(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】ケース内回路基板への端子接続構造
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20220516BHJP
H01R 13/504 20060101ALN20220516BHJP
B60J 5/00 20060101ALN20220516BHJP
B60J 5/10 20060101ALN20220516BHJP
【FI】
H01R13/52 D
H01R13/504
B60J5/00 N
B60J5/10 H
(21)【出願番号】P 2020091277
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000155067
【氏名又は名称】株式会社ホンダロック
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雄一
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 稔
(72)【発明者】
【氏名】羽澤 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 真一
(72)【発明者】
【氏名】宮川 佳之
(72)【発明者】
【氏名】山積 良寛
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-168315(JP,A)
【文献】特開2019-204577(JP,A)
【文献】特開2014-143898(JP,A)
【文献】特開2017-191652(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0077652(US,A1)
【文献】特開2012-195067(JP,A)
【文献】特開2015-210840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
H01R 43/027-43/28
H01R 12/00-12/86
B60J 5/00
B60J 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタ部(29b)が一体に形成される樹脂製のケース部材(29)を有するケース(23)内に収容室(40)が形成され、当該収容室(40)に収容される回路基板(41)に一端部が接続される複数の端子部材(80)がインサート結合されるとともにそれらの端子部材(80)の一部を露出させる露出孔(83,84)が形成される樹脂製のホルダ(81)が、前記端子部材(80)の他端部を前記コネクタ部(29b)内に配置して前記ケース部材(29)にインサート結合されるケース内回路基板への端子接続構造において、前記ホルダ(81)が、前記露出孔(83,84)を空洞として残しつつ前記ケース部材(29)にインサート結合され、前記ケース部材(29)に、前記露出孔(83,84)に通じて前記収容室(40)側に開放する開放孔(87,88)が形成されることを特徴とするケース内回路基板への端子接続構造。
【請求項2】
前記露出孔(83,84)が、前記端子部材(80)の両端部を除く一部を臨ませる位置で前記ホルダ(81)に形成されることを特徴とする請求項1に記載のケース内回路基板への端子接続構造。
【請求項3】
前記ケース部材(29)に、当該ケース部材(29)の外部を前記収容室(40)に通じさせる連通孔(90)が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のケース内回路基板への端子接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ部が一体に形成される樹脂製のケース部材を有するケース内に収容室が形成され、当該収容室に収容される回路基板に一端部が接続される複数の端子部材がインサート結合されるとともにそれらの端子部材の一部を露出させる露出孔が形成される樹脂製のホルダが、前記端子部材の他端部を前記コネクタ部内に配置して前記ケース部材にインサート結合されるケース内回路基板への端子接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
テールゲート等の車両用ドアのラッチ解除のための車両用押しボタンスイッチ装置が、特許文献1で知られており、このものでは、複数の端子部材がインサート結合される樹脂製のホルダが、車両内側に臨むコネクタ部を有しつつケースの一部を構成する樹脂製のケース部材にインサート結合され、ケース内に収容される回路基板に一端部が接続される前記端子部材の他端部が前記コネクタ部内に配置される構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の端子部材が樹脂製ホルダにインサート結合される一次モールド終了後には、複数の端子部材を相互に連結していた連結部を打ち抜いて相互の連結を解除するための打ち抜き用の露出孔や、インサート成形時の端子部材の変形を防止するための端子部材固定用の露出孔がホルダに形成されるのであるが、上記特許文献1で開示されたものでは、ケース部材にホルダをインサート結合する二次モールド時に前記露出孔に二次モールド樹脂が充填されることになり、前記露出孔の内側面に対応する部分で、前記一次モールド樹脂および二次モールド樹脂間に境界が生じてしまう。このため空気中の水分が車両内側に臨むコネクタ部側から端子部材および一次モールド樹脂間の隙間を通って浸入した場合、その水分が前記露出孔に対応する部分で前記一次モールド樹脂および二次モールド樹脂間の境界を伝わって相互に隣り合う端子部材間に達してしまい、端子部材同士の短絡が生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ホルダで保持された端子部材同士の水分による短絡を防止し得るようにしたケース内回路基板への端子接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、コネクタ部が一体に形成される樹脂製のケース部材を有するケース内に収容室が形成され、当該収容室に収容される回路基板に一端部が接続される複数の端子部材がインサート結合されるとともにそれらの端子部材の一部を露出させる露出孔が形成される樹脂製のホルダが、前記端子部材の他端部を前記コネクタ部内に配置して前記ケース部材にインサート結合されるケース内回路基板への端子接続構造において、前記ホルダが、前記露出孔を空洞として残しつつ前記ケース部材にインサート結合され、前記ケース部材に、前記露出孔に通じて前記収容室側に開放する開放孔が形成されることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記露出孔が、前記端子部材の両端部を除く一部を臨ませる位置で前記ホルダに形成されることを第2の特徴とする。
【0008】
さらに本発明は、第1または第2の特徴の構成に加えて、前記ケース部材に、当該ケース部材の外部を前記収容室に通じさせる連通孔が形成されることを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の特徴によれば、ホルダの露出孔がケース部材へのホルダのインサート結合後には空洞として残ることになり、露出孔の内側面に対応する部分で、ホルダを形成する一次モールド樹脂と、ケース部材を形成する二次モールド樹脂との間の境界が生じることはなく、したがって空気中の水分が仮にコネクタ部から端子部材および一次モールド樹脂間の隙間を通って浸入したとしても、露出孔の部分で端子部材同士の水分による短絡が生じることはない。
【0010】
また本発明の第2の特徴によれば、ホルダに形成される露出孔の範囲を極力小さくして、ホルダを形成する金型のうち露出孔を形成する部分を最小限とし、金型コストの低減を図ることができる。
【0011】
さらに本発明の第3の特徴によれば、ケース部材に形成された連通孔によってケース部材の外部の圧力および収容室内の圧力間に圧力差が生じないようにすることができる。これにより空気中の水分が仮にコネクタ部から端子部材および一次モールド樹脂間の隙間を通って露出孔側に浸入したとしても、その水分が収容室側に吸われてしまうことを抑制することができる。すなわち収容室内が外部とは独立した空間である場合には、低温時に収容室内の圧力が低下することで露出孔に浸入した水分が収容室に吸われて垂れ落ちる可能性があるが、ケース部材に連通孔が形成されることによってそのような事態が生じることが回避される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】テールゲートおよび装飾カバーを省略した状態での
図2の3矢視方向から見た斜視図である。
【
図6】第1の押しボタンの押圧操作状態での車両用押しボタン装置の
図2に対応した縦断面図である。
【
図8】第1ケース部材および第1の押しボタンの下方から見た分解斜視図である。
【
図12】ホルダにインサート結合される前の状態(a)ならびにホルダにインサート結合された状態(b)の端子部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について添付の
図1~
図13を参照しながら説明すると、先ず
図1において、乗用車両の車体Bの後部には、リッドであるテールゲート15が、上方に開放することを可能として開閉可能に取付けられており、このテールゲート15の上部にリヤガラス17が設けられる。前記テールゲート15におけるアウターパネル16の幅方向中央部には、前記リヤガラス17の下方に配置されるようにして装飾カバー19が固定され、この装飾カバー19の下方に配置されるライセンスプレート18が前記アウターパネル16の幅方向中央部に固定される。
【0014】
図2において、前記装飾カバー19は、前記テールゲート15側に開放しつつ前記テールゲート15から車両の後方に膨出するように形成されて前記テールゲート15の前記アウターパネル16に固定されており、当該装飾カバー19の前記テールゲート15側の開口縁部と、前記アウターパネル16との間には無端状に連なる第1のシール部材20が介装される。
【0015】
本発明に従うケース内回路基板への端子接続構造は、この実施の形態では車両用押しボタンスイッチ装置21に適用されており、この車両用押しボタンスイッチ装置21は、前記装飾カバー19内に収容されるようにして前記テールゲート15に取付けられる。前記車両用押しボタンスイッチ装置21は、この実施の形態にあっては、前記テールゲート15以外の全ドアのロック状態およびアンロック状態を切換え可能とするとともに、前記テールゲート15をラッチ状態からアンラッチ状態へと切換えることができるものであり、前記装飾カバー19の底部には、前記車両用押しボタンスイッチ装置21を操作するための操作用開口部22が設けられる。
【0016】
図3~
図6を併せて参照して、前記車両用押しボタンスイッチ装置21は、前記アウターパネル16に固定されるケース23と、該ケース23内に固定的に配置される第1および第2のスイッチ24,25とを備え、それらのスイッチ24,25は、この実施の形態ではタクトスイッチである。
【0017】
第1のスイッチ24は、前記テールゲート15以外の全ドアをアンロック状態とするとともに前記テールゲート15をアンラッチ状態とするためのものであり、押圧操作によって第1のスイッチ24のスイッチング態様が変化した状態で車両ユーザーが携帯した携帯器および車両間での双方向通信によって正規のユーザーであることが確認されると、前記テールゲート15以外の全ドアがアンロック状態となるとともに前記テールゲート15だけが電動駆動によって自動的にアンラッチ状態となり、開放状態となる。なお正規のユーザーであることが事前確認された後で第1のスイッチ24のスイッチング態様が変化することで前記テールゲート15以外の全ドアがアンロック状態となり、前記テールゲート15だけがアンラッチ状態となるようにしてもよい。
【0018】
また第2のスイッチ25は、前記テールゲート15以外の全ドアをロック状態とするためのものであり、押圧操作によって第2のスイッチ25のスイッチング態様が変化した状態で車両ユーザーが携帯した携帯器および車両間での双方向通信によって正規のユーザーであることが確認されると、前記テールゲート15以外の全ドアがロック状態となる。なお正規のユーザーであることが事前確認された後で第2のスイッチ25のスイッチング態様が変化することで前記テールゲート15以外の全ドアがロック状態となるようにしてもよい。このようにテールゲート15に設けられる車両用押しボタンスイッチ装置21が、前記テールゲート15以外の全ドアをロック状態とするための第2のスイッチ25を備えるのは、前記テールゲート15を閉じた後に他のドアをロックするために、運転席側のドアに設けられているロックスイッチをわざわざ押しに行くという面倒さをなくすためである。
【0019】
前記ケース23は、合成樹脂によってそれぞれ形成される第1および第2のケース部材29,30が結合されて成り、第1のケース部材29に形成される平坦な取付け板部29aが前記アウターパネル16に取付けられる。しかも前記第1のケース部材29は、前記ケース23が取付けられた前記テールゲート15が閉じ状態にあるときに、下方に向かって開放した碗状となるように形成される。一方、前記第2のケース部材30は、前記第1のケース部材29の下部開放端の一部を塞ぐようにして第1のケース部材29の下部開放縁部に結合される。この第2のケース部材30は、前記装飾カバー19の前記操作用開口部22からユーザーの手を挿入することを可能としつつ前記第1のケース部材29内に突入するようにして凹んだ第1の凹部31を有し、この第1の凹部31のうち前記テールゲート15の閉じ状態で後方位置となる部分に開口部32が形成される。
【0020】
図7を併せて参照して、前記第1のケース部材29には、車幅方向に間隔をあけた位置で前記取付け板部29aから突出する一対の第1の位置決めピン33が設けられるとともに、それらの第1の位置決めピン33の車幅方向外側に配置されるようにして前記取付け板部29aから突出する一対のボルト34がモールド結合される。また前記第1のケース部材29の前記取付け板部29aには、一対の前記第1の位置決めピン33間の中間部で車両内側に向けて突出するコネクタ部29bが一体に形成される。
【0021】
前記第1の位置決めピン33、前記ボルト34および前記コネクタ部29bは前記アウターパネル16を貫通するものであり、前記アウターパネル16を貫通した前記ボルト34に前記アウターパネル16の内側からナット35(
図2参照)を螺合して締め付けることで前記第1のケース部材29すなわち前記ケース23が前記アウターパネル16に取付けられる。
【0022】
しかも一対の前記第1の位置決めピン33の一方、一対の前記ボルト34の一方および前記コネクタ部29bを囲んで無端状に連なる第2のシール部材36と、一対の前記第1の位置決めピン33の他方および一対の前記ボルト34の他方を囲んで無端状に連なる第3のシール部材37とが、前記取付け板部29aおよび前記アウターパネル16間に介装される。
【0023】
前記第2のケース部材30には、当該第2のケース部材30が有する第1の凹部31に対応した形状を有して前記第1の凹部31内に配置される第2の凹部38を有しつつ、弾性材料たとえばゴムによって形成されるカバー部材39の外周縁部が取付けられており、このカバー部材39によって、前記開口部32が閉じられる。
【0024】
図8を併せて参照して、前記ケース23は、前記開口部32に通じる収容室40を内部に有するものであり、略水平で車幅方向に長く延びて前記収容室40に収容される回路基板41が、前記第1のケース部材29の前記コネクタ部29bとは反対側に固定配置される。すなわち前記第1のケース部材29には、その第1のケース部材29に一体に突設された一対の第2の位置決めピン43で位置決めされた前記回路基板41が、複数たとえば一対のねじ部材42で締結される。
【0025】
前記第1のスイッチ24および前記第2のスイッチ25は、前記収容室40に収容されつつ前記回路基板41の下面に配設される。しかも前記第1のスイッチ24は、車幅方向で前記回路基板41の略中央部に配設され、前記第2のスイッチ25は、車幅方向で前記回路基板41の右側端部に配設される。
【0026】
ところで前記ケース23には、前記第1のスイッチ24をスイッチング作動させるための押圧操作を可能とする押しボタン44が支持されており、この押しボタン44の押圧操作方向は
図6の矢印45で示すように後方斜め上向きである。それに対して前記第1のスイッチ24は、ほぼ水平な回路基板41の下面に配設されているものであるので、前記第1のスイッチ24のスイッチング作動方向は、
図6の矢印46で示すようにほぼ上向きである。すなわち前記第1のスイッチ24は、そのスイッチング作動方向46を前記押しボタン44の押圧操作方向45とは異ならせつつ前記回路基板41に配設されている。
【0027】
前記押しボタン44および前記第1のスイッチ24間には、前記押しボタン44の押圧操作に応じて作動して前記第1のスイッチ24を前記スイッチング作動方向46に押圧する押圧方向変換部材47が介設される。
【0028】
前記押圧方向変換部材47は、車幅方向に延びるとともに前記回路基板41とは反対側から前記第1のスイッチ24を跨ぐ受圧部47aと、当該受圧部47aの長手方向両端近傍に直角に連設されて前記回路基板41を貫通しつつ上方に延びる一対の第1の脚部47bと、前記回路基板41の上方で一対の前記第1の脚部47b間を結ぶ架橋部47cとを一体に有して、合成樹脂によって形成される。
【0029】
前記押圧方向変換部材47の前記押しボタン44側の端部に在る前記受圧部47aは、前記押しボタン44からの押圧力を受けるものであり、前記押しボタン44側に円弧状の縦断面形状を有するように形成される。
【0030】
前記回路基板41には、前記第1のスイッチ24の車幅方向両側に配置される一対の切欠き部50が形成され、前記押圧方向変換部材47が有する一対の前記第1の脚部47bはそれらの切欠き部50を貫通するように配置される。
【0031】
前記押圧方向変換部材47が有する一対の前記第1の脚部47bは、前記スイッチング作動方向46と直交する方向での前記第1のスイッチ24に対する押圧方向変換部材47の相対位置を一定に定めつつ前記スイッチング作動方向46に摺動することを可能として、前記第1のケース部材29に設けられる第1の摺動凹部51に嵌合される。
【0032】
前記第1のケース部材29には、前記押圧方向変換部材47が有する一対の前記第1の脚部47b間に配置されるようにして前記第1の摺動凹部51の閉塞端から隆起する第1のばね受け部52と、その第1のばね受け部52の中心部から突出する棒状の第1のスプリングガイド53とが設けられる。一方、前記押圧方向変換部材47が有する前記架橋部47cには、前記第1のばね受け部52側に向かって開放した第3の凹部54と、前記第1のスプリングガイド53を挿通させるようにして前記第3の凹部54の中央部に通じる挿通孔55とが設けられており、前記第1のスプリングガイド53は、前記第3の凹部54および前記挿通孔55に挿通され、前記回路基板41の上面に前記第1のスプリングガイド53の先端部が当接される。
【0033】
前記押圧方向変換部材47の前記架橋部47cと、前記ケース23の第1のケース部材29における前記第1のばね受け部52との間には、前記押圧方向変換部材47を前記スイッチング作動方向46とは反対側に付勢する第1のコイルばね56が設けられる。
【0034】
前記第2のスイッチ24の車両前後方向後方で前記回路基板41上にはLED57が取付けられており、そのLED57を覆うインナーレンズ58が前記回路基板41に取付けられる。また前記ケース23の前記第2のケース部材30のうち前記インナーレンズ58に対応する部分の相互に隣接した2箇所は、前記ライセンスプレート18に向けて光を照射するためのアウターレンズ59として形成される。
【0035】
図9を併せて参照して、前記押しボタン44は、前記ケース23における前記開口部32に配置されるようにして略矩形状に形成される押しボタン主部44aと、その押しボタン主部44aの上部の車幅方向左側端部から突出する第1の軸部44bと、前記押しボタン主部44の上部の車幅方向右側端部から突出する第2の軸部44cと、前記押しボタン主部44の上部の車幅方向中央部に配設される第3の軸部44dとを一体に有するように形成される。
【0036】
また前記押しボタン主部44aの前記収容室40側に臨む面には、当該押しボタン主部44aの下端部寄りの車幅方向中央部に配置されるようにして平坦な押圧面60が形成されるとともに、複数の補強リブ44eが相互に交差するようにして一体に形成される。
【0037】
前記カバー部材39における前記第2の凹部38には、前記押しボタン主部44aの一部を前記収容室40側から嵌合させるようにして外方に膨らんだ第1の押圧操作部39aが形成される。また前記押しボタン44の前記押圧面60は、前記押圧方向変換部材47の前記受圧部47aに当接されるものであり、前記押しボタン44の前記押しボタン主部44aは、前記カバー部材39と、前記第1のコイルばね56で付勢された前記押圧方向変換部材47とで挟持されることになる。
【0038】
前記第1の軸部44b、前記第2の軸部44cおよび前記第3の軸部44dは、同軸の円形断面を有するように形成され、前記第3の軸部44dの下部を臨ませる透孔61が前記押しボタン主部44aに形成される。
【0039】
前記第1のケース部材29の上部には、前記押しボタン44の前記第1~第3の軸部44b,44c,44dを回動可能に支持する第1、第2および第3の軸支持部62,63,64が設けられ、それらの軸支持部62~64は、車両前後方向後方に側に向かって開いた略C字状の横断面形状を有するように形成され、第3の軸支持部64の一部は前記透孔61に挿通される。
【0040】
前記第2の凹部38よりも車幅方向右側で前記カバー部材39には、車両前後方向に長い長円形状を有しつつ外方に膨らんだ第2の押圧操作部39bが形成されており、この第2の押圧操作部39bへの押圧操作力の作用に応じてスライドして前記第2のスイッチ25をスイッチング作動させるスライダ71が前記第1のケース部材29にスライド可能に支持される。
【0041】
図10を併せて参照して、前記スライダ71は、前記第2のスイッチ25を押圧することを可能として当該第2のスイッチ25に下方から対向するスイッチ押圧部71aと、前記回路基板41からはみ出すようにして車幅方向に長く延びるように形成されつつ前記スイッチ押圧部71aの車両前後方向前部に連設されるばね力作用部71bと、当該ばね力作用部71bの長手方向両端近傍に直角に連設されて前記回路基板41を貫通しつつ上方に延びる一対の第2の脚部71cと、車両前後方向に長い長円形状を有しつつ前記スイッチ押圧部71aおよび前記ばね力作用部71bに連なる受圧部71dと、当該受圧部71dの周方向に間隔をあけた4箇所から側方に突出される当接腕部71eを一体に有するようにして合成樹脂により形成される。
【0042】
前記第2のケース部材30には、前記第2の押圧操作部39bに対応した貫通孔72が形成される。前記受圧部71dは、その一部が前記貫通孔72に挿通されつつ前記第2の押圧操作部39bに前記収容室40側から嵌合され、前記当接腕部71eは前記貫通孔82の周囲で前記第2のケース部材30に前記収容室40側から当接する。
【0043】
前記スライダ71が有する一対の前記第2の脚部71cは、前記第2のスイッチ25のスイッチング作動方向70と直交する方向での前記第2のスイッチ25に対する前記スライダ71の相対位置を一定に定めつつ前記スイッチング作動方向70に摺動することを可能として、前記第1のケース部材29に設けられた第2の摺動凹部74に嵌合される。
【0044】
前記第1のケース部材29には、前記スライダ71が有する前記ばね力作用部71bに対応した位置で前記第2の摺動凹部74の閉塞端から隆起する第2のばね受け部73と、その第2のばね受け部73から突出する棒状の第2のスプリングガイド75とが設けられる。前記第2のばね受け部73と、前記ばね力作用部71bとの間には、前記スライダ71を前記第2のスイッチ25の前記スイッチング作動方向70とは反対側に付勢する第2のコイルばね76が設けられ、この第2のコイルばね76は前記第2のスプリングガイド94を囲繞して配置される。
【0045】
図11において、前記回路基板41には複数個たとえば6個の端子部材80の一端部が挿通、接続されるものであり、それらの端子部材80の他端部に形成される接続端子部80aは前記ケース23の一部を構成する前記第1のケース部材29の前記コネクタ部29b内に配置される。
【0046】
図12を併せて参照して、複数個の前記接続端子80は樹脂製のホルダ81にインサート結合されるものであり、そのホルダ81が、前記接続端子部80aを前記コネクタ部29b内に配置して前記第1のケース部材29にインサート結合される。
【0047】
前記端子部材80は、前記第1のケース部材29のうち当該端子部材80が配設される部分の形状に対応して屈曲した形状に形成されており、前記ホルダ81にインサート結合される前の状態では、
図12(a)で示すように、各接続端子80の相対配置を一定に保持するための連結部82で相互に連結されている。
【0048】
前記端子部材80は、
図12(b)で示すように、前記ホルダ81にインサート結合されるものであり、このホルダ81には、複数の前記端子部材80を相互に連結していた前記連結部82を打ち抜いて相互の連結を解除するための打ち抜き用の第1の露出孔83と、前記ホルダ81へのインサート成形時の前記端子部材80の変形を防止するための端子部材固定用の第2の露出孔84とが形成される。すなわち前記ホルダ81には、前記端子部材80の両端部を除く一部を臨ませる位置で前記第1および第2の露出孔83,84が形成されることになる。
【0049】
しかも
図11で明示するように、前記ホルダ81は、前記第1および第2の露出孔83,84を空洞として残しつつ前記第1のケース部材29にインサート結合され、前記第1のケース部材29には、前記第1および第2の露出孔83,84に個別に通じるとともに前記ケース23内の前記収容室40側に開放する第1および第2の開放孔87,88が形成される。
【0050】
図13を併せて参照して、前記第1のケース部材29には、当該第1のケース部材29の外部を前記収容室40に通じさせるためのたとえば一対の連通孔90が形成される。
【0051】
前記連通孔90は、前記第2のシール部材36で囲まれる部分で前記第1のケース部材29の前記取付け部板部29aに形成されるものであり、この実施の形態では、前記コネクタ部29bおよび前記第1の位置決めピン33間で左右方向に並んで配置されるようにして前記取付け板部29aに形成される。
【0052】
しかも前記取付け板部29aの外面には、前記一対の連通孔90を上方および側方から覆いつつ下方に開いた略U字状に形成される庇部91が一体に突設される。
【0053】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、ケース23内の収容室40に収容されて前記ケース23に固定される回路基板41に一端部が接続される複数個(この実施の形態では6個)の端子部材80が、それらの端子部材80の一部を臨ませる第1および第2の露出孔83,84を有する樹脂製のホルダ81にインサート結合され、前記ケース23の一部を構成する樹脂製の第1のケース部材29に一体に形成されて車両内側に突出するコネクタ部29bに前記接続端子80の他端部の接続端子部80aを配置しつつ前記ホルダ81が前記第1のケース部材29にインサート結合されるのであるが、前記ホルダ81が、前記第1および第2の露出孔83,84を空洞として残しつつ前記第1のケース部材29にインサート結合され、前記第1のケース部材29には、前記第1および第2の露出孔83,84に通じて前記収容室40側に開放する第1および第2の開放孔87,88が形成される。
【0054】
したがって前記ホルダ81の前記第1および第2の露出孔83,84は第1のケース部材29への前記ホルダ81のインサート結合後には空洞として残ることになり、前記第1および第2の露出孔83,84の内側面に対応する部分で、前記ホルダ81を形成する一次モールド樹脂と、前記第1のケース部材29を形成する二次モールド樹脂との間の境界が生じることはない。このため空気中の水分が仮に前記コネクタ部29bから前記端子部材80および一次モールド樹脂間の隙間を通って浸入したとしても、前記第1および第2の露出孔83,84の部分で端子部材80同士の水分による短絡が生じることはない。
【0055】
また前記第1および第2の露出孔83,84が、前記端子部材80の両端部を除く一部を臨ませる位置で前記ホルダ81に形成されるので、前記ホルダ81に形成される前記第1および第2の露出孔83,84の範囲を極力小さくして、前記ホルダ81を形成する金型のうち前記第1および第2の露出孔83,84を形成する部分を最小限とし、金型コストの低減を図ることができる。
【0056】
さらに前記第1のケース部材29に、当該第1のケース部材29の外部を前記収容室40に通じさせる連通孔90が形成されるので、その連通孔90によって前記第1のケース部材29の外部の圧力および前記収容室40内の圧力間に圧力差が生じないようにすることができる。これにより空気中の水分が仮に前記コネクタ部29bから前記端子部材80および一次モールド樹脂間の隙間を通って前記第1および第2の露出孔83,84側に浸入したとしても、その水分が前記収容室40側に吸われてしまうことを抑制することができる。すなわち前記収容室40内が外部とは独立した空間である場合には、前記第1および第2の露出孔83,84に浸入した水分が低温時に前記収容室40内の圧力が低下することで前記収容室40に吸われて垂れ落ちる可能性があるが、前記第1のケース部材29に前記連通孔90が形成されることにより、そのような事態が生じることが回避される。
【0057】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0058】
たとえば上述の実施の形態では、ケース内回路基板への端子接続構造として車両用押しボタン装置21を取り上げて説明したが、本発明は、回路基板を収容する収容室を有するケースの一部を構成するとともにコネクタ部を一体に有するケース部材に、コネクタ部および回路基板間に設けられる複数の端子部材がインサート結合されるとともに端子部材の一部を臨ませる露出孔を有するホルダがインサート結合されるようにしたものに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
23・・・ケース
29・・・ケース部材
29b・・・コネクタ部
40・・・収容室
41・・・回路基板
80・・・端子部材
81・・・ホルダ
83,84・・・露出孔
87,88・・・開放孔
90・・・連通孔