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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】乗客コンベアの集塵装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/00 20060101AFI20220516BHJP
【FI】
B66B31/00 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020129141
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022025937
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2020-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷川 友崇
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-252081(JP,A)
【文献】特開2015-218059(JP,A)
【文献】特開平6-255976(JP,A)
【文献】特開平4-182297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状の踏段チェーンと、前記踏段チェーンを介して無端状に連結された複数の踏段と、前記踏段チェーン及び前記複数の踏段の下方に位置し前記踏段チェーン及び前記複数の踏段に向く床面と、を有する乗客コンベアに設けられ、
前記踏段チェーン及び前記複数の踏段に向く捕集面を有し、前記床面と前記踏段チェーンとの間、及び前記床面と前記複数の踏段との間に、前記床面、前記踏段チェーン、及び前記複数の踏段から離間して配置され、塵埃、油、及び前記塵埃と前記油の混合物のうち少なくとも一つを前記捕集面で捕集可能な、無端状のシートと、
前記シートに捕集された前記塵埃、前記油、及び前記塵埃と前記油の混合物のうち少なくとも一つを回収する回収部と、
前記シートを循環させるシート駆動機構と、
を備え、
前記複数の踏段の進行方向において、前記進行方向における前記シートの両端の間に前記複数の踏段及び前記踏段チェーンが配置され、
前記進行方向と直交し且つ前記床面に沿う幅方向において、前記幅方向における前記シートの両端の間に前記複数の踏段及び前記踏段チェーンが配置され、
前記シート駆動機構は、前記踏段チェーンを駆動させる駆動輪と前記シートとの間で回転を伝達し、前記駆動輪が一方向に回転する場合に前記シートを第1の循環方向に循環させる第1の状態と、前記駆動輪が前記一方向に回転する場合に前記シートを前記第1の循環方向の反対の第2の循環方向に循環させる第2の状態と、の間で切り替わることが可能である、
乗客コンベアの集塵装置。
【請求項2】
前記幅方向において前記捕集面よりも短く、前記捕集面に当接する第1のローラと、
前記幅方向において前記第1のローラよりも長く、前記捕集面の反対側に位置する前記シートの背面に当接し、前記第1のローラとの間に前記シートを挟持する第2のローラと、
をさらに備え、
前記踏段チェーンは、前記乗客コンベアの上階側機械室と下階側機械室との間で循環し、
前記シートは、前記上階側機械室に位置する上階部と、前記下階側機械室に位置する下階部と、前記上階部と前記下階部との間の中間部と、を有し、
前記シート駆動機構は、前記捕集面が前記上階部から前記下階部へ移動するように前記シートを循環させ、
前記回収部は、前記シートに捕集された前記塵埃、前記油、及び前記塵埃と前記油の混合物のうち少なくとも一つを前記下階部から回収し、
前記第1のローラと前記第2のローラとは、前記シートのうち、前記下階部と前記中間部とが接続された部分を挟持する、
請求項に記載の乗客コンベアの集塵装置。
【請求項3】
前記シートは、前記捕集面を含むとともに無端状の前記シートの外側に向く外面を有し、
前記回収部は、前記外面に当接し、前記シートに捕集された前記塵埃、前記油、及び前記塵埃と前記油の混合物のうち少なくとも一つを掻き取る掻取部を有する、
請求項1又は2に記載の乗客コンベアの集塵装置。
【請求項4】
前記シートは、前記油を吸収可能な、請求項1~の何れか一項に記載の乗客コンベアの集塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアの集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレーター等の乗客コンベアの踏段の下には、オイルパンが設けられている。オイルパンには、踏段チェーンに付着したチェーンオイルが滴下して溜まる他、隣り合う踏段の間の隙間等から降落する塵埃も溜まる。そのため、オイルパンは定期的に清掃されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-234735号公報
【文献】特開2000-143137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オイルパンの清掃では、全ての踏段が取り外され、作業員がトラス内に立ち入って清掃を行う。このため、オイルパンの清掃の作業時間やコストは大きくなってしまう。
【0005】
このような問題を解決するため、本発明は、油や塵埃を容易に回収可能な乗客コンベアの集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの実施形態に係る乗客コンベアの集塵装置は、無端状の踏段チェーンと、前記踏段チェーンを介して無端状に連結された複数の踏段と、前記踏段チェーン及び前記複数の踏段の下方に位置し前記踏段チェーン及び前記複数の踏段に向く床面と、を有する乗客コンベアに設けられ、前記踏段チェーン及び前記複数の踏段に向く捕集面を有し、前記床面と前記踏段チェーンとの間、及び前記床面と前記複数の踏段との間に、前記床面、前記踏段チェーン、及び前記複数の踏段から離間して配置され、塵埃、油、及び前記塵埃と前記油の混合物のうち少なくとも一つを前記捕集面で捕集可能な、無端状のシートと、前記シートに捕集された前記塵埃、前記油、及び前記塵埃と前記油の混合物のうち少なくとも一つを回収する回収部と、前記シートを循環させるシート駆動機構と、を備える。前記複数の踏段及び前記踏段チェーンは、前記複数の踏段の進行方向において、前記進行方向における前記シートの両端の間に配置され、前記進行方向と直交し且つ前記床面に沿う幅方向において、前記幅方向における前記シートの両端の間に配置され、前記シート駆動機構は、前記踏段チェーンを駆動させる駆動輪と前記シートとの間で回転を伝達し、前記駆動輪が一方向に回転する場合に前記シートを第1の循環方向に循環させる第1の状態と、前記駆動輪が前記一方向に回転する場合に前記シートを前記第1の循環方向の反対の第2の循環方向に循環させる第2の状態と、の間で切り替わることが可能である
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は実施形態の乗客コンベア及び集塵装置の一部を示す平面図である。
図2図2は実施形態の乗客コンベア及び集塵装置を示す側面図である。
図3図3は実施形態の回収部の一部を示す斜視図である。
図4図4は実施形態のシート駆動機構の第1の状態を示す部分断面図である。
図5図5は実施形態のシート駆動機構の第2の状態を示す部分断面図である。
図6図6は実施形態のシートの下階部と中間部が接続された部分を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる乗客コンベアの集塵装置を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
なお、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0010】
乗客コンベア1は、建造物(建築物ともいう)に設置されて、建造物における2つの場所の間で乗客を搬送する機器である。乗客コンベア1は、例えば、建造物における上階と下階との間に渡って傾斜して設置されるエスカレーターであってもよいし、建造物における同じ階に平坦に設置される動く歩道でもよい。
【0011】
乗客コンベア1がエスカレーターである場合、乗客コンベア1は、例えば図1図2に示す構成を有する。乗客コンベア1は、トラス2と、複数の踏段3と、踏段チェーン4と、乗降口5と、を有する。
【0012】
トラス2は、一端が下階に配され、他端が上階に配され、乗客コンベア1の可動域と傾斜角を規定した外枠やフレームである。また、トラス2は、オイルパン8と、上階側機械室9aと、下階側機械室9bとを有する。さらに、乗客コンベア1は、トラス2に配された集塵装置10を有する。
【0013】
上階側機械室9aに、電動機21と、減速機22と、駆動輪25と、が設けられており、下階側機械室9bに、従動輪26が設けられる。
【0014】
ここで、本明細書における進行方向Dpと幅方向Dwについて定義する。進行方向Dpとは、乗客コンベア1の踏段3が進む方向を示す。特に、乗客コンベア1がエスカレーターである場合、進行方向Dpは、エスカレーターが下階から上階へ進む上昇方向と、上階から下階へ進む下降方向を含む。上昇方向は、乗降口5の近傍においては略水平方向であり、上階と下階との間においては斜め上方向である。下降方向は、乗降口5の近傍においては略水平方向であり、上階と下階の間においては斜め下方向である。なお、上昇方向と下降方向とは、それぞれ、上り方向と下り方向とも称される。幅方向Dwとは、進行方向Dpと直交し且つオイルパン8の上面である床面8aに沿う方向であり、いわゆる左右方向を示す。すなわち、幅方向Dwは、略水平方向である。
【0015】
駆動輪25と従動輪26との間には、無端状の踏段チェーン4が掛け渡される。踏段チェーン4は、乗客コンベア1の上階側機械室9aと下階側機械室9bとの間で循環する。そして、踏段チェーン4を介して、乗客コンベア1の利用者(以下、乗客と呼ぶ)を乗せる複数の踏段3が無端状に連結されている。なお、踏段3はステップとも称され、踏段チェーン4はステップチェーンとも称される。
【0016】
電動機21から減速機22と、駆動チェーン24とを介して駆動輪25に供給される動力により、踏段チェーン4が駆動輪25と従動輪26との間を循環する。踏段チェーン4の循環に伴い、複数の踏段3が駆動輪25と従動輪26とに渡って回転循環する。
【0017】
乗客コンベア1の複数の踏段3が上昇方向に稼動する場合、踏段3は、下階の乗降口5において進行方向Dpに向けて隣接する踏段3同士が水平状でトラス2から進出される。複数の踏段3は、下部遷移カーブにおいて隣接する踏段3の間の段差を拡大してゆき階段状に遷移される。
【0018】
また、複数の踏段3は、階段状で上昇され、上部遷移カーブにおいて隣接する踏段3間の段差を縮小してゆき水平状に遷移される。そして、複数の踏段3は、上階の乗降口5において再び水平状となってトラス2に進入する。複数の踏段3は、トラス2に進入された後に下方に反転される。複数の踏段3は、帰路を下降され、再度反転されて下階の乗降口5においてトラス2から進出される。
【0019】
下降方向に稼動する乗客コンベア1では上記の逆の動作となる。上階及び下階の乗降口5において、複数の踏段3は、乗客を乗せる上面の踏み面を水平状として、トラス2から進出し、またはトラス2へ進入する。
【0020】
オイルパン8は、踏段チェーン4に付着した油36(潤滑油36a)が滴下して溜まる。オイルパン8の床面8aは、踏段チェーン4及び複数の踏段3の下方に位置し、踏段チェーン4及び複数の踏段3に向いている。なお、潤滑油36aはチェーンオイルとも称される。
【0021】
集塵装置10は、無端状のシート30を備える。シート30は、トラス2の内部に設けられる。また、シート30は、上階側機械室9aに位置する上階部30aと、下階側機械室9bに位置する下階部30bと、上階部30aと下階部30bとの間に位置する中間部30cと、を有する。上階部30aは、上階の乗降口5の近傍に位置し、略水平方向に延びている。下階部30bは、下階の乗降口5の近傍に位置し、略水平方向に延びている。中間部30cは、階段状の踏段3に沿って斜め方向に延びている。
【0022】
シート30は、床面8aと踏段チェーン4との間、及び床面8aと複数の踏段3との間に設けられるとともに、床面8a、踏段チェーン4、及び複数の踏段3から離間して配置される。
【0023】
また、シート30は、複数の踏段3及び踏段チェーン4の全ての部分を下方から覆う。すなわち、複数の踏段3及び踏段チェーン4は、図1のように幅方向Dwにおけるシート30の一方の端34aと、他方の端34bとの間に配置され、かつ、図2のように進行方向Dpにおけるシート30の一方の端34cと、他方の端34dとの間に配置されている。言いかえると、複数の踏段3の進行方向Dpにおいて、進行方向Dpにおけるシート30の両端(端34c,端34d)の間に複数の踏段3及び踏段チェーン4が配置され、進行方向Dpと直交し且つ床面8aに沿う幅方向Dwにおいて、幅方向Dwにおけるシート30の両端(端34a,端34b)の間に複数の踏段3及び踏段チェーン4が配置されている。
【0024】
端34cは、上昇方向におけるシート30の端であり、上階部30aに位置する。上述のように、上昇方向は乗降口5の近傍においては略水平方向であるため、端34cは略水平方向(図2の左右方向)におけるシート30の端である。
【0025】
端34dは、下降方向におけるシート30の端であり、下階部30bに位置する。上述のように、下降方向は乗降口5の近傍においては略水平方向であるため、端34dは略水平方向(図2の左右方向)におけるシート30の端である。
【0026】
シート30は、無端状のシート30の外側に向く外面32を有する。外面32は、捕集面31を含む。捕集面31は、外面32のうち略上方に向く面であり、踏段チェーン4及び複数の踏段3に向く。
【0027】
捕集面31は、隣接する踏段3の間の隙間や、踏段3と欄干との間の隙間等から降落する塵埃35を捕集可能である。なお、塵埃35には、塵や埃のほかに、ごみ、紙くず、髪の毛等も含まれる。
【0028】
また、捕集面31は、踏段チェーン4から滴下する油36(潤滑油36a)を捕集可能である。なお、捕集面31は、油36を吸収可能である。シート30に、滴下した潤滑油36aが堆積すると、シート30が潤滑油36aを吸収する。シート30として、例えば難燃性の布が採用される。これにより、シート30が燃えることが抑制される。なお、シート30は、布に限定されない。
【0029】
さらに、捕集面31は、隣接する踏段3の間の隙間等から降落する塵埃35と、踏段チェーン4から滴下する油36(潤滑油36a)と、が混じり合った混合物37を捕集可能である。すなわち、捕集面31は、塵埃35、油36、及び塵埃と油の混合物37のうち少なくとも一つを捕集可能である。
【0030】
図3に示すように、集塵装置10は、回収部40を有する。回収部40は、下階側機械室9bに設けられる。なお、回収部40は、上階側機械室9aのような他の位置に設けられてもよい。回収部40は、シート30の捕集面31に捕集された、塵埃35、油36、及び塵埃と油の混合物37のうち少なくとも一つを回収する。
【0031】
回収部40は、例えば、掻取部41と保管部42を有する。掻取部41は、篦形状の先端部41aを有する。先端部41aが、外面32に当接する。
【0032】
外面32は、上階部30aでシート30が反転する反転面32aと、下階部30bでシート30が反転する反転面32bと、を有する。なお、反転面32aの進行方向Dpにおける端は、シート30の端34cである。反転面32bの進行方向Dpにおける端は、シート30の端34dである。例えば、先端部41aは、外面32のうち、下階部30bでシート30が反転する反転面32bに当接する。
【0033】
幅方向Dwにおいて、先端部41aは外面32と同じ長さか、外面32よりも長い。このため、先端部41aは、幅方向Dwにおける外面32の全域に当接する。なお、先端部41aは、幅方向Dwにおける外面32の一部に当接していてもよく、掻取部41は、下階部30bの捕集面31に当接してもよく、外面32のうち床面8aに向く面に当接してもよい。また、先端部41aは箆形状に限定されない。
【0034】
先端部41aが外面32に当接する状態で、下階部30bは回転循環する。よって、掻取部41はシート30の下階部30bに捕集された、塵埃35、油36、及び塵埃と油の混合物37のうち少なくとも一つを掻き取る。言い換えると、回収部40は、シート30に捕集された塵埃35、油36、及び塵埃と油の混合物37のうち少なくとも一つを下階部30bから回収する。
【0035】
保管部42は、掻取部41が掻き取った、塵埃35、油36、及び塵埃と油の混合物37のうち少なくとも一つが溜まる部分である。保管部42に溜まった塵埃35、油36、及び塵埃と油の混合物37のうち少なくとも一つは、例えば乗客コンベア1の定期メンテナンスの際に、除去される。
【0036】
回収部40は、進行方向Dpにおいて、進行方向Dpにおける複数の踏段3の端から離間している。言い換えると、回収部40は、複数の踏段3に覆われない。このため、乗客コンベア1の定期メンテナンスでは、下階の乗降口5が取り外されることで、踏段3を取り外すことなく、作業員が保管部42から塵埃35、油36、及び塵埃と油の混合物37のうち少なくとも一つを除去することができる。
【0037】
図4及び図5に示すように、集塵装置10は、シート30を循環させるシート駆動機構60を備える。シート駆動機構60は、例えば、上階側機械室9aに設けられる。シート駆動機構60は、踏段チェーン4を駆動させる駆動輪25とシート30との間で回転を伝達させる。すなわち、シート30は、踏段チェーン4を駆動させる電動機21及び駆動輪25により駆動させられる。なお、シート30はこの例に限られず、電動機21及び駆動輪25と異なる装置により駆動させられても良い。
【0038】
シート駆動機構60は、シート駆動輪61と、シート駆動チェーン62と、第1の中継輪63と、第2の中継輪64と、二つの第3の中継輪65と、支持板66を有する。シート駆動輪61は、上階側機械室9aに設けられる。シート駆動輪61はシート30の上階部30aに連結している。例えば、シート30の上階部30aは、シート駆動輪61に設けられたプーリに掛け渡される。シート駆動輪61が回転することで、シート30が循環する。
【0039】
無端状のシート駆動チェーン62は、駆動輪25と第1の中継輪63との間に掛け渡され、駆動輪25の動力を第1の中継輪63に伝達させる。第1の中継輪63は、第2の中継輪64又は第3の中継輪65と連結し、駆動輪25の動力を、第2の中継輪64又は第3の中継輪65に伝達する。
【0040】
例えば、シート駆動輪61と、第1の中継輪63と、第2の中継輪64と、第3の中継輪65と、は歯車を備えている。シート駆動輪61、第1の中継輪63、第2の中継輪64、及び第3の中継輪65は、歯車同士が噛み合うことで連結し、互いに動力を伝達することができる。なお、シート駆動輪61、第1の中継輪63、第2の中継輪64、及び第3の中継輪65は、歯車に限らず、摩擦、ベルト、チェーン、又は他の手段により、動力を伝達可能に連結されても良い。
【0041】
第2の中継輪64は、第1の中継輪63と、シート駆動輪61とに連結することができる。第2の中継輪64は、第1の中継輪63とシート駆動輪61とに連結することで、第1の中継輪63の動力をシート駆動輪61に伝達する。
【0042】
第3の中継輪65は、第4の中継輪65aと、第5の中継輪65bとを有する。第4の中継輪65aと、第5の中継輪65bとは、互いに連結する。第4の中継輪65aは第1の中継輪63と連結することができる。第5の中継輪65bは、シート駆動輪61と連結することができる。第3の中継輪65は、第1の中継輪63とシート駆動輪61とに連結することで、第1の中継輪63の動力をシート駆動輪61に伝達する。
【0043】
第2の中継輪64と第3の中継輪65とは、支持板66に回転可能に取り付けられる。シート駆動機構60は、例えば、支持板66をスライドさせることで、第1の状態S1と第2の状態S2との間で切り替わることが可能である。
【0044】
図4に示すように、第1の状態S1では、第2の中継輪64が第1の中継輪63とシート駆動輪61とに連結し、第3の中継輪65が第1の中継輪63とシート駆動輪61とから離間している。第1の状態S1において、第1の中継輪63とシート駆動輪61とが第2の中継輪64に連結されるため、駆動輪25が図4における時計回り方向Dtに回転すると、シート駆動輪61も図4における時計回り方向に回転する。すなわち、第1の中継輪63とシート駆動輪61との間に奇数個の第2の中継輪64が介在することで、第1の中継輪63とシート駆動輪61とが同一方向(時計回り方向)に回転し、ひいては駆動輪25とシート駆動輪61とが同一方向に回転する。シート駆動輪61が図4における時計回り方向に回転することで、シート30が第1の循環方向D1に循環する。第1の循環方向D1は、捕集面31が下階から上階に向かう方向(上り方向)である。なお、シート30を第1の循環方向D1に循環させるため、相互に連結された三つ以上の奇数個の第2の中継輪64を第1の中継輪63と、シート駆動輪61とに、連結してもよい。
【0045】
図5に示すように、第2の状態S2では、第3の中継輪65が第1の中継輪63とシート駆動輪61とに連結し、第2の中継輪64が第1の中継輪63とシート駆動輪61とから離間している。第2の状態S2において、第1の中継輪63が第4の中継輪65aに連結され、シート駆動輪61が第5の中継輪65bに連結されるため、駆動輪25が図5における時計回り方向Dtに回転すると、シート駆動輪61は図5における反時計回り方向に回転する。すなわち、第1の中継輪63とシート駆動輪61との間に偶数個の第3の中継輪65が介在することで、第1の中継輪63とシート駆動輪61とが逆方向に回転し、ひいては駆動輪25とシート駆動輪61とが逆方向に回転する。シート駆動輪61が図5における反時計回り方向に回転することで、シート30が第2の循環方向D2に循環する。第2の循環方向D2は、捕集面31が上階から下階に向かう方向(下り方向)である。なお、シート30を第2の循環方向D2に循環させるため、相互に連結された四つ以上の偶数個の第3の中継輪65を第1の中継輪63と、シート駆動輪61とに、連結してもよい。
【0046】
一方、図4に示す第1の状態S1において、第1の中継輪63と、シート駆動輪61とが、第2の中継輪64に連結されるため、駆動輪25が図4における反時計回り方向Daに回転すると、シート駆動輪61は図4における反時計回り方向に回転する。シート駆動輪61が図4における反時計回り方向に回転することで、シート30が第3の循環方向D3に循環する。第3の循環方向D3は、下り方向である。
【0047】
また、図5に示す第2の状態S2において、第1の中継輪63が第4の中継輪65aに連結され、シート駆動輪61が第5の中継輪65bに連結されるため、駆動輪25が図5における反時計回り方向Daに回転すると、シート駆動輪61は図5における時計回り方向に回転する。シート駆動輪61が図5における時計回り方向に回転することで、シート30が第4の循環方向D4に循環する。第4の循環方向D4は、上り方向である。
【0048】
上述のように、第1の状態S1では、シート駆動機構60は、駆動輪25が一方向である時計回り方向Dtに回転する場合にシート30を第1の循環方向D1に循環させる。また、第2の状態S2では、シート駆動機構60は、駆動輪25が同じく時計回り方向Dtに回転する場合にシート30を第1の循環方向D1の反対の第2の循環方向D2に循環させる。
【0049】
同様に、第1の状態S1では、シート駆動機構60は、駆動輪25が一方向である反時計回り方向Daに回転する場合にシート30を第3の循環方向D3に循環させる。また、第2の状態S2では、シート駆動機構60は、駆動輪25が同じく反時計回り方向Daに回転する場合にシート30を第3の循環方向D3の反対の第4の循環方向D4に循環させる。
【0050】
本実施形態では、駆動輪25が時計回り方向Dtに回転する場合、シート駆動機構60は第2の状態S2に設定される。また、駆動輪25が反時計回り方向Daに回転する場合、シート駆動機構60は第1の状態S1に設定される。これにより、シート駆動機構60は、駆動輪25の回転方向にかかわらず、捕集面31が上階部30aから下階部30bへ下り方向に移動するようにシート30を循環させる。
【0051】
前述のように、シート30は、駆動輪25から動力を得る。このため、シート30は、乗客コンベア1の稼働中に常に循環することができる。なお、シート30は、乗客コンベア1の稼働にかかわらず循環可能であっても良い。
【0052】
図6に示すように、集塵装置10は、複数の第1のローラ90と、第2のローラ91と、筒状材95と、を備える。第1のローラ90は、略円盤形状を備える。また、第1のローラ90の各々は、シート30に当接する略円筒状の外周面90aと、幅方向Dwを向く略円形の側面90bと、を有する。第1のローラ90の各々は、同一形状を備え、幅方向Dwにおいて捕集面31よりも短い。また、複数の第1のローラ90は、幅方向Dwに間隔を空けて配置されている。外周面90aは捕集面31のうち、中間部30cの、下階部30bに近い位置に当接する。
【0053】
第2のローラ91は、円柱形状に形成され、少なくともシート30の両端(端34a,端34b)の間に亘って延びている。また、第2のローラ91は、幅方向Dwにおいて第1のローラ90よりも長く、シート30に当接する外周面91aを有する。さらに、第2のローラ91は、幅方向Dwに沿う円柱の中心軸を回転中心として回転する。外周面91aは、捕集面31の反対側に位置するシート30の背面33のうち、下階部30bの、中間部30cに近い位置に当接する。
【0054】
例えば、筒状材95は、円筒形状に形成され、複数の第1のローラ90の側面90bの中心を貫通し、複数の第1のローラ90を回転可能に支持する。複数の第1のローラ90の外周面90aと、第2のローラ91の外周面91aとは、シート30のうち、下階部30bと中間部30cとが接続された部分を挟持する。言い換えると、第2のローラ91は、第1のローラ90との間にシート30を挟持する。よって、シート30と筒状材95の間の隙間を、捕集面31で捕集された塵埃35、油36、塵埃と油の混合物37が通過可能である。
【0055】
なお、集塵装置10は、例えば、複数の第1のローラ90のかわりに、一つの第1のローラ90を備えてもよい。第1のローラ90は、例えば、幅方向Dwにおいてシート30の略中央に配置されてもよい。筒状材95は、例えば、幅方向Dwに沿う円筒の中心軸を回転中心として回転してもよい。筒状材95と第1のローラ90とは、例えば、相互に固着されてもよい。
【0056】
以上説明された乗客コンベア1の集塵装置10では、進行方向Dpにおいて、進行方向Dpにおけるシート30の両端(端34c,端34d)の間に複数の踏段3及び踏段チェーン4が配置される。さらに、幅方向Dwにおいて、幅方向Dwにおけるシート30の両端(端34a,端34b)の間に複数の踏段3及び踏段チェーン4が配置される。すなわち、複数の踏段3及び踏段チェーン4の全ての部分がシート30によって下方から覆われる。塵埃35、油36、塵埃と油の混合物37が、このシート30の捕集面31に捕集され、回収部40により回収される。これにより、オイルパン8を清掃する際に全ての踏段3を取り外す必要がなくなり、集塵装置10が塵埃35、油36、塵埃と油の混合物37を容易に回収することができる。従って、乗客コンベア1のメンテナンス性が向上する。
【0057】
シート駆動機構60は、駆動輪25が一方向(時計回り方向Dt)に回転する場合にシート30を第1の循環方向D1に循環させる第1の状態S1と、駆動輪25が上記一方向に回転する場合にシート30を第2の循環方向D2に循環させる第2の状態S2と、の間で切り替わることが可能である。このため、シート30は、駆動輪25から回転力を与えられながら、駆動輪25の回転方向に関わらず所望の方向に循環できる。
【0058】
幅方向Dwにおいて捕集面31よりも短い第1のローラ90が捕集面31に当接し、幅方向Dwにおいて第1のローラ90よりも長い第2のローラ91が捕集面31の反対の背面33に当接する。第1のローラ90と第2のローラ91とが、シート30のうち、下階部30bと中間部30cとが接続された部分を挟持する。回収部40が下階部30bの捕集面31から塵埃35、油36、塵埃と油の混合物37を回収するため、下階部30bと中間部30cとが接続された部分において、捕集面31には多くの塵埃35、油36、塵埃と油の混合物37が捕集されている場合がある。しかし、幅方向Dwにおいて第1のローラ90が捕集面31より短いため、捕集面31の塵埃35、油36、塵埃と油の混合物37は、第1のローラ90が捕集面31に当接しない領域を通って中間部30cから下階部30bへ移動することができる。従って、下階部30bと中間部30cとが接続された部分におけるシート30の浮き上がりが抑制されるとともに、第1のローラ90と捕集面31との当接部分に塵埃35、油36、塵埃と油の混合物37が堆積することが抑制される。
【0059】
掻取部41は、シート30に捕集された塵埃35、油36、塵埃と油の混合物37を掻き取って回収する。これにより、無端状のシート30を循環させることで、掻取部41が捕集面31に捕集された塵埃35、油36、塵埃と油の混合物37を効率良く回収できる。
【0060】
シート30が油36を吸収可能である。これにより、シート30に捕集された油36が塵埃35から分離され、回収部40がシート30に捕集された塵埃35を回収しやすくなる。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1 乗客コンベア、2 トラス、3 踏段、4 踏段チェーン、8a 床面、9a 上階側機械室、9b 下階側機械室、10 集塵装置、25 駆動輪、30 シート、30a 上階部、30b 下階部、30c 中間部、31 捕集面、32 外面、34a,34b,34c,34d 端、35 塵埃、36 油、37 混合物、40 回収部、41 掻取部、60 シート駆動機構、90 第1のローラ、91 第2のローラ、S1 第1の状態、D1 第1の循環方向、S2 第2の状態、D2 第2の循環方向、Dp 進行方向、Dw 幅方向、Dt 時計回り方向(一方向)、Da 反時計回り方向(一方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6