(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】空気体積流を拡散させる装置
(51)【国際特許分類】
F24F 13/072 20060101AFI20220516BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20220516BHJP
F24F 13/08 20060101ALI20220516BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
F24F13/072 A
F24F13/02 D
F24F13/08 A
F24F7/06 C
(21)【出願番号】P 2020548711
(86)(22)【出願日】2019-03-13
(86)【国際出願番号】 EP2019056203
(87)【国際公開番号】W WO2019175201
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】102018105828.4
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519331604
【氏名又は名称】クランツ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Krantz GmbH
【住所又は居所原語表記】Uersfeld 24, 52072 Aachen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エッケハート フィードラー
(72)【発明者】
【氏名】ハンス フェルザー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン リューネン
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第19826566(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011014393(DE,A1)
【文献】西独国特許出願公開第2941276(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102008038727(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第103335388(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/072
F24F 13/02
F24F 13/08
F24F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気体積流を拡散させる装置
(1,1’
)であって、
空気通路(8)に接続する空気流入横断面(9)と、共に空気通流横断面を形成する複数の通流開口(5,5’,5’’,5’’’,5’’’’)を備えた噴流発生装置(4,4’)と、を有する空気分散室(3,3’)と、
前記通流開口(5,5’,5’’,5’’’,5’’’’)が開口する中間室(7)と、
前記中間室(7)からの空気体積流が通流し、該中間室(7)とは反対の側で空気流出横断面(22)を画定している、スクリーン(17)、穿孔プレートまたは多孔質材料の形態の均一化装置(6)と、
を備えており、
前記空気流出横断面(22)は、前記空気流入横断面(9)よりも大幅に大きくなっており、前記通流開口(5,5’,5’’,5’’’,5’’’’)はそれぞれ、前記空気分散室(3)に面した流入領域(12,12’’,12’’’,12’’’’)を有しており、該流入領域(12,12’’,12’’’,12’’’’)内で空気体積流がその都度変向されるようになっている、装置(1,1’)において、
前記流入領域(12,12’’,12’’’,12’’’’)は、前記空気分散室(3)から前記中間室(7)の方に見て、トランペット形、円錐形または段付けされて先細になっており、前記通流開口(5,5’,5’’,5’’’,5’’’’)の流入横断面(13)は、実質的に共通の流入平面内に位置しており、前記通流開口(5,5’,5’’,5’’’,5’’’’)の中心軸線に沿って測定した各通流開口(5,5’,5’’,5’’’,5’’’’)の長さ対前記通流開口(5,5’,5’’,5’’’,5’’’’)の、前記中間室(7)に面した開口横断面(16)の比は、少なくとも2、好適には少なくとも3、さらに好適には少なくとも5であ
り、
前記中間室(7)内への空気流入横断面は、専ら前記通流開口(5,5’,5’’,5’’’,5’’’’)の前記開口横断面(16)のみによって形成されている、
ことを特徴とする、空気体積流を拡散させる装置
(1,1’
)。
【請求項2】
前記噴流発生装置(4)の、前記通流開口(5,5’,5’’,5’’’,5’’’’)の前記流入横断面(13)の間に位置する遮断面(15)もやはり、実質的に前記流入平面内に位置している、請求項1記載の装置。
【請求項3】
-横断面で見て-前記流入領域(12,12’’)の壁の接線と前記流入平面とは合致している、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記通流開口(5,5’,5’’,5’’’,5’’’’)の前記流入横断面(13)は、対応する前記開口横断面(16)の2倍、好適には2.5倍よりも大きくなっている、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記噴流発生装置(4,4’)の通流横断面は、前記空気分散室(3,3’)の前記空気流入横断面(9)の0.5倍未満、好適には0.4倍未満、さらに好適には0.25倍未満である、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記通流開口(5,5’,5’’,5’’’,5’’’’)は、一方の端部において拡張された管片から形成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記流入領域(12,12’’,12’’’,12’’’’)の前記流入横断面(13)の領域において、流入領域壁は、前記噴流発生装置(4)のプレート状の上部(20)と結合されており、好適には金属から成っており、かつ前記プレート状の上部(20)に溶接されているか、または前記噴流発生装置(4)の前記プレート状の上部(20)と一体に、好適には射出成形構成部材またはダイカスト構成部材として成形されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記噴流発生装置(4,4’)と前記均一化装置(6,6’)との間の内法間隔は、前記通流開口(5,5’,5’’,5’’’,5’’’’)の直径の3~10倍である、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記均一化装置(6,6’)は、連続して複数配置されたスクリーン(17)、穿孔プレートまたは多孔質材料を有している、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
前記噴流発生装置(4,4’)と前記均一化装置(6,6’)とは、互いに等距離に配置されている、請求項1から
9までのいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
前記均一化装置(6,6’)は、少なくとも2,好適には5~20、さらに好適には5~50の圧力損失係数ζを有している、請求項1から
10までのいずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気体積流を拡散させる装置であって、
空気通路に接続する空気流入横断面と、共に空気通流横断面を形成する複数の通流開口を備えた噴流発生装置と、を有する空気分散室と、
通流開口が開口する中間室と、
中間室からの空気体積流が通流し、中間室とは反対の側で空気流出横断面を画定している、スクリーン、穿孔プレートまたは多孔質材料の形態の均一化装置と、
を備えており、空気流出横断面は、空気流入横断面よりも大幅に大きくなっており、通流開口はそれぞれ、空気分散室に面した流入領域を有しており、流入領域内で空気体積流がその都度変向されるようになっている、装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な技術分野において、比較的大きな横断面にわたる、均一な空気分散の必要性が存在しており、供給空気は経済的、技術的かつスペース的な理由から、可能な限り小さな横断面の通路または管を介して供給される。よって、供給空気導管と、これに接続する換気装置またはシステムとの間に大幅な横断面拡張が生じることになり、横断面が増大するにつれて、供給空気の速度は低下する。この理由から、空気流出横断面は空気流入横断面よりも大幅に大きくなっており、本願の意味では、空気流出横断面は、空気流入横断面の少なくとも5倍、好適には10倍、さらに好適には50倍大きくなっていることに由来する。上記装置は個別の要求に適合可能であり、大きさの比は例示的に述べただけに過ぎないということは自明である。
【0003】
横断面拡張に基づき、供給空気の流れ特性にネガティブな影響が及び、渦流が発生する。体積流を均一に拡散させるために、拡散器と呼ばれることもある複数の装置が配置される。
【0004】
実地では、空気を均一に制動することは困難であることが判っている。移動空気中では静圧が低下するため、流れは常に、円形の噴流形状を形成する傾向がある。噴流パターンにおける不規則性は、流れ距離と共に増大する傾向にある。この理由から、拡散器の流出部において同一形状の体積流を達成するには、極めて大きな圧力損失を伴わなければ成功しないことが多い。代替的に、連続的な横断面拡張部を備えた拡散器が周知であり、これらの拡散器は、極めて緩やかな横断面拡張に基づき非常に大きな構成形式を有しており、多くの場所で使用不可能であることが判明している。
【0005】
独国特許出願公開第2941276号明細書から公知の流れ分散装置は、穿孔プレートとして形成された隔壁を有している。プレートに形成された開口は、均一に分散されており、それぞれ分散室内に突入しているリップ状の変向装置を有している。供給空気が変向装置にぶつかることにより、供給空気は90°だけ変向されて開口内へ案内され、プレートの反対側において装置から離れ、換気されるべき室内へ流入する。これにより、均一な体積流を形成しようとする。
【0006】
供給空気を変向装置に当てることにより、供給空気体積流全体を複数の個別の部分体積流に分割することが試みられており、公知の装置のこれらの部分体積流は、極めて乱流的な流れ特性を有している。さらに、分散室内に突入しているリップは、分散室内の空気流に関しても不都合であることが判っている。突入しているリップは、一方では均一な空気流を妨げ、他方では分散室内での空気分散を妨げる。上側のリップには十分に供給空気が当たるのに対し、「影」に位置する後続のリップには供給空気がほとんど流れない。全体として達成される空気分散は、高度な要求には適さない。
【0007】
刊行物である独国特許出願公開第102011014393号明細書は、室を換気する装置および方法に関しており、ここでは一次空気が供給され、適宜に温度調整され、室に供給される。その際に室内空気が誘導され、空気分散室内で一次空気と混合される。この公知の装置は、本願の意味における空気体積流の拡散用には用いられない。なぜなら、この公知の装置から流出する空気は乱流だからである。室内空気の誘導も、本発明では望まれていない。特に、室内空気に対する要求が高いクリーンルームまたはその他の室において、この公知の装置は使用不可能である。
【0008】
また、独国特許出願公開第19826566号明細書に記載の、一次空気が誘導された室内空気と混合されて室内に供給される、室を換気する装置も、空気体積流の拡散には適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、少ない圧力損失、小さな構成体積および空気体積流の均一な分散という点において優れた、空気体積流を分散する代替装置を発展させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
冒頭で述べた装置から出発して、上記課題は、流入領域が、空気分散室から中間室の方に見て、トランペット形に、円錐形にまたは段付けされて先細になっており、通流開口の流入横断面は、実質的に共通の流入平面内に位置しており、通流開口の中心軸線に沿って測定した各通流開口の長さ対通流開口の中間室に面した開口横断面の比は、少なくとも2、好適には少なくとも3、さらに好適には少なくとも5であることによって解決される。
【0011】
通流開口の本発明による形状に基づき、体積流の極めて良好な均一分散が達成され、これにより、通流開口の特別な「孔形状」に基づき、上流に接続された空気通路内での高い空気速度を可能にすることができる。流入領域において流れ方向に見てより大きな直径から出発して先細になる孔形状に基づき、全ての個別の通流開口内への空気流の変向が達成される。これにより、重要なのは最早、噴流発生装置の上側の静圧ではなく、全圧である。この全圧は、極めて長いノズルボックスにおいても比較的一定であるため、噴流発生装置の全長にわたり、極めて均一な流出が達成される。
【0012】
流入領域をトランペット形に形成すると、流入領域の壁は、横断面で見てやや凸状に湾曲している。円錐形の流入領域の場合には、流入領域の壁は横断面で見ると直線的である。流入領域を段付けして形成すると、それぞれ異なって形成された、特にそれぞれ筒状の区間の間に段部が存在することになる。流入領域の高さにわたって横断面を狭めることによって円弧状の流線が生じるため、このような流入領域は、「丸み付けされた流入部」とも呼ばれる。
【0013】
通流開口は、好適には円形の横断面を有しており、この場合、楕円形または角形の横断面を有する通流横断面を形成することも考えられる。重要なのは、横断面が、流入横断面から出発して流れ方向に見て流入領域の高さにわたり先細になっていることだけであるに過ぎない。
【0014】
既述のように、体積流は、空気分散室内で通流開口の本発明による流入領域に基づき、通流開口内へ均一に導入され、このことは、これとは異なり流入領域において縁部が鋭利に形成された通流開口、つまり流入領域にも一定の横断面を有する通流開口の場合には当てはまらない。確かに、流入領域において縁部が鋭利に形成された通流開口の場合でも、体積流の、複数の部分体積流への分割は行われるが、流れ特性は、通流開口内でも空気分散室内の通流開口の上側でも極度な乱流である。なぜなら、流入領域の隣の、通流開口が設けられていない噴流発生装置の閉鎖領域内に渦流が発生するからである。これは、供給空気が通流開口の入口開口のすぐ隣で閉鎖領域に当たることに起因し得る。ただし、本発明では、各通流開口の入口開口は拡張されていて、通流開口の側面は、通流開口の中心軸線に対して傾斜しているため、体積流の穏やかな変向が達成される。この「陥凹部」は、流入平面と共に25°~45°の角度を形成する、周方向に延在する側面を有している。「陥凹部」の側面は、トランペット形に形成された流入領域の場合には反っているかまたは湾曲していてよく、この場合の平均角度は、有利には前記値を有していることが望ましい。
【0015】
本発明の意味において、各通流開口の流入横断面は、実質的に共通の流入平面内に位置している。この場合に重要なのは、流入平面が空気分散室の長手方向に見て直線状に、つまり平らに延在しており、これにより体積流は障害物無しで流れることができる、という点である。これにより、空気分散室内での均一な流れが達成される。典型的には、空気分散室は細長く形成されており、これは、空気分散室の長さがその幅および高さよりも大きいことを意味する。有利には、長さは空気分散室の幅および高さの少なくとも2倍、有利には少なくとも4倍である。用途に応じて長さが大幅に長く形成されていてもよいことは自明である。空気分散室内で、体積流は流入横断面から出発して空気分散室の長手方向に流れ、このとき空気体積流は通流開口によって典型的には90°だけ変向される。例えば、室天井に沿って配置されひいては長手方向が水平に延びる空気分散室において、空気通路が、やはり水平にかつ空気分散室の長手方向に対して垂直に延びる長手方向軸線を有している場合には、空気分散室内の空気体積流の流れ方向もやはり、空気分散室の長手方向において水平である。噴流発生装置が空気分散室の下側に配置されており、通流開口の長手方向軸線が鉛直方向に延在している場合には、空気体積流は通流開口によって鉛直方向に変向される。
【0016】
空気分散室の横方向に見て、流入平面は直線状に、湾曲してまたは部分的に傾斜して延在していてよい。
【0017】
本発明による噴流発生装置は、体積流を、空気通路内での流速とは関係無く均一に分割可能であることにより、通流開口の長手方向軸線に対して実質的に平行に向けられた複数の部分体積流が、噴流発生装置の面にわたり均一に形成される。
【0018】
通流開口の中心軸線に沿って測定した各通流開口の長さ対通流開口の中間室に面した開口横断面の比は、少なくとも2、好適には少なくとも3、さらに好適には少なくとも5である。本発明による通流開口の長さは、部分体積流に流れ方向を特に良好に与える働きをする。つまり、噴流発生装置は、部分体積流の一種の整流器として働く。
【0019】
通流開口は、縦断面で見て全体的にそれぞれ異なる幾何学形状を有していてもよく、例えば全体的に円錐形またはトランペット形に延在していてもよいし、または流入領域とその他の通流開口との間に分割部を有していてもよい。通流開口が、一定の直径および適宜に拡張された流入領域を備えた一種の貫通孔である場合に、通流開口の、流入領域とその他の貫通孔(通路)とへの分割と言うことができる。この場合、流入領域と、対応する各通路とは、流入領域が通路へ移行する移行横断面において、同一の横断面を有していてよい。つまり、この場合、貫通開口が飛躍部を有すること無しに、流入領域は直接に通路へ移行している。このことも流れに関してやはり、渦流が一切生じることがないという利点を有している。
【0020】
均一化装置は、例えば両方の長辺において、均一化装置が、横断面で見てU字を形成するように縁部が折り曲げられたスクリーンとして形成されていてよい。この場合、中間室は三方をスクリーンによって画定されることになる。
【0021】
本発明の1つの有利な改良では、噴流発生装置の、通流開口の流入横断面の間に位置する各遮断面もやはり、実質的に流入平面内に位置している。空気分散室の長手方向に見た噴流発生装置の構成に関しても、遮断面および流入横断面は再度一直線上に延在していなければならず、これにより空気分散室内の流れが、支障となる狭窄部または拡張部無しで均一に流れることができるようになっている。空気分散室の長手方向に対して垂直方向または横方向に見て「実質的に流入平面内」という表現は、共通の平面が例えば湾曲して延在していてもよいし、または部分的に傾斜していてもよいということを意味する。例えば、噴流発生装置は管として形成されており、ひいては筒状の流入平面を有することが可能である。管として形成された噴流発生装置においても、遮断面および流入横断面は、空気分散室の長手方向に見てそれぞれ一線上に位置している。この場合、このように形成された噴流発生装置の横方向において、遮断面および流入横断面は1つの円上に位置している。
【0022】
本発明の1つの改良は、横断面で見て、流入領域の壁の接線と流入平面とが合致することを想定している。これにより、流入平面から通路の流入領域の側面への穏やかな移行が生じることになる。
【0023】
トランペット形、円錐形または段付けされた流入領域に関して特に有利なのは、通流開口の各流入横断面が、中間室に面した対応する開口横断面の2倍よりも大きくなっている場合である。有利には、前記比は2.5または最大で3であってもよい。通流開口の横断面が円形の場合に、相応の直径に対する前記比が当てはまる。最大横断面は、通流開口の、空気分散室に面した側に位置するため、この特徴に基づき、通流開口の最大横断面に相応する横断面を備えた体積流が通流開口内に導入されることが達成される。このようにして、比較的少量の供給空気が噴流発生装置の遮断面に当たることになり、噴流発生装置の上側の空気分散室内に渦流が発生することはほとんどない。通流開口の横断面が円形の場合、通路は円筒形の横断面を有しており、流入領域は円錐台形の横断円を有している。
【0024】
本発明による装置の有利な流れ特性に基づき、噴流発生装置の通流横断面は、空気分散室の空気流入横断面の0.5倍未満であることが可能である。本発明ではさらに、通流横断面は、空気流入横断面の0.4倍未満または0.25倍未満であるか、またはより小さくなっていることが可能である。それどころか、個別の用途において、前記比は0.05であってもよい。
【0025】
本発明の1つの特に好適な実施形態では、通流開口は中間室に面した側に、横断面が、通流開口の領域の横断面よりも小さくなっている部分を有していることが想定されている。つまり、この部分は、通流開口の狭窄部を形成しており、これにより、通流開口の、中間室に面した開口横断面は、通流開口自体の横断面よりも小さくなっている。この部分は、部分体積流の「方向付け」を行うノズルのように働く。流出する部分体積流は、一方では極めてまっすぐに向けられて加速され、これにより流れ特性が最適化されている。前記部分の機能に関して重要なのは、横断面が先細になっているという点であり、この場合、横断面の減少が飛躍的に行われるのか、または連続的に行われるのかということは重要ではない。本発明のこのような構成は、特に高い要求が課される拡散器に適している。さらに、通流開口が-流入領域を除いて-一定の横断面を有する場合に、前記部分の流出部における横断面が、通流開口の横断面の80%未満であると有利であることが判った。
【0026】
本発明の1つの構成は、通流開口が、一方の端部において拡張された管片から形成されていることを想定している。規格に従った様々な直径の、様々な材料から成る管が入手可能なので、規格製品を使用することができる。管は、まず所要の長さに切断され、一方の端部において相応に拡張される必要がある。この方法は簡単かつ材料が節約でき、特に20mm以上の比較的大きな通流開口直径の場合に用いられる。
【0027】
さらに、隣り合う管体の外面の間に、各1つの自由空間が生じていると有利である。このようにして、噴流発生装置は材料を節約して、ひいては軽量にも製造することができる。なぜなら、管体を個別の仕様に従って互いに間隔をあけて配置することができるからである。
【0028】
噴流発生装置の製造に関してさらに特に有利なのは、流入領域壁が、流入領域の流入横断面の領域において、噴流発生装置のプレート状の上部と結合されており、好適には金属から成っており、かつプレート状の上部に溶接されているか、または噴流発生装置のプレート状の上部と一体に、好適には射出成形構成部材またはダイカスト構成部材として成形されている場合である。これにより、噴流発生装置の経済的に有利な製造が可能である。
【0029】
さらに、噴流発生装置と均一化装置との間に、一定の直径の領域における通流開口の直径の3~10倍の内法間隔が生じていると有利である。この場合、この間隔は、流れ方向に測定した中間室の長さに相当する。中間室内で、個々の部分体積流は自由に流れることができ、前記間隔は、体積流内のエネルギ減少に関して重要な、いわゆる「自由噴流長さ」を決定する。噴流発生装置から流出する流れは、本発明ではまっすぐに向けられており、中間室内でエネルギを失い、体積流の均一化が行われる均一化装置内へ均一に流入する。
【0030】
噴流発生装置、中間室および均一化装置を備えた装置の本発明による構成に基づき、事前に体積流の大幅な拡散が行われてよいにもかかわらず、空気流出横断面において最適な流れ特性を得ることが可能である。
【0031】
均一化装置に関しては、均一化装置が、連続して複数配置されたスクリーン、穿孔プレートまたは多孔質材料を有していると、特に有利であることが判った。1つまたは複数のスクリーン、穿孔プレートまたは例えばスポンジ等の多孔質材料のユニットを中間室の下流側に接続することにより、通路の流出部(流出横断面)における高い空気速度を効率的に利用することができる。噴流発生装置からの流出時に場合により生じる不均一性は、中間室内で相殺することができるので、流出横断面では卓越した均一分散が達成される。装置から体積流が流出する際の均一性に基づき、装置は、例えばスリットノズルによる流入に利用することができ、この場合はスリット通路を介して極めて均一な供給を達成することができる。
【0032】
さらに、本発明による装置は、充填層またはフィルタエレメントの供給に利用される別の空気分散室への供給にも適している。空気速度は装置の流出部において既に極めて低くなっていて局所的なピーク値が存在しないため、フィルタベッドはさらに大幅に大きな流入面を有し得る。実地では、装置の空気流出横断面とフィルタベッドとの間では、1:10の面積比が実現可能である。これは装置の空気流入横断面に関しては、フィルタ面を介した空気速度の偏差が極小さな場合に最大で1:100の面積比を意味している。このような面積比は、特に本明細書に開示した装置が大きな確実性を有する設計を可能にするため、他の技術ではほぼ達成し得ない。
【0033】
本発明の1つの有利な改良では、中間室内への空気流入横断面が、専ら通流開口の開口横断面のみによって形成されていることが想定されている。よって、中間室内で室内空気の誘導が行われる恐れは一切ない。このようにして、中間室を通過する空気体積流が極めて均一に流れ、全く妨害を受けないことが保証されている。
【0034】
さらに、噴流発生装置と均一化装置とが互いに等距離に配置されていると有利であり、このこともやはり、空気体積流の均一な流れに全体的にポジティブな影響を及ぼす。
【0035】
本発明による装置において所望される圧力低下に関して、均一化装置が少なくとも2,好適には5~20、さらに好適には5~50の圧力損失係数ζを有していると、さらに有利である。つまり、単純なそらせ板を設けることはできない。
【0036】
最後に、下位請求項記載の様々な個別の特徴は、本発明の変化態様においてそれぞれ単独でまたは複数の任意の組合せで実現されてよいことに留意されたい。
【0037】
以下に、上述した本発明を図示の2つの実施例に基づき、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図3】
図1に示した噴流発生装置を下から見た立体図である。
【
図4】代替的に構成された本発明による噴流発生装置の立体図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1に示す、空気体積流(矢印2)を分散するための本発明による装置1は、空気分散室3と、内部に複数の通流開口5が配置された噴流発生装置4と、均一化装置6とから構成されており、噴流発生装置4と均一化装置6との間には中間室7が位置している。空気分散室3は、手段(
図1には図示せず)を介して空気通路8に接続されており、これにより空気体積流(矢印2)が、空気通路8から出発し、空気流入横断面9を経て空気分散室3内へ流入するようになっている。空気通路8は管から形成されており、200mmの直径を有している。装置1は、幅220mm、高さ400mmおよび長さ2mの直方体形のケーシング10を有している。ケーシング10内には、噴流発生装置4および均一化装置6が、噴流発生装置4の上側に空気分散室3を形成する自由空間が残されるように配置されている。よって、空気分散室3は、ケーシング10の壁と、噴流発生装置4の上縁部とによって画定されている。噴流発生装置4と均一化装置6とは両方共、空気通路8の下側に位置している。
【0040】
装置1の各構成部材は、本例ではアルミニウムから製造されている。
【0041】
噴流発生装置4は、互いに平行に延在する3つの列を有しており、各列は、互いに間隔をあけて位置する通流開口5を備えている。この場合、第3列の通流開口5はずらされて配置されていて、
図1に示す断面図では見ることができないため、
図1には2つの通流開口5のみが認められるに過ぎない。この場合、通流開口5の横断面は円形なので円筒通路11が生じており、流入領域12は円錐台形に形成されている。より良い関連付けのために、通流開口5は以下、中間室に面した通路と、空気分散室3に面した流入領域とを区別して説明する。
【0042】
既述のように、流入領域12は、噴流発生装置4の、空気分散室3に面した側に最大直径を有しており、各流入横断面13を画定している。各通路11の直径はそれぞれ10mmであり、各流入領域12の最大直径はそれぞれ20mmである。流れ方向に見た各通路11の長さはそれぞれ30mmであり、流れ方向に見た流入領域12の長さは5mmである。流入領域12が、空気体積流の流れ方向に見て通路11の直径に相当する直径に狭窄していることにより、個々の通流開口5内への空気体積流の最適な変向が行われる。個々の通流開口5の流入横断面13の投影図の外側を流れる空気体積流の部分も、流入領域12内へ緩やかに吸い込まれるため、通流開口5の流入横断面13の間および隣に位置する噴流発生装置4の遮断面15の領域に、乱流または渦流が形成されることは一切ない。通流開口5内の流れ方向は、矢印28によって例示されている。
【0043】
通流開口5の流入横断面13ならびに噴流発生装置4の遮断面15は、図示の例では1つの平面内に位置している。代替的に、装置1の幅方向にやや湾曲した噴流発生装置の上面の構成が考えられ、この場合の曲率半径は1mを上回ることが望ましい。さらに、やはり装置の幅方向に見て互いに所定の角度を形成する複数の部分を備えた上面が存在する、噴流発生装置の構成も考えられる。流入横断面13が、装置1の長手方向に見て、つまりケーシング10または空気分散室3の長手方向に見て、直線状に延びていることが特に重要であり、これにより、空気体積流が直線状に流れることができるようになっている。
【0044】
通流開口5の横断面の和は、噴流発生装置4の空気通流横断面を形成する。個々の通流開口5は、中間室7に面した側にそれぞれ、中間室7内に開口する開口横断面16を有している。本例では、中間室7は側方を閉鎖壁によって画定されており、これにより、中間室7内への空気の流入は、専ら通流開口5の開口横断面16だけを介して行われてよい。周辺空気の誘導は不可能であり、望まれてもいない。
【0045】
図1では、開口横断面16は、残りの通路11の横断面よりも小さく形成されているため、部分体積流が通路11から流出する際にノズル作用を生じさせる狭窄部が存在する。これに相応して、通路11は、横断面が狭窄した部分14を有している。この場合、狭窄は部分14の高さにわたり連続的に行われる。代替的には、急な狭窄も考えられる。さらに、前記部分は、通路の出口横断面に取り付けられたリングによって形成されてもよい。
【0046】
均一化装置6は、互いに間隔をあけて平行に延在する2つのスクリーン17から成り、スクリーン17は、その両方の長辺においてそれぞれU字形の条片18によって囲まれており、
図1に示す均一化装置6は矩形を有している。
【0047】
最後に、
図1に示した本発明による装置1は、やや漏斗形の細長い流出部19を有しており、流出部19からは均一化された空気体積流が、例えば換気されるべき室内へ流出する。体積流が均一化装置6から流出する、均一化装置6の横断面は、空気流出横断面22として定義されている。
【0048】
図2からは、
図1に示した本発明による装置1の立体図が明らかである。ここでは装置1の半部のみが示されているに過ぎず、より良好に具体的に示すために、ケーシング10の側壁の図示は部分的に省かれている。装置1の長さLは線23で表されており、線23は端部において鎖線になっており、これは、装置1が
図2に示すよりも長いことを明示するものである。噴流発生装置4の3列の通流開口5を良好に認めることができる。空気通路8から空気分散室3への横断面拡張部も、
図2から明確に判る。矢印24により、図示の空気分散室3の半部内での流れ方向が示唆されており、この場合、図示しない空気分散室3の半部内での流れ方向は反対方向に延びている。なぜなら、空気通路8から流出する空気体積流が両側に向かって分かれるからである。
【0049】
図3には、噴流発生装置4の例示的な構造を下から見た立体図が示されている。噴流発生装置4はプレート状の上部20を有しており、上部20には、射出成形構成部材として個々の通流開口5が一体に成形されている。プレート状の上部20は、両方の長辺で縁部が立てられおり、ひいては2つの側壁21を有している。
図3では、通路11は、横断面が狭窄した部分を一切有していない。これらの部分は、流れ特性に対する要求があまり高くない用途では省くことができる。噴流発生装置の製造に関しては、規格に従った管から複数の管部分を切断し、管部分の片側を広げ、次いでプレートに溶接することも考えられる。
【0050】
代替的に、噴流発生装置は、相応の通流開口が形成されるプレートから形成されていてもよい。
【0051】
本発明による装置の第2の例1’が
図4から明らかであり、
図4には、空気分散室3’を包囲または画定する、厚い壁の管25が示されている。見やすくするために管25の一部のみが示されており、管25は、実際には大幅に長く形成されておりひいては細長い装置1’を形成する。装置1’への供給用の空気通路は
図4には示されていないが、空気通路は管25の任意の箇所に取り付けられていてよい。装置1’では、空気通路を管25に対して半径方向に取り付ける可能性があり、しかしまた他方では、空気通路を管25の長手方向軸線26に対して平行に設け、これにより空気通路を管25の一方の端面(図示せず)に取り付けることも可能である。閉じられた空気分散室3’を保つために、管25が両方の端面を閉じられて形成されていることは自明である。
【0052】
管25の壁が、管25に対して半径方向に延びる長手方向軸線を有する複数の通流開口5’を備えていることにより、管25の部分27は噴流発生装置4’として形成されている。個々の通流開口5’は、その横断面、および流入領域12、通路11およびより小さな横断面を備えた通路の部分14内への分散に関して、
図1に示した通流開口5と同様に構成されている。
【0053】
管25に対して所定の間隔をあけて、スクリーンの形態の均一化装置6が下側に配置されており、この場合、スクリーンは管25に適合した湾曲を有しているため、前記間隔は全ての箇所において同じである。
【0054】
代替的に、装置1’を変更して、管の壁の周方向に延在するように通流開口を設け、かつ均一化装置も同様に管として形成し、これにより空気体積流を、管の全周または均一化装置の全周を介して室内へ供給することも考えられる。
【0055】
最後に、
図5には異なって形成された3つの通流開口5’’,5’’’,5’’’’の縦断面が示されており、ここでは、各流入領域12’’,12’’’,12’’’’が異なって形成されている。
図5内で左側に示す通流開口5’’の場合には、流入領域12’’はトランペット形である。
図5内で中央に示す通流開口5’’’の場合には、流入領域12’’’は段付けされて形成されており、
図5内で右側に示す通流開口5’’’’は、漏斗形または円錐台形の流入領域12’’’’を有している。流入領域12の最大直径対通路11の直径の比は、それぞれ2である。
【0056】
もちろん、通流開口は全体的に円錐形に形成されていてもよく、この場合、その横断面は中間室に向かって縮小する。このような通流開口の場合には、上述した例のような、流入領域と通路とへの明確な分割は不可能である。通流開口の別の様々な構成も可能である。
【符号の説明】
【0057】
1,1’ 装置
2 矢印
3,3’ 空気分散室
4,4’ 噴流発生装置
5,5’,5’’,5’’’,5’’’’ 通流開口
6,6’ 均一化装置
7 中間室
8 空気通路
9 空気流入横断面
10 ケーシング
11 通路
12,12’’,12’’’,12’’’’流入領域
13 流入横断面
14 通路の部分
15 遮断面
16 開口横断面
17 スクリーン
18 条片
19 流出部
20 プレート状の上部
21 側壁
22 空気流出横断面
23 線
24 矢印
25 厚い壁の管
26 長手方向軸線
27 管の部分
28 矢印
H 高さ
B 幅
L 長さ