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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 15/00 20060101AFI20220516BHJP
   B23B 3/16 20060101ALI20220516BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20220516BHJP
   B23B 3/30 20060101ALN20220516BHJP
【FI】
B23Q15/00 J
B23B3/16 A
G05B19/18 C
B23B3/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019542042
(86)(22)【出願日】2018-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2018033431
(87)【国際公開番号】W WO2019054329
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】P 2017174455
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 孝哲
(72)【発明者】
【氏名】山浦 充瑠
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-138402(JP,A)
【文献】特開2002-205202(JP,A)
【文献】特開2008-279570(JP,A)
【文献】特開平10-027013(JP,A)
【文献】特開平11-110019(JP,A)
【文献】特許第4677062(JP,B2)
【文献】特許第2800124(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 15/00 - 15/28
G05B 19/18 - 19/416
G05B 19/42 - 19/46
B23B 3/00 - 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X軸方向に移動可能な主軸台と、
前記X軸方向と前記X軸方向に傾斜して交差する方向の移動軸を有し、前記主軸台に対して移動可能な工具台と、
前記工具台と前記主軸台の移動の重畳制御を行う制御部と、を備え、
前記工具台は、2つの前記移動軸に沿った移動の合成により前記X軸に直交するY軸方向に移動可能であり、
前記制御部は、前記工具台の前記Y軸方向の移動に伴う、前記重畳制御に基づく前記主軸台の移動のうち、前記工具台の前記Y軸方向の移動を行ったことにより生じる前記工具台のX軸方向の移動に対応する分の移動を規制する規制手段を有する工作機械。
【請求項2】
前記規制手段は、
前記重畳制御に基づく移動の向きと反対向きに、前記重畳制御に基づく移動の量だけ移動させることにより、前記主軸台に対して前記重畳制御に基づく移動を規制する請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記規制手段は、
前記重畳制御に基づく移動が行われる前記工具台に装着される工具の刃先位置を、前記重畳制御における前記主軸台の基準位置として設定することにより、前記主軸台に対して前記重畳制御に基づく移動を規制する請求項1に記載の工作機械。
【請求項4】
前記工具台は、前記X軸の方向に移動する基台と、前記基台の上に設けられ、前記X軸及び前記Y軸にそれぞれ直交するZ軸の方向に移動する中間台と、前記中間台の上に設けられた前記X軸方向に傾斜して交差する方向に移動する支持台とを備えた移動手段の、前記支持台に設置されている請求項1から3のうちいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項5】
前記制御部は、前記工具台を前記Y軸方向へ移動させるときは、両移動軸に沿った各々の移動時の時定数を同一に設定するとともに、両移動軸に沿った移動時の各々の移動速度を、同一時間の移動によってX軸方向への移動が相殺するように設定する請求項1から4のうちいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項6】
前記制御部は、前記Y軸方向へ移動させないときは、前記両移動軸の移動時の時定数を互いに異なる値に設定する請求項5に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
加工対象物を加工する複数の主軸台を有する自動旋盤等の工作機械の場合、所定の主軸台の主軸に保持された加工対象物を工具で加工する工具台の移動に対応して、他の主軸台を重畳制御によって移動させることで、他の主軸台に保持された加工対象物を工具台の工具で同時に加工することがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2800124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、工具台が、X軸(例えば、水平方向)と、X軸に対して傾斜し、直交することなく交差する方向の傾斜Y軸(Ys軸という)とにそれぞれ沿って移動可能とされている場合、工具台を、X軸方向と直交するY軸方向(例えば、鉛直方向)に移動させるときは、X軸方向とYs軸方向との移動を合成する必要がある。
【0005】
しかし、上述した重畳制御を行っている場合、工具台のY軸方向への移動に伴うX軸方向への移動により、重畳制御される主軸台がX軸方向に移動することによって、工具台と主軸台の位置関係を損なう場合があり得る。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、X軸方向とX軸に直交しない傾斜した方向への移動軸を備え、両移動軸の合成によってY軸方向に移動する工具台のY軸方向への移動に伴う、重畳制御による主軸台の移動を規制することができる工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、X軸方向に移動可能な主軸台と、前記X軸方向と前記X軸方向に傾斜して交差する方向の移動軸を有し、前記主軸台に対して移動可能な工具台と、前記工具台と前記主軸台の移動の重畳制御を行う制御部と、を備え、前記工具台は、2つの前記移動軸に沿った移動の合成により前記Y軸方向に移動可能であり、前記制御部は、前記工具台の前記Y軸方向の移動に伴う前記主軸台の前記重畳制御に基づく移動を規制する規制手段を有する工作機械である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る工作機械によれば、X軸方向とX軸に直交しない傾斜した方向への移動軸を備え、両移動軸の合成によってY軸方向に移動する工具台のY軸方向への移動に伴う、重畳制御による主軸台の移動を規制することにより、工具台と主軸台との位置関係を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態である工作機械を示す平面図である。
図2】タレットをZ3軸方向から見た側面図である。
図3】工具が装着されたツールホルダがタレットに取り付けられた状態を示す斜視図である。
図4】相対的に小さい時定数TX2で、かつ移動速度が相対的に速いX2軸移動手段と、相対的に大きい時定数TYsで、かつ移動速度が相対的に遅いYs軸移動手段との、移動速度の過渡的な変化を示すグラフである。
図5】時定数TX2を時定数TYsと同じ値に設定した場合の、X2軸移動手段とYs軸移動手段との、移動速度の過渡的な変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る工作機械の実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態である工作機械100を示す平面図である。工作機械100は、NCの自動旋盤であり、図1に示すように、2つの主軸111,121を備えている。一方の主軸111(以下、第1主軸111という。)は、固定された主軸台110に設けられている。第1主軸111は、例えば棒状のワーク(加工対象物)を、第1主軸111の軸心方向に沿って送り出し可能に把持することができる。
【0011】
他方の主軸121(以下、第2主軸121という。)は、第1主軸111に対向した向きで主軸台120に設けられている。第2主軸121は、軸心方向であるZ3軸が、第1主軸の軸心方向に平行となるように配置されている。主軸台120は、Z3軸方向に沿って移動可能であるとともに、Z3軸に直交する水平方向(X3軸方向)に移動可能に設けられている。
【0012】
工作機械100は、主軸台120をZ3軸方向に移動させるZ3軸移動手段141と、主軸台120をX3軸方向に移動させるX3軸移動手段142とを備えている。Z3軸移動手段141及びX3軸移動手段142は、いずれも、電動モータと電動モータの軸の回転に同期して回転するボールねじとによって構成されている。各ボールねじは、Z3軸方向、X3軸方向に延びている。
【0013】
第1主軸111と第2主軸121との間には、タレット工具台131(以下、タレット131という。)が軸C回りに回転及び位置決め自在に設けられている。タレット131には、軸C回りの周面に形成された複数(本実施例においては、一例として12)のタレット面に、バイトやドリル等の工具を保持する。タレット131は、図2に示すように、タレット移動手段147によって、第1主軸111と第2主軸121のそれぞれに対して移動可能に設けられている。
【0014】
タレット移動手段147は、X3軸と平行なX2軸方向に延びたレール146aと、レール146aに載ってX2軸方向に移動可能の基台146bと、基台146bに載って、Z1軸及びZ3軸と平行なZ2軸方向に移動可能の中間台146cと、中間台146cに載って、Z2軸に直交し、X2軸に直交しないYs軸方向に移動可能の支持台146dとを備えている。タレット131は支持台146dに、Z2軸に平行な軸C回りに回転自在に設けられている。なお、Ys軸は、Z2軸に直交する鉛直方向であるY軸方向に対して傾斜した方向に延び、X軸方向に傾斜して交差する。
【0015】
また、タレット移動手段147は、タレット131をX2軸方向に移動させるX2軸移動手段143と、タレット131をZ2軸方向に移動させるZ2軸移動手段144と、タレット131をYs軸方向に移動させるYs軸移動手段145とを備えている。したがって、タレット131は、Z2軸方向、X2軸方向及びYs軸方向への3つの移動軸を有し、主軸台110,120に対して各移動軸に沿って移動可能である。X2軸移動手段143、Z2軸移動手段144及びYs軸移動手段145は、いずれも、電動モータと電動モータの軸の回転に同期して回転するボールねじとによって構成されている。各ボールねじは、X2軸方向、Z2軸方向、Ys軸方向に延びている。
【0016】
X2軸移動手段143によってX2軸方向に移動される基台146bに、Z2軸移動手段144が載り、Z2軸移動手段144によってZ2軸方向に移動される中間台146cに、Ys軸移動手段145が載った構成となっている。そしてYs軸移動手段145によってYs軸方向に移動される支持台146dに、タレット131が載っている。
【0017】
また、工作機械100は、タレット131の回転駆動に加えて、Z3軸移動手段141、X3軸移動手段142、X2軸移動手段143、Z2軸移動手段144、Ys軸移動手段145の各動作等を制御する制御装置150を備えている。制御装置150は、従来同様、タレット131を所定の回転位置に旋回させ、第2主軸121、タレット131を特定の位置に移動させるように制御することができる。
【0018】
工作機械100は、制御装置150の制御により、タレット131を軸C回りに回転させ、特定のタレット面に保持された工具を選択し、第2主軸121、タレット131を特定の位置に移動させることによって、選択された工具で、第1主軸111に保持されたワーク又は第2主軸121に保持されたワークを加工することができる。
【0019】
タレット131に、第1主軸111に保持されたワークを加工する工具と、第2主軸121に保持されたワークを加工する工具とを装着し、タレット131の回転によって一方の工具を対応する第1主軸111又は第2主軸121に対して選択することによって、他方の工具が第2主軸121又は第1主軸111に対して選択されるように、両工具を配置することができる。
【0020】
工作機械100は、第1主軸111に保持されたワークに対して、予め設定された加工を行うために、タレット131の移動を制御する際に、制御装置150が、タレット131と第2主軸121の移動を重畳制御することによって、第1主軸111に保持されたワークの加工と同時に、第2主軸121に保持されたワークに対しても加工を行うことができる。
【0021】
タレット131には、ツールホルダ160を介して各工具が装着される。例えば図3に示すように、ツールホルダ160には、第1主軸111のワークを加工する工具161,163が装着され、第2主軸121のワークを加工する工具162,164が装着されている。
【0022】
本実施形態においては、工具161の刃先と工具162の刃先と、及び工具163の刃先と工具164の刃先とは、それぞれ、X軸方向(X2軸及びX3軸に平行な方向)の位置及びY軸方向の位置が同じで、Z軸方向(Z2軸及びZ3軸に平行な方向)の位置が異なる。また、工具161の刃先に対する工具163の刃先及び工具162の刃先に対する工具164の刃先は、X軸方向の位置は同じで、Y軸方向の位置が異なる。
【0023】
重畳制御が行われている状態を維持して、工具161を工具163に変更する場合、タレット131は、工具163の刃先を工具161の刃先の位置P2aに移動する。
【0024】
工具161から工具163への選択の変更は、タレット131をY軸方向に移動させることによって行うことができる。工具161から工具163への選択の変更によって、工具162から工具164に選択が変更される。タレット131のY軸方向への移動は、Ys軸移動手段145によるYs軸方向に沿った移動と、X2軸移動手段143によるX2軸方向に沿った移動の合成移動によって行われる。
【0025】
タレット131のY軸方向への移動の際は、Ys軸移動手段145の動作に応じて、X2軸移動手段143が動作し、タレット131のX2軸方向への移動が発生する。制御装置150は、重畳制御が行われている状態を維持して、タレット131をY軸方向に移動させる場合、重畳制御に応じた、タレット131のY軸方向の移動に伴うX2軸移動手段143の動作に対応するX3軸移動手段142による第2主軸121の移動を規制するように制御を行う。
【0026】
これにより、Y軸方向に並んだ工具161,163での加工を切り替え、工具162,164での加工を切り替えた場合にも、その切り替えの際のタレット131の移動に、X3軸移動手段が追従しないため、切り替えられて新たに基準位置に配置された工具163に対して、第2主軸121が位置ずれするのを防止して、重畳制御で第2主軸121を適切に移動させることができる。このように、制御装置150は、タレット131のY軸方向の移動に伴うX軸方向への移動を、主軸台120の重畳制御に基づく移動では行わないように規制する規制手段として機能する。
【0027】
制御装置150が規制手段として機能する際の制御としては、例えば、タレット131のY軸方向への移動の際、第2主軸121の重畳制御に基づく移動を、タレット131のX軸方向の座標位置を基準として行うように構成することができる。タレット131に対して工具164の刃先の位置は予め定められるため、タレット131に装着される工具164の刃先位置が、第2主軸121の重畳制御に基づく移動の基準位置に設定される。重畳制御を行う基準位置を工具164の刃先の位置に設定することによって、タレット131のY軸方向の移動に伴う、第2主軸121の重畳制御に基づく移動規制の制御を簡単に行うことができる。
【0028】
制御装置150が規制手段として機能する際の制御は、タレット131のY軸方向への移動に伴う第2主軸121の重畳制御に基づくX軸方向への移動の向きと反対向きに、重畳制御に基づくX軸方向への移動の量(距離や座標)だけ加算し、位置決め制御して移動させるようにしてもよい。この場合、制御装置150内部での処理になり、重畳制御を中断することなく、加工のための、タレット131に対する第2主軸121の相対的な移動と同じ処理で実現することができる。
【0029】
工作機械100の各軸の移動手段の時定数は、移動手段を早く移動させるために各々予め小さい値(最小値)に設定されている。X2軸方向の時定数TX2はYs軸方向の時定数TYsよりも小さく、X2軸方向への一定の移動速度VX2はYs軸方向への一定の移動速度VYsよりも大きく設定されている。
【0030】
ここで、X2軸移動手段143によるX2軸方向への移動時の時定数TX2とは、タレット131のX2軸方向への移動速度が0から一定の移動速度VX2に達するまでの時間であり、時定数TX2が小さい程、一定の移動速度VX2に達するまでに要する時間が短くなり、時定数TX2が大きい程、一定の移動速度に達するまでに要する時間が長くなる。
【0031】
同様に、Ys軸移動手段145によるYs軸方向への移動時の時定数TYsとは、タレット131のYs軸方向への移動速度が0から一定の移動速度VYsに達するまでの時間であり、時定数TYsが小さい程、一定の移動速度VYsに達するまでに要する時間が短くなり、時定数TYsが大きい程、一定の移動速度VYsに達するまでに要する時間が長くなる。
【0032】
したがって、予め設定された時定数(時定数TYsよりも小さい値に設定された時定数TX2)のままで、X2軸移動手段143とYs軸移動手段145とを同時に動作させた場合、図4に示すように、X2軸移動手段143によるX2軸方向への移動速度VX2はYs軸移動手段145によるYs軸方向への移動速度VYsよりも早く移動速度VX2に達する。
【0033】
Ys軸方向への移動速度VYsは、X2軸方向への移動速度VX2よりも遅れて移動速度VYsに達する。そのため、2つの軸を同時に動作させた場合、X2軸方向への移動速度VX2とYs軸方向への移動速度VYsで合成(ベクトル和)されたY軸方向の移動速度(図4において太破線で示す)は時間t1まではX2軸方向の増加に応じた移動速度になり、時間t2になったときに一定の移動速度V1に達する。
【0034】
そこで、本実施形態の工作機械100は、X2軸方向への移動とYs軸方向への移動とを組み合わせてタレット131をY軸方向へ移動させるときは、制御装置150が、時定数TX2と時定数TYsとを同一に設定し、X2軸方向への移動が相殺されてY軸方向に沿った移動となるように、X2軸移動手段143によるX2軸方向への移動速度VX2とYs軸移動手段145によるX2軸方向分速度VYs(X2)とが、向きが反対でかつ絶対値が同一となるように、両者の移動速度を調整する。
【0035】
具体的には、時定数TX2を時定数TYsに揃えるように大きくして、時定数TX2と時定数TYsとを同一に設定し、かつX2軸方向の移動が相殺されるように、X2軸移動手段143によるX2軸方向への移動速度VX2を、Ys軸移動手段145によるX2軸方向分速度VYs(X2)と同一になるように調整する。
【0036】
このように、2つの時定数TX2、時定数TYsが同じ値に設定され、かつ両移動軸に沿った移動時の各々の移動速度を、同一時間の移動によってX2軸方向の移動が相殺されるように両軸の移動手段143,145の移動速度が調整されたことにより、X2軸移動手段143とYs軸移動手段145とを同時に動作させた場合、図5に示すように、時間t1と時間t2とが同じ時間で移動速度VX2と移動速度VYsに達し、Ys軸方向への移動とX2軸方向への移動の合成がY軸方向に沿う。
【0037】
したがって、本実施形態の工作機械100は、X2軸方向への移動とYs軸方向への移動とを組み合わせてタレット131をY軸方向へ移動させたとき、Y軸方向への移動速度が一定の移動速度に達するまでの期間において、X2軸方向への移動成分を発生させることなく、Ys軸方向への移動速度とX2軸方向への移動速度の合成がY軸方向への一定の移動速度V2に達するように、Y軸方向に沿う。
【0038】
制御装置150は、タレット131をY軸方向へ移動させずに、Ys軸移動手段145とX2軸移動手段143とを独立して動作させるような場合、時定数TX2を最小値の時定数TX2に設定し、短時間で移動速度VX2に到達させてX2軸移動手段143の移動を速くさせることができる。
【0039】
本実施形態の工作機械100は、時定数TX2が時定数TYsよりも小さい値に設定されているが、これとは反対に、時定数TYsが時定数TX2よりも小さい値に設定されているものでは、Y軸方向へ移動させるとき、制御装置150が、相対的に小さい方の時定数TYsを相対的に大きい方の時定数TX2に揃えるように、時定数TYsを時定数TX2と同じ値に設定すればよい。
【0040】
本実施形態の工作機械100のように、X2軸方向の移動時の時定数TX2又はYs軸方向の移動時の時定数TYs、及びX2軸方向の移動速度VX2又はYs軸方向の移動速度VYsの切り替えは、タレット131がY軸方向に移動する動作か否かに応じて行う他、加工の種類に応じて行うことも可能である。
【0041】
例えば、旋削加工を行うときは、制御装置150が時定数TX2を、予め設定された最小値の時定数に設定し、回転工具を用いて加工(例えば、ミーリング加工)を行うときは、各軸方向の移動速度を調整するとともに、時定数TX2を時定数TYsと同じ値に設定してもよい。
【0042】
また、主軸が回転しているときは、制御装置150が時定数TX2を、予め設定された最小値の時定数に設定し、主軸は回転せずにタレット131に設けられた回転工具が回転しているときは、各軸方向への移動速度を調整するとともに、時定数TX2を時定数TYsと同じ値に設定してもよい。
【0043】
また、タレット131に取り付けられる工具を保持するホルダの種類を表す情報に応じて、X2軸方向の移動時の時定数TX2を、予め設定された最小値の時定数に設定するか、又は時定数TYsと同じ値に設定するとともに、各軸方向への移動速度を調整するように、制御装置150が切り替えてもよい。
【0044】
すなわち、工具ホルダの種類が、外形バイトホルダや内径バイトホルダを表す情報のときは旋削加工であるため、制御装置150が時定数TX2を、予め設定された最小値の時定数に設定し、回転工具ユニットを表す情報のときはミーリング加工のような回転工具を用いた加工であるため、制御装置150が各軸方向への移動速度を調整するとともに、時定数TX2を時定数TYsと同じ値に設定してもよい。
【0045】
また、加工動作を表す加工モードに対応して、旋削加工であるか又は回転工具を用いた加工であるかを判定し、旋削加工を表す加工コードが設定されているときは、制御装置150が時定数TX2を、予め設定された最小値の時定数に設定し、回転工具を用いた加工を表す加工コードが設定されているときは、制御装置150が、各軸方向への移動速度を調整するとともに、時定数TX2を時定数TYsと同じ値に設定してもよい。
【関連出願の相互参照】
【0046】
本出願は、2017年9月12日に日本国特許庁に出願された特願2017-174455に基づいて優先権を主張し、その全ての開示は完全に本明細書で参照により組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5