか数秒で人工弁の取付け精度を上昇させることが可能となる。
【0026】
右心室の一時性心内膜刺激のためにドライブプローブまたは電気収縮性刺激プローブと呼ばれる2つの電極を有する両極式刺激カテーテルが存在する。
【0027】
これらの電気収縮性刺激プローブは、以降に述べるいくつかの欠点を有する。
【0028】
第1に、かかるプローブは、脆弱な標的患者集団に対して血管合併症の追加的リスクを伴う中央の静脈内注入部を形成する。「TAVI(経カテーテル大動脈弁植込み)」と一般的に表記される大動脈弁置換インターベンションを記載している「France 2」と表記されるフランスの記録は、4.7%相当の高レベルな血管合併症リスクを結果的にもたらすことを示唆している。この結果は、刊行物[1]の1709頁に記載されている。
【0029】
第2に、このプローブは、比較的剛性であり、この理由により、易損性であり左心室の壁部よりも薄い壁部を有する右心室内にこのプローブを取り付けることによって、患者の死をもたらす恐れのある重篤な循環欠陥を意味する「タンポナーデ」として介入医師には周知の現象のリスクが結果的に生じる。
【0030】
また、このリスクは、術中すなわち電気収縮性プローブの取付け時だけでなく、ベッド内の患者が、したがって右心室の壁部に穿通される恐れがある、依然として存在するプローブが動く結果としてさらに術後にも存在する点に留意されたい。
【0031】
さらに、弁の取付けの非常に重要なときに電気収縮性刺激プローブを動かしてしまうリスクが存在する。実際に、刺激プローブは、心臓の壁部に対して固定されず、それにより移動し、したがって電気刺激信号をキャプチャし損ねる結果となる恐れがある。
【0032】
次いで、心臓はもはや刺激されず、したがって弁またはバルーンの配置を混乱させる著しい移動を伴う。
【0033】
かかるプローブの使用に伴う別のリスクは、穿孔部位における感染リスクである。France 2は、1%未満の割合を示唆している。刊行物[1]を参照されたい。
【0034】
最後に、介入医師は、一時刺激プローブの取付けに関する追加的な手術時間が著しいものとなり、このような手術の実施が常に容易であるわけではないことを考慮する。
【0035】
刊行物[2]は、右心室に対してではなく左心室に対してこの心室刺激を実施することと、経静脈ルートを経由する専用の刺激カテーテルによってではなくこのタイプの介入用に使用されるガイドワイヤと共に体外心臓刺激装置を実装することによってこの手術を実施することとの利点を強調する。
【0036】
したがって、この刊行物[2]内に開示された推奨される施術は、ステントの拡張バルーンを支持し左心室内に導入されるガイドワイヤを、心臓刺激装置と心臓刺激装置のアノード用の支持部として皮下組織内に挿入された皮膚電極またはニードルとのカソードに接続されたパーツとして使用することを伴う。
【0037】
刊行物[3]および[4]は、ブタ母集団に対する冠動脈形成インターベンションの場合における、ステントの拡張バルーンを支持するガイドワイヤを、心臓刺激装置と心臓刺激装置のアノード用の支持部として皮下組織内に挿入された皮膚電極またはニードルとのカソードに接続されたパーツとして実装することによる、より低い電気刺激電圧での一時性心臓刺激の効果を確認している。
【0038】
したがって、これらの推奨される施術の利点としては、追加の専用カテーテルの挿入の必要性が回避されることと、心臓に対する追加的なアクセスが回避されることと、手術の時間およびコストが削減されることと、しかしながらさらに専用カテーテルの挿入に関する複雑さのレベルが軽減されることとが含まれ、これらの全てにより、経静脈ルートによる刺激によるものと同等の有効刺激が可能となる。
【0039】
さらに、上記で説明したようなタンポナーデのリスクをもたらす右心室の電気収縮性刺激用のプローブと比較した場合に、この技術のために使用されるガイドワイヤは、弁を通してステント-バルーン-弁アセンブリを前進させるためのレールとして機能するため、非常に安定的であり、比較的厚い左心室の壁部に対して永久的に当接状態になる。
【0040】
しかし、この技術は、2つの遠隔支持部に対する、正確でなければならない追加的な皮下電極またはニードルの取付けと、クロコダイルタイプの連結クリップの取付けおよび保持とを依然として必要とする。
【0041】
本発明の発明者は、特許出願WO2016/162315を出願しており、これは、患者の動脈内への導入シース(誘導ゾンデまたは送達カテーテル)内へと直接的に心臓刺激装置の電極を一体化することを開示および特許請求している。提案されるこの発明により、手術に関与する外科医にとって心臓刺激装置の電極の取付けおよび取扱いがより容易かつより迅速になる。
【0042】
この出願の欠点は、特定の誘導ゾンデまたは送達カテーテルの作製が必要となる点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【文献】WO93/01768
【文献】WO97/28807
【文献】米国特許第5814097号
【文献】米国特許第5370685号
【文献】米国特許第5545214号
【文献】米国特許第7018406号
【文献】米国特許第7892281号
【文献】米国特許第8652202号
【文献】米国特許第8747459号
【文献】WO2016/162315
【非特許文献】
【0044】
【文献】「Registry of Transcatheter Aortic-Valve Implantation in High-Risk Patients」、Gilard et al、the New England Journal of Medicine、1705~1715頁
【文献】「Left Ventricular Guidewire Pacing to Simplify Aortic Balloon Valvuloplasty」、Susanne Navarini et al、Catheterization and Cardiovascular Interventions 73、426~427頁、(2009)
【文献】「A novel Approach for Transcoronary Pacing in a Porcine Model」、Roland Prodzinsky et al、Journal of Invasive Cardiology 24(9)、451~455頁、(2012)
【文献】「Optimizing of Transcoronary Pacing in a Porcine Model」、Konstantin M. Heinroth, et al、Journal of Invasive Cardiology 21、634~638頁、(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0045】
しかし、既存の誘導ゾンデまたはカテーテルに対して適合され得る1つまたは複数の解決策、すなわち一体化される電極を伴わないものを有することは有意である。
【0046】
本発明の目的は、この要件に対して少なくとも部分的に対応することである。
【課題を解決するための手段】
【0047】
これを目的として、本発明の目的は、第1の代替形態によれば、経皮ルートを経由して心臓弁を置換するためのアセンブリであって、
ヒトの身体の動脈内に導入されるようにおよび送達カテーテルなどの外科的介入デバイスを通過することを可能にするように意図された少なくとも1つのチューブ状導入シースを備える誘導ゾンデを形成するデバイスと、
導入シースの周囲に取り付けられるように構成されたスリーブであって、スリーブは、スリーブがシースの周囲に取り付けられた状態においてシースがヒトの身体の動脈内に導入される場合に、スリーブの導電性外縁部が身体の皮下組織または動脈と接触状態になるように、その外縁部の少なくとも一部において導電性材料から作製され、スリーブは、身体の外部の心臓刺激装置の一方の電極に対する電気接続部をさらに備える、スリーブと、
心臓弁を置換するように意図された人工弁を前進させるためにチューブ状導入シース内に導入されるように意図された少なくとも1つのガイドワイヤであって、体外心臓刺激装置の他方の電極に対する接続部としても機能する金属パーツを備える、少なくとも1つのガイドワイヤと
を備える、アセンブリである。
【0048】
第2の代替形態によれば、本発明の目的は、経皮ルートを経由して心臓弁を置換するためのアセンブリであって、
ヒトの身体の動脈内に導入されるように意図された少なくとも1つのチューブ状導入シースを備える弁送達カテーテルを形成するデバイスと、
導入シースの周囲に取り付けられるように構成されたスリーブであって、スリーブは、スリーブがシースの周囲に取り付けられた状態においてシースがヒトの身体の動脈内に導入される場合に、スリーブの導電性外縁部が身体の皮下組織または動脈と接触状態になるように、その外縁部の少なくとも一部において導電性材料から作製され、スリーブは、身体の外部の心臓刺激装置の一方の電極に対する電気接続部をさらに備える、スリーブと、
心臓弁を置換するように意図された人工弁を前進させるために送達カテーテルのチューブ状シース内に導入されるように意図された少なくとも1つのガイドワイヤであって、体外心臓刺激装置の他方の電極に対する接続部としても機能する少なくとも1つの金属パーツを備える、少なくとも1つのガイドワイヤと
を備える、アセンブリである。
【0049】
一実施形態によれば、誘導ゾンデまたは送達カテーテルの導入シースの周囲に取り付けられた導電性スリーブに対して接続された心臓刺激装置の電極は、アノードであり、ガイドワイヤの金属パーツに対して接続される電極は、カソードである。
【0050】
本発明のさらなる目的は、前述のようなアセンブリ用に意図された導電性スリーブである。
【0051】
このスリーブは、炭素などの導電性材料から作製された単体パーツにより形成され得る。
【0052】
また、このスリーブは、外縁部において炭素コーティングなどの導電性コーティングを備えるシースにより形成される。
【0053】
1つの有利な実施形態によれば、スリーブは、典型的には1.67~8mmの間の(5~24Frenchゲージの間の)外径を有する、種々の直径を有する誘導ゾンデまたは送達カテーテルのシースに対して取り付けられ得るように弾性であることが可能である。典型的には、この外径は、心臓弁置換アセンブリ用に意図されたシースについて、4mm、4.67mm、5.33mm、またはさらには6mmであることが可能である。
【0054】
第3の代替形態によれば、本発明は、経皮ルートを経由して心臓弁を置換するためのアセンブリであって、
ヒトの身体の動脈内に導入されるようにおよび送達カテーテルなどの外科的介入デバイスを通過することを可能にするように意図された少なくとも1つのチューブ状導入シースを備える誘導ゾンデを形成するデバイスと、
シースが導入されるヒトの身体の皮膚に対して固着されるように意図された接着パーツ、および接着パーツが皮膚に対して固着されると導電性パーツが電流を経皮的に送達し得るように、導電性材料から作製されたパーツを備える経皮電極であって、導電性パーツは、身体の外部の心臓刺激装置の一方の電極に対する電気接続部をさらに備える、経皮電極と、
心臓弁を置換するように意図された人工弁を前進させるために誘導ゾンデのチューブ状シース内に導入されるように意図された少なくとも1つのガイドワイヤであって、体外心臓刺激装置の他方の電極に対する接続部としても機能する金属パーツを備える、少なくとも1つのガイドワイヤと
を備える、アセンブリに関する。
【0055】
第4の代替形態によれば、本発明の目的は、経皮ルートを経由して心臓弁を置換するためのアセンブリであって、
ヒトの身体の動脈内に導入されるように意図された少なくとも1つのチューブ状導入シースを備える弁送達カテーテルを形成するデバイスと、
シースが導入されるヒトの身体の皮膚に対して固着されるように意図された接着パーツ、および接着パーツが皮膚に対して固着されると導電性パーツが電流を経皮的に送達し得るように、導電性材料から作製されたパーツを備える経皮電極であって、導電性パーツは、身体の外部の心臓刺激装置の一方の電極に対する電気接続部をさらに備える、経皮電極と、
心臓弁を置換するように意図された人工弁を前進させるために送達カテーテルのチューブ状シース内に導入されるように意図された少なくとも1つのガイドワイヤであって、体外心臓刺激装置の他方の電極に対する接続部としても機能する少なくとも1つの金属パーツを備える、少なくとも1つのガイドワイヤと
を備える、アセンブリである。
【0056】
一実施形態によれば、経皮電極に対して接続された心臓刺激装置の電極は、アノードであり、ガイドワイヤの金属パーツに対して接続される電極は、カソードである。
【0057】
本発明のさらなる目的は、前述のようなアセンブリ用に意図された経皮電極である。
【0058】
第5の代替形態によれば、本発明のさらなる目的は、経皮ルートを経由して心臓弁を置換するためのアセンブリであって、
ヒトの身体の動脈内に導入されるようにおよび送達カテーテルなどの外科的介入デバイスを通過することを可能にするように意図された少なくとも1つのチューブ状導入シースを備える誘導ゾンデを形成するデバイスと、
心臓弁を置換するように意図された人工弁を前進させるために誘導ゾンデのチューブ状シース内に導入されるように意図された、両極式ガイドワイヤと呼ばれる少なくとも1つのガイドワイヤであって、ガイドワイヤは、ガイドワイヤの近位端部と遠位端部との間の中央部分において電気絶縁シースで被覆された金属コアを備え、金属コアは、ガイドワイヤの長さの残りの部分において非電気的に隔離され、電気絶縁シースは、導電性要素を組み込み、導電性要素の遠位部分は、身体の皮下組織または動脈と接触状態になるように、絶縁シースの外縁部の少なくとも一部において露出状態にあり、導電性要素の近位部分は、ガイドワイヤが導入シースに導入される場合に身体の外部からアクセス可能になるように絶縁シースの外縁部の少なくとも一部において露出状態にあり、近位部分は、身体の外部の心臓刺激装置の一方の電極に対する接続部として機能し、両極式ガイドワイヤの金属コアは、体外心臓刺激装置の他方の電極に対する接続部として機能する、少なくとも1つのガイドワイヤと
を備える、アセンブリである。
【0059】
第6の代替形態によれば、本発明の目的は、経皮ルートを経由して心臓弁を置換するためのアセンブリであって、
ヒトの身体の動脈内に導入されるように意図された少なくとも1つのチューブ状導入シースを備える弁送達カテーテルを形成するデバイスと、
心臓弁を置換するように意図された人工弁を前進させるために誘導ゾンデのチューブ状シース内に導入されるように意図された、両極式ガイドワイヤと呼ばれる少なくとも1つのガイドワイヤであって、ガイドワイヤは、ガイドワイヤの近位端部と遠位端部との間の中央部分において電気絶縁シースで被覆された金属コアを備え、金属コアは、ガイドワイヤの長さの残りの部分において非電気的に隔離され、電気絶縁シースは、導電性要素を組み込み、導電性要素の遠位部分は、身体の皮下組織または動脈と接触状態になるように、絶縁シースの外縁部の少なくとも一部において露出状態にあり、導電性要素の近位部分は、ガイドワイヤが導入シースに導入される場合に身体の外部からアクセス可能になるように絶縁シースの外縁部の少なくとも一部において露出状態にあり、近位部分は、身体の外部の心臓刺激装置の一方の電極に対する接続部として機能し、両極式ガイドワイヤの金属コアは、体外心臓刺激装置の他方の電極に対する接続部として機能する、少なくとも1つのガイドワイヤと
を備える、アセンブリである。
【0060】
一実施形態によれば、ガイドワイヤのシースに組み込まれた導電性要素に対して接続された心臓刺激装置の電極は、アノードであり、ガイドワイヤの金属コアに対して接続される電極は、カソードである。
【0061】
本発明の有利な変形形態によれば、金属導電性要素は、その露出状態の遠位部分および近位部分を除いては絶縁シースに埋め込まれた金属層である。
【0062】
一実施形態によれば、患者の心臓の左心室の壁部と接触状態になるように意図されたガイドワイヤの金属コアの非電気的に隔離された遠位端部は、ガイドワイヤの残りの部分よりも高い可撓性を有する部分である。好ましくは、このより高い可撓性を有する部分は、患者の心臓の左心室の壁部と接触状態になる場合に巻くように構成される。
【0063】
導電性要素の遠位部分は、身体の外部の心臓刺激装置の一方の電極に対して接続されるように意図された電気接続部に対して接続され得る。
【0064】
本発明のさらなる目的は、前述のようなアセンブリ用に意図された両極式ガイドワイヤである。かかる両極式ガイドワイヤは、ガイドワイヤの近位端部と遠位端部との間の中央部分において電気絶縁シースで被覆された金属コアを備え、金属コアは、ガイドワイヤの長さの残りの部分において非電気的に隔離され、電気絶縁シースは、導電性要素を組み込み、導電性要素の遠位部分は、絶縁シースの外縁部の少なくとも一部において露出状態にあり、導電性要素の近位部分は、絶縁シースの外縁部の少なくとも一部においてやはり露出状態にある。
【0065】
前述の出願WO2016/162315に開示される解決策の代替を求める一方で、本発明者は、既存の解決策の中から心臓刺激を探求した。
【0066】
彼らは、一時性経皮心臓刺激のために意図された既知の刺激電極を調査した。この技術は、緊急事態での症候性徐脈の治療において、または心臓の頻脈性不整脈を防止するために提案される。
【0067】
しかし、心筋気絶を達成する目的においてかかる電極を調査することを考えた者はいなかった。
【0068】
驚くべきことには、人工弁のガイドワイヤに対して体外心臓刺激装置のカソードを接続し、患者の皮膚と接触状態にある経皮電極に対してアノードを接続することにより、本発明者は有効な心筋気絶を実現した。
【0069】
また、本発明者は、患者の動脈に導入される導入シースの周囲に取り付けられたパーツに心臓刺激装置の電極の金属支持部を組み込むことを考慮した。したがって、本発明によるスリーブは、患者の動脈に対して直接接触状態にある。
【0070】
最後に、本発明者は、前述の出願中にあるような患者の動脈内の導入シース内に直接的にではなく、ガイドワイヤ内に心臓刺激装置の電極の金属支持部を組み込むことを考慮した。
【0071】
本発明による両極式ガイドワイヤは、本質的に、体外心臓刺激装置のアノードおよびカソードのそれぞれに接続する2つの電気接続部用の支持部として機能する。したがって、金属コアは、これらの電気接続部の一方のための支持部として機能し、金属コアから絶縁されている導電性要素の近位部分は、これらの電気接続部の他方のための支持部として機能する。
【0072】
したがって、心筋気絶が、両極式電気刺激により実施されることが可能となり、その利点は、これが非常に低い電気刺激しきい値を必要とする点である。
【0073】
導入シースは、誘導ゾンデの導入シースか、またはそのままに誘導ゾンデに比べてより小さい送達カテーテルの導入シースであることが可能である。弁送達カテーテルは、患者の動脈内に直接的に導入され得るため誘導ゾンデを事実上において必要としない。
【0074】
本発明の様々な代替形態により、ニードルは、皮下組織中に、または典型的には心臓刺激装置のアノードである電極用の支持部として機能するように皮膚電極中に挿入される必要はない。
【0075】
さらに、一時性プローブと一般的に呼ばれる先行技術におけるような電気収縮性プローブの使用および取付けが不要となる。
【0076】
さらに、本発明により、心筋気絶に必要とされる刺激強度が、皮下組織に対する脈管系のインピーダンスがより低いことにより先行技術の解決策におけるものよりも低くなる。典型的には、心筋気絶を目的として送達される電流の強度は、10~20mAの範囲であることが可能であり、送達電圧は、0.5~10ボルトの範囲であることが可能である。
【0077】
したがって、手術の関与する外科医は、誘導ゾンデもしくは送達カテーテルまたはさらには経皮電極またはさらには両極式ガイドワイヤの周囲に取り付けられた導電性スリーブに対して、典型的には心臓刺激装置のアノードである電極を容易に接続し、次いで弁-ステント-バルーンまたは自己拡張性弁-ステントアセンブリのガイドワイヤに対して典型的にはカソードである他方の電極を通常どおりに接続することが可能となる。
【0078】
したがって、心臓停止を可能な状態にするステップが、より容易にかつ迅速に実施される。
【0079】
さらに、本発明者は、本発明によるスリーブまたは経皮電極または両極式ガイドワイヤが、右心室内に配置される先行技術の電気収縮性刺激プローブに関連する合併症リスクを低下させ得ることを考慮する。
【0080】
誘導ゾンデまたは送達カテーテルは、経心尖ルートを経由して、または脆弱どのより高い患者にとって低侵襲性であることにより好ましい経大腿ルートを経由して通常どおりに導入され得る。
【0081】
誘導ゾンデまたは送達カテーテルは、一般的に「フラッシュ」システムと呼ばれる抹消潅流システムを組み込むことが可能であり、このシステムは、誘導ゾンデまたはカテーテルの内部に存在する可能性のある血塊をこれらの誘導ゾンデまたはカテーテル内部から洗浄して出すために取り付けられ得る。
【0082】
したがって、有利には、大動脈心臓弁を置換するためのアセンブリの場合に、誘導ゾンデは、例えばEdwards Lifesciencesにより市販される商標名「Edwards eSheath introducer sheath set」を有するものなどの既知の誘導ゾンデであることが可能である。
【0083】
人工弁は、誘導ゾンデ内に導入される従来のカテーテル弁により動脈内に導入および位置決めされることが可能である。この場合に、人工弁は、折畳み位置をとり、誘導ゾンデ内および次いで動脈内への、または本発明による送達カテーテル内へのおよび次いで動脈内へのカテーテル弁の導入および摺動を妨げない。
【0084】
その後、展開位置において、人工弁は、天然心臓弁の外壁に対して、前記弁を破砕することにより前記弁の代わりに、当接状態になる。
【0085】
したがって、従来のカテーテル弁により、天然弁を開かせ破砕し得るものと同一の動作運動を利用することによって人工弁は適切な位置に導入および位置決めされることが可能となる。前記天然弁を開き破砕した後に続いて、カテーテル弁は、天然弁の開口内の適切なレベルへと人工弁を搬送するために遠位方向へと軸方向に摺動させられる。
【0086】
患者に対する外科的操作により、天然弁を開き破砕する最中に、次いでその後に、電流が刺激装置のカソードとアノードとの間で循環する状態において、体外心臓刺激装置により心臓刺激が印加される。カソードは、人工弁のガイドワイヤに対して接続され、アノードは、本発明による導電性スリーブに対して接続され、この導電性スリーブは、誘導ゾンデまたは送達カテーテルの外部チューブ状シースの周囲に取り付けられ、患者の皮下組織または動脈の内壁と接触状態にある。
【0087】
人工弁は、心室刺激と同時に展開される。次いで、カテーテル弁が引き抜かれる。
【0088】
約言すると、本発明によるアセンブリの利点は、出願WO2016/162315によるアセンブリの利点と同一であり、その利点は以下の通りとして挙げることができる。
欠陥を有する大動脈弁置換手術中における、典型的には心室刺激アノードである電極のより簡単かつ迅速な取付け。
典型的には心臓刺激装置アノードである電極支持部としての追加の皮下ニードルを挿入する必要性の解消。
欠陥を有する心臓弁置換手術に関する時間の短縮化およびコストの削減。
電気刺激電流を受ける脈管系のインピーダンスがより低いことによる、所望の心筋気絶の達成を目的とした一時性刺激の効率の向上。これは、誘導ゾンデまたは送達カテーテルの周囲のスリーブが、より高いインピーダンスを必ず有する患者の皮膚組織と接触状態になる先行技術のニードルとは対照的に、前記システムと直接接触状態にあることが原因である。
右心室内に取り付けられる先行技術による電気収縮性プローブの不安定性とは異なり、左心室内における剛性ガイド(約1.455mm直径)の安定性により、所望の心筋気絶を達成することを目的とした一時性刺激の効率の向上。
対外刺激装置の2つの電極間におかれる脈管系のインピーダンスがより低いことによる、より低い電流での一時性心臓刺激の実施が可能になること。
右心室内に取り付けられる先行技術による一時性刺激プローブに関連する合併症リスクの解消。
大動脈弁、肺動脈弁、三尖弁、または僧房弁の置換などの複数の異なるタイプのTAVIインターベンションの場合における誘導ゾンデまたは送達カテーテルの使用が可能になること。特に、変性三尖弁の置換の場合には、ガイドレールおよび電気収縮性プローブの両方の取付けは、バルーンまたは弁プロテーゼの拡張によりプローブが圧迫され、刺激の中断または刺激プローブのブロックという固有のリスクを伴うことにより予期することができないため、ガイドレール(0.89mm直径)による右心室内への刺激プローブの導入技術のみが予期され得る。
成人患者集団の場合よりも動きがちな小児患者集団において、より高い頻拍を伴う心臓に対する弁手技または心臓手技の最中における使用が可能になること。さらに、これは、右心室刺激プローブの取付けと同様に、大腿静脈穿刺が非常に困難な患者集団を含む。最後に、小児の右心室壁部は、薄く易壊性であり、したがってタンポナーデなどの重篤な合併症リスクを上昇させる。また、これは、刊行物[2]に記載の患者集団を含む。
一時性心臓刺激が効果的にかつ非常に迅速に実施されなければならない緊急時および複雑な手技において冠動脈形成手術現場での使用が可能であること。これを目的として、本発明によるスリーブを有する誘導ゾンデまたは送達カテーテルは、これらのインターベンションの最中に決定因子となり得る、先行技術における場合のように電極または追加の皮下ニードルを取り付けるために必要とされる時間を節減する。
【0089】
本発明によるスリーブの、経皮電極の、または両極式ガイドワイヤの唯一の相対的制約は、手術の開始時に準備中において存在し、導入シースの周囲にスリーブを取り付けることを伴う。しかし、この手術は、実施が非常に単純かつ容易であり、このタスクに関する特殊なスキルを必要とすることなくアシスタントまたは看護師により実施されることが可能である可能性が非常に高い。
【0090】
本発明のさらなる目的は、大動脈弁、肺動脈弁、三尖弁、または僧房弁の置換に関して前述したようなスリーブと共に誘導ゾンデまたは送達カテーテルを有するアセンブリを使用することである。
【0091】
最後に、本発明の目的は、特に緊急事態において冠動脈形成インターベンションに関して前述したようなスリーブと共に誘導ゾンデまたは送達カテーテルを有するアセンブリを使用することである。
【0092】
この使用は、冠動脈形成において直面し得る3つの介入状況において特に有利である。
【0093】
第1の状況は、極度の除脈タイプの導電性の問題または重度の房室ブロックを結果としてもたらす急性心臓発作の治療である。本発明によるスリーブと共に誘導ゾンデを使用することにより、はるかに侵襲性が高く多大な追加的な植込み時間を必要とする先行技術による電気収縮性プローブの使用が回避される。
【0094】
第2の状況は、商標名「Rotablator(登録商標)」で知られるバーリングデバイスを通常は使用して問題となる冠動脈内部で実施されるバーリングによる石灰化した冠動脈病巣の治療に関する。この場合にもまた、本発明による導電性スリーブと共に誘導ゾンデを使用することにより、先行技術におけるような電気収縮性心臓刺激プローブを使用する必要性が解消される。
【0095】
第3の状況は、冠動脈の起始部(冠動脈口)の近傍の冠動脈のいくつかの部分におけるステントの取付けに関する。これらのゾーンは、介入カテーテルに対して非常に動きやすく、一方でこれらの解剖学的ゾーンは、ステントの植込み時に非常に高い精度を必要とする。本発明による導電性スリーブと共に誘導ゾンデを使用することにより、ステントが取付けの前および最中において安定化され得る。
【0096】
本発明のさらなる利点および特徴が、以下の図面を参照として非限定的な例によって提示される本発明の詳細な説明を読むことによりさらに明確に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1】患者の鼠蹊部の大腿動脈内に導入されるように意図された先行技術による誘導ゾンデの斜視図である。
図2A】欠陥を有する天然大動脈弁の代わりに人工弁を取り付けるために図1による誘導ゾンデ内にカテーテル弁を摺動するステップの部分長手方向断面図である。
図2B】欠陥を有する天然大動脈弁の代わりに人工弁を取り付けるために図1による誘導ゾンデ内にカテーテル弁を摺動するステップの部分長手方向断面図である。
図2C】欠陥を有する天然大動脈弁の代わりに人工弁を取り付けるために図1による誘導ゾンデ内にカテーテル弁を摺動するステップの部分長手方向断面図である。
図3】先行技術によるカテーテル弁を取り付けるステップと心臓刺激電極を取り付けるステップとの両方の、患者の体外からの概略斜視図である。
図4】誘導ゾンデを必要とすることなく患者の動脈内に直接導入されるように意図された先行技術による送達カテーテルの概略斜視図である。
図5図1に示すものなどの先行技術による誘導ゾンデを形成するデバイスの周囲に、または図4に示すものなどの先行技術による送達カテーテルの周囲に取り付けられるように意図された、本発明による導電性スリーブの斜視図である。
図6図1に示すものなどの先行技術による誘導ゾンデの周囲に取り付けられた図5によるスリーブを示す部分長手方向断面図である。
図7】心筋気絶を達成するために経皮ルートを経由して心臓弁を置換するためのアセンブリ内で使用されるように意図された経皮電極の斜視図である。
図8】本発明によるカテーテル弁を取り付けるステップと心臓刺激電極を取り付けるステップとの両方の、患者の体外からの概略斜視図である。
図9】心筋気絶を達成するために経皮ルートを経由して心臓弁を置換するためのアセンブリ内で使用されるように意図された本発明による両極式ガイドワイヤの斜視図である。
図9A図9の両極式ガイドワイヤの隔離シース内に埋め込まれた導電性スリーブ要素の遠位部分のレベルにて得られる断面A-Aに沿った横断面図である。
図9B図9の両極式ガイドワイヤの隔離シース内に埋め込まれた導電性スリーブ要素の近位部分のレベルにて得られる断面B-Bに沿った横断面図である。
図10】本発明による両極式ガイドワイヤの中央部分の形成の断面図である。
図11】本発明によるカテーテル弁を取り付けるステップと心臓刺激電極を取り付けるステップとの両方の、患者の体外からの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0098】
以下の説明全体を通じておよび本願全体を通じて、「遠位」および「近位」という用語は、欠陥のある天然大動脈弁が人工大動脈弁により置換される患者の身体を基準として使用される。したがって、誘導ゾンデの遠位端部は、置換手術中において患者の体内の最も奥に位置する端部となる。
【0099】
明瞭化のために、本発明によるデバイス内および先行技術によるデバイス内の同一の要素は、同一の参照符号を使用して示される。
【0100】
様々な要素が必ずしも縮尺どおりであるわけではない点に留意されたい。
【0101】
図1は、経大腿ルートを経由して心臓弁を置換するための誘導ゾンデ1を示す。
【0102】
略チューブ形状であるこの誘導ゾンデ1は、その近位端部10と遠位端部11との間に端部ピース12を備え、この端部ピース12は、手術対象の患者の大腿動脈内への導入を基準として考えた場合の近位側から遠位側に向かって、すなわち図1では頂部から底部に向かって2つのチューブ状部分14、15により形成された少なくとも1つの外部チューブ状シース13によって延長される。
【0103】
端部ピース12は、止血を達成するための、すなわち術中に患者の血管内部に血液が維持されることを確保するための封止弁セットを一般的に組み込む。
【0104】
チューブ状シース13は、以降で説明されるように、カテーテル弁などの外科的介入デバイスを通過することを可能にするように拡張可能であってもよくまたはそうでなくてもよい。シース13の構成材料は、シリコンなどの生体適合性材料である。この構成材料は、Teflon(商標)またはポリウレタンから同様に作製され得る。有利には、シースの外部は、親水性層で覆われ、その内部は、介入デバイスの摺動を助長するために低摩擦係数を有する材料で覆われ得る。
【0105】
また、図1に示す誘導ゾンデ1は、一般的に「フラッシュ」デバイスと呼ばれるタップ付き洗滌デバイス16を備え、このタップ付き洗滌デバイス16は、適切な洗滌液体を使用して誘導ゾンデ1の内部を洗滌するために組み込まれる。
【0106】
近位ゾーンまたは外部ゾーンZE内に存在する誘導ゾンデ1の全ての要素が、患者の体外に留まるように意図され、遠位ゾーンZIを画定するシース13の遠位部分15の全体は、患者の大腿動脈内に導入されるように意図される。
【0107】
図示される誘導ゾンデ1は、例えば、Edwards Lifesciencesにより商標名「Edwards eSheath introducer sheath set」で市販されているものである。
【0108】
図2A図2Cは、大腿動脈A内に予め導入された誘導ゾンデ1のチューブ状シースの遠位部分14の内部における、ガイドワイヤ20と、径方向拡張ステントに固定された人工弁およびこの拡張を実現するために膨張され得るバルーンによって形成されるアセンブリ21とによって形成された、カテーテル弁2の前進を示す。
【0109】
アセンブリ21の先端部により、欠陥を有する天然大動脈弁内への容易な貫入が可能となる。
【0110】
これらの図は、カテーテル弁2が摺動することにより、チューブ状シースの部分15が一時的に径方向に変形しつつ、小隆起部150を形成することを示す。チューブ状シースが拡張性でない場合には、チューブ状シースは径方向に変形しない。
【0111】
図3は、外科医の手Mによって患者の大腿動脈内に予め導入された誘導ゾンデ1内にカテーテル弁2が導入されるのを示しており、端部ピース12は身体Cの外部に突出している。
【0112】
カテーテル弁2のこの導入により、アセンブリ21は、置換される必要のある欠陥を有する大動脈弁と同一レベルへ運ばれ得る。
【0113】
通常は、やはり図3に示すように、クロコダイルクリップとして知られるクリップ3が、カテーテル弁2のガイドワイヤ20上に対してクリップ固定することによって固定される。このクリップ3は、身体Cの外部に位置する心臓刺激装置(図示せず)のカソードに対して接続される。
【0114】
さらに、ニードル(図示せず)が、手術対象の患者の身体Cの皮下組織内に挿入される。金属ワイヤ4が、このニードルに固定される。
【0115】
また、クロコダイルタイプクリップ5が、金属ワイヤ4に対するクリップ固定により固定される。
【0116】
このクリップ5は、体外の心臓刺激装置のアノードに対して接続される。
【0117】
したがって、人工弁が置換されることとなる天然大動脈弁と同一レベルになると、外科医は、人工弁の実際の取付け前に、すなわちバルーンの膨張としたがって弁が固定されたステントの拡張との前に、左心室の高頻度心室刺激を実施する。
【0118】
これを目的として、電気信号が、クリップ3、5によりカソードとアノードとの間において送達され、バルーンは、これらの2つの電極間で電気絶縁器として機能する。
【0119】
図4は、誘導ゾンデを必要とせずに患者の動脈内に直接的に導入され得る送達カテーテル1'を示す。より具体的には、カテーテル1'は、導入シース13により延長される端部ピース12を備える。この端部ピース12は、遠位端部11にバルーン7を膨張/収縮するための連結部18を備え、これにより人工弁(図示せず)を拡張することが可能となる。
【0120】
上記で簡単に説明したように経大腿ルートを経由した大動脈弁の置換に伴う多数の手術に直面し、2つの遠隔支持部に対する特に追加的な皮下ニードルの正確かつ繊細な取付けならびにクロコダイル連結クリップの取付けおよび保持に直面したことにより、本発明の発明者は、誘導ゾンデ1内への直接的なまたは送達カテーテル1'内への金属ワイヤ4の一体化を既に考慮してきた。この解決策は、特許出願WO2016/162315において開示され特許請求されている。
【0121】
この解決策は、先行技術による技術と比較した場合に多数の利点をもたらすが、それにもかかわらず専用の誘導ゾンデまたは送達カテーテルを作製することを必要とするという重大な欠点を有する。
【0122】
さらに、本発明者は、専用の誘導ゾンデまたは送達カテーテルに金属ワイヤの機能を組み込むことではなく、既存の誘導ゾンデ1または送達カテーテル1'の周囲に直接的に取り付けられるように適合化された導電性スリーブスリーブ6を作製することを第1に考慮した。
【0123】
本発明によるかかるスリーブ6は、図5に示され、これはチューブの形態で示され、このチューブの外縁部の少なくとも一部が導電性スリーブ性である。
【0124】
この導電性スリーブ性部分は、電源ワイヤ7により電気接続部8に接続される。
【0125】
スリーブ6は、円筒形状であることが可能であり、または円錐断面を有することが可能である。その形状は、誘導ゾンデ1またはカテーテル1'の導入シース13の外部形状と可能な限り厳密に合致する。
【0126】
図6に示すように、典型的には約1mm以下であるこのスリーブ6の厚さは、シース13に対して若干の過剰厚みを付加するにすぎず、したがって動脈Aに導入された場合にはその前進を妨げない。
【0127】
スリーブ6は、全体が導電性スリーブ性である単体パーツの形態で、または導電性スリーブ性コーティングで被覆されたパーツの形態で作製することが可能である。有利には、炭素が導電性スリーブ性材料として選択され得る。
【0128】
有利な一変形例によれば、スリーブ6は、弾性であるように、およびしたがって任意サイズの既存の誘導ゾンデまたは送達カテーテルに対して適合し得るように設計され得る。
【0129】
実施時には、人工弁の取付けに伴った心臓刺激伴う心臓刺激弁を置換するための手術を行うことを希望する外科医または介入医師は、誘導ゾンデ1または送達カテーテル1'の周囲に導電性スリーブ6を取り付けることによって開始する。導電性スリーブの取付けが非常に簡単かつ用意であることにより、この取付けは、いかなる特定の技術も用いる必要なくアシスタントまたは看護師が行うことも可能である。
【0130】
取付けは、スリーブ6が患者の皮下ゾーンまたは患者の大動脈の壁部のいずれかと接触状態になるように導入シース13の周囲に取り付けられ配置されると完了する。
【0131】
この取付けが完了すると、シースの周囲にスリーブ6が位置する状態での誘導ゾンデ1または送達カテーテル1'の導入は、外科医によって通常は完了され得る。
【0132】
誘導ゾンデ1または送達カテーテル1'が、大腿動脈内に位置決めされると、電気接続部8は、体外心臓刺激装置のアノードに対して直接的に接続され得る。
【0133】
通常は、次いで図3に示すクロコダイルクリップ3などのクリップが、誘導ゾンデ1または送達カテーテル1'のガイドワイヤ上に対してクリップ固定することによって固定され得る。このクリップは、身体Cの外部に位置する心臓刺激装置(図示せず)のカソードに対して接続される。
【0134】
したがって、所望の心筋気絶を達成するための一時性心臓刺激が、ガイドワイヤに電気接続されたカソードと本発明によるスリーブ6に電気接続されたアノードとの間で実施され得る。
【0135】
また、本発明者は、専用の誘導ゾンデまたは送達カテーテルに金属ワイヤの機能を組み込むことではなく、経皮電極6'を代わりに使用することを考慮している。
【0136】
本発明によるかかる電極6'は、図7に示され、シースが導入されるヒトの身体の皮膚に対して固着されるように意図された接着パーツ60'と、電流を経皮送達するようになされた導電性材料から作製されたパーツ61'とを備える。
【0137】
導電性材料から作製されたパーツ61'は、体外心臓刺激装置の電極との接続を完遂するためにコネクタ8に対して剛体接続された電源ワイヤ7'を備える電気接続部をさらに備える。
【0138】
実施時には、人工弁の取付けに伴った心臓刺激伴う心臓刺激弁を置換するための手術を行うことを希望する外科医または介入医師は、患者の皮膚に対して経皮電極6を固着することによって開始する。この電極は、例えば心臓に対面するゾーンなどにおいて取り付けられ得る。取付けが非常に簡単かつ用意であることにより、この取付けは、いかなる特定の技術も用いる必要なくアシスタントまたは看護師が行うことも可能である。
【0139】
この取付けが完了すると、外科医は、通常どおりに誘導ゾンデ1または送達カテーテル1'を導入することが可能となる。
【0140】
誘導ゾンデ1または送達カテーテル1'が大腿動脈内に位置決めされると、電気接続部8は、体外心臓刺激装置のアノードに対して直接的に接続され得る。
【0141】
通常は、次いでクロコダイルクリップ3などのクリップが、誘導ゾンデ1または送達カテーテル1'のガイドワイヤ上に対してクリップ固定することによって固定され得る。このクリップは、身体Cの外部に位置する心臓刺激装置(図示せず)のカソードに対して接続される。かかる構成は図8に示される。
【0142】
したがって、所望の心筋気絶を達成するための一時性心臓刺激が、ガイドワイヤに電気接続されたカソードと本発明による経皮電極6'に電気接続されたアノードとの間で実施され得る。
【0143】
さらに、本発明者は、専用の誘導ゾンデまたは送達カテーテルに金属ワイヤの機能を組み込むことではなく、ガイドワイヤが誘導ゾンデのチューブ状シース13内に導入されるように依然として意図された状態で、中央部分に電気隔離絶縁器を有する両極式ガイドワイヤ6''に金属ワイヤの機能を組み込むことを考慮している。
【0144】
より具体的には、図9図10に示すように、両極式ガイドワイヤ6''は、ガイドワイヤの近位端部6P''と遠位端部6D''との間の中央部分に電気絶縁シース61''で被覆された金属コア60''を第1に備える。
【0145】
金属コアの遠位端部6D''は、患者の心臓の左心室の壁部と接触状態になるように意図される。
【0146】
図示する実施形態では、この遠位端部6D''は、ガイドワイヤの残りの部分よりも高い可撓性の部分であり、その可撓性により、遠位端部6D''は、患者の心臓の左心室の壁部と接触状態になった場合に巻くことが可能となる。したがって、これにより、安全かつ影響を及ぼさない、すなわち心室の壁部との接触がタンポナーデのリスクを発生させる準穿刺接触となる先行技術による電気収縮性刺激プローブとは対照的にこの壁部を穿刺するリスクをもたらさない接触が確保される。
【0147】
金属コア60''は、ガイドワイヤの長さの残りの部分に対して非電気的に隔離される。
【0148】
金属層7''は、その遠位部分70''および近位部分71''を除いては、電気絶縁シース61''の内部に埋め込まれる。
【0149】
したがって、遠位部分70''は、身体の皮下組織または動脈と接触状態になるように絶縁シース61''の全外縁部にわたり露出状態にある。近位部分71''は、ガイドワイヤが導入シース13に導入されると身体Cの外部からアクセス可能になるように絶縁シースの全外縁部にわたり露出状態にある。
【0150】
両極式ガイドワイヤ6''のこの情報により、組み込まれた導電性要素7''の近位部分71''は、体外の心臓刺激装置の一方の電極に対する接続部として機能し、両極式ガイドワイヤの金属コア60''は、体外心臓刺激装置の他方の電極に対する接続部として機能する。
【0151】
実施時には、人工弁の取付けに伴った心臓刺激伴う心臓刺激弁を置換するための手術を行うことを希望する外科医または介入医師は、誘導ゾンデ1または送達カテーテル1'を導入することによって開始し、この導入は、通常どおりに外科医により実施され得る。
【0152】
次いで、本発明による両極式ガイドワイヤ6''は、誘導ゾンデ1または送達カテーテル1'の導入シース13に導入される。
【0153】
これらの取付けが完了すると、導電性要素7''の近位部分71''は、体外心臓刺激装置のアノードに対して直接的に接続され得る。代替的には、図11に示すように、クロコダイルクリップ3などのクリップ5が、導電性近位部分71''上に対してクリップ固定することにより固定され得る。このクリップ3は、身体Cの外部に位置する心臓刺激装置(図示せず)のアノードに対して接続される。
【0154】
次いで、通常は、クロコダイルクリップ5などのクリップが、ガイドワイヤ6''の金属コア60''上に対してクリップ固定することにより固定され得る。このクリップ5は、身体Cの外部に位置する心臓刺激装置(図示せず)のカソードに対して接続される。かかる構成は図11に示される。
【0155】
したがって、所望の心筋気絶を達成するための一時性心臓刺激が、本発明によるガイドワイヤ6''の金属コア60''に電気接続されたカソードとガイドワイヤ6''の導電性要素7''の遠位部分70''に電気接続されたアノードとの間で実施され得る。
【0156】
本発明により、経皮ルートを経由して心臓弁を置換するための出願WO2016/162315による発明に固有である術他の利点が維持され得ると共に、以下のことが選択可能となることによって、追加の利点が任意の既存の誘導ゾンデまたは送達カテーテルにおいて実現され得る。
1つのみの導電性スリーブ6が、前記既存の誘導ゾンデまたはカテーテルの周囲に取り付けられなければならず、手術対象の患者の動脈内に導入される前に、電気接続部がガイドワイヤと共に作製されなければならない。
1つのみの経皮電極6'が、心筋気絶を目的として患者の皮膚に対して固着されなければならず、接続部が、置換手術中にガイドワイヤと共に作製される必要がある。
2つのみの電気接続部が、置換手術中にガイドワイヤ6''と共に作製される必要がある。
【0157】
本発明は、前述の例に限定されない。具体的には、示した例の特徴は、図示されない変形例と共に組み合され得る。
【0158】
他の変形例および改良が、本発明の特許請求の範囲から必ずしも逸脱することなく実現され得る。
【符号の説明】
【0159】
1 誘導ゾンデ
1' 送達カテーテル
2 カテーテル弁
3 クロコダイルクリップ
4 金属ワイヤ
5 クロコダイルクリップ
6 導電性スリーブ
6' 経皮電極
6'' 両極式ガイドワイヤ
7 バルーン
7' 電源ワイヤ
7'' 金属層、導電性要素
8 電気接続部、コネクタ
10 近位端部
11 遠位端部
12 端部ピース
13 外部チューブ状シース、導入シース
14 遠位部分
15 遠位部分
16 タップ付き洗滌デバイス
18 連結部
20 ガイドワイヤ
21 アセンブリ
60' 接着パーツ
60'' 金属コア
61' パーツ
61'' 電気絶縁シース
70'' 遠位部分
71'' 近位部分
150 小隆起部
6D'' 遠位端部
6P'' 近位端部
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図9A
図9B
図10
図11