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▶ ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】低屈折率を有する光学コーティング
(51)【国際特許分類】
   C09D 129/04 20060101AFI20220516BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20220516BHJP
   C09D 183/00 20060101ALI20220516BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20220516BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220516BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220516BHJP
   C09D 7/43 20180101ALI20220516BHJP
   C09D 7/47 20180101ALI20220516BHJP
   C09D 7/48 20180101ALI20220516BHJP
【FI】
C09D129/04
C09D133/14
C09D183/00
C09D7/62
B05D7/24 302Y
B05D7/24 303B
B32B27/18 Z
C09D7/43
C09D7/47
C09D7/48
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019547776
(86)(22)【出願日】2017-11-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2017079789
(87)【国際公開番号】W WO2018095866
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-10-16
(31)【優先権主張番号】16200087.1
(32)【優先日】2016-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ゲベルス,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】クラッベンボルク,スフェン オレ
(72)【発明者】
【氏名】クェス,ヤン-ベルント
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-076045(JP,A)
【文献】特開2015-108061(JP,A)
【文献】特開2010-007013(JP,A)
【文献】特開2010-053305(JP,A)
【文献】特開2009-040629(JP,A)
【文献】特表2002-526564(JP,A)
【文献】特開2017-171799(JP,A)
【文献】特開2007-008088(JP,A)
【文献】特開2005-350515(JP,A)
【文献】特開2011-208085(JP,A)
【文献】特開2010-237279(JP,A)
【文献】特開2011-132486(JP,A)
【文献】特開2007-099884(JP,A)
【文献】特開2008-285530(JP,A)
【文献】特開2012-170859(JP,A)
【文献】特表2016-525963(JP,A)
【文献】特開2002-362048(JP,A)
【文献】特表平06-510237(JP,A)
【文献】特開2003-118261(JP,A)
【文献】国際公開第2013/019770(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1669465(KR,B1)
【文献】特開2011-042546(JP,A)
【文献】特開2007-119345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 129/04
B05D 7/24
B32B 27/18
C09D 7/43
C09D 7/47
C09D 7/48
C09D 7/62
C09D 133/14
C09D 183/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルアルコールポリマー、ヒドロキシアルキルアクリレートポリマー、およびビニルアルコール及び/又はヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートから誘導される少なくとも90%の繰り返し単位からなるコポリマーから選択される、ヒドロキシ基を含有する極性ポリマーを含有し、及びテトラアルコキシシラン、及び正電荷の表面を有する変性シリカナノ粒子をさらに含有前記変性シリカナノ粒子と前記極性ポリマーとの質量比が、4:1~25:1の範囲である、コーティング組成物。
【請求項2】
前記テトラアルコキシシランがテトラエトキシシランである、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記極性ポリマーが、ポリビニルアルコールであり、及び前記テトラアルコキシシランがテトラエトキシシランである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物の総質量に基づき、
0.1~10質量%の極性ポリマー、
0.5~20質量%のテトラアルコキシシラン、
4~25%質量%の正電荷の表面を有する変性シリカナノ粒子、
及び、
任意に0~5質量%の水以外の更なる成分、
及び、全体で100%となる量の水
を含有する
請求項1、2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、不揮発分の総質量に基づき、
3~60質量%の極性ポリマー、
1~30質量%のテトラアルコキシシラン、
39~95質量%の正電荷の表面を有する変性シリカナノ粒子、
及び、任意に
0~10質量%の、極性有機溶媒、界面活性剤、更なるポリマー、更なる架橋剤、光安定化剤、抗酸化剤、レオロジー又はチキソトロピー剤及び/又はレベリング剤から選択される更なる成分からなる、請求項1、2、3又は4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、不揮発分の総質量に基づき、
3~30質量%の極性ポリマー、
3~30質量%のテトラアルコキシシラン、
80~95質量%の正電荷の表面を有する変性シリカナノ粒子、
及び、任意に
0~6質量%の極性有機溶媒、界面活性剤、更なるポリマー、更なる架橋剤、光安定化剤、抗酸化剤、レオロジー又はチキソトロピー剤及び/又はレベリング剤から選択される更なる成分からなる、請求項1、2、3、4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の組成物を乾燥させることにより得られる、硬化組成物。
【請求項8】
学低反射用及び/又は反射防止用コーティングとしての光学コーティングの製造方法であって、下記段階
a)固体の又は可撓性の基材を用意する段階、
b)請求項1~6の何れか1項に記載のコーティング組成物を、直接的な光学接触にて前記基材に適用する段階、そして
c)段階(b)において得られたコーティング層を乾燥させる段階
を含む、方法。
【請求項9】
前記段階(a)において用意された基材が、ガラス、ポリマーシート、ポリマーフィルム、金属、セラミックから選択され;及び/又は前記乾燥段階(c)が、段階(b)において得られたコーティング層を当該層の温度が50℃以上に到達するように加熱することにより達成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記段階(a)において用意された基材が、透明ガラス、透明ポリマーシート、透明ポリマーフィルムのような光学的基材、並びに金属基材及び金属フィルムで被覆された基材から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記段階(c)の後の層の厚さが、20nm~100μmの範囲である、請求項8又は9又は10に記載の方法。
【請求項12】
表面の反射防止及び/又は疎水性減少及び/又は接着効果を得るための、及び/又は界面又は表面張力を改変するための、請求項1~7の何れか1項に記載のコーティング組成物の使用方法。
【請求項13】
反射防止及び/又は疎水性減少及び/又は接着性及び/又は界面若しくは表面張力改変効果を得るための方法であって、請求項1~7の何れか1項に記載のコーティング組成物を用いて表面をコーティングする段階を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、反射防止コーティング、光学素子又は多孔質基材のような光学上の目的のための、低屈折率の多孔質コーティングの製造用の新規組成物に、そのようなコーティングの製造方法に、及びそのようなコーティングの、例えば、光起電装置、セキュリティー要素又はセキュリティー機能、導波路用途(例えば、クラッド層)、照明用途、集光装置、光学接着剤における使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低屈折率のコーティングは、とりわけ光学素子の分野において、外気又は真空とガラス又は適したプラスチックのような光学用材料との間の表面における望ましくない反射を低減するために広く使用されている。特許文献1及び本願明細書に引用される文献に記載されるように、屈折率がこれらの典型的なバルク材料のそれと比較して低減された材料を得る簡便な方法は、多孔質相を得るための空隙の包含、例えば、そのような材料へ光学的に中性の粒子を取り入れることによるものである。光学的に中性の粒子とは、透過する光の顕著な吸収又は散乱を引き起こさない粒子と理解されるべきである。
【0003】
多孔質層、及び粒子を含有する層もまた、印字可能な材料のインク受容層として使用されてきたか、又はそのような層を備えた表面の耐磨耗性の改良のために使用されてきた。特許文献2は、変性シリカ粒子、ポリビニルアルコール及びホウ酸を含有する、インクジェット式記録材料における使用のための幾つかのコーティングについて記載している。特許文献3は、ポリビニルアルコール中にシリカナノ粒子を分散させそして架橋させることにより製造される強化コーティングについて記載している。
【0004】
特許文献4は、SiO-ナノ粒子、マトリクスポリマー及びシラン結合剤を含有する反射防止コーティングを提案しており;同様のコーティングが、引用文献5に記載されている。引用文献6及び引用文献7は、ポリマーマトリクスがホウ酸で硬化されたポリビニルアルコールに典型的に基づく光学用途のための幾つかのナノ多孔質層を開示しており;特許文献7の層は、正電荷を有する表面(PCS)を有するシリカ粒子を含有し、そして1.2より低い屈折率を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第7821691号公報
【文献】国際出願公開第2006/040304号公報
【文献】国際出願公開第2014/193573号公報
【文献】国際出願公開第2013/019770号公報
【文献】国際出願公開第2013/055951号公報
【文献】国際出願公開第2008/011919号公報
【文献】国際出願公開第2013/117334号公報
【発明の概要】
【0006】
親水性ポリマーの架橋マトリクス中のシリカ粒子に基づく低屈折率のナノ多孔質層が、驚くべきことに、低い曇り価、UV曝露及び/又は湿度に対する曝露に対する良好な安定性、ポリマー基材、例えばPET又は親水性ポリマーの更なる層への接着性のような良好な機械的及び光学的特性を示し、そしてそのような層が、テトラエトキシシラン(TEOS)のようなアルコキシシランが架橋剤として使用された場合にもそのような更なる層に好都合に積層され得ることが見出された。ホウ素化合物に代えてシラン架橋剤を使用することは、そのような材料の環境適合性をさらに改良し得る。低反射率の効果以外に、本発明の多孔質コーティングは、界面張力を改変し、疎水性を低減し、そして層間接着を改良するのにさらに有用である。特に低い反射特性を示す材料を得るのに簡便な方法は、典型的には、そのような材料中のシリカ粒子と親水性ポリマーとの質量比として表される粒子含有量を高めることである。粒子充填量に対する屈折率の依存性を、下記表に示す(下記実施例3の対照組成物中に示される、変性SiOナノ粒子、ポリビニルアルコール及び水を含有する組成物)。
【0007】
【表1】
【0008】
本発明によるそのような高い粒子充填量の材料が特に低い曇り価を示すことは、本発明の更なる利点である。
【0009】
したがって、本発明は、第1には、
a)極性ポリマー、
b)テトラアルコキシシラン、及び
c)正電荷の表面を有する変性シリカナノ粒子
を含有する組成物に関する。
【0010】
極性ポリマー成分(a)は、通常、水溶性であるか、又は水に良好な分散性を有する、及び/又はヒドロキシ基を含有する。そのようなポリマーの例としては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシアクリレート及びビニルアルコール及び/又はヒドロキシアクリレートのコポリマーであり;典型的には、そのようなコポリマーは、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、そして最も好ましくは少なくとも90%の、ビニルアルコール、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレートのようなヒドロキシ基含有の繰り返し単位からなる、ランダム又はブロックコポリマーであり得る。成分(a)として特に好ましいものは、ポリビニルアルコールである。好ましくは、極性ポリマー(a)は、均質な水溶液の形態で本発明による組成物に添加される。
【0011】
テトラアルコキシシラン(b)は、典型的には、式Si(OR)(式中、RはC-Cアルキル基を表す。);特に好ましいものはテトラエトキシシラン(TEOS)である。
【0012】
本発明の成分(c)に有用な正電荷の表面を有するシリカナノ粒子並びにそれらの製造方法は、当業者に良く知られている(例えば特許文献7参照のこと)。これらの粒子は、ゼータ電位が0mVより高い、典型的は、+20mVより高いことを特徴とし;例えば、ゼータ電位が+20~+50mVの範囲である。製造法に応じて、これらの粒子は、典型的には一定量のアルミニウム及び/又はジルコニウムを含有する。したがって、本発明の粒子を含有する懸濁液は、典型的には、pH7以下である。これらの種類の有用な粒子は、商業上入手可能であり、例えばカボット社(Cabot Corp.)(米国)からのCAB-O-SPERSE(登録商標)PG022である。
【0013】
本発明の組成物中に存在するシリカナノ粒子は、典型的には、動的光散乱により決定される、10~500nmの範囲、好ましくは20~200nm、より好ましくは30~150nmの範囲、例えば70~120nmの平均粒径を有する。上述のような酸化ケイ素粒子は、典型的には凝集体であり、その第1粒子は、頻繁に1~50nmの範囲、特に5~20nm(透過電子顕微鏡法により決定される)の直径を示す。上記寸法範囲のこれらの粒子は、通常、「ナノ粒子」と称され、;上記寸法範囲(平均粒径とも称される)は、試料の(凝集体の)50質量%がより大きい直径を有し、そして他の50質量%がより小さい直径を有する直径として言及される。また、凝集体の直径は、他の技術、例えば、遠心沈降粒径分析器によっても測定され得る。
【0014】
変性シリカナノ粒子と極性ポリマーとの質量比は、典型的には1:1以上、例えば、1:1~35:1の範囲である。低屈折率の材料を得るためには、変性シリカナノ粒子:極性ポリマーの質量比は、1:1より高く、例えば1.5:1~35:1の範囲であるべきである。好ましい態様において、変性シリカナノ粒子:極性ポリマーの質量比は、2:1以上、特に4:1以上、例えば4:1~35:1、特に5:1~30:1、より特別には6:1~30:1、そして最も特別には7:1~30:1の範囲である。特別な技術的に重要な態様において、変性シリカナノ粒子:極性ポリマーの質量比は、8:1~25:1の範囲である。変性シリカナノ粒子は、好ましくは、典型的には約5~約50質量%の変性ナノ粒子を含有し、残余は主に水である水分散液の形態で、本発明の組成物に添加される。
【0015】
本発明の組成物は、典型的には、水性組成物として、適した基材、典型的にはガラス又は更なる光学層のポリマーフィルムのような透明又は光学的基材上に適用され、そして乾燥され;そして乾燥は頻繁に硬化を促進し、そして水のような揮発物(のある程度)の除去をもたらす。
【0016】
したがって、本発明は、第1には、とりわけコーティング組成物として有用な水性組成物を提供する。本組成物は、典型的には、組成物の総質量に基づき下記成分;
0.1~10%b.w.の極性ポリマー、特にヒドロキシ基を含有する水溶性ポリマー、
0.5~20%b.w.、特に0.5~16%b.w.のテトラアルコキシシラン、
4~25%b.w.の正電荷の表面を有する変性シリカナノ粒子、
及び、任意に
0~5質量%の水以外の更なる成分を含有し、
及び、全体で100%となる量の水
からなり、
変性シリカナノ粒子と極性ポリマーとの質量比が、上記の範囲である。
【0017】
水以外の更なる成分は、典型的には、極性有機溶媒、界面活性剤、更なるポリマー、更なる架橋剤、光安定剤、抗酸化剤、レオロジー又はチキソトロピー剤及び/又はレベリング剤から選択される。抗酸化剤は、例えば、既知のフェノール系抗酸化剤から選択され得る。光安定剤は、典型的には、立体障害性アミンのような既知のラジカルスカベンジャー及び/又は紫外線吸収剤、特に、水性塗料に広く使用されるような水と一定の混和性を示すこれらの種類の極性の薬剤から選択される。幾つかの有用な成分の例は、とりわけ、Ullmann’ Encyclopedia of Industrial Chemistry,第5版、第A18巻、第429-471頁、VCH、ヴァインハイム1991年 に記載されている。
【0018】
湿潤組成物は、典型的には、スピンコーティング、バーコーティング、プリント、カーテンコーティングのようなコーティング技術により基材上に適用される。
【0019】
好ましくは、本発明の100%b.w.の不揮発性成分(以下「固形分」とも称する)とは、
3~60%(特に3~30%)b.w.の極性ポリマー、特にヒドロキシ基を含有する水溶性ポリマー、
1~30%(特に3~30%)b.w.のテトラアルコキシシラン、
39~95%(特に80~95%)b.w.の正電荷の表面を有する変性シリカナノ粒子、
及び、任意に0~10質量%(特に0~6質量%)の上記の通りの更なる成分
からなる。
【0020】
該組成物は、適用の後、例えば、空気又は窒素のような保護ガスの下で、減圧下、及び/又は加熱(例えば40~100℃、特に50~80℃)下で乾燥され得る。乾燥はまた、本発明の組成物の架橋(即ち、硬化)をももたらす。
【0021】
界面活性剤は、典型的には、陽イオン性又は特に非イオン性である。特定の技術的関心の態様において、本発明の組成物は、界面活性剤を僅かしか含有しないか、又は含有せず;例えば、本発明のそのような組成物中の界面活性剤の量は、固形分の0~1%b.w.、特に固形分の0.2%未満、例えば、固体の0.001%~0.2%b.w.の範囲である。
光安定剤及び抗酸化剤の量は、各々典型的に、極性ポリマーの0~5%b.w.の範囲である。
【0022】
従って、本発明は、上記湿潤組成物の乾燥によって得られ得る硬化組成物を更に提供する。
【0023】
硬化は、通常、例えば、空気、乾燥ガス流(例えば、空気又は窒素)、減圧、高温(例えば、下記のとおり)、又はそのような手段の組み合わせの下での乾燥によって、行われる。硬化時間及び温度は重要ではなく、通常、硬化時間は、数秒から数分又は数時間の範囲であり得、一方で、硬化時間を短縮(典型的には10分未満)するのにより高い温度(例えば、60~120℃)が使用され得、そして硬化時間を5分より長く(例えば、10分以上)するためにはより低い温度(60℃未満)が使用される。
【0024】
全ての屈折率(refractive indices)(「index」とも称される)は、他に示されない限り、513.7nmの放射線によって測定されるとおりである。典型的な実施態様において、用語「低屈折率」とは、1.01から1.4未満、例えば1.05以上1.3未満、特に1.05以上1.2未満の範囲の屈折率を指す。
【0025】
以下の実施例は本発明を詳細に説明するものである。他に示されない限り、反応は、標準的な条件、即ち、大気圧及び22~25℃の範囲の温度として表現される室温(r.t.)において生じ;「終夜」とは、12~15時間の時間を表し;百分率は他に示されない限り質量で与えられる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
略語:
aq. 水溶液
b.w. 質量に基づく
PVA ポリビニルアルコール(実施例において使用:Mowiol(登録商標)90-88、クラレ社)
TEOS テトラエトキシシラン(Si(OEt)4(実施例において使用:Wacker社からの99%等級)
PMMA ポリメチルメタクリレート(実施例において使用:EVONIK、Folie farblos 99524 GT、厚さ0.5mm)
PET ポリエチレンテレフタレート(実施例において使用:DuPont Teijin Films,Melinex ST504)
【0027】
実施例1:コーティング組成物の製造
特許文献7の実施例1に従い、クロロヒドロキシアルミニウム、ホウ酸、ギ酸水溶液、n-ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ヒュームドシリカ及び炭酸水素アンモニウム水溶液を、記載したとおりの量及び品質で使用して、正電荷を有するシリカ粒子を製造した。23%b.w.の粒子を含有する分散液を、時折溶液を攪拌しながら15分間超音波にかけ、そしてその後、1μmのガラスファイバーシリンジフィルターを用いてろ過し、下記組成物に用いた。
【0028】
下記の成分を開閉可能なガラスボトル中で混合した。
【0029】
【表2】
【0030】
ホットプレート(100℃)上での1時間の激しい攪拌下、混合物を60℃に加熱し、そしてその後、攪拌下で室温まで冷却させた。気泡の大部分は終夜で収まった。
【0031】
実施例2:コーティング組成物の製造
特許文献7の実施例2に従い、クロロヒドロキシアルミニウム、n-ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ヒュームドシリカ及び炭酸水素アンモニウム水溶液を、記載したとおりの量及び品質で使用して、正電荷を有するシリカ粒子を製造した。25%b.w.の粒子を含有する分散液を、時折溶液を攪拌しながら15分間超音波にかけ、そしてその後、1μmのガラスファイバーシリンジフィルターを用いてろ過し、下記組成物に用いた。
【0032】
下記の成分を開閉可能なガラスボトル中で混合した。
【0033】
【表3】
【0034】
ホットプレート(100℃)上での1時間の激しい攪拌下、混合物を60℃に加熱し、そしてその後、攪拌下で室温まで冷却させた。気泡の大部分は終夜で収まった。
【0035】
実施例3:バーコーティング用のコーティング組成物の製造
特許文献7の実施例2に従い、クロロヒドロキシアルミニウム、n-ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ヒュームドシリカ及び炭酸水素アンモニウム水溶液を、記載したとおりの量及び品質で使用して、正電荷を有するシリカ粒子を製造した。25%b.w.の粒子を含有する分散液を約40℃まで加熱し、そして6.6%b.w.のポリビニルアルコール溶液(クラレ製、Mowiol18-88)、脱イオン水及び、該当する場合には5.3%b.w.のOlin(登録商標)10G(非イオン性界面活性剤、Fitzgerald製)水溶液を添加した。当該混合物を数分間(5~60分間)攪拌し、そして該当する場合には、TEOS(99%、Wacker社製)を添加した。コーティング前に、この溶液を室温まで冷却させた。
コーティング溶液の組成を、下記表に挙げる。
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
【表6】
【0039】
実施例4:コーティング溶液のバー-コーティング
マイヤー-バー(10又は25μm湿潤フィルム厚)を用いたバー-コーティングを介して、実施例3のコーティング溶液をガラス又はPET基材上に適用した。10μm又は25μm厚の湿潤フィルムを空気中で1~10分間乾燥させ、そしてその後、80℃において5分間加熱した。得られたフィルムについて、それらの透過率(BYK、HaseGard(登録商標)plus)、曇り価(ASTM D1003-13;BYK、HaseGard(登録商標)plus)、乾燥フィルム厚(μm;Metricon(登録商標)prism coupler Model 2010/M)、及び屈折率(Metricon(登録商標)prism coupler Model 2010/M;この実施例中に言及される場合は、屈折率(「インデックス(index)」として下記言及)は、513.7nmの放射線によって測定された)の特性を評価した。これらの特性を下記表に挙げる。
【0040】
【表7】
【0041】
【表8】
【0042】
【表9】
【0043】
本発明の乾燥LRI層は、良好な光透過率及び低い曇り価を示した。
【0044】
実施例5:LRI-層のスピン-コーティング
実施例1又は2又は3の組成物を、適用前に、シリンジフィルター(ガラスファイバー、1μm)を介して濾過した。組成物の各々約3mLを、以下のスピン-コート条件下で、10cm×10cmのPMMA又はガラスのシートの表面全体を覆うようにスピン-コーティングした。
【0045】
【表10】
【0046】
続いて、冷却空気又は窒素を用いて、湿潤コーティングを乾燥させた。乾燥中は、フィルムは再び透明になる前に先ず濁った。続いて、空気乾燥させたフィルムを、当該フィルムを完全に乾燥且つ架橋させるために、以下示される時間の間ホットプレートに置いた(PMMA基材において、10分間、プレート温度55℃;ガラス基材において、5分間、プレート温度120℃)。両基材において、2μmの乾燥フィルム厚を得た。
【0047】
実施例6:プリントローラーによるLRI層の適用
実施例3(3.2又は3.3)の組成物を、印字ローラーの表面に連続的に適用し、そして幅27cmのPETテープに転写させた。湿潤層を空気乾燥させ、そして60℃のオーブン温度にて印字後、直接にオーブン中で架橋させた。
【0048】
実施例7:セキュリティー機能における低屈折率インクの印字
60.97gの正電荷を有するシリカ粒子(23%分散水溶液、Wifag Polytipe社からのH5-042LT)を、2.77%ポリビニルアルコール(Mowiol90-88、クラレ社)及び32.96gの水、3.3gのテトラエトキシシラン(98%、Sigma Aldrich社から)と混合した。この混合物を60℃において1時間加熱し、そして室温まで終夜冷却した。得られた330秒(06/1987のDin53211;カップ4mm)のインク粘度を、10%の水を添加することにより120秒に調節した。
【0049】
印字条件
低屈折率インクを、UVキャストセキュリティホログラム(基材 Melinex506、Dupont Teijin Films社)において、20m/分でグラビア印刷し、そして90度において加熱した。
【0050】
120l/cmのグラビアシリンダーを用いると、良好な透過率及びホログラム視認性が得られた。
【0051】
オーバーコーティング
低屈折率のプリントされたインクを、ニトロセルロース透明ニス(10質量% DHM10/25、Nobel Enterprise社、n-プロピルアセテート中)を用いて、又はポリビニルアルコールベースの透明ニス(7質量%水溶液、Poval95-88又はPoval235、クラレ社)を用いてオーバーコーティングした。
【0052】
同様のプロセスを、透明フィルム上のフレネル・レンズ又はタワー構造に使用した。
同様のプロセスを、紙及び板上のフレネル・レンズ又はタワー構造に使用した。
【0053】
実施例8:バー-コーティングのためのコーティング組成物の製造
特許文献7の実施例2に従い、クロロヒドロキシアルミニウム、n-ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ヒュームドシリカ及び炭酸水素アンモニウム水溶液を、記載したとおりの量及び品質で使用して、正電荷を有するシリカ粒子を製造した。こうして、25%b.w.分散液を得た。負の電荷を有するシリカ粒子を含有する溶液は、Cabot社から受領したまま(Cab-O-Sperse 4012K、13.1%b.w.)使用した。粒子の分散液を約40℃に加熱し、そして6.9%b.w.のポリビニルアルコール(クラレ社、Mowiol18-88)、脱イオン水及び5.3%b.w.のAbex EP110(陰イオン性界面活性剤、Solbay社)の水溶液を添加した。当該混合物を数分間(5~60分間)攪拌し、そして該当する場合には、TEOS(99%、Wacker社)を添加した。コーティング前に、この溶液を室温まで冷却させた。
コーティング溶液の組成物を、下記表に挙げる。
【0054】
【表11】
【0055】
実施例9:コーティング溶液のバー-コーティング
マイヤー-バー(40μm湿潤フィルム厚)を用いたバー-コーティングを介して、実施例8のコーティング溶液を、ガラス又はPET基材上に適用した。40μm厚の湿潤フィルムを空気中で1~10分間乾燥させ、そしてその後、80℃において5分間加熱した。得られたフィルムについて、それらの透過率(BYK、HaseGard(登録商標)plus)、曇り価(ASTM D1003-13;BYK、HaseGard(登録商標)plus)、乾燥フィルム厚(μm;Metricon(登録商標)prism coupler Model 2010/M)、及び屈折率(Metricon(登録商標)prism coupler Model 2010/M;この実施例中に言及される場合は、屈折率(「インデックス(index)」として下記言及)は、513.7nmの放射線によって測定された)の特性を評価した。これらの特性を下記表に挙げる。
【0056】
【表12】
【0057】
【表13】
【0058】
本発明の陽イオン粒子を陰イオン性粒子に変えると、許容し得ない曇り価の増加を生じた。