(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】複数のシールを備える水素貯蔵タンク
(51)【国際特許分類】
F17C 11/00 20060101AFI20220516BHJP
【FI】
F17C11/00 C
(21)【出願番号】P 2019530184
(86)(22)【出願日】2017-12-05
(86)【国際出願番号】 FR2017053381
(87)【国際公開番号】W WO2018104644
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-11-24
(32)【優先日】2016-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・ジリア
(72)【発明者】
【氏名】アルバン・シェーズ
(72)【発明者】
【氏名】マノン・エリー
(72)【発明者】
【氏名】マリーヌ・ポンチュー
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-132562(JP,A)
【文献】実開昭54-076452(JP,U)
【文献】国際公開第2015/091556(WO,A1)
【文献】米国特許第06432176(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素貯蔵材料(2)における水素の吸収による水素の貯蔵のための容器(1)であって、
両方の長手方向端において閉じられる、長手方向軸(X)を伴う外殻(3)と、
複数の水素通過オリフィス(10)を備える、前記長手方向軸(X)に沿って延びる水素供給および回収管(4)と、
前記長手方向軸(X)に沿う複数の分離要素(5)のスタックであって、各々の分離要素(5)は、前記水素供給および回収管(4)の周りに前記分離要素(5)を搭載するための通路(6)を備え、各々の分離要素(5)は、前記水素貯蔵材料(2)の複数の床を形成するように、前記水素貯蔵材料(2)を受け入れる前記長手方向軸(X)に対して略垂直な基部を形成する、複数の分離要素(5)のスタックと
を備える容器(1)において、
前記分離要素(5)の最大横断寸法(Td)が、前記水素供給および回収管(4)、前記分離要素(5)、および前記水素貯蔵材料(2)が位置付けられる前記外殻(3)の内部容積(V)の最大横断寸法(Tv)より小さいことと、
前記容器(1)は複数のシール(7)を備え、各々のシール(7)は前記分離要素(5)と関連付けられ、各々のシール(7)は、最大横断寸法(Td、Tv)同士における差のため、対応する前記分離要素(5)の周辺全体にわたって、前記外殻(3)と接触して、前記分離要素(5)と前記外殻(3)との間に形成される空間(E)において延びることと、
各々のシール(7)は、前記分離要素(5)の長手方向の縁(9)と接触して長手方向で延びる主要部分(8)を備えることと、
各々のシール(7)は、前記シール(7)の前記主要部分(8)から、対応する前記分離要素(5)のいずれかの側において前記水素供給および回収管(4)に向かって横断方向に延びる第1の部分(7a)および第2の部分(7b)をさらに備えることと
を特徴とする容器。
【請求項2】
各々のシール(7)は、対応する前記分離要素(5)に固定されることを特徴とする、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
各々のシール(7)は、前記外殻(3)と接触している前記シール(7)の前記主要部分(8)から前記外殻(3)に向けて横断方向に延びる縁部を形成する第3の部分(7c)を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の容器。
【請求項4】
前記シール(7)の前記第3の部分(7c)は、前記第1の部分(7a)および/または前記第2の部分(7b)と一列になって略横断方向に、前記シール(7)の前記主要部分(8)から前記外殻(3)に向けて横断方向に延びることを特徴とする、請求項3に記載の容器。
【請求項5】
前記シール(7)の前記第3の部分(7c)は、前記第1の部分(7a)と前記第2の部分(7b)との間の略中間における前記シール(7)の前記主要部分(8)から前記外殻(3)に向けて横断方向に延びることを特徴とする、請求項3に記載の容器。
【請求項6】
各々のシール(7)は、前記外殻(3)と接触している前記シール(7)の前記主要部分(8)から前記外殻(3)に向けて横断方向に各々延びる縁部を形成する第3の部分(7c)および縁部を形成する第4の部分(7d)を備え、
前記第3の部分(7c)は前記第1の部分(7a)と一列になって略横断方向に延び、
前記第4の部分(7d)は前記第2の部分(7b)と一列になって略横断方向に延びることを特徴とする、請求項3または4に記載の容器。
【請求項7】
各々の分離要素(5)は円板の形態であることと、各々のシール(7)は、関連する前記円板の周りに配置される環体の形態であることとを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の容器。
【請求項8】
各々のシール(7)の最大横断寸法(Tj)が前記外殻(3)の内部容積(V)の最大横断寸法(Tv)より大きいことを特徴とする、請求項3から7のいずれか一項に記載の容器。
【請求項9】
前記長手方向軸(X)に沿う2つの連続する分離要素(5)の間の距離(EL)が前記外殻(3)の内部容積(V)の最大横断寸法(Tv)より小さいことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の容器。
【請求項10】
前記水素供給および回収管(4)は、2つの連続する分離要素(5)の間に形成される前記容器(1)の各々の段において少なくとも1つの水素通過オリフィス(10)を備えることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の容器。
【請求項11】
前記水素供給および回収管(4)は、前記水素供給および回収管(4)に対して配置される複数のフィルタ(11)を備え、
各々のフィルタ(11)は少なくとも水素通過オリフィス(10)を向いており、
前記水素供給および回収管(4)は、具体的には、2つの連続する分離要素(5)の間に形成される前記容器(1)の各々の段において前記水素供給および回収管(4)に形成される少なくとも1つの水素通過オリフィス(10)に対して配置される少なくとも1つのフィルタ(11)を備えることを特徴とする、請求項10に記載の容器。
【請求項12】
各々のフィルタ(11)は、留め付け手段(12)、具体的には、留め付け環(12)によって、前記水素供給および回収管(4)に対して保持されることを特徴とする、請求項11に記載の容器。
【請求項13】
前記水素貯蔵材料(2)は、水素化物、具体的には、金属の水素化物を備えることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の容器。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の水素貯蔵容器(1)を製造するための方法であって、
水素貯蔵材料(2)を前記容器(1)の外殻(3)の底に任意選択で配置するステップと、
各々の分離要素(5)に前記水素貯蔵材料(2)を配置するステップと
を含み、
組立体が、前記水素供給および回収管(4)と、前記分離要素(5)と、シール(7)とが、前記水素貯蔵材料(2)の配置の前に搭載されることで形成され、
各々の前記分離要素(5)は、具体的には、前記分離要素(5)への前記水素貯蔵材料(2)の配置の終わりに前記外殻(3)へと導入されることにおいて特徴付けられる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化物形態で、具体的には、金属水素化物で水素を貯蔵するための容器の一般的な分野に関する。
【0002】
水素は、これまで数年にわたって開発されてきた代替の貯蔵可能エネルギー担体のうちの1つである。水素は、例えば天然ガスまたは他の炭化水素から、様々な方法で得ることができ、具体的には、「高温電解」(HTE:High Temperature Electrolysis)および「高温水蒸気電解」(HTSE:High Temperature Steam Electrolysis)という用語でそれぞれ呼ばれている高温での水の電気分解、特には、高温での蒸気の電気分解を用いて生成され得る。さらに、水素は、固体酸化物燃料電池(通常は「solid oxide fuel cells」を表す頭文字SOFCによって呼ばれている)、または、プロトン交換膜燃料電池(もしくは、「proton exchange membranes」を表すPEM)におけるエネルギー源として有利に使用され得る。
【0003】
本発明は、産業の様々な分野において有用性を見出し、具体的には、例えば水素サービスステーションのためといった、水素化物を用いる水素ガス圧縮機のためなど、水素圧縮に対する要求が存在する場合である。また、本発明は、据付式と搭載式との両方の水素貯蔵解決策に適用される。
【0004】
したがって、本発明は、例えば燃料電池または熱機関、例えばボート、潜水艦、自動車、バス、大形トラック、建設現場機器、二輪車などの輸送手段のためといった、水素の搭載貯蔵のために使用できる。
【0005】
さらに、本発明は、携帯電話、ポータブルコンピュータなどの携帯電子機器のための電池など、輸送可能なエネルギー供給部の分野で使用できる。
【0006】
本発明は、例えば、発電機のためなど、大量の水素の据え付けでの貯蔵のために、または、風力タービン、太陽電池パネル、地熱エネルギーなどから来る電気による水の電気分解によって大量に生成される水素の貯蔵のために、使用されてもよい。
【0007】
最後に、本発明は、例えば、炭化水素の改質、または、水素を得るための他の方法(光触媒反応、生物学的、地質学的など)から来る水素の任意の他の供給源を貯蔵することを可能にすることもできる。
【0008】
したがって、本発明は、分離要素と関連する複数のシールを備える水素貯蔵材料における水素の吸収による水素の貯蔵のための容器と、関連する製造方法とを提案する。
【背景技術】
【0009】
水素化物における水素の貯蔵は発熱反応であり、つまりは熱を放出し、一方で水素の放出は吸熱反応であり、つまりは熱を吸収する。
【0010】
水素の貯蔵および放出の分野における相当の制約が、例えば固体酸化物燃料電池(SOFC)または高温水電気分解(HTWE)のものといった熱動作モードを、最良に管理することができる。
【0011】
したがって、水素容器からの水素の脱離の吸熱および発熱の態様と、水素の吸収の吸熱および発熱の態様とをそれぞれ管理できるようにするために、先行技術は、鉛直の円筒の形態での水素化物容器を設計することを教示している。
【0012】
しかしながら、水素化物容器に加えられる機械的応力を最良に管理することができるようにするために、このような鉛直の円筒の段階的な設計を採用することが、水素化物の過度に深い床を有することを回避するために良く知られている。別の言い方をすれば、鉛直の円筒の形態での水素化物容器の多くの設計は、互いから鉛直方向で離間されている複数の水素化物床を形成するために、円筒において多くの分離の設置を提供する。
【0013】
これは、鉛直の円筒の底における唯一の水素化物床を提供する技術的解決策が機械的な視点から実行可能ではないためである。水素を吸収および脱離するときの水素化物の「呼吸」の現象、つまり、水素化物の膨張および収縮が、円筒胴部とも称される円筒の壁に大きな応力の出現をもたらす。「Stress on a reaction vessel by the swelling of a hydrogen absorbing alloy」、K. Nasakoら、January 1998、Journal of Alloys and Compounds、264巻、271~276頁の文献に記載されているように、これらの応力は、水素貯蔵容器には受け入れられない材料の弾性限界に到達するまで、吸収/脱離の数と共に増加する。
【0014】
そのため、複数の分離の設置を伴う鉛直の円筒の形態での水素化物容器についての様々な解決策が、先行技術において記載されている。
【0015】
例として、フランス特許出願FR2953820A1は、カップの形態での鉛直方向の分離器の使用を開示しており、円筒胴部と同時に、その分離器は浸透性の水素分配管に嵌めることで等距離に配置される。湾曲した縁が、カップを管または胴に弾性的に留め付けることを可能にする柔軟性を作り出している。装置は、水素化物粉末に往来する水素の容易な通過を確保する一方で、各々のカップにおける水素化物粉末の閉じ込めを確保している。
【0016】
さらに、フランス特許出願FR2996628A1は、中心管において積み重ねられたカップを用いて生成された、鉛直の円筒の形態での水素化物容器の区画室を記載している。中心管は管部分の組み立てから成り、各々の部分は各々のカップの中心オリフィスに搭載されて留め付けられる。各々のカップの間のシールは縁部の変形によって提供される。水素は、中心管が水素に対しては浸透性であるが水素化物粉末に対しては浸透性でないため、各々のカップに到達する。この装置も、水素化物粉末に往来する水素の容易な通過を確保する一方で、各々のカップにおける水素化物粉末の閉じ込めを確保している。
【0017】
また、フランス特許出願FR3014999A1は、重ねられたカップを用いての区画室の実施を教示している。水素は、カップの壁に組み込まれたフィルタを通じて入り、入れ子によるシールとOリングシールとがカップの各々の間に実現される。
【0018】
したがって、分離要素を伴う鉛直の円筒の形態での様々な水素化物容器の設計の解決策は、機械的応力を制限するために、容器の底における水素化物粉末の単一の床が実行可能ではないという原則から始まる先行技術によってすでに構想されてきた。
【0019】
さらに、「A study on wall stresses induced by LaNi5 alloy hydrogen absorption-desorption cycles」、B.Y. Aoら、22 March 2005、Journal of Alloys and Compounds、390巻、122~126頁の文献、「Effects of cyclic hydriding-dehydriding reactions of LaNi5 on the thin-wall deformation of metal hydride storage containers with various configuration」、C-K. Lingら、29 June 2012、Renewable Energy、48巻、404~410頁の文献、および「A tool for modelling the breathing of hydride powder in its container while cyclically absorbing and desorbing hydrogen」、B. Charlasら、8 January 2015、International Journal of Hydrogen Energy、40巻、2283~2294頁の文献は、機械的な制約を制限するために、水素化物粉末の床の深さを制限することが必要であることを実証している。具体的には、水素化物粉末床の深さと水素化物粉末床の幅との間の1未満の割合については、機械的応力は小さいままである。
【0020】
さらに、米国特許出願公開第2012/0160712(A1)号は、水素貯蔵容器の別の例を記載している。組立体のための通路が管において提供されている分離要素が、貯蔵材料を受け入れる。封止要素が分離要素と貯蔵材料との間に配置される。これらの封止要素は、水素化物を支持および分離するための板と封止との間の機能を分けることを提供することを可能にしていない。したがって、封止機能が調節できない。また、ここで提案された解決策は複雑で高価で非効率的である。
【0021】
したがって、具体的には複数の浅い水素化物床への前記水素化物粉末床の鉛直方向の分離を伴う、鉛直の円筒の形態での水素化物容器の設計を向上させることへの要求が、存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【文献】FR2953820A1
【文献】FR2996628A1
【文献】FR3014999A1
【文献】米国特許出願公開第2012/0160712(A1)号
【非特許文献】
【0023】
【文献】「Stress on a reaction vessel by the swelling of a hydrogen absorbing alloy」、K. Nasakoら、January 1998、Journal of Alloys and Compounds、264巻、271~276頁
【文献】「A study on wall stresses induced by LaNi5 alloy hydrogen absorption-desorption cycles」、B.Y. Aoら、22 March 2005、Journal of Alloys and Compounds、390巻、122~126頁
【文献】「Effects of cyclic hydriding-dehydriding reactions of LaNi5 on the thin-wall deformation of metal hydride storage containers with various configuration」、C-K. Lingら、29 June 2012、Renewable Energy、48巻、404~410頁
【文献】「A tool for modelling the breathing of hydride powder in its container while cyclically absorbing and desorbing hydrogen」、B. Charlasら、8 January 2015、International Journal of Hydrogen Energy、40巻、2283~2294頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、前述した要件と、先行技術の実施形態に関する欠点とを少なくとも部分的に改善することである。
【0025】
本発明は、具体的には、組立体を容易に組み立てられるように簡単で実用的である、特には鉛直の円筒の形態での水素化物容器である水素貯蔵容器の新規の設計を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
したがって、本発明の主題は、その態様の1つによれば、水素貯蔵材料における水素の吸収による水素の貯蔵のための容器であって、
- 両方の長手方向端において閉じられる、長手方向軸を伴う外殻と、
- 長手方向軸に沿って延びる水素供給および回収管と、
- 長手方向軸に沿う複数の分離要素のスタックであって、各々の分離要素は、管の周りに分離要素を搭載するための通路を備え、各々の分離要素は、水素貯蔵材料の複数の床を形成するように、水素貯蔵材料を受け入れる長手方向軸に対して略垂直な基部を形成する、複数の分離要素のスタックと
を備える容器である。
【0027】
優先的には、分離要素の最大横断寸法、つまり、長手方向軸に対して垂直な横断軸に沿う最大寸法は、管、分離要素、および水素貯蔵材料が位置付けられる外殻の内部容積の最大横断寸法より小さい。
【0028】
また、ここでも優先的には、容器は複数のシールを備え、各々のシールは分離要素と関連付けられ、各々のシールは、最大横断寸法同士における差のため、対応する分離要素の周辺全体にわたって、外殻と接触して、分離要素と外殻との間に形成される空間において延びる。
【0029】
有利には、各々のシールは、貯蔵材料であって具体的には水素化物粉末が、貯蔵材料の床を通過することができるのを防止するために、別の言い方をすれば、貯蔵容器における下方の段へと通ることができないように、対応する分離要素と外殻との間に必要な封止を提供する。
【0030】
先行技術における解決策と異なり、具体的には、米国特許出願公開第2012/0160712(A1)号における解決策と異なり、本発明は、水素化物の支持および分離の板とシールとの間で機能を分けることを可能にする。これは、封止機能を調節することを可能にする。また、提案された解決策は単純で安価で効率的である。
【0031】
本発明による水素貯蔵容器は、別々で、または、任意の技術的に可能な組み合わせで取られる以下の特長のうちの1つまたは複数をさらに含み得る。
【0032】
優先的には、分離要素同士は、水素供給および回収管に沿って互いから規則正しく離間される。
【0033】
同じく優先的には、外殻は形が円筒形である。また、外殻の長手方向軸は、優先的には外殻が鉛直の円筒の形態となるように、鉛直軸に優先的に対応する。
【0034】
分離要素は、水素供給および回収管において封止して有利に搭載される。分離要素は、具体的には、例えばロウ付け、溶接、接着結合、圧力嵌めなど、管に搭載されて留め付けられ得る。分離要素は、管との一体部品で形成されてもよい。
【0035】
各々のシールは、高温に耐える、例えばViton(登録商標)としても知られているフッ素ゴム(FKM)といったゴムから、例えば製作され得る。より大まかには、各々のシールは高分子材料から製作でき、高分子材料の弾性は組み立てにおいて悪化されないほどであり、高分子材料は、貯蔵材料、具体的には、水素化物の機能性に有害な汚染を引き起こさず、高分子材料は、水素の存在と両立でき、別の言い方をすれば、水素の下で安定性を提供する。
【0036】
各々のシールは、対応する分離要素に有利に固定される。
【0037】
各々のシールは、分離要素の長手方向の縁と接触して長手方向で延びる主要部分を備え得る。
【0038】
各々のシールは、具体的には、シールの主要部分から、対応する分離要素のいずれかの側において管に向かって横断方向に延びる第1の部分および第2の部分を備え得る。
【0039】
また、各々のシールは、外殻と接触しているシールの主要部分から外殻に向けて横断方向に延びる縁部を形成する第3の部分を備え得る。
【0040】
例の実施形態によれば、シールの第3の部分は、第1の部分および/または第2の部分と一列になって略横断方向に、シールの主要部分から外殻に向けて横断方向に延び得る。
【0041】
別の例の実施形態によれば、シールの第3の部分は、第1の部分と第2の部分との間の略中間におけるシールの主要部分から外殻に向けて横断方向に延び得る。この方法では、中心縁部を伴ってシールを形成することが可能である。中心縁部を伴うこのようなシールの利点は、設置される分離要素に対してより良好な平衡を得ることである。
【0042】
各々のシールは、外殻と接触しているシールの主要部分から外殻に向けて横断方向に各々延びる縁部を形成する第3の部分および第4の部分を備え、第3の部分は第1の部分と一列になって略横断方向に延び、第4の部分は第2の部分と一列になって略横断方向に延びる。この方法では、二重の縁部を伴ってシールを形成することが可能である。二重の縁部を伴うこのようなシールの利点は、設置される分離要素に対してより良好な平衡を得ることであり、通過に対して二重の障壁があることによるより良好な封止である。しかしながら、製造コストはより高くなる。
【0043】
シールの縁部は、具体的には、第3の部分および/または第4の部分は、優先的には、外殻と良好に嵌まり、外殻であらかじめ応力が掛けられるように、特定の柔軟性を有する。したがって、有利には、縁部の横断方向寸法(L)または長さと、縁部の長手方向寸法(t)または厚さとの間の割合L/tは、2から4の間である。これは、より小さい割合L/t、すなわち、厳格には2より小さい割合L/tは、例えば、円筒形での外殻の種類についての金属製作においてかなりしばしば直面する真円度の欠如に適合することができない可能性のある、過剰に硬いシールをもたらすことになる。また、より大きいL/tの割合、すなわち、厳格には4より大きい割合L/tは、シワが寄って外殻との非接触の領域を露わにする危険性があるように、機械的強度の欠けた1つまたは複数の縁部を有することを意味することになる。
【0044】
さらに、各々の分離要素は、円板または板の形態とでき、各々のシールは、関連する円板の周りに配置される環体の形態とできる。
【0045】
また、各々のシールの最大横断寸法が外殻の内部容積の最大横断寸法より有利には大きい。したがって、有利には、シールは外殻にあらかじめ応力が掛けられるように搭載される。より正確には、シールが外殻内へと導入されるとき、シールの縁部が容器の上部に向けて湾曲し、自然に外殻の内壁に対して圧力を加え、これが良好なシールを提供する。
【0046】
さらに、長手方向軸に沿う2つの連続する分離要素の間の距離または長手方向空間が外殻の内部容積の最大横断寸法より小さくてもよい。
【0047】
この方法では、長手方向、具体的には、鉛直方向において薄すぎない貯蔵材料の床を得ることが可能である。別の言い方をすれば、貯蔵材料の床の厚さが制御され得る。
【0048】
したがって、2つの連続する分離要素の間の距離と外殻の内部容積の最大横断寸法との間の割合は、厳密には1未満であり得る。この値は、具体的には、各々の貯蔵材料、具体的には、各々の水素化物が周期的に同じ挙動を有するわけではないため、具体的には、異なる度合いの薄さを伴う貯蔵材料の床について応力増加対策を取ることで、洗練される。
【0049】
さらに、水素供給および回収管は、浸透性であり得る、または、例えば穿孔によって生成される複数の水素通過オリフィス、具体的には、2つの連続する分離要素の間に形成される容器の各々の段において少なくとも1つの水素通過オリフィスを有利に備え得る。
【0050】
また、水素供給および回収管は、管に対して配置される複数のフィルタを有利に備えてもよく、各々のフィルタは少なくとも1つの水素通過オリフィスを向いており、管は、具体的には、2つの連続する分離要素の間に形成される容器の各々の段において管に形成される少なくとも1つの水素通過オリフィスに対して配置される少なくとも1つのフィルタを備える。
【0051】
有利には、少なくとも1つの水素通過オリフィスを覆うフィルタの存在は、具体的には水素化物粉末の形態である貯蔵材料が管を通じて漏れるのを防止することを可能にする。
【0052】
フィルタは、例えば、細かい網を伴う織物またはフェルトを備え得る。フィルタは、金属および/もしくは高分子の材料、または、さらに任意の他の種類の材料を含んでもよい。次に、フィルタは管の周りに巻き付けられ得る。良好なシールを得るためには、管の周りにおける織物またはフェルトの形態でのフィルタの1回転を超える巻き付けが効果的とされ得る。
【0053】
さらに、各々のフィルタは、留め付け手段によって、具体的には、留め付け環によって、管に対して保持され得る。このような留め付け環は、例えば、Serflex式またはColson式の留め付け環であり得る。
【0054】
さらに、水素貯蔵材料は、優先的には、水素化物、具体的には、金属の水素化物を備え得る。
【0055】
さらに、本発明の別の態様による本発明の別の主題は、先に定められたような水素貯蔵容器を製造するための方法であって、
- 水素貯蔵材料を容器の外殻の底に任意選択で配置するステップと、
- 各々の分離要素に水素貯蔵材料を配置するステップと
を含み、
組立体が、水素供給および回収管と、分離要素と、シールとが、水素貯蔵材料の配置の前に搭載されることで形成され、
各々の分離要素は、具体的には、この分離要素への水素貯蔵材料の配置の終わりに外殻へと導入されることにおいて特徴付けられる方法である。
【0056】
本発明による水素貯蔵容器および製造方法は、別々で、または、他の特長とのすべての技術的に可能な組み合わせで取られる、記載において述べられる特長のうちのいずれかを含み得る。
【0057】
本発明は、本発明の非限定的な例の実施形態の以下の詳細な記載を読むことから、および、添付の図面の概略的および部分的な図の精査から、最良に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】本発明による水素貯蔵容器の例の実施形態の断面における概略図である。
【
図2】
図1における水素貯蔵容器の水素供給および連結管を別に示している概略的な斜視図である。
【
図3】
図1における水素貯蔵容器の設計の詳細を示す
図1の一部の拡大図である。
【
図4】
図1における水素貯蔵容器において使用されるシールの断面における概略図である。
【
図5】
図4におけるシールの様々な実施形態を示す断面での概略図である。
【
図6】
図4におけるシールの様々な実施形態を示す断面での概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
すべてのこれらの図において、同一の言及は同一または同様の要素を指示できる。
【0060】
また、図に示した様々な部品は、図をより見やすくするために、必ずしも均一な縮尺で示されていない。
【0061】
本発明の具体的な例の実施形態の以下の記載では、水素貯蔵材料は水素化物であり、特には金属の水素化物であることが述べられている。また、記載されている水素貯蔵容器は、円筒形の回転の形を有する。それでもなお、その横断方向より大きい長手方向の寸法を有し、例えば円形、多角形、または楕円形といった任意の断面を有する中空要素によって形成される任意の容器は、本発明の範囲から逸脱しない。
【0062】
以下に記載した例の実施形態では、使用されるフィルタ11が高分子材料から作られたフェルトであり、留め付け環12がColson式のものであることも、留意されるべきである。本質的に、これらの選択は決して限定的ではない。
【0063】
図1~
図3を参照すると、これらは、水素貯蔵材料2における水素の吸収による水素の貯蔵のための容器1の例の実施形態を示している。
【0064】
図1では、貯蔵容器1のこの例が見ることができ、概略的に示され得る。
【0065】
容器1は、底基部14によって底端において閉じられた、長手方向軸Xを伴う外殻または胴部3を備える。容器1は、胴部3の上端を閉じるOリングシール16が設けられた上壁15も備える。
【0066】
容器1は、長手方向軸Xが重力ベクトルの方向と実質的に一致させられるように概して配向されるように意図されている。しかしながら、その使用の間、例えば搭載における使用の場合、その配向は変わることができる。
【0067】
容器1は、長手方向軸Xに沿って底基部14から上壁15に向かって延びる水素供給および回収管4を具体的には備える水素供給および回収手段を備える。
【0068】
管4は、例えば長手方向端のうちの1つにおいて、例えば水素供給および回収回路に連結される。
【0069】
後に説明されているように、容器1の内側は長手方向軸Xに沿う複数の段へと分割されており、各々の段は貯蔵材料2を備える。これらの段は、ある段から別の段への具体的には水素化物粉末の形態での貯蔵材料の通過を防止し、したがって、ある段における、具体的には、より低い段における粉末の蓄積を防止し、胴部3の内部壁における圧力の応力の出現を防止するように製作されている。
【0070】
したがって、容器1は、水素供給および回収管4に沿って互いから規則正しく分離されている、長手方向軸Xに沿う複数の分離要素5のスタックを備える。これらの分離要素5は、例えばロウ付け、溶接、接着結合、または圧力嵌めによって、封止するように管4に搭載され、または、管4との一体部品で形成される。また、これらの分離要素5は、ここでは円板5の形態である。
【0071】
各々の円板5は、円板5を管4の周りに搭載させることができる通路6または中心オリフィスを備える。また、各々の円板5は、複数の水素化物粉末の段または床を形成するために容器1が製造されるときに水素化物粉末が置かれる、長手方向軸Xに対して垂直な基部を定める。
【0072】
円板5は、2つの連続する円板5の間の長手方向空間ELが胴部3の内部容積Vの内径Tvより小さくなるように管4に搭載される。したがって、水素化物粉末床の厚さは制御され得る。別の言い方をすれば、割合EL/Tvは厳密には1未満である。
【0073】
さらに、
図3において見られるように、円板5の直径Tdは、空間Eが各々の円板5と胴部3との間に存在するように胴部3の内径Tvより小さい。
【0074】
そのため、有利には、容器1は、円板5と各々関連し、環体の形態であり、対応する円板5の周辺全体にわたって延びる複数のシール7を備える。各々のシール7は、対応する円板5と胴部3との間に形成される空間Eに位置付けられてもいる。
【0075】
各々のシール7は、例えばViton(登録商標)としても知られているフッ素ゴム(FKM)といったゴムから、例えば製作され得る。
【0076】
有利には、各々のシール7は、それが関連する円板5に固定される。
図3および
図4において見られるように、各々のシール7は、円板5の長手方向の縁9と接触して長手方向で延びる主要部分8を備える。また、シール7は、主要部分8から円板5のいずれかの側において管4に向かって横断方向に延びる第1の部分7aおよび第2の部分7bを備える。
【0077】
図3および
図4における例では、シール7は、胴部3と接触しているシール7の主要部分8から胴部3に向かって横断方向で延びる縁部を形成する第3の部分7cを備え、この第3の部分7cの横断方向の延在は、第1の部分7aと一列になって横断方向に位置する。
【0078】
他方で、
図4の変形の実施形態である
図6における例では、シール7の第3の部分7cは、第1の部分7aと第2の部分7bとの間の中間における主要部分8から胴部3に向かって横断方向に延びる。この方法では、シール7が設置される円板5に対してより良好な平衡の利点を有するいわゆる中心縁部の種類のシール7を形成することが可能である。
【0079】
図4および
図6の別の変形では、
図5における例の実施形態は、シール7が、胴部3と接触している主要部分8から胴部3に向けて横断方向に各々延びる縁部を形成する第3の部分7cおよび第4の部分7dを備え、第3の部分7cは第1の部分7aと一列になって横断方向に延び、第4の部分7dは第2の部分7bと一列になって横断方向に延びる。そのため、縁部シール7が設置される円板5に対してより良好な平衡の利点と、通過に対して二重の障壁があることによるより良好な封止の利点とを有してもいるいわゆる二重の縁部シール7を形成することが可能である。
【0080】
優先的には、
図4において分かるように、縁部7cまたは7dの長さLと縁部の厚さtとの間の割合L/tが2から4の間である。これは、より小さい割合L/t、すなわち、厳格には2より小さい割合L/tは、例えば、円筒の胴部3の種類についての金属製作においてかなりしばしば直面する真円度の欠陥に適合することができない可能性のある、過剰に硬いシール7をもたらすことになる。また、より大きい割合L/t、すなわち、厳格には4より大きい割合L/tは、胴部3との非接触の帯域を露わにする危険性があるように、機械的強度の欠けた1つまたは複数の縁部を有することを伴うことになる。
【0081】
さらに、
図4において見られる各々のシール7の直径Tjが胴部3の内径Tvより大きいことは、留意されるべきである。したがって、有利には、シール7は、胴部3にあらかじめ応力が掛けられるように搭載される。より正確には、シール7が胴部3内へと導入されるとき、シール7の縁部7c、7dが容器1の上部に向けて湾曲し、自然に胴部3の内壁に対して圧力を加え、これが良好なシールを提供する。
【0082】
さらに、
図2において分かるように、管4は、有利には、例えば穿孔によって製作される水素の通過のための複数のオリフィス10または孔10を備える。より正確には、容器1の各々の段は、管4において複数のオリフィス10を備える。
【0083】
そのため、管4は、水素通過オリフィス10を覆うために各々の段においてフィルタ11を有利に備える。
【0084】
これらのフィルタ11は、水素化物粉末2が管4を通じて漏れることができるのを防止することを可能にする。フィルタ11は、例えば、金属および/または高分子の材料を含む細かい網を伴う織物またはフェルトから例えば製作できる。良好なシールを得るために、この形態でのフィルタは、管4の周りに1回転を超えて巻き付けられる。
【0085】
さらに、巻き付けが終わって管4におけるフィルタ11の良好な保持を提供するために、
図3において見られるように、例えばColson式のものといった留め付け環12が使用されてもよい。
【0086】
本質的に、本発明は、記載された例の実施形態に限定されていない。様々な変更が、当業者によって行われてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 容器
2 水素貯蔵材料、水素化物粉末
3 外殻、胴部
4 水素供給および回収管
5 分離要素、円板
6 通路
7 シール
7a 第1の部分
7b 第2の部分
8 主要部分
9 長手方向の縁
10 オリフィス、孔
11 フィルタ
12 留め付け環
14 底基部
15 上壁
16 Oリングシール
E 空間
EL 長手方向空間
Td 直径
Tj 直径
Tv 内径
X 長手方向軸
V 内部容積