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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】圃場管理装置
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20220516BHJP
   G06Q 50/02 20120101ALI20220516BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
A01B69/00 303A
G06Q50/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020158982
(22)【出願日】2020-09-23
(62)【分割の表示】P 2018054762の分割
【原出願日】2018-03-22
(65)【公開番号】P2021006045
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2020-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100141298
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 文典
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】三谷 英樹
(72)【発明者】
【氏名】奥山 昌紀
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-266608(JP,A)
【文献】特開2016-170814(JP,A)
【文献】特開平10-066403(JP,A)
【文献】特開2018-038291(JP,A)
【文献】特開2016-049102(JP,A)
【文献】国際公開第2016/178268(WO,A1)
【文献】特開2001-306147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
G06Q 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動操向操作を行うための操舵手段と農作業を行う作業部とを有する作業車両が、ユーザの手動操向操作により圃場内を走行しつつ前記作業部に農作業を実行させている間に測定された前記作業車両の時刻毎の位置情報に基づいて、前記作業車両の主たる移動方向であって前記圃場について唯一の主移動方向を決定する主移動方向決定部と、
前記主移動方向決定部によって決定された主移動方向に平行な第1仮想直線と、前記第1仮想直線に直交する第2仮想直線とを用いて、前記圃場の領域を複数の矩形状の管理領域に分割し、前記各管理領域を特定するための特定情報を生成する情報生成部と
を備える圃場管理装置。
【請求項2】
前記作業車両の時刻毎の位置情報に基づいて、前記各位置情報に対応する位置での前記作業車両の移動方向を算出する移動方向算出部を備え、
主移動方向決定部は、前記移動方向算出部によって算出された各位置情報に対応する移動方向に基づいて、主移動方向を決定することを特徴とする請求項1に記載の圃場管理装置。
【請求項3】
前記圃場内には作物を生育させるための複数の細長矩形状の作物生育領域がストライプ状に形成されており、前記主移動方向が前記作物生育領域の延びる方向である、請求項1または2に記載の圃場管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圃場管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圃場での農作物の生育状況を小領域毎に把握するために、圃場マップ上で圃場を複数の小領域、例えば一辺が数mの正方形の領域に分割し、小領域毎に育成状況および作業状況の管理を図る営農手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-102924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、圃場内には、作物を生育させるための複数の細長矩形状の作物生育領域が、ストライプ状に形成されている。作物生育領域の代表的な例として、畝や条を挙げることができる。農作業時には、作業車両は、圃場内の作物生育領域に沿って移動しながら農作業を行う。したがって、圃場を作業車両の移動方向に沿った複数の小領域に分割して管理することができれば、作業車両の作業方向と管理領域の配置方向とが合致するので、作物の栽培管理を行いやすくなる。
【0005】
この発明の目的は、圃場内における作業車両の主たる移動方向に沿って、圃場を小領域に分割して管理することが可能となる圃場管理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による情報取得装置は、手動操向操作を行うための操舵手段を有する作業車両が、搭乗しているユーザの手動操向操作により圃場内を作業しつつ走行している間に測定された前記作業車両の時刻毎の位置情報に基づいて、前記作業車両の主たる移動方向である主移動方向を決定する主移動方向決定部と、前記主移動方向決定部によって決定された主移動方向に平行な第1仮想直線と、前記第1仮想直線に直交する第2仮想直線とを用いて、前記圃場の領域を複数の矩形状の管理領域に分割し、前記各管理領域を特定するための特定情報を生成する情報生成部を備える。
【0007】
この構成では、圃場内における作業車両の主たる移動方向に沿って、圃場を小領域に分割して管理することが可能となる。これにより、作業車両の作業方向と管理領域の配置方向とを合致させることが可能となるので、作物の栽培管理を行いやすくなる。
この発明の一実施形態では、前記作業車両の時刻毎の位置情報に基づいて、前記各位置情報に対応する位置での前記作業車両の移動方向を算出する移動方向算出部を備え、主移動方向決定部は、前記移動方向算出部によって算出された各位置情報に対応する移動方向に基づいて、主移動方向を決定するように構成されている。
【0008】
この発明の一実施形態では、前記圃場内には作物を生育させるための複数の細長矩形状の作物生育領域がストライプ状に形成されており、前記主移動方向が前記作物生育領域の延びる方向である。 この構成では、作物生育領域の延びる方向に沿って、圃場を小領域に分割して管理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る圃場管理装置が適用された圃場管理システムの構成を示す模式図である。
図2図2は、主としてトラクタを示す側面図である。
図3図3は、図2の平面図である。
図4図4は、圃場内でトラクタがサトウキビの植付作業を行う様子を説明するための模式図である。
図5図5は、トラクタおよび管理サーバの電気的構成を示すブロック図である。
図6A図6Aは、圃場分割処理部によって実行される圃場分割処理の手順の一部を示すフローチャートである。
図6B図6Bは、圃場分割処理部によって実行される圃場分割処理の手順の一部を示すフローチャートである。
図7図7は、図6AのステップS1の処理を説明するための模式図である。
図8図8は、図6AのステップS3によって算出された確率密度関数の一例を示すグラフである。
図9図9は、図6AのステップS6の処理を説明するための模式図である。
図10図10は、図6BのステップS8の処理を説明するための模式図である。
図11図11は、図6BのステップS9の処理を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。 図1は、この発明の一実施形態に係る圃場管理装置が適用された圃場管理システムの構成を示す模式図である。 圃場管理システム1は、作業車両としてのトラクタ11に搭載された通信端末2と、圃場管理装置としての管理サーバ3とを含む。トラクタ11には作業機13が装着されている。通信端末2は、通信網5を介して、管理サーバ3と通信可能である。
【0011】
通信端末2は、測位衛星6を利用してトラクタ11の位置を測位する機能を備えている。通信端末2は、位置情報および可動情報を管理サーバ3に送信する。管理サーバ3は、管理センター4内に設けられている。管理サーバ3は、通信端末2から送信されてきた位置情報および可動情報を受信する。管理サーバ3は、受信した位置情報および可動情報を記憶部に記憶する。
【0012】
図2は、主としてトラクタ11を示す側面図である。図3は、図2の平面図である。 トラクタ11は、圃場内を走行する車体部としての走行機体12を備えている。走行機体12には、例えば、植付機、耕耘機、プラウ、施肥機、草刈機、播種機等の種々の作業機を選択して装着することができるようになっている。 トラクタ11の走行機体12は、図2に示すように、その前部が左右1対の前輪17で支持され、その後部が左右1対の後輪18で支持されている。
【0013】
走行機体12の前部にはボンネット19が配置されている。本実施形態では、このボンネット19内に、トラクタ11の駆動源であるエンジン20、燃料タンク(図示略)等が収容されている。このエンジン20は、例えばディーゼルエンジンにより構成することができるが、これに限るものではなく、例えばガソリンエンジンにより構成してもよい。また、駆動源として、エンジン20に代えてまたは加えて電気モータを採用してもよい。
【0014】
ボンネット19の後方には、ユーザが搭乗するためのキャビン21が配置されている。このキャビン21の内部には、ユーザが操向操作するためのステアリングハンドル22、ユーザが着座可能な座席23、通信端末2、各種の操作を行うための様々な操作装置等が配置されている。通信端末2は、キャビン21の屋根15の下面に固定された端末支持部16に、着脱可能に装着されている。なお、トラクタ11は、キャビン21付きのものに限られず、キャビン21を備えていない構成であってもよい。
【0015】
図2に示すように、走行機体12の下部には、トラクタ11のシャーシ30が設けられている。シャーシ30は、機体フレーム31、トランスミッション32、フロントアクスル33、リアアクスル34等から構成されている。 機体フレーム31は、トラクタ11の前部における支持部であって、直接または防振部材等を介してエンジン20を支持している。トランスミッション32は、エンジン20からの動力を変化させてフロントアクスル33およびリアアクスル34に伝達する。フロントアクスル33は、トランスミッション32から入力された動力を前輪17に伝達する。リアアクスル34は、トランスミッション32から入力された動力を後輪18に伝達する。
【0016】
この実施形態においては、走行機体12には、作業機13としてサトウキビを植付けるためのサトウキビ植付機が装着されている。サトウキビ植付機の構成は公知なので、説明の便宜上、サトウキビ植付機の具体的な構成の図示は省略する。なお、サトウキビ植付機としては、例えば、特開2017-192327号公報に開示されているサトウキビ植付機(サトウキビ移植機)を用いることができる。特開2017-192327号公報に開示されているサトウキビ植付機は、圃場に溝を形成するための作溝部、サトウキビ苗を切断して種キビを作成する切断部、種キビを溝内に落下させるガイド部、種キビに覆土する覆土部、サトウキビ苗を切断部に投入させる作業者が着座する座席等を備えている。サトウキビ植付機には、トラクタ11のエンジン20の駆動力の一部が図示しないPTO軸を介して伝達されるようになっている。
【0017】
図4は、圃場内でトラクタ11がサトウキビの植付作業を行う様子を説明するための模式図である。トラクタ11は、手動運転によって走行されてもよいし、自動運転によって走行されてもよい。 圃場F内には、作物を生育させるための複数の細長矩形状の作物生育領域Lが、ストライプ状に形成されている。作物生育領域Lの両端のうち、図4の下側の端部を手前側端といい、図4の上側の端部を奥側端ということにする。
【0018】
トラクタ11は、前側の左右の車輪17および後側の左右の車輪18がそれぞれ作物生育領域Lを挟むような姿勢で、作物生育領域Lに沿って移動しながらサトウキビの植付作業を行う。トラクタ11は、例えば、最も左側の作物生育領域Lに対して手前側から奥側端に向かって走行する。そして、当該作物生育領域Lの奥側端に到達すると、トラクタ11は、進行方向に向かって右方向に旋回して、右隣りの作物生育領域Lの奥側端に移動する。
【0019】
次に、トラクタ11は、当該作物生育領域Lを奥側端から手前側に向かって走行する。そして、当該作物生育領域Lの手前端に到達すると、トラクタ11は、進行方向に向かって左向に旋回して、右隣りの作物生育領域Lの手前端に移動する。このような走行動作が繰り返し行われる。したがって、トラクタ11の移動経路は、一般的には、図4に破線で示すように、つづら折り状となる。
【0020】
図5は、トラクタ11および管理サーバ3の電気的構成を示すブロック図である。 トラクタ11は、トラクタ制御装置10と、トラクタ11に搭載された通信端末2とを含む。トラクタ制御装置10には、走行機体12の動作(前進、後進、停止、旋回等の動作)と、作業機13の動作とを制御する。トラクタ制御装置10は、トラクタ11の各部を制御するための複数のコントローラ(図示略)が電気的に接続されている。複数のコントローラは、エンジン20の回転数等を制御するエンジンコントローラ、トラクタ11の車速を制御する車速コントローラ、トラクタ11の前輪17の転舵角を制御する操向コントローラ、PTO軸の回転を制御するPTO軸コントローラ等を含む。
【0021】
トラクタ制御装置10は、稼働情報を所定時間毎に通信端末2に与える。稼働情報には、エンジン回転数、排気温度、アクセルの操作状態、ブレーキの操作状態等が含まれる。 通信端末2は、制御部40を備えている。制御部40には、位置検出部51、通信部52、操作表示部53、操作部54、記憶部55等が接続されている。位置検出部51は、衛星測位システムに基づいてトラクタ11(通信端末2)の位置情報を算出する。衛星測位システムは、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)である。具体的には、位置検出部51は、複数の測位衛星6(図1参照)からの衛星信号を受信して、トラクタ11の位置情報を検出する。位置情報は、例えば、緯度、経度および高度情報と、当該位置情報が取得された時刻情報とからなる。この実施形態では、説明の便宜上、位置情報は、緯度情報および経度情報と時刻情報とからなるものとする。記憶部55には、位置情報記憶部56、稼働情報記憶部57等が設けられている。
【0022】
通信部52は、制御部40が通信網5(図1参照)を介して管理サーバ3と通信するための通信インタフェースである。操作表示部53は、例えば、タッチパネル式ディスプレイからなる。操作部54は、例えば、1または複数の操作ボタンを含む。記憶部55は、不揮発性メモリ等の記憶デバイスから構成されている。 制御部40は、CPUおよびメモリ(ROM、RAM等)41を備えたマイクロコンピュータを含む。制御部40は、情報取得処理部42を含んでいる。情報取得処理部42は、位置検出部51によって算出される位置情報を取得して位置情報記憶部56に記憶する。そして、情報取得処理部42は、位置情報記憶部56に記憶された位置情報を、リアルタイムにまたは所定のタイミングで管理サーバ3に送信する。
【0023】
また、情報取得処理部42は、トラクタ制御装置10から与えられる稼働情報を取得して稼働情報記憶部57に記憶する。そして、情報取得処理部42は、稼働情報記憶部57に記憶された稼働情報を、リアルタイムにまたは所定のタイミングで管理サーバ3に送信する。 管理サーバ3は、制御部60を備えている。制御部60には、通信部71、操作表示部72、操作部73、記憶部74等が接続されている。通信部71は、制御部60が通信網5を介して通信端末2と通信するための通信インタフェースである。操作表示部72は、例えば、タッチパネル式ディスプレイからなる。操作部73は、例えば、キーボード、マウス等を含む。記憶部74は、ハードディスク、不揮発性メモリ等の記憶デバイスから構成されている。
【0024】
記憶部74には、位置情報記憶部75、稼働情報記憶部76、圃場情報記憶部77等が設けられている。位置情報記憶部75には、通信端末2から受信した位置情報が記憶される。稼働情報記憶部76には、通信端末2から受信した稼働情報が記憶される。圃場情報記憶部77には、圃場に関する情報(圃場情報)が記憶される。 制御部60は、CPUおよびメモリ(ROM、RAM等)61を備えたマイクロコンピュータを含む。制御部60は、情報記憶処理部62と、圃場分割処理部63とを含む。情報記憶処理部62は、通信端末2から位置情報を受信したときに、受信した位置情報を位置情報記憶部75に記憶する。また、情報記憶処理部62は、通信端末2から稼働情報を受信したときに、受信した稼働情報を稼働情報記憶部76に記憶する。
【0025】
圃場分割処理部63は、サトウキビの植付作業が行われた圃場Fを複数の管理領域に分割するための圃場分割処理を行う。以下において、圃場分割処理を行おうとしている圃場Fを「処理対象圃場F」といい、処理対象圃場Fに対してサトウキビの植付作業が行われている間に、位置検出部51によって検出されたトラクタ11の時刻毎の位置情報を「処理対象データ」ということにする。位置情報記憶部75には、処理対象データが記憶されているものとする。
【0026】
圃場分割処理部63は、移動方向算出部81と、主移動方向決定部82と、情報生成部83とを含む。 移動方向算出部81は、処理対象データ内の各位置情報に対応する位置でのトラクタ11の移動方向を算出する。 主移動方向決定部82は、
移動方向算出部によって算出された全ての位置情報に対応する移動方向に基づいて、トラクタ11の主たる移動方向である主移動方向を決定する。
【0027】
情報生成部83は、主移動方向決定部によって決定された主移動方向に平行な第1仮想直線と、第1仮想直線に直交する第2仮想直線とを用いて、処理対象圃場Fの領域を複数の矩形状の管理領域に分割し、各管理領域を特定するための特定情報を生成する。 以下、移動方向算出部81、主移動方向決定部82および情報生成部83の動作の詳細について詳しく説明する。
【0028】
図6Aおよび図6Bは、圃場分割処理部63によって実行される圃場分割処理の手順を示すフローチャートである。 まず、圃場分割処理部63内の移動方向算出部81は、処理対象データに含まれている経緯度座標系(地理座標系)の各位置情報(経度,緯度)を、第1平面座標系の位置情報(X方向距離,Y方向距離)に変換する(ステップS1)。
【0029】
第1平面座標系は、例えば、図7に示すように、所定位置を原点Oとし、原点Oを通りかつ東西方向に延びる直線をX軸とし、原点Oを通りかつ南北方向に延びる直線をY軸とする座標系である。Y軸の正方向が北とされ、X軸の正方向が東とされているものとする。 図7において、Fは、処理対象圃場を示している。図7において、Sは、植付作業時のトラクタ11の移動軌跡を模式的に表したものである。この移動軌跡は、ステップS1による座標変換後の各位置情報を時刻順に結ぶことによって得られる曲線である。図7においては、移動軌跡は簡素化して描かれており、実際の移動軌跡には図7に示される移動軌跡よりも複雑である。また、図7の例では、説明の便宜上、処理対象圃場Fの形状を矩形としているが、処理対象圃場Fの形状は矩形以外の形状であってもよい。
【0030】
次に、移動方向算出部81は、座標変換後の各位置情報に対応する位置でのトラクタ11の移動方向を算出する(ステップS2)。 ある位置情報に対応する位置でのトラクタ11の移動方向は、例えば、次のように算出される。第1平面座標系において、ある位置情報を注目位置情報とし、注目位置情報に対して時間的に1回前に取得された位置情報の座標を(x1,y1)とし、注目位置情報の座標を(x2,y2)とすると、注目位置情報に対応する位置の移動方向(移動方向角)θは、次式(1)に基づいて算出される。
【0031】
θ=tan-1{(y2-y1}/(x2-x1)) …(1) 移動方向角θは、-90度から+90度の範囲内の値をとる。 次に、圃場分割処理部63内の主移動方向決定部82は、全ての位置情報に対応する移動方向に基づいて、これらの移動方向の分布の確率密度関数を算出する(ステップS3)。
【0032】
具体的には、主移動方向決定部82は、カーネル密度推定によって、移動方向の分布の確率密度関数(カーネル密度関数)を算出する。図8は、ステップS3によって算出された確率密度関数の一例を示すグラフである。このグラフは、移動方向の分布のヒストグラムを滑らかにしたような曲線となる。なお、図8のグラフは、図7の移動軌跡に正確に対応するものではない。
【0033】
次に、主移動方向決定部82は、確率密度関数のピークを検出する(ステップS4)。そして、主移動方向決定部82は、検出されたピークのうち、ピーク高さが最も大きいピークに対応する移動方向θをトラクタ11の主移動方向として決定する(ステップS5)。図8の例では、主移動方向は50度となる。 次に、圃場分割処理部63内の情報生成部83は、図9に示すように、所定の位置情報に対応する点を原点O’とし、原点O’を通りかつトラクタ11の主移動方向と平行な直線を第1軸とし、原点O’を通りかつ第1軸と直交する直線を第2軸とする第2平面座標系を設定する(ステップS6)。
【0034】
図9の例では、位置情報に対応する位置のうち最も西側にある点が、第2平面座標系の原点O’として設定されている。また、第1軸がY’軸に設定され、第2軸がX’軸として設定されている。 次に、情報生成部83は、第1平面座標系の各位置情報を、第2平面座標系の位置情報に座標変換する(ステップS7)。
【0035】
次に、情報生成部83は、図10に示すように、第2平面座標系において、X’座標値の最小値x’minおよび最大値x’maxならびにY’座標値の最小値y’minおよび最大値y’maxから、処理対象圃場Fに近似する矩形領域Eを生成する(ステップS8)。具体的には、情報生成部63Cは、点a(x’min,y’min)と、点b(x’min,y’max)と、点c(x’max,y’max )と、点d(x’max,y’min)とを頂点とする矩形領域Eを、処理対象圃場Fに近似する矩形領域として生成する。
【0036】
次に、情報生成部83は、第2平面座標系において、主移動方向に平行な第1仮想線と、第1仮想線に直交する第2仮想線とを用いて、矩形領域Sを複数の矩形状の管理領域eに分割する(ステップS9)。例えば、情報生成部83は、図11に示すように、矩形領域Sに対して、所定の第1間隔をおきに複数の第1仮想線K1を設定するとともに、所定の第2間隔おきに第2仮想線K2を設定することにより、矩形領域S内に、これらの仮想線によって区画された複数の管理領域eを設定する。
【0037】
次に、情報生成部83は、各管理領域eを特定するための特定情報を生成し、処理対象圃場Fに対する圃場情報として圃場情報記憶部77内に記憶する(ステップS10)。 具体的には、情報生成部83は、各管理領域eの4頂点の第2平面座標系での座標値を、経緯度座標系の座標値に変換する。そして、情報生成部63Cは、各管理領域eの4頂点の経緯度座標系の座標値を、処理対象圃場Fに対する圃場情報として、圃場情報記憶部77内に記憶する。
【0038】
上記実施形態では、移動方向算出部81は、処理対象データに含まれている経緯度座標系の各位置情報を第1平面座標系の位置情報に変換しているが(図6AのステップS1参照)、処理対象データに含まれている経緯度座標系の各位置情報を第1平面座標系の位置情報に変換しなくてもよい。 その場合には、ステップS1の処理は省略される。その場合、ステップS2では、次のようにして、各位置情報に対応する位置でのトラクタ11の移動方向が算出される。経緯度座標系において、ある位置情報を注目位置情報とし、注目位置情報に対して時間的に1回前に取得された位置情報の経度および緯度を(λ1,φ1)とし、注目位置情報の経度および緯度を(λ2,φ2)とすると、注目位置情報に対応する位置の移動方向(移動方向角)θは、次式(2)に基づいて算出される。
【0039】
θ=tan-1{(φ2-φ1}/(λ2-λ1)) …(2) ステップS3以降の処理は、図6のステップS3以降の処理と同様である。 前述の実施形態では、圃場F内におけるトラクタ11の主たる移動方向に沿って、圃場Fを小領域に分割して管理することが可能となる。これにより、トラクタ11の作業方向と管理領域の配置方向とを合致させることが可能となるので、作物の栽培管理を行いやすくなる。
【0040】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。例えば、前述の実施形態では、通信端末2に用いられている測位システムとして、GNSSの単独測位システムが用いられているが、RTK-GNSS(リアルタイム・キネマティクGNSS)等のような単独測位システム以外の測位システムを用いてもよい。
【0041】
前述の実施形態では、作業車両はトラクタであるが、作業車両は、田植え機、コンバイン、土木・建設作業装置、除雪車、乗用型作業機、歩行型作業機等であってもよい。 その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 圃場管理システム 2 通信端末 3 管理サーバ(圃場管理装置) 10 トラクタ制御装置 11 トラクタ(作業車両) 60 制御部 61 メモリ 62 情報記憶処理部 63 圃場分割処理部 81 移動方向算出部 82 主移動方向決定部 83 情報生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11