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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】洗浄用組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/88 20060101AFI20220516BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20220516BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20220516BHJP
   A61K 8/20 20060101ALI20220516BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20220516BHJP
   C11D 7/36 20060101ALI20220516BHJP
   C11D 7/22 20060101ALI20220516BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220516BHJP
   A01N 61/00 20060101ALI20220516BHJP
   A01N 57/12 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
C11D1/88
A61K8/55
A61K8/64
A61K8/20
A61Q19/10
C11D7/36
C11D7/22
A01P3/00
A01N61/00 D
A01N57/12 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020067900
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021147599
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】591069891
【氏名又は名称】株式会社ケミコート
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】代田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】中川 恭一
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-002810(JP,A)
【文献】特開2007-031608(JP,A)
【文献】特開2010-229108(JP,A)
【文献】特表2019-513708(JP,A)
【文献】特表2002-528566(JP,A)
【文献】特開2013-256481(JP,A)
【文献】特開2013-010737(JP,A)
【文献】特開2017-125172(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110393674(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00 - 19/00
A61K 8/00 - 8/99
A61Q 1/00 - 90/00
A01N 1/00 - 65/48
A01P 1/00 - 23/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH10以上のアルカリ電解水、抗菌性リン脂質及びポリリジンを含有し、前記抗菌性リン脂質の配合量が0.01重量%以上1%重量以下、ポリリジンの配合量が0.001重量%以上1重量%以下であり、
前記抗菌性リン脂質がアルキルPGジモニウムクロリドリン酸及びその塩であることを特徴とする洗浄用組成物
【請求項2】
請求項に記載する洗浄用組成物において、前記アルキルPGジモニウムクロリドリン酸及びその塩がヤシ油アルキルPGジモニウムクロリドリン酸ナトリウムであることを特徴とする洗浄用組成物
【請求項3】
請求項1または2に記載する洗浄用組成物が化粧料であることを特徴とする皮膚洗浄用組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な洗浄用組成物に関し、更に詳しくは手指などに使用する洗浄剤で、グラム陰性菌、グラム陽性菌に対して除菌効果を有する皮膚用洗浄剤の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄、特に手洗いは単に手に付着した汚れを除去するだけでなく、手に付着している菌を減少させる目的もある。
家庭内ではトイレ、浴室などは言うに及ばず、例えば台所のふきん、まな板、食器洗浄用スポンジなど調理に関係する場所にも広く細菌などの微生物が存在する。
しかし日常生活において細菌による感染防止のため家庭内のあらゆる細菌を殺菌する必要は無く、一般細菌の場合は単純に菌数を減らすだけで事足りるのが一般的である。
また一般細菌は除菌により一時的に菌数が減少しても日常生活の中では浮遊菌として存在するので、一定の増殖条件が整うと再び増殖する。
ただし病原性細菌の場合は注意が必要で、ある条件下で増殖した病原性細菌が人の手を介して食物に付着し、口から体内に入ると感染症を引き起こす。
したがって感染症予防のためには手指の洗浄が重要である。
洗浄除菌を目的とした手洗いは、まず石鹸などの洗浄成分を用いて手指に付着した汚れを落とし、次に洗浄成分を流水で洗い流したあと、さらに逆性石鹸などの除菌剤を用いて除菌を行い、再び流水で洗い流すのが一般的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記洗浄方法は洗浄剤と除菌剤で2度洗浄を行う必要が有り、洗浄に手間を要する。
しかし手間を省くため、例えば石鹸と逆性石鹸を混ぜて1液にすると両者が反応して洗浄効果、除菌効果が減衰してしまう。
洗浄効果と除菌効果を1液で得る方法として、ノニオン界面活性剤に除菌効果を有する塩化ベンザルコニウムなどを配合する方法があるが、塩化ベンザルコニウムは皮膚刺激性を有するとしてあまり好まれない。
また界面活性剤など有機物を含む水溶性の製品中に細菌が混入すると水分は細菌の生育環境を作り、界面活性剤などの有機物は細菌の栄養源となるので細菌が増殖し、いわゆる腐敗が生じる可能性がある。
腐敗を防止する方法として化粧品などでは防腐剤としてパラベン類が広く用いられている。
しかしパラベン類も皮膚刺激性を有するとしてあまり好まれない。
本発明はパラベン類、塩化ベンザルコニウムなど皮膚刺激性を有する化学品を含まず、一液で洗浄性に優れ、かつグラム陰性菌、グラム陽性菌に除菌効果を示す皮膚用洗浄剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記課題を解決するため、洗浄効果とグラム陰性菌に対して除菌効果を有するアルカリ電解水にグラム陽性菌に対して除菌効果を示す抗菌性リン脂質と保湿効果、抗菌作用を有するポリリジンを配合した。
本発明に用いられるpH10以上のアルカリ電解水は食塩水等の電気分解によって得られるアルカリ性の電解水で、細菌の栄養分となる界面活性剤などの有機物を含有しなくても洗浄効果が得られる。
さらにpH10以上のアルカリ電解水のpH域は細菌の生育限界値を超えるので電解水中に細菌が混入しても増殖しない。
したがってアルカリ電解水をベースとした洗浄剤は、石けんや界面活性剤を含む洗浄剤と比較して防腐剤の配合量をゼロか大幅に減らすことができる。
次に抗菌性リン脂質、例えばアルキルPGジモニウムクロリドリン酸ナトリウムは大腸菌等のグラム陰性菌よりも黄色ブドウ球菌などのグラム陽性菌に対する抗菌効果が強いことが知られている。
さらにカンジタ菌などの真菌、アスペルギルスなどのカビに対してメチルパラベンよりも小さいMIC値で同等の抗菌効果が得られることも知られている。
またヤシ油アルキルPGジモニウムクロリドリン酸ナトリウムは化粧品原料として使用され、抗菌剤としての利用の他にコンディショニング剤やエモリエント剤の効果が有る。
ポリリジンは必須アミノ酸であるL-リジンが直鎖状につながったポリアミノ酸で天然の食品添加物として使われている。
ポリリジンも化粧品原料として使用され、保湿剤として利用のほかに化学品と比較すると作用は劣るが抗菌作用もあわせ持っている。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、一液で洗浄力に優れ、グラム陰性菌、グラム陽性菌に除菌効果を有すると共に、皮膚刺激性が少ない新規な洗浄用組成物を提供することを目的としている。
抗菌性リン脂質とポリリジンはアルカリ電解水に配合しても洗浄力を低下させない。
またアルカリ電解水に抗菌性リン脂質とポリリジンを配合する事によりアルカリ電解水単独では除菌力が弱いグラム陽性菌の除菌力が向上する。
さらに抗菌性リン脂質、ポリリジンは化粧品基準でパラベンや塩化ベンザルコニウムのような配合量の制限が無く、皮膚刺激性が少ない。
なお本発明品は皮膚用洗浄剤のみにこだわらず、テーブル、キッチン周りなど家庭内の一般洗浄剤としても使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
この発明に係る洗浄用組成物は、pH10以上のアルカリ電解水、抗菌性リン脂質及びポリリジンからなる。
この発明に使用することができるpH10以上の強アルカリ電解水は、食塩、炭酸カリウム等の電解質を添加した水の電気分解によって生成した陰極水で、電解のための電解槽は2槽式を用いても、3槽以上の多層式を用いても良い。
抗菌性リン脂質は、例えばアルキルPGジモニウムクロリドリン酸をアルカリ電解水で中和しても、或いはアルキルPGジモニウムクロリドリン酸ナトリウムを使用しても良い。
アルカリ電解水に対するアルキルPGジモニウムクロリドリン酸ナトリウムの配合量は、0.01~1重量%、好ましくは0.03~0.2重量%であるが、洗浄、除菌効果および製品価格などに応じて適宜変えることができる。
ポリリジンは化粧品原料として市販されているポリリジンがより望ましい。
アルカリ電解水に対するポリリジンの配合量は、0.001~1重量%、好ましくは0.01~0.2重量%であるが、洗浄、除菌効果および製品価格などに応じて適宜変えることができる。
以下この発明を実施例により更に詳細に説明する。
【実施例
【0007】
下記成分を所定量秤量し、それぞれを混合して洗浄用組成物を得た。
成分
三槽式の電解槽を用い、食塩水の電気分解により生成したアルカリ電解水pH10~12にヤシ油アルキルPGジモニウムクロリドリン酸ナトリウムを0.03~0.2重量%、ポリリジンを0.01~0.2重量%添加して洗浄用組成物を得た。
1.除菌試験
上記組成からなる洗浄用組成物について、大腸菌、黄色ブドウ球菌に対する殺菌効果試験を行った。
使用した菌は、大腸菌としてEscherichia coli NBRC 3972、黄色ブドウ球菌としてStaphylococcus aureussubsp. aureus NBRC 12732 を使用した。
試験菌液の調整は、各菌を普通寒天培地に移植し、35℃で24時間培養後1コロニーを普通ブイヨン培地に接種し、35℃で18時間震とう培養した。
この菌液を普通ブイヨン培地を用いて希釈調整した。
上記洗浄用組成物20mlに上記で調整した試験菌液0.1mlを接種し、各経過時間後の生菌数をSCDLP培地を用いて測定した。
その結果を表1に示す。
【0008】
【表1】
【0009】
2.洗浄試験
上記組成からなる洗浄用組成物について、人工汚垢を用いた洗浄力試験を行った。
人工汚垢は牛脂と大豆油を体積比1:1で混合した油脂20g、モノオレイン0.25g及びオイルレッド0.1gを同時にクロロホルム60ccに溶解し、その後加熱酸化させたものを使用した。
人工汚垢をスライドガラスに塗布し、80℃で約30分乾燥させて試験板とした。
上記洗浄用組成物をビーカーに入れ、試験板を浸漬し、超音波洗浄器を用いて30秒洗浄した。
洗浄前後の試験板の人工汚垢重量を測定し、pH12のアルカリ電解水の洗浄力を100%として相対評価により洗浄力を求めた。
その結果を表1に示す。
【比較例】
【0010】
比較例として表2に示す成分割合いで調整した比較例1~4について実施例と同様の試験を行った結果を表2に示す。
【0011】
【表2】