(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】疎油性表面を有する電気湿潤レンズ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20220516BHJP
【FI】
A61F2/16
(21)【出願番号】P 2020508474
(86)(22)【出願日】2018-08-22
(86)【国際出願番号】 US2018047418
(87)【国際公開番号】W WO2019040555
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-04-15
(32)【優先日】2017-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516035068
【氏名又は名称】ヴェリリー ライフ サイエンシズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】カイパー,シュタイン
(72)【発明者】
【氏名】オッツ,ダニエル
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/107589(WO,A1)
【文献】特開2012-068624(JP,A)
【文献】特開2006-053433(JP,A)
【文献】特開2016-093960(JP,A)
【文献】特開2001-141906(JP,A)
【文献】特表2014-533373(JP,A)
【文献】特表2013-533115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内移植可能なデバイスであって、
調整可能なレンズを備え、前記調整可能なレンズは、
ポリマー材料であって、前記調整可能なレンズが折り畳まれ、または丸められることができるように柔軟であるポリマー材料と、
前記ポリマー材料の内部表面の少なくとも一部分上に配置されている水中超疎油性層と、
極性流体であり、前記水中超疎油性層と接触して前記調整可能なレンズ内に配置されている第1の流体
であって、ある量の前記第1の流体が前記水中超疎油性層に吸収されることによって前記水中超疎油性層が濡れる、第1の流体と、
前記調整可能なレンズ内に配置され、前記第1の流体と不混和性である第2の流体であって、前記第2の流体の屈折率は、前記第1の流体の屈折率と異なる、第2の流体と、
を含み、
前記水中超疎油性層は、前記水中超疎油性層が水中に沈められ
かつある量の水によって濡らされるときに、150度より大きい、前記第2の流体との接触角を有する、デバイス。
【請求項2】
前記レンズは、電気湿潤レンズであり、
前記デバイスは、
前記第1の流体と接触して前記ポリマー材料の前記内部表面上に配置されている第1の電極と、
誘電体層を含み、前記ポリマー材料の前記内部表面上に配置され、前記第1の流体または前記第2の流体のうちの少なくとも一方と接触している第2の電極と、
をさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記水中超疎油性層は、複数のポストを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記水中超疎油性層は、多孔性である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記水中超疎油性層は、水中超疎油性になるように化学的に変更されている前記ポリマー材料の一部分を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記水中超疎油性層は、二酸化チタンを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記超疎油性層は、超親水性材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記超疎油性層は、ヒドロゲルを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
界面活性剤をさらに含み、前記界面活性剤は、前記第1の流体内に配置され、前記界面活性剤は、前記第2の流体中で実質的に不溶性であり、前記界面活性剤は、前記第1の流体と前記第2の流体との間の界面張力を減少させる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記界面活性剤は、イオン分子を含む、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウムを含む、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
眼内移植可能なデバイスであって、
電気湿潤レンズを備え、前記電気湿潤レンズは、
ポリマー材料であって、前記電気湿潤レンズが折り畳まれ、または丸められることができるように柔軟であるポリマー材料と、
前記ポリマー材料の内部表面の少なくとも一部分上に配置されている水中超疎油性層と、
極性流体であり、前記水中超疎油性層と接触して前記電気湿潤レンズ内に配置されている第1の流体
であって、ある量の前記第1の流体が前記水中超疎油性層に吸収されることによって前記水中超疎油性層が濡れる、第1の流体と、
前記ポリマー材料の内部表面上に配置され、前記第1の流体と接触している第1の電極と、
前記電気湿潤レンズ内に配置され、前記第1の流体と不混和性である第2の流体であって、前記第2の流体の屈折率は、前記第1の流体の屈折率と異なる、第2の流体と、
誘電体層を含み、前記ポリマー材料の前記内部表面上に配置され、前記第1の流体または前記第2の流体のうちの少なくとも一方と接触している第2の電極と、
前記第1の流体内に配置され、前記第2の流体中で実質的に不溶性であり、前記第1の流体と前記第2の流体との間の界面張力を減少させる界面活性剤と、
を備え、
前記水中超疎油性層は、前記水中超疎油性層が水中に沈められ
かつある量の水によって濡らされるときに、150度より大きい、前記第2の流体との接触角を有する、デバイス。
【請求項13】
前記界面活性剤は、イオン分子を含む、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウムを含む、請求項13に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年8月22日に出願された米国仮特許出願第62/548,518号、および2018年8月21日に出願された米国特許出願第16/107,823号に対する優先権を主張し、これらはそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本明細書で特に断りのない限り、このセクションで記載される資料は、本出願の特許請求の範囲の先行技術ではなく、このセクションに含めることにより先行技術であると認められない。
【0003】
デバイスは、様々な機能を提供するために、眼の表面上および/または眼の内部に提供されることができる。いくつかの実施例において、これらの機能は、人が自分の環境を見る能力を向上させる機能(例えば、光学矯正を提供するため、網膜を直接刺激するため)、および/または人に追加の視覚情報を提示する機能(例えば、人にヘッドアップディスプレイまたは他の表示を提示するため)を含むことができる。そのような機能は、眼内に埋め込まれた眼球内デバイス(例えば、網膜を刺激して視力を回復するように構成された網膜インプラント、水晶体嚢内に埋め込まれ、静的および/または制御可能な屈折力を眼に提供するデバイス)によって提供されることができる。
【0004】
そのようなデバイスは、調整可能な屈折力を眼に提供する調整可能なレンズを含むことができる。調整可能なレンズは、様々なプロセスを介して調整可能な屈折力を提供するように動作することができる。いくつかの実施例において、調整可能なレンズは、2つ以上の不混和性流体(例えば、オイルおよび生理食塩水)を含むことができ、流体の相対的な位置および/または形状を制御して、不混和性流体の全体的な屈折力を調整することができる(例えば、電場の印加、レンズへの流体の出し入れ、または何らかの他の方法を使用して流体間の界面の形状を制御することにより)。しかしながら、通常の動作中に、このような流体は、混合され得るか、調整可能なレンズ内の不適切な表面を濡らし得るか、または調整可能なレンズの有効性の低下および/もしくは動作寿命の短縮をもたらす何らかの他のプロセスを経ることができる。
【発明の概要】
【0005】
本開示のいくつかの実施形態は、調整可能なレンズを含むデバイスを提供する。調整可能なレンズは、(i)ポリマー材料であって、ポリマー材料は、調整可能なレンズが折り畳まれ、または丸められることができるように柔軟である、ポリマー材料と、(ii)ポリマー材料の内部表面の少なくとも一部分上に配置されている、水中疎油性層と、(iii)極性流体であり、水中疎油性層と接触して調整可能なレンズ内に配置されている、第1の流体と、(iv)調整可能なレンズ内に配置され、第1の流体と不混和性であり、第1の流体の屈折率と異なる第2の流体と、を含む。
【0006】
本開示のいくつかの実施形態は、(i)眼の角膜を通る切開部を形成することと、(ii)切開部を通して眼に眼内移植可能なデバイスを挿入することであって、眼内移植可能なデバイスは、折り畳まれた状態、または丸められた状態で眼に移植可能なデバイスを挿入することと、(iii)眼の中の指定された位置に、眼内移植可能なデバイスを置くことと、(iv)切開部を通して眼の中に眼内移植可能なデバイスを挿入した後に、眼内移植可能なデバイスを開くまたは広げることと、を含む方法を提供する。眼内移植可能なデバイスは、調整可能なレンズを含む。調整可能なレンズは、(a)ポリマー材料であって、ポリマー材料は、調整可能なレンズが折り畳まれ、または丸められることができるように柔軟である、ポリマー材料と、(b)ポリマー材料の内部表面の少なくとも一部分上に配置されている、水中疎油性層と、(c)極性流体であり、水中疎油性層と接触して調整可能なレンズ内に配置されている、第1の流体と、(d)調整可能なレンズ内に配置され、第1の流体と不混和性であり、第1の流体の屈折率と異なる第2の流体と、を含む。
【0007】
本開示のいくつかの実施形態は、電気湿潤レンズを含むデバイスを提供する。電気湿潤レンズは、(i)ポリマー材料であって、ポリマー材料は、電気湿潤レンズが折り畳まれ、または丸められることができるように柔軟である、ポリマー材料と、(ii)極性流体であり、ポリマー材料の内部表面と接触して電気湿潤レンズ内に配置されている、第1の流体と、(iii)ポリマー材料の内部表面上に配置され、第1の流体と接触している、第1の電極と、(iv)電気湿潤レンズ内に配置され、第1の流体と不混和性であり、第2の流体の屈折率は、第1の流体の屈折率と異なる、第2の流体と、(v)ポリマー材料の内部表面上に配置され、第1の流体または第2の流体の少なくとも一方と接触している、第2の電極と、および(iv)第1の流体内に配置され、第2の流体中で実質的に不溶性であり、第1の流体と第2の流体との間の界面張力を減少させる、界面活性剤と、を備える。
【0008】
これらならびに他の態様、利点、および代替物は、適切な場合に添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むことにより、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】流体の液滴と表面との間の実施例の接触角の概略図である。
【
図1B】実施例の眼内移植可能なデバイスの斜視図である。
【
図1C】
図1Bに示された実施例の眼内移植可能なデバイスの電気湿潤レンズの側面断面図である。
【
図1D】眼内に配置された
図1Bおよび1Cに示された実施例の眼内移植可能なデバイスの側面断面図である。
【
図2A】実施例の眼内移植可能なデバイスの側断面図である。
【
図2B】
図2Aに示された実施例の眼内移植可能なデバイスの側断面図である。
【
図3】眼内移植されたデバイスに電力を供給することができる、外眼デバイスを含む、実施例のシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な記載において、本明細書の一部を形成する、添付図面を参照する。図面において、文脈からそうでないことが示されていない限り、類似の記号は通常、類似のコンポーネントを示す。詳細な説明、図面、および特許請求の範囲に記載された実例的な実施形態は、限定することを意図していない。本明細書に提示された主題の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用され得、他の変更は、行われ得る。本明細書に概して記載され、図面に示されたように、本開示の態様は、多種多様な異なる構成で配列、置換、組み合わせ、分離、および設計することができ、それらはすべて本明細書で明示的に企図されることは容易に理解されよう。
【0011】
I.概要
移植可能なデバイスは、人の眼内に配置され、眼に静的または調整可能な屈折力を提供することができる。そのような静的または調整可能な屈折力は、例えば老視、近視、遠視、乱視を矯正するために、眼の損傷または損害、眼の水晶体の除去、または眼の何らかの他の状態を矯正するために、眼の屈折力の欠如または損失、および/または眼の調節を矯正するために提供され得る。そのような移植可能なデバイスは、用途に応じて水晶体嚢内、前房内、眼の線維壁内、網膜の近く、または眼の何らかの他の位置に配置することができる。そのような眼内移植可能なデバイスは、制御可能な量の屈折力を眼に提供する電子的な作動レンズを含むことができる。電子的に作動するレンズは、電気湿潤レンズの全体的な屈折力を制御するために、電気湿潤レンズ内の形状が電子的に制御されることができる(例えば、レンズの2つ以上の電極に電圧を印加することにより)、2つ以上の不混和性流体を含む電気湿潤レンズを含むことができる。そのような作動レンズは、例えば、ある量の1つ以上の不混和性流体をレンズチャンバに出し入れすることによって(例えば、電気湿潤または何らかの他のプロセスを介して)、レンズの全体的な屈折力を制御する何らかの他の方法で構成することができる。
【0012】
そのような眼内移植可能なデバイスの移植を容易にするために、デバイスが柔軟であることは有益であり得る。そのような柔軟なデバイスは、移植を可能にするために、曲げられたり、折り畳まれたり、あるいは操作されたりすることができる。その後、デバイスを開いたり、操作したりして、平らな状態または操作可能な状態にすることができる。例えば、眼内移植可能なデバイスは、デバイスの開かれたサイズよりも小さい切開部による眼への挿入を容易にするために(例えば、眼内移植可能なデバイスのレンズの開かれた直径よりも小さい切開部を介して)、丸め上げ、または折り畳むこと(例えば、半分、3分の1)ができる。そのような柔軟性はまた、生体適合性、速度、さもなければ移植のプロセスを改善する可能性があり、デバイスに加えられた力の検出を許可し、または、何らかの他の利点を提供することができる。
【0013】
しかしながら、そのようなデバイスが2つ以上の不混和性流体を含む、電気湿潤または他の構成のレンズを含む場合、レンズの折り畳みまたは他の操作により、レンズ内の不混和性流体が互いに分散したり(例えば、流体は、エマルジョン、懸濁液、または一方の流体の液滴が他方の流体に分散される、および/またはその逆の何らかの他の混合物を形成することができる)、接触するべきではない表面に接触して濡らしたり、または他の有害な効果をもたらしたりすることができる。例えば、レンズのオイル(または他の非極性流体)が、レンズの生理食塩水(または何らかの他の極性流体を有する)と接触することを意図したレンズの内部表面に接触するとき、オイルは、内部表面を濡らし、および/または汚すおそれがある。この濡れおよび/または汚れは、透明度の低下またはレンズの光学特性および/または機能に対する何らかの他の有害な影響をもたらすおそれがある。
【0014】
そのような望ましくない効果を低減するために、流体間および/または流体のそれぞれとレンズチャンバの内部表面との間の界面張力を制御することができる。例えば、流体と特定の表面(例えば、レンズのフロントウィンドウの内部表面)との間の界面張力を制御して、第1の流体(例えば、生理食塩水)によって、特定の表面が第2の流体(例えば、オイル)によって濡れるのを防ぎ、および/または特定の表面に接触した(例えば、濡れている)、任意の量の第2の流体の変位を促進しながら、第1の流体による特定の表面の濡れを促進することができる。追加または代替として、界面活性剤または他の材料は、特定の表面に接触した可能性のある量の第2の流体の除去を促進するため、またはレンズの機能を改善するために、1つ以上の流体に追加され、流体が互いに分散するのを防ぐことができる(例えば、第2の流体の液滴の形成を促進することにより)。
【0015】
特定の表面(例えば、レンズのレンズチャンバの一部を形成する、窓またはレンズの内部表面)と2つ以上の流体との間の界面張力を制御することは、特定の表面に材料または処理を施すことを含むことができる。親水性(例えば、水との接触角が90度未満の材料)、超親水性(例えば、水との接触角が約0度の材料)、水中疎油性(例えば、水または何らかの他の好適な極性流体(例えば、エチレングリコール)に沈められたときに90度を超える、オイルとの接触角を有する材料)、および/または水中超疎油性(例えば、水または何らかの他の好適な極性流体(例えば、エチレングリコール)に沈められたときに150度を超える、オイルとの接触角を有する材料)である材料は、特定の表面上に堆積、形成、またはそうでなければ配置されることができる。
図1Aは、表面101b上に堆積された流体101aの実施例の液滴を示す。液滴101aの環境101cは、真空、気体(例えば、空気)、または液体(例えば、水)であり得る。流体101aの液滴の組成、表面101bの組成および構成(例えば、表面テクスチャ)、ならびに環境101cの組成は、流体101aの液滴と表面101bとの間の接触角105に影響を及ぼすことができる。例えば、表面101bは、親水性であり得、液滴101aは、水であることができ、その結果、接触角は、90度未満であり得る(
図1Aに示されるように)。別の実施例において、表面101bは、疎油性(例えば、疎油性材料から構成され、および/または疎油性をもたらす表面テクスチャまたは構造を有する)であることができ、液滴101aは、オイルであることができ、環境101cは、水であり得る。そのような実施例において、接触角は、90度より大きくなることができる(あるいは、液滴101aは、水であり得、環境101cは、オイルであり得、疎油性表面101bとの接触角は、90度未満であり得る)。
【0016】
追加的または代替的に、特定の表面は、多孔質になるように、複数のポストまたはスパイクを含むように、または第1の流体(例えば、生理食塩水または何らかの他の極性流体)による濡れを促進し、および/または第2の流体(例えば、オイルまたは他の非極性流体)による濡れおよび/または接触を防ぐために、他のテクスチャまたは特徴を有するように、形成することができる。すなわち、表面は、第1および/または第2の流体による表面の濡れを制御するように指定された、ナノ構造またはマイクロ構造を有することができる。いくつかの実施例において、特定の表面は、例えば、電界の印加、紫外線への曝露、または何らかの他の制御手段によって制御可能な界面張力を有することができる。そのような表面を含むデバイスは、眼に挿入されたり、広げられたり、もしくは開かれたり、または他の方法で操作され、その後、特定の表面の界面張力は、制御されて、表面を濡らした流体の量を除去したり、または何らかの他の利点を提供したりすることができる。特定の表面と2つ以上の流体との間の界面張力を制御することは、例えば、界面活性剤または他の物質を添加することにより、流体の組成を制御することも含むことができる。
【0017】
特定の表面の組成、形状、または他のプロパティは、特定の表面が水中に沈められるときに、特定の表面が特定の表面上で水中疎油性であるように、すなわち、第2の流体の接触角が、90度より大きくなるように、および/または特定の表面が水または何らかの他の極性流体(例えば、エチレングリコール)に沈められるときに、特定の表面が特定の表面上で水中超疎油性であるように、すなわち、第2の流体の接触角が、150度より大きくなるようにすることができる。
【0018】
そのような眼内移植可能なデバイスは、電子機器、アンテナ、電圧調整器、バッテリー、光電池、センサー、またはデバイスの動作を促進する、例えば、制御可能な屈折力を眼に提供する他のエレメントを含むことができる。そのような眼内移植可能なデバイスは、例えば、コンタクトレンズ、眼鏡、頭部装着可能なデバイス、または他のソースから、デバイスの動作に電力を供給するために、眼の外側から無線周波数、光学、赤外線、音響、または何らかの他の形態の電力を受け取ることができる。眼内移植可能なデバイスは、無線伝送を受信して、レンズの屈折力を制御することにより、眼に提供する屈折力の量を指定し、センサーを操作して物理的変数(例えば、眼の毛様体によって生じる調節力)を検出し、提供する屈折力の量を指定するか、または眼内移植可能なデバイスは、追加もしくは代替の情報または、コマンドのソースを使用して、眼に提供する屈折力の量を決定することができる。
【0019】
II.眼内移植可能なデバイスの実施例
眼内移植可能なデバイス(例えば、眼球内レンズ、またはIOL)は、デバイスが移植される眼に制御可能な屈折力(例えば、制御可能なジオプター、焦点距離、または他の形の屈折力もしくは屈折特性)を提供するように動作可能な、電子機器および電子的な作動レンズを含むことができる。そのような眼内移植可能なデバイスは、ハプティックスもしくは他の形成された特徴を含むことができ、または特定の形状に従って形成され、眼の前房内、眼の後房内、眼の光軸に沿って、眼内移植可能なデバイスを眼内または眼内の特定の位置、たとえば、水晶体の除去後の目の水晶体嚢内に埋め込むことができる。コントローラ、バッテリー、アンテナ、センサー、または他のエレメントは、デバイスに電力を供給するため、指定された量の屈折力を決定して眼に提供するため(例えば、センサー出力に基づいて、受信した無線コマンドに基づいて)、および電圧、電流、または他の電気信号を電子的な作動レンズに印加することにより、そのような指定された屈折力を提供する電子的な作動レンズを作動するために提供され得る。いくつかの実施例において、電子的な作動レンズは、電気湿潤レンズであることができる。
【0020】
本出願を通して、眼内移植可能なデバイスの電気湿潤レンズが参照されているが、本明細書で提供される実施形態は、他の用途に適用できることに留意されたい。例えば、水中超疎油性層は、電気湿潤以外の、または電気湿潤に加えて何らかのプロセスを介してレンズの屈折力を制御するように構成される、眼内移植可能なデバイスの柔軟なレンズの一部として提供されることができる。そのようなデバイスは、ピエゾアクチュエーター、電気湿潤アクチュエーター、形状記憶アクチュエーター、または他のアクチュエーターを使用して、1つ以上の不混和性流体を、レンズのレンズチャンバに1つ以上の流体を出し入れするように構成することができる。水中超疎油性層は、非柔軟性および/または非眼内移植可能な電気湿潤レンズ、または水中超疎油性層が形成される表面をオイルが濡らしたり汚れたりするのを防ぐために、2つ以上の非混和性流体を含む構成レンズで提供されることができ、それ以外の場合は、そのようなデバイス内のオイル量の位置を制御するため、または何らかの他の利点を提供するために配置される。
【0021】
図1Bは、実施例の眼内移植可能なデバイス100の底面図である。
図1Cは、
図1Bに示される実施例の眼内移植可能なデバイス100の電気湿潤レンズ110の断面図である。
図1Bおよび1Cの相対的な寸法は、必ずしも縮尺通りではなく、実施例の眼内移植可能なデバイス100およびその電気湿潤レンズ110の配列を記載することのみを目的として示されていることに留意されたい。眼内移植可能なデバイス100は、電気湿潤レンズ110を動作させて制御可能な屈折力を提供し、眼内移植可能なデバイス100の他の動作を提供するように構成された電子機器150を含む。電子機器150は、コントローラ、電圧調整器、アンテナ、光電池、センサー、電極、送信機、受信機、電池、または他のコンポーネントを含み得る。電子機器150は、無線エネルギー(例えば、可視光エネルギー、赤外光エネルギー、無線周波電磁エネルギー、音響エネルギー)を受信および/または保存して、デバイス100に電力を供給し、外部デバイスまたはシステムと通信し(例えば、プログラムの更新を受信するため、コマンドされた屈折力レベルを受信するため)、提供する屈折力を決定するために使用され得る、または使用可能な1つ以上の物理的変数(例えば、光のレベル、瞳孔の直径、眼球内圧、眼の筋肉の活動に関連する電圧、眼の毛様体筋によって発揮される力、眼内の1つ以上の物質の濃度)を検出するように構成され得、電気湿潤レンズ110を動作させるため、またはデバイス100の何らかの他の用途を容易にするために、何らかの他の方法で使用される。
【0022】
電気湿潤レンズ110(および/または眼内移植可能なデバイス100の他のエレメント)は、ポリマー材料115から形成される。ポリマー材料は、実質的に透明な材料を含むことができ、入射光が眼内移植可能なデバイス100の電気湿潤レンズ110を通して眼の網膜に伝達されることを可能にする。ポリマー材料は、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)、ポリメチルメタクリレート(「PMMA」)、シリコーンハイドロゲル、硬質のガス透過性ポリマー材料(例えば、酸素透過性材料)、ガスや他の物質、これらの組み合わせなどの拡散をブロックする、バリア材料のような、インプラント、視力矯正レンズ、IOL、他の移植可能なデバイスを形成するために使用されるものと同様の生体適合性材料を含むことができる。ポリマー材料は、柔軟性および/または折り畳み可能な透水性材料を含むことができる。例えば、ポリマー材料は、2-フェニルエチルアクリレートユニットおよび2-フェニルエチルメタクリレートユニットを含むコポリマーを含むことができる。ポリマーまたはコポリマーのユニットは、適用可能な架橋剤またはユニット、例えば、1,4-ブタンジオールジアクリレートユニット、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートユニット、または何らかの他の架橋剤またはそのような薬剤の組み合わせによって架橋されることができる。
【0023】
ポリマー材料115は、その中に第1の流体130aおよび第2の流体130bが配置される、レンズチャンバ131を画定する。
図1Cに示されるように、レンズチャンバ131は、単一の封入エレメントを形成するポリマー材料115によって完全に画定される。しかしながら、これは、非限定的な実施例の実施形態として意図されている。レンズチャンバ131は、様々なプロセスによって様々な材料(例えば、ポリマー材料)から形成された、様々なエレメント(例えば、フラットウインドウエレメント、カップ状エレメント、レンズ状エレメント、リング状エレメント)によって画定され、電気湿潤レンズ110の本体が形成され得る。例えば、レンズチャンバ131は、カップおよび平坦な蓋として、それぞれ形成された第1および第2のエレメントによって画定され得る。電気湿潤レンズ110は、ガラス、ポリマー(例えば、水および/または酸素透過性ポリマー材料)、結晶、または何らかの他の材料から構成される1つ以上のエレメントから形成されることができる。電子湿潤レンズ110の少なくとも一部(例えば、レンズ、ウィンドウ、またはレンズチャンバ131の少なくとも一部を画定する他のコンポーネント)は、眼の房水中の水を透過するポリマー材料から(例えば、本明細書の他の位置にリストされているポリマー材料のうちの1つ)形成されることができる(例えば、1,4-ブタンジオールジアクリレートユニットにより架橋された、2-フェニルエチルアクリレートユニットおよび2-フェニルエチルメタクリレートユニットを含むコポリマーから)。
【0024】
柔軟なおよび/または折り畳み可能なポリマー材料は、デバイス100が、例えば、広げられた、または開かれた電気湿潤レンズ110の直径よりも小さい切開部を通して挿入されることができるように、デバイス100の構造に含まれ、デバイス100を丸める、折り畳む、または他の方法で操作することができる。追加的または代替的に、電気湿潤レンズ110の1つ以上のシーラント材料(例えば、電気湿潤レンズ110のフロントウィンドウを電気湿潤レンズ110の1つ以上の他のエレメントに接着するために使用されるシーラント材料)は、眼の房水中の水に対して透過性であり得る。
【0025】
本明細書に記載された電気湿潤レンズおよび/またはそのレンズチャンバは、いくつかの別個のエレメント(例えば、前部エレメント、後部エレメント、および環状エレメントから、ウインドウエレメントおよびカップエレメントから)から構築されることができる。そのような電気湿潤レンズの異なるエレメントは、同じ材料で構成されることができる(例えば、電気湿潤レンズ110のフロントウィンドウおよびカップエレメントは、両方とも2-フェニルエチルアクリレートユニットおよび2-フェニルエチルメタクリレートユニットを含むコポリマーで構成されることができる)。あるいは、電気湿潤レンズのエレメントは、それぞれ異なる材料で構成されることができる(例えば、電気湿潤レンズ110のフロントウィンドウは、2-フェニルエチルアクリレートユニットおよび2-フェニルエチルメタクリレートユニットおよびベースを含むコポリマーで構成されることができ、電気湿潤レンズ110のカップ型のエレメントは、ポリエチレンテレフタレートから構成されることができる)。
【0026】
眼内移植可能なデバイス100は、例えば、デバイスの生体適合性を改善するために、電気湿潤レンズの内部表面の表面エネルギーを制御するために(例えば、レンズチャンバ内の1つ以上の流体によるレンズチャンバ内の表面の濡れを促進または防止するため)、イオンまたは他の物質の通過を防ぐために、または、何らかの他の利点を提供するために、デバイスの1つ以上の外部または内部表面上に配置されたコーティング材料を含むことができる。例えば、電気湿潤レンズ110は、ポリマー材料115の内部表面上に配置された水中疎油性層120を含む。水中疎油性層120は、ポリマー材料115の内部表面(例えば、電気湿潤レンズ110のフロントウィンドウの内部表面)が、第2の流体130bのオイルまたは他の非極性物質によって濡らされるのを防ぐように構成される。
【0027】
そのような水中疎油性コーティングは、化学物質、ポリマー材料、テクスチャ加工された表面もしくは他の幾何学的に指定された表面、またはポリマー材料115上に配置された(例えば、付着された、化学蒸着または何らかの他のプロセスにより形成された)他の物質から形成されることができる。追加的または代替的に、水中疎油性層120は、ポリマー材料115を含む、および/またはポリマー材料115から形成されることができる。例えば、水中疎油性層120は、ポリマー材料115の表面に形成されたポスト、チャネル、または他の幾何学的特徴またはテクスチャを含むことができる(例えば、成形、エッチング、または何らかの他のプロセスを介して)。別の実施例において、水中疎油性層120は、プラズマへの暴露、化学エッチング、または何らかの他のプロセスによって化学的に修正されているポリマー材料115の量を含むことができる。
【0028】
第1の流体130aおよび第2の流体130bは、不混和性であり(例えば、第1の流体130aは、生理食塩水または何らかの他の水性流体であり得、第2の流体130bは、オイルまたは何らかの他の非極性流体であり得)、屈折率に関して異なる。したがって、第1の流体130aと第2の流体130bとの間の接触面(例えば、
図1Cに示すように凸形状)は、流体130a、130bの屈折率の差および接触面の形状に関連する屈折力(例えば、ジオプター、非ゼロ焦点距離)を提供することができる。
【0029】
電気湿潤レンズ110は、レンズチャンバ131を画定するポリマー材料115のそれぞれの内部表面上に配置された少なくとも2つの電極(図示せず)をさらに含む。電気湿潤レンズ110の屈折力を制御するために、電圧、電流、または他の電気信号を少なくとも2つの電極に印加して、第1の流体130aおよび第2の流体130bの形状を電子的に制御することができる(例えば、2つの流体130a、130b間の接触面の形状を制御するため)。電気湿潤レンズ110がレンズの機能性を保持しながら、移植中に屈曲され、折り畳まれ、丸められ、または他の方法で操作されるようにするために、電極は、金、アルミニウム、銀のナノワイヤー、または屈曲することができ、電極の領域全体の導電性の全体的なレベルを維持できる何らかの他の材料またはコーティングで構成されることができる。そのような材料は、機械的に(例えば、ホイルとして)または何らかの他のプロセス(例えば、スパッタリング、CVD、PVD、溶液としての塗布とそれに続く溶液の溶媒の蒸発による)によって塗布されることができる。
【0030】
第1の流体130aまたは第2の流体130bの一方は、水溶液を含み得る。このような水溶液は、例えば、水溶液と電気湿潤レンズ110の別の流体との間の界面の形状を制御するために、水溶液を通る電圧または電流の伝達を促進するために、導電性であり得る。いくつかの実施例において、水溶液は、眼内移植可能なデバイス100が移植される、眼の房水に対して実質的に等張であり得る。水溶液は、房水の浸透圧に対応する浸透圧を有することができ、そのため、レンズチャンバが房水中の水に対して透過性である場合、レンズチャンバおよび眼の房水内の水溶液の間で少量または実質的にゼロの純水量が生じる。これは、キログラム当たり298ミリオスモルとキログラム当たり310ミリオスモルとの間の浸透圧、またはキログラム当たり300ミリオスモルとキログラム当たり308ミリオスモルの間の浸透圧、またはキログラム当たり302ミリオスモルとキログラム当たり306ミリオスモルの間の浸透圧、またはキログラム当たり303ミリオスモルとキログラム当たり305ミリオスモルの間の浸透圧を有する水溶液を含むことができる。
【0031】
眼内移植可能なデバイス100および/または電気湿潤レンズ110によって(例えば、デバイス100が移植される眼へ)提供される全体的な屈折力は、眼内移植デバイス100形状、屈折率、または他のエレメントの特性に関連することができる。上述のように、これは、レンズチャンバ131内の第1の流体130aと第2の流体130bとの間の接触面の形状、および流体130a、130bの屈折率を含むことができる。
【0032】
眼内移植可能なデバイス100の他のエレメントは、静的および/または制御可能な屈折力を提供することができる。例えば、電気湿潤レンズ110の前面および/または後面は、それらの表面のいずれかの側の材料間(例えば、電気湿潤レンズ110のポリマー材料と眼の房水との間、またはポリマー材料と第1の流体130aまたは第2の流体130bのうちの1つとの間)の屈折率の変化に関連する屈折力を提供するために湾曲した表面を有することができる。
【0033】
眼内移植可能なデバイス100および/または電気湿潤レンズ110のコンポーネント(例えば、ウィンドウ、カップ、環状リング、またはレンズチャンバ131を画定する他のエレメント)は、様々な方法で湾曲形状を有するように形成されることができる。例えば、熱成形、射出成形、スピンキャスティングなどの視力矯正コンタクトレンズ、および/または眼球内レンズを形成するために使用されるものと同様の技術を使用して、ポリマー材料を眼内移植可能なデバイス100のコンポーネントに形成することができる。さらに、本明細書で記載されたような眼内移植可能なデバイスは、図示された眼内移植可能なデバイス100の形状とは異なる形状を有することができる。例えば、眼内移植可能なデバイスは、眼内移植可能なデバイスを眼内の特定の位置(例えば、眼の水晶体嚢内)に維持し、眼の毛様体筋によって加えられる調節力を検出するため、または何らかの他の利点を提供するための、ハプティックスまたは他の形成されたエレメントを含むことができる。
【0034】
図1Dは、眼10内に移植されたときの実施例の眼内移植可能なデバイス100の側面断面図である。眼10は、上瞼30と下瞼32とを眼10の上部の上で一緒にすることによって覆われる角膜20を含む。入射光は、角膜20を通して眼10によって受け取られ、そこで光が光学的に眼10の光感知素子(例えば、桿体および錐体など)に向けられて、視覚認知を刺激する。
【0035】
網膜が受け取った光は、変化していない眼の中で水晶体を透過し、水晶体によって屈折して、環境から受け取った光が網膜に焦点を合わせて到達する。水晶体は、眼の水晶体嚢40内に配置され、小帯45を介して、調節筋肉(例えば、毛様体筋)および眼の他のエレメントに接続されている。小帯を介して伝達される調節力(例えば、調節筋によって生じる力、小帯の固有の弾性によって生じる力、または他のソースによって生じる力)は、眼内で作用して水晶体嚢40内の水晶体を変形させ、水晶体により提供される屈折力を制御する。
【0036】
図1Dに示されるように、眼10の水晶体は、除去され、網膜によって受け取られた光が、眼内移植可能なデバイス100の電気湿潤レンズ110を透過し、電気湿潤レンズ110および/または眼内移植可能なデバイス100の他のエレメントによって屈折されるように、眼内移植可能なデバイス100が水晶体嚢40内に外科的に設置されている。したがって、例えば、電気湿潤レンズ110を操作して指定された屈折力を提供することにより、環境から受け取った光が網膜に焦点を結ぶように、眼内移植可能なデバイス100を操作することができる。
【0037】
眼内移植可能なデバイス100は、眼10の角膜20に形成された切開部24を通して眼10に挿入され、次いで水晶体嚢40内に位置付けられている。水晶体嚢40内にデバイス100を位置付けるために、水晶体嚢40に孔25が形成されており(例えば、連続的な曲線の水晶体嚢切開により)、水晶体は、除去されている(例えば、超音波水晶体乳化吸引により)。本明細書に記載の眼内移植可能なデバイスは、眼10内の代替位置、例えば、眼10の後房11、前房12内、または硝子体液13内に位置付けることができる。
【0038】
図1Dの相対寸法は必ずしも縮尺通りではないが、眼10内の実施例の眼内移植可能なデバイス100の配列を記載することのみを目的として説明されていることに留意されたい。さらに、そのような移植されたデバイスは、例えば、複数の異なる位置に配置された複数のエレメントを含むことができる。このような複数のエレメントは、ケーブルまたは何らかの他の手段によって接続されることができる。例えば、そのような移植されたデバイスは、後嚢11に配置され、眼に装着可能なデバイスまたは他の外部システム(図示せず)から無線電力を受信するように動作可能な受電エレメントおよびコントローラを含むことができ、水晶体嚢40内に配置された電気湿潤レンズは、コントローラによって、コントローラと電気湿潤レンズを接続するテザーを介して、受電エレメントからの電力を使用して動作することができる。
【0039】
眼内移植可能なデバイス100は、小さな形状に丸められ、折り畳まれ、または他の方法で柔軟になるように、丸められ、折り畳まれ、または他の方法で柔軟にされ得る。これにより、角膜20を通るより小さな切開部を通してデバイス100を挿入することが可能になる。例えば、デバイス100を丸め上げ、半分に折り、3分の1に折り、または何らかの他の方法で操作され、デバイス100を長さ4ミリメートル未満の切開部24を通して挿入できるようにすることができる。いくつかの実施例において、デバイス100は、長さ2ミリメートル未満の切開部24を通して挿入できるように、丸め可能、折り畳み可能、または他の方法で操作可能であり得る。そのような実施例において、眼内移植可能なデバイス100は、角膜20の切開部24に挿入された後、および/または他の形成された孔または切開部(例えば、水晶体嚢の孔25)、または眼の何らかの他の開口部または特徴(例えば、眼10の瞳孔26)を介して挿入された後、デバイス10を眼10指定された位置に位置付けるために、広げられ、開かれ、または他の方法で操作形状または状態(例えば、実質的に平らな状態)に操作され得る。
【0040】
本明細書に記載の電気湿潤レンズ(例えば、110)は、電気湿潤レンズの電極への電圧、電流、または他の電気信号の印加によって、2つ以上の不混和性流体(例えば、極性流体および非極性流体)の形状を制御できるように、様々な方法で構成され得る。いくつかの実施例において、これは、電極を介して、そのような電気湿潤レンズのレンズチャンバ内の1つ以上の表面の有効な表面エネルギー、表面張力、界面エネルギー、または他の表面特性を変更し、不混和性流体の第1のものが1つ以上の表面を横切って後退または前進するようにする、電界の印加を含むことができる。第1の流体が1つ以上の表面を横切って後退または前進すると、第1の流体の全体形状、および第1の流体と非混和性の第2の流体との接触面の形状が変化し得る。第1の流体と第2の流体の屈折率が異なる場合、電気湿潤レンズを通過しているときに光が屈折することがあり、その屈折量(および電気湿潤レンズの対応する屈折力)は、接触面の形状に関連し得る。したがって、電気湿潤レンズの全体的な屈折力は、電気湿潤レンズの電極に電気信号を印加して、例えば、電気湿潤レンズ内の1つ以上の流体の形状を制御し、および/または電気湿潤レンズのそのような流体間の接触面の形状を制御する。
【0041】
図2Aは、第1の期間中の実施例の電気湿潤レンズ200の断面図を示す。電気湿潤レンズ200は、第1のエレメント210aおよび第2のエレメント210bによって画定されるレンズチャンバ201を含む。実施例の電気湿潤レンズ200において、レンズチャンバ201は、中心線202に関して放射状に対称である。第1の電極220aは、電気湿潤レンズ200の第1の内部表面244aに沿って形成され、傾斜リングの形態をとる。第2の電極220bは、電気湿潤レンズ200の第2の内部表面240bに沿って形成される。第1の流体230aは、レンズチャンバ201内に配置され、
図2Aに示す第1の期間中、第1の内部表面240a、第1の電極220a、電気湿潤レンズ200の第3の内部表面242a、および電気湿潤レンズ200の第4の内部表面244aと接触している。第2の流体230bも、レンズチャンバ201内に配置され、第1の期間中、第2の内部表面240bおよび第2の電極220bと接触している。第1の期間中、第1の流体230aと第2の流体230bとの間の接触面は、第1の形状235aを有する。第1の流体230aおよび第2の流体230bは、不混和性であり(例えば、第1の流体230aは、非極性流体であり、第2の流体230bは、極性流体である)、異なる屈折率を有する。
【0042】
図2Aおよび2Bに示されるように、電気湿潤レンズ200は、2つの不混和性流体(230a、230b)を含む。いくつかの実施例において、電気湿潤レンズ200は、両方の流体230a、230bを含みながら、眼(例えば、10)に挿入されることができる。しかしながら、電気湿潤レンズ200の折り畳み、丸める、または他の操作は、流体の1つが、通常は別の流体と接触する表面に接触および/または濡らし、またはレンズチャンバ201を画定する流体および/または表面または材料間の何らかの他の望ましくない相互作用し、流体を互いに分散させ得る。そのような望ましくない相互作用は、流体230a、230bの一方または両方による電気湿潤レンズ200内の表面の汚染、流体230a、230b内の液滴または泡の形成、機械的、化学的、または電気的特性の変化、電気湿潤レンズ200の1つ以上の内部表面(例えば、電極表面のインピーダンスの変化)、電気湿潤レンズ200の光学特性の変化(例えば、電気湿潤レンズ200内の1つ以上の表面の汚れによるレンズ200を通過した画像光のぼけ)、または何らかの他の有害な影響をもたらし得る。
【0043】
そのような効果を防ぐために、レンズチャンバ201を画定する材料の、流体230a、230bの特性、(例えば、電気湿潤レンズ200の内部表面上に配置された表面コーティング)、または電気湿潤レンズ200の他のエレメントを制御して、流体230a、230bの1つによる特定の表面の濡れを防ぎ、そのような濡れが発生した場合に、そのような流体を放出する、またはそうでなければ上述の有害な効果を防ぐことができる。これは、流体230a、230b間の界面エネルギーを制御するために、流体230a、230bの一方または両方の組成を指定すること、および/または電気湿潤レンズ200の内部表面上に配置され、および/または含む材料の組成を指定することを含み、および/または電気湿潤レンズ200の内部表面の特定の部分と流体230a、230bの一方または両方との間の界面エネルギーを制御することができる。
【0044】
流体230a、230bの組成および/またはレンズチャンバ201を画定する材料の組成または構成(例えば、表面形状)は、流体の1つによる特定の表面の濡れを促進し、および/または反対の流体による特定の表面の濡れを阻止するために指定され得る。例えば、第1の流体230aは、オイルまたは何らかの他の非極性流体であり得、第2の流体230bは、生理食塩水または何らかの他の極性流体であり得、第1の流体230aによる第2の内部表面240bの濡れを防ぐために、水中疎油性および/または親水性層は、第2の内部表面240b(例えば、気湿潤レンズ200のフロントウィンドウの内部表面)上に配置され、および/または形成することができる。そのような水中疎油性および/または親水性層は、第2の内部表面240b上での第1の流体230aの液滴の形成を阻止し、および/または第1の流体230aによる第2の内部表面240bの湿潤を阻止することができる。追加または代替として、第2の流体230bによる第4の内部表面244a(例えば、電気湿潤レンズ200の後部窓の内部表面)の濡れを防ぐために、疎水性層を第4の内部表面244a上に配置されることができる。
【0045】
電気湿潤レンズ200の特定の内部表面が第1の流体230aまたは第2の流体230bの特定の1つによって濡れる可能性は、(i)第1の流体230aと特定の内部表面との間の界面エネルギー、(ii)第2の流体230bと特定の内部表面との間の界面エネルギー、および(iii)第1の流体230aと第2の流体230bとの間の界面エネルギーに関連し得る。例えば、電気湿潤レンズ200の特定の内部表面(例えば、電気湿潤レンズ200のフロントウィンドウの第2内部表面240b)は、極性のない第1の流体230a(例えば、オイル)ではなく、極性のある第2の流体230b(例えば、生理食塩水)で濡らすことができる。特定の一連の条件下で(例えば、電気湿潤レンズ200の折り畳みまたは丸めに続く)特定の内部表面が第1の流体230aによって濡れる確率は、以下の式に従って上記の界面エネルギー間の関係に関連し得る。
【数1】
【0046】
ここで、etotalは、特定の表面、第1の流体230a、および第2の流体230bを含むシステムの総界面エネルギーであり、osは、第1の流体230aと第2の流体230bとの間の界面エネルギーであり、owは、第1の流体230aと特定の表面との間の界面エネルギーであり、およびswは、第2の流体230bと特定の表面との間の界面エネルギーである。特定の表面が第1の流体で濡れる可能性を減らすために、etotalを減らすことができる。これは、swの減少(例えば、第2の流体230bの組成を指定することによる、および/または特定の表面に親水性層を配置することによる)、owの増加(例えば、第1の流体230aの組成を指定することによる、および/または特定の表面に疎油性層を配置することによる)、および/またはswの減少(例えば、流体230a、230bの一方または両方に界面活性剤を添加することによる)を含む。
【0047】
いくつかの実施例において、特定の表面(例えば、240b)は、owを増加させ、swを減少させ、または第1の流体230aによる、もしくは何らかの他の非極性流体による特定の表面の濡れを防ぐ疎油性層を含むことができる。そのような疎油性層は、下にあるバルク材料上に配置された材料の層、特定の表面上に形成された表面テクスチャ、下にあるバルク材料から形成された化学的修正材料の層、または疎油性材料の何らかの他の構成された層を含むことができる。
【0048】
親水性、疎油性、および/または水中疎油性材料のコーティングを特定の表面上に配置して、水中疎油性層を形成することができる。水中疎油性材料は、水に沈められたときに90度を超える第1の流体230aとの接触角を有することができ、水中超疎油性材料は、水に沈められたときに150度を超える第1の流体230aとの接触角を有することができる。親水性材料は、第2の流体230bとの接触角が90度未満であり得、超親水性材料は、第2の流体230bとの接触角が約0度であり得る。
【0049】
材料の層は、層がオイル、および/またはオイルとの接触角とは異なる水、および/または層を構成する材料の水との有効な接触角を持つように、表面のテクスチャを有するか、またはナノ構造もしくはミクロ構造を示すことができる。例えば、そのような材料層は、90度より大きい第1の流体230aとの接触角、および/または90度より小さい第2の流体230bとの接触角を有する材料から構成されることができる。材料の層は、水に沈められたときの材料の層と第1の流体230aとの有効な接触角が150度より大きいか、または水に沈められたときの非テクスチャ化材料と第1の流体230aとの接触角が何らかの他の角度よりも大きい、細孔、ポスト、または他のテクスチャ特徴を含むことができる。有効な接触角のこの違いは、水に浸されたときの水による層のテクスチャ加工された表面の濡れに関連している可能性がある。テクスチャ加工された水中疎油性、および/または親水性材料のそのような層は、テクスチャ加工された水中超疎油性材料と呼ばれることができる。
【0050】
そのような材料は、特定の表面上の適所に形成されるか(例えば、化学蒸着、スパッタリング、表面上に配置された溶液からの重合、または何らかの他のプロセスによって)、もしくは特定の表面に接着されるか、または特定の表面上に配置された別個の形成された材料であることができる。例えば、水中疎油性層は、特定の表面上に二酸化ケイ素の層をスパッタリングまたは他の方法で配置して水中疎油性層を形成することにより形成されることができる。いくつかの実施例において、特定の表面上に配置された一定量の超親水性材料から水中疎油性層を形成することができる。そのような超親水性材料は、二酸化チタン、セラミック、または他の超親水性材料を含むことができる。いくつかの実施例において、水中疎油性層は、特定の表面上に形成された(例えば、特定の表面上に堆積した溶液からの重合により)、または特定の表面上に配置されたヒドロゲル(例えば、ポリ(アクリル酸)またはポリアクリル酸ナトリウム)を含むことができる。
【0051】
追加的または代替的に、高分子電解質化合物または材料の層は、特定の表面上に配置されることができる。そのような高分子電解質のポリマーユニットは、双性イオンであることができる。高分子電解質は、水中疎油性層の水中疎油性を高めるために、特定の表面に双性イオンブラシ構造または他の構造またはテクスチャを形成することができる。これは、双性イオンエレメントが特定の表面に垂直になるように、特定の表面上に高分子電解質の両性イオンエレメントを形成し、および/または配置することを含むことができる(例えば、双性イオンエレメントがブラシ構造を形成するように)。
【0052】
いくつかの実施例において、特定の場、照明、エネルギー、または他の指定された条件にさらされると、水中疎油性層の材料は、より水中疎油性および/または親水性になることができる。例えば、水中疎油性層は、二酸化チタンを含むことができ、二酸化チタンが紫外線照射にさらされると、より親水性になり、および/またはより水中疎油性になることができる。いくつかの実施例において、水中疎油性層は、そのような印加場、照明、エネルギー、または他の指定された条件がない場合、最小限に水中疎油性であるか、まったく水中疎油性ではない。いくつかの実施例において、電流、電圧、電界、または1つ以上の電極を使用して生成された他の指定された条件への暴露に応じて、水中疎油性層は、1つ以上の電極上に、または隣接して形成され、水中疎油性層は、水中疎油性になる可能性がある。
【0053】
特定の表面(例えば、240b)は、指定されたテクスチャまたは形状(例えば、ポスト、細孔、隆起)を含めることができ、そのような指定されたテクスチャまたは形状は、水中疎油性層を形成することができる。例えば、表面の全体的な水中疎油性を高めるために、表面上または表面内に、複数のポスト、細孔、または他の特徴を形成することができる。これは、極性流体で濡らされていない特定の表面の面積を減らすこと、ポスト、細孔、またはテクスチャまたは形状の何らかの他の特徴の間の特定の表面への極性流体の吸収を促進すること、または他の何らかのメカニズムによって、水、第2の流体230b、または何らかの他の極性流体(例えば、生理食塩水)との特定の表面の有効な接触角を減らすことにより、特定の表面のオイル、第1の流体230a、または他の非極性流体との有効な接触角を増やすことによって起こることができる。
【0054】
そのような指定されたテクスチャまたは形状の特性寸法(例えば、ポストの直径または長さ、細孔の直径または長さ、またはテクスチャまたは形状のエレメントまたは特徴の何らかの他の尺度)が指定されて、水中疎油性層を通過する可視光(例えば、電子湿潤レンズ200を通過して眼の網膜によって受け取られる可視光)に対するテクスチャまたは形状の光学的効果(例えば、回折、分散、焦点ぼけ、屈折、吸収)を低減することができる。例えば、水中疎油性層のそのようなエレメントまたは特徴は、可視光の波長よりも小さい、例えば500ナノメートルよりも小さい特徴的な寸法を有ることができる。
【0055】
疎油性層が複数のポストを含む実施例において、そのようなポストは、例えば、極性流体によって濡れない特定の表面の面積を減らすことにより、疎油性層の水中疎油性を高める円錐形状または何らかの他の形状を有することができる。このようなコーンまたは他のポストの角度、直径、または他の特性が指定され、例えば、水に対する特定の表面の有効な接触角を減少させることにより、および/またはオイル、第1の流体230a、または何らかの他の非極性流体に対する特定の表面の有効な接触角を増加させることにより、水中疎油性層の水中疎油性を高めることができる。
【0056】
テクスチャまたは形状を含む水中疎油性層は、様々な方法で形成されることができる。いくつかの実施例において、特定の表面を(例えば、射出成形または注型成形により)形成するための型を使用して、テクスチャ加工された表面が形成されることができる。他の実施例において、反応性イオンエッチングまたは他のサブトラクティブプロセスにより、表面のテクスチャまたは形状は、形成されることができる。さらに別の実施例において、特定の表面にナノ粒子を接着するために接着剤を使用することにより、テクスチャまたは形状は、形成されることができる。多孔質の水中疎油性層は、ポリマーを形成することにより形成されることができ、その結果、溶解可能または除去可能な材料もポリマー内に形成され、その後、溶解可能または除去可能な材料は、除去され(例えば、溶剤を使用して)、除去可能な材料に対応するポリマー内に細孔のネットワークを残すことができる。例えば、ポリ(フッ化ビニリデン)とポリ(メチルメタクリレート)のブレンドを重合して、水中疎油性層を形成することができる(例えば、特定の表面にブレンドを配置し、ブレンドを重合することにより)。ブレンドの組成は、ブレンドが結晶化誘起相分離を示し、ポリ(フッ化ビニリデン)内に埋め込まれたポリ(メチルメタクリレート)で構成されるネットワークの形成をもたらすように指定されることができる。次に、形成された材料からポリ(メタクリル酸メチル)をエッチング除去することができ、その結果、多孔質の水中疎油性層が得られる。
【0057】
いくつかの実施例において、バルク材料の特定の表面を化学的に変更することにより、バルク材料の特定の表面上に水中疎油性層を形成することができる。これは、ポリマーバルク材料(例えば、2-フェニルエチルアクリレートユニットおよび2-フェニルエチルメタクリレートユニットを含むポリマー材料)を化学的または物理的エッチングプロセスにさらすことを含むことができる。例えば、そのようなポリマー材料は、ポリマー材料の表面を酸化し、表面を親水性および/または水中疎油性にするために酸素プラズマにさらされ、したがって水中疎油性層を形成することができる。別の実施例において、ポリマー材料は、特定された期間、強酸または強塩基にさらされる可能性がある。そのような暴露は、ポリマー材料を部分的に加水分解し、水中疎油性層を形成することができる。これは、ポリマー材料の主鎖ユニットを曝露することにより、高モル質量のイオン化可能なヒドロゲルを形成するために、2-フェニルエチルアクリレートユニットおよび2-フェニルエチルメタクリレートユニットを含むポリマー材料を強酸または塩基に曝露することを含むことができる。
【0058】
さらに別の実施例において、水中疎油性層を形成するために、極性および/または荷電分子は、バルク材料の表面(例えば、疎水性バルク材料の表面)と結合されることができる。例えば、クロロシランまたはメトキシシランは、疎水性バルク材料(例えば、2-フェニルエチルアクリレートユニットおよび2-フェニルエチルメタクリレートユニットを含むバルク材料)の表面と結合されることができる。そのようなクロロシランまたはメトキシシランは、例えば、アミノ、ポリエチレンオキシド、またはエポキシ部分などの、極性および/または荷電部分が付着するアルキル尾部または他の構成の尾部を含むことができる。
【0059】
いくつかの実施例において、流体230a、230bの一方または両方の組成は、osを減少させ、owを増加させ、swを減少させるか、または第1の流体230aもしくは何らかの他の非極性流体による特定の表面(例えば、240b)の濡れを防ぐように指定されることができる。追加的または代替的に、界面活性剤は、極性流体と非極性流体の間の界面張力を減らすために(例えば、osを減らすために)、極性(例えば、230b)または非極性(例えば、230a)の流体の一方または両方に加えることができる。そのような界面活性剤は、例えば、界面活性剤が非極性流体(例えば、230a)による特定の表面(例えば、240b)の湿潤性を増加させるのを防ぐため、極性流体と非極性流体との間の界面で優先的に作動することができ、および/または非極性流体と特定の表面)との間の界面で作動することができない。
【0060】
そのような界面活性剤は、極性流体に優先的に溶解することができる(例えば、界面活性剤は、非極性流体に不溶性であることができる)。そのような優先的に可溶性の界面活性剤は、イオン性分子、例えば多価イオン性分子であることができる。例えば、界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウムを含むことができる。追加的または代替的に、界面活性剤は、高分子アニオン性またはカチオン性界面活性剤またはレオロジー修正剤を含むことができる。そのような高分子界面活性剤は、特定の表面に近接して吸水層を形成し、非極性流体による特定の表面の濡れを防ぐことができる。そのような高分子界面活性剤は、高HLB値のプルロニック界面活性剤、ポリアクリル酸ナトリウム、カボキシメチルセルロースナトリウム、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)ナトリウム塩、またはイオン化可能部分を含む他の水溶性高分子量ポリマーを含むことができる。
【0061】
第1の流体230aと第2の流体230bは、屈折率に関して異なるため、接触面を通る光(例えば、中心線202に沿って電気湿潤レンズ200を通過する光)は、屈折し得る。屈折の程度または量、および電気湿潤レンズ200の関連する屈折力は、第1の流体230aと第2の流体230bとの間の接触面の形状に関連し得る。
【0062】
2つの流体230a、230bの屈折率は、指定された量だけ異なり得る。電気湿潤レンズ200の屈折力(例えば、電気湿潤レンズ200の屈折力の制御可能な範囲)は、屈折率間の差の大きさに関係し得る。2つの流体230a、230bの屈折率は、0.1超異なることができる。屈折率間の差は、流体230a、230bの一方または両方の屈折率を制御し、および/または修正することにより制御することができる。
【0063】
水性流体(例えば、第2の流体230b)の屈折率は、水の屈折率である1.33にほぼ等しくてもよい。あるいは、ブタンジオールまたは何らかの他の物質をそのような水溶液に加えて、水溶液の屈折率が1.33とは異なるようにすることができる。物質が電子湿潤レンズ200の水性(または他の)流体に添加される実施例において、電子湿潤レンズ200のレンズチャンバは、そのような物質が電子湿潤レンズ200を出て眼の房水に入るのを防ぐためのシールまたはコーティングを含み得る(例えば、密閉されることができる)。
【0064】
非極性流体(例えば、第1の流体230a)の特性は、追加的にまたは代替的に、非極性流体の屈折率を制御するために指定されることができる。これは、非極性流体への物質の追加を含むことができる。例えば、フェニル化シリコーンオイル(例えば、ポリフェニルメチルシロキサン)をシリコーンオイル(例えば、ポリジメチルシロキサン)に加えて、その屈折率を高めることができる。追加的または代替的に、非極性流体の成分の比が指定されて、非極性流体の屈折率を制御することができる。例えば、非極性流体の屈折率を制御するために、第1の線状アルカン(例えば、ヘキサデカン)と第2の線状アルカン(例えば、ノナデカン)の比率を指定され得る。さらに、非極性流体のポリマー長、多分散性、分岐度、または他の特性が指定されて、非極性流体の屈折率が制御され、または非極性流体の何らかの他の特性(例えば、融点、粘度、表面エネルギー、密度)が制御され得る。
【0065】
接触面の形状は、電極220a、220bに電気信号を印加することにより、例えば、電極220a、220bに電圧を印加することにより制御され得る。電極220a、220bに印加される電圧は、(例えば、印加電圧の変化に起因する電子湿潤レンズの一時的な変化に続く)電子湿潤レンズ200の定常状態の屈折力、および/または流体230a、230b間の接触面の形状に関連し得る。特定の関係は、導電性の第2の流体230bを介して、第1の電極220aと第2の電極220bとの間の実効静電容量に対して(例えば、導電性水溶液を含み、第2の電極220bと導電性および/または容量性電気接触している第2の流体230bを介して)、または何らかの他の要因に、流体230a、230bのそれぞれに対する第1の内部表面240aの表面エネルギーへの影響に基づくことができる。
【0066】
第1の電極220aおよび第2の電極220bは、電子湿潤レンズ200のそれぞれの内部表面(例えば、それぞれ第1のエレメント210aおよび第2のエレメント210bの表面上)上に配置された導電性材料(例えば、アルミニウム、金、銅、酸化インジウムスズ、または他の材料)を含むことができる。そのような堆積は、電極を適所に形成すること(例えば、スパッタリング、化学蒸着、重合、ナノワイヤーまたは懸濁液中の他の材料を含むキャリア液の堆積、その後のキャリア液の蒸発、フォトリソグラフィまたは他の材料のパターニングまたはエッチングのためのプロセスによって)、および/または電極を形成すること、およびその後電極を電子湿潤レンズ200の内部表面上に配置する(例えば、接着剤を使用して、金属箔、ワイヤ、桿体、コーン、テクスチャ表面、または他の形成された導電性材料を電子湿潤レンズ200内の表面に接着することによって)ことを含ことができる。追加的または代替的に、電極220a、220bの一方または両方は、電気湿潤レンズ200の内部表面上に配置され、および/または貫通し、レンズチャンバ201内に突出するワイヤ、桿体、コーン、テクスチャ加工された表面、または他のエレメントを含むことができる。
【0067】
電極の一方または両方は、そのような導電性材料とレンズチャンバ201の内部との間に配置された誘電体層をさらに含むことができる。例えば、第1の電極220aは、そのような誘電体層を含むことができる。このような誘電体層は、大きな直流電流が第1の電極220aから第1の流体230aまたは第2の流体230bの一方または両方に流れるのを防ぐため、第1の電極220aとそのような流体との間に容量性電気結合を提供するため、第1の電極220aを介してそのような流体に伝達できる電荷の量を制限するため、または何らかの他の利点を提供するため、提供されることができる。
【0068】
そのような誘電体層は、(例えば、CVD、スピンコーティング、または何らかの他のプロセスを介して)導電性材料上に堆積された別個の材料(例えば、パリレン)であることができる。追加または代替として、第1の電極220aの誘電体層は、電極の導電性材料から形成されることができ、例えば、誘電体層は、第1の電極220aの下にあるアルミニウム金属の酸化によって形成された酸化アルミニウムの非導電性層とすることができる。そのような誘電体層は、電極の表面で陽極酸化または他の電気的に駆動される反応を介して形成されることができる。追加的または代替的に、そのような誘電体層は、レンズチャンバ201内の流体と電極の材料との間の酸化還元反応によって形成されることができる。
【0069】
いくつかの実施例において、そのような誘電体層の形成および/または維持は、レンズチャンバ201内の特定のイオンの存在によって悪影響を受けるおそれがある(例えば、流体230a、230bの一方または両方に溶解する)。例えば、塩化物イオンの存在は、アルミニウム電極の表面上に形成された酸化アルミニウムの誘電体層を穴あけするか、そうでなければ損傷するように作用することができる。このような実施例において、房水(またはレンズ200がさらされる何らかの他の環境)に存在する塩化物イオンがレンズチャンバ201に入るか、レンズ200の何らかの他の材料または体積に入るのを防ぐために、塩化物不透過性材料から障壁を形成することができる。そのような材料は、ポリマー材料、金属箔または堆積金属層、または何らかの他の材料を含むことができる。そのような材料は、可視光に対して実質的に透明であることができる。
【0070】
電極220a、220b間の電圧は、流体230a、230b間の接触面の形状を制御することにより電気湿潤レンズ200の屈折力を制御するために制御されることができる。
図2Bは、第1の流体230aと第2の流体230bとの間の接触面が第2の形状235bを有するように、電極220a、220bに電圧が印加されている第2の期間中の電気湿潤レンズ200を示す。結果として、第2の期間中の電気湿潤レンズ200の屈折力は、第1の期間中の電気湿潤レンズ200の屈折力とは異なる。
【0071】
接触面の特定の形状および/または流体230a、230bの形状は、印加電圧および様々な他の要因に関連することができる。そのような要因は、流体230a、230b間の界面エネルギー、流体230a、230bと内部表面240a、242a、244a、240bの間の界面エネルギー、内部表面240a、242a、244a、240bの形状、電極220a、220bの形状、および/または第1の電極220aの誘電体層の形状を含むことができる。レンズチャンバ201内の流体230a、230bの形状や位置に影響を与えるため、印加電圧と電子湿潤レンズ200の屈折力との関係に影響を与えるため、または、電子湿潤レンズ200の関心のある何らかの他の特性に影響を与えるため、これらの要因の1つ以上が指定されて、流体230a、230b間の接触面の形状に影響を与えることができる。
【0072】
これは、界面活性剤、極性および/またはイオン性物質、非極性物質を流体またはその他に追加し、第1の流体230aおよび/または第2の流体230bの組成を指定して流体230a、230b間の界面エネルギーを制御し、および/または流体とレンズチャンバの内側表面240a、242a、244a、240bとの間の界面エネルギーを制御することを含むことができる。追加的または代替的に、内部表面240a、242a、244a、240bを構成する材料の組成が指定されて、内部表面と流体との間の界面エネルギーを制御することができる。
【0073】
これは、第1のエレメント210aおよび第2のエレメント210bのバルク材料を選択すること、および/または電気湿潤レンズ200の内部表面に1つ以上のコーティングまたは表面処理を施すことを含むことができる。例えば、第1の流体230aは、オイルまたは他の非極性流体であり得、第3の242aまたは第4の244aの内部表面のうちの1つ以上は、超疎水性またはそうでなければ疎水性であり得る。さらに、第2の流体230bは、極性流体(例えば、生理食塩水または他の水溶液を含む)であり得、第2の内部表面240bは、超親水性またはそうでなければ親水性であり得る(例えば、表面コーティングを含むことによる、表面特徴もしくはテクスチャを含むことによる、酸化プロセスにさらされていることによる、または何らかの他の手段による)。
【0074】
電気湿潤レンズ200の内部表面上のそのようなコーティングまたは材料の分布、および/またはそのような表面の形状は、中心線202または電気湿潤レンズ200の何らかの他の指定された軸に沿って、第1の流体230aを中心にするように指定されることができる。これは、中心線202からの距離に応じて、内部表面に異なるコーティングまたは他の材料を塗布することを含むことができる。第1の電極220aの誘電体の厚さ、または他の特性は、中心線202からの距離に応じて変化することができ、電極220a、220bの間に電圧が印加されると、第1の流体230aに印加される電気力および/または界面力および/または第2の流体230bは、中心線202に沿って第1の流体230aを中心にされ、および/または第1の内部表面240a上の流体230a、230b間の境界を、中心線202を中心とする円に合わせる傾向がある。
【0075】
電気湿潤レンズ200は、眼の房水中の水、または他の物質(例えば、イオン)に対して透過性であることができる。これは、房水中の水(または、他の物質)に対して透過性であるポリマー材料で少なくとも部分的に構成される電気湿潤レンズ200を含むことができる。レンズチャンバが房水中に存在する物質に対して透過性である実施例において、流体230a、230bの一方または両方は、例えば、房水からレンズチャンバ201への物質の正味の流れ、またはその逆の物質の流れを防ぐために、房水の物質の濃度に対応する物質の濃度を含むことができる。
【0076】
追加的または代替的に、レンズチャンバは、房水中のそのような物質、および/または流体230a、230bの一方または両方の物質に対して不透過性にすることができる。例えば、流体のうちの1つは、ブタンジオールを含む導電性流体であり得、レンズチャンバは、ブタンジオールに対して不透過性にされ得、および/または密閉されることができる。これは、物質を透過させない材料からレンズチャンバを構築することを含むことができる。追加的または代替的に、バリア層またはコーティングは、物質がレンズチャンバ201または電気湿潤レンズ200の何らかの他のエレメントもしくは構造に入るのを防ぐために、そのような不透過性材料から形成されることができる。例えば、房水に存在する塩化物イオンがレンズチャンバ201に入るか、またはレンズ200の何らかの他の材料もしくは体積に入ることを防ぐために、障壁は、塩化物不透過性材料から形成されることができる。そのような材料は、ポリマー材料、金属箔もしくは堆積金属層、または何らかの他の材料を含むことができる。そのような材料は、可視光に対して実質的に透明であることができる。
【0077】
いくつかの実施例において、電気湿潤レンズ200のコンポーネントは、自己修復材料から構成されることができる。例えば、レンズチャンバ201は、自己修復材料により少なくとも部分的に画定されることができる。このような自己修復材料は、レンズチャンバ201または電子湿潤レンズ200の他の容積の完全性を、そのような容積に流入または流出するバルク流体(例えば、レンズチャンバ201と眼の房水との間)に対して維持するために提供されることができる。いくつかの実施例において、そのような自己修復材料は、電気湿潤レンズ200の房水、および/または流体230a、230bに存在する塩化物イオンまたは他の物質への曝露によって劣化、および/または自己修復能力が低下し得る。そのような実施例において、非透過性材料(例えば、塩化物非透過性材料)を使用して、房水に存在する塩化物イオンまたは他の物質と自己修復材料との間に障壁を形成することができる。
【0078】
III.デバイスの電子機器の実施例
図3は、無線信号325を眼内移植されたデバイス350に無線で送信する外眼デバイス310を含むシステム300のブロック図である。無線信号325は、眼内移植されたデバイス350に電力を供給するための無線電力信号、眼内移植されたデバイス350の動作を制御する制御信号(例えば、眼内移植されたデバイス350の作動レンズ379によって提供された屈折力を制御するため)、または他の無線信号を含み得る。外眼デバイス310は、例えば、コンタクトレンズ、ヘッドマウントディスプレイ、または何らかの他のタイプのヘッドマウントデバイスなどの身体装着デバイスであり得る。追加的または代替的に、外眼デバイス310は、携帯電話のようなハンドヘルドデバイス、家具に組み込まれたデバイス、例えば、ユーザーが眠っている間に眼内移植可能なデバイス350の充電を容易にするためのベッドに組み込まれたデバイス、または何らかの他の形態であり得る。眼内移植されたデバイス350は、ユーザーの眼上または眼内に埋め込まれる。
【0079】
外眼デバイス310は、コントローラ330、ユーザーインターフェース339、送信機320、電源335、およびセンサー325を含む。送信機320は、電力、コマンド、または他の信号を、眼内移植されたデバイス350に無線で送信するように動作することができる。送信機320、コントローラ330、電源335、ユーザーインターフェース339、およびセンサー325はすべて、相互接続315、例えば、ワイヤ、ケーブル、および/またはコンポーネントが配置され得るプリント回路基板または他の基板材料上に形成された金属トレースのパターンを介して共に接続されることができる。さらに、送信機320は、(例えば、アンテナ、インピーダンス整合エレメント、コンデンサのプレート、電極、ミラーまたは回折格子を形成するために)そのような基板材料上に形成された金属トレースまたはパターンを含むことができる。
【0080】
送信機320は、発光エレメント(例えば、LED、レーザー、VCSEL)、無線周波数電磁エネルギー送信エレメント(例えば、アンテナ、コイル)、時変電流を身体の組織または体液に注入するように構成されたエレメント(例えば、電極)、または、例えば、電源335から移植されたデバイス350への電力を送信するように構成された、他のエレメントを含むことができる。送信機320は、情報を示すために送信機320から送信される無線信号の強度、位相、周波数、偏光、方向、または何らかの他の特性を制御するように構成されることができる。送信機320は、外眼デバイス310がユーザーの眼または身体に装着されていないとき(例えば、ユーザーの眼内の眼内移植されたデバイス350が眼外デバイス310に近接するように、ユーザーがベッドで寝ているとき)、または眼外デバイス310がユーザーの眼または身体に装着されている間、眼内移植されたデバイス350に電力を供給するように構成されることができる。
【0081】
電源335は、外眼デバイス310が眼内装着可能なデバイスである実施形態において、例えば、電源335の充電式電池を再充電するために、外眼デバイス310に電力を供給することができる。電源335は、電池(例えば、使い捨てアルカリ電池、充電式リチウムポリマー電池)、太陽電池、主電源への接続、または何らかの他のエネルギー源を含むことができる。
【0082】
センサー325は、生理学的特性(例えば、瞳の瞳孔直径)、環境パラメータ(例えば、周囲光レベル、ユーザーの眼とユーザーが見ている物体との間の距離)を検出するように(例えば、目の輻輳を検出するように)、ユーザーの眼および/または瞼の動きを検出するように、または眼外デバイス310および/または眼内移植されたデバイス350の動作に関連し得る、物理的パラメータを検出するように、構成され得る。ユーザーインターフェース339は、ディスプレイ、入力、スピーカー、マイクロフォン、タッチスクリーン、ボタン、スクロールホイール、またはユーザーからの情報(例えば、コマンド)の受信を容易にする、および/またはユーザーに情報(例えば、コマンドインターフェース、バッテリーステータス、またはデバイス310、350に関する他の情報)を提供する他のエレメントを含み得る。ユーザーインターフェース339は、眼内移植されたデバイス350から所望されることができる、眼内移植されたデバイス350の所望の屈折力に関連するコマンド、および/またはユーザーが見たい距離に関する情報または屈折力に関連する何らかの他の情報に関するユーザーからのコマンドを受信するように操作され得る。
【0083】
眼内移植されたデバイス350は、コントローラ370、センサー375、受信機360、および作動レンズ379を含む。作動レンズ379は、本明細書に記載の電気湿潤レンズであり得る。受信機360は、送信機320によって(例えば、外眼デバイス310の電源335から)無線送信された電力または他の無線信号325を受信するように動作することができる。これは、光信号(例えば、太陽電池、フォトダイオード、または他の感光エレメントを介して)、無線周波電磁信号(例えば、アンテナを介して、コイルを介して)、眼内移植されたデバイス350を囲む組織または体液の電流または電位の受信(例えば、電極を介して)、または眼外デバイス310から無線送信される何らかの他の信号の受信を含むことができる。眼内移植されたデバイス350は、他のシステムから電力が利用できないとき(例えば、外眼デバイス310が、眼内移植されたデバイス350に取り付けられていない、またはそうでなければ近接しているとき)に、デバイス350が使用するエネルギーを提供するために、コンデンサ、バッテリー、または他のタイプのエネルギー貯蔵デバイスを含むことができる。
【0084】
センサー375は、身体の生理学的特性(例えば、圧力または力、生体電位、光強度)を検出するように構成される。特定の実施例において、センサー375は、例えば、ハプティックスにより、水晶体嚢内に配置された弾性材料により、毛様体筋の電気的活動の検出により、または何らかの他の手段により、水晶体嚢内の力または圧力を検出することにより、眼の水晶体嚢に加えられる調節力を直接または間接的に検出するように構成された調節センサーであり得る。
【0085】
作動レンズ379は、作動レンズ379によって眼に提供される屈折力を制御するように動作可能である。レンズの光出力を制御するために作動レンズ379を操作することは、レンズ379の液晶に電圧を印加すること、電子湿潤作動レンズ379の電極に電圧を印加すること、ポンプまたは何らかの他のエレメントを操作して、レンズ379内の流体の圧力および/または配置を制御すること、または何らかの他の方法でレンズの屈折力を制御すること、を含むことができる。
【0086】
眼内移植されたデバイス350および/または外眼デバイス310は、追加のまたは代替のエレメントを含むことができ、
図3に示されたエレメントよりも多いまたは少ないエレメントを含むことができる。これは、外眼デバイス310に無線信号を送信するように構成されたエレメントを含む眼内移植されたデバイス350と、そのような送信信号を受信するように構成されたエレメントを含む外眼デバイス310とを含むことができる。そのような実施例において、眼内移植されたデバイス350および外眼デバイス310は、それぞれ送信機および受信機をさらに含むことができる。図示された受信機360および送信機320は、双方向通信を容易にし、かつ/または双方向通信を促進するように構成された他のエレメントと共通の1つ以上のエレメント(例えば、アンテナ、フィルタ、コイル、電力調整システム)を共有するトランシーバとして構成されることができる。
【0087】
図3に示すブロック図は、記載の便宜上、機能モジュールに関連して記載されていることに留意されたい。しかしながら、外眼デバイス310および/または眼内移植されたデバイス350の実施形態は、単一チップ、集積回路、および/または物理的特徴に実装される機能モジュール(「サブシステム」)の1つ以上と共に配列されることができる。すなわち、
図3の機能ブロックを個別のモジュールとして実装する必要はない。さらに、
図3で記載した1つ以上の機能モジュールは、個別にパッケージ化されたチップまたは互いに電気的に接続された他のコンポーネントによって実装されることができる。さらに、本明細書で記載した外眼デバイスおよび/または眼内移植可能なデバイスは、
図3に示されたコンポーネントに追加または代替のコンポーネントを含むことができることに留意されたい(例えば、追加のセンサー、作動レンズ、ディスプレイ、網膜刺激装置アレイ、電極、バッテリー、コントローラ、送信機、受信機、刺激装置など)。例えば、外眼デバイス310の電源335は、使い捨て電池であることができ、外眼デバイス310は、使い捨てデバイスとして動作することができる(例えば、電源335のバッテリーが使い果たされ、その後廃棄および/またはリサイクルされるまで動作する)。
【0088】
IV.方法の実施例
図4は、本明細書で記載されるような眼内移植可能なデバイスを人間の眼に移植するための方法400のフローチャートである。デバイスは、(i)レンズチャンバが折り畳まれ、または丸められ得るように、内部表面を有し、および柔軟であるレンズチャンバ、(ii)内部表面と接触してレンズチャンバ内に配置され、および極性流体を含む第1の流体、(iii)第1の流体と接触してレンズチャンバの内部表面上に配置される第1の電極、(iv)レンズチャンバ内に配置され、第1の流体と非混和性であり、屈折率に関して第1の流体とは異なる第2の流体、ならびに(v)第1の流体または第2の流体の少なくとも一方と接触してレンズチャンバの内部表面上に配置される第2の電極、を含む本明細書に記載の電子湿潤レンズを含む。電気湿潤レンズは、さらにエレメントを含み得る。例えば、電気湿潤レンズは、内部表面の少なくとも一部分上に配置された水中疎油性層を含むことができる。追加または代替として、電気湿潤レンズは、第1の流体内に配置され、第2の流体中で不溶性であり、第1の流体と第2の流体との間の界面張力を低減する界面活性剤を含むことができる。
【0089】
方法400は、眼の角膜を通る切開部を形成することを含む(402)。これには、メス、レーザー、ダイヤモンドブレード、金属ブレード、または何らかの他の器具を操作して角膜を切開することが含まれ得る。切開は、角膜に複数の別個の切り込みまたは切開部を作成することによって作成され得る。例えば、強膜の表面に垂直に最初のカットを行い、強膜に対して他の角度(接線角度など)で1つ以上の後続のカットを行うことができる。切開部は、水密になるように形成するか、最小限の乱視を引き起こすか、または何らかの他の考慮事項を満たすことができる。切開部の形成には、眼の機械的安定化(例えば、固定リング、鉗子、または他の手段を使用)、局所麻酔または全身麻酔の投与、または何らかの他のステップが伴う場合がある。形成された切開部は、指定された範囲内の長さまたは他の寸法を有することができる。例えば、切開の長さは4ミリメートル未満、または2ミリメートル未満であり得る。
【0090】
方法400は、切開部を通り眼内移植可能なデバイスを眼に挿入することを含む(404)。眼内移植可能なデバイスを眼に挿入することは、眼内移植可能なデバイスを折り畳まれた状態、または丸められた状態(例えば、眼内移植可能なデバイスの電気湿潤レンズが折り畳まれ、および/または丸められた状態)で挿入することを含む。いくつかの実施例において、眼内移植可能なデバイスは、そのような折り畳まれた状態、または丸められた状態で受け取ることができる(例えば、眼内移植可能なデバイスは、製造業者によって、滅菌ポーチまたは他のパッケージ内に折り畳まれた状態、または丸められた状態で提供されることができる)。代替的に、眼内移植可能なデバイスは、平坦状態または他の構成で提供され得、方法400は、挿入前に眼内移植可能なデバイスを折り畳むか、または丸めることを含むことができる(例えば、デバイスを折り畳んで、または丸めるために鉗子または他の器具を使用して、眼内移植可能なデバイスを折り畳んで、または丸めるための専用デバイスを使用して)。
【0091】
切開部を通して眼内移植可能なデバイスを挿入することは、切開部を通して眼内移植可能なデバイスを挿入するために、鉗子または何らかの他の手段を使用することを含むことができる。追加的または代替的に、眼内移植可能なデバイスは、そのような挿入を容易にするためのタブ、桿体、または他の特徴を含むことができる。そのような特徴は、後で眼内移植可能なデバイスから(例えば、切断、圧着、レーザー切断、または何らかの他の手段によって)除去される、または移植後に眼内移植可能なデバイスの一部として残すことができる。眼内移植可能なデバイスは、複数のコンポーネント(例えば、1つ以上のケーブル、または他の接続手段を介して接続された複数のコンポーネント)として挿入されることができる。
【0092】
方法400は、眼の中の指定された位置に、眼内移植可能なデバイスを置くことをさらに含む(406)。切開部を通した眼内移植可能なデバイスの挿入について上述したように、これは、眼内移植可能なデバイスを操作し、および位置付ける器具の使用すること、および/またはタブ、桿体、または眼内移植可能なデバイスの他の機能を使用することを含むことができる。眼内移植可能なデバイスを指定された位置に置くことは、追加の切開部、または他の外科的に形成された眼の特徴(例えば、虹彩を通り、眼の水晶体嚢に形成された孔を通る切開部)、および/または眼の自然な特徴を通り(例えば、虹彩の瞳孔を通り)デバイスを挿入することを含むことができる。指定された位置は、水晶体嚢内、前嚢内、後嚢内、硝子体液内、または眼の何らかの他の位置にあることができる。眼内移植可能なデバイスを指定された位置に置くことは、デバイスを特定の位置に固定するため、デバイスと眼との相互作用を促進するため(例えば、眼の水晶体嚢に加えられた調節力の検出を容易にするため)、または何らかの他の利点を提供するため、ハプティックスまたはデバイスの他の機能および/または追加の移植されたエレメントを操作することを含むことができる。眼内移植可能なデバイスを指定された位置に置くことは、デバイスの複数の異なるエレメントを一緒に組み立てること、例えば、電気湿潤レンズを電子モジュールと組み合わせて眼内移植可能なデバイスを形成することを含むことができる。
【0093】
方法400は、切開部を通り眼内移植可能なデバイスを眼に挿入することに続いて、眼内移植可能なデバイスを開くこと、または広げること(408)をさらに含む。これは、眼内移植可能なデバイスの電気湿潤レンズを開くこと、もしくは広げること、または眼内移植可能なデバイスの追加エレメントを開くこと、および/または広げることを含むことができる。ピンセット、専用デバイス、または他の器具を使用して、眼内移植可能なデバイスを開くこと、または広げることができる。いくつかの実施例において、ジグ、プレーン、または他の器具を使用して、眼内移植可能なデバイスの広げること、または開くことを容易にし、一度開かれ、または広げられると、眼内移植可能なデバイスの電気湿潤レンズは、平らになる、または電気湿潤レンズは、何らかの他の指定された形状に適合することができる。いくつかの実施例において、眼内移植可能なデバイスを開くこと、または広げることは、デバイスからクランプ、バンド、またはその他の拘束具を取り外すこと、デバイスを囲むか、またはそうでなければ拘束している針または他の器具からデバイスを解放すること、または、眼内移植可能なデバイスに加えられ、眼内移植可能なデバイスを開くこと、または広げることを防ぐ、圧力または力を解放すること、を含むことができる。
【0094】
方法400は、
図4に示されたものに加えて追加のステップ、またはエレメントを含むことができる。例えば、方法400は、電気湿潤レンズを電磁放射、熱、または他のエネルギーにさらして、レンズチャンバ内の特定の表面からある量の流体を除去すること(例えば、ウィンドウの内側からある量のオイルを除去する、オイルによって汚染されているか、もしくは接触している何らかの他の表面を形成するため)を含むことができる。いくつかの実施例において、二酸化チタンを含む水中疎油性層をレンズチャンバの内部表面の少なくとも一部分上に配置し、二酸化チタンを紫外線照射に曝露して、二酸化チタンが配置されている表面から、第2の流体、または何らかの他の流体の除去を促進することができる。追加的または代替的に、眼内移植可能なデバイスは、レンズチャンバ内の1つ以上の表面から流体を除去するために(例えば、第1の電極からオイルを除去するため)、またはレンズチャンバ内の第1および/または第2の流体の配置を操作するために(例えば、レンズチャンバの光軸に沿って第2の流体の液滴を中心にするため)動作されることができる。これは、第1電極と第2の電極との間、または第1および第2の電極の一方または両方と1つ以上のさらなる電極との間に電圧を印加することを含むことができる。
【0095】
いくつかの実施例において、方法400は、眼内移植可能なデバイスのレンズチャンバに材料または流体を追加すること、または除去すること、例えば、ある量の第1の流体を追加すること、または除去すること、を含むことができる。これは、1つ以上の針、デバイスと外部システムとの間に接続された1つ以上のチューブを使用して、または何らかの他の方法を介して実行されることができる。例えば、レンズチャンバは、ある量の第1の流体をレンズチャンバに導入することにより、例えば、針を介して、1本以上のさらなる針を介して、管を介して、1本以上のさらなる管を介して、または何らかの他の手段を介して、すすがれることができる。追加的または代替的に、ある量の第1の流体は、例えば、針、チューブ、または他の流体移送手段を介して吸引を適用することにより、レンズチャンバから除去されることができる。方法400は、そのような流体をレンズチャンバに導入する前に、そのような流体からガスを除去することを含むことができる。
【0096】
方法400は、眼のさらなる外科的操作、例えば、水晶体嚢の孔の形成および/または水晶体の除去、以前に埋め込まれたデバイス(例えば、静的IOL)の除去を含むことができる。方法400は、眼内移植可能なデバイスのプログラミングおよび/または試験を含むことができる。いくつかの実施例において、眼内移植可能なデバイスは、強膜または何らかの他の経路を介して移植されることができ、方法400は、代替切開部を形成すること(例えば、強膜を通して)およびそのような代替切開部を通してデバイスを挿入することを含むことができる。
【0097】
V.結論
実施例の実施形態が人または人のデバイスに関連する情報を含む場合、実施形態は、プライバシー制御を含むと理解されるべきである。このようなプライバシー制御は、少なくとも、デバイス識別子の匿名化、透明性、およびユーザーによる製品の使用に関する情報の修正、または削除を可能にする機能を含むユーザー制御が含まれる。
【0098】
さらに、本明細書で記載された実施形態がユーザーに関する個人情報を収集する状況、または個人情報を利用し得る状況においては、ユーザーは、ユーザーの情報(例えば、ユーザーの病歴、ソーシャルネットワーク、社会的活動もしくは行為、職業、ユーザーの嗜好、またはユーザーの現在の位置等の情報)をプログラム、または機構が収集するか否かを制御する機会、および、個人情報が使用されるか否か、または個人情報をどのように受信するかを制御する機会が与えられてもよい。さらに、所定のデータは、個人的に識別可能な情報が除去されるように、格納または使用前に一通り以上の方法で扱われ得る。例えば、ユーザーの識別情報は、ユーザーに関して個人的に識別可能な情報が特定され得ないように扱われ得る、あるいは、ユーザーの地理的位置は、ユーザーの特定の位置が特定され得ないように、位置情報が取得される位置(市、郵便番号、州といったレベルなど)に一般化され得る。したがって、ユーザーは、ユーザーに関する情報がどのように収集され、収集された情報がどのように使用されるかを制御し得る。
【0099】
図に示された特定の配列は、限定と見なされるべきではない。他の実施形態は、所与の図に示された各エレメントをより多く、またはより少なく含み得ることを理解されるべきである。さらに、図示されたエレメントのいくつかは、組み合わされ、または省略され得る。さらに、例示的な実施形態は、図に示されていないエレメントを含み得る。
【0100】
さらに、本明細書において、多様な態様および実施形態を開示してきたが、他の態様および実施形態も当業者には明らかであろう。本明細書で開示される様々な態様および実施形態は、例示を目的とするものであり、限定することを意図するものではなく、真の範囲および趣旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。本明細書に提示された趣旨、または主題の範囲から逸脱することなく、他の実施形態は利用し得、他の変更は、行われ得る。例えば、本明細書に記載の調整可能なレンズは、眼内移植可能ではなく、眼に装着された状態での使用を意図していないデバイスを含むことができる(例えば、カメラ、科学機器など)。本明細書に概して記載され、図面に示されたように、本開示の態様は、多種多様な異なる構成で配列、置換、組み合わせ、分離、および設計することができ、それらはすべて本明細書で明示的に企図されることは容易に理解されよう。