(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】裂けづらい繊維
(51)【国際特許分類】
D01F 6/04 20060101AFI20220516BHJP
A47G 27/02 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
D01F6/04 Z
A47G27/02 101D
(21)【出願番号】P 2019529213
(86)(22)【出願日】2017-11-30
(86)【国際出願番号】 NL2017050801
(87)【国際公開番号】W WO2018101827
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-27
(32)【優先日】2016-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】503238939
【氏名又は名称】テン・ケイト・ティオロン・ビイ・ヴイ
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ファン・フォールスト、ヘルヤン
(72)【発明者】
【氏名】プファイファー、フランク
(72)【発明者】
【氏名】コルクマン、ニールズ・ヘルハルトゥス
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-111532(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02039831(EP,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0041781(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
01F1/00-6/96、9/00-9/04 、D01D1/00-13/02 、
D02G1/00-3/48、D02J1/00-13/00、
A47G27/00-27/06 、E01C1/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工芝で使用するための繊維であって、前記繊維は、前記繊維の側端部で交わる第1の面及び第2の面を画定する細長い断面形状を有し、前記第1の及び第2の面は、前記断面形状が鏡映対称性を有しない2回回転対称であるように互いに対してオフセットされたそれぞれの第1の及び第2の隆起部を有
し、前記側端部の間に延びる中心線に対して横方向に測定された前記繊維の最大の太さと前記中心線の長さとの比が0.25~0.6の間であり、前記第1の及び第2の面のいずれの部分も中心線を越えない、繊維。
【請求項2】
前記第1の及び第2の面が凹部を有する、請求項1に記載の繊維。
【請求項3】
前記第1の及び第2の面が波形を有する、請求項1又は請求項2に記載の繊維。
【請求項4】
前記側端部の間に延びる中心線が0.5mm~2mmの間
の長さを有する、請求項1~請求項3のうちのいずれか一項に記載の繊維。
【請求項5】
前記繊維が、1500~3000の間
のdtex値を有する、請求項1~請求項
4のうちのいずれか一項に記載の繊維。
【請求項6】
前記側端部が丸みを帯びており、少なくとも0.05mmの曲率半径を有する、請求項1~請求項
5のうちのいずれか一項に記載の繊維。
【請求項7】
前記第1の及び第2の隆起部が丸みを帯びており、少なくとも0.1mmの曲率半径を有する、請求項1~請求項
6のうちのいずれか一項に記載の繊維。
【請求項8】
前記第1の及び第2の隆起部が前記側端部の間に延びる中心線に沿って、0.05×前記中心線の長さよりも長いが0.4×前記中心線の長さよりも短
い距離だけ互いにオフセットされる、請求項1~請求項
7のうちのいずれか一項に記載の繊維。
【請求項9】
前記繊維が、押し出されたモノフィラメン
トである、請求項1~請求項
8のうちのいずれか一項に記載の繊維。
【請求項10】
前記繊維が、ポリアミド(PA-6、PA-6,6)、ポリエステル(PET、PTT、PBT、PLA、PHB)、ポリプロピレン(ホモポリマー、コポリマー;レギュラー及びメタロセングレード)、
ポリエチレン(HDPE、LDPE、LLDPE、レギュラー[LLDPE]及びメタロセン[mLLDPE]グレード)、ポリオレフィンブロックコポリマー(OBC)並びにそれらのブレンド及び共押し出しから成る群から選択されるポリマーから成る、請求項1~請求項
9のうちのいずれか一項に記載の繊維。
【請求項11】
前記繊維の最大の太さが、0.2mm~0.6mmの
間にある、請求項1~請求項
10のうちのいずれか一項に記載の繊維。
【請求項12】
裏地に留められた、請求項1~請求項
11のうちのいずれかに記載の直立したパイル繊維を備える人工芝。
【請求項13】
前記パイル繊維が前記裏地に房付けされる、請求項
12に記載の人工芝。
【請求項14】
前記パイル繊維が前記裏地と共に織られる、請求項
12に記載の人工芝。
【請求項15】
前記パイル繊維が異なる断面形状を有するさらなるパイル繊維と混合される、請求項
12~請求項
14のうちのいずれか一項に記載の人工芝。
【請求項16】
前記さらなるパイル繊維が、前記パイル繊維よりも短く、且つ前記パイル繊維を直立位置に支持するのに役立つ充填繊維を備える、請求項
15に記載の人工芝。
【請求項17】
前記繊維の間にある量の充填物をさらに備える、請求項
12~請求項
16のうちのいずれか一項に記載の人工芝。
【請求項18】
前記パイル繊維が、4cmを超え
る、請求項
12~請求項
17のうちのいずれか一項に記載の人工芝。
【請求項19】
前記パイル繊維が、10mmを超え
る繊維の長さにわたって前記裏地に固定される、請求項
12~請求項
18のうちのいずれか一項に記載の人工芝。
【請求項20】
請求項
12~請求項
19のうちのいずれかに記載の人工芝を備える、スポーツ競技場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、人工芝の製造においてパイルとして使用する繊維、及びそのような繊維を備える人工芝に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 人工芝は、様々なスポーツのための競技用地表面として以前に増して着実により認められるようになってきている。それはまた、造園目的にも益々使用されてきている。どちらの場合も、それが受け入れられているのは技術の着実な進歩のおかげであり得、その技術の進歩により、人工芝は見た目上も機能的にもより実際の芝生に近づいており、またこのことが好ましい寿命の間中当てはまり続けることが保証される。
【0003】
[0003] 天然芝と人工芝との間の1つの大きな違いは、前者は成長し若返るのに対して後者はそうでないという事実であることは理解されるであろう。人工芝はとりわけ、集中的に使用されるときに、極めて復元力があり且つ摩耗及び損傷に強いものでなくてはならはい。一方、それはまた、天然芝と同じようにそこで競技するのが快適であるべきである。これらの相反する要件は、人工芝システム及びそれらの構成要素の設計者にとって常に問題となる点である。
【0004】
[0004] 人工芝システムへの参照は、競技可能又は使用可能な地表面を作り出すために共に働くいくつかの個々の構成要素を含み得る。これらは、基層、不透水箔、排水層、衝撃パッド、芝生パイルが固定される裏地層、人工パイル自体、及び充填物を含み得る。本発明は、特に人工芝生の直立したパイルを形成する繊維を対象としているが、しかしこれらの繊維が他の構成要素とも互いに影響し合う及び相互作用することは理解されるだろう。
【0005】
[0005] カーペット状構造のパイルを形成するための繊維は、いくつかの異なる形態で存在し得ることにもまた留意されたい。伝統的なカーペットは、綿又は合繊糸の撚り合わされた繊維を使用し、個々のフィラメントが一緒に撚り合わされて単一のパイル繊維を形成し、いくつかの繊維がまとめて束ねられて裏地へと織り上げられるか又は房付けされたものである。人工芝生の文脈では、フィブリル化されたテープ製品が使用されてきた。これらは、箔を押し出し、箔を続いてテープへと裂き、それを次いで特定のパターンでフィブリル化することによって製造される。フィブリル化により、人工芝のピッチとして設置された後での個々の人工芝繊維の自然な外見と感触が改善する。繊維のさらなるカテゴリはモノフィラメント繊維として知られている。この用語は一般に、繊維に所望の断面形状を与えるダイヘッドから押し出された、個々に押し出されたフィラメントを指すことを意図したものである。このような方法で押し出すことによって、モノフィラメントが明確な目的のためにデザインされることが可能となり、それによって対象とする機能のための断面形状が技術的に設計される。
【0006】
[0006] 人工芝モノフィラメントの1つの例は、WO2005/005731に開示されている、Royal Ten Cate製のEvolution(登録商標)繊維である。この湾曲した繊維は、より平面的な構造の同様の重量の繊維に比べて復元力が著しく改善されている。残念ながら復元力の向上は耐久性を犠牲にして得られるものであり、長期使用試験によりこの繊維は裂けや亀裂を生じやすいことが示されている。
【0007】
[0007] 事実上ダイヤモンド形の断面を有する別のモノフィラメント繊維がUS6432505に記載されており、それは、有用な柔軟性及び摩耗特性を保ちつつも亀裂及びフィブリル化への耐性が増強されている。この形態のダイヤモンド形の繊維を有する芝は、Slide Max(登録商標)という名でRoyal Ten Cateから利用可能である。この繊維は非常に長持ちすることが示されているのだが、その復元力はEvolution(登録商標)の復元力に比べて著しく低く、且つ時間と共にこれがさらに悪化し得る。復元力は、例えばFIFA Handbook of Test Methods V2.4に従って測定されるボールロール性能に反映され得る。繰り返し変形した後に繊維が直立した状態を保つ機能の点でもそれはまた示され、これはある期間集中的に使用された後の芝の外見に影響を与える。
【0008】
[0008] 繊維開発は複雑なプロセスである。剛性及び引っ張り強度のような繊維の直接的な工学的特性は、材料のデータ及び構造式に基づいてモデル化及び最適化され得る。上述したFIFA試験方式に従って試験されたもののような二次特性は、より予測困難であり、大規模な試験によってのみ決定されることができる。製織又は房付け(tufting)性能及び製造機能のような他の特性も同じように複雑であり、一般的には実際に実施してみて確立せざるを得ない。また、人工芝の全体的性能をさらに調整するために繊維は混合され得る。
【0009】
[0009] 繊維の引抜きは、まさにそのような、最終製品の容認に非常に重要な製造関連特性の例である。フィブリル化されたポリマーテープは、撚り合わされた繊維に比べて滑りやすいことがよく知られており、且つ織る又は房付けする際に低い繊維引抜き値を有する傾向がある。これらの値を改善するためには、より堅い織りやコーティングのような追加的な対策が必要であり得る。モノフィラメントは一般に織るにはテープより堅く、しかしまた織物又は裏地に必ずしも容易に固定されるわけでもない。
【0010】
[0010] 人工芝で使用するための既存の繊維の特性を改良した繊維を提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0011】
[0011] 本発明によれば、人工芝に使用するための繊維が提供され、この繊維は繊維の側端部で交わる第1の面と第2の面を画定する細長い断面形状を有し、これら第1の及び第2の面が、この断面形状が鏡映対称性を有しない2回回転対称であるように互いに対してオフセットされたそれぞれの第1の及び第2の隆起部を有する。2回回転対称性によるものであるとは、それの中心を軸として180°回転したときに形状が同一であることを意味する。鏡映対称性がないとは、その形状が、その形状自身を鏡に映すことができる線を有しないことを意味する。(非菱形)平行四辺形が、そのような鏡映対称性を有しない2回回転対称形状の例である。本発明の繊維の断面形状はゆえに平行四辺形内に適合し得る。側端部の先端及び第1の及び第2の隆起部の先端もまた平行四辺形を画定し得る。
【0012】
[0012] 結果的な繊維は、拡張試験及び外観検査が示すように、同様の寸法の対称な繊維に対して改善された復元力を示した。理論に縛られることを望むのではないが、これは本発明の繊維が対称な繊維とは潰れ方が異なるという事実によるものと考えられる。特に、繰り返し同じ位置で曲がる傾向が見られるようである対称な繊維とは対照的に、繊維の非対称性により繊維が曲がる箇所がサイクルごとに変化する。
【0013】
[0013] 繊維は、平行四辺形の枠(envelope)にぴったり一致し得る。しかしながらより好ましくは、第1の及び第2の面は凹部を有する。言い換えれば、繊維の外面は、対応する平行四辺形の外面に対して内側にずれている可能性がある。結果的な繊維は、比較的より少ない材料を有し、側端部を結ぶ中心線についてのより低い断面二次モーメント(second moment of area)を有する。第1の及び第2の面は凸部を有し得るが、第1の及び第2の面のいずれの部分も中心線を越えないことが好ましい。
【0014】
[0014] 第1の及び第2の面の各々は隆起部と最も遠い側端部との間の部分である主面と、隆起部とより近い側端部との間の部分である副面とを有することに留意されたい。副面及び主面の両方は凹面であり得る。代替的には、主面のみが凹面であり得、一方で副面は概して平らであり得るか若しくはほんのわずかに凸面である、又は逆もまた同様である。面の形状は、裏地へのそれらの取り付けにおいて繊維が結合する方法に影響を及ぼす。これはまた繊維引抜き強度、そうでなければ房ロック(tuft-lock)と呼ばれるもの、にも影響を与えることができる。平らな面は、繊維がより容易に互いを越えて及び横切って滑らかに動くことを可能にすると考えらており、現在開示している本願の凹面表面は、本発明の繊維で経験される改善された引抜き値のための基礎であると考えられる。
【0015】
[0015] 繊維は、第1の及び第2の面に対して平滑な表面を有し得る。好ましい実施形態では、第1の及び第2の面には波形が設けられ得る。この文脈では、波形という用語は、繊維の長手方向に延びる溝、隆起部、曲線、波及び他の起伏を含むことを意図している。これらの波形は、反射光の拡散を改善することによって、繊維の外見を光沢が減ってより芝生に見えるようにするのに役立つことができる。波形のスケールは、それぞれの第1の及び第2の面上の第1の及び第2の隆起部のスケールよりも小さくなることは理解されることになる。一実施形態では、各面は、中心線からの最大距離を規定する単一の隆起部を除いて5~10個の波形を有する。これらの波形は、好ましくは連続した、すなわち平滑な曲線であるが、スカラップ形状の曲線もまた考えられ得る。側端部はまた好ましくは丸みを帯びており、少なくとも0.05mmの曲率半径を有し得る。第1の及び第2の隆起部もまた好ましくは、少なくとも0.1mmの曲率半径で丸みを帯びている。
【0016】
[0016] 上に示されたように、繊維の断面は細長い、つまりそれが、側端部の間の方向において、この方向を横断するいかなる点で測定したときよりも長いことを意味する。繊維の実際の寸法は、それの対象とする用途に従って変わり得る。スポーツで使用するためには、側端部の間に延びる中心線は、0.5mm~2mmの間、好ましくは1.0mm~1.5mmの間、最も好ましくは約1.25mmの長さを有し得る。ここで中心線に言及しているが、これは必ずしもそれぞれの側面の間の中間点の軌跡として規定される中線である必要はないことに留意されたい。本目的のために、中心線は直線であり、それは繊維の非対称形状に起因して中線から外れ得る。造園目的のためには異なる繊維寸法が適用可能であり得る。
【0017】
[0017] 細長い断面形状の結果として、側端部の間に延びる中心線に対して横方向に測定された繊維の最大の太さと中心線の長さとの比は、0.25~0.6の間、好ましくは0.3~0.4の間であり得る。この最大の太さのポイントは、一般に第1の隆起部と第2の隆起部との間又は第1の隆起部と第2の隆起部における位置に対応することになる。最大の太さは、0.2mm~0.6mmの間で変わり得、好ましくは0.3mm~0.5mmの間になるであろう。太さは、断面内に適合することができる最大直径の円に基づいてFIFA要件に従って決定される。実際の実施形態は、太さ約0.38mm及び中心線の長さ約1.2mmを有する。
【0018】
[0018] これらの繊維について断面二次モーメントが計算され得、それは0.0010mm4~0.0080mm4の範囲にあり得、一般に0.0040mm4を下回り、より一般には0.0020mm4を下回る。好ましい実施形態では、断面二次モーメントは、約0.0015mm4である。
【0019】
[0019] 繊維技術においては慣例であるが、繊維の重量は10000メートルの繊維のグラム単位の重量を表すdtex値によって定義され得る。この場合、スポーツ用途の場合、繊維は1500~3000の間、好ましくは1800~2500の間のdtex値、特に約2000の値を有し得る。造園で使用するためには、800~1500のdtex値のより軽い繊維が好ましい可能性がある。
【0020】
[0020] 第1の及び第2の隆起部は、所望の屈曲性能及び非対称性を達成するために適した任意の量だけオフセットされ得る。最小のオフセットの場合には、繊維は上で言及したSlide Max(登録商標)ダイヤモンド形状繊維と非常に類似した方法で機能することは理解されることになる。隆起部が繊維の側端部に近づくにつれて、その性能は、球根状の端部を有する平らな繊維の性能に近づき得る。隆起部が中心線の長さの約半分の距離だけ互いにオフセットされた点で最大の非対称性が達成され得る。この文脈では、オフセットとは中心線に沿って測定された隆起部の間の距離を指すことを意図したものである。これは、隆起部の各々が、中心線の長さの4分の1だけ中心線の中間点からオフセットされることを意味する。最も好ましくは、より低い非対称性が望ましく、隆起部は好ましくは0.05×中心線の長さよりも長いが、0.4×中心線の長さよりも短い、好ましくは0.1×中心線の長さ~0.2×中心線の長さの間の範囲の距離だけ各々からオフセットされる。
【0021】
[0021] 当業者は、そのような繊維が通常は共押出しプロセスの従来の押出しにおいて個々のモノフィラメントとして押し出されることを理解するだろう。しかしながら、造型、コーティング、多繊維押出し等を含む任意の他の好適な手順又は手順の組合せが適用され得ることを排除するものではない。好ましくは、繊維は2~5の間、好ましくは3~4の間の延伸比で押出し後に延伸される。延伸(Drawing down)は、ポリマーを方向付けして最終繊維の機械的特性を改善する働きをし、それにより引っ張り強度及び係数(modulus)のような特性は供給された初期ポリマー材料のものとは異なる。
【0022】
[0022] 繊維は、任意の好適なポリマー材料、特に繊維押出しに適したもので製造され得る。好適なポリマーは、ポリアミド(PA-6、PA-6,6)、ポリエステル(PET、PTT、PBT、PLA、PHB)、ポリプロピレン(ホモポリマー、コポリマー;レギュラー及びメタロセングレード)、ポチエチレン(HDPE、LDPE、LLDPE、レギュラー[LLDPE]及びメタロセン[mLLDPE]グレード)、ポリオレフィンブロックコポリマー(OBC)及び上記のブレンド又は共押出しを含むが、それらに限定されるわけではない。
【0023】
[0023] 好ましい材料は、ポリプロピレン(ホモポリマー、コポリマー;レギュラー及びメタロセングレード);ポチエチレン(HDPE、LDPE、LLDPE、レギュラー及びメタロセングレード)、ポリオレフィンブロックコポリマー(OBC)及びそれらのブレンドであり、それによって、ポチエチレン(HDPE、LDPE、LLDPE、レギュラー及びメタロセングレード)及びポリオレフィンブロックコポリマー(OBC)並びにそれらのブレンドが最も好ましい。
【0024】
[0024] 共押出しされた繊維もまた、好ましくはコア/クラッディング又は内側の/外側の共押出しにおいて使用され得る。一実施形態では、繊維は内側mLLDPE又はmLLDPE+OBC及び外側LLDPEを備え得る。しかしながら当業者は、繊維特性をさらに調整するために適用可能であり得る材料の多くの代替的な組合せを承知することになる。
【0025】
[0025] 本発明はまた、裏地に留められた、上述したような又は以下に説明されるような直立したパイル繊維を備える人工芝に関する。繊維は、裏地に房付けされ得るか、裏地と共に織られ得る。さらに、パイルは全ての繊維が同一であるという点で均一であり得、繊維は異なる断面形状を有するさらなるパイル繊維と混合され得る。これは、本発明による他の非対称な繊維又はそれら自体は本発明によるものではない他の繊維を含み得る。
【0026】
[0026] さらに、パイル繊維は充填繊維を備え得、これらはパイル繊維よりも短く、パイル繊維を直立位置に支持するのに役立つ。この文脈では、充填繊維が使用位置において高さがより低いことを意味する。それらは言うまでもなくカール又は捲縮されている可能性があり、より長い初期長さを有し得る。
【0027】
[0027] 人工芝はさらに繊維の間にある量の充填物を備え得る。これは、ゴム、コルク、砂及びビーズ充填物に限定されるわけではないがそれらを含む、任意の好適な充填物であり得る。
【0028】
[0028] 本発明は、様々な用途のための芝に適用可能であり得るが、フットボール、ラグビー及びホッケーのようなスポーツが最も適している。これは主に要求されるパイルの高さを決定することになる。パイル繊維は、4cmを超える、好ましくは5cmを超える、及びオプションとして6cm~7cmの間のパイルの高さを有し得る。パイルはまた、10mmを超える、さらには15mmを超える又は20mmを超える距離にわたって裏地に固定され得る。パイルの固定は、パイル繊維がいくつかの横糸を通過するマルチW織り(multiple W-weave)によるものであり得る。同様の効果は房付けでも達成され得る。芝は、パイル繊維要素の両端が直立しており中間部分が裏地に結合された向かい合わせの構成で織られ得る。
【0029】
[0029] 本発明は、添付の図面を参照して以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】[0030]
図1は、本発明による繊維の透視図を示す。
【
図3】[0032]
図3は、
図1の繊維を組み込んだ人工芝を示す。
【
図4】[0033]
図4は、本発明の第2の実施形態による繊維の断面図を示す。
【実施形態の説明】
【0031】
[0034]
図1は、本発明による繊維1の拡大透視図を示す。繊維1は、細長く、且つ裏地(この図には示されていない)に取り付けられ得、それによりそれが直立位置に維持される。繊維1は、第1の面2の下方へ延びる第1の隆起部6と、第2の面4の下方へ延びる第2の隆起部8とを有する第1の面2及び第2の面4を有する。面2、4にはまた複数の波形10も設けられ、そのうちこの図では第2の面4の下方に延びる波形10を見ることができる。
【0032】
[0035] 繊維1は、ASTM D882に従ってセカント係数MD(1%セカント)111MPaを有するメタロセンエチレン-ヘキサンコポリマーの押出しであり、延伸比4に従う。
【0033】
[0036]
図2は、
図1の繊維1を断面図で示す。押出しによる製造方法に起因して、繊維は、繊維の長さに沿ったあらゆる断面において事実上同一であることは理解されることになる。
【0034】
[0037]
図2によれば、第1の及び第2の面2、4は、左側端部12と右側端部14の間に延在する。左右の側端部12、14を結ぶ中心線CLが示される。中心線CLは中間点Mを有する。本発明によれば、第1の隆起部6は中間点Mから離れるように中心線CLに沿って第2の隆起部8からオフセットされている。言い換えれば、第1の隆起部6は左側端部12により近く、第2の隆起部8は右側端部14により近い。第1の面2の、第1の隆起部6と右側端部14との間の部分は主面20として識別され、第1の面2の、第1の隆起部6と左側端部12との間の部分は、副面22として識別される。主面20及び副面22の両方は一般に凹状であり、一方で第1の隆起部6は凸状である。
【0035】
[0038] 繊維1の断面は、それが2回回転対称性を有するようになっている。これは、第1の面2が中間点Mを軸として180°回転すると第2の面4に丁度一致することを意味する。第1の隆起部6と第2の隆起部8との間のオフセットにより、中心線CLについて鏡映対称性は存在しない、又はいかなる他の線についても鏡映対称性は存在しない。
【0036】
[0039] 例示された実施形態では、中心線CLは1.2mmの長さLを有し、第1の隆起部6と第2の隆起部8との間のオフセットOSは0.1mmである。中心線を横断する最も広い位置で測定された繊維1の太さTは、約0.38mmである。
【0037】
[0040] 第1の及び第2の隆起部6、8に加えて、繊維1の第1の及び第2の面2、4上の波形10もまたこの図に見ることができる。主面20には合計4つの波形10があり、副面22には3つの波形10がある。さらに、左側端部12及び右側端部14は、両方とも丸みを帯びている。裂けについての問題を避けるために、波形10は、輪郭の急な変化を伴うことなく連続した曲線に滑らかに丸められる。
【0038】
[0041]
図3は、人工芝26を形成するために裏地24に房付けされた複数の繊維1を示す。以下に説明されるように芝を比較試験で使用した。
【0039】
[実施例]
実施例1
[0042] 束dtexが12000の、6本の繊維が集まった複数の束を使用して、
図3による1メートル×3.70メートルの寸法の人工芝のサンプルを準備した。パイルの高さは60mmあり、裏地はRoyal Ten Cate製のダブル100%PP Thiobac、ブラック、U.V.-安定化、重量約222gr/m
2であった。房は、長さ方向に10cmあたり13.5房の間隔で5/8ゲージ(15mm)であった。サンプルはコンクリート基礎上に取り付けられ、5mmの砂充填物の第1の安定化層、次いで粒径0.7~2.0mmのGenan微細SBRを含む35mmの層の性能充填物を充填し、20mmの自由パイル高を残した。
【0040】
実施例2
[0043] 1メートル×3.70メートルの寸法のRoyal Ten Cate製のSlide MAX XQ60の芝サンプルを、例1と同様の方式で同一の充填物を使用して取り付けた。芝は例1と同じdtex、房間隔及びパイル高を有するものであった。
【0041】
実施例3
[0044] 1メートル×3.70メートルの寸法の、例1のようなdtex、房間隔及びパイル高を有するRoyal Ten Cate製のEvolution(登録商標)繊維を使用した芝サンプルが用意された。サンプルは同一の充填物を使用して例1と同様の方式で取り付けられた。
【0042】
[0045] 例1~3の人工芝サンプルは、Lisport XL試験機を使用して反復的な試験を受けた。Lisport(登録商標)XLは、長年の使用を経たスポーツ競技場の摩耗シミュレーションを現実的に再現する、新世代の摩耗シミュレーションマシンである。摩耗パターンは、フットボールスタッド(クリート)の圧縮応力及びフラットソールのスポーツシューズによって生じる摩損によって特徴付けられる。それは、現実的なシミュレーションパターンを生み出す手段として業界で広く採用されてきた。
【0043】
[0046] 試験サンプルは、3000サイクルごとに断続的にチェックしながら合計12000サイクル試験された。繊維の亀裂、裂け、及び復元力が、チェックのたびに測定され記録された。チェックのプロトコルは以下の通りであった。
【0044】
[亀裂]
-亀裂は、繊維の最上部か又はそれの全長内かのいずれかにおける、繊維に開いた開口と定義される。
-試験部位からランダムに10本の繊維が選択された。
-亀裂を示さなかった各繊維に印が付けられた。
【0045】
[裂け]
-裂けは、繊維の最上部から充填物層へと延びる亀裂と定義される。
-試験部位からランダムに10本の繊維が選択された。
-裂けを示さなかった各繊維に印が付けられた。
【0046】
[復元力]
-対初期パイル高比として繊維の90%の最上部の位置が測定される。
-初期パイル高の100%には10ポイントが与えられる。
-90%には9ポイントが与えられる、等である。
【0047】
[結果]
[0047] 上述したような試験サンプルの量的見直しに基づいて、そして12000サイクル後に、実施例の繊維は、以下のように採点された。
-実施例1による繊維は、亀裂については8、裂けについては10、復元力については7という値で採点された。
-実施例2の繊維は、亀裂については10、裂けについては10、復元力については4の値で採点された。
-実施例3の繊維は、亀裂については4、裂けについては1、復元力については1の値で採点された。
【0048】
[0048] サンプルはまた視覚的に検査されたのだが、すると実施例1の芝は、他のサンプルに比べてより直立したままであったことが明らかであった。実施例3の芝は特に平たくなっていた。
【0049】
[0049]
図4は、本発明による繊維101の第2の実施形態を示し、そこでは第1の実施形態と同様の要素に100で始まる同様の参照符号が付されている。
【0050】
[0050] 第2の実施形態の繊維101は、第1の実施形態のそれと事実上同一であるが、主面120及び副面122の曲率が異なる。この実施形態によれば、主面120は事実上凹状であり、一方で副面122は、大体真っすぐである。結果的な繊維101は、第1の実施形態の繊維1に比べて非対称性が大きい。
【0051】
[0051] このように、本発明は、上で説明されたある特定の実施形態を参照して説明された。これらの実施形態には、当業者によく知られた様々な修正及び代替形態が容易に適用され得ることは認識されるだろう。特に、
図1及び
図4の繊維は波形なしで提供され得、及び隆起部の位置及びサイズがそれに従って調整され得る。さらに、真っすぐな繊維が説明されたが、繊維は、押出し後処理を適切に調整することによって、撚った又はらせん状の繊維として形成され得る。
【0052】
[0052] 本発明の精神及び適用範囲から逸脱することなく、ここに説明された構造及び技法に対して、上述したものに加えて多くの修正が成され得る。したがって、特定の実施形態が説明されたが、これらは単なる例示にすぎず、本発明の適用範囲を限定するものではない。
ここに、出願当初の特許請求の範囲の記載事項を付記する。
[1] 人工芝で使用するための繊維であって、前記繊維は、前記繊維の側端部で交わる第1の面及び第2の面を画定する細長い断面形状を有し、前記第1の及び第2の面は、前記断面形状が鏡映対称性を有しない2回回転対称であるように互いに対してオフセットされたそれぞれの第1の及び第2の隆起部を有する、繊維。
[2] 前記第1の及び第2の面が凹部を有する、[1]に記載の繊維。
[3] 前記第1の及び第2の面が波形を有する、[1]又は[2]に記載の繊維。
[4] 前記側端部の間に延びる中心線が0.5mm~2mmの間の、好ましくは1.0mm~1.5mmの間の、最も好ましくは約1.25mmの長さを有する、[1]~[3]のうちのいずれか一項に記載の繊維。
[5] 前記側端部の間に延びる中心線に対して横方向に測定された前記繊維の最大の太さと前記中心線の長さとの比が0.25~0.6の間、好ましくは0.3~0.4の間である、[1]~[4]のうちのいずれか一項に記載の繊維。
[6] 前記繊維が、1500~3000の間の、好ましくは2000~2500の間のdtex値を有する、[1]~[5]のうちのいずれか一項に記載の繊維。
[7] 前記側端部が丸みを帯びており、少なくとも0.05mmの曲率半径を有する、[1]~[6]のうちのいずれか一項に記載の繊維。
[8] 前記第1の及び第2の隆起部が丸みを帯びており、少なくとも0.1mmの曲率半径を有する、[1]~[7]のうちのいずれか一項に記載の繊維。
[9] 前記第1の及び第2の隆起部が前記側端部の間に延びる中心線に沿って、0.05×前記中心線の長さよりも長いが0.4×前記中心線の長さよりも短い、好ましくは0.1×前記中心線の長さ~0.2×前記中心線の長さの間である距離だけ互いにオフセットされる、[1]~[8]のうちのいずれか一項に記載の繊維。
[10] 前記繊維が、押し出されたモノフィラメント、好ましくは押し出された及び延伸されたモノフィラメントである、[1]~[9]のうちのいずれか一項に記載の繊維。
[11] 前記繊維が、ポリアミド(PA-6、PA-6,6)、ポリエステル(PET、PTT、PBT、PLA、PHB)、ポリプロピレン(ホモポリマー、コポリマー;レギュラー及びメタロセングレード)、ポチエチレン(HDPE、LDPE、LLDPE、レギュラー[LLDPE]及びメタロセン[mLLDPE]グレード)、ポリオレフィンブロックコポリマー(OBC)並びにそれらのブレンド及び共押し出しから成る群から選択されるポリマーから成る、[1]~[10]のうちのいずれか一項に記載の繊維。
[12] 前記繊維の最大の太さが、0.2mm~0.6mmの間、好ましくは0.3mm~0.5mmの間にある、[1]~[11]のうちのいずれか一項に記載の繊維。
[13] 裏地に留められた、[1]~[12]のうちのいずれかに記載の直立したパイル繊維を備える人工芝。
[14] 前記パイル繊維が前記裏地に房付けされる、[13]に記載の人工芝。
[15] 前記パイル繊維が前記裏地と共に織られる、[13]に記載の人工芝。
[16] 前記パイル繊維が異なる断面形状を有するさらなるパイル繊維と混合される、[13]~[15]のうちのいずれか一項に記載の人工芝。
[17] 前記さらなるパイル繊維が、前記パイル繊維よりも短く、且つ前記パイル繊維を直立位置に支持するのに役立つ充填繊維を備える、[16]に記載の人工芝。
[18] 前記繊維の間にある量の充填物をさらに備える、[13]~[17]のうちのいずれか一項に記載の人工芝。
[19] 前記パイル繊維が、4cmを超える、好ましくは5cmを超える、及びオプションとして6cm~7cmの間の、パイルの高さを有する、[13]~[18]のうちのいずれか一項に記載の人工芝。
[20] 前記パイル繊維が、10mmを超える、好ましくは少なくとも15mmの、及び好ましくは少なくとも20mmの繊維の長さにわたって前記裏地に固定される、[13]~[19]のうちのいずれか一項に記載の人工芝。
[21] [13]~[20]のうちのいずれかに記載の人工芝を備える、スポーツ競技場。