(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】抗微生物活性を有するポリアミドアミン
(51)【国際特許分類】
C08G 73/02 20060101AFI20220516BHJP
A01N 61/00 20060101ALI20220516BHJP
A01N 47/44 20060101ALI20220516BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20220516BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20220516BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220516BHJP
A61K 31/785 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
C08G73/02
A01N61/00 D
A01N47/44
A01P3/00
A61P31/10
A61P31/04
A61K31/785
(21)【出願番号】P 2019527948
(86)(22)【出願日】2017-07-20
(86)【国際出願番号】 EP2017068343
(87)【国際公開番号】W WO2018024494
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-06-19
(31)【優先権主張番号】102016000081360
(32)【優先日】2016-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519038873
【氏名又は名称】アルファ-シーエム ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】ALFA-CM SRL
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ヴュッロ、シリオ
(72)【発明者】
【氏名】フェルーティ、パオロ
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/145056(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0243721(US,A1)
【文献】米国特許第03843567(US,A)
【文献】国際公開第2010/099962(WO,A1)
【文献】特表2000-503645(JP,A)
【文献】PAOLO FERRUTI,Poly(amidoamine)s: Past, present, and perspectives,JOURNAL OF POLYMER SCIENCE PART A: POLYMER CHEMISTRY,2013年03月15日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00 - 73/26
A01N 61/00 - 61/02
A01N 47/00 - 47/48
A01P 3/00 - 3/14
A61P 31/00 - 31/22
A61K 31/00 - 31/80
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N,N-メチレンビスアクリルアミド、グリシンおよびアグマチンの共重付加によって得られ、以下の式(I):
【化1】
[式中、nおよびmは、値(n+m)が、5~1,000の範
囲となり得るような2つの数である]
を有する、1,000Da~200,000Daの間の範囲の数平均分子量を有するポリアミドアミン。
【請求項2】
比m/(n+m)が、0.25~0.7の間の範囲である、請求項1に記載のポリアミドアミン。
【請求項3】
比n/mが、0.05~99.5の範
囲であり得る、請求項1に記載のポリアミドアミン。
【請求項4】
比n/mが、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、および0.75から選択される、請求項3に記載のポリアミドアミン。
【請求項5】
5,000Da~30,000Daの間の範囲の数平均分子量を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリアミドアミン。
【請求項6】
医薬として使用される、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリアミドアミン。
【請求項7】
抗微生物剤として使用される、請求項6に記載のポリアミドアミン。
【請求項8】
抗菌剤および抗真菌剤として使用される、請求項7に記載のポリアミドアミン。
【請求項9】
E.coli、S.aureus、Xanthomonas属種、Pseudomonas syringae pv.Syringae、Bacillus licheniformis、B.subtilis、Pseudomonas属種、Monilia laxa、Monilia fructigena、Botrytis cinerea、およびMonilinia fructicolaによって引き起こされる感染症の治療に使用される、請求項8に記載のポリアミドアミン。
【請求項10】
請求項1から5のいずれか一項に記載の
ポリアミドアミンを薬学的に許容される賦形剤および/または担体と混合して含む医薬組成物。
【請求項11】
請求項1から5のいずれか一項に記載の
ポリアミドアミンを希釈剤および/または担体と混合して含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、抗微生物活性(antimicrobial activity)を有する、新規のポリアミドアミン(PAA)であって、グリシンおよび4-アミノブチルグアニジン(アグマチン)の混合物と、N,N-メチレンビスアクリルアミドとの共重付加(copolyaddition)によって得られるPAAに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
ポリアミドアミン(PAA)は、スキーム1に従う、第一級アミンまたは第二級アミンおよびビスアクリルアミドの段階機構(step mechanism)を伴うマイケル型重付加によって得られる合成ポリマーであり、スキーム1は一般に、第一級アミンからのPAAの合成に関する。
【0003】
【0004】
式中、R1は、水素、または任意選択で置換されたアルキルであり、R2は、アルキレンであり、R3は、任意選択で置換されたアルキルであり、nは、ポリマーに所望の分子量をもたらすのに必要とされる、繰り返し単位の数を表す整数である。
【0005】
PAAおよびそれを調製するための方法については、例えば、WO2010/099962、WO2011/145056、P. Ferrutiら、Biomacromolecules、2007、8、1498-1504、およびP. Ferruti、J. Polym. Sci.、A1 51、2319-2353(2013)に記載されている。
【0006】
重合は通常、水中、濃縮溶液(≧25%)中、室温で、2~8日間の範囲の時間で行われる。特別な場合には、アルコール、グリセリン、またはジメチルスルホキシドと水との混合物などの他の溶媒を使用することができる。しかし、アミノ酸などの極性モノマー、およびそれに由来するPAAは、通常、前記溶媒に難溶性(poorly soluble)である。さらに、重合率はしばしば低く、大半の場合において、使用しうる場合は、水がより好都合である。移動可能な水素原子がない溶媒中では、重合率はあまり高くなく、得られる生成物の分子量は小さい。
【0007】
アグマチンまたは4-アミノブチルグアニジン(以下、「G」と呼ぶ)は、極めて強い塩基であるグアニジン基、及び、中程度の塩基性を有する第一級アミノ基を含有する天然のアミノ酸である、アルギニンの脱炭酸化に由来する化合物である。
【0008】
アグマチンは、水溶液中でビスアクリルアミドと反応して、pHが10未満に維持されている場合には、これらの条件下では、グアニジン基はプロトン化され、反応しないため、アミノ基のみを含む段階重付加が生じる。
【0009】
WO2011/145056は、アグマチンと2,2-ビス(アクリルアミド)酢酸との共重合(スキーム2)について記載している。得られるAGMA-1と呼ばれる生成物は、その側鎖がアミジノ基を含有し、抗ウイルス活性を有するPAAである。
【0010】
アグマチンと、N,N-メチレンビスアクリルアミド(以下、「MBA」と呼ぶ)との共重合は、MBA-Gと呼ばれる、グアニジン基を含有するPAAをもたらす(スキーム2):
【0011】
【0012】
MBA-Gは、アグマチンと同様に、極めて塩基性が強く、水に可溶性である。本発明の発明者らは、MBA-Gが多くの病原性微生物に対して強い抗微生物特性を保有することを見出した。
【0013】
PAAの共通の特徴は、異なるアミンの混合物と、同じビスアクリルアミドとの共重付加、または同じアミンと、異なるビスアクリルアミドの混合物との共重付加により、PAAがコポリマーを形成することである。例えば、アグマチンを、2,2-ビス(アクリルアミド)酢酸およびN,N-メチレンビスアクリルアミド(MBA)の混合物と共重合することによって得られる生成物は、両方の単位を2種の出発ビスアクリルアミドと同じ割合で含有し、これらはポリマー鎖に沿ってランダムに配置されているが、いずれもグアニジン単位の前後に配置される。これらのコポリマーは全て塩基性であるが、それらはカルボキシル基の存在により内部的に緩衝されているため、MBA-Gより弱い。本発明によるコポリマー(下記参照)は、別の例を構成する。
【0014】
PAAの合成において、モノマーとして使用可能なアミンの中で、天然のアミノ酸は特定の位置を占める。それらは、天然の状態ではビスアクリルアミドと反応しないが、混合物のpHが7.5~8を超えて上昇すると反応が起こる。ただし、それらの反応性は低く、かなり大きい分子量を有するPAAは、反応時間が非常に長いか、または、加熱により反応条件を強いる場合にのみ得られる。しかしながら、この場合、同時に加水分解反応を引き起こす危険性がある。グリシンは、大多数のアミンの速度と同等な速度で反応するので、例外である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図面の説明
【
図1】多様な細菌種(B.licheniformis;P.syringae pv syringae;Xanthomonas属種(spp.))の増殖を阻害する(mm単位の阻害ハロー(halo))、異なるポリアミドアミン濃度(25、50、および130μg/ml)での製剤αおよびβの相互作用。図中のデータは、多様な細菌種について得られたデータの平均値を表す。
【
図2】異なる細菌種(Blich=B.licheniformis;PSS1=P.syringae pv syringae;XJ=Xanthomonas属種)の阻害ハロー(mm単位)に対する、2つの異なるポリアミドアミン製剤(αおよびβ)の効果。各細菌種およびポリアミドアミン製剤に対して、異なる濃度(25、50、および130μg/ml)で得られた結果の平均値を報告する。
【
図3】P.syringae pv syringae(PSS1)、B.licheniformis(Blich)、およびXanthomonas属種(Xj)の増殖の阻害における、異なる濃度(25、50、および130μg/ml)でのポリアミドアミン製剤αおよびβの効果(細分類データ)。
【
図4】異なる細菌種:C99=Pseudomonas属種;Bsub=B.subtilis;Blich=B.licheniformis;PSS1=P.syringae pv syringae;XJ=Xanthomonas属種の阻害ハロー(mm単位)に対する、ポリアミドアミンβ濃度(100および150μg/ml)の効果。
【
図5】異なる細菌種:C99=Pseudomonas属種;Bsub=B.subtilis;Blich=B.licheniformis;PSS1=P.syringae pv syringae;XJ=Xanthomonas属種の阻害ハローに対する、150μg/mlでのポリアミドアミンα製剤およびポリアミドアミンβ製剤の効果。
【
図6】真菌種である、Botrytis cinerea(Bc)およびM.fructicola(Mfruct)の阻害ハロー(mm単位)に対する、異なるポリアミドアミン濃度(100および150μg/ml)の効果。図に示されたデータは、ポリアミドアミン製剤αおよびβについて得られたデータの平均値を表す。
【
図7】異なる真菌種(Bc=Botrytis cinerea;Mfruct=Monilinia fructicola)の阻害ハローに対する、ポリアミドアミン製剤(α=実線;β=破線)の効果。有意差は、観察されなかった。図に示されたデータは、異なる濃度(100および150μg/ml)で得られたデータの平均値を表す。
【
図8】多様な収穫後病原性真菌の阻害ハローに対する、ポリアミドアミンの種類(α、β)および濃度(60、70、または90μg/ml)の効果。
【
図9】病原体を接種され、2時間後に、物質(100μg/ml)で処置されたリンゴの感染病巣の割合の減少における、異なる濃度でのポリアミドアミンαの活性。
【
図10】Pseudomonas属種C99株の増殖阻害における、ポリアミドアミンαの活性。A=非処置対照;B=150μg/ml;C=100μg/ml。
【0016】
本発明の説明
MBAと、グリシンおよびアグマチンの混合物との共重付加によって得られるPAAが、MBA-Gの抗微生物活性を維持し、同時に、その毒性を、許容可能なレベルまで減少させることが発見されている。
【0017】
本発明によるPAAは、MBA、グリシン、およびアグマチンの共重合によって得られ、以下の式(I):
【0018】
【0019】
[式中、nおよびmは、(n+m)の値が、5~1,000の範囲であるような、2つの数である]
を有する、1,000Da~200,000Daの間であり、好ましくは5,000Da~30,000Daの間であり、さらにより好ましくは12,000Da~14,000Daの間の範囲の数平均分子量を有するコポリマーである。
【0020】
式(I)のコポリマーは、ポリマー鎖に沿って互いに対してランダムに配置された、グアニジン単位およびグリシン単位を、それらが由来する反応混合物と同じ割合で含有する。コポリマーにおける重合機構(段階重付加)に従い、反応生成物の組成は、モノマーの出発混合物に、正確に対応しなければならない。(n+m)の合計は、ポリマーに所望の分子量をもたらすのに求められる繰り返し単位の平均数を表す整数である。式(I)のコポリマーでは、(n+m)は、好ましくは、20~200の範囲であり、さらにより好ましくは、45~55の範囲であり、述べた通り、12,000~14,000Daの範囲の数平均分子量に相当する。
【0021】
平均で、試験コポリマー内の(n+m)の値は、50±5であり、12,000~13,500Daの範囲の数平均分子量に相当する。分子量の正確な値が、活性の目的にとって重要ではないのに対し、比m/(n+m)、すなわち、グアニジン単位と、総単位との比は、その目的にとって重要である。本発明では、好ましい比は、0.25~0.7の範囲である。
【0022】
比n/mは、0.05~99.5の範囲であることができ、好ましくは10~90の範囲であることができ、さらにより好ましくは0.25~0.75の範囲であることができる。
【0023】
本発明の一実施形態では、n/mは、0.75である。
本発明の別の実施形態では、n/mは、0.7である。
本発明の別の実施形態では、n/mは、0.6である。
本発明の別の実施形態では、n/mは、0.5である。
本発明の別の実施形態では、n/mは、0.4である。
本発明の別の実施形態では、n/mは、0.3である。
本発明の別の実施形態では、n/mは、0.25である。
【0024】
本発明によるPAAは、(n+m)モル当量のMBAを、nモル当量のグリシンおよびmモル当量のアグマチン一塩基酸塩または二塩基酸塩を含有する水溶液へ添加することにより調製することができ、この場合、nおよびmは、上記で定義された通りである。グリシンおよびアグマチン二塩基酸塩は、それぞれ、nモル当量およびmモル当量の、無機水酸化物または第三級アミンなど、マイケル型付加に対して不活性な塩基を添加することにより中和される。
【0025】
グリシンへの等分子量の塩基の添加は、グリシンのカルボキシルを中和し、アミノ基を放出するが、これは重付加反応において遊離塩基として反応することができる。
【0026】
アグマチン二塩基酸塩への等分子量の塩基の添加は、アグマチンを塩化するために使用される酸の水素原子を、より弱い塩基であるアミノ基から移動させ、それを放出し、それが反応することを可能とするが、はるかに強い塩基であるグアニジン基を、特にアミノ基を含む重付加反応を妨害しないように、イオン化したままにする。塩化がグアニジン基のみを含む、アグマチン一塩基酸塩は、アルカリ性水酸化物による中和を要しない。
【0027】
水酸化リチウム一水和物は、アッセイすることが容易であるため、特に好都合である。
【0028】
アグマチン二塩基酸塩は、好ましくは硫酸アグマチンである。
【0029】
重付加反応は、必要に応じて、無機水酸化物または第三級アミンなどのマイケル型付加に対して不活性な塩基を用いて到達させた、8~10の間の範囲のpHの水中で、5℃~80℃の間、好ましくは、10℃~30℃の間の範囲の温度で、3~300時間の間、好ましくは、24~192時間の間の範囲の時間にわたり行うことが好ましい。
【0030】
結果として得られるPAAの分子量は、相補的な重合官能基の間の化学量論比(当量比の場合に最大となる)および反応時間と相関する。
【0031】
次いで、公知の手順により、PAAを単離および精製する。典型的には、反応混合物を、水で希釈し、3~3.5のpHへと酸性化し、最後に、適切な公称カットオフを1,000Da、より典型的には5,000Daとする膜を通して、限外濾過する。最後に、保持された画分を凍結乾燥し、膜を通過した画分を除去する。
【0032】
本発明による化合物は、細菌および真菌に対して有効である。
【0033】
本発明による化合物の効果に対して感受性のある細菌種の例は、E.coli、S.aureus、Xanthomonas属種、Pseudomonas syringae pv.Syringae、Bacillus licheniformis、B.subtilisおよびPseudomonas属種である。
【0034】
本発明による化合物に対して感受性のある真菌種の例は、Monilia laxa、Monila fructigena、Botrytis cinereaおよびMonilinia fructicolaである。
【0035】
したがって、本発明による化合物は、微生物感染症の治療および/または予防のための医薬組成物の有効成分として有用である。
【0036】
本発明による化合物は、通例の慣行に従い選択される従来の担体および賦形剤と共に製剤化することができる。
【0037】
賦形剤は、界面活性剤、保存剤、抗酸化剤、キレート化剤、炭水化物、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ポロキサマー、ポリマー安定化剤などを含むことができる。
【0038】
本発明による医薬組成物は、少なくとも1つの式(I)の化合物を、1つまたは複数の担体および/または賦形剤と併せて含む。医薬組成物は、経口経路、局所経路、静脈内経路および非経口経路などの様々な投与経路に適したものを含む。医薬組成物は、都合よくは、用量単位形態であることができ、周知の方法により調製することができる。
【0039】
経口用途に使用する場合は、錠剤、トローチ、水性もしくは油性の懸濁液、顆粒もしくは分散性粉末、ハードカプセルもしくはソフトカプセル、シロップまたはエリキシルを調製することができる。経口用途のためにデザインされた組成物は、医薬組成物の調製のための任意の公知の方法により調製することができ、前記組成物は、心地良い風味を有する調製物を提供するために、1つまたは複数の甘味剤、香味剤、着色剤および保存剤を含有することができる。
【0040】
例えば、粘膜および皮膚を介した局所投与のためには、医薬組成物は、好ましくは、本発明による化合物を含有する、軟膏、ゲル、クリーム、またはペーストとして適用される。局所製剤は、本発明による化合物の、皮膚もしくは他の患部を通した吸収もしくは浸透を促進する化合物、または他の抗微生物剤を含むことができる。
非経口投与に適した組成物は、本発明による化合物を含有する、滅菌水性または非水性注射用溶液、または懸濁液を含む。
【0041】
本発明によるPAAの毎日の用量は、10~10,000mg、好ましくは、100~1,000mgの範囲であることができる。用量は、有効性研究、薬物動態研究、および毒性学研究に基づき、補正することができる。
【0042】
本発明による化合物はまた、有機農業において、細菌性病原体および真菌性病原体に対抗するための植物保護製品としても使用することができる。
【0043】
植物保護製品として使用するために、本発明による化合物は、固体形態または液体形態で処方することができる。
【0044】
農業用途のための固体製剤の例は、
- 本発明による化合物、適切に選択された分散剤および不活性薬剤を、一緒に粉砕して均一な前混合物を得、次いで、これを、押出および凝集などの異なる技術により顆粒化させた、水分散性顆粒および可溶性顆粒;
- 本発明による化合物を、最も適切な分散剤、湿潤剤および不活性物質と混合し、それらの成分を一緒に粉砕することによって得られる、水和性粉末および可溶性粉末
である。
【0045】
農業用途のための液体製剤の例は、
- 本発明による化合物を、細かく粉砕し、分散剤および湿潤剤を用いて、水中または油中に均一に分散させ、製剤を、増粘剤および消泡剤で完成させた、濃縮水性懸濁液または油中濃縮分散液;
- 本発明による化合物を、乳化剤と共に最も適切な溶媒中に溶解させた乳化性液;
- 本発明による化合物と、適切な溶媒とを、少量の界面活性剤の存在下、高せん断速度で攪拌することにより水中で乳化させ、製剤を増粘剤および消泡剤で完成させた油/水エマルジョン;
- 本発明による化合物と、適切な溶媒とを、大量の界面活性剤を用いて水中で自然に乳化させたマイクロエマルジョン;
- 本発明による化合物と、任意選択で少量の適切な溶媒とを、それらの制御放出を可能とする半透性のプラスチックフィルムによって囲まれた小滴の形態で、水中に懸濁させたマイクロカプセルの懸濁液
である。
【0046】
ここで、本発明を以下の例によってより詳細に説明する。
【0047】
例
例1:ポリアミドアミンであるGUAGLY5:5の合成
グリシン(7.51g、10分の1モル)を50mLの蒸留水中に溶解し、これに水酸化リチウム一水和物を添加する(4.2g、10分の1モル)。
【0048】
硫酸アグマチン(22.83g、10分の1モル)と、75mLの水との混合物を別々に調製し、水酸化リチウム一水和物(4.2g、10分の1モル)を攪拌下で添加する。混合物は徐々に均一な溶液となる。
【0049】
2つの溶液を組み合わせ、固体のN,N-メチレンビスアクリルアミド(30.82g、10分の2モル)を添加し、均一な溶液が得られるまで、混合物を室温(約20℃)で攪拌する。この時点で攪拌を停止させ、7日間にわたり混合物を放置し、反応するとますます粘性になる溶液中の濃度が不均一になるのを防ぐために、これを時折攪拌する。
【0050】
反応の終了時に、混合物を蒸留水で600mLに希釈し、塩酸でpH3~3.5に酸性化し、公称カットオフを5,000Daとする(プロセスは1,000Daでもまた実行可能である)膜を通して限外濾過する。保持された画分を凍結乾燥し、膜を通過した画分を除去する。
【0051】
数平均分子量を12,800Daとし、多分散性を1.26とする、生成物35gを得る。前記値は、直列で接続した、Knauer Autosampler 3800、TKSgel G4000 PW、およびG3000 PW TosoHaasカラムを装備したKnauer Pump 1000、Viscotek 270 Dual Detector(光散乱/粘度計)およびWaters model 2410 屈折率検出器を使用する、サイズ除外クロマトグラフィー(SEC)により得られた。移動相は、0.2Mの塩化ナトリウムを含有する0.1M、pH8.1±0.05のトリス緩衝液であった。試料の濃度は20mg/mLであり、流量は1mL/分であった。
【0052】
上記で記載した手順を使用し、MBA、アグマチン(GUA)およびグリシン(GLY)の間のモル比を適切に変化させるが、それらの合計と、MBAとの間の化学量論的等価性を維持することにより、表に示す生成物を得る。
【0053】
【0054】
例2:抗菌活性の評価
試験は、E.coliおよびS.aureusの菌株についてのSNV-195920-1992基準に従う、寒天拡散法により行った。
【0055】
試験のために使用された化合物は、
A)GUAGLY-5:5
B)MBA-アグマチン(比較化合物)
であった。
【0056】
試験化合物溶液を含浸させた100%の綿ガーゼ上で得られる細菌増殖の阻害帯域は、十分に明瞭であり、E.coliおよびS.aureusの菌株に対する両方の化合物の良好な有効性を示す。
【0057】
例3:S.aureusに対する抗菌活性の評価
同じ寒天拡散法を使用して、以下の化合物α、β:
- α(MBA:1.0/アグマチン:0.5/グリシン:0.5)(GUAGLY-5:5)
- β(MBA:1.0/アグマチン:0.6/グリシン:0.4)(GUAGLY-6:4)の濃度を変化させながら、S.aureusについての試験を行った。
【0058】
試験濃度は、12.5および3.125μg/mlであった。
【0059】
PAAαおよびPAAβは、いずれの濃度でも細菌増殖の明確な阻害ハローを示し、低濃度においてかなり良好な抗菌活性を示し、高濃度において良好な活性を示す。
【0060】
例4:病原性植物株および病原性動物株に対する、GUAGLY-5:5(α)およびGUAGLY-6:4(β)の抗微生物活性
植物病原体に関して、本発明による化合物の、Xanthomonas属種(XJ)、Pseudomonas syringae pv.Syringae(PSS1)、Bacillus licheniformis(Blich)、B.subtilis(Bsub)およびPseudomonas属種(C99)、ならびに、真菌種である、Botrytis cinerea(Bc)およびMonilinia fructicola(Mfruct)など、様々な細菌に対する抗微生物活性を測定した。例2のディスク拡散試験を用いた。特に、104個の細菌細胞または分生子細胞を含有する細胞懸濁液100μlを、栄養寒天またはポテトデキストロース寒天のディスク上に拡散させた。次いで、直径25mmの滅菌濾紙ディスクを、各プレートの中心に置き、これに、異なる濃度(25、50、100、130および150μg/ml)のポリマー150μlを含浸させた。対照プレートでは、濾紙に滅菌蒸留水を含浸させた。実験は、各抗微生物剤および各濃度について三回行った。プレートを細菌および真菌のそれぞれについて、室温で、24および48時間にわたりインキュベートした。活性は、濾紙ディスク周囲の阻害ハローをmm単位で測定することにより決定した。
【0061】
実験は完全なランダムプランに従い組織され、データは、主因子として、物質の種類、濃度および微生物種を考慮に入れる、分散の要因解析にかけた。P≦0.05の値を使用して、信頼区間を使用して比較された処置の平均値(mean of treatment)及び統計学的有意性を識別した。
【0062】
灰色カビ病および根腐れの発生を制限する物質の活性を評価するために、20個のリンゴの表面を2%の次亜塩素酸ナトリウム溶液で2分間にわたり消毒し、水道水ですすぎ、そして乾燥させ、次いで、赤道に沿って、各果実に、幅2mmで深さ2mmの病巣1カ所を作製することにより損傷させた。ポテトデキストロース寒天(PDA)上で、22℃で7~10日間にわたり培養されたB.cinereaおよびM.fructicolaを使用して、0.05%のTween80を含有する滅菌蒸留水中の芽胞懸濁液(1ml当たりの芽胞5×104個)を調製した。病巣に20μlの病原体芽胞懸濁液を接種し、リンゴを層流フード(hood)下に置いた。2時間後、異なる濃度(100および150μg/mL)のα-ポリアミドアミン溶液100μlを各病巣に接種した。滅菌蒸留水で処置した病巣を対照として使用した。果実を20℃および高RH(90%)で、7日間にわたり保管し、その後、感染したリンゴの数を記録した。
【0063】
結果
PAA濃度は、試験菌株の阻害ハローに明らかに影響を及ぼす:阻害は、濃度と共に増大し、実験で使用されるPAA(αまたはβ)の種類に依存した(
図1)。
【0064】
PAAαおよびPAAβは、細菌種である、P.syringae pv syringaeおよびXanthomonas属種の阻害剤として極めて有効であるが、B.licheniformis種に対しては、やや有効ではないことが証明された(
図2)。図は、PAAにさらされた細菌株の感受性を示し、グラフは、25、50および130μg/mlの濃度で得られた内挿を表す。
【0065】
高濃度のPAA(100および150μg/ml)を用いて、その後に行われた試験は、濃度を増大させると、病原性細菌に対する阻害力もまた増大することを明らかに示している。
【0066】
図3の細分類データは、様々な細菌種に対する阻害ハローの観点からの、PAAαおよびPAAβならびにそれらの濃度の効果を示している。
【0067】
図1、2および3は同じ実験に関するものであり、様々な試験因子:ポリアミドアミンの種類(αまたはβ)、ポリアミドアミンの濃度(25、50または130μg/mL)および細菌種(P.syringae pv syringaeであるPSS1、B.licheniformisであるBlich、およびXanthomonas属種であるXj)の間の、相互作用および主要な効果を示している。
【0068】
全体として見ると、図は、
i)濃度が、試験細菌種の阻害ハローに対して、著明かつ増大する効果を及ぼすこと;
ii)PAAの種類であるαおよびβが、細菌種により異なる効果を示す:平均して、βがPSS1種およびBlich種に対してより有効であるのに対し、αはXjに対してより有効であること;
iii)見出された効果が、主に濃度によるものであること
を証明している。
【0069】
図4は、濃度を100および150μg/mlとするPAAβの、細菌種である、C99=Pseudomonas属種;Bsub=B.subtilis;Blich=B.licheniformis;PSS1=P.syringae pv syringae;XJ=Xanthomonas属種に対する効果を示している。
【0070】
図5は、濃度を150μg/mlとする化合物αおよびβの、同じ細菌種に対する効果を示している。
【0071】
100および150μg/mlの濃度で、選択されたPAAは、B.cinereaおよびM.fructicolaに対する強力な増殖抑制力を示すが、これは後者の場合に著明に大きい(
図6)。グラフは、化合物αおよびβに関して得られた結果の平均値を示す。
【0072】
細菌種についての知見とは異なり、試験真菌種では、化合物αと化合物βとの間の効果に有意差は観察されなかった(
図7)。
【0073】
低濃度で、大多数の収穫後病原性真菌(M.laxa、M.fructicola、M.fructigenaおよびB.cinerea)(
図8)について行われた試験は、60μg/mlで、PAAαが、PAAβより大きな阻害ハローをもたらすこと;PAAαが濃度を75および90μg/mlに増大させても、阻害ハローの有意な増大を示さないのに対し、PAAβは濃度と比例する阻害傾向を示し、PAAaによって得られる値と同等であり、時にはこれを超える阻害傾向を示すことを明らかにする。
【0074】
100および150μg/mlの濃度で、PAAαは、M.fructicolaおよびB.cinereaを接種されたリンゴにおける感染病巣の割合を著しく減少させた(
図9)。
【0075】
最後に、
図10は、Pseudomonas属種C99株の増殖の阻害におけるPAAαの活性を示す。
【0076】
概括して言えば、全ての実験は、試験PAAによる明確且つ強力な抗菌作用および抗真菌作用を示している。