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特許7073370低温使用及び冷却流体における原動機付きヒートポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】低温使用及び冷却流体における原動機付きヒートポンプ
(51)【国際特許分類】
   F17C 9/02 20060101AFI20220516BHJP
   F25B 27/00 20060101ALI20220516BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20220516BHJP
   F25B 27/02 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
F17C9/02
F25B27/00 A
F25B1/00 399Y
F25B27/02 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019529162
(86)(22)【出願日】2017-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 IB2017057442
(87)【国際公開番号】W WO2018100486
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-13
(31)【優先権主張番号】102016000121441
(32)【優先日】2016-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519190263
【氏名又は名称】サイペム・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】SAIPEM S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】エンニオ・マッキ
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ・ジュフリーダ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンルカ・ヴァレンティ
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ・フォレスティ
(72)【発明者】
【氏名】サロヴァトーレ・デ・リナルディス
(72)【発明者】
【氏名】ルカ・ダヴィデ・イングレーゼ
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ・レポーレ
(72)【発明者】
【氏名】ファブリツィオ・メローニ
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2011-0039714(KR,A)
【文献】実開平01-106700(JP,U)
【文献】特開昭54-047872(JP,A)
【文献】特開2003-207226(JP,A)
【文献】特開2016-048119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 9/02
F25B 27/00
F25B 1/00
F25B 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスの再ガス化ラインにおける機械的又は電気的エネルギー及び熱エネルギーを生成するためのプロセスであって、
1)内燃機関エンジン(ICE)又はガスタービン(GT)によって示される原動機によって機械的又は電気的エネルギー及び熱エネルギーを生成するステップと、
2)ステップ1)で生成された熱エネルギーによって第1の熱交換器(HE1)において加熱された温水によって示される第1の中間媒体液を備える前記液化ガスの再ガス化のステップを作動させるステップと、
3)第2の中間媒体液(HPF2)の冷却及び第3の中間媒体液(HPF3)の加熱に作用する冷却流体を備えるヒートポンプを実施するステップと、
を含み、
前記第3の中間媒体液(HPF3)は、前記液化ガスの再ガス化のステップに作用する、プロセス。
【請求項2】
前記冷却流体は、水-グリコール及び他の冷却流体、例えば、R134a,R32,R143a,R125などを含む群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記第2の中間媒体液(HPF2)は、海水又は周囲空気である、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記第1の中間媒体液及び/又は前記第3の中間媒体液(HPF3)は、互いに独立した温水である、請求項1~3のいずれか1つに記載のプロセス。
【請求項5】
前記液化ガスは、液化天然ガス(LNG)、空気、窒素、炭化水素化合物、例えば、プロパン及びブタンなどのアルカン、もしくはエチレン、プロピレンなどのアルケン、水素を含む群から選択され、好ましくは液化天然ガス(LNG)である、請求項1~4のいずれか1つに記載のプロセス。
【請求項6】
前記ヒートポンプの凝縮器(CPC)において、前記第の中間媒体液に熱が伝達され、冷却流体と前記第の中間媒体液との間で熱交換が行われる、請求項1~5のいずれか1つに記載のプロセス。
【請求項7】
液化ガスの再ガス化ラインであって、
前記液化ガスの気化セクションと、
内燃機関エンジン(ICE)又はガスタービン(GT)によって示される原動機と、
第1の中間媒体液の回路に作用する第1の熱交換器(HE1)と、
ヒートポンプ(HP)と、
を備え、
前記ヒートポンプ(HP)は、気化器(VPC)と凝縮器(CPC)とを備え、前記気化器(VPC)内で第2の中間媒体液(HPF2)から熱を取得し、前記凝縮器(CPC)内で第3の中間媒体液(HPF3)に熱を伝達する冷却流体に作用し、
前記第3の中間媒体液(HPF3)は、液化ガスに熱を伝達する更なる熱交換に作用し、
前記原動機は、前記ヒートポンプ(HP)に機械的エネルギー又は電気的エネルギーを供給するとともに、前記第1の中間媒体液に熱エネルギーを供給する、
液化ガスの再ガス化ライン。
【請求項8】
前記冷却流体は、水-グリコール及び他の冷却流体、例えば、R134a,R32,R143a,R125などを含む群から選択される、請求項7に記載の液化ガスの再ガス化ライン。
【請求項9】
前記第2の中間媒体液(HPF2)は、海水又は周囲空気である、請求項7又は8に記載の液化ガスの再ガス化ライン。
【請求項10】
前記第1の熱交換器(HE1)は、前記原動機によって生成される熱エネルギーと前記第1の中間媒体液との間の熱交換を行う、請求項7~9のいずれか1つに記載の液化ガスの再ガス化ライン。
【請求項11】
前記第1の中間媒体液及び/又は第3の中間媒体液(HPF3)は、互いに独立した温水である、請求項7~10のいずれか1つに記載の液化ガスの再ガス化ライン。
【請求項12】
前記液化ガスの気化セクションは、水中燃焼型気化器(SCV)又はオープンラック型気化器である、請求項7~11のいずれか1つに記載の液化ガスの再ガス化ライン。
【請求項13】
請求項7~12のいずれか1つに係る複数の再ガス化ラインを備える、液化ガス用の再ガス化ターミナル。
【請求項14】
前記複数の再ガス化ラインは並列である、請求項13に記載の液化ガス用の再ガス化ターミナル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー分野への応用、特に液化ガスの再ガス化ターミナルにおいて必要とされるエネルギー消費の減少を見出す。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス(LNG)のための既知の再ガス化技術がある。
【0003】
液化天然ガスは、主にメタンで構成される天然ガスと、より少ない程度の他の軽質炭化水素、例えば、エタン、プロパン、イソブタン、n-ブタン、ペンタン、及び窒素などの混合物であり、液化天然ガスは、環境温度での気体状態から、約-160℃に変換され、液化天然ガスの輸送を可能にする。
【0004】
液化システムは、天然ガス生成現場の近くに置かれる一方、再ガス化システム(又は「再ガス化ターミナル」)は、ユーザーの近くに置かれる。
【0005】
ほとんどのシステム(約85%)は、陸上に置かれる一方、残りの部分(約15%)は、沖合のプラットフォーム又は船上にある。
【0006】
より一般的には、各再ガス化ターミナルは、液化天然ガスの負荷又は需要を満たすために、及び柔軟性又は技術的必要性のために(例えば、ラインメンテナンスのために)、複数の再ガス化ラインを含む。
【0007】
再ガス化技術は通常、大気圧及び-160℃の温度でタンクに貯蔵された液化天然ガスに関し、ガス又はくみ上げたLNGを圧縮して約70~80バールまで昇圧し、気化して約3℃まで過熱するステップを含む。
【0008】
約-155℃から約3℃までの139トン毎時の再ガス化のために要求される熱出力は、再ガス化ラインにおいて約27MWt(メガワット)である一方、電力は、約2.25MWe(メガワット)である(システムの他の補助負荷が考慮される場合は約4.85MWeであり、4つの再ガス化ラインでのシステムの最大電気負荷は約19.4MWeである)。
【0009】
これらのうち、最も使用されているのは、単独で又は相互に組み合わせて、再ガス化ターミナルの約70%で使用されているオープンラック気化器(ORV)技術及び水中燃焼気化器(SCV)技術である。
【0010】
この技術においては、液体状態(約70~80バールで-160℃の温度)の天然ガスが、パネルを形成するように隣り合わせに配置されたアルミニウムパイプの中を底部から上方に向けて流される。気化は、流体が進むにつれて徐々に発生する。
【0011】
熱媒体は、海水であり、パイプの外面の上部から下方に流れることにより、温度差によって気化に必要な熱が提供される。
【0012】
特に、熱交換は、パイプの外形のパターン及びパイプの表面荒さによって最適化され、それらは、パネル上の海水の薄い皮膜の均一な分布を達成する。
【0013】
そのような技術は、熱媒体として水中火炎バーナーによって加熱された脱塩水浴を使用する。特に、燃料ガス(FG)が燃焼セクション内で燃焼され、生成された蒸発気は、燃焼ガスの気泡が出てくる蛇行した穴あきパイプを通過し、水浴を加熱して凝縮熱も伝達する。
【0014】
液化天然ガス(LNG)は、同じ脱塩された水浴中に沈められたステンレス鋼製の他の蛇行するパイプの中で気化する。
【0015】
均一な温度分布を保証するために、同じ水浴が循環状態で保たれる。
【0016】
一方、排出された蒸発気は、SCVの排出スタック(discharge stack)から排出される。
【0017】
LNGの再ガス化で使用されるコージェネレーションシステムは、ベルギー(ゼーブルッヘ)製で、電気エネルギー(約40MWe)を出力するガスタービンで構成され、その排気ガスは、脱塩水の閉回路を備える冷却塔に送られ、再ガス化するLNGの蛇行が存在する気化タンクに、蛇行を通じて熱を放出する。
【0018】
そのため、概して、既知の技術は、システムに必要な電気エネルギーの生成を可能にせず、大量のエネルギー損失を引き起こす。
【0019】
特に水中燃焼気化器(SCV)を参照すると、この技術は、生成されたガスの約1.5%に等しい燃料ガスの消費を意味し、苛性ソーダによる処理を必要とする水浴のpHを低下させる二酸化炭素を生成し、139トン毎時の再ガス化のために約50,000トン毎年のCO2の生成量を決定する。
【0020】
その代わりに、オープンラック型気化器技術は、パイプの外側部分、特にLNGが最も低温であるセクションにおいて、海水の部分的な凍結を引き起こすことがあり、更に、
i)海水温が少なくとも5℃~12℃である地理的な地域(主に亜熱帯地域)及び/又は季節に利用されてもよく、
ii)海水は、パイプの亜鉛コーティングを腐食させ得る重金属の含有量を無くすか、又は低減するために事前に処理されなければならず、
iii)これは、ORVの高さの発達に等しいレベルの測地差を克服しなければならない、海水用のポンプを稼働させるための電気エネルギーの消費を意味し、SCV技術(総システム出力が24.2MWeに等しい)に関して再ガス化ラインあたり1.2MWeの付加的消費を伴い、
iv)最後に、この技術は非常に複雑であり、限られた数の供給者から入手可能である。
【0021】
代わりに、コージェネレーションを考慮すると、注目に値することとして、再ガス化への適用があり、これは、再ガス化ラインの熱負荷と電気負荷との間の比率を熱部分に対して過度な不均衡にもたらす(約5~12)一方で、原動機の場合には、そのような値は1と3との間に含まれ(内燃機関エンジンからガスタービンへの通過)、そのため、原動機のみを設けても、これは電気負荷だけをカバーすることができ、熱負荷をカバーすることができない。
【0022】
例えば、2MWeの内燃機関エンジン(再ガス化ラインの電力需要に相当)及び45%の効率では、排気ガスに加えて潤滑油水冷却回路からの冷却によって回収される熱出力は、再ガス化ラインによって要求される熱出力(27MWt)よりも大幅に低い約2.5MWtであり、熱出力の残りの部分は、一次エネルギー消費が29MWtに等しい従来の再ガス化技術によって提供されなければならず、従って、非常に小さいエネルギー節約指数FGS=6%(燃料ガス節約=(革新的な技術消費 - SCV消費)/SCV消費)を得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、電気負荷の余剰を再ガス化のために有用な熱負荷に転換するための出力サイクル及びヒートポンプが、従来の再ガス化ラインに挿入できることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0024】
第1の目的は、液化ガスの再ガス化ラインを説明することにある。
【0025】
本発明の他の目的は、複数の液化ガスの再ガス化ラインを含む再ガス化ターミナルに関する。
【0026】
更なる目的は、液化ガスのための再ガス化ラインにおける熱エネルギー及び電気エネルギーの産出のためのプロセスを説明することにある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明による再ガス化ラインの第1の実施形態を示し、出力サイクルが内燃機関エンジン(ICE)を含む図である。
図2図2は、本発明による再ガス化ラインの第2の実施形態を示し、出力サイクルがガスタービン(GT)を含む図である。
図3図3は、エネルギーバイパスの概念(HP(heat pump))を図表で示す、本発明に係るシステムの一部を示す図である。
図4図4は、本発明の代替の実施形態による再ガス化ラインの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、特に液化天然ガス(LNG)の再ガス化に関して説明されているが、以下に説明する再ガス化ライン、再ガス化ターミナル、及び再ガス化プロセスは、低温(約0℃未満)又は極低温(-45℃未満)で貯蔵された他の液化流体の再ガス化又は気化にも同様に適用できる。
【0029】
以下、本明細書では、「液化ガス」という用語は、広く流動性の組成物を意味する。
【0030】
本発明は、例えば、空気、窒素、炭化水素化合物、例えば、プロパン及びブタンなどのアルカン、又はエチレン及びプロピレンなどのアルケン、液化天然ガス、又は水素を含む群から選択される液化ガスの再ガス化又は気化に同様に適用される。
【0031】
説明を簡単にするために、本明細書及び図面では、液化天然ガス(LNG)の再ガス化ラインを参照するものとする。
【0032】
「再ガス化ライン」という用語は、液化天然ガス(LNG)の再ガス化のための構造、装置、機械、及びシステムを備える再ガス化システム(又はライン)の一部を意味する。
【0033】
そのような構造、装置、機械、及びシステムは、特に、LNGが貯蔵され、ガス自体の分配ネットワーク内の再ガス化されたLNGの入口点で終わっているタンクに由来する。
【0034】
より詳細には、液化天然ガス(LGN)は、大気圧で約-160℃の温度でタンク内に貯蔵されている。
【0035】
特に、液化ガスタンクは、例えば陸上や海上であり得る再ガス化システム以外の場所又は構造内に配置されてもよい。
【0036】
そのため、本発明は、陸上に適用され、海水が利用できるため、海上又はフローターにも適用される。
【0037】
ラインの一要素は、浴部分の水中燃焼気化器-SCVによって示されている。
【0038】
気化浴に入る前に、LNGは、予備圧縮ステップにかけられて、約70~80バールの圧力にすることができる。
【0039】
圧縮は、(図1中のPMP1)直列で作動する低圧ポンプ(約400kWeの電力を消費する)及び高圧ポンプ(約1300kWeの電力を消費する)によって行われる。
【0040】
図1では、CMP1は、ボイルオフガス(BOG)圧縮機を示す。
【0041】
本発明の好ましい態様によれば、SCVの浴入口で、液化天然ガスは、超臨界状態にあり、約70~80バールで約-155℃である。
【0042】
SCVセクションでは、液化天然ガスは、気化され、約3℃まで過熱される。
【0043】
一度気化されると、天然ガスは、天然ガス分配ネットワーク内に導入され得る。
【0044】
本発明の一態様によれば、液化天然ガス(LNG)の再ガス化ライン(ベース回路)は、エネルギーバイパス回路を備えるように変更され、それは、
-内燃機関エンジン(ICE)又はガスタービン(GT)によって示される内燃機関原動力を含む出力サイクルと、
-第1の中間媒体液回路上で動作する第1の熱交換器(HE1)と、
-冷却流体を操作し、第2の中間媒体液(HPF2)で熱交換をするための蒸発器(VPC)及び第3の中間媒体液(HPF3)で熱交換をするための凝縮器(CPC)を含むヒートポンプと、
-電気回路と、を備える。
【0045】
本発明の他の目的のために、以下には、
-天然ガスの再ガス化バイパス回路(改良)を統合するように変更された、既存の、従来の再ガス化ラインと、
-(例えば、新たなシステムを構築するための)バイパス回路を備える新たな再ガス化ラインと、
が記載されている。
【0046】
本発明によれば、出力/原動機のサイクルは、電気エネルギー及び熱(排蒸気の形で)を生成し、熱は、廃熱回収ユニット(WHRU)によって回収される。
【0047】
本発明の目的のために、出力サイクルは、
-内燃機関エンジン(ICE)、又は、
-ガスタービン(GT)、を備えてもよい。
【0048】
そのようなサイクルは、生成された熱の回収のために熱交換器(HE1)を備えてもよい。
【0049】
上述の記載のように、本発明に係る変更された液化天然ガス(LNG)の再ガス化ラインは、第1の熱交換器(HE1)を有し、第1の中間媒体液の回路上で動作する第1の熱交換器(HE1)を備える。
【0050】
好ましい実施形態によれば、前記第1の中間媒体液は、温水である。
【0051】
特に、前記回路は、適当な温水注入口及び導入接続部を用いて、水中燃焼気化器セクションの浴と一体化される。
【0052】
また、水の循環のためのポンプ(図1のPMP2)は、注入口接続部の下流に挿入されてもよい。
【0053】
また、第1の中間媒体液の回路は、出力回路/第1の原動機(内燃機関エンジン又はガスタービン)によって生成される熱が水に伝達されて水が約18℃から約50℃に加熱されるように、熱交換を発生させる熱交換器(HE1)に一体化されてもよい。
【0054】
そのような熱交換は、約6MWtに相当する熱出力を生成する。
【0055】
そのため、水は、連続的にSCVセクションから浴内に約50℃で再導入され、液化天然ガス(LNG)の気化に貢献する。
【0056】
本発明の目的のために、ヒートポンプ(HP)は、
-冷却流体のための圧縮機(図面のHPK)を備える冷却流体回路と、
-凝縮器(図面のCPC)及び蒸発器(図面のVPC)と、
を含む。
【0057】
特に、冷却流体回路は、好ましくは水-グリコール及び他の冷却流体、例えば、R134a,R32,R143a,R125などを含む群から選択された流体を用いて動作する。
【0058】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記冷却流体は、
-蒸発器(VPC)において、冷却流体が第2の中間媒体液(HPF2)から得た熱による第1の熱交換と、
-凝縮器(CPC)において、冷却流体が第3の中間媒体液(HPF3)へ引き渡す熱による第2の熱交換と、
に作用する。
【0059】
本発明の目的のために、第2の中間媒体液(HPF2)は、好ましくは海水であり、海水は、9℃を超える温度で得られ、約4℃まで冷却される。
【0060】
そのような熱交換は、約18.6MWtの熱出力を生成する。
【0061】
あるいは、ヒートポンプの使用前に、海水は、例えば、藻類や軟体類の有機物及び有機材料及び無機物、例えば、砂又は微粒子などを除去するために濾過のステップにかけられる。
【0062】
本明細書においては、「海水」が参照されるが、適当に沈殿物を除去するように処理されたくみ上げられた海水を意味するだけでなく、川、運河、井戸、湖のような自然池、及び人工池から得られる一般的な環境水でもあってもよいことに留意されたい。
【0063】
本発明の代替の実施形態によれば、第2の中間媒体液(HPF2)は、周囲空気であってもよい。
【0064】
本発明の目的のために、第3の中間媒体液(HPF3)は、好ましくは、約18℃から約23℃に加熱された温水である。
【0065】
特に、前記第3の中間媒体液(HPF3)は、水中燃焼気化器セクション(SCV)の気化浴と一体化される第3の中間媒体液用の回路内を循環する。
【0066】
そのような一体化は、適当な注入口及び導入接続部を用いて得られる。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、水注入口の接続部の下流にポンプ(図1及び図2のPMP4)を挿入することも可能である。
【0068】
従って、そのような温水回路は、水中燃焼気化器セクション(SCV)の浴における液化天然ガス(LNG)の気化を生じさせるのに適した熱交換を作動させる。
【0069】
ヒートポンプは、約21.4MWtに相当する熱を生成できる。
【0070】
本発明の好適な実施形態によれば、上述のヒートポンプ(HP)は、上述した原動機(内燃機関エンジン(ICE)又はガスタービン(GT))の機械的又は電気的な出力によって駆動する。
【0071】
図示しない本発明の代替の実施形態によれば、第3の中間媒体液(HPF3)のための回路と第1の中間媒体液のための回路とは、一体化されてもよい。
【0072】
そのような場合において、冷却流体とヒートポンプの凝縮器(CPC)の前記中間媒体液との間で熱交換が行われ、熱交換器(HE1)における更なる熱の交換のステップの前に、中間媒体液に熱が伝達される。
【0073】
電気の必要量に関して、本発明のシステムは、エネルギーの観点で独立した再ガス化ラインを構成するのに2.25MWeを必要とし、再ガス化ターミナルの全体の電気負荷の4分の1をカバーするのに4.85MWeを必要とする。
【0074】
特に、本発明のシステムは、再ガス化ラインの全体の電気の必要量(2.25MWe)又は再ガス化ターミナルの全体の電気負荷の4分の1を提供し、低圧及び高圧の低温ポンプ(PMP1)と、ボイルオフガス圧縮機(CMP1)及び海水をくみ上げるためのポンプ(PMP3)と、ヒートポンプの温水回路の循環ポンプ(PMP4)と、WHRUの温水回路の循環ポンプ(PMP2)と、を駆動させる。
【0075】
上述の記載に鑑みて、本発明は、液化天然ガスの再ガス化ラインであって、前記LNGの気化セクションと、原動機(内燃機関エンジン(ICE)又はガスタービン(GT))と、第1の中間媒体液の回路に作用する第1の熱交換器(HE1)と、ヒートポンプ(HP)とを備え、ヒートポンプ(HP)は、蒸発器(VPC)と凝縮器(CPC)とを備え、蒸発器(VPC)内で第2の中間媒体液から熱を取得し、凝縮器(CPC)内で第3の中間媒体液に熱を伝達する冷却流体に作用し、第3の中間媒体液は、液化天然ガス(LNG)に熱を引き渡す更なる熱交換器に作用し、原動機(内燃機関エンジン(ICE)又はガスタービン(GT))は、ヒートポンプ(HP)に機械的又は電気的エネルギーを供給するとともに、第1の熱交換器(HE1)に熱エネルギーを供給する、液化天然ガスの再ガス化ラインを提供する。
【0076】
本発明によれば、再ガス化ラインは、水中燃焼気化器タイプ(SCV)の液化天然ガスの気化セクションを備える。
【0077】
本発明の更なる目的は、1以上の液化天然ガス(LNG)の再ガス化ラインを備える再ガス化ターミナルを記述することにある。
【0078】
特に、各再ガス化ラインは、本発明に係る上述のラインである。
【0079】
再ガス化ターミナルは、システムであって、概ね以下の共通の構造を有する。
-液化天然ガスの貯蔵タンク、
-一般に、低圧ポンプ(約400kWeの電力を消費する)及び高圧ポンプ(約1300kWeの電力を消費する)がある、低温ポンプを備える圧縮セクション、
-ボイルオフガス圧縮機(BOG圧縮機)、
-電気エネルギーを供給するための外部ネットワーク(利用可能なとき)との接続部、又は、ガスタービン(GT)又は内燃機関エンジン(ICE)などの発電ユニットとの接続部、
-例えば、独自の空気供給回路及び圧縮機を備える水中燃焼気化器の技術又はオープンラック型気化器の技術を用いる、液化ガスの気化セクション、
-異なるニーズを満たし且つシステムの優れた柔軟性を可能にするために、上述のバイパス構造による少なくとも1つの再ガス化ラインを含む1以上の従来の再ガス化ライン。
【0080】
本発明の一実施形態によれば、ターミナルは、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つのライン、好ましくは4つのラインを備える。
【0081】
種々の再ガス化ラインは、並列に駆動する。
【0082】
そのような構造は、本発明によって提案される技術(改良)を既存システムに適応することを可能にする。
【0083】
本発明の目的のために、新たな構造の再ガス化ターミナルは、上述のバイパス構造による1以上の再ガス化ラインを備えてもよい。
【0084】
技術的なシステムのニーズのために、単一回路のいくつかの要素が複数の再ガス化ラインに共通であることは、除外できない。
【0085】
種々の再ガス化ラインを備えるシステムを構築する可能性は、本発明のコージェネレーションプロセス(すなわち、原動機による電力及び熱出力の、両方が使用される複合生産)を独立して実施することを可能にし、同時に又は同時でなくても、各再ガス化ラインで、柔軟性の観点で明らかな利点がある。
【0086】
本発明の更なる目的によれば、プロセスは、熱及び電気エネルギーの発生(コージェネレーション)のために記載される。
【0087】
特に、そのような方法は、
1)原動機(内燃機関エンジン(ICE)又はガスタービン(GT))によって機械的又は電気的エネルギー及び熱エネルギー(コージェネレーション)を生成するステップと、
2)ステップ1)で生成された熱エネルギーによって加熱された第1の中間媒体液を備える前記液化ガスの再ガス化のステップを作動させるステップと、
3)第2の中間媒体液(HPF2)の冷却及び第3の中間媒体液(HPF3)の加熱に作用する冷却流体を備えるヒートポンプを実施するステップと、
を含む。
【0088】
本発明の好ましい実施形態によれば、ステップ1)の原動機は、内燃機関エンジン(ICE)又はガスタービン(GT)である。
【0089】
特に、再ガス化のための再ガス化液化天然ガス(燃料ガス(FG))の消費は、
-内燃機関の場合、約0.9トン毎時の流量(再ガス化LNG流量の約0.7%)、
-ガスタービンの場合、約1.3トン毎時の流量(再ガス化LNG流量の約0.9%)、
であることを示している。
【0090】
ステップ2)の第1の中間媒体液は、好ましくは温水である。
【0091】
更に、ステップ2)の再ガス化は、好ましくは、少なくとも部分的に、原動機(内燃機関エンジン(ICE)又はガスタービン(GT))によってステップ1)で生成された熱エネルギーを用いて操作される。
【0092】
更に、ステップ2)の再ガス化は、より好ましくは、原動機(内燃機関エンジン(ICE)又はガスタービン(GT))によってステップ1)で生成された熱エネルギーを用いて操作される。
【0093】
本発明の第1の実施形態によれば、ステップ1)の原動機(内燃機関エンジン(ICE)又はガスタービン(GT))は、少なくとも再ガス化される液化天然ガス(LNG)の流体の一部、好ましくはステップ2)で再ガス化される液化天然ガス(LNG)の一部を供給される。
【0094】
図4に示される本発明の代替の実施形態によれば、内燃機関エンジン(ICE)は、タンク又はBOG圧縮機(CMP1)から来るボイルオフガスの流れによって駆動する。
【0095】
代わりに、ヒートポンプ(HP)は、好ましくは水-グリコール及び他の冷却流体、例えば、R134a,R32,R143a,R125などを含む群から選択された流体で動作する。
【0096】
本発明の一実施形態によれば、第2の中間媒体液(HPF2)は、好ましくは海水である。
【0097】
本発明の代替の実施形態によれば、第2の中間媒体液(HPF2)は、好ましくは周囲空気である。
【0098】
本発明の他の実施形態によれば、第3の中間媒体液(HPF3)は、温水である。
【0099】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、上述のプロセスのステップ3)で加熱された第3の中間媒体液(HPF3)は、液化天然ガス(LNG)の再ガス化のステップで作用する。
【0100】
代替の実施形態によれば、第1の中間媒体液の回路と第3の中間媒体液の回路とは、一体化される。
【0101】
そのような場合、ヒートポンプの凝縮器(CPC)内で冷却流体と中間媒体液との間で熱交換が実施され、熱交換器(HE1)における熱の交換の更なるステップの前に中間媒体液に熱が伝達される。
【0102】
上述のプロセスは、特に、上述のような本発明によって変更された液化天然ガスの再ガス化ラインで行われる。
【0103】
上述の説明から、当業者は、本発明によって提示される多くの利点を理解することができるだろう。
【0104】
上述された技術は、技術的な又はメンテナンスの中断がある中で、エネルギーバイパス構造で動くことを可能にする。
【0105】
同じエネルギーバイパス構造は、再ガス化のための外部ネットワークの電気エネルギーを利用することによって、又は上記モジュラーシステムを駆動して、過剰な電気エネルギー生産(電気余剰)の状況下にある他のラインからエネルギーを取得し、外部ネットワークの使用を回避することによって、生産を止めることなくシステムの電気負荷及び熱負荷の調整を可能にする。
【0106】
同じエネルギーバイパス構造は、メンテナンス中及び/又は従来の再ガス化ラインの故障中に、LNGの流量の一部で動作するシステムに電気エネルギーを提供することを可能にする。
【0107】
付加的に、前記プロセスのパラメータは、構造的に単純且つ容易であり、従来の冶金でも必要とする装置を使用することを可能にする。このことは、全て、システムの構築費の減少につながる。
【0108】
前記プロセスは、全システム又は全再ガス化システムの電力の一部による再ガス化ラインの電気バランスを埋める。
【0109】
更に、本発明は、ヒートポンプと一体化されたコージェネレーションにおいて、SCV技術に関して燃料ガスの消費を50%より大きく減少することを可能にする(燃料ガス節約量(FGS)=(ガスサイクル消費量-SCV消費量)/SCV消費量と表現する)。
【0110】
燃料ガスの消費量の減少に比例して二酸化炭素の排出が最大で50%減少する。
【0111】
出力サイクルと結合されたヒートポンプのおかげで、単一ラインの、システムの一部の、又は全システムの熱バランス及び電気バランスを埋めることが可能である。
【0112】
LNGの再ガス化のために伝達される熱出力と海水から再ガス化されるLNGへエネルギーを伝達するために使用される電力とを表わす成績係数-COP(15まで)のおかげで、ヒートポンプの効率は高い。
【0113】
更に、ヒートポンプは、約3℃から約12℃の海水温で駆動することができ、気化セクションSCVからの浴の水温は、約15℃から約50℃の間である。このことは、ヒートポンプの十分に高いCOP値を達成することを可能にする(ポンプはチラーとして機能する)。
【0114】
ヒートポンプは、温水回路を備える遠隔加熱型技術の使用を可能にして海の近くに配置されるか、或いは、再ガス化システムの近くに設けられる、高度なシステム及び動作の柔軟性を提供し、特定のニーズに応じて海水パイプの経路の最適化を可能にする。
【0115】
重要であるのは、本発明が、既知で且つ整理された技術を利用するという事実である。
【0116】
オープンラック型気化器と比較すると、本発明は、ORVの使用を妨げようとする状況下においても海水を利用することを可能にし、更に、パネルの高さによって付与されるレベルの違いを解消するために海水を化学的に処理してくみ上げることは必要ではなく、使用される装置の供給者の利用可能性が広くなる。
【0117】
また、当業者は、上述の技術が新たなライン又は再ガス化システムの構造だけでなく、既存のシステムの変更(改良)にも容易に適用できる方法であることを容易に理解するであろう。
【0118】
更に、本特許出願に記載の発明は、ベースロードシステム(Base Load system)のサイズ、及び小さなスケールの再ガス化構造に対応するLNGの流量に適用されてもよく、特に、本発明は、ベースロード再ガス化ラインに並列である小さいスケールのライン(及びエネルギーバイパス構造)に適用してもよい。
【0119】
本発明によって記載される再ガス化は、明白な管理の柔軟性によって、例えば、システムの流量を再ガス化又は貯蔵されたLNGの要求に適合させる一方で、LNGの流量のあり得る減少にシステムの動作性を適合させるニーズ、例えば、1以上のラインの日常的又は補足的なメンテナンスに関連する技術的なニーズなどの複数のニーズを満たすことを可能にする。
【0120】
図4に示される再ガス化ラインの構成は更に、ガス(天然ガスの代わりのBOG)のより効率的な使用の利点を可能にする。
【0121】
更に、本発明は、特に液化天然ガス(LNG)に関して記載されているが、本明細書に記載された再ガス化ライン、再ガス化ターミナル、及び再ガス化プロセスは同様に、再ガス化又は低温(約0℃未満)又は極低温(-45℃未満)で貯蔵される他の液化流体の再ガス化又は気化にも適用できることに留意されたい。
【0122】
例えば、本発明は、他の液化ガスの再ガス化又は気化への応用も見出すであろう。
図1
図2
図3
図4