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  • 特許-雌型継手および管継手 図1
  • 特許-雌型継手および管継手 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】雌型継手および管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/47 20060101AFI20220516BHJP
   F16K 5/06 20060101ALI20220516BHJP
   F16K 35/00 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
F16L37/47
F16K5/06 Z
F16K35/00 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020567415
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2019048633
(87)【国際公開番号】W WO2020153030
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2019011583
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 陽一
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-228071(JP,A)
【文献】独国実用新案第202009013080(DE,U1)
【文献】特開2005-233244(JP,A)
【文献】特開2016-53420(JP,A)
【文献】特表平7-504965(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129605(WO,A1)
【文献】米国特許第3423063(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第1302715(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/47
F16L 29/02
F16K 5/06
F16K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の雌型継手と、
該雌型継手の該バルブ部材の該第2流体通路内に挿入されて該雌型継手に着脱可能に連結される雄型継手と、
を備える管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雌型継手とそれに着脱可能に連結される雄型継手とからなる管継手に関し、より詳細には、雌型継手が回転動作により継手本体の流体通路を開閉するバルブ部材を備え、バルブ部材に雄型継手を挿入した状態で雄型継手をバルブ部材とともに回転させることにより雄型継手が雌型継手に連結されるようにした管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の管継手は、例えば特許文献1及び2に示されるように、雌型継手のバルブ部材が、流体通路を開閉する球状のバルブ本体と、バルブ本体を雌型継手の継手本体に対して回転可能に取り付けるための軸部とを有し、軸部は継手本体の外側に突出している。また、雌型継手の継手本体の外周面上には、長手方向に変位可能とされたスリーブが配置されている。突出した軸部の端面には係止凹部が形成されていて、この係止凹部にスリーブの係止突部を係合させることにより、バルブ部材を開放位置に固定するようになっている。これにより、連結状態において不意にバルブ部材が回転して連結が解除されてしまうことを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-233244号公報
【文献】特開2016-53420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような従来の管継手においては、雌型継手のバルブ本体を開放位置に保持するための係止構造である軸部の係止凹部やスリーブの係止突起が外部に露出している。そのため、雌型継手を落下させたり、硬い部材にぶつけたりしたときなどに、係止凹部や係止突部が変形したり傷ついたりしてしまうことがある。そうすると、係止凹部と係止突部とが適切に係合しなくなって、バルブ部材を開放位置に固定することできなくなる虞がある。
【0005】
そこで本発明は、回転可能なバルブ本体を開放位置に固定するための係止構造が外部に突出しないようにして、係止構造が破損することを防止することが可能となる雌型継手、及びそのような雌型継手とそれに着脱可能に連結される雄型継手とからなる管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、
雄型継手を着脱可能に連結する雌型継手であって、
第1流体通路を有する継手本体と、
該継手本体内において回転中心軸線の周りで回転可能に配置されたバルブ部材であって、該回転中心軸線を中心とする円弧状の横断面を有する曲面状の外表面、該外表面に設けられた施錠凹部、及び雄型継手を受け入れる第2流体通路を有し、該第1流体通路と該第2流体通路とが連通する開放位置と該第1流体通路を該外表面で閉止する閉止位置との間で回転可能とされたバルブ部材と、
該継手本体に該継手本体の径方向で変位可能に保持された施錠子であって、該継手本体の内周面から径方向内側に突出して該バルブ部材の該施錠凹部に係合し該バルブ部材を係止する施錠位置と、該施錠位置から径方向外側に変位して該バルブ部材に対する係止を解除する解錠位置との間で変位可能とされた施錠子と、
該施錠子を径方向外側から覆うように該継手本体の外周面上に配置され、該施錠子を該施錠位置に保持する連結位置と、該施錠子が該解錠位置に変位することを許容する連結解除位置との間で変位可能とされたスリーブと、
を備え、
該バルブ部材が該開放位置にあるときに該施錠凹部が該施錠子と対向する位置となって該施錠子が該施錠位置に変位可能となるようにされた、雌型継手を提供する。
【0007】
当該雌型継手においては、バルブ本体は継手本体内に配置されているため、その外表面に形成された施錠凹部は継手本体によって外部には突出しない位置となる。また施錠子はスリーブによって覆われているため外部に露出しない。すなわち当該雌型継手においては、バルブ本体を開放位置に固定するための係止構造としての施錠凹部と施錠子とが外部には突出せず、外部から保護されるように配置されているため、当該雌型継手を落下させるなどした場合に施錠凹部及び施錠子が変形したり傷ついたりして破損することを防止できる。
【0008】
また、該バルブ部材が該回転中心軸線に沿って延びる回転軸部を有し、該継手本体が該回転中心軸線に沿って貫通して該回転軸部を回転可能に保持する軸受穴を有し、該回転軸部と該軸受穴が該スリーブによって径方向外側から覆われているようにすることができる。
【0009】
このような構成により、バルブ部材を回転可能に保持するための回転軸部と軸受穴が外部に露出しないようになり、雌型継手を落下させるなどした場合に回転軸部及び軸受穴が破損してバルブ部材が適切に回転できないようになることを防止できる。
【0010】
また、該バルブ部材が、該曲面状の外表面を形成する球状部と、該球状部から該第2流体通路の長手軸線に沿って延びる軸状部とを有し、該バルブ部材が該閉止位置から該開放位置に回転したときに該軸状部が該継手本体に係合して該バルブ部材がそれ以上回転することが防止され、該バルブ部材が該開放位置から該閉止位置にまで回転したときに該軸状部が該継手本体に係合して該バルブ部材がそれ以上回転することが防止されるようにすることができる。
【0011】
また、
該第1流体通路内に配置され、該第1流体通路の内周面と該バルブ部材の該外表面とに密封係合した環状のシール部材と、
該継手本体と該シール部材との間に配置され、該シール部材を該バルブ部材の該外表面に向かって付勢するスプリングと、
をさらに備えるようにすることができる。
【0012】
スプリングによってシール部材をバルブ部材の外表面に向かって付勢することにより、シール部材と外表面との間をより確実に密封することが可能となる。
【0013】
さらには、
該スリーブが、該閉止位置にある該バルブ部材の該第2流体通路に雄型継手を挿入する際に該雄型継手が通過するようにされた通過凹部を有し、該開放位置と該閉止位置との間を該継手本体の長手軸線の方向で変位するようにされ、
該スリーブと該継手本体との一方が他方に向かって突出した突部を有し、該他方が該継手本体の長手軸線の方向に延びて該突部を受け入れる溝部を有していて、該突部と該溝部が該継手本体の周方向で係合することにより該スリーブが該継手本体に対して該継手本体の長手軸線の周りで回転することが防止されるようにすることができる。
【0014】
本発明はさらに、
上述のいずれかの雌型継手と、
該雌型継手の該バルブ部材の該第2流体通路内に挿入されて該雌型継手に着脱可能に連結される雄型継手と、
を備える管継手を提供する。
【0015】
以下、本発明に係る管継手の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る管継手の連結状態における斜視図である。
図2図1の状態における管継手の側面断面図である。
図3図2のA-A線における断面図である。
図4図1の状態から雄型継手を回転させて雄型継手を連結解除可能な位置とした状態の管継手の斜視図である。
図5図4の状態における管継手の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る管継手1は、図1に示すように、雌型継手10と、雌型継手10に着脱可能に連結される雄型継手12とからなる。後述するように、雌型継手10と雄型継手12とが図1及び図2に示すように長手軸線Lの方向で直線状に位置するときには、雄型継手12が雌型継手10に連結された状態が維持され、雄型継手12を雌型継手10に対して図4及び図5に示す位置にまで回転させると雄型継手12を雌型継手10に対して着脱可能な状態となる。
【0018】
雌型継手10は、図2に示すように、第1流体通路14を有する筒状の継手本体16と、継手本体16内に配置されたバルブ部材18と、継手本体16の施錠子保持孔20内に保持された球状の施錠子22と、継手本体16の外周面16a上に配置されたスリーブ24とを備える。継手本体16は、配管が接続される後端接続部26を有する後方部材28と、雄型継手12を受け入れる前端開口部30を有する前方部材32とからなる。後方部材28と前方部材32とは互いに螺合して固定されている。バルブ部材18は、第1流体通路14と連通する第2流体通路34を有し、第2流体通路34が第1流体通路14と連通する開放位置(図2)と、第1流体通路14を閉止する閉止位置(図5)との間で継手本体16に対して回転可能となっている。施錠子22は、継手本体16の内周面16bから径方向内側に突出してバルブ部材18の施錠凹部36に係合した施錠位置(図2)と、施錠位置から径方向外側に変位した解錠位置(図5)との間で径方向に変位可能に配置されている。スリーブ24は、施錠位置にある施錠子22に径方向外側から係合して施錠子22を施錠位置に保持する連結位置(図2)と、連結位置から長手軸線Lの方向で後方に変位して施錠子22が解錠位置に変位することを許容する連結解除位置(図5)との間で変位可能となっている。
【0019】
バルブ部材18は、曲面状の外表面38を有する球状部40と、球状部40から第2流体通路34の長手軸線Mに沿って延びる軸状部42とを有する。バルブ部材18はさらに、図3に示すように、球状部40に取り付けられて球状部40から回転中心軸線Rに沿って延びる回転軸部44を有する。回転軸部44は、回転中心軸線Rに沿って継手本体16を貫通する軸受穴46に受け入れられている。バルブ部材18は、回転軸部44によって、継手本体16に対して回転中心軸線Rの周りで回転可能に取り付けられている。回転軸部44と軸受穴46は、スリーブ24によって径方向外側から覆われて外部に露出しないようになっている。
【0020】
施錠子22は、図3に示すように、継手本体16の周方向に3つ並べて配置された施錠子保持孔20内においてそれぞれ径方向に変位可能に配置されている。また、バルブ部材18の外表面38には、開放位置にあるときに施錠子22に対向する位置に3つの施錠凹部36が形成されている。施錠子22及び施錠子保持孔20は、スリーブ24によって径方向外側から覆われて外部に露出しないようになっている。なお、球状部40の外表面38は回転中心軸線R上に中心を有する円弧状の曲面となっている。
【0021】
雌型継手10はさらに、継手本体16内に配置された環状のシール部材48と、継手本体16とシール部材48との間に配置されてシール部材48をバルブ部材18の外表面38に向かって付勢するスプリング50と、を備える。シール部材48は、継手本体16の内周面16bとバルブ部材18の外表面38とに密封係合して、継手本体16とバルブ部材18との間を密封している。
【0022】
雄型継手12は、バルブ部材18の第2流体通路34内に挿入される挿入部52と、その外周面12a上に形成された環状の係止溝54とを有する。挿入部52が第2流体通路34内に挿入されると、バルブ部材18に取り付けられたシールリング56によって挿入部52の外周面52aとバルブ部材18の内周面18aとの間が密封される。また雄型継手12の流体通路58が第2流体通路34と連通した状態となる。
【0023】
図1及び図2の連結状態においては、雄型継手12の係止溝54が雌型継手10の継手本体16に設けられた係止突部60と係合して、雄型継手12が雌型継手10に対して長手軸線Lの方向で固定される。また、施錠子22がバルブ部材18の施錠凹部36に係合してバルブ部材18を開放位置に固定するとともに、連結位置にあるスリーブ24が施錠子22を施錠位置に保持する。これにより、バルブ部材18が開放位置から閉止位置に向かって回転することが阻止されて、雄型継手12が雌型継手10に連結された状態が維持される。
【0024】
雄型継手12の連結を解除する際には、まずスリーブ24を連結位置から後方に変位させて連結解除位置とする。そうすると施錠子22が径方向外側に向かって解錠位置にまで変位可能な状態となる。この状態で雄型継手12をバルブ部材18とともに回転中心軸線Rを中心に図4及び図5に示す位置に向かって回転させると、施錠子22はバルブ部材18に押されて解錠位置となる。バルブ部材18が図5に示す閉止位置になると、継手本体16の第1流体通路14はバルブ部材18の外表面38によって閉止される。また、雄型継手12の係止溝54と雌型継手10の係止突部60との係合も解除されて、雄型継手12をバルブ部材18の第2流体通路34から長手軸線Mの方向で引き抜いて雌型継手10から取り外すことが可能な状態となる。継手本体16には径方向に貫通したパージ孔62が形成されており、連結解除状態としたときに雄型継手12内に加圧流体が残っていた場合には、その加圧流体はパージ孔62を通って管継手1の外側に排出される。
【0025】
スリーブ24には、図4及び図5の連結解除位置において雄型継手12を部分的に受け入れる通過凹部64が形成されている。雄型継手12をバルブ部材18の第2流体通路34から引き抜く際及び第2流体通路34に挿入する際には、雄型継手12はスリーブ24の通過凹部64を通過することになる。継手本体16はスリーブ24に向かって突出した突部66を有し、スリーブ24は長手軸線Lの方向に延びて突部66を受け入れる溝部68を有している。これら突部66と溝部68が周方向で係合することにより、スリーブ24が継手本体16に対して長手軸線Lの周りで回転することが防止されるようになっている。これにより、スリーブ24の通過凹部64の周方向での位置は常に一定の位置に保持されて、雄型継手12を着脱する際に雄型継手12がスリーブ24に干渉しないようにしている。なお、スリーブ24の溝部68は、解錠位置にある施錠子22を受け入れる部分としても機能している。
【0026】
バルブ部材18は、上述のように、開放位置と閉止位置との間で回転可能となっているが、軸状部42によってその回転範囲が規制されている。すなわち、バルブ部材18が閉止位置から開放位置に回転したときには、軸状部42が継手本体16の第1規制面70に当たってバルブ部材18がそれ以上回転することが防止される。また、バルブ部材18が開放位置から閉止位置に回転したときには、軸状部42が継手本体16の第2規制面72に当たってバルブ部材18がそれ以上回転することが防止される。軸状部42は、製造時には、バルブ部材18の球状の外表面38を加工する際に工作機のチャックによって把持される部分としても利用される。
【0027】
当該管継手1においては、バルブ部材18を開放位置に固定するための係止構造として、バルブ部材18の外表面38に形成された施錠凹部36と、継手本体16に保持された施錠子22とを利用している。バルブ部材18は継手本体16内に配置されているため、施錠凹部36は外部には突出しない。また施錠子22はスリーブ24によって径方向外側から覆われているため外部に露出しない。このように係止構造としての施錠凹部36と施錠子22は、外部に露出しないか又は突出しないようになっているため、雌型継手10を落下させたり硬い部材にぶつけたりした場合に変形したり傷ついたりして破損することが防止される。
【0028】
以上に本発明の実施形態について説明をしたが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。バルブ部材は、その外表面が回転中心軸線を中心とする円弧状の横断面を有するような形状であればよく、例えば横断面が円、楕円、又はルーローの多角形である柱状の部材としてもよい。また、施錠子と施錠凹部の数や配置は適宜変更できる。スリーブの回転を防止するための突部と溝部の配置は逆にすることもできる。すなわち、継手本体に溝部を設け、スリーブに突部を設けるようにしてもよい。スリーブの連結位置と連結解除位置との間での変位方向が、長手軸線の方向ではなく、継手本体の周方向となるように構成することもできる。
【符号の説明】
【0029】
1 管継手
10 雌型継手
12 雄型継手
12a 外周面
14 第1流体通路
16 継手本体
16a 外周面
16b 内周面
18 バルブ部材
18a 内周面
20 施錠子保持孔
22 施錠子
24 スリーブ
26 後端接続部
28 後方部材
30 前端開口部
32 前方部材
34 第2流体通路
36 施錠凹部
38 外表面
40 球状部
42 軸状部
44 回転軸部
46 軸受穴
48 シール部材
50 スプリング
52 挿入部
52a 外周面
54 係止溝
56 シールリング
58 流体通路
60 係止突部
62 パージ孔
64 通過凹部
66 突部
68 溝部
70 第1規制面
72 第2規制面
L 長手軸線
M 長手軸線
R 回転中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5