(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】物体検出システムおよび物体検出方法
(51)【国際特許分類】
G01V 3/10 20060101AFI20220516BHJP
【FI】
G01V3/10 D
(21)【出願番号】P 2020179021
(22)【出願日】2020-10-26
(62)【分割の表示】P 2018100143の分割
【原出願日】2018-05-25
【審査請求日】2021-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】小林 恒久
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-350103(JP,A)
【文献】特開平9-245296(JP,A)
【文献】特開平9-211144(JP,A)
【文献】特開2011-013165(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102592471(CN,A)
【文献】特開2017-215786(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104658307(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0021947(US,A1)
【文献】特開平5-073799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R33/00-33/26
G01V 1/00-99/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の物体が発生する磁界を検出する物体検出システムであって、
前記物体の配置エリアに対応して設けられた複数の磁気センサと、
各磁気センサがxyzの3方向の磁界検出素子により測定した外部磁界強度を、前記各磁気センサから受信する管理サーバと、
を備え、
前記管理サーバは、受信した測定データに基づき、前記配置エリアのそれぞれについて前記物体の有無を仮判定し、
前記管理サーバは、少なくとも2つ連続して物体ありと仮判定した配置エリアが存在するか否かを判定し、
前記管理サーバは、前記少なくとも2つ連続して物体ありと仮判定した配置エリアのうち、少なくとも1つの配置エリアについて、xy方向の磁界強度の重み付けを小さくすることにより、前記物体の有無を再判定する、
物体検出システム。
【請求項2】
前記管理サーバは、3つ連続して物体ありと仮判定した配置エリアが存在するか否かを判定し、
前記管理サーバは、前記3つ連続して物体ありと仮判定した配置エリアのうち、中央の配置エリアについて、xy方向の磁界強度の重み付けを小さくすることにより、前記物体の有無を再判定する、
請求項1に記載の物体検出システム。
【請求項3】
前記物体は、車両であり、
前記物体検出システムは、前記車両を検出する駐車検出システムであり、
前記磁気センサは、駐車場の地面に設けられている、
請求項1または2に記載の物体検出システム。
【請求項4】
金属の物体が発生する磁界を検出する物体検出方法であって、
前記物体の配置エリアに対応して設けられた各磁気センサは、xyzの3方向の磁界検出素子により、外部磁界強度を測定し、測定した前記外部磁界強度を管理サーバに送信し、
前記管理サーバは、受信した測定データに基づき、前記配置エリアのそれぞれについて前記物体の有無を仮判定し、
前記管理サーバは、少なくとも2つ連続して物体ありと仮判定した配置エリアが存在するか否かを判定し、
前記管理サーバは、前記少なくとも2つ連続して物体ありと仮判定した配置エリアのうち、少なくとも1つの配置エリアについて、xy方向の磁界強度の重み付けを小さくすることにより、前記物体の有無を再判定する、
物体検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出精度を向上させた物体検出システムおよび物体検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属の物体は、磁気を帯びているため、物体が発生する磁界を磁気センサで検出することができる。例えば、特許文献1には、車両を検出するために、
図1に示すように、駐車場の地面に磁気センサ10を設ける技術が提案されている。この技術では、車両の長手方向(x方向)に磁界検出感度を持つ磁界検出素子と、地面に垂直な方向(z方向)に磁界検出感度を持つ磁界検出素子と、を含む磁気センサにより、当該2方向における外部磁界の強度変化を計測し、車両のない状態を基準として、当該2方向における外部磁界の強度変化の絶対値の和が所定の閾値を越えるか否かにより車両の検出を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した技術では、車両が横方向に連続して駐車している場合、例えば、
図1において、隣接した3つの配置エリアA1、B1、C1のうち両側A1、C1に車両が駐車され、中央の配置エリアB1に車両が駐車されていない場合であっても、配置エリアB1に設けられた磁気センサ10が、配置エリアB1に車両が存在すると誤って検出する場合があった。
そこで、本発明の目的は、検出精度を向上させた物体検出システムおよび物体検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、金属の物体が発生する磁界を検出する物体検出システムであって、
前記物体の配置エリアに対応して設けられた複数の磁気センサと、
各磁気センサがxyzの3方向の磁界検出素子により測定した外部磁界強度を、前記各磁気センサから受信する管理サーバと、
を備え、
前記管理サーバは、受信した測定データに基づき、前記配置エリアのそれぞれについて前記物体の有無を仮判定し、
前記管理サーバは、少なくとも2つ連続して物体ありと仮判定した配置エリアが存在するか否かを判定し、
前記管理サーバは、前記少なくとも2つ連続して物体ありと仮判定した配置エリアのうち、少なくとも1つの配置エリアについて、xy方向の磁界強度の重み付けを小さくすることにより、前記物体の有無を再判定する。
【0006】
本発明では、前記管理サーバは、3つ連続して物体ありと仮判定した配置エリアが存在するか否かを判定し、
前記管理サーバは、前記3つ連続して物体ありと仮判定した配置エリアのうち、中央の配置エリアについて、xy方向の磁界強度の重み付けを小さくすることにより、前記物体の有無を再判定することが好ましい。
【0007】
本発明では、前記物体は、車両であり、
前記物体検出システムは、前記車両を検出する駐車検出システムであり、
前記磁気センサは、駐車場の地面に設けられていることが好ましい。
【0008】
本発明は、金属の物体が発生する磁界を検出する物体検出方法であって、
前記物体の配置エリアに対応して設けられた各磁気センサは、xyzの3方向の磁界検出素子により、外部磁界強度を測定し、測定した前記外部磁界強度を管理サーバに送信し、
前記管理サーバは、受信した測定データに基づき、前記配置エリアのそれぞれについて前記物体の有無を仮判定し、
前記管理サーバは、少なくとも2つ連続して物体ありと仮判定した配置エリアが存在するか否かを判定し、
前記管理サーバは、前記少なくとも2つ連続して物体ありと仮判定した配置エリアのうち、少なくとも1つの配置エリアについて、xy方向の磁界強度の重み付けを小さくすることにより、前記物体の有無を再判定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、検出精度を向上させた物体検出システムおよび物体検出方法を提供することができる。さらに、磁気センサを追加で設ける必要がないため、コストアップを抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】磁気センサが地面に設けられた駐車場を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る物体検出システムの構成を示す図である。
【
図3】本発明の物体検出方法を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の物体検出方法を説明するために用いられる車両の有無マップである。
【
図5】本発明の他の物体検出方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図2は、本発明の一実施形態に係る物体検出システムの構成を示す図である。
物体検出システム1は、磁気センサ10と、管理サーバ20と、を備える。物体検出システム1は、例えば、駐車検出システムであり、磁気センサ10は、
図1に示すように、車両の配置エリアA1~F1に対応して、屋外の駐車場の地面に設けられてもよい。この場合、磁気センサ10は、車両のエンジンルームの下の地面において、車両から所定距離以内に存在する。
磁気センサ10は、x方向(車両の長手方向)に磁界検出感度を有するx方向磁界検出素子と、y方向(車両の幅方向)に磁界検出感度を有するy方向磁界検出素子と、z方向(地面に垂直な方向)に磁界検出感度を有するz方向磁界検出素子と、を備える。
xyzの3方向の磁界検出素子により、車両がない状態と車両がある状態とにおいて異なる外部磁界(地磁気)の強度を測定する。
【0012】
磁気センサ10は、通信ネットワーク(図示しないゲートウェイ)およびインターネット回線を介して、管理サーバ20に接続されており、測定データを管理サーバ20に送信し、管理サーバ20から制御情報等を受信する。
磁気センサ10は、通信ネットワークにおいて、無線PAN(Personal Area Network)、例えば、6LoWPAN(IPv6 over Low power Wireless Personal Area Network)によりゲートウェイと通信する。複数の磁気センサ10同士もまた、無線PANにより通信する。複数のゲートウェイが設けられている場合には、ゲートウェイ同士は、無線LANまたは有線LANにより通信する。
【0013】
磁気センサ10は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、検出部14と、を備える。
通信部11は、例えば、6LoWPANに従って無線通信を行うネットワークインタフェースカードにより実現される。
記憶部12は、例えば、メモリ等の記憶装置により実現される。記憶部12には、制御部13により実行される各種のプログラムおよびデータが記憶されている。
制御部13は、CPU等のプロセッサにより実現される。制御部13は、磁気センサ10全体を制御する。制御部13は、記憶部12に記憶された各種のプログラムを読み取り、読み取ったプログラムを実行することで、各種の処理を実行する。
検出部14は、上述したxyzの3方向の磁界検出素子により実現される。
検出部14からの測定データは、制御部13によりリアルタイムに管理サーバ20に送信されてもよいし、記憶部12に記憶され、所定期間が経過する毎に管理サーバ20に送信されてもよいし、管理サーバ20からの要求に応じて管理サーバ20に送信されてもよい。
【0014】
管理サーバ20は、複数の磁気センサ10から測定データを収集し、複数の磁気センサ10が設けられた配置エリアのそれぞれに車両が存在するか否かの判定を行う。
管理サーバ20は、通信部21と、記憶部22と、制御部23と、を備える。
通信部21は、インターネット回線および通信ネットワークのゲートウェイを介して磁気センサ10と通信し、例えば、ネットワークインタフェースカードにより実現される。
記憶部22は、例えば、メモリ等の記憶装置により実現される。記憶部22には、制御部23により実行される各種のプログラムおよびデータが記憶されている。
制御部23は、CPU等のプロセッサにより実現される。制御部23は、管理サーバ20全体を制御する。制御部23は、記憶部22に記憶された各種のプログラムを読み取り、読み取ったプログラムを実行することで、各種の処理を実行する。
【0015】
図3は、本発明の物体検出方法を示すフローチャートであり、
図4に示す駐車場において車両を検出する場合を一例として説明する。
【0016】
ステップS1において、配置エリアA1~F2に設けられた各磁気センサ10は、xyzの3方向の磁界検出素子により、外部磁界強度Bx、By、Bzを測定し、管理サーバ20に送信する。
【0017】
ステップS2において、管理サーバ20は、受信した測定データに基づき、配置エリアA1~F2について車両の有無を仮判定する。例えば、管理サーバ20は、(1)式に基づいて合成した外部磁界強度Bが所定の第1の閾値より大きい場合には、車両ありと仮判定する。
【数1】
α、β、γは、それぞれxyz方向の磁界強度の重み付け係数であり、Bx、By、Bzは、今回測定された外部磁界強度であり、Bx0、By0、Bz0は、予め測定された車両なしの場合の外部磁界強度、または、所定時間前に測定された外部磁界強度である。
Bx0、By0、Bz0が車両なしの場合の外部磁界強度である場合、外部磁界強度Bが変化した場合には、当該外部磁界強度Bが変化した配置エリアに車両があると推定される。
Bx0、By0、Bz0が所定時間前に測定された外部磁界強度である場合、外部磁界強度Bが変化した場合には、所定時間の間に、当該外部磁界強度Bが変化した配置エリアにおいて、車両なしの状態から車両ありの状態に変化したか、車両ありの状態から車両なしの状態に変化したと推定される。
管理サーバ20は、
図4に示す車両の有無マップを作成することにより、配置エリアA1~F2について車両の有無を仮判定する。例えば、管理サーバ20は、配置エリアB1~D1、F1、F2については、外部磁界強度Bが所定の第1の閾値より大きく、配置エリアA1、E1、A2~E2については、外部磁界強度Bが所定の第1の閾値以下であったため、
図4において灰色部分に示す配置エリアB1~D1、F1、F2に車両があると仮判定している。
【0018】
ステップS3において、管理サーバ20は、3つ連続して車両ありと仮判定した配置エリアが存在するか否かを判定する。
図4の場合、配置エリアB1、C1、D1が、3つ連続して車両ありと仮判定されているので(YES)、ステップS4に進む。
一方、ステップS3において、3つ連続して車両ありと仮判定した配置エリアが存在しない場合(NO)、処理を終了する。
【0019】
ステップS4において、管理サーバ20は、3つ連続して車両ありと仮判定した配置エリアのうち、中央の配置エリア、すなわち、
図4の場合、配置エリアC1について、車両の有無を再判定する。
ここで、(1)式において、z方向の磁界強度の重み付け係数γを大きくする、および/または、xy方向の磁界強度の重み付け係数α、βを小さくすることにより、外部磁界強度Bを計算し、外部磁界強度Bが所定の第2の閾値(第1の閾値と同一でも異なってもよい)より大きい場合には、車両ありと判定する。
z方向の磁界強度の重み付け係数γは、例えば、xy方向の磁界強度の重み付け係数α、βの2倍程度とすることができるが、各重み付け係数の大きさは、任意に設定可能である。
【0020】
このように、管理サーバ20は、複数の磁気センサ10から測定データを収集し、3つ連続して車両ありと仮判定した配置エリアが存在する場合には、中央の配置エリアについて、z方向の磁界強度の重み付けを大きくして再判定することにより、両側の車両の影響を低減し、検出精度を向上させることができる。
【0021】
図5は、本発明の他の物体検出方法を示すフローチャートであり、
図4に示す駐車場において車両を検出する場合を一例として説明する。
図5において、
図3と同一のステップには、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0022】
ステップS3’において、管理サーバ20は、2つ連続して車両ありと仮判定した配置エリアが存在するか否かを判定する。
図4の場合、配置エリアB1、C1と、配置エリアC1、D1と、配置エリアF1、F2と、が2つ連続して車両ありと仮判定されているので(YES)、ステップS4’に進む。
一方、ステップS3’において、2つ連続して車両ありと仮判定した配置エリアが存在しない場合(NO)、処理を終了する。
【0023】
ステップS4’において、管理サーバ20は、2つ連続して車両ありと仮判定した配置エリアの少なくとも一方について、好ましくは両方について、車両の有無を再判定する。
ここで、(1)式において、z方向の磁界強度の重み付け係数γを大きくする、および/または、xy方向の磁界強度の重み付け係数α、βを小さくすることにより、外部磁界強度Bを計算し、外部磁界強度Bが所定の第2の閾値(第1の閾値と同一でも異なってもよい)より大きい場合には、車両ありと判定する。
【0024】
このように、管理サーバ20は、複数の磁気センサ10から測定データを収集し、2つ連続して車両ありと仮判定した配置エリアが存在する場合には、両方の配置エリアについて、z方向の磁界強度の重み付けを大きくして再判定することにより、隣の車両の影響を低減し、検出精度を向上させることができる。
【0025】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さまざまな変更が可能である。
例えば、物体検出システム1は、駐車検出システムの他、港で船舶の有無を検出するシステム、倉庫等で荷物やコンテナの有無を検出するシステム等も考えられる。
磁気センサ10は、地面の他、検出物体から所定距離以内であれば、屋根や壁等に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1…物体検出システム、10…磁気センサ、11…通信部、12…記憶部、13…制御
部、14…検出部、20…管理サーバ、21…通信部、22…記憶部、23…制御部