(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】ガラス成形装置に対するガラス流を制御する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C03B 5/26 20060101AFI20220516BHJP
C03B 5/235 20060101ALI20220516BHJP
C03B 17/06 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
C03B5/26
C03B5/235
C03B17/06
(21)【出願番号】P 2019531250
(86)(22)【出願日】2017-12-13
(86)【国際出願番号】 US2017065943
(87)【国際公開番号】W WO2018111951
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-12-14
(32)【優先日】2016-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】コカテュラム,ビュレント
(72)【発明者】
【氏名】ラロンツ,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】マンリー,サラ アシュリー
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-168482(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0016219(US,A1)
【文献】国際公開第2016/053773(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B5/00-7/22
C03B17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス成形装置のダウンカマーであって、
溶融ガラスを受け取る入口端部、成形体の入口に溶融ガラスを排出する出口端部、上部加熱ゾーン、及び前記上部加熱ゾーンの下流の前記出口端部の近傍に配置された下部加熱ゾーンを備えたダウンカマー管と、
前記下部加熱ゾーンにおいて、前記ダウンカマー管の周囲に配置固定された下部制御雰囲気エンクロージャーであって、少なくとも1つの発熱体を備えたエンクロージャーと、
を含
み、
前記ダウンカマー管の前記出口端部、及び前記下部制御雰囲気エンクロージャーが、前記成形体の前記入口内に配置されていることを特徴とするダウンカマー。
【請求項2】
前記下部制御雰囲気エンクロージャーが、前記ダウンカマー管の前記出口端部から離間していることを特徴とする、請求項1記載のダウンカマー。
【請求項3】
前記下部制御雰囲気エンクロージャーの少なくとも一部の周囲に延びる、断熱層を更に備えたことを特徴とする、請求項
1または2記載のダウンカマー。
【請求項4】
前記下部制御雰囲気エンクロージャーが、
前記上部加熱ゾーンと前記下部加熱ゾーンとの間において、前記ダウンカマー管に連結され、該管を包囲するトランジションフランジと、
前記ダウンカマー管に連結され該管を包囲し、前記トランジションフランジの下流に配置された底部フランジと、
前記ダウンカマー管を包囲し、前記トランジションフランジ、及び前記底部フランジに接続された外部シールドであって、該シールド、前記トランジションフランジ、及び前記底部フランジによって、前記ダウンカマー管の周囲に、前記下部制御雰囲気エンクロージャーを形成する、シールドと、
を備えたことを特徴とする、請求項1~
3いずれか1項に記載のダウンカマー。
【請求項5】
前記底部フランジが、前記ダウンカマー管の前記出口端部から、約25mm~約75mmの距離だけ離間していることを特徴とする、請求項
4記載のダウンカマー。
【請求項6】
前記トランジションフランジが、外側フランジ、内側フランジ、及び前記外側フランジから前記内側フランジに延びる拡張ドラムを有し、該ドラムが、上部が外側フランジに固定連結され、下部が内側フランジに固定連結された「S字」構成を成していることを特徴とする、請求項
4又は5記載のダウンカマー。
【請求項7】
前記拡張ドラムが、前記上部及び前記下部と一体成形され、前記下部が、「S字」構成に配置された一対の肩部を介して前記上部に移行していることを特徴とする、請求項
6記載のダウンカマー。
【請求項8】
前記外側フランジが、外側フランジ厚を有し、前記内側フランジが、内側フランジ厚を有し、前記拡張ドラムが、前記外側フランジ厚及び前記内側フランジ厚より小さい拡張ドラム厚を有することを特徴とする、請求項
6又は7記載のダウンカマー。
【請求項9】
前記外側フランジが耐熱合金を含み、前記内側フランジ及び前記拡張ドラムが白金合金を含むことを特徴とする、請求項
6~8いずれか1項記載のダウンカマー。
【請求項10】
ガラス成形装置であって、
溶融ガラス送達装置と、
成形体入口を備えた成形体と、
前記溶融ガラス送達装置から溶融ガラスを受け取る入口端部、及び前記成形体入口に溶融ガラスを排出する出口端部を備えたダウンカマー管と、
前記ダウンカマー管を包囲する上部加熱ゾーンと、
前記ダウンカマー管を包囲し、前記上部加熱ゾーンの下流の前記出口端部の近傍に配置された下部加熱ゾーンと、
前記上部加熱ゾーンと前記下部加熱ゾーンとの間において、前記ダウンカマー管に連結され、該管を包囲するトランジションフランジであって、外側フランジ、内側フランジ、及び前記外側フランジから前記内側フランジに延びる拡張ドラムを有し、該ドラムが、該ドラムの上部が前記外側フランジに固定連結され、該ドラムの下部が前記内側フランジに固定連結された「S字」構成を成している、フランジと、
前記トランジションフランジの下流に配置され、前記ダウンカマー管に連結され該管を包囲する底部フランジと、
前記ダウンカマー管を包囲し、前記トランジションフランジ、及び前記底部フランジに接続された外部シールドであって、該シールド、前記トランジションフランジ、及び前記底部フランジによって、前記下部加熱ゾーンにおいて、前記ダウンカマー管の周囲に配置固定された、下部制御雰囲気エンクロージャーを形成する、シールドと、
を備え
、
前記ダウンカマー管の前記出口端部及び前記下部制御雰囲気エンクロージャーの少なくとも一部が、前記成形体の前記成形体入口内に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項11】
前記拡張ドラムが、前記上部及び前記下部と一体成形され、前記下部が、「S字」構成に配置された一対の肩部を介して前記上部に移行していることを特徴とする、請求項
10記載のガラス成形装置。
【請求項12】
前記外側フランジが、外側フランジ厚を有し、前記内側フランジが、内側フランジ厚を有し、前記拡張ドラムが、前記外側フランジ厚及び前記内側フランジ厚より小さい拡張ドラム厚を有していることを特徴とする、請求項
10又は11記載のガラス成形装置。
【請求項13】
前記外側フランジが耐熱合金を含み、前記内側フランジ及び前記拡張ドラムが白金合金を含むことを特徴とする、請求項
10~12いずれか1項記載のガラス成形装置。
【請求項14】
前記下部制御雰囲気エンクロージャーの少なくとも一部の周囲に延びる、断熱層を更に備えたことを特徴とする、請求項
10~13いずれか1項記載のガラス成形装置。
【請求項15】
前記底部フランジが、前記ダウンカマー管の前記出口端部から約25mm~約75mmの距離だけ離間していることを特徴とする、請求項
10~14いずれか1項記載のガラス成形装置。
【発明の詳細な説明】
【関連技術の相互参照】
【0001】
本願は、その内容に依拠し、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる、2016年12月15日出願の米国仮特許出願第62/434655号の米国特許法第119条に基づく優先権の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、概してガラス成形装置に関し、より具体的には、ダウンカマーを介したガラス成形装置に対するガラス流を制御する方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
溶融プロセスは、ガラスリボンを成形する1つの技術である。フロートプロセスやスロットドロープロセス等、ガラスリボンを成形する別のプロセスと比較して、溶融プロセスは、比較的欠陥量が少なく、優れた平坦性を有する表面を備えたガラスリボンを製造する。その結果、溶融プロセスは、LED及びLCDディスプレイの製造に用いられるガラス基板、及び優れた平坦性を必要とする他の基板の製造に広く使用されている。
【0004】
溶融プロセスにおいて、溶融ガラスが、送達容器から、ダウンカマーを通して、成形体の入口端部に供給される。溶融ガラスは成形体の対向する表面を越えて流れ、成形体の下端部で再結合又は融合し、そこからガラスの連続リボンが延伸される。ダウンカマーは、溶融ガラスを所定の粘度で成形体の入口端部に供給するように構成されている。ダウンカマーを通して成形体の入口端部に供給される溶融ガラスの温度変動によって、溶融ガラスの粘度が変化し、それが、ひいては、溶融ガラスの流れに影響を及ぼし、成形体の根底部から延伸して得られるガラスリボンの品質を低下させ得る成形欠陥が生じる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、ガラスリボンの成形中に、ダウンカマーを通したガラス流を制御する別の方法及び装置の必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの実施形態によれば、ガラス成形装置のダウンカマーは、溶融ガラスを受け取る入口端部、及び成形体の入口に溶融ガラスを排出する出口端部を備えたダウンカマー管を有している。上部加熱ゾーン及び上部加熱ゾーンの下流の出口端部近傍に配置された下部加熱ゾーンが、ダウンカマー管を包囲している。下部制御雰囲気エンクロージャーが、下部加熱ゾーンにおいて、ダウンカマー管の周囲に配置固定されている。下部制御雰囲気エンクロージャーは、少なくとも1つの発熱体を備えている。トランジションフランジが、上方加熱ゾーンと下方加熱ゾーンとの間において、ダウンカマー管に連結されそれを包囲している。トランジションフランジの下流に配置された底部フランジが、ダウンカマー管に連結されそれを包囲している。外部シールド、トランジションフランジ、及び底部フランジが、ダウンカマー管の周囲に下部制御雰囲気エンクロージャーを形成するように、外部シールドが、ダウンカマー管を包囲し、トランジションフランジ及び底部フランジに接続されている。
【0007】
別の実施形態によれば、溶融ガラス送達容器及び成形体入口を備えた成形体を有するガラス成形装置のダウンカマーが、ダウンカマー管であって、上部加熱ゾーン、上部加熱ゾーンの下流に配置された下部加熱ゾーン、及び上部加熱ゾーンと下部加熱ゾーンとの間において、ダウンカマー管に連結されそれを包囲するトランジションフランジを備えた管を有している。トランジションフランジは、外側フランジ、内側フランジ、及び外側フランジと内側フランジとの間に延びる拡張ドラムを備えている。拡張ドラムは「S」字形構成を成し、拡張ドラムの上部が、外側フランジに固定連結され、拡張ドラムの下部が、内側フランジに固定連結されている。拡張ドラムは、「S」字形に配置された一対の肩部を介し、下部が上部に移行した状態で上部及び下部と一体成形することができる。
【0008】
別の実施形態において、ガラスリボンを成形する方法が、ダウンカマー管を通して溶融ガラスを流すステップと、ダウンカマー管を包囲する上部加熱ゾーン及び下部加熱ゾーンによって、ダウンカマー管を通して流れる溶融ガラスを加熱するステップとを含んでいる。下部加熱ゾーンは上部加熱ゾーンの下流のダウンカマー管の出口端部近傍に配置されている。出口端部及び下部加熱ゾーンの一部が、成形体入口の内部に配置された状態で、溶融ガラスが、ダウンカマー管の出口端部を通して、成形体の成形体入口に排出される。ダウンカマー管の出口端部から排出された溶融ガラスは、成形体のトラフに流入し、トラフを包囲する一対の堰を越え、一対の堰から延びて成形体の根底部で収束する一対の成形面上を流れ下り、一対の成形面上を流れ下ったガラスが、成形体の根底部において収束し、ガラスリボンが成形される。
【0009】
本明細書に記載のガラス成形装置の更なる特徴及び効果は、これに続く詳細な説明に述べてあり、当業者はその記述から、一部は容易に明らかであり、これに続く詳細な説明、特許請求の範囲、及び添付図面を含め、本明細書に記載の実施形態を実施することによって認識できるであろう。
【0010】
前述の概要説明及び以下の詳細な説明は、いずれも本開示の様々な実施形態を示すものであって、特許請求した主題の性質及び特徴を理解するための概要、及び枠組みの提供を意図したものであることを理解されたい。添付図面は、本開示について更なる理解が得られることを意図して添付したもので、本明細書に組み込まれ、その一部を構成するものである。図面は本明細書に記載の様々な実施形態を示すもので、その説明と併せ、特許請求した主題の原理及び作用の説明に役立つものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本明細書に図示及び記載の1つ以上の実施形態による、ガラス成形装置の概略図。
【
図2】本明細書に図示及び記載の1つ以上の実施形態による、上部加熱ゾーン及び下部加熱ゾーンを備えた、ガラス成形装置のダウンカマーの概略断面図。
【
図3】本明細書に図示及び記載の1つ以上の実施形態による、ダウンカマー管の周囲に延びる下部加熱ゾーンを備えた、
図2のダウンカマーの一部の概略斜視図。
【
図4】本明細書に図示及び記載の1つ以上の実施形態による、
図3に示すダウンカマー管及びトランジションフランジの概略断面図。
【
図5】本明細書に図示及び記載の1つ以上の実施形態による、ダウンカマー及び成形体入口の概略図。
【
図6A】本明細書に図示及び記載の1つ以上の実施形態による、ダウンカマー管の周囲に下部加熱ゾーンを配置しない、ダウンカマー及び成形体入口を備えたトランジション領域の熱分析モデルをグラフィック表示した図。
【
図6B】本明細書に図示及び記載の1つ以上の実施形態による、ダウンカマー管の周囲に下部加熱ゾーンを配置した、ダウンカマー及び成形体を備えたトランジション領域の熱分析モデルをグラフィック表示した図。
【
図7】本明細書に図示及び記載の1つ以上の実施形態による、ダウンカマー管の周囲に下部加熱ゾーンを配置した、ダウンカマー及び成形体入口を備えたトランジション領域の熱分析モデルをグラフィック表示した図。
【
図8A】本明細書に図示及び記載の1つ以上の実施形態による、ダウンカマー管の周囲に下部加熱ゾーンを配置しない、
図7のトランジション領域の温度をグラフィック表示した図。
【
図8B】本明細書に図示及び記載の1つ以上の実施形態による、ダウンカマー管の周囲に下部加熱ゾーンを配置した、
図7のトランジション領域の温度をグラフィック表示した図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面に例を示す、ガラス成形装置のダウンカマーの実施形態について以下詳細に説明する。図面全体を通し、可能な限り、同じ又は同様の部品には、同じ参照番号を用いている。ダウンカマーの例示的な実施形態を
図2に概略的に示す。ダウンカマーは、溶融ガラスを受け取る入口端部、及び溶融ガラスを排出する出口端部を備えたダウンカマー管を有することができる。上部加熱ゾーンが入口端部近傍に配置され、下部加熱ゾーンが上部加熱ゾーンの下流のダウンカマー管の出口端部近傍に配置されている。上部加熱ゾーンは、断熱材及び少なくとも1つの発熱体を備えている。下部制御雰囲気エンクロージャーが、下部加熱ゾーンにおいて、ダウンカマー管の周囲に配置固定されている。下部制御雰囲気エンクロージャーは、ダウンカマー管及びダウンカマー管を通して流れる溶融ガラスを加熱する少なくとも1つの発熱体を備えている。本明細書では、添付図面を具体的に参照しながら、ガラス成形装置のダウンカマー及びそれを備えたガラス成形装置の様々な実施形態について説明する。
【0013】
本明細書において、方向を示す用語、例えば、上方、下方、右、左、前、後、上端、下端等は、図示のみを参照したものであって、絶対的な方向を暗示することを意図するものではない。
【0014】
特に断りのない限り、本明細書に記載の方法は、そのステップが特定の順序で実行される必要があること、及びすべての装置が特定の配向を必要とすることを意図するものでは決してない。従って、方法クレームが、そのステップが従うべき順序を実際に記述していない場合、又は装置クレームが、個々の構成要素に対する順序若しくは向きを実際に記述していない場合、あるいは、ステップが特定の順序に限定されるべきであること、又は装置の構成要素に対する特定の順序若しくは向きが、特許請求の範囲又は明細書に特に明記されていない場合、如何なる点においても、順序や方向が推測されることを意図するものでは決してない。これはステップの配列、動作フロー、構成要素の順序、又は構成要素の配向に関する論理的事項、文法体系又は句読法から派生した平易な意味、及び明細書に記載の実施形態の番号若しくは種類にも適用される。
【0015】
本明細書において、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに別に解釈されない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「ある」構成要素と言った場合、文脈上明らかに別に解釈されない限り、2つ以上のかかる構成要素を有する実施形態を含む。
【0016】
ここで、
図1は、ガラスリボン12等のガラス物品を製造するガラス成形装置10の概略図である。ガラス成形装置10は、概して、原料貯蔵槽18からバッチ材料16を受け取るように構成された溶融容器15を含むことができる。バッチ材料16は、モーター22によって駆動されるバッチ送達装置20によって溶融容器15に導入することができる。モーター22を作動させるために、任意のコントローラ24を設けることができ、溶融ガラスレベルプローブ28を用いて、立管30内のガラス溶融物のレベルを測定し、測定した情報をコントローラ24に伝達することができる。
【0017】
ガラス成形装置10は、第1の接続管36を介して溶融容器15に連結された、清澄管等の清澄容器38も含むことができる。混合容器42が、第2の接続管40によって清澄容器38に連結されている。送達容器46が、送達導管44によって混合容器42に連結されている。更に図示するように、ダウンカマー48が、溶融ガラスを送達容器46から成形体60の成形体入口50に送達するように配置されている。成形体60は、トラフ62及びトラフ62を包囲する一対の堰64(1つを
図1に示す)を有している。一対の成形面66(1つを
図1に示す)が、一対の堰64から垂直方向下方(即ち、図に示す座標軸の-Z方向)に延び、成形体60の底部エッジ(根底部)68で収束している。本明細書に図示及び説明する実施形態において、成形体60は溶融成形容器である。動作において、送達容器46からの溶融ガラスが、ダウンカマー48及び成形体入口50を通して、トラフ62に流入する。トラフ62内の溶融ガラスは、トラフ62を包囲する一対の堰64を越え、一対の堰64から延びる一対の成形面66を下方(-Z方向)に流れ、その後根底部68で収束してガラスリボン12が形成される。
【0018】
溶融容器15は、通常、耐火(例えば、セラミック)煉瓦等の耐火材料で構成されている。ガラス成形装置10は、通常、高温で安定な材料、例えば、高融点金属から構成される構成要素を更に含むことができる。かかる高融点金属には、白金又は白金合金、例えば、約70%~約100%の白金、例えば100%未満の白金、及び約30%のロジウム、例えば30%未満~約0%のロジウムを含む合金を挙げることができる。他の適切な高融点金属には、モリブデン、パラジウム、レニウム、タンタル、チタン、タングステン、ルテニウム、オスミウム、ジルコニウム、及びこれ等の合金、及び/又は二酸化ジルコニウムが含まれるが、これに限定されるものではない。高融点金属を含有する構成要素には、第1の接続管36、清澄容器38、第2の接続管40、立管30、混合容器42、送達導管44、送達容器46、ダウンカマー48、及び成形体入口50のうちの1つ以上を挙げることができる。
【0019】
現在のガラス成形装置において、ダウンカマーは、ダウンカマー管であって、管の周囲に延び、管及び管の内部を流れる溶融ガラスに熱を加える少なくとも1つの発熱体を備えた管を有している。ダウンカマー管は、ダウンカマー管の加熱部分と成形体の入口端部との間の空間を橋渡しする露出非加熱部分も有し得る。ガラスがダウンカマー管の露出非加熱部分を通して成形体の入口に流入する際、ガラスが熱エネルギーを失うため、ダウンカマー管の露出非加熱部分、及びダウンカマー管の露出非加熱部分の内部を流れる溶融ガラスが、大きい温度勾配を受ける可能性があることが分かっている。ダウンカマー管の露出非加熱部分の内部を流れる溶融ガラスの大きい温度勾配は、大きい粘度変動をもたらし、特に、所与のガラスリボン成形キャンペーンにおいて、複数のガラスが使用される場合、ダウンカマー管の露出非加熱部分における溶融ガラスの流れを制御することを困難にする。例えば、ガラスリボン成形キャンペーン中に複数のガラスが使用される場合、ダウンカマー管を通る溶融ガラスの流れを均衡させるために、異なるガラス粘度が使用される可能性があり、比較的短期間にわたってガラス粘度の急速な変動(「ガラス脈動」としても知られる)が生じ得る。ガラス脈動は、例えば、楔形状又は厚さ等、得られるガラスリボンの属性を低下させ、製造損失を増加させ得る。本明細書に記載の実施形態は、溶融ガラスが成形体の入口に流入する際の溶融ガラスからの熱損失を軽減し、それによってガラスの流動安定性を改善し、楔形状又は厚さ変動による製造損失を減少させるダウンカマー管に関連するものである。
【0020】
ここで、
図1及び2において、
図2は本明細書に図示及び記載の1つ以上の実施形態による例示的なダウンカマー48の概略図である。ダウンカマー48は、概して、入口端部101及び出口端部109を備えたダウンカマー管100を有している。実施形態において、ダウンカマー管100は、第1のセクション102、第1のセクション102の下流(図に示す座標軸の-Z方向)に位置する第2のセクション104、及び第1のセクション102と第2のセクション104との間に配置されたトランジションセクション106を有することができる。上部加熱ゾーン110、及び上部加熱ゾーン110の下流に配置された下部加熱ゾーン150が、ダウンカマー管100を包囲している。一部の実施形態において、上部加熱ゾーン110が、ダウンカマー管100の第1のセクション102、トランジションセクション106、及び第2のセクション104の一部を包囲し、下部加熱ゾーン150が、上部加熱ゾーン110の下流のダウンカマー管100の第2のセクション104の一部を包囲している。一部の実施形態において、上部加熱ゾーン110が、ダウンカマー管100の第1のセクション102及びトランジションセクション106を包囲し、下部加熱ゾーン150が、上部加熱ゾーン110の下流のダウンカマー管100の第2のセクション104の一部を包囲している。一部の実施形態において、上部加熱ゾーン110が、ダウンカマー管100の第1のセクション102を包囲し、下部加熱ゾーン150が、トランジションセクション106及び第2のセクション104の一部を包囲している。上部加熱ゾーン110は、ダウンカマー管100の周囲に配置された断熱材120、及びダウンカマー管100の周囲に配置された、少なくとも1つの発熱体122を備えることができる。必要に応じ、上部加熱ゾーン110は、断熱材120の周囲に配置された外側クラッド124を備えることができる。実施形態において、外側クラッド124が、上部加熱ゾーン110内において、ダウンカマー管100の周囲に配置固定された上部制御雰囲気エンクロージャー125を形成している。下部加熱ゾーン150は、ダウンカマー管100の周囲に配置された断熱材154、及びダウンカマー管100の周囲に配置された少なくとも1つの発熱体156を備えている。第2の制御雰囲気エンクロージャー155が、下部加熱ゾーン150内において、ダウンカマー管100の周囲に配置固定されている。
【0021】
実施形態において、トランジションフランジ126が、上部加熱ゾーン110と下部加熱ゾーン150との間において、ダウンカマー管100に連結され、それを包囲している。加えて、トランジションフランジ126の下流に配置された底部フランジ160が、ダウンカマー管100に連結され、それを包囲している。外部シールド158が、ダウンカマー管100を包囲し、トランジションフランジ126及び底部フランジ160に接続されている。外部シールド158、トランジションフランジ126、及び底部フランジ160によって、下部制御雰囲気エンクロージャー155が形成されている。一部の実施形態において、上部制御雰囲気エンクロージャー125が、下部制御雰囲気エンクロージャー155に流体連結されている、即ち、トランジションフランジ126は、下部制御雰囲気エンクロージャー155を上部制御雰囲気エンクロージャー125から遮断しない。かかる実施形態において、制御雰囲気ガスが、上部制御雰囲気エンクロージャー125と下部制御雰囲気エンクロージャー155との間に流れ、上部制御雰囲気エンクロージャー125及び下部制御雰囲気エンクロージャー155内の下部制御雰囲気ガス流は独立して制御されない。別の実施形態において、上部制御雰囲気エンクロージャー125が、下部制御雰囲気エンクロージャー155に流体連結されていない、即ち、トランジションフランジ126が、下部制御雰囲気エンクロージャー155を上部制御雰囲気エンクロージャー125から遮断している。かかる実施形態において、上部制御雰囲気エンクロージャー125内の制御雰囲気ガス流は、下部制御雰囲気エンクロージャー155内の制御雰囲気ガス流から独立して制御される。
【0022】
実施形態において、ダウンカマー管100の第1のセクション102が、第1の直径D
1を有し、ダウンカマー管100の第2のセクション104が、直径D
1より小さい第2の直径D
2を有している。かかる実施形態において、ダウンカマー管100の第1のセクション102は、トランジションセクション106を介して、ダウンカマー管100の第2のセクション104に接合されている。トランジションセクション106は、第1のセクション102に連結される(又は一体成形される)第1の直径D
1有する第1のエッジ105、及び第2のセクション104に連結される(又は一体成形される)第2の直径D
2有する第2のエッジ107を備えている。即ち、トランジションセクション106によって、ダウンカマー管100を通して、送達容器46から成形体入口50に連続的な流体経路が形成されるように、第1のセクション102が、第2のセクション104に接合されている。
図2は、異なる直径を有する2つのセクション、即ち、直径D
1を有する第1のセクション102、及びD
1より小さい直径D
2を有する第2のセクション104を有するダウンカマー管100を示しているが、ダウンカマー管100の別の構成も考えられ可能であることは当然である。例えば、一部の実施形態(図示せず)において、ダウンカマー管100は、全長に沿って(Z方向)一定の直径を有することも、異なる直径を有する2つを超えるセクションを有することもできる。
【0023】
更に
図1及び2において、上部加熱ゾーン110の少なくとも1つの発熱体122が、ダウンカマー管100の周囲に配置されることによって、ダウンカマー管100及びそこを通して流れる溶融ガラスが加熱される。実施形態において、少なくとも1つの発熱体122は、ダウンカマー管100の長さ(Z方向)に沿って巻線、螺旋、又はトロイダル構成でダウンカマー管100を包囲している。一部の実施形態において、少なくとも1つの発熱体122は、ダウンカマー管100の外面と直接接触しているが、別の実施形態では、少なくとも1つの発熱体122は、ダウンカマー管100の外面から離間している。例えば、一部の実施形態において、少なくとも1つの発熱体122とダウンカマー管100の外面との間に空間がある。一部の実施形態において、少なくとも1つの発熱体122が、断熱材120に埋め込まれている場合等には、例えば、この空間に耐火材料の薄層を充填することができる。
【0024】
上部加熱ゾーン110は、必要に応じ、1つ以上の副加熱ゾーン、例えば、第1の副加熱ゾーン112、第2の副加熱ゾーン114、第3の副加熱ゾーン116、および第4の副加熱ゾーン118を備えることができる。副加熱ゾーン112、114、116、118の各々は、断熱材120及び少なくとも1つの発熱体122を備えることができる。実施形態において、副加熱ゾーン112、114、116、118の各々は、独立して制御され、ダウンカマー管100の一部に熱を加える。別の実施形態では、2つ以上の副加熱ゾーン112、114、116、118が依存して制御され、ダウンカマー管100の一部に熱を加える。
図2は4つの副加熱ゾーン112、114、116、118を示しているが、当然のことながら、1つの加熱ゾーン又は4つより多くの副加熱ゾーンが、ダウンカマー管100の一部に熱を加える限り、上部加熱ゾーン110は、1つのみの加熱ゾーン又は4つより多くの副加熱ゾーンを備えることができる。
【0025】
下部加熱ゾーン150の少なくとも1つの発熱体156が、ダウンカマー管100の周囲、例えば、ダウンカマー管100の第2のセクション104の一部の周囲に配置されることによって、ダウンカマー管100及びそこを通して流れる溶融ガラスが加熱される。実施形態において、少なくとも1つの発熱体156が、ダウンカマー管100の長さ(Z方向)に沿って、例えば、ダウンカマー管100の第2のセクション104の長さに沿って、巻線、螺旋、又はトロイダル構成で、ダウンカマー管100を包囲している。一部の実施形態において、少なくとも1つの発熱体156は、ダウンカマー管100の外面と直接接触しているが、別の実施形態では、少なくとも1つの発熱体156は、ダウンカマー管100の外面から離間している。例えば、一部の実施形態において、少なくとも1つの発熱体156とダウンカマー管100の外面との間に空間がある。一部の実施形態において、少なくとも1つの発熱体156が、断熱材154に埋め込まれている場合等には、例えば、この空間に耐火材料の薄層を充填することができる。
【0026】
図2は、下部加熱ゾーン150が1つの加熱ゾーン(即ち、下部制御雰囲気エンクロージャー155内の加熱ゾーン)のみを有するものとして示しているが、当然のことながら、下部加熱ゾーン150は、ダウンカマー管100の第2のセクション104の一部、及びそこを通して流れる溶融ガラスに熱を加える、2つ以上の副加熱ゾーンを備えることができる。
【0027】
実施形態において、上部制御雰囲気エンクロージャー125、下部制御雰囲気エンクロージャー155、又は上部制御雰囲気エンクロージャー125及び下部制御雰囲気エンクロージャー155の両方が、ガラス成形装置10の高い動作温度におけるダウンカマー管100の(酸化等による)劣化を防止し、ガラスにブリスターが形成されるのを防止することができる窒素、アルゴン等の不活性ガスを充填した密閉容積とすることができる。一部の実施形態において、上部制御雰囲気エンクロージャー125、下部制御雰囲気エンクロージャー155、又は上部制御雰囲気エンクロージャー125及び下部制御雰囲気エンクロージャー155の両方が、不活性雰囲気と同様に、ガラス成形装置10の高い動作温度におけるダウンカマー管100の(酸化等による)劣化を防止する真空状態であってよい。上部制御雰囲気エンクロージャー125、下部制御雰囲気エンクロージャー155、又は上部制御雰囲気エンクロージャー125及び下部制御雰囲気エンクロージャー155の両方が、ダウンカマー管100の壁を通して水素が溶融ガラスに浸入することを防止することができ、それによってガラスにブリスターが形成されるのを抑制することができる。
【0028】
実施形態において、下部制御雰囲気エンクロージャー155の内部に位置する、下部加熱ゾーン150の少なくとも1つの発熱体156を、上部加熱ゾーン110の少なくとも1つの発熱体122に連結することができる。下部加熱ゾーン150の少なくとも1つの発熱体156を、上部加熱ゾーン110の少なくとも1つの加熱エレメント122に結合することによって、トランジションフランジ126が支持する重量を減らし、本明細書において更に説明するように、トランジションフランジ126が膨張及び収縮する際のフランジの損傷及び/又は故障の危険性を軽減することができる。
【0029】
ここで、
図1~4において、トランジションフランジ126が、実施形態において、下部制御雰囲気エンクロージャー155の重量の少なくとも一部を支持し、ガラス製造中におけるダウンカマー管100の熱膨張を補償して、ダウンカマー管100の構造的完全性を維持するように構成されている。従って、一部の実施形態において、トランジションフランジ126は、外側フランジ127、内側フランジ128、及び拡張ドラム130(
図4)を備えることができる。一部の実施形態において、ダウンカマー管100に、内側フランジ128を固定連結することができる。具体的には、内側フランジ128の周りに拡張ドラム130延ばして、溶接、ロウ付け等によって内側フランジ128に固定連結することができる。一部の実施形態において、内側フランジはダウンカマー管100に固定連結されていない。従って、外側フランジ127を拡張ドラム130の周囲に延ばして、溶接、ロウ付け等によって、拡張ドラム130に固定連結することができる。
図2に示すように、上部加熱ゾーン110に、外側フランジ127を取り付けることができ、断熱材120の少なくとも一部が外側フランジ127によって支持される。実施形態において、外側フランジ127は、開口部127aを通して延びるねじ付き留め具(図示せず)を用いて、上部加熱領域110に取り付けられている。溶接及び/又はロウ付け等によって、下部制御雰囲気エンクロージャー155の外部シールド158を内側フランジ128に連結することができる。外側フランジ127が厚さt
ofを有し、内側フランジ128が厚さt
ifを有し、拡張ドラム130が厚さt
dを有している。厚さt
ofは、t
dより大きくてよく、t
if以上であってよい。厚さt
ifは、t
dより大きくてよく、t
of以下であってよい。実施形態において、外側フランジ127の厚さt
ofは約1mm~約10mm、内側フランジ128の厚さt
ifは約0.2mm~約5mm、拡張ドラム130の厚さt
dは約0.1mm~約2mmであってよい。
【0030】
実施形態において、ガラスリボン成形キャンペーン中の温度変動による、ダウンカマー管100の第2のセクション104の膨張は、トランジションフランジ126によって調整することができる。より具体的には、拡張ドラム130と、上部133及び例えば「S字」構成に配置された一対の肩部131a、133aを介して、上部133に移行する下部131とを一体成形することができる。上部133を外側フランジ127に固定連結し、下部131を内側フランジ128に固定連結することができる。従って、ダウンカマー管100及び内側フランジ128のZ方向及びX-Y平面における膨張及び収縮を拡張ドラム130に平行移動させることができ、ドラムは、厚さが薄いために、肩部131a及び133aの周囲において変形することによって、外部シールド158との固定を維持しつつ、ダウンカマー管100の膨張及び収縮を調整する。特に、例えば、ガラスリボンの成形キャンペーン中に、第2のセクション104が膨張又は収縮したために、第2のセクション104が、上部加熱ゾーン110に対し相対移動した場合、拡張ドラム130は十分に柔軟であって、(ダウンカマー管100の第2のセクション104に取り付けられた)内側フランジ128の動きに対応して、第2のセクション104と上部加熱ゾーン110との間、又は下部加熱ゾーン150と上部加熱ゾーン110との間の横方向の力を最小にする。
【0031】
一部の実施形態において、底部フランジ160(従って、下部制御雰囲気エンクロージャー155)を、ダウンカマー管100の出口端部109に配置することができる。一部の実施形態において、底部フランジ160(従って、下部制御雰囲気エンクロージャー155)を、ダウンカマー管100の出口端部109から、距離「h」だけ離間させることができる。例えば、距離hは、約10~約100ミリメートル(mm)であってよい。一部の実施形態において、距離hは、約25~約75ミリメートル(mm)であってよい。従って、ダウンカマー管100の第2のセクション104の非断熱部分104bは、
図2及び3に示すように、下部加熱ゾーン150の下流に延びることができる。底部フランジ160をダウンカマー管100の出口端部109から離間させることによって、底部フランジ160が溶融ガラスで濡れるのを防止し、ひいては、底部フランジ160の劣化、及び劣化に伴う、ダウンカマー管100の出口端部109から流出する溶融ガラスの汚染を防止することができる。加えて、一部の用途において、ダウンカマー管100の出口端部109を溶融ガラスに浸漬することができる。浸漬された出口端部109から底部フランジ160を離間させることによって、溶融ガラスと少なくとも1つの発熱体156との接触を回避して、早期発熱体故障につながり得る、少なくとも1つの発熱体156の高い電流密度及び電力変動を防止することができる。一部の実施形態において、下部制御雰囲気エンクロージャー155の外部シールド158に、底部フランジ160を溶接することができる。一部の実施形態において、例えば、外部シールド158及び底部フランジ160が、深絞り金属成形プロセスを使用して成形される場合、底部フランジ160を外部シールド158と一体成形することができる。
【0032】
一部の実施形態において、断熱材164を備えた断熱層162が、下部制御雰囲気エンクロージャー155の少なくとも一部の周囲に延びることができる。例えば、断熱層162をトランジションフランジ126に近接配置することによって、下部制御雰囲気エンクロージャー155の部分に追加の断熱をもたらすことができる。
【0033】
ここで、
図1~5において、
図5はダウンカマー48が少なくとも部分的に成形体入口50に挿入されている、トランジション領域190の概略断面図である。特に、トランジション領域190は、上部加熱ゾーン110の下部、下部加熱ゾーン150(
図2)、ダウンカマー管100の第2のセクション104の非断熱部分104bの少なくとも一部、及び入口管170を備えた成形体入口50の一部を含むことができる。実施形態において、トランジションフランジ126は、トランジションフランジ126が、入口管170の上方(+Z方向)に位置するように、入口管170より大きい直径を有する一方、底部フランジ160及び下部制御雰囲気エンクロージャー155は、底部フランジ160及び下部制御雰囲気エンクロージャー155が、入口管170の内部に配置されるような直径を有することができる。一部の実施形態において、底部フランジ160及び下部制御雰囲気エンクロージャー155は、実質的に等しい直径を有することができる。また、断熱層162は、断熱層162が入口管170の内部に配置されるような直径を有することができる。
図5に示すように、ダウンカマー管100の第2のセクション104及び下部制御雰囲気エンクロージャー155の少なくとも一部は、成形体入口50内に位置することができる。下部制御雰囲気エンクロージャー155は、溶融ガラスがダウンカマー管100を通して成形体入口50に流入する際に、溶融ガラスの加熱を促進することによって、溶融ガラスからの熱損失を軽減し、更に溶融ガラス流の脈動を軽減する。実施形態において、断熱層162は、前述のように、下部加熱ゾーン150の一部の周囲に延びて、トランジション領域190における、下部制御雰囲気エンクロージャー155の一部からの熱損失を軽減することができる。成形体入口50は、入口管170に熱を加えるように動作することができる、第3の加熱ゾーン171に囲まれた入口管170を有することができる。例えば、第3の加熱ゾーン171は、上部加熱ゾーン110の下流(-Z方向)に配置することができ、少なくとも部分的に下部加熱ゾーン150に重複しかつその周囲に延びることができる。第3の加熱ゾーン171は、断熱材176及び少なくとも1つの発熱体178を備えることができる。実施形態において、第3の加熱ゾーン171は、必要に応じ、第1の副加熱ゾーン172及び第2の副加熱ゾーン174を備えることができる。副加熱ゾーン172、174の各々は、断熱材176及び少なくとも1つの発熱体178を備えることができる。第1の副加熱ゾーン172及び第2の副加熱ゾーン174は、独立して制御することも、あるいは1つの加熱ゾーンとして制御することもできる。
【0034】
実施形態において、少なくとも1つの発熱体178を入口管170の周囲に配置して、入口管170及びそこを通して流れる溶融ガラスを加熱することができる。一部の実施形態において、少なくとも1つの発熱体178は、入口管170の外面に直接接触しているが、別の実施形態において、少なくとも1つの発熱体178は、入口管170の外面から離間していてよい。例えば、一部の実施形態において、少なくとも1つの発熱体178と入口管170の外面との間に空間があってよい。一部の実施形態において、少なくとも1つの発熱体178が、第3の加熱ゾーン171に配置された断熱材176に埋め込まれている場合等には、例えば、この空間に耐火材料の薄層を充填することができる。
【0035】
実施形態において、上部加熱ゾーン110と第3の加熱ゾーン171との間に、ベローズ180及び断熱材182を配置して、ダウンカマー管100を成形体入口50に連結することができる。ベローズ180及び断熱材182は、下部加熱ゾーン150の少なくとも一部の周囲に延びている。ベローズ180は、ガラス成形装置10の作動中における、成形体入口50とダウンカマー管100との間の熱膨張差を吸収するアコーディオン構造とすることができる。断熱材182は、例えば、ガラス成形装置10の作動中における成形体入口50とダウンカマー100との間の熱膨張差にも対応することができる、可撓性のブランケット型断熱材とすることができる。実施形態において、断熱材は、例えば、Fiberfrax(登録商標)セラミック繊維ブランケット断熱材、又は同様のブランケット型断熱材であってよい。ベローズ180及び断熱材182は、ダウンカマー管100と成形体入口50とが交差する部分を包囲する領域の温度勾配の制御を補助することもできる。
【0036】
本明細書に記載の実施形態において、ダウンカマー管100の第1のセクション102、第2のセクション、及びトランジションセクション106、並びに入口管170は、ダウンカマー管100及び入口管170が(酸化等によって)容易に劣化せず、ダウンカマー管100及び入口管170を通して流れる溶融ガラスを汚染しないように、高温で劣化し難い材料で形成することができる。適切な材料には、白金又は白金合金、例えば、約70%~約100%の白金及び約30%~約0%のロジウムを含む合金が含まれるが、これに限定されるものではない。少なくとも1つの発熱体122、少なくとも1つの発熱体156、及び少なくとも1つの発熱体178は、電気抵抗発熱材料で構成されたワイヤー、ロッド等の形態であってよい。適切な電気抵抗発熱材料には、白金、白金合金、二ケイ化モリブデン、カンタルAPM、カンタルA-1、カンタルAが含まれるが、これに限定されるものではない。上部加熱ゾーン110の断熱材120、下部加熱ゾーン150の断熱材154、断熱層162の断熱材164、及び第3の加熱ゾーン171の断熱材176は、耐火材料であってよい。適切な耐火材料には、IFB2300、IFB2600、IFB2800、IFB3000、NA33、Duraboard3000、Fiberfax Duraboard3000、Fiberfax2300、Fiberfax2600、Fiberfax3000、Alundum485、Alundum498、EA139cement、EA198cement、Durablanket2600 6#、及びAltra KVS161が含まれるが、これに限定されるものではない。上部加熱ゾーン110の外側クラッド124、及びトランジションフランジ126の外側フランジ127は、高温腐食耐性を有し、上部加熱ゾーン110の外側カバーとして、耐用年数を延ばす耐熱合金から形成することができる。適切な材料には、ヘインズ230合金、300系ステンレス鋼、400系ステンレス鋼等が含まれるがこれに限定されるものではない。下部制御雰囲気エンクロージャー155の外部シールド158及び底部フランジ160、並びにトランジションフランジ126の内側フランジ128及び拡張ドラム130は、外部シールド158、底部フランジ160、内側フランジ128、及び拡張ドラム130が(酸化等によって)容易に劣化せず、ダウンカマー管100の出口端109から成形体入口50に流入する溶融ガラスを汚染しないように、又は下部制御雰囲気エンクロージャー155内に空気が漏れるのを防止できるように、高温で劣化し難い材料から形成することができる。適切な材料には、白金又は白金合金、例えば、約70%~約100%の白金及び約30%~約0%のロジウムを含む合金が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0037】
ここで、
図1及び5において、溶融ガラス(
図5において、MG)は、ダウンカマー48を介して送達容器48から出て、ダウンカマー管100を通して流れる。溶融ガラスがダウンカマー管100の第1のセクション102を通して流れる際、溶融ガラスは、上部加熱ゾーン110内において、少なくとも1つの発熱体122によって加熱され、溶融ガラスからの熱損失が断熱材120によって軽減される。その後、溶融ガラスは、下部制御雰囲気エンクロージャー155に囲まれた、ダウンカマー管100の第2のセクション104に流込し、成形体入口50に向かって流れる。下部制御雰囲気エンクロージャー155の上流部分が、成形体入口50の外部に配置される一方、下部制御雰囲気エンクロージャー155の下流部分が、成形体入口50内に配置される。下部制御雰囲気エンクロージャー155に囲まれた、第2のセクション104を通して流れる溶融ガラスは、下部制御雰囲気エンクロージャー155内に配置された、少なくとも1つの発熱体156によって加熱され、下部制御雰囲気エンクロージャー155の断熱材154によって、溶融ガラスからの熱損失が軽減される。
【0038】
特に、成形体入口50の外部に位置する、下部制御雰囲気エンクロージャー155の上流部分における溶融ガラスからの熱損失は、下部制御雰囲気エンクロージャー155内に配置された少なくとも1つの発熱体156を用いて、溶融ガラスを加熱することによって、軽減することができ、それによって、溶融ガラスがダウンカマー48から成形体入口50に移行するとき、溶融ガラスの粘度及び流動特性が維持される。更に、下部制御雰囲気エンクロージャー155内に配置された少なくとも1つの発熱体156を用いて、溶融ガラスを加熱すると共に、この加熱を、成形体入口50に配置された少なくとも1つの発熱体178(即ち、第3の加熱ゾーン171内の少なくとも1つの発熱体178)の加熱で補完することができるため、下部制御雰囲気エンクロージャー155の下流部分における溶融ガラスからの熱損失を軽減することができ、それによって、溶融ガラスがダウンカマー管100から成形体入口50に流入する際の溶融ガラスの粘度及び流動特性が維持される。
【0039】
ダウンカマー管100を通して流れる溶融ガラスを加熱することに加えて、下部制御雰囲気エンクロージャー155の密閉容積によって、ダウンカマー48と成形体との間の領域におけるダウンカマー管100の酸化を防止する等、酸化を抑制することによって、ガラス成形装置10の作動中のダウンカマー管100の劣化が軽減される。更に、下部制御雰囲気エンクロージャー155が、ダウンカマー管100を透過する水素を抑制することによって、ガラス中のブリスター欠陥のリスクが減少する。
【0040】
成形体入口50に入った後、溶融ガラスは成形体60のトラフ62に流入する。トラフ62内の溶融ガラスは、トラフ62を包囲する一対の堰64を越え、成形体60の根底部68で収束する一対の成形面66を下方(-Z方向)に流れ、根底部68から延伸されるガラスリボン12が成形される。
【実施例】
【0041】
本明細書に記載の実施形態は、以下の実施例によって更に明確になる。
【0042】
比較例1
図5及び6Aにおいて、
図6Aは、下部加熱ゾーン150、即ち、ダウンカマー管100の第2のセクション104の周囲に配置された下部加熱ゾーン150、又は下部制御雰囲気エンクロージャー155を備えていない、
図5に示すトランジション領域190内のダウンカマー管100の第2のセクション104を通して流れる溶融ガラスの熱分析モデルを示す図である。熱分析モデルは上部加熱ゾーン110、第3の加熱ゾーン171、並びにベローズ180及び断熱材182を備えている。断熱材182は上部加熱ゾーン110と第3の加熱ゾーン171との間にギャップ184を有している、即ち、熱分析モデルは、断熱材182に存在するギャップ184をシミュレートする。ダウンカマー管100の第2のセクション104の周囲に配置された下部加熱ゾーン150を備えていない、トランジション領域190を通して流れる溶融ガラスの温度変化を
図6Aに示す。
図6Aの位置「A」において、上部加熱ゾーン110内の溶融ガラスの温度は約1100℃である。
図6Aの位置「B」において、上部加熱ゾーン110と第3の加熱ゾーン171との間、かつ断熱材182のギャップ184の近傍における溶融ガラスの温度は約900℃である。
図6Aの位置「C」において、入口管170の内部及び第3の加熱ゾーンにおける溶融ガラスの温度は約1045℃である。従って、ダウンカマー管100の第2のセクション104の周囲に配置された下部加熱ゾーン150を備えていない場合、トランジション領域190を通して流れる溶融ガラスが成形体入口50に流入する前に、温度が約200℃だけ低下する(-ΔT)。ガラスの温度が200℃低下すると、ガラスの粘度レベルが上昇するため、ダウンカマー管100内部の溶融ガラスの流れが「閉塞」される場合があり得ることを理解されたい。例えば、モデルシミュレーション(図示せず)は、溶融ガラスの温度が200℃低下したとき、ダウンカマー管100を通して実現された溶融ガラスの流量が、目標流量の僅か16%であったことを示している。
【0043】
実施例1
図5及び6Bにおいて、
図6Bは、ダウンカマー管100の第2のセクション104の周囲に配置された下部加熱ゾーン150を備えた、
図5に示すトランジション領域190を通して流れる溶融ガラスの熱分析モデルを示す図である。熱分析モデルは、上部加熱ゾーン110、下部加熱ゾーン150、第3の加熱ゾーン171、ベローズ180、及び上部加熱ゾーン110と第3の加熱ゾーン171との間に、間隙184を有する断熱材182を備えている。熱分析モデルは、位置「a」における下部加熱ゾーン150の温度が約1000℃、位置「b」における温度が約1020℃、及び位置「c」における温度が約1050℃であることをシミュレートする。
図6Bの位置「A」において、上部加熱ゾーン110内の溶融ガラスの温度は約1100℃である。
図6Bの位置「B」において、上部加熱ゾーン110と第3の加熱ゾーン171との間(断熱材182のギャップ184の近傍)の溶融ガラスの温度は約1050℃である。
図6Bの位置「C」において、入口管170内部の溶融ガラスの温度は約1060℃である。従って、ダウンカマー管100の第2のセクション104の周囲に配置された下部加熱ゾーン150を備えた場合、トランジション領域190を通して流れる溶融ガラスの温度は、約50℃だけ低下する(-ΔT)。ダウンカマー管100の第2のセクション104の周囲に配置された下部加熱ゾーン150を備えていないトランジション領域190を通して流れる溶融ガラスと比較すると、約150℃(約75%)の温度変動の抑制は、ダウンカマー管100の第2のセクション104の周囲に配置された下部加熱ゾーン150によってもたらされる。トランジション領域190を通して流れる溶融ガラスの温度低下又は変動の抑制によって、溶融ガラスの粘度変動の低下がもたらされ得ることを理解されたい。比較例1及び実施例1に関する、トランジション領域190におけるダウンカマー管100の第2のセクション104を通して流れる溶融ガラスの温度低下(-ΔT)の要約を以下の表1に示す。
【0044】
【0045】
図5及び7において、
図5に示すトランジション領域190を流れる溶融ガラスの熱分析モデルを
図7に示す。特に、
図7は、第2のセクション104の一部及び下部加熱ゾーン150が、少なくとも部分的に成形体入口50内に配置された、
図5のトランジション領域190の熱分析モデルを示している。熱分析モデルは、下部加熱ゾーン150の上部の周囲に延びる断熱層162も備えている。
【0046】
比較例2
図7及び
図8Aにおいて、
図8Aはダウンカマー管100(
図7には示してない)の第2のセクション104の周囲に配置された下部加熱ゾーン150を備えていない、
図7に示す熱分析モデルのトランジション領域190内のダウンカマー管100の第2のセクション104に沿った距離(Z方向)を関数とする温度をグラフィック的に示す図である。特に、
図8Aは、上部加熱ゾーン110内の位置(-4~0インチ、-10~0cm)及び上部加熱ゾーン110の下流の位置(0~10インチ、0~25cm、「104」とラベル付けされている)を関数とする、第2のセクション104の温度(図では「管」とラベル付けされている)及び第2のセクション104内の溶融ガラスの平均温度(図では「平均」とラベル付けされている)をグラフィック表示している。ダウンカマー管100の第2のセクション104を通して流れる溶融ガラスは、毎時93.2ポンド(ポンド/時)(42.3kg /時)の流量を有している。3230ワット(W)の電力が第3の加熱ゾーン171に印加される。ダウンカマー管100の第2のセクション104の温度(管)及び上部加熱ゾーン110内(約-4~0インチ、-10~0cm)の溶融ガラスの平均温度(平均)は約1243℃である。ダウンカマー管100の第2のセクション104の周囲に配置された下部加熱ゾーン150を備えていない場合、上部加熱ゾーン110から下流に約3インチ(即ち、約8cm)の距離において、ダウンカマー管100の第2セクション104の温度及び上部加熱ゾーン110の下流の溶融ガラスの平均温度は、それぞれ約1225℃及び1230℃に低下し、上部加熱ゾーン110から下流に約10インチ(即ち、約25cm)の距離において、それぞれ約1267℃及び1256℃に上昇する。従って、ダウンカマー管100の第2のセクション104及び上部加熱ゾーン110の下流の溶融ガラスの平均温度(0~10インチ、約0~25cm)の温度変動は、それぞれ約42℃及び約26℃である。
【0047】
実施例2
図7及び8Bにおいて、
図8Bは、ダウンカマー管100の第2のセクション104の周囲に配置された下部加熱ゾーン150、及びダウンカマー管100の第2のセクション104の周囲に配置された断熱層162を備えた、
図7に示す熱分析モデルについて、トランジション領域190内のダウンカマー管100の第2の部分104に沿った距離を関数とする温度をグラフィック的に示す図である。
図8Bは、上部加熱ゾーン110内の位置(-4~0インチ、-10~0cm、「110」とトラベル付けされている)、上部加熱ゾーン110下流の下部加熱ゾーン150及び断熱層内の位置(0~5インチ、0~13cm、「150+162」とラベル付けされている)、断熱層162下流の下部加熱ゾーン150内の位置(5~7.5インチ、13~19cm、「150」とラベル付けされている)、及び下部加熱ゾーン150下流の第2のセクション104の非断熱部分内の位置(7.5~10インチ、19~25cm、「104b」とラベル付けされている)を関数とする、第2のセクション104の温度(図では「管」とラベル付けされている)及び第2のセクション104内の溶融ガラスの平均温度(図では「平均」とラベル付けされている)をグラフィック表示している。ダウンカマー管100の第2のセクション104を通して流れる溶融ガラスは、毎時93.2ポンド(ポンド/時)(42.3kg /時)の流量を有している。290Wの電力が下部加熱領域150に印加され、2200Wの電力が第3の加熱領域171に印加される(総電力=290W+2200W=2490W)。ダウンカマー管100の第2のセクション104の温度(管)及び上部加熱ゾーン110内(約-4~0インチ、-10~0cm)の溶融ガラスの平均温度(平均)は約1243℃である。下部加熱ゾーン150及び断熱層162内の位置(0~5インチ、0~13cm)に配置された第2のセクション104の温度、及び溶融ガラスの平均温度は、上部加熱ゾーン110から下流に約4インチ(10cm)の距離において、それぞれ1245℃及び1244℃に上昇する。下部加熱ゾーン150の断熱層162の内部(5~7.5インチ、13~19cm)に配置された第2のセクション104の温度、及び溶融ガラスの平均温度は、上部加熱ゾーン110から下流に約8インチ(20cm)の距離において、それぞれ約1238℃及び1241℃に低下する。下部加熱ゾーン150の下流(7.5~10インチ、19~25cm)に配置された第2のセクション104の温度及び溶融ガラスの平均温度は、上部加熱ゾーン110から約10インチ(25cm)下流の位置において、それぞれ約1248℃及び1245℃に上昇する。従って、ダウンカマー管100の第2のセクション104及び上部加熱ゾーン110下流の溶融ガラスの平均温度(0~10インチ、約0~25cm)の温度変動は、それぞれ、約8℃及び約4℃である。即ち、下部加熱ゾーン150及び絶縁層162が、ダウンカマー管100の第2のセクション104の周囲に配置された場合、下部加熱ゾーン150及び断熱層162がダウンカマー管100の第2のセクション104の周囲に配置されていない場合と比較して、上部加熱ゾーン110下流のダウンカマー管100の第2のセクション104、及び第2のセクション104内の溶融ガラスの平均温度の温度変動が、それぞれ35℃及び22℃だけ減少する。温度変動の減少により、特に、ガラスリボン成形キャンペーン中に、粘度が異なる複数のガラスが使用される場合、ガラス脈動を減少させることができ、それによって、ガラスリボン(即ち、Z軸)に沿って、又はガラスリボンを横断(即ち、X軸)して、厚さ変動が抑制し、製造損失が減少する。当然のことながら、ダウンカマー管100の第2のセクション104の周囲に下部加熱ゾーン150が配置された場合、より少ない電力でこの温度変動を抑制することができる、即ち、下部加熱ゾーン150が、ダウンカマー管100の第2のセクション104の周囲に配置されていない場合、第3の加熱ゾーン171に供給される電力は3230Wであり、下部加熱ゾーン150が、ダウンカマー管100の第2のセクション104の周囲に配置されている場合、下部加熱ゾーン150及び第3の加熱ゾーン171に供給される全電力は僅か2490Wである。比較例2及び実施例2に関する、トランジション領域190におけるダウンカマー管100の第2のセクション104を通して流れる溶融ガラスの温度変動(ΔT)の要約を以下の表2に示す。
【0048】
【0049】
前述に基づき、本明細書に記載のダウンカマー及び方法は、ダウンカマー管100を通して成形体入口に流入する溶融ガラスの温度変動を抑制することができることが理解されるであろう。また、本明細書に記載のダウンカマー及び方法は、ダウンカマーを通して成形体入口に流入する溶融ガラスの温度及び粘度の制御性を高めることができる。本明細書に記載のダウンカマー及び方法を用いて、ガラスリボン成形キャンペーン中に使用される異なるガラスを補償して、ガラスの脈動を抑制又は排除することができる。上部加熱ゾーンの下方において、少なくとも部分的に成形体入口内に配置された下部加熱ゾーンを有するダウンカマー管を使用することによって、上部加熱ゾーンと成形体入口との間の領域に局所的な加熱をもたらし、より均一なガラスの温度及びガラスの粘度を得ることができる。溶融ガラスの温度を操作することによって、所与のガラスリボン成形キャンペーン中に処理される異なるガラスの補償に用いることができる、溶融ガラス粘度の操作が可能になる。
【0050】
本明細書では、ダウンカマーについて特に説明したが、溶融ガラス送達容器から流出する溶融ガラスの温度変動が抑制される、溶融ガラス送達容器と成形体との間の任意のトランジションシステムが、本明細書に図示及び記載の実施形態に含まれていることが理解されるであろう。
【0051】
特許請求した主題の精神及び範囲から逸脱せずに、本明細書に記載の実施形態に対し、様々な改良及び変更が可能であることは当業者には明らかであろう。従って、本明細書は、かかる改良及び変形が、添付の特許請求の範囲及びその均等物に属することを条件に、本明細書に記載の様々な実施形態に対する改良及び変形を網羅していることを意図するものである。
【0052】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0053】
実施形態1
ガラス成形装置のダウンカマーであって、
溶融ガラスを受け取る入口端部、成形体の入口に溶融ガラスを排出する出口端部、上部加熱ゾーン、及び前記上部加熱ゾーンの下流の前記出口端部の近傍に配置された下部加熱ゾーンを備えたダウンカマー管と、
前記下部加熱ゾーンにおいて、前記ダウンカマー管の周囲に配置固定された下部制御雰囲気エンクロージャーであって、少なくとも1つの発熱体を備えたエンクロージャーと、
を含むダウンカマー。
【0054】
実施形態2
前記下部制御雰囲気エンクロージャーが、前記ダウンカマー管の前記出口端部から離間している、実施形態1記載のダウンカマー。
【0055】
実施形態3
前記ダウンカマー管の前記出口端部、及び前記下部制御雰囲気エンクロージャーが、前記成形体の前記入口内に配置されている、実施形態1又は2記載のダウンカマー。
【0056】
実施形態4
前記下部制御雰囲気エンクロージャーの少なくとも一部の周囲に延びる、断熱層を更に備えた、実施形態1~3いずれか1つに記載のダウンカマー。
【0057】
実施形態5
前記下部制御雰囲気エンクロージャーが、
前記上部加熱ゾーンと前記下部加熱ゾーンとの間において、前記ダウンカマー管に連結され、該管を包囲するトランジションフランジと、
前記ダウンカマー管に連結され該管を包囲し、前記トランジションフランジの下流に配置された底部フランジと、
前記ダウンカマー管を包囲し、前記トランジションフランジ、及び前記底部フランジに接続された外部シールドであって、該シールド、前記トランジションフランジ、及び前記底部フランジによって、前記ダウンカマー管の周囲に、前記下部制御雰囲気エンクロージャーを形成する、シールドと、
を備えた、実施形態1~4いずれか1つに記載のダウンカマー。
【0058】
実施形態6
前記底部フランジが、前記ダウンカマー管の前記出口端部から、約25mm~約75mmの距離だけ離間している、実施形態5記載のダウンカマー。
【0059】
実施形態7
前記トランジションフランジが、外側フランジ、内側フランジ、及び前記外側フランジから前記内側フランジに延びる拡張ドラムを有し、該ドラムが、上部が外側フランジに固定連結され、下部が内側フランジに固定連結された「S字」構成を成している、実施形態5又は6記載のダウンカマー。
【0060】
実施形態8
前記拡張ドラムが、前記上部及び前記下部と一体成形され、前記下部が、「S字」構成に配置された一対の肩部を介して前記上部に移行している、実施形態7記載のダウンカマー。
【0061】
実施形態9
前記外側フランジが、外側フランジ厚を有し、前記内側フランジが、内側フランジ厚を有し、前記拡張ドラムが、前記外側フランジ厚及び前記内側フランジ厚より小さい拡張ドラム厚を有する、実施形態7又は8記載のダウンカマー。
【0062】
実施形態10
前記外側フランジが耐熱合金を含み、前記内側フランジ及び前記拡張ドラムが白金合金を含む、実施形態7~9いずれか1つに記載のダウンカマー。
【0063】
実施形態11
ガラス成形装置であって、
溶融ガラス送達装置と、
成形体入口を備えた成形体と、
前記溶融ガラス送達装置から溶融ガラスを受け取る入口端部、及び前記成形体入口に溶融ガラスを排出する出口端部を備えたダウンカマー管と、
前記ダウンカマー管を包囲する上部加熱ゾーンと、
前記ダウンカマー管を包囲し、前記上部加熱ゾーンの下流の前記出口端部の近傍に配置された下部加熱ゾーンと、
前記上部加熱ゾーンと前記下部加熱ゾーンとの間において、前記ダウンカマー管に連結され、該管を包囲するトランジションフランジであって、外側フランジ、内側フランジ、及び前記外側フランジから前記内側フランジに延びる拡張ドラムを備え、該ドラムが、該ドラムの上部が前記外側フランジに固定連結され、該ドラムの下部が前記内側フランジに固定連結された「S字」構成を成している、フランジと、
を備えた装置。
【0064】
実施形態12
前記拡張ドラムが、前記上部及び前記下部と一体成形され、前記下部が、「S字」構成に配置された一対の肩部を介して前記上部に移行している、実施形態11記載のガラス成形装置。
【0065】
実施形態13
前記外側フランジが、外側フランジ厚を有し、前記内側フランジが、内側フランジ厚を有し、前記拡張ドラムが、前記外側フランジ厚及び前記内側フランジ厚より小さい拡張ドラム厚を有している、実施形態11又は12記載のガラス成形装置。
【0066】
実施形態14
前記外側フランジが耐熱合金を含み、前記内側フランジ及び前記拡張ドラムが白金合金を含む、実施形態11~13いずれか1つに記載のガラス成形装置。
【0067】
実施形態15
前記トランジションフランジの下流に配置され、前記ダウンカマー管に連結され該管を包囲する底部フランジと、
前記ダウンカマー管を包囲し、前記トランジションフランジ、及び前記底部フランジに接続された外部シールドであって、該シールド、前記トランジションフランジ、及び前記底部フランジによって、前記下部加熱ゾーンにおいて、前記ダウンカマー管の周囲に配置固定された、下部制御雰囲気エンクロージャーを形成する、シールドと、
を更に備えた、実施形態11~14いずれか1つに記載のガラス成形装置。
【0068】
実施形態16
前記ダウンカマー管の前記出口端部及び前記下部制御雰囲気エンクロージャーの少なくとも一部が、前記成形体の前記成形体入口内に配置されている、実施形態15記載のガラス成形装置。
【0069】
実施形態17
前記下部制御雰囲気エンクロージャーの少なくとも一部の周囲に延びる、断熱層を更に備えた、実施形態15又は16記載のガラス成形装置。
【0070】
実施形態18
前記底部フランジが、前記ダウンカマー管の前記出口端部から約25mm~約75mmの距離だけ離間している、実施形態15~17いずれか1つに記載のガラス成形装置。
【0071】
実施形態19
ガラスリボンを成形する方法であって、
ダウンカマー管を通して溶融ガラスを流すステップと、
前記ダウンカマー管を包囲する上部加熱ゾーン、及び該ゾーンの下流に配置され、前記ダウンカマー管を包囲する下部加熱ゾーンを用いて、前記ダウンカマー管を通して流れる前記溶融ガラスを加熱するステップと、
前記溶融ガラスを、前記ダウンカマー管の出口端部を通して、成形体の成形体入口に排出するステップであって、前記出力端部及び前記下部加熱ゾーンの一部が、前記成形体入口内に配置される、ステップと、
前記ダウンカマー管の前記出口端部から排出された前記溶融ガラスを、前記成形体のトラフ、該トラフを包囲する一対の堰を越えて、該堰から延び前記成形体の根底部で収束する一対の成形面上を下方に流すステップであって、前記一対の成形面上を流れ下ったガラスによって、前記成形体の前記根底部においてガラスリボンが形成される、ステップと、
を含む方法。
【0072】
実施形態20
前記ダウンカマー管を包囲し、前記上部加熱ゾーンと前記下部加熱ゾーンとの間に配置されたトランジションフランジを用いて、前記上部加熱フランジに対する前記ダウンカマー管の前記出口端部の相対移動を調整するステップであって、前記トランジションフランジが、外側フランジ、内側フランジ、及び前記外側フランジから前記内側フランジに延びる拡張ドラムを備え、該ドラムが、上部が前記外側フランジに固定連結され、下部が前記内側フランジに固定連結された「S字」構成を成す、ステップを更に備えた、実施形態19記載の方法。
【符号の説明】
【0073】
10 ガラス製造装置
12 ガラスリボン
46 送達容器
48 ダウンカマー
50 成形体入口
60 成形体
62 トラフ
64 堰
66 成形面
68 根底部
100 ダウンカマー管
101 入口端部
109 出口端部
110 上部加熱ゾーン
120、154、164、176、182 断熱材
122、156、178 発熱体
125 上部制御雰囲気エンクロージャー
126 トランジションフランジ
127 外側フランジ
128 内側フランジ
130 拡張ドラム
150 下部加熱ゾーン
155 下部制御雰囲気エンクロージャー
160 底部フランジ
162 断熱層
170 入口管
171 第3の加熱ゾーン
180 ベローズ
190 トランジション領域