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特許7073397電気エネルギを分配する既存のグリッドを構造化する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】電気エネルギを分配する既存のグリッドを構造化する方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20220516BHJP
【FI】
H02J13/00 311R
H02J13/00 301A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019555060
(86)(22)【出願日】2017-12-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2017082059
(87)【国際公開番号】W WO2018114404
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-10-12
(31)【優先権主張番号】1725/16
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】519225587
【氏名又は名称】ベー・カー・ヴェー エナギー アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】BKW Energie AG
【住所又は居所原語表記】Viktoriaplatz 2, 3013 Bern, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】モニカ フロイネク
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-146560(JP,A)
【文献】国際公開第2015/121937(WO,A1)
【文献】特表2013-538543(JP,A)
【文献】特開2016-077138(JP,A)
【文献】特開2000-102171(JP,A)
【文献】特表2011-504087(JP,A)
【文献】国際公開第2016/176727(WO,A1)
【文献】特表2013-510545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギを分配する既存のグリッドを構造化する方法であって、
前記グリッドは、グリッドコンポーネントとして、少なくとも、初期トポロジにおいて互いに接続されている供給源と、負荷と、導線と、センサコンポーネントと、スイッチコンポーネントと、変換コンポーネントと、を有し、前記グリッドコンポーネントの特性量と、あらかじめ設定可能な規制限度と、に基づき、
a)それ自体で制御を行う複数のローカル機能グループに前記グリッドコンポーネントを統合し、
b)前記規制限度を守るためのトリガ判断基準に到達した際に実行されるアクションを有する制御プロセスを、それぞれのローカル機能グループに対応付け
前記初期トポロジを起点にして目標トポロジを特定し、
前記グリッドコンポーネントを前記ローカル機能グループに統合するための目的関数の数値最適化を有し、
前記目的関数は、前記グリッドを制御するためにグリッドコンポーネント間で伝送されるデータ量に依存しており、
前記数値最適化により、前記データ量の最小化を促進し、
前記目的関数は、初期トポロジと目標トポロジとの間の適合化のコストに依存しており、
前記数値最適化により、前記コストの最小化を促進する
方法。
【請求項2】
前記方法は、実現可能なローカル機能グループの定義と、前記実現可能なローカル機能グループが、あらかじめ設定可能な前記規制限度を守って、ローカルに制御可能であるか否かの検査と、を含み、ローカルに制御可能であることが確認される場合、前記実現可能なローカル機能グループを受け入れ、ローカルに制御可能でない場合、前記実現可能なローカル機能グループを、別のグリッドコンポーネントによって拡張する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記アクションには、それぞれの前記ローカル機能グループの前記グリッドコンポーネントの動作に影響を及ぼすローカルなアクションが含まれ、ならびに、前記アクションには、別のローカル機能グループへの、または機能グループを包括するコントロールセンタへのデータの伝送を含む、ローカルでないアクションが含まれることを特徴とする、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
付加的なローカル機能グループを作成するために、かつ/または、あらかじめ設定可能な前記規制限度を保証するために、付加的なグリッドコンポーネントの必要性を特定することを特徴とする、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
あらかじめ設定可能な前記規制限度には、ローカル機能グループおよび/または異なるグリッドコンポーネント間でのデータの伝送に対する最大遅延時間が含まれることを特徴とする、
請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記目的関数は、前記付加的なグリッドコンポーネントのコストに依存しており、
前記数値最適化により、前記コストの最小化を促進することを特徴とする、
請求項4載の方法。
【請求項7】
前記ローカル機能グループに対するローカル価格を特定し、
前記目的関数は、前記ローカル価格に依存しており、
前記数値最適化により、前記コストの最小化を促進することを特徴とする、
請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記既存のグリッドは、少なくとも、以下のグリッドレベル、すなわち、
a)最高電圧グリッド、
b)高電圧グリッド、
c)中間電圧グリッド、および、
d)低電圧グリッド
の隣り合う2つのグリッドレベルのコンポーネントを含むことを特徴とする、
請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
地理情報システムから、前記グリッドコンポーネントの前記特性量および/または前記初期トポロジを受け取ることを特徴とする、
請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
請求項1からまでのいずれか1項にしたがって構造化された、電気エネルギを分配するグリッドを動作させる方法であって、
前記ローカル機能グループにおいて、センサコンポーネントを用いて、トリガ判断基準に到達したか否かを監視し、
トリガ判断基準に到達した際には、それぞれの前記ローカル機能グループに対応付けられている複数のアクションのうちの1つを前記規制限度を守るために実行する、
方法。
【請求項11】
メンテナンスの必要性の識別を行い、メンテナンスサービスを自動的に要求することを特徴とする、
請求項10記載の方法。
【請求項12】
ロジスティックインタフェースを介して、自動的なオーダ過程をトリガすることを特徴とする、
請求項11記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の方法を実行するコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギを分配する既存のグリッドを構造化する方法に関し、グリッドは、グリッドコンポーネントとして、少なくとも、初期トポロジにおいて互いに接続されている供給源と、負荷と、導線と、センサコンポーネントと、スイッチコンポーネントと、変換コンポーネントとを有する。本発明は、さらにこの構造化する方法にしたがって構造化された、電気エネルギを分配するグリッドを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギを分配するグリッド(電力グリッド)には、電気導線(とりわけ空中線および地下ケーブル)のネットワークと、導線に所定のトポロジで互いに接続されている別のグリッドコンポーネントとが含まれている。これらの別のグリッドコンポーネントには、供給源、例えば、発電所の発電機、または例えばバッテリのような一時蓄電器と、負荷(消費装置)と、グリッドの動作パラメータ(電圧、周波数、電流、電力、温度など)を検出するセンサコンポーネントと、コンポーネントまたはグリッド部分を接続および切断するスイッチコンポーネントと、変換コンポーネント、例えば電圧を変換するための例えば変圧器とが含まれている。
【0003】
トポロジは、複数のグリッドレベルに分けられている。広域の分配は、発電所のような発生源を起点として、まず最高電圧(例えば380もしくは220kV)を有する伝送グリッドを介して行われる。変圧器を備えた変電所を介して、高電圧(例えば36~150kV)を有する超地域的な分散グリッドが接続されており、この分散グリッドには、別の変圧器を介して、さらに中間電圧(例えば1~36kV)を有する地域の分散グリッドが接続されている。次に別の変圧器を介して、低電圧(例えば400V~1kV)を有するローカル分散グリッドが接続され、このグリッドは、(場合によっては変電所を介して)家庭用接続設備に、ひいては最終消費者(特に、個人の家庭、工場、企業および農場)に導かれる。
【0004】
グリッドに設けられている複数のコンポーネントを有する特定のトポロジは、発生源(発電所)および消費者の位置および出力に依存して、歴史的に成長したものである。トポロジにおける変化は、一般に、付加的な電気導線、または別に引かれたもしくは別の設計が成された電気導線を必要とし、したがってコストがかかる。
【0005】
近年、(特に太陽光設備のようなローカルな発生源の登場により)電力グリッドに対する要求が変化している。電気エネルギの「上から」(すなわち発電所から)「下へ」(すなわち消費者への)の階層的な分配だけではもはや役に立たず、電力の流れは、生産条件(例えば太陽光の入射)および使用パターンに応じて異なる経過をたどり得る。
【0006】
安定した動作を目標にし、かつとりわけ(例えば周波数、電圧、電流についての)あらかじめ設定された規制限度を確実に守ろうとする、グリッドの制御もしくは調整は、一般に、今なお階層的に組織化されており、このことが意味するのは、動作信頼性を得るために、要求が大きく増大していることであり、より頻繁な介入が必要であることである。特に、制御もしくは調整に含まれ得る別の情報を消費者側で得るために、今日では、いわゆる「スマートメータ」を使用することが多くなっており、このスマートメータにより、情報、とりわけ消費情報が、消費者において直接、検出され、通信ネットワークを介して、グリッドの上位の設備、例えばコントロールセンタに伝送される。
【0007】
したがって上位のセンタでは、短い期間内に処理しなければならない大量のデータが発生する。下位のグリッド部分において講じるべき手段の選択は、複雑であり、グリッドにおいて、スマートメータ(および別のセンサコンポーネント)から上位の箇所への測定信号、またはこれらのコンポーネントに戻る制御信号の伝送におけるエラーの際には動作障害の虞がある。
【0008】
付加的なコンポーネント(例えば比較的大きな太陽光設備または風力発電設備または熱発電所)を追加する際には、グリッド部分の特性が大きく変化することがあり、それでなくても複雑な制御および調整プロセスの大規模な適合化が必要である。コンポーネントから上位の箇所へのデータ伝送における遅延時間により、短期的なイベントの際の制御可能性に関していえば、物理的な限度がある。したがって比較的大きなリザーブ(例えば導線断面について)を設ける必要がある。これにより、さらに伝送容量が制限され、この伝送容量は、コストのかかる後付けなしには利用することができない。
【0009】
欧州特許出願公開第2533396号明細書(EP 2 533 396 A2)(アルストム・グリッド)には、上記の問題のうちのいくつかが取り扱われている。この明細書は、インテリジェント電気分散グリッドに関しており、複数のレベルにわたって延在する、この分散グリッド用の制御システムを提案している。このシステムは、特に、制御システムのそれぞれのレベルが、閉制御ループとして機能し、これにより、冗長なトポグラフィックグリッド構造が設けられるようにするか、またはデータ処理および制御が、制御システムのレベルにわたって分散されるように規定することが可能である。この刊行物にはまた、より高いまたはより低いレベルへ制御様相およびデータ様相を移動することと、レベルの自律度を上げる、ルールベースのプロセスを設けることとが提案されている。具体的には、トップレベル分配ネットワークノードコントローラ(DNNC)が提案されており、このコントローラは、階層的なトポロジにおいて、より低レベルのDNNCコンポーネントと共に協調動作する。より低いレベルのDNNCコンポーネントは、例えば、スマートメータの信号を受信し、これにより、顧客のエネルギ消費を監視することができる。トップレベルのDNNCは、例えば、このエネルギ消費が、使用履歴の10%よりも大きく変化した場合にのみ、より低いレベルのDNNCコンポーネントからこのトップレベルDNNCに通知されるように設定することが可能である。これにより、データトラヒックを低減することができる。トップレベルDNNCは、例えば、過負荷などを阻止するために、より低いレベルのDNNCコンポーネントに指示して、別のコンポーネントを遮断することができる。
【0010】
この刊行物は、実質的に、グリッドノードのそれ自体既知の階層構造に基づいており、これに伴う既知の欠点を有する。この刊行物は、目標状態を示してはいるが、既存の分散グリッドからこの目標状態に到達するためのシステマティックなアプローチを開示していない。
【0011】
国際公開第2014/079605号(WO 2014/079605 A1)(シーメンス株式会社)は、マルチモーダルグリッド、すなわち、化石燃料、電気エネルギ、水、熱さおよび冷たさの形態の種々異なるリソースを複数のリソース処理ユニットを介して分配する複数のサブグリッドからなるグリッドに関するものである。この刊行物は、さらに、マルチモーダルグリッドにおいてリソースを分配する方法に関する。ここでは、1つまたは複数のサブグリッドのリソースを、1つまたは複数の別のサブグリッドの1つまたは複数の別のリソースに変換する複数の変換ユニットをサブグリッドに統合することが提案されている。さらに、複数のリソース処理ユニットが設けられており、これらには、それぞれ少なくとも1つのエージェントが対応づけられており、これらのエージェントは、それぞれのエージェントが、グリッドの別のエージェントと通信できるように互いにネットワーク接続されている。グリッドにおけるリソースの分配は、少なくとも部分的に、エージェント間で交渉される金融取引に基づいている。これにより、マルチモーダルグリッドにおいて種々異なるリソースの、分散制御された自己組織的な分配を実現しようとしている。
【0012】
金融取引に基づくリソースの分配は、マルチモーダルグリッドにおいて有効かもしれない。しかしながら種々異なるリソースに基づく複数のグリッドが結合されていない場合、またはサブグリッド間のネットワーク接続度が比較的低い場合、提案された方法では、電気エネルギを分配するグリッドの分散型でロバストな制御を実現することはできない。
【0013】
米国特許出願公開第2015/0058061号明細書(US 2015/0058061 A1)(Salama等)は、スマートグリッドのエネルギ管理および最適化のための方法に関しており、ここでは利用可能なローカルな手段およびリソースが管理され、これにより、意思決定者の目標が達成される。このために特定のセグメントにおける出力が監視されて制御され、セグメントの特徴的な特性が考慮される。監視されるシステムの挙動は、所定の期間の間、予想され、次にこれに依存して、挙げられた目標(例えば、温室効果ガス、エネルギコスト、エネルギ損失、付加的なコンポーネントに対する設置コストの最小化または電力品質の最大化)を満足する所定のエネルギ流が提案される。
【0014】
提案されたこのシステムが前提とするのは、発生するプロセスを予想できることである。これには、複雑なモデリングが必要であり、これによってこのシステムの調整および常時の更新には高いコストが伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、冒頭に述べた技術分野に属する方法であって、既存のグリッドにシステマティックに適用することができ、かつ障害に陥りにくく、高い動作信頼性を可能にする、電気エネルギを分配する既存のグリッドを構造化する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題の解決手段は、請求項1の特徴的構成により、定義される。本発明によれば、グリッドコンポーネントの特性量と、あらかじめ設定可能な規制限度とに基づき、
a) それ自体で制御を行う複数のローカル機能グループにグリッドコンポーネントを統合し、
b) 規制限度を守るためのトリガ判断基準に到達した際に実行されるアクションを有する制御プロセスを、それぞれローカル機能グループに対応付ける。
【0017】
すなわち本発明による方法は、電気エネルギを分配する既存のグリッドを、その制御に関して、複数のローカル機能グループに統合し、これらのローカル機能グループに複数の制御プロセスを割り当てるために使用される。したがってこの方法の結果には、それぞれのグリッドコンポーネントを有する機能グループの設定と、機能グループへの対応付けを有する制御プロセスの設定とが含まれる。この結果は、さらに後の方で説明するように、別の複数の情報を含んでいてよい。
【0018】
「既存のグリッド」とは、より大きなグリッドの一部分であってよい。ユーザは、基本的に、この方法の適用範囲を、すなわち、どのグリッドコンポーネントを一般に考慮すべきであるかを決定することができる。
【0019】
本発明による方法における「供給源」とは、発電機、(電力を供給する)バッテリもしくは別のエネルギ蓄積器、または考察されるグリッドもしくはグリッド部分の単なる「入力部」であってよい。この方法における「負荷」とは、消費装置、充電モードのバッテリまたは別のエネルギ蓄積器、または考察されるグリッドもしくはグリッド部分の単なる「出力部」であってよい。グリッドの動作状態に応じて、所定のグリッドコンポーネントは、一時的に、供給源または負荷を成していてよい。同様に、複数の機能(例えば負荷およびセンサコンポーネント、供給源および変換コンポーネントなど)をそれ自体に統合しているグリッドコンポーネントも存在する。
【0020】
上記の特性量とは、例えば、ケーブル直径および導線長、変圧器出力または短絡電流のことである。規制限度は、特に目標動作範囲に対応し、目標動作範囲における動作を確実にするために、目標動作範囲と同じ量に該当する規制限度の値は、目標動作範囲の限度と必ずしも同じでなくてもよい。十分に早期の応答を保証するために、例えば、目標動作範囲を逸脱する前に、すでに規制限度に到達することが可能である。
【0021】
本発明による方法におけるローカル機能グループは、所定のトポロジにしたがって互いに接続されているコンポーネントによって形成され、極端な場合には1つのグリッドコンポーネントが、1つの機能グループを形成してもよい。この関連において「ローカル」とは、必ずしも、1つの機能グループのすべてのコンポーネントが、所定の空間領域内に存在しなければならないことを意味しない。しかしながらグリッドコンポーネントを機能グループに統合する際に情報伝送の遅延時間と、情報を伝送しなければならない距離とが考慮される場合、このことは、一般に、すべてのローカル機能グループが、それぞれ相対的に小さな地理的な領域に限定されることになってよい。一般に、機能グループには「ホール」も、含まれているグリッドコンポーネントの残りから切り離された領域も含まれない。ローカル機能グループのコンポーネントが接続されているトポロジとは、特に、初期トポロジである。上記の方法により、トポロジの変更が提案される場合、これは、初期トポロジとは異なる結果トポロジであってよい。
【0022】
機能グループは、基本的に、入れ子に接続することができ、内側の機能グループは、外側の機能グループのグリッドコンポーネントと見なすことが可能である。
【0023】
ローカル機能グループは、通常モードにおいてそれ自体を制御する。トリガ判断基準に到達した場合、制御プロセスのそれぞれのアクションにより、それぞれの機能グループ外の手段をトリガすることができる。制御プロセスは、機能グループ内部でのみ作用する別のアクションを有していてよい。基本的に「制御プロセス」という用語は、グリッドコンポーネントの動作への介入も、1つのグリッドコンポーネントから(同じ機能グループの、別の機能グループの、または上位もしくは並列の箇所の)別の所定のグリッドコンポーネントへの所定の情報の送信も表す。
【0024】
トリガ判断基準は、その最も簡単な形態では、所定の量のあらかじめ設定された値によって、また入力量(例えば測定量)の値を上回ったもしくは下回った場合に判断基準が満たされるか否かを示すステートメントによって形成される。しかしながらトリガ判断基準は、範囲設定によって定めることも可能であり、または特に論理(ブール)演算も含むより複雑な関数によることも可能である。トリガ判断基準は、1つまたは複数の入力量の実際値に関連付けることが可能であり、または過去の所定の時間区間が考慮される。トリガ判断基準は、さらに、それぞれの規制限度に対応する量だけに依存するのではなく、このような量の変化速度(すなわちとりわけ時間的な微分)に依存してもよい。したがって1つの量の高速の増大または高速の減少は、それだけで規制限度に到達する前に処理が必要であることを示すことができる。
【0025】
ステップa)によるローカル機能グループへの統合、およびステップb)による制御プロセスへの対応付けは、必ずしもa)~b)の順序で行われる必要はない。特に、例えば、ステップb)の枠内において、先行するステップa)にしたがって行われる1つの機能グループへの統合により、規制限度を守る際に複数の問題が生じることが確認される場合、本発明による方法の枠内において、これらのステップを繰り返して実行することが可能である。
【0026】
本発明による方法により、(電気エネルギを分配する既存のグリッドを起点として)制御について新たに構造化されたグリッドが得られ、このグリッドは、制御に関して、階層構造が可能な限りに省略され、その代わりに、通常モードにおいてそれ自体で制御を行うローカル機能グループから構成される。構造化されたグリッドの機能グループは、可能な限りに自律的に動作するため、またトリガ判断基準に達しかつ対応するアクションがトリガされる場合、もしくは別の複数の情報が、1つの機能グループにおいて収集されかつ別の機能グループにおいて(も)標準的に必要とされる場合にのみ、情報が、別の区間を介して伝送されればよいため、伝送されるデータ容量が最小化される。ここではまた、動作に必要な情報だけが収集される。予想を目的とした大量の情報の付加的な収集および伝送は不要である。
【0027】
伝送されるデータ量が低減され、それぞれの機能グループが、グループ外のデータにあまり依存しないことにより、グリッドを攻撃することはより困難であり、また情報伝送における障害に起因する問題のリスクが低減される。さらにグリッドを管理するために必要なエネルギが低減される。
【0028】
さらにローカルな制御により、データ伝送における遅延時間に起因する問題も最小化される。これにより、同様に、動作および給電の信頼性も高まる。
【0029】
規制限度と、またこれに結び付けられたトリガ判断基準とをあらかじめ設定することによって保証されるのは、問題が差し迫った場合に、問題が明確になったグリッドの箇所を起点として、つねにかつ直ちにリアクションがなされることである。このことによっても動作信頼性が高められ、グリッド品質が保証される。
【0030】
本発明による方法は、既存のグリッドおよびその既知のパラメータに基づいているため、どのセンサ、どのアクチュエータおよびどの知能をどこに後付けするかまたはアクティブ化しなければならないか、かつどのようなコストがそれに伴っているかが直ちに明らかになる。ユーザにとっては、特に、ローカル機能グループの使用が見合うか否かおよびどこに使用するのが見合うかと、どの程度で適合が有利に行われるかも、システマティックに明らかになる。
【0031】
規制限度を守ること(および場合によってあらかじめ設定される別の判断基準)と両立するのであれば、付加的なインフラストラクチャコンポーネントおよび不要な情報伝送を回避することができる。
【0032】
本発明による方法は、基本的に、静的および動的な最適化に適用することが可能である。自律的な制御動作を特定することにより、エネルギの動的な購入も容易になる。というのは、規制限度(例えば許容電力)をあらかじめ設定することにより、特定の不確実性が低減されるからである。
【0033】
この方法は、それ自体で制御を行う機能グループに分割することにより、システマティックに、実質的にグリッド全体を持続的に自動化しかつエネルギ効率的に動作させるために使用可能である。
【0034】
本発明による方法にしたがって構造化された、電気エネルギを分配するグリッドを動作させる方法では、ローカル機能グループにおいて、センサコンポーネントを用いて、トリガ判断基準に到達したか否かを監視し、トリガ判断基準に到達した際には、それぞれの機能グループに対応付けられている複数のアクションのうちの1つを規制限度を守るために実行する。
【0035】
基本的には、動作の枠内において、ローカル機能グループへのグリッドの実際の構造化を周期的または持続的にチェックすることが可能である。したがって、変更された境界条件に起因して、機能グループへの分割の変更および/または制御プロセスの適合化が有利であるか否かが即座に識別される。この場合にこのような変更は、適切な時点に実行することが可能である。
【0036】
グリッドを構造化する本発明による方法の枠内において、有利には、実現可能なローカル機能グループを定義する。引き続いて、この実現可能なローカル機能グループが、あらかじめ設定可な規制限度を守って、ローカルに制御可能であるか否かの検査を行う。ローカルに制御可能であることが確認される場合、この実現可能なローカル機能グループを受け入れる。ローカルに制御可能でないことが明らかになると、この実現可能なローカル機能グループを、別のグリッドコンポーネントによって拡張する。
【0037】
ローカルに制御可能である否かの検査は、例えば、シミュレーションによって行うことが可能である。択一的または補足的には、特に、所定の特性を有する複数のコンポーネントとの頻繁な組み合わせを表す格納されたパターンと比較することも可能である。ローカルに制御可能である否かについてはさまざま判断基準が考えられ、好ましくは、ローカルでない介入の予想される頻度が、所定の閾値を下回る場合に、ローカルに制御可能であると仮定する。この閾値は、グリッドレベル、実現可能なローカル機能グループの大きさ、ローカルでない介入、および/または別の影響因子の利用可能性に応じて、さまざまに選択することが可能である。
【0038】
有利には、上記の拡張は、すでにグリッドに設けられている別のグリッドコンポーネントによって行われる。ここでこれは、まだローカル機能グループに割り当てられていないグリッドコンポーネントであってよく、または複数の機能グループが統合される。既存のコンポーネントによる拡張が可能でない場合、付加的なコンポーネントが提案され、有利には、それぞれのコンポーネントのタイプおよび仕様について、またグリッドにおけるその最良の位置決めについて提案が行われる。
【0039】
ローカル機能グループへの統合のためには、別の方法を使用することができる。例えば、実現可能な機能グループの定義と、これに続く、制御できるか否かの検査との代わりに、既存のグリッドの全体部分を試験的に複数の機能グループに分割し、その後、適切な方法でこの分割を最適化する。このような方法には、特に、進化的アルゴリズムまたはMCMC(Markov-Chain-Monte-Carlo)アルゴリズムが含まれる。基本的には、とりわけパターンを識別するか、またはグリッド部分の、別の部分への手動の構造化からの知識を転用するために、機械学習法を使用することも可能である。
【0040】
アクションには、有利には、それぞれのローカル機能グループのコンポーネントの動作に影響を及ぼすローカルなアクションが含まれ、別のローカル機能グループへの、または機能グループを包括するコントロールセンタへのデータの伝送を含む、ローカルでないアクションが含まれている。ローカルでないアクションは、さらに2つのクラスに分割される、すなわち、
a)実質的に、ローカル機能グループ外のあらかじめ設定された箇所に制御要求だけを転送するアクション。この場合にこの箇所は、ローカル機能グループの制御要求を適切な手段でカバーする任を負っており、この箇所は、別のローカル機能グループのコンポーネント、または機能グループを包括する上記のコントロールセンタであってよい。ならびに
b)ローカル機能グループ外のあらかじめ設定された箇所において、あらかじめ設定された手段をトリガするアクション
に分割される。
【0041】
タイプb)のアクションを定める場合には、これにより、関係する別のローカル機能グループが不安定にならないことに注意すべきである。というのは、このことは、極端な場合、障害がグリッドの別の複数の領域に伝播されるカスケード(「ドミノ効果」)をトリガし得るからである。
【0042】
別のローカル機能グループ、もしくは機能グループを包括するコントロールセンタにデータを伝送する、ローカルでないアクションは、段階的にトリガすることが可能である。したがって、例えば、まず別の機能グループにデータを伝送する。これにより、あらかじめ設定した時間間隔内に、対応する規制限度が守られない場合、機能グループを包括するコントロールセンタへの伝送が行われる。このようにして付加的な安全レベルが得られ、同時に、グリッドの制御がつねに可能な限りにローカルに行われ、コントロールセンタは、これが実際に必要な場合のみ使用されることが保証される。
【0043】
有利には、付加的なローカル機能グループを作成するために、かつ/またはあらかじめ設定可能な規制限度を保証するために、付加的なグリッドコンポーネントの必要性が特定される。
【0044】
付加的なローカル機能グループを用いることにより、グリッドの、より強力な分散化を実現することができる。付加的なグリッドコンポーネントには、特に、センサおよびアクチュエータが含まれる。センサは、特に、それぞれローカル機能グループにおいて規制限度が守られていることを十分に監視するために必要である。アクチュエータは、特に、それぞれのローカル機能グループのアクションの枠内において、必要な手段を実行するために必要である。さらに発電機、蓄積器、変換コンポーネント、導線などを補足のために提案することができる。上記の特定には、特に、コンポーネントの特性およびその位置決めについての、より特有な指示も含まれる。
【0045】
択一的には、この方法は、グリッドに設けられているコンポーネントだけを起点にし、あらかじめ設定された境界条件を守って、これらのコンポーネントによって実現可能であるローカル機能グループだけを形成する。さらに後で説明するように、この方法の枠内で、特に、数値最適化の枠内で、付加的なグリッドコンポーネントのコストまたは伝送されるデータ量のような判断基準を一緒に取り入れることにより、種々異なる拡張オプションを評価することができる。
【0046】
本発明による方法の好ましい一変化形態では、初期トポロジを起点にして目標トポロジを特定する。このことが意味するのは、この方法の枠内において、トポロジの起こり得る変更が考慮されることである。トポロジの(すなわち最終的には既存のコンポーネントの、また場合によって将来のコンポーネントの接続の)変更により、例えばグリッドの安全性または動作コストについて複数の利点が生じる場合、トポロジの変更が提案される。これは、接続の変更により、場合によっては付加的な導線、スイッチユニットおよび変換ユニットを追加することにより行われる。
【0047】
択一的には初期トポロジを確定した境界条件と見なし、したがってこの方法の枠内においてトポロジを変更しない。この場合には初期トポロジに基づき、例えば、最大限に自律的な動作に必要なコンポーネントを特定することができる。ここでは、いくつのローカル機能グループを確定することができるか、およびどのセンサおよびアクチュエータを後付けすべきであるかが特定される。同時にグリッドインフラストラクチャを適合化するためのコストが最小化される。
【0048】
有利には、あらかじめ設定可能な規制限度には、ローカル機能グループおよび/または異なるグリッドコンポーネント間でのデータの伝送に対する最大遅延時間が含まれる。最大遅延時間を守ることによって保証されるのは、規制限度が、必要な期限内に再び守られることである。さらに、グリッドの可能な限りにローカルな制御が促進される。
【0049】
有利には、この方法は、グリッドコンポーネントをローカル機能グループに統合するための目的関数の数値最適化を有する。この目的関数では、統合の異なるタイプに伴う収益要素および原価要素をシステマティックに考慮することができる。数値最適化に対し、例えば、滑降シンプレックス法またはニュートンもしくはガウス・ニュートン法のような公知の方法を使用することができる。
【0050】
目的関数の枠内では、種々異なる要素を考慮することでき、これにより、所定の目的を最善に満たす、ローカル機能グループへの統合が促進される。
a)したがって目的関数は、グリッドを制御するためにグリッドコンポーネント間で伝送されるデータ量に依存することができ、この数値最適化により、(例えばグリッドの安全性の別の判断基準を考慮して)このデータ量の最小化を促進する。すなわち、これにより、第1には、可能な限りにローカルに制御されるグリッドが作成され、第2には、誤りのより小さい絶対数にあらかじめ設定された誤り率で、伝送されるデータ量が低減される。
b)目的関数は、付加的なグリッドコンポーネントのコストに依存してよい。数値最適化により、(例えばグリッドの安全性の別の判断基準を考慮して)このコストの最小化を促進する。
c)目的関数は、初期トポロジと目標トポロジとの間の適合化のコストに依存してよく、数値最適化により、(別の判断基準を考慮して)このコストの最小化を促進する。
d)目的関数は、ローカル機能グループに対するローカル価格(nodal pricing)に依存してよく、数値最適化により、このコストの最小化を促進する。
【0051】
有利には、既存のグリッドは、少なくとも、以下のグリッドレベル、すなわち、
a)最高電圧グリッド
b)高電圧グリッド
c)中間電圧グリッド、および
d)低電圧グリッド
の隣り合う2つのグリッドレベルのコンポーネントを有する。
【0052】
すなわち、ただ1つのグリッドレベルよりも多くのグリッドレベルを有するグリッド部分が構造化される。これにより、ローカル機能グループに分割する際に、より高いフレキシビリティが実現される。一般には、ただ1つのグリッドレベルだけのコンポーネントを有するローカル機能グループも、また2つまたはそれ以上のグリッドレベルのコンポーネントを有するローカル機能グループも共に同じグリッドに形成することができる。しかしながら本発明による方法は、基本的には、ただ1つのグリッドレベルに延在するグリッド部分においても実行可能である。
【0053】
この方法の好ましい一変化形態では、地理情報システム(GIS)から、グリッドコンポーネントの特性量および/または初期トポロジを受け取る。考察されるグリッド部分についての、構造化に必要な情報は、これにより、簡単かつ最善の実際状況で得ることができる。さらに、この方法は、持続的に更新されるGISに基づいて、定期的にグリッド部分に適用でき、これにより、持続的な、所与の位置的な状況に適合された構造化が得られる。
【0054】
本発明にしたがって構造化されたグリッドを動作させる方法の枠内において、好ましくは、メンテナンスの必要性の識別を行い、メンテナンスサービスを自動的に要求する。メンテナンスの必要性は、例えば、規制限度を上回る頻度の増大、またはローカルでないアクションの呼び出しの増加に基づいて識別される。メンテナンスサービスの自動的な要求は、ふつうの通信チャネル(例えばEメール)を介して、または統合されたソフトウェア環境(例えばSAP(登録商標)ERP)を介して行うことが可能である。
【0055】
好ましくは、ロジスティックインタフェースを介して、自動的なオーダ過程をトリガする。これは、グリッドの構造化の際(例えば付加的なコンポーネントの必要時)にも、グリッドの後続の動作中(例えば、メンテナンスの枠内または境界条件が変更された際)にも行うことが可能である。
【0056】
グリッドに関連するGISが組み込まれる場合、トポロジ、機能グループへの統合および既存のコンポーネントを持続的にチェックして最適化することが可能である。望ましい最適化によれば、ロジスティックインタフェースを用いて持続的に、例えば、アクチュエータのような必要なコンポーネントを後付けすることができる。このような仕方により、自律的な動作に加えて、グリッドの自立的なメンテナンスも可能になる。
【0057】
グリッドを構造化および動作させる、本発明による方法は、特に、コンピュータプログラムを用いて、適切な計算機上で実行される。
【0058】
以下の詳細な説明および特許請求の範囲全体から、本発明の別の有利な実施形態および特徴的構成の組み合わせが明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】中央制御を有する、電気エネルギ用の既存の分散グリッドの概略図である。
図2】本発明による方法の流れ図である。
図3】ローカルな制御を有する、本発明による方法によって構造化された分散グリッドの概略図である。
図4】電気エネルギ用の分散グリッドを動作させる、本発明による方法を実行するシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図面において、基本的に、同じ部分には同じ参照符号が付されている。
【0061】
図1は、中央制御を有する、電気エネルギを分配する既存のグリッドの概略図である。グリッド1は、複数のグリッドレベル1.1、…、1.7に分かれている。伝送グリッドまたは分散グリッドに対応するグリッドレベル1.1、1.3、1.5、1.7では、電圧が上から下に向かって低くなる。すなわち
グリッドレベル1.1:最高電圧グリッド(例えば380もしくは220kV)、
グリッドレベル1.3:高電圧グリッド(例えば36~150kV)、
グリッドレベル1.5:中間電圧グリッド(例えば1~36kV)、および
グリッドレベル1.7:低電圧グリッド(例えば400V~1kV)である。
【0062】
これらの間には、それぞれ電圧変換器(変圧器)が、グリッドレベル1.2、1.4、1.6として配置されている。従来の発電所は、グリッドレベル1.1、1.3、1.5に電力を供給し、最終消費者は、一般に、グリッドレベル1.7の低電圧グリッドに接続されている。
【0063】
グリッド1には、このグリッドに対するコントロールタスクを中央で引き受けるコントロールセンタ2が含まれている。このためにすべてのグリッドレベル1.1、…、1.7を越え、コントロールセンタ2と、グリッドレベル1.1、…、1.7のコンポーネントと、の間で複数の情報が伝送される。とりわけ測定データが、測定箇所からコントロールセンタ2に、また制御データが、コントロールセンタ2からグリッドの個々のコンポーネントに伝送される。付加的には、隣り合う伝送グリッドまたは分散グリッドレベル1.1、1.3、1.5、1.7の間、および伝送グリッドもしくは分散グリッドレベルと、グリッドレベルの直接隣り合う電圧変換器1.2、1.4、1.6と、の間で通信が行われる。
【0064】
電気エネルギ用の既存のグリッドを構造化する、本発明による方法の流れを以下に説明する。対応する流れ図は、図2に示されている。
【0065】
最初に定められるのは、どのシステムを考察するかである(ステップ101)。例えば、既存のグリッドについての情報は、グリッドに関連する地理情報システム(GIS)から得られる。選択的または付加的には、データがデータベースから読み込まれるかまたは手動で補足される。考察されるコンポーネントの選択は、既知のように、グラフィックユーザインタフェースを介して、例えば、グリッドの構造化すべき部分をマークすることによって行われる。グリッドレベルを介して、例えば、所定のグリッドレベルに限定することにより、または別の技術的な特性に基づいてシステムを定めることも可能である。例えば、所定のグリッドキャリアによって動作される、グリッドの部分全体を構造化することができる。しかしながらグリッドキャリアを包括する構造化ならびにグリッドの部分領域の構造化も容易に可能である。
【0066】
第2ステップ102で確認されるのは、システムのどの量が制御可能であるかである。この情報も、GISから、別のデータベースおよび/または手動の入力から得られる。次にこれらの制御可能な量から、構造化の枠内において、実際にも制御すべき量が選択される(ステップ103)。基本的には、いくつかの少ない個数の量、より多くの個数の量、またはすべての一般に制御可能な量も選択することができる。
【0067】
さらにクラスを定める(またはすでに設けられているクラスライブラリから受け取る)(ステップ104)。それぞれのクラスは、測定量および測量領域ならびに場合によって制御可能性について、所定の特性を有するグリッド部分(すなわち、対応するグリッドコンポーネントを有する、グリッドの関連する領域)を表す。ここで注意すべきであるのは、1つのクラスが、場合によっては、ただ1つのグリッドコンポーネントだけを表してもよいことである。
【0068】
この場合、考察されるグリッド部分は、設けられているクラスのインタンスの、初期トポロジにおいて接続されている選択によって表すことが可能である。クラスライブラリからの、設けられているクラスを使用する際に、最初にこれが可能でない場合、付加的なクラスを定めることが可能である。しかしながら、グリッド全体が、定められたクラスのインスタンスによって表されることは必須ではない。表されないコンポーネントおよびグリッド部分は、この場合、従来のように制御され、自律的には動作されないかもしくは自律的に動作される機能グループに統合されない。
【0069】
この場合、すべてのクラス(もしくは少なくとも1つのインスタンスがグリッドに設けられているすべてのクラス)に対し、制御すべき量の目標範囲が確定され、基本的にはこれらの情報も自動的にライブラリから取り出すことができる。所定のクラスまたはクラスの組み合わせは、あらかじめ設定された判断基準に基づき(例えば、外的な制御要求の予想される頻度に関連して)、すでにこの時点に、自律的に動作する機能グループとして識別可能である。
【0070】
アクションに対するトリガ判断基準が満たされているか否かを検査できるようにするために、制御量の目標動作により、ルールと、実現可能なアクションと、必要な情報とが定められる。目標動作における動作パラメータについて守るべき限度は、ステップ105において、
a)グリッドキャリアにより、
b)ソフトウェアにおける設定により、特定され、かつ/または
c)コンポーネントが動作データと共に格納されている、GIS支援されたグリッド情報システムの場合、ソフトウェアによって自動的に特定される。実際に利用可能な(最大)出力または別の動的なパラメータの知識は、コンポーネントおよびその既知または計算可能な最大負荷の知識によって不要である。
【0071】
限度を定めるために、設けられているコンポーネントによって、かつ/または規定(例えば一ケーブルに対する最大許容電流)によって、または、例えば(新規の設置の場合の)接続および要求される最大出力によって方向付けが行われる。
【0072】
以下の表には、ローカルの分散グリッドにおける目標動作についてのパラメータが、例示的に示されている。最後の列に示したアクションは、動作範囲が守られない場合に、すなわち、対応するトリガ判断基準が満たされる場合にそれぞれ実行される。
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
さらにアクションを定める(またはすでに存在するアクションライブラリから受け取る)(ステップ106)。上で説明したように1つのアクションは、1つまたは複数の手段を、特にアクチュエータのアクティブ化および/または別のコンポーネントへのメッセージの送信を有する。アクションは、個々のインスタンスに対応付けられる。複数の(特に異なるクラスの)インスタンスに関連するアクションが定められる場合、アクションは、(互いに接続される)インスタンスの特定の組み合わせに対応付けることが可能である。
【0075】
引き続き、制御を一般に行えるようにするために、どの情報を準備しなければならないかが特定される(ステップ107)。ここから測定されるべき量および計算可能な量が定められる。
【0076】
ゆえにこれに基づき、引き続いて、どの測定量を制御に使用できるかが識別される(ステップ108)。制御過程には、最終的に、1つまたは複数の測定量の特定と、該当する1つまたは複数のアクションを特定するための処理と、制御量に影響が及ぼされるまでアクションを実行することとが含まれる。制御過程の複雑さと、関与するコンポーネントの、グリッドにおける分散と、測定量を処理するための所要時間とに応じて、特定の情報伝送時間が得られる。この情報伝送時間が特定され、最大許容情報伝送時間と比較される(ステップ109)。後者は、すべての制御過程について同じである必要はない。というのは、グリッドの動作にマイナスの影響が及ぼされないようにしたい場合、特定の制御は、別の制御よりも早く行う必要があるからである。
【0077】
測定量と同様に、グリッドコンポーネントの選択およびトポロジがどの程度に変更可能であるかも確定することができる。したがって、例えば、動的な量に限定した最適化を行うことができるか、またはインフラストラクチャの実現可能な変更を、所定のアクチュエータおよびセンサの追加に限定することが可能である。
【0078】
オプションでは、物理的に可能な限りに短い情報遅延時間が特定される(ステップ110)。これにより、要求される遅延時間とは両立しない所定のシナリオを直接、除去することができ、例えば、「リアルタイム」が秒の範囲にある場合、または(例えば家庭用メータから)データ伝送が一日に一回だけ行われ、「リアルタイム」が最大10分を意味する場合に、スマートメータを用いたスマートグリッドのリアルタイム制御を直接、除去することができる。
【0079】
次に、種々異なるクラスのインスタンスと、対応する目標範囲と、制御すべき量と、利用可能な測定量と、アクションとを有する初期トポロジに基づき、(許容される伝送時間を考慮して)グリッドを数値最適化する(ステップ111)。上で説明したように、このために、それ自体公知の種々異なるアプローチを、組み合わせにおいても辿ることができる。特に、関連する複数の判断基準が取り込まれる目的関数の(非線形の)数値最適化が行われる。いずれの場合にも注意すべき限度は、補助条件として、例えばラグランジュ乗算子によって目的関数に取り込むことが可能である。これらの判断基準は、一般に、技術的な性質のものと共に経済的な性質のものでもある。
【0080】
最適化は、グリッドの可能な限りに広範囲の分散化の点から行うことが可能である。というのは、このような場合には動作信頼性(とりわけローカルな障害に対する頑強さ)が最大化されることが予想されるからである。したがってこの最適化から、複数のインスタンスが(一般にローカルで制御可能でないインスタンスであっても)、所属するアクション(およびトリガ判断基準)を含めて、ローカル機能グループに統合される。
【0081】
上で述べたように、別のコンポーネントによる既存のインフラストラクチャの補足も、数値最適化の枠内で直接、検査することができる。これに対し、最初に、動的な量についての最適化を行う場合、ルール違反のときに、確定したアクションに基づき、必要なインフラストラクチャ、特にセンサおよびアクチュエータがすでに設けられているか否かを検査することができる。択一的には目標動作が確定された後、アドバイスを求める意味で、どのアクションが可能であるかを検査することができ、またはどの機能グループが物理的に可能であるか、また(技術または製品が特性値と共に格納されている場合(例えばGISに基づいて))どのアクションが必要であるかが自動的に計算される。技術情報もしくは製品情報が直接、利用できない場合、アドバイスを求める意味で比較が行われ、ここでは、本発明による方法を用いて、仮定を、その実行可能性について検査することができる。
【0082】
1つの適用事例において、上記のステップは、例えば、次のように実行される。ステップ101では、グリッドレベル1.7における、すなわち低電圧グリッドにおけるすべての消費装置を考察すべきことを確認する。ここでは基本的に、ステップ102にしたがい、動的な量として、出力が、電圧および最大電流ならびに周波数によって制御可能である。
【0083】
例示的な使用の枠内では、欧州規格EN50160を守り、相電流および相電圧を制御して、グリッドレベル1.7におけるエネルギ需要を制限する。これは、例えば、エネルギを不利な価格で購入しなければならないという理由でピーク負荷時間によって高いコストが生じる場合、またはケーブルなどの材料が、使用上の限界に到達し、物的損害および人的損害またはグリッドの故障の虞がある場合に有効であり得る。ステップ104では、最小および最大電流ならびに最低および最高電圧にしたがい、消費者を、例えば、230Vの動作電圧および100Aの最大電流を有する個人の家庭と、400Vの動作電圧およびより高い最大電流を有する企業とに分類する。ステップ105では目標動作を定める。この場合にはEN50160と、最大出力の制限とが守られる。本発明の簡単な一変化形態では、例えば最大電流の80%にすべての消費者を同様に制限する。拡張された一変化形態では、電圧を考慮することができる。別の一変化形態では、変電所の接続ケーブルに関連して出力制限を行うことができ、全体出力に関連して、接続される消費者の最大出力を適合させることができる。
【0084】
ステップ106では、アクションを定める。これには、特に、ステップ105にしたがって確定された最大電流を上回った際の電流の制限が含まれる。
【0085】
ステップ107では、制御作業を実行するために必要な情報を決定する。簡単な変化形態において、これは、家庭接続の電流であり、拡張された変化形態では電圧でもあり、ケーブルに関連する出力制限の変化形態では、実際のケーブル出力の算出した総和である。これに対応して識別されるのは、どの測定量を使用できるかであり、付加的な測定箇所が必要であるかまたは有利になり得るか否かである(ステップ108)。
【0086】
ステップ109には、情報伝送のための最大許容時間を制御過程毎に特定することが含まれる。この場合にこれは、インフラストラクチャ、および秒の範囲(分の範囲でもよい)におけるコストにしたがって選択することが可能である。ステップ110による、物理的に可能な情報遅延時間の確定は、この場合に無視することが可能である。このような制限についての制御過程を中央のコントロールセンタに基づいて行おうとする典型的なアーキテクチャでは、このステップは必要であり、ローカルに最適化される出力制限は、解決手段に応じて、大きなコストをかけることによってのみ可能であるかまたは不可能である。
【0087】
ステップ111には、上記のステップによる、既存のグリッドの最適化が含まれている。この場合に数値最適化は、可能であるが、必須ではない。ここでは手動または自動で、グリッドトポロジまたは測定インフラストラクチャとの比較を行うことができる。次に場合によってはコスト分析にしたがい、対応する測定能力を有するスマートメータおよび/または出力制限のためのアクチュエータを後付けするかまたはグリッドの強化が行われる。このことから生じるオーダおよび取付オーダは、自動化されたロジスティックインタフェースを介して行うことが可能である。
【0088】
電気エネルギを分配するためのグリッドの、グリッドにおける動的な量についての構造化は、具体的なケースにおいて、例えば、次のように行われる。すなわち、
1.第1に、構造化すべきグリッド部分として、グリッドキャリアによって動作されるグリッド全体を特定する。
2.このグリッドにおけるエネルギに対して以下が得られる。すなわち
電気、グリッド=E消費+E生産+E伝送+E変換+Eインポート+Eエクスポート
ただし、E=P×t、P=U×Iなど
である。再生可能エネルギ源によって利用可能な電気エネルギは、これを最大値に制限することによって制御可能である。この最大値は、動的なものでもよく、ローカルに最適化されていてもよく、またこの両方であってもよい。
3.個々のエネルギ値は、出力値から直ちに得られる。すなわち
=P×t
である。
4.したがって規制限度も
n,min max=Pn,min max×t
である。
5.この限度を上回るかまたは下回る場合、処理が必要である。すなわち、
(t)<E min:障害の通知
(t)>E max:削減
である。
6.このことから個々の電力値P(t)、電圧値U(t)および電流値I(t)に対する要求が得られる。
7.Pmax(A,ρ,I,t)に対しては、制御過程が作用するまでの最大時間として、ケーブル火災または装置の障害が最短で発生するまでの時間が得られ、Pminに対しては、障害の通知についての最大許容時間が守られる。
8.必要な情報伝送時間は、次のように計算される。すなわち、
=t測定+tAD/変換+2×t伝送+tアルゴリズム+tアクチュエータ
である。
【0089】
次にこれらの情報に基づき、例えば、コンポーネントにおけるマイクロプロセッサおよびアクチュエータを用いてそれ自体で制御を行うことがより有効であるか否か、または変電所における制御がより好適であるか否かを見い出すために、種々異なる解決の可能性が評価される。この評価の際には、(例えばグリッドの動作信頼性についての)技術的な判断基準の他に(例えば改造コストおよび動作コストについての)経済的な判断基準も関与する。
【0090】
この方法にしたがって構造化されるグリッドは、それ自体で動作し、好ましくは最適化も行い、かつメンテナンスを行う複数の機能グループから構成される。このグリッドは、部分的にまたは完全にこのような機能グループから構成されていてよい。このようなグリッド11は、図3に略示されている。このグリッドは、さらに、図1のグリッドレベル1.1、…、1.7に対応する既知のグリッドレベル11.1、…、11.7に分けられる。コントロールセンタ2が、引き続いて設けられているが、上記の方法によって制御できないケースにおいて例外的にのみ必要である。コントロールセンタ2の他には、ローカル機能グループにおいて、もしくはより低位のグリッドレベルにおいて、イベントを解決することができない場合に使用される、障害管理部13が設けられている。
【0091】
情報は、伝送グリッドレベルもしくは分散グリッドレベル11.1、11.3、11.5、11.7内において、ローカル機能グループ間で優先的に伝送される。副次的には、伝送は、伝送グリッドレベルもしくは分散グリッドレベル11.1、11.3、11.5、11.7間で、または必要時には複数のグリッドレベル11.1、…、11.7を越えて中央のコントロールセンタ2に対して行われる。
【0092】
図4には、電気エネルギ用のグリッドを動作させる、本発明による方法を実行することが可能なシステムのブロック図が示されている。グリッド11は、図3にしたがって構成されている。このシステムには、グリッド11を動作させる、本発明による方法が実行される中央の計算ユニット20が含まれている。計算ユニット20は、グリッドに関連する地理情報システム(GIS)21に接続されている。地理情報システム21は、特に、グリッドの実際のトポロジとグリッドキャリアに既知のコンポーネントとが、それらに関連する特性と共に格納されているデータベースを有する。さらに計算ユニット20は、ロジスティックインタフェース22に接続されており、このロジスティックインタフェース22を介して付加的なグリッドコンポーネントまたは交換部品を自動的に要求することができる。さらに、計算ユニット20は、メンテナンスインタフェース23に接続されており、このメンテナンスインタフェース23を介して、メンテナンス、障害の除去または修理のためのメンテナンスサービスを要求することができる。
【0093】
計算ユニットは、さらに、コントロールセンタ2および障害管理部13と通信する。
【0094】
個々のグリッドレベルには、もしくはグリッドレベルを包括して、複数のローカル機能グループが定義されている。図4には、このような3つの機能グループ30.1、30.2、30.3が、例示的に示されている。これらの機能グループのうちの2つ機能グループの30.1、30.2は、グリッドレベル11.7に配置されており、別の機能グループは、グリッドレベル11.5~11.7にわたって延在しており、特に変換器11.6を含んでいる。
【0095】
それぞれの機能グループ30.1、…、30.3は、(矩形によってシンボライズされた)制御ユニット31.1、31.2、31.3を有する。同様に、図示したそれぞれの機能グループ30.1、…、30.3には、1つまたは複数の関連する量を測定して、対応する制御ユニット31.1、…、31.3に伝送する、(円によってシンボライズされた)少なくとも1つのセンサユニット32.1、32.2、32.3が設けられている。図示した3つの機能グループのうちの2つの機能グループ30.2、30.3には、さらに、(正方形によってシンボライズされた)少なくとも1つのアクチュエータ33.2、33.3が設けられており、このアクチュエータを用い、それぞれの制御ユニット31.2、31.3によってトリガされて、それぞれの機能グループ30.2、30.3の機能の仕方に影響を及ぼすことができる。
【0096】
グリッドレベル11.7の2つのローカル機能グループ30.1、30.2の制御ユニット31.1、31.2は、互いに接続されており、対応するアクションがトリガされる際には情報を交換することが可能である。ローカル機能グループ30.1の制御ユニット31.1は、さらに、グリッドレベルを包括するロール機能グループ30.3の制御ユニット31.3に接続されている。後者は、さらに障害管理部13とデータを交換することが可能である。
【0097】
図示した接続は、例として理解すべきである。この図は、上述のコンポーネント間に(直接の)物理的な接続が設けられていなければならないことを意味しておらず、データ交換は、例えば、バスシステムまたは中央のルータを介して行うことが可能である。最終的に関係するのは、どのアクションが、個々の機能グループ30.1、…、30.3に対応付けられているかである。付加的なアクションを追加することにより、別の機能グループまたはコンポーネントとの単方向または双方向のデータ交換を可能にすることができる。
【0098】
グリッドを構造化する、本発明による方法は、一連の問題の設定に使用可能であり、例えば、ローカルに利用可能なエネルギ、例えば太陽光発電設備によって形成されるエネルギの使用の優先順位付けに使用可能である。これにより、エネルギの搬送経路を短くすることが可能である。伝送すべき電力についての、グリッドにおいて予想される動的特性は、これによって低減され、グリッドの設計も相応に同様に低減された要求を満たせばよい。
【0099】
別の一適用事例では、グリッドレベル1における発電所の最低限度の運転計画と、目標動作の違反(周波数または生産量に到達しないなど)に対するルールとを定めることができる。ローカルのアクチュエータによって制御することができない場合、外部のシステム(コントロールセンタ、障害管理部)に情報が送信される。動作のための情報は、別の機能グループからの、測定されるルール違反に対応してよく、その際には、対応するトリガ判断基準(例えば周波数障害)に到達した際に実行される、測定を行う機能グループのアクションにより、受信を行う(例えばグリッドレベル1における)機能グループへの情報の送信が行われるようにする。
【0100】
要約すると、本発明により、電気エネルギを分配する既存のグリッドを構造化する方法が得られ、この方法は、既存のグリッドにシステマティックに適用することができ、障害に陥りにくく、高い動作信頼性が可能になることが確認できる。
図1
図2
図3
図4